(実施形態1)
以下では、本実施形態の赤外線式ガスセンサ100について、図1〜10に基づいて説明する。
赤外線式ガスセンサ100は、赤外線放射素子10と、第1受光素子221と、第2受光素子222と、第1光学系3aと、第2光学系3bと、駆動回路5と、信号処理部4と、を備える。赤外線放射素子10は、熱放射により赤外線を放射するように構成されている。駆動回路5は、赤外線放射素子10を駆動するように構成されている。第1光学系3aは、赤外線放射素子10と第1受光素子221との間に配置されている。第2光学系3bは、赤外線放射素子10と第2受光素子222との間に配置されている。信号処理部4は、第1受光素子221の第1出力信号と第2受光素子222の第2出力信号との比から検知対象のガスの濃度を求めるように構成されている。第1光学系3aの第1透過波長域λ01〜λ11(図2参照)は、検知対象のガスによる赤外線の吸収波長λg(図2参照)を含むように設定されている。第2光学系3bの第2透過波長域λ02〜λ12(図2参照)は、参照波長λr(図2参照)を含むように設定されている。第1透過波長域λ01〜λ11と第2透過波長域λ02〜λ12とは、互いに異なり、且つ、第2透過波長域λ02〜λ12が第1透過波長域λ01〜λ11よりも短波長側である。赤外線式ガスセンサ100は、第1光学系3aと第2光学系3bとに、第1透過波長域λ01〜λ11と第2透過波長域λ02〜λ12との両方よりも長波長側において第1光学系3aと第2光学系3bとに共通の補償用の所定波長域λc〜λd(図2参照)を設定してある。赤外線式ガスセンサ100は、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdにおける第1平均透過率が、第2光学系3bの所定波長域λc〜λdにおける第2平均透過率よりも小さい。赤外線式ガスセンサ100は、赤外線放射素子10の放射パワーの変化による、第1透過波長域λ01〜λ11の赤外線に基づく第1受光素子221の第1出力信号成分と第2透過波長域λ02〜λ12の赤外線に基づく第2受光素子222の第2出力信号成分との比の変化を補償するように、第1平均透過率及び第2平均透過率それぞれが設定されている。よって、赤外線式ガスセンサ100は、測定精度の長期安定性を向上させることが可能となる。
赤外線式ガスセンサ100は、赤外線放射素子10をパッケージ19に収納した赤外光源1を備えているのが好ましい。また、赤外線式ガスセンサ100は、第1受光素子221と第2受光素子222とをパッケージ29に収納した赤外線検出器2aを備えているのが好ましい。
赤外線式ガスセンサ100は、赤外光源1と赤外線検出器2aとの間に配置され検知対象ガスの出入りが可能な試料セル6を備えているのが好ましい。なお、図1中の矢印付きの線は、赤外光源1から放射された赤外線の進行経路を模式的に示したものである。
試料セル6は、検知対象のガスを含む気体もしくは検知対象のガスが導入されるセルである。赤外線式ガスセンサ100は、ガスの種類によって赤外線の吸収波長が異なることを利用してガスを検知する。吸収波長は、例えば、CH4(メタン)が3.3μm、CO2(二酸化炭素)が4.3μm、CO(一酸化炭素)が4.7μm、NO(一酸化窒素)が5.3μmである。
赤外線式ガスセンサ100(以下、「ガスセンサ100」ともいう。)の各構成要素については、以下に、より詳細に説明する。
赤外線放射素子10は、熱放射により赤外線を放射するように構成されているから、赤外発光ダイオードに比べて広い波長域の赤外線を放射することができる。赤外線放射素子10は、第1透過波長域λ01〜λ11、第2透過波長域λ02〜λ12及び所定波長域λc〜λdを含む広帯域の赤外線を放射することができる。
赤外光源1としては、例えば、熱放射により赤外線を放射する赤外線放射素子10と、赤外線放射素子10を収納したパッケージ19と、を備えたものを用いることができる。
赤外線放射素子10は、図7(a)及び図7(b)に示す構成を採用することができる。赤外線放射素子10は、半導体基板11と、半導体基板11の表面111側に形成された薄膜部12と、半導体基板11に形成され薄膜部12における半導体基板11側の第1面12cの一部を露出させる開口部11aと、を備える。また、赤外線放射素子10は、薄膜部12の第2面12dに形成され、通電されることによる熱放射により赤外線を放射する赤外線放射層13を備える。赤外線放射層13は、駆動回路5から通電されることによって、熱放射により赤外線を放射する。
赤外線放射素子10は、保護層14と、赤外線放射層13に電気的に接続された複数の端子部16と、を備えている。保護層14は、薄膜部12の第2面12d側で赤外線放射層13を覆うように形成されている。保護層14は、赤外線放射層13から放射される赤外線を透過可能な材料により形成されている。赤外線放射層13と各端子部16とは、配線15を介して電気的に接続されている。
赤外線放射素子10は、MEMS(micro electro mechanical systems)の製造技術等を利用して製造することができる。
赤外線放射素子10は、赤外線放射層13への通電により赤外線放射層13が発熱し、赤外線放射層13から熱放射により赤外線が放射される。赤外線放射素子10の赤外線放射層13は、赤外光源1における発熱体を構成している。
半導体基板11としては、単結晶のシリコン基板を採用している。半導体基板11は、単結晶のシリコン基板に限らず、例えば、多結晶のシリコン基板等を採用することができる。
薄膜部12は、例えば、半導体基板11側のシリコン酸化膜12aと、シリコン酸化膜12aにおける半導体基板11側とは反対側に積層されたシリコン窒化膜12bとの積層膜により構成することができる。薄膜部12は、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜の単層構造でもよい。薄膜部12は、誘電体層を構成する。
赤外線放射層13の材料は、窒化タンタルを採用している。つまり、赤外線放射層13は、窒化タンタル層により構成されている。赤外線放射層13の材料は、窒化タンタルに限らず、例えば、窒化チタン、ニッケルクロム、タングステン、チタン、トリウム、白金、ジルコニウム、クロム、バナジウム、ロジウム、ハフニウム、ルテニウム、ボロン、イリジウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウム、ニッケル、ホルミウム、コバルト、エルビウム、イットリウム、鉄、スカンジウム、ツリウム、パラジウム、ルテチウムを採用してもよい。また、赤外線放射層13の材料は、導電性ポリシリコンを採用してもよい。つまり、赤外線放射層13は、導電性ポリシリコン層により構成してもよい。赤外線放射層13について、高温で化学的に安定であり、且つ、シート抵抗の設計容易性という観点からは、窒化タンタル層、窒化チタン層、導電性ポリシリコン層等を採用することが好ましい。窒化タンタル層及び窒化チタン層の各々は、その組成を変えることにより、シート抵抗を変えることが可能である。導電性ポリシリコン層は、不純物濃度を変えることにより、シート抵抗を変えることが可能である。
開口部11aは、半導体基板11の厚み方向に貫通した孔により形成されているが、これに限らず、半導体基板11の表面111に形成された穴により形成されていてもよい。
保護層14は、シリコン窒化膜により構成してある。保護層14は、シリコン窒化膜に限らず、例えば、シリコン酸化膜により構成してもよいし、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層構造を有していてもよい。保護層14は、耐湿性等の信頼性を確保するためのパッシベーション膜である。保護層14は、赤外線放射層13への通電時に赤外線放射層13から放射される所望の波長域の赤外線に対する透過率が高いほうが好ましいが、透過率が100%であることを必須とするものではない。
赤外線放射層13の厚さは、赤外線放射層13の低熱容量化を図るという観点から0.2μm以下とするのが好ましい。
薄膜部12の厚さと赤外線放射層13の厚さと保護層14の厚さとの合計厚さは、薄膜部12と赤外線放射層13と保護層14との積層構造の低熱容量化を図るという観点から、設定するのが好ましい。このため、薄膜部12の厚さと赤外線放射層13の厚さと保護層14の厚さとの合計厚さは、例えば、0.1μm〜1μm程度の範囲で設定することが好ましく、0.7μm以下とするのがより好ましい。
配線15の材料としては、アルミニウム合金(Al−Si)を採用している。配線15の材料は、特に限定するものではなく、例えば、金、銅等を採用してもよい。また、配線15は、赤外線放射層13と接する部分が赤外線放射層13とオーミック接触が可能な材料であればよく、単層構造に限らず、多層構造でもよい。例えば、配線15は、その厚さ方向において、赤外線放射層13側から順に、第1層、第2層、第3層が積層された3層構造として、赤外線放射層13に接する第1層の材料を高融点金属とし、第2層の材料をニッケルとし、第3層の材料を金としてもよい。高融点金属としては、例えば、クロム等を採用することができる。
端子部16は、パッド電極を構成している。端子部16の材料としては、アルミニウム合金(Al−Si)を採用している。端子部16の材料は、配線15と同じ材料を採用しているが、端子部16の材料と異なる材料でもよい。
パッケージ19は、赤外線放射素子10が実装される台座19aと、赤外線放射素子10を覆うように台座19aに固着されるキャップ19bと、を備える。パッケージ19は、キャップ19bにおける赤外線放射素子10の前方に形成された窓孔19rと、窓孔19rを塞ぐように配置され、赤外線を透過可能な窓材19wと、を備える。
台座19aは、金属製である。台座19aは、円板状に形成されている。キャップ19bは、金属製である。キャップ19bは、円筒状の部位19baの一端側に、円板状の天板部19bbが形成されており、天板部19bbの中央部に窓孔19rが形成されている。
台座19aは、平面視形状が円形状であるが、これに限らず、例えば、多角形状でもよい。また、キャップ19bの形状は、台座19aの形状に応じて適宜変更すればよい。例えば、台座19aの平面視形状が矩形状の場合、キャップ19bの平面視形状は、円形状でもよいし、矩形状でもよい。
パッケージ19は、赤外線放射素子10への給電用の端子として、2本のリードピン19dを備えている。赤外線放射素子10の端子部16とリードピン19dとは、金属細線(図示せず)を介して電気的に接続されている。
2本のリードピン19dは、台座19aに保持されている。2本のリードピン19dは、台座19aに対して、台座19aの厚み方向に貫通して設けられている。2本のリードピン19dは、台座19aに対して電気絶縁性の封止材(ガラス)で固定されており、台座19aと電気的に絶縁されている。
窓材19wは、赤外線を透過する機能を有する。窓材19wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材19wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板等でもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、窓材19wとしては、レンズを採用することもできる。
ガスセンサ100は、駆動回路5から赤外線放射素子10の赤外線放射層13へ与える入力電力を調整することにより、赤外線放射層13に発生するジュール熱を変化させることができ、赤外線放射層13の温度を変化させることができる。よって、ガスセンサ100では、赤外線放射層13の温度を変化させることで赤外線放射層13から放射される赤外線のピーク波長を変化させることができる。
ガスセンサ100は、赤外光源1が赤外線放射素子10を採用しているので、ハロゲンランプを用いる場合に比べて、発熱体の熱容量を小さくすることが可能となり、低消費電力化や、赤外光源1への同程度の入力電力でS/N比の向上を図ることが可能となる。
駆動回路5は、赤外線放射素子10を間欠的に駆動する。駆動回路5は、赤外線放射素子10を、一定の電圧もしくは一定の電流でパルス駆動するように構成されているのが好ましい。駆動回路5は、例えば、赤外線放射素子10を一定の電圧でパルス駆動する場合、赤外線放射素子10に対して、所定のパルス幅の電圧(以下、「パルス電圧」ともいう。)を規定の時間間隔で印加する。したがって、ガスセンサ100は、駆動回路5から赤外線放射素子10へ、パルス電圧が周期的に印加される。赤外線放射素子10は、パルス電圧が印加されている期間が通電期間となり、パルス電圧が印加されていない期間が非通電期間となる。駆動回路5は、赤外線放射素子10を一定の電流でパルス駆動する場合、赤外線放射素子10に対して、所定のパルス幅の電流(以下、「パルス電流」ともいう。)を規定の時間間隔で供給する。ガスセンサ100は、駆動回路5から赤外光源1に対してパルス電圧やパルス電流を供給することにより、赤外線放射素子10にパルス電圧やパルス電流が供給される。
試料セル6は、筒状に形成されている。試料セル6は、その内部空間と外部とを連通させる複数の通気孔69が、試料セル6の軸方向に直交する方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6が、円筒状に形成されている場合、通気孔69は、試料セル6の径方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6は、通気孔69を通して外部からの気体が導入されたり、内部空間の気体が導出されたりする。
ガスセンサ100は、試料セル6の軸方向の一端部側に赤外光源1が配置され、試料セル6の軸方向の他端部側に赤外線検出器2aが配置されている。ガスセンサ100は、通気孔69を通って試料セル6の内部空間に、例えば、外部からの検知対象のガス、あるいは検知対象のガスを含む気体が導入される。ガスセンサ100は、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が増加すると、赤外線検出器2aへ入射する赤外線の光量が低下し、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が低下すると、赤外線検出器2aへ入射する赤外線の光量が増加する。
試料セル6は、この試料セル6の中心軸を含む平面で分割された対になる半割体64、65(図3〜6参照)を結合することにより形成されている。半割体64と半割体65とは、例えば、嵌め合い、超音波溶着、接着等から選択される技術により結合することができる。
試料セル6は、赤外光源1から放射された赤外線を赤外線検出器2a側へ反射する光学要素を兼ねているのが好ましい。試料セル6は、例えば、合成樹脂により形成されている場合、内面側に、赤外線を反射する反射層を備えた構成とするのが好ましい。試料セル6の材料は、合成樹脂に限らず、例えば、金属を採用してもよい。
試料セル6は、筒状であり、その内面が、赤外光源1から放射された赤外線を反射する反射面66(図3、5、6参照)を構成するのが好ましい。上述の反射層を備えている場合には、この反射層の表面が反射面66を構成することができる。
ガスセンサ100は、赤外光源1を保持する保持部材70(図3〜5参照)を備え、この保持部材70が試料セル6に取り付けられている。また、ガスセンサ100は、赤外線検出器2aを保持する保持部材80を備え、この保持部材80が試料セル6に取り付けられている。
保持部材70は、キャップ部71と、押さえ板72と、を備えている。キャップ部71は、円盤状であって、試料セル6側の端面に、試料セル6の一端部が挿入される凹部71a(図5参照)が設けられ、凹部71aの底部の中央に、赤外光源1が挿入される貫通孔71bが形成されている。押さえ板72は、キャップ部71に対して赤外光源1を押さえるためのものである。
保持部材70は、押さえ板72の孔72b及びキャップ部71の孔71dに通された複数のねじ(図示せず)が、試料セル6の一端部のめねじ部64d、65dにねじ込まれることによって、試料セル6に取り付けられている。
保持部材80は、キャップ部81と、押さえ板82と、を備えている。キャップ部81は、円盤状であって、試料セル6側の端面に、試料セル6の他端部が挿入される凹部81aが設けられ、凹部81aの底部の中央に、赤外線検出器2aが挿入される貫通孔81bが形成されている。押さえ板82は、キャップ部81に対して赤外線検出器2aを押さえるためのものである。
保持部材80は、押さえ板82の孔82b及びキャップ部81の孔81cに通されたねじ(図示せず)が、試料セル6の他端部のめねじ部(図示せず)にねじ込まれることによって、試料セル6に取り付けられている。
なお、保持部材70,80それぞれの構造は、特に限定するものではない。また、試料セル6への保持部材70,80それぞれの取付構造も特に限定するものではない。
ところで、試料セル6の反射面66は、試料セル6の中心軸OX(図6参照)上に規定した長軸を回転軸とする回転楕円体の長軸方向の両端部それぞれを長軸に直交する2つの平面VP1、VP2によりカットした形状としてある。よって、試料セル6は、回転楕円体(長楕円体)の一部に対応する内部空間が形成されている。
ガスセンサ100は、赤外光源1を、試料セル6の中心軸OX上において、上記回転楕円体の一方の焦点P1に配置し、赤外線検出器2aを、試料セル6の中心軸OX上において、上記回転楕円体の他方の焦点P2よりも赤外光源1に近い側に配置するのが好ましい。
なお、ガスセンサ100は、赤外光源1と赤外線検出器2aとの間に配置される部材(試料セル6等)の形状や数、配置等を特に限定するものではない。
第1光学系3aは、赤外線放射素子10から放射された赤外線が第1受光素子221に入射するまでの伝搬経路に関与するものである。また、第2光学系3bは、赤外線放射素子10から放射された赤外線が第2受光素子222に入射するまでの伝搬経路に関与するものである。
第1光学系3aは、例えば、図8に示すような第1光学フィルタ31を備えるのが好ましい。また、第2光学系3bは、例えば、図9に示すような第2光学フィルタ32を備えるのが好ましい。ガスセンサ100における第1光学系3aは、第1光学フィルタ31の他に、赤外光源1の窓孔19rと、赤外光源1の窓材19wと、試料セル6の反射面66と、赤外線検出器2aの窓孔29cと、を含む。また、ガスセンサ100における第2光学系3bは、第2光学フィルタ32の他に、赤外光源1の窓孔19rと、赤外光源1の窓材19wと、試料セル6の反射面66と、赤外線検出器2aの窓孔29cと、を含む。
第1光学フィルタ31は、第1基板31sと、第1狭帯域透過フィルタ部31aと、第1広帯域遮断フィルタ部31bと、を備えている。第1基板31sは、赤外線を透過可能なものである。第1基板31sとしては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、サファイア基板、酸化マグネシウム基板等を採用することができる。
第1狭帯域透過フィルタ部31aは、第1光学系3aの第1透過波長域λ01〜λ11を規定するようにフィルタ特性を設計してある。第1広帯域遮断フィルタ部31bは、第1光学フィルタ31の所定波長域λc〜λdにおける赤外線の透過率を、第1狭帯域透過フィルタ部31aだけの場合よりも小さくするように設計してある。第1広帯域遮断フィルタ部31bは、所定波長域λc〜λdの赤外線を吸収することで遮断するフィルタである。
第1狭帯域透過フィルタ部31aは、例えば、λ0/4多層膜34と、波長選択層35と、λ0/4多層膜36と、で構成されるバンドパスフィルタとすることができる。
λ0/4多層膜34は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜31aa、31abが交互に積層された多層膜である。λ0/4多層膜34における2種類の薄膜31aa、31abの光学膜厚は、λ0/4多層膜34の設定波長λ0の1/4に設定されている。
λ0/4多層膜36は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜31aa、31abが交互に積層された多層膜である。λ0/4多層膜36における2種類の薄膜31aa、31abの光学膜厚は、λ0/4多層膜36の設定波長λ0の1/4に設定されている。
波長選択層35は、λ0/4多層膜34とλ0/4多層膜36との間に介在する。波長選択層35の光学膜厚は、波長選択層35の選択波長に応じて決めてあり、各薄膜31aa、31abの光学膜厚とは異ならせてある。波長選択層35の選択波長は、吸収波長λgである。第1狭帯域透過フィルタ部31aは、吸収波長λgの赤外線に対する透過率が50%以上であるのが、好ましく、70%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのが更に好ましい。
λ0/4多層膜34及びλ0/4多層膜36は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。SiOxは、SiOやSiO2である。SiNx等は、SiN、Si3N4等である。
第1狭帯域透過フィルタ部31aは、λ0/4多層膜34とλ0/4多層膜36との間に波長選択層35を備えることにより、反射帯域の中に、この反射帯域の幅に比べて透過スペクトル幅の狭い第1透過波長域λ01〜λ11を局在させることができる。
屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜を積層することにより形成される光学多層膜の反射帯域の幅は、下記の(2)式で近似的に求められることが知られている(参考文献:小檜山光信著,「光学薄膜フィルター」,株式会社オプトロニクス社,p.102−106)。
ここで、λ
0は、各薄膜に共通する光学膜厚の4倍に相当する設定波長である。Δλは、反射帯域の幅である。n
Hは、2種類の薄膜のうち相対的に屈折率の高い材料の屈折率である。n
Lは、2種類の薄膜のうち相対的に屈折率の低い材料の屈折率である。
第1広帯域遮断フィルタ部31bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜31ba、31bbが交互に積層された多層膜である。第1広帯域遮断フィルタ部31bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。SiOxは、SiOやSiO2である。SiNx等は、SiN、Si3N4等である。
第2光学フィルタ32は、第2基板32sと、第2狭帯域透過フィルタ部32aと、第2広帯域遮断フィルタ部32bと、を備えている。第2基板32sは、赤外線を透過可能なものである。第2基板32sとしては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、サファイア基板、酸化マグネシウム基板等を採用することができる。
第2狭帯域透過フィルタ部32aは、第2光学系3bの第2透過波長域λ02〜λ12を規定するようにフィルタ特性を設計してある。第2広帯域遮断フィルタ部32bは、第2光学フィルタ32の所定波長域λc〜λdにおける赤外線の透過率を、第2狭帯域透過フィルタ部32aだけの場合よりも小さくするように設計してある。第2広帯域遮断フィルタ部32bは、所定波長域λc〜λdの赤外線を吸収することで遮断するフィルタである。
第2狭帯域透過フィルタ部32aは、例えば、λ0/4多層膜37と、波長選択層38と、λ0/4多層膜39と、で構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ0/4多層膜37とλ0/4多層膜39とは、設定波長λ0が同じである。
λ0/4多層膜37は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜32aa、32abが交互に積層された多層膜である。λ0/4多層膜37における2種類の薄膜32aa、32abの光学膜厚は、λ0/4多層膜37の設定波長λ0の1/4に設定されている。
λ0/4多層膜39は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜32aa、32abが交互に積層された多層膜である。λ0/4多層膜39における2種類の薄膜32aa、32abの光学膜厚は、λ0/4多層膜39の設定波長λ0の1/4に設定されている。
波長選択層38は、λ0/4多層膜37とλ0/4多層膜39との間に介在する。波長選択層38の光学膜厚は、波長選択層38の選択波長に応じて決めてあり、各薄膜32aa、32abの光学膜厚とは異ならせてある。波長選択層38の選択波長は、参照波長λrである。参照波長λrとは、検知対象のガス及び他のガスでの吸収のない波長を意味する。検知対象のガスとして、CO2を想定している場合、他のガスとしては、例えば、H2O、CH4、CO、NO等が挙げられる。第2狭帯域透過フィルタ部32aは、参照波長λrの赤外線に対する透過率が50%以上であるのが、好ましく、70%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのが更に好ましい。
λ0/4多層膜37及びλ0/4多層膜39は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。SiOxは、SiOやSiO2である。SiNx等は、SiN、Si3N4等である。
第2狭帯域透過フィルタ部32aは、λ0/4多層膜37とλ0/4多層膜39との間に波長選択層38を備えることにより、反射帯域の中に、反射帯域の幅に比べて透過スペクトル幅の狭い第2透過波長域λr−Δλr〜λr+Δλrを局在させることができる。
第2広帯域遮断フィルタ部32bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい2種類の薄膜32ba、32bbが交互に積層された多層膜である。第2広帯域遮断フィルタ部32bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第1光学フィルタ31は、第1狭帯域透過フィルタ部31aの中心波長を、検知対象のガスの吸収波長λgに設定するのが好ましい。また、第2光学フィルタ32は、第2狭帯域透過フィルタ部32aの中心波長を、参照波長λrに設定するのが好ましい。ガスセンサ100は、吸収波長λgと参照波長λrとの差が小さい方が好ましい。これにより、ガスセンサ100は、検知対象のガスが存在しないときの、第1狭帯域透過フィルタ部31aを透過する赤外線の光量と第2狭帯域透過フィルタ部32aを透過する赤外線の光量との差を少なくすることが可能となる。ガスセンサ100は、検知対象のガスが例えば二酸化炭素の場合、吸収波長λgを4.3μmに設定し、参照波長λrを例えば3.9μmに設定することができる。
第1受光素子211は、第1光学フィルタ31における赤外線放射素子10側とは反対側に配置されている。第2受光素子222は、第2光学フィルタ32における赤外線放射素子10側とは反対側に配置されている。第1受光素子221と第2受光素子222とは、同じ構成であるのが好ましい。これにより、赤外線式ガスセンサ100は、第1受光素子221と第2受光素子222との特性を略同じとすることが可能となる。第1受光素子221と第2受光素子222とは、並んで配置されているのが好ましい。
赤外線検出器2aは、第1受光素子221と第2受光素子222とを具備する赤外線検出素子20a(図10参照)を備えているのが好ましい。
赤外線検出素子20aは、第1受光素子221及び第2受光素子222が、焦電素子であり、1つの焦電体基板21に、第1受光素子221と第2受光素子222とが並んで形成されている。第1受光素子221及び第2受光素子222は、焦電体基板21の表面21aに形成された表面電極22aと、焦電体基板21の裏面21bに形成されて表面電極22aに対向した裏面電極22bと、焦電体基板21において表面電極22aと裏面電極22bとで挟まれた部分22cと、を備える。
表面電極22a及び裏面電極22bは、検出対象の赤外線を吸収可能で且つ導電性を有する導電膜により構成されている。導電膜は、Ni膜により構成されている。導電膜は、Ni膜に限らず、例えば、NiCr膜や金黒膜等でもよい。
第1受光素子221及び第2受光素子222の平面視形状は、長方形状としてある。第1受光素子221及び第2受光素子222の平面視形状は、長方形状に限らず、例えば、正方形状や、円形状、半円形状、楕円形状、半楕円形状、矩形以外の多角形状等でもよい。
赤外線検出素子20aは、焦電体基板21の表面21aに、第1受光素子221、第2受光素子222の表面電極22a、22aそれぞれと電気的に接続された表面配線24a、24aが形成されている。赤外線検出素子20aは、焦電体基板21の裏面21bに、第1受光素子221、第2受光素子222の裏面電極22b、22bにそれぞれ電気的に接続された裏面配線24b、24bが形成されている。焦電体基板21は、第1受光素子221及び第2受光素子222それぞれの周辺部に、表面配線24a及び裏面配線24bを避けてスリット26が形成されているのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20aは、第1受光素子221と第2受光素子222との間の熱絶縁性を向上させることが可能となり、ノイズを低減することが可能となる。スリット26は、焦電体基板21の厚さ方向に貫通して形成されているのが好ましい。
赤外線検出素子20aは、焦電体基板21の表面21a上に、表面電極22a、22aにそれぞれ表面配線24a、24aを介して電気的に接続された端子部24aa、24aaを備えているのが好ましい。また、赤外線検出素子20aは、焦電体基板21の裏面21b上に、裏面電極22b、22bにそれぞれ裏面配線24b、24bを介して電気的に接続された端子部24bb、24bbを備えているのが好ましい。表面配線24a及び端子部24aaは、表面電極22aの導電膜と同じ材料で同じ厚さに形成することができる。裏面配線24b及び端子部24bbは、裏面電極22bの導電膜と同じ材料で同じ厚さに形成することができる。
焦電体基板21は、焦電性を有する基板である。焦電体基板21は、単結晶のLiTaO3基板により構成されている。焦電体基板21の材料である焦電材料としては、LiTaO3を採用しているが、これに限らず、例えば、LiNbO3、PbTiO3、PZT(:Pb(Zr,Ti)O3)、PZT−PMN(:Pb(Zr,Ti)O3−Pb(Mn,Nb)O3)等を採用してもよい。
焦電体基板21の自発分極の方向は、この焦電体基板21の厚み方向に沿った一方向である。図10(b)で見れば、焦電体基板21の自発分極の方向は、上方向である。
焦電体基板21は、平面視形状を矩形状としてあるのが好ましい。焦電体基板21の平面視形状は、特に限定するものではない。
ガスセンサ100は、第1受光素子221と第2受光素子222とが、別々の焦電体基板に形成されたものでもよい。この場合、第1受光素子221と第2受光素子222とは、製造時に同じ焦電体ウェハに形成され、この焦電体ウェハから切り出されたもの同士を用いるのが好ましい。
第1受光素子221及び第2受光素子222は、焦電素子に限らず、他の熱型受光素子でもよい。熱型受光素子は、赤外線を吸収して電気信号に変換する受光素子である。熱型受光素子としては、例えば、焦電素子、サーモパイル、抵抗ボロメータ等の熱型の赤外線検出素子が挙げられる。ガスセンサ100は、第1受光素子221及び第2受光素子222が熱型受光素子であることにより、第1受光素子221及び第2受光素子222それぞれの感度の波長依存性が小さいので、測定精度の長期安定性を、より向上させることが可能となる。第1受光素子221及び第2受光素子222は、量子型の赤外線検出素子でもよい。
赤外線検出器2aは、パッケージ29における第1受光素子221及び第2受光素子222それぞれの前方に窓孔29c、29cを有し、各窓孔29c、29cそれぞれを塞ぐように、第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32を配置してある。
第1受光素子221と第2受光素子222とは、赤外線放射素子10の光軸に直交する一平面上において、この光軸と当該一平面との交点を中心として点対称となるように配置されているのが好ましい。
パッケージ29は、台座29aと、台座29aに固着されるキャップ29bと、を備える。パッケージ29は、キャップ29bにおける第1受光素子221及び第2受光素子222それぞれの前方に窓孔29c、29cが形成されている。
信号処理部4は、第1受光素子221の第1出力信号を信号処理する第1IC素子41と、第2受光素子222の第2出力信号を信号処理する第2IC素子42と、を備えている。
第1IC素子41及び第2IC素子42は、例えば、第1電流電圧変換回路と、第1増幅回路と、を備えた構成とすることができる。第2IC素子42は、第2電流電圧変換回路と、第2増幅回路と、を備えた構成とすることができる。
第1電流電圧変換回路は、第1受光素子221の第1出力信号である電流信号を電流−電圧変換して出力する回路である。第1増幅回路は、第1電流電圧変換回路で電流−電圧変換された第1出力信号を増幅して出力する回路である。
第2電流電圧変換回路は、第2受光素子222の第2出力信号である電流信号を電流−電圧変換して出力する回路である。第2増幅回路は、第2電流電圧変換回路で電流−電圧変換された第2出力信号を増幅して出力する回路である。
赤外線検出器2aは、第1IC素子41の回路構成と第2IC素子42の回路構成とが、同じであるのが好ましい。なお、赤外線検出器2aは、第1電流電圧変換回路と第2電流電圧変換回路と第1増幅回路と第2増幅回路と、を集積化して1チップのIC素子としてもよい。
また、信号処理部4は、第1増幅回路にて増幅された第1出力信号と第2増幅回路にて増幅された第2出力信号との比に基づく出力を発生する信号処理回路45を備えている。信号処理回路45は、第1増幅回路にて増幅された第1出力信号と第2増幅回路にて増幅された第2出力信号との比に基づいて、検知対象のガスの濃度を求め、この濃度に相当する出力を発生する。
赤外線検出器2aは、第1IC素子41及び第2IC素子42もパッケージ29内に収納されているのが好ましい。この場合、赤外線検出器2aは、例えば、第1IC素子41、第2IC素子42と、第1IC素子41及び第2IC素子42が実装された基板43と、で構成される回路ブロック44が、パッケージ29内に収納されているのが好ましい。台座29aには、4本のリードピン29dが、この台座29aの厚み方向に貫通して設けられる。4本のリードピン29dは、2本のリードピン29dが、第1IC素子41の出力信号を取り出すために利用され、他の2本のリードピン29dが、第2IC素子42の出力信号を取り出すために利用される。
基板43は、例えば、MID(Molded Interconnect Devices)基板により構成することができる。基板43は、MID基板に限らず、例えば、部品内蔵基板、セラミック基板、プリント基板等により構成することができる。また、赤外線検出器2aは、第1受光素子221及び第2受光素子222が、回路ブロック44の基板43に実装された構成とすることができる。
なお、信号処理部4は、この信号処理部4の全部を赤外線検出器2aのパッケージ29内に設けてもよい。また、信号処理部4は、第1電流電圧変換回路と第1増幅回路と第2電流電圧変換回路と第2増幅回路と信号処理回路45とを集積化して1チップのIC素子とし、パッケージ29内に設けてもよい。また、信号処理部4は、複数のディスクリート部品を適宜接続して構成してもよい。また、信号処理部4は、この信号処理部4の全部を赤外線検出器2aとは別に設けてもよい。
ところで、熱放射により赤外線を放射する赤外線放射素子10では、例えば、この赤外線放射素子10の経時的な特性変化に起因して、同じ入力電力での赤外線放射素子10の到達温度が低下した場合、放射スペクトル(放射エネルギの波長依存性)が変化する。図2に示す模式図では、温度T1(例えば、700K)での赤外線放射素子10の放射スペクトルを一点鎖線で示し、温度T2(<T1)での赤外線放射素子10の放射スペクトルを二点鎖線で示してある。また、図2には、第1光学系3aの透過スペクトル(透過率の波長依存性)を実線で示し、第2光学系3bの透過スペクトルを破線で示してある。図2から、赤外線放射素子10の放射パワーが変化した場合、第1透過波長域λ01〜λ11の赤外線に基づく第1受光素子221の第1出力信号成分と、第2透過波長域λ02〜λ12の赤外線に基づく第2受光素子222の第2出力信号成分と、の比が変化することが分かる。
補償用の所定波長域λc〜λdは、赤外線放射素子10の放射スペクトルと、第1光学系3a及び第2光学系3bそれぞれのフィルタとしての性能等に起因して赤外線の漏れが生じる波長領域と、に基づいて適宜設定するのが好ましい。所定波長域λc〜λdは、例えば、5μm〜30μmの範囲とすることができるが、特に限定するものではなく、例えば、10μm〜25μmの範囲としてもよい。
ガスセンサ100は、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdにおける第1平均透過率が、第2光学系3bの所定波長域λc〜λdにおける第2平均透過率よりも小さい。
「第1平均透過率」とは、第1光学系3aの、所定波長域λc〜λdにおける透過率の平均値である。「第1平均透過率」は、S2/S1の計算式により求めた値である。S1は、赤外線波長域のうち所定波長域λc〜λdの最短波長λcから最長波長λdの間における、透過率が100%となる仮想透過スペクトルを積分した面積である。要するに、面積S1は、仮想透過スペクトルと当該仮想透過スペクトルの横軸(波長軸)とで囲まれた領域の面積である。例えば、最短波長λcを10μm、最長波長λdを25μmとした場合には、S1=100×(25−10)となる。S2は、分光器等により実測した、第1光学系3aの透過スペクトルを積分した面積である。要するに、面積S2は、実測した透過スペクトルと当該透過スペクトルの横軸(波長軸)とで囲まれた領域の面積である。
ガスセンサ100は、第1平均透過率が、第2平均透過率よりも小さい。第1平均透過率は、例えば、第1光学フィルタ31の第1広帯域遮断フィルタ部31bにおける2種類の薄膜31ba、31bbの積層数、光学膜厚、材料の組み合わせ等を変更することにより変えることが可能である。第2平均透過率は、例えば、第2光学フィルタ32の第2広帯域遮断フィルタ部32bにおける2種類の薄膜32ba、32bbの積層数、光学膜厚、材料の組み合わせ等を変更することにより変えることが可能である。
ガスセンサ100は、赤外線放射素子10の放射パワーの変化による、第1透過波長域λ01〜λ11の赤外線に基づく第1受光素子221の第1出力信号成分と第2透過波長域λ02〜λ12の赤外線に基づく第2受光素子222の第2出力信号成分との比の変化を補償するように、第1平均透過率及び第2平均透過率それぞれが設定されている。これにより、ガスセンサ100は、赤外線放射素子10の経時的な特性劣化が長期安定性に与える影響を低減することが可能となる。要するに、ガスセンサ100は、赤外線放射素子10への同じ入力電力での赤外線放射素子10の到達温度が低下した場合、第1受光素子221及び第2受光素子222それぞれのS/N比が変化しても、第1受光素子221のS/N比と第2受光素子222のS/N比との相対比の変化を抑制することが可能となり、測定精度の変化を抑制することが可能となる。よって、ガスセンサ100は、測定精度の長期安定性を向上させることが可能となる。
ガスセンサ100は、第1受光素子221の第1出力信号と第2受光素子222の第2出力信号との比が検知対象のガス(例えば、二酸化炭素)の濃度に応じた値となるから、検知対象のガスの濃度を精度良く求めることが可能となる。
ガスセンサ100において、駆動回路5は、赤外線放射素子10を一定の電圧もしくは一定の電流でパルス駆動するように構成されているのが好ましい。第1光学系3aの第1平均透過率と第2光学系3bの第2平均透過率とは、下記(1)式の条件を満たすように設定されているのが好ましい。
ここで、Qg1は、赤外線放射素子10の初期状態において、第1光学系3aの第1透過波長域λ
01〜λ
11を通過して第1受光素子22
1に入射する赤外線エネルギである。以下では、λ
01=λg−Δλg、λ
11=λg+Δλgとする。Qr1は、赤外線放射素子10の初期状態において、第2光学系3bの第2透過波長域λ
02〜λ
12を通過して第2受光素子22
2に入射する赤外線エネルギである。以下では、λ
02=λr−Δλr、λ
12=λr+Δλrとする。Qg2は、赤外線放射素子10の経時変化後の第1光学系3aの第1透過波長域λg−Δλg〜λg+Δλgを通過して第1受光素子22
1に入射する赤外線エネルギである。Qr2は、赤外線放射素子10の経時変化後の第2光学系3bの第2透過波長域λr−Δλr〜λr+Δλrを通過して第2受光素子22
2に入射する赤外線エネルギである。
(1)式は、赤外線放射素子10の抵抗値が±10%変化した場合の、ガスセンサ100の測定精度の変化が±3%以下となるように決めた条件である。これにより、ガスセンサ100は、測定精度の長期安定性を向上させることが可能となる。
赤外線放射素子10の抵抗値とは、赤外線放射層13の抵抗値を意味する。
赤外光源1が上述の赤外線放射素子10とパッケージ19とを備えている場合、赤外光源1の抵抗値は、赤外線放射素子10の赤外線放射層13の抵抗と、パッケージ19のリードピン19dと赤外線放射層13との間の電路の抵抗と、の合成抵抗の値である。赤外光源1は、赤外線放射層13で発生するジュール熱を大きくし、赤外線放射層13から効率良く赤外線を放射させるという観点から、赤外線放射層13の抵抗値が、電路の抵抗値よりも十分に大きいのが好ましい。言い換えれば、赤外光源1は、赤外光源1の抵抗値が、赤外線放射層13の抵抗値とみなせる程度に電路の抵抗値が小さいのが好ましい。赤外光源1の抵抗値は、発熱して赤外線を放射する赤外線放射層13のような抵抗部の抵抗値を意味する。
ところで、第1光学系3aの第1平均透過率及び第2光学系3bの第2平均透過率は、次の考え方に基づいて設定してもよい。
第1光学系3aを通過する赤外線のエネルギは、下記の(3)式で表すことができる。
ここで、Pg
1は、第1光学系3aを通過する赤外線のエネルギである。T
1は、赤外線放射素子10の絶対温度〔K〕である。λは、波長〔μm〕である。P(λ,T
1)は、プランクの放射則による赤外線放射素子10の分光放射パワー〔W〕である。Tg(λ)は、第1光学系3aの分光透過率〔%〕である。(3)式は、第1透過波長域λg−Δλg〜λg+Δλgと所定波長域λc〜λdとを除いた他の波長域の透過率を0%と見なした場合の式である。なお、本実施形態のガスセンサ100における赤外線放射素子10の絶対温度〔K〕は、赤外線放射層13の絶対温度〔K〕を意味する。
第1光学系3aを通過する赤外線のエネルギと第1受光素子221の第1出力信号との関係は、下記の(4)式で表すことができる。
ここで、Dg
1は、第1受光素子22
1の第1出力信号である。
第2光学系3bを通過する赤外線のエネルギは、下記の(5)式で表すことができる。
ここで、Pr
1は、第2光学系3bを通過する赤外線のエネルギである。T
1は、赤外線放射素子10の絶対温度〔K〕である。λは、波長〔μm〕である。P(λ,T
1)は、プランクの放射則による赤外線放射素子10の分光放射パワー〔W〕である。Tr(λ)は、第2光学系3bの分光透過率〔%〕である。(4)式は、第2透過波長域λr−Δλr〜λr+Δλrと所定波長域λc〜λdとを除いた他の波長域の透過率を0%と見なした場合の式である。
第2光学系3bを通過する赤外線のエネルギと第2受光素子222の第2出力信号との関係は、下記の(6)式で表すことができる。
ここで、Dr
1は、第2受光素子22
2の第2出力信号である。
ガスセンサ100において、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、第1受光素子221の第1出力信号は、下記の(7)式で表すことができる。
ここで、Dg
1は、第1受光素子22
1の第1出力信号である。
ガスセンサ100において、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、第2受光素子222の第2出力信号は、下記の(8)式で表すことができる。
赤外線放射素子10の経時変化により赤外線放射素子10の絶対温度がT
1からT
2に変化した場合、第1受光素子22
1の第1出力信号は、下記の(9)式で表すことができる。
ここで、Dg
2は、第1受光素子22
1の第1出力信号である。
また、赤外線放射素子10の経時変化により赤外線放射素子10の絶対温度がT1からT2に変化した場合、第2受光素子222の第2出力信号は、下記の(10)式で表すことができる。
赤外線放射素子10の絶対温度がT
1からT
2に変化することに起因した誤差を無くすための理想的な条件は、下記の(11)式で表すことができる。
(11)式は、(7)〜(10)式を利用して下記の(12)式のように変形することができる。
ガスセンサ100は、(12)式を満たすように、第1光学系3aの第1透過波長域λg−Δλg〜λg+Δλgの透過率Tg(λ)、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdの透過率Tg(λ)を設定してあるのが好ましい。また、ガスセンサ100は、(11)式を満たすように、第2光学系3bの第2透過波長域λr−Δλr〜λr+Δλrの透過率Tr(λ)、第2光学系3bの所定波長域λc〜λdの透過率Tr(λ)を設定してあるのが好ましい。
第1光学系3aの第1透過波長域λg−Δλg〜λg+Δλgの透過率Tg(λ)は、検知対象のガスが存在する場合の第1出力信号のS/N比がより大きくなるように設定するのが好ましい。第2光学系3bの第2透過波長域λr−Δλr〜λr+Δλrの透過率Tr(λ)は、信号処理部4での誤差がより小さくなるように設定するのが好ましい。
第1光学系3aの所定波長域λc〜λdの透過率Tg(λ)及び第2光学系3bの所定波長域λc〜λdの透過率Tr(λ)は、(11)式を満足するように設定するのが好ましい。なお、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdの透過率Tg(λ)及び第2光学系3bの所定波長域λc〜λdの透過率Tr(λ)は、両方が0%もしくは同等の場合に対して、測定精度の経時安定性の効果が得られる範囲で設定すればよい。
ガスセンサ100において、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdにおける赤外線の透過がないと仮定すると、第1受光素子221の第1出力信号は、下記の(13)式で表すことができる。
ここで、Dg
01は、第1受光素子22
1の第1出力信号である。Pg
01は、第1光学系3aを通過する赤外線のエネルギである。
また、ガスセンサ100において、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、第2光学系3bの所定波長域λc〜λdにおける赤外線の透過がないと仮定すると、第2受光素子222の第2出力信号は、下記の(14)式で表すことができる。
ここで、Dr
01は、第2受光素子22
2の第2出力信号である。Pr
01は、第2光学系3bを通過する赤外線のエネルギである。
また、ガスセンサ100において、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdにおける赤外線の透過率を設定すると、第1受光素子221の第1出力信号は、下記の(15)式で表すことができる。
ここで、Dg
11は、第1受光素子22
1の第1出力信号である。Pg
11は、第1光学系3aを通過する赤外線のエネルギである。
また、ガスセンサ100において、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、第2光学系3bの所定波長域λc〜λdにおける赤外線の透過率を設定すると、第2受光素子222の第2出力信号は、下記の(16)式で表すことができる。
ここで、Dr
11は、第2受光素子22
2の第2出力信号である。Pr
11は、第2光学系3bを通過する赤外線のエネルギである。
ガスセンサ100において、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、赤外線放射素子10が経時変化したとき、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdでの赤外線の透過がないと仮定すると、第1受光素子221の第1出力信号は、下記の(17)式で表すことができる。
ここで、Dg
02は、第1受光素子22
1の第1出力信号である。Pg
02は、第1光学系3aを通過する赤外線のエネルギである。
ガスセンサ100において、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、赤外線放射素子10が経時変化したとき、第2光学系3bの所定波長域λc〜λdでの赤外線の透過がないと仮定すると、第2受光素子222の第2出力信号は、下記の(18)式で表すことができる。
ここで、Dr
02は、第2受光素子22
2の第2出力信号である。Pr
02は、第2光学系3bを通過する赤外線のエネルギである。
ガスセンサ100において、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、赤外線放射素子10が経時変化したとき、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdの赤外線の透過率を設定すると、第1受光素子221の第1出力信号は、下記の(19)式で表すことができる。
ここで、Dg
12は、第1受光素子22
1の第1出力信号である。Pg
12は、第1光学系3aを通過する赤外線のエネルギである。
ガスセンサ100において、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、赤外線放射素子10が経時変化したとき、第2光学系3bの所定波長域λc〜λdの赤外線の透過率を設定すると、第2受光素子222の第2出力信号は、下記の(20)式で表すことができる。
ここで、Dr
12は、第2受光素子22
2の第2出力信号である。Pr
12は、第2光学系3bを通過する赤外線のエネルギである。
赤外線放射素子10の絶対温度がT1からT2に変化することに起因した誤差を無くすための理想的な条件は、下記の(21)式を前提として、下記の(22)式で表すことができる。
したがって、ガスセンサ100は、下記の(23)式を満足するように、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdの透過率、第2光学系3bの所定波長域λc〜λdの透過率を設定すればよい。
ところで、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、第1受光素子22
1における、第1透過波長域λg−Δλg〜λg+Δλgの赤外線の受光パワーは、下記の(24)式で表すことができる。
ここで、Qgsは、第1受光素子22
1の受光パワーのうち、第1光学系3aの第1透過波長域λg−Δλg〜λg+Δλgを通過した赤外線に対する受光パワーである。
また、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、第2受光素子222における、第2透過波長域λr−Δλr〜λr+Δλrの赤外線の受光パワーは、下記の(25)式で表すことができる。
ここで、Qrsは、第2光学系3bの第2透過波長域λr−Δλr〜λr+Δλrを通過した赤外線に対する受光パワーである。
また、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、第1受光素子221における、所定波長域λc〜λdの赤外線の受光パワーは、下記の(26)式で表すことができる。
ここで、Qgrは、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdを通過した赤外線に対する受光パワーである。
また、検知対象のガスの濃度が0〔ppm〕の場合、第2受光素子222における、所定波長域λc〜λdの赤外線の受光パワーは、下記の(27)式で表すことができる。
ここで、Qrrは、第2光学系3bの所定波長域λc〜λdを通過した赤外線に対する受光パワーである。
ガスセンサ100は、赤外線放射素子10の絶対温度をT〔K〕、とし、吸収波長をλg〔μm〕、とし、参照波長をλr〔μm〕、とし、上述のように、Qgr、Qrs及びQrrを定義し、R1=Qrr/Qrsとするとき、下記の第1条件及び第2条件を満足するように第1平均透過率及び第2平均透過率が設定されているのが好ましい。
第1条件:
これにより、ガスセンサ100は、測定精度の経時安定性を向上させることが可能となる。
第1条件及び第2条件は、本願発明者らが、ガスセンサ100の特性について種々の解析を行い、それらの結果に基づいて導きだした条件である。種々の解析を行った際の前提条件は、下記の通りである。
赤外線放射素子10の放射温度は、赤外線放射素子10の放射エネルギ分布がプランクの放射則に従うこと、第1光学系3a及び第2光学系3bそれぞれの透過率に基いて、600〜2500K程度を想定した。第1透過波長域λg−Δλg〜λg+Δλgは、赤外線式ガスセンサで実用的な3〜6μm程度の範囲内で設定した。所定波長域λc〜λdは、水蒸気による赤外線の吸収の影響が少ない10〜25μmとした。また、赤外線放射素子10の経年変化による赤外線放射素子10の抵抗値の許容変化割合を±3%と想定した。また、赤外線放射素子10は、一定の電圧もしくは一定の電流でパルス駆動されると想定した。
ガスセンサ100の変形例のガスセンサは、例えば、ガスセンサ100と基本構成が同じであり、ガスセンサ100における赤外光源1の窓材19wを、所定波長域λc〜λdの赤外線を反射する第3光学フィルタにより構成している点が相違する。第3光学フィルタは、第1透過波長域λg−Δλg〜λg+Δλg及び第2透過波長域λr−Δλr〜λr+Δλrの赤外線の反射率を低減する反射防止膜を第3基板にコーティングした無反射コートフィルタとすることができる。第3光学フィルタは、例えば、吸収波長λg及び参照波長λrの赤外線の反射率を略0%にすることが可能となり、所定波長域λc〜λdの赤外線の反射率を40〜80%とすることが可能となる。よって、変形例のガスセンサでは、第1光学系3a及び第2光学系3bの各々について、所定波長域λc〜λdの赤外線の透過率の調整が容易になる。第3基板としては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、サファイア基板などを採用することができる。
変形例のガスセンサでは、第3光学フィルタが、第1光学系3a及び第2光学系3bそれぞれの一部を構成している。よって、変形例のガスセンサでは、実施形態1のガスセンサ100に比べて、第1光学系3a及び第2光学系3bの各々について、所定波長域λc〜λdの赤外線の透過率をより低減することが可能となる。
(実施形態2)
以下では、本実施形態の赤外線式ガスセンサ101について、図11及び12に基づいて説明する。
赤外線式ガスセンサ101は、赤外線放射素子10と、第1受光素子221と、第2受光素子222と、第1光学系3aと、第2光学系3bと、駆動回路5と、信号処理部4と、を備える。赤外線放射素子10は、熱放射により赤外線を放射するように構成されている。駆動回路5は、赤外線放射素子10を駆動するように構成されている。第1光学系3aは、赤外線放射素子10と第1受光素子221との間に配置されている。第2光学系3bは、赤外線放射素子10と第2受光素子222との間に配置されている。信号処理部4は、第1受光素子221の第1出力信号と第2受光素子222の第2出力信号との比から検知対象のガスの濃度を求めるように構成されている。第1光学系3aの第1透過波長域λ01〜λ11(図12参照)は、検知対象のガスによる赤外線の吸収波長λg(図12参照)を含むように設定されている。第2光学系3bの第2透過波長域λ02〜λ12(図12参照)は、参照波長λr(図12参照)を含むように設定されている。第1透過波長域λ01〜λ11と第2透過波長域λ02〜λ12とは、互いに異なり、且つ、第2透過波長域λ02〜λ12が第1透過波長域λ01〜λ11よりも長波長側である。赤外線式ガスセンサ101は、第1光学系3aと第2光学系3bとに、第1透過波長域λ01〜λ11と第2透過波長域λ02〜λ12との両方よりも長波長側において第1光学系3aと第2光学系3bとに共通の補償用の所定波長域λc〜λd(図12参照)を設定してある。赤外線式ガスセンサ101は、第1光学系3aの所定波長域λc〜λdにおける第1平均透過率が、第2光学系3bの所定波長域λc〜λdにおける第2平均透過率よりも大きい。赤外線式ガスセンサ101は、赤外線放射素子10の放射パワーの変化による、第1透過波長域λ01〜λ11の赤外線に基づく第1受光素子221の第1出力信号成分と第2透過波長域λ02〜λ12の赤外線に基づく第2受光素子222の第2出力信号成分との比の変化を補償するように、第1平均透過率及び第2平均透過率それぞれが設定されている。よって、赤外線式ガスセンサ101は、測定精度の長期安定性を向上させることが可能となる。
赤外線式ガスセンサ100は、赤外線放射素子10をパッケージ19に収納した赤外光源1を備えているのが好ましい。また、赤外線式ガスセンサ101は、第1受光素子221と第2受光素子222とをパッケージ29に収納した赤外線検出器2aを備えているのが好ましい。
赤外線式ガスセンサ101は、赤外光源1と赤外線検出器2aとの間に配置され検知対象ガスの出入りが可能な試料セル6を備えているのが好ましい。なお、図11中の矢印付きの線は、赤外光源1から放射された赤外線の進行経路を模式的に示したものである。
試料セル6は、検知対象のガスを含む気体もしくは検知対象のガスが導入されるセルである。赤外線式ガスセンサ101は、ガスの種類によって赤外線の吸収波長が異なることを利用してガスを検知する。吸収波長は、例えば、CH4(メタン)が3.3μm、CO2(二酸化炭素)が4.3μm、CO(一酸化炭素)が4.7μm、NO(一酸化窒素)が5.3μmである。
なお、赤外線式ガスセンサ101は、実施形態1の赤外線式ガスセンサ100と基本構成が略同じなので、赤外線式ガスセンサ100と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
赤外線式ガスセンサ101(以下、「ガスセンサ101」ともいう。)において、駆動回路5は、赤外線放射素子10を一定の電圧もしくは一定の電流でパルス駆動するように構成されているのが好ましい。第1光学系3aの第1平均透過率と第2光学系3bの第2平均透過率とは、下記(1)式の条件を満たすように設定されているのが好ましい。
ここで、Qg1は、赤外線放射素子10の初期状態において、第1光学系3aの第1透過波長域λ
01〜λ
11を通過して第1受光素子22
1に入射する赤外線エネルギである。以下では、λ
01=λg−Δλg、λ
11=λg+Δλgとする。Qr1は、赤外線放射素子10の初期状態において、第2光学系3bの第2透過波長域λ
02〜λ
12を通過して第2受光素子22
2に入射する赤外線エネルギである。以下では、λ
02=λr−Δλr、λ
12=λr+Δλrとする。Qg2は、赤外線放射素子10の経時変化後の第1光学系3aの第1透過波長域λg−Δλg〜λg+Δλgを通過して第1受光素子22
1に入射する赤外線エネルギである。Qr2は、赤外線放射素子10の経時変化後の第2光学系3bの第2透過波長域λr−Δλr〜λr+Δλrを通過して第2受光素子22
2に入射する赤外線エネルギである。
(1)式は、赤外線放射素子10の抵抗値が±10%変化した場合の、ガスセンサ101の測定精度の変化が±3%以下となるように決めた条件である。これにより、ガスセンサ101は、測定精度の長期安定性を向上させることが可能となる。
ところで、第1光学系3aの第1平均透過率及び第2光学系3bの第2平均透過率は、次の考え方に基づいて設定してもよい。
ガスセンサ101は、赤外線放射素子10の絶対温度をT〔K〕、とし、吸収波長をλg〔μm〕、とし、参照波長をλr〔μm〕、とし、実施形態1で説明したように、Qgr、Qrs及びQrrを定義し、R2=Qgr/Qrsとするとき、
下記の第1条件及び第2条件を満足するように第1平均透過率及び第2平均透過率が設定されているのが好ましい。
第1条件:
これにより、ガスセンサ101は、測定精度の経時安定性を向上させることが可能となる。
第1条件及び第2条件は、本願発明者らが、ガスセンサ101の特性について種々の解析を行い、それらの結果に基づいて導きだした条件である。種々の解析を行った際の前提条件は、下記の通りである。
赤外線放射素子10の放射温度は、赤外線放射素子10の放射エネルギ分布がプランクの放射則に従うこと、第1光学系3a及び第2光学系3bそれぞれの透過率に基いて、600〜2500K程度を想定した。第1透過波長域λg−Δλg〜λg+Δλgは、赤外線式ガスセンサで実用的な3〜6μm程度の範囲内で設定した。所定波長域λc〜λdは、水蒸気による赤外線の吸収の影響が少ない10〜25μmとした。また、赤外線放射素子10の経年変化による赤外線放射素子10の抵抗値の許容変化割合を±3%と想定した。また、赤外線放射素子10は、一定の電圧もしくは一定の電流でパルス駆動されると想定した。
(実施形態3)
以下では、本実施形態の赤外線式ガスセンサ102について、図13に基づいて説明する。なお、本実施形態の赤外線式ガスセンサ102は、実施形態1の赤外線式ガスセンサ100と略同じなので、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の赤外線式ガスセンサ102(以下、「ガスセンサ102」ともいう。)は、赤外線検出器2cの構成が、ガスセンサ100における赤外線検出器2aとは相違する。
赤外線検出器2cは、パッケージ29が、キャップ29bにおける天板部29baに形成された窓孔29cと、窓孔29cを塞ぐように配置され、赤外線を透過可能な窓材29wと、を備える。窓材29wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材29wは、窓孔29cの開口サイズよりもやや大きな矩形板状に形成されている。窓材29wは、導電性材料(例えば、半田、導電性接着剤等)によりキャップ29bに固着されているのが好ましい。これにより、赤外線検出器2cは、窓材29wをキャップ29bと略同電位とすることが可能となり、外来の電磁ノイズの影響を受けにくくなるという利点がある。窓材29wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板等でもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。
赤外線検出器2cは、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32がパッケージ29内に収納され、パッケージ29の外側の外気に曝されないようになっている。これにより、赤外線検出器2cは、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32が外気に曝されるのを抑制することが可能となる。よって、赤外線検出器2cは、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32それぞれのフィルタ特性の経時変化を抑制することが可能となる。
赤外線検出器2cは、赤外線検出器2aにおける赤外線検出素子20aの代わりに、赤外線検出素子20dを備えている。赤外線検出素子20dは、パッケージ29に収納されている。なお、赤外線検出素子20dは、赤外線検出素子20aと同様の構成要素について同一の符号を付して説明を適宜省略する。
赤外線検出素子20dは、1つの焦電体基板21に、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組が2組、形成されている。
第1焦電素子22は、焦電体基板21の表面21aに形成された表面電極22aと、焦電体基板21の裏面21bに形成された裏面電極22bと、焦電体基板21において表面電極22aと裏面電極22bとで挟まれた部分22cと、を備える。第2焦電素子23は、焦電体基板21の表面21aに形成された表面電極23aと、焦電体基板21の裏面21bに形成された裏面電極23bと、焦電体基板21において表面電極23aと裏面電極23bとで挟まれた部分23cと、を備える。焦電体基板21の表面21aには、表面電極22aに電気的に接続された表面配線24aが形成されている。また、焦電体基板21の表面21aには、表面電極23aに電気的に接続された表面配線25aが形成されている。焦電体基板21の裏面21bには、裏面電極22bに電気的に接続された裏面配線24bが形成されている。焦電体基板21の裏面21bには、裏面電極23bに電気的に接続された裏面配線25bが形成されている。
赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22の表面電極22aと第2焦電素子23の表面電極23aとが表面配線24a及び表面配線25aを介して電気的に接続されている。これにより、赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22と第2焦電素子23とが逆直列に接続されている。赤外線検出素子20dは、裏面配線24bにおける裏面電極22b側とは反対側の端部が、出力用の端子部24bbを構成している。また、赤外線検出素子20dは、裏面配線25bにおける裏面電極23b側とは反対側の端部が、出力用の端子部25bbを構成している。赤外線検出素子20dは、一対の出力端子28c、28dを備えている。赤外線検出素子20dは、端子部24bbが、一方の出力端子28c(第1出力端子28c)を構成し、端子部25bbが、他方の出力端子28d(第2出力端子28d)を構成している。
焦電体基板21は、第1焦電素子22を囲む周辺部に、第1焦電素子22の外周に沿った形状のスリット26が、表面配線24a及び裏面配線24bを避けて形成され、第2焦電素子23を囲む周辺部が、焦電体基板21の部分23cの全周に亘って連続している。
第1焦電素子22及び第2焦電素子23の平面視形状は、長方形状としてある。赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22の平面サイズと第2焦電素子23の平面サイズと、を同じに設定してあるのが好ましい。要するに、赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22と第2焦電素子23と、を同じ構成としてあるのが好ましい。焦電体基板21は、隣り合う2つの第1焦電素子22それぞれの他方の第1焦電素子22側に、スリット26が形成されている。
赤外線検出器2cは、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組ごとに、第1焦電素子22と第2焦電素子23とが逆直列に接続されており、第1焦電素子22を受光用の焦電素子とし、第2焦電素子23を温度補償用の焦電素子として利用する。これにより、赤外線検出器2cは、赤外線のクロストークによる影響を軽減することが可能となり、高感度化を図ることが可能となる。赤外線検出器2cは、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組ごとに、第1焦電素子22と第2焦電素子23とを逆並列に接続して、第1焦電素子22を受光用の焦電素子とし、第2焦電素子23を温度補償用の焦電素子として利用するようにしてもよい。
受光用の焦電素子とは、検出対象の赤外線を検出するための焦電素子を意味し、検出対象の赤外線が入射される焦電素子である。温度補償用の焦電素子とは、赤外線検出素子20dの周囲温度の変化による出力信号の変動を少なくするための焦電素子を意味し、理想的には、赤外線検出素子20dの検出対象の赤外線が入射されない焦電素子である。言い換えれば、温度補償用の焦電素子とは、第1焦電素子22の出力信号から周囲温度に起因した成分を取り除くための焦電素子を意味する。このため、赤外線検出素子20dは、検出対象の赤外線が、第1焦電素子22に入射する一方で、第2焦電素子23に入射しないようにして使用する。
赤外線検出器2cは、窓材29wの垂直投影領域外に第2焦電素子23が位置するように、窓材29wの配置を規定することで、キャップ29bの一部を、赤外線を遮光する遮光部として兼用することができる。
しかしながら、赤外線検出素子20dは、赤外線が入射する入射面側に空間が存在した状態で使用されるので、赤外線のクロストーク(crosstalk)により、第2焦電素子23から信号が出力される。赤外線検出素子20dにおいて赤外線が入射する入射面とは、表面電極22aの表面及び表面電極23aの表面を意味する。赤外線のクロストークとは、第1焦電素子22へ赤外線を入射させるための窓材29wや第1光学フィルタ31等を透過した赤外線が第2焦電素子23における表面電極23aの表面へ斜め方向から入射することを意味する。言い換えれば、赤外線のクロストークとは、第1焦電素子22での検出対象の赤外線が、赤外線の入射が阻止されることを意図した第2焦電素子23における表面電極23aへ斜め方向から入射することを意味する。
赤外線検出素子20dは、検出対象の赤外線が入射することによる第1焦電素子22の温度変化や、赤外線のクロストークによる第2焦電素子23の温度変化に比べて、環境温度の変化に伴う第1焦電素子22や第2焦電素子23の温度変化が非常に緩やかである。環境温度は、パッケージ29の周囲の温度を意味する。パッケージ29の周囲の温度は、外気の温度である。
赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22への検出対象の赤外線の入射に対して、基本的に第1焦電素子22のみが暖められるので、熱容量が小さく、熱時定数が小さい。また、赤外線検出素子20dは、環境温度の上昇により、赤外線検出素子20d全体が暖められるので、熱容量が大きく、熱時定数が大きい。特に、赤外線検出素子20dは、パッケージ29に収納して使用される場合、環境温度の上昇により、パッケージ29及び赤外線検出素子20dが暖められるので、更に熱容量が大きくなり、熱時定数が大きくなる。
熱容量に関しては、環境温度の変化に対する第1焦電素子22の熱容量をH1、検出対象の赤外線の入射に対する第1焦電素子22の熱容量をH2とすると、H1>H2となる。
また、熱コンダクタンスに関しては、環境温度の変化に対する第1焦電素子22の熱コンダクタンスをG1、検出対象の赤外線の入射に対する第1焦電素子22の熱コンダクタンスをG2とすると、G2>G1となる。
また、熱時定数に関しては、熱時定数=〔熱容量〕/〔熱コンダクタンス〕であるため、環境温度の変化に対する第1焦電素子22の熱時定数をτ1、検出対象の赤外線の入射に対する第1焦電素子22の熱時定数をτ2とすると、τ1>τ2となる。
赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22の周辺部のみにスリット26が形成されていることにより、検出対象の赤外線の入射による第1焦電素子22と第2焦電素子23との熱時定数の差に基づく感度差を生じさせることが可能となる。赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22と第2焦電素子23とを逆直列に接続し、第1焦電素子22、第2焦電素子23をそれぞれ、受光用の焦電素子、温度補償用の焦電素子として使用すれば、赤外線のクロストークによる影響を軽減することが可能となる。これにより、赤外線検出素子20dは、高感度化を図ることが可能となる。
赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22と第2焦電素子23との組を2組、備えており、第1焦電素子22と第2焦電素子23との各組それぞれを1つのチャネル(channel)とすることができる。言い換えれば、赤外線検出素子20dは、2つのチャネルをもつ構成である。そして、赤外線検出素子20dは、各チャネルが、第1焦電素子22、第2焦電素子23、表面配線24a、裏面配線24b、表面配線25a及び裏面配線25bを備える検出エレメントDE(図14(a)参照)により構成されている。以下では、説明の便宜上、図14(a)における左側の検出エレメントDEを、第1検出エレメントDE1と称し。図14(a)における右側の検出エレメントDEを、第2検出エレメントDE2と称する。
第1検出エレメントDE1は、第1焦電素子22が第1受光素子221を構成し、第2焦電素子23が第1温度補償素子231を構成する。第2検出エレメントDE2は、第1焦電素子22が第2受光素子222を構成し、第2焦電素子23が第2温度補償素子232を構成する。よって、赤外線検出素子20dは、第1受光素子221と、第2受光素子222と、を備えている。
また、第1光学フィルタ31は、パッケージ29内で、窓材29wと第1受光素子221との間に配置されている。第2光学フィルタ32は、パッケージ29内で、窓材29wと第2受光素子222との間に配置されている。要するに、赤外線検出器2cは、第1光学フィルタ31が、第1受光素子221の前方に配置され、第2光学フィルタ32が、第2受光素子222の前方に配置されている。
赤外線検出素子20dは、隣り合う2つの第1焦電素子22それぞれの他方の第1焦電素子22側に、スリット26が形成されているので、隣り合う2つの第1焦電素子22間での熱伝達を抑制することが可能となる。これにより、赤外線検出素子20dは、第1検出エレメントDE1及び第2検出エレメントDE2それぞれの感度の低下を抑制することが可能となる。
赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22の周辺部のみにスリット26が形成されていることにより、検出対象の赤外線の入射による第1焦電素子22と第2焦電素子23との熱時定数の差に基づく感度差を生じさせることが可能となる。よって、赤外線検出素子20dは、第1焦電素子22と第2焦電素子23とを逆直列に接続し、第1焦電素子22、第2焦電素子23をそれぞれ、受光用、温度補償用の焦電素子として使用することで、赤外線のクロストークによる影響を軽減することが可能となる。これにより、赤外線検出素子20dは、高感度化を図ることが可能となる。
第1IC素子41は、第1検出エレメントDE1の第1出力信号を信号処理する。第2IC素子42は、第2検出エレメントDE2の第2出力信号を信号処理する。
赤外線検出器2cは、基板43の厚み方向の一面側に赤外線検出素子20dが配置され、基板43の厚み方向の他面側に第1IC素子41及び第2IC素子42が配置されているのが好ましい。これにより、赤外線検出器2cは、基板43の厚み方向の一面側において赤外線検出素子20dの側方に第1IC素子41及び第2IC素子42が配置されている場合に比べて、小型化を図ることが可能となる。
第1IC素子41及び第2IC素子42の各々は、ベアチップであり、基板43の他面側に設けた凹部43yの内底面に、ダイボンド材により固定されている。ダイボンド材としては、例えば、エポキシ樹脂を用いることができる。
信号処理回路45は、第1IC素子41の出力信号と第2IC素子42の出力信号との比に基づいて検知対象のガスの濃度を求め、この濃度に相当する出力信号を発生するように構成されている。
本実施形態のガスセンサ102は、第1光学系3a及び第2光学系3bを、実施形態1のガスセンサ100に同様と設計してあるが、これに限らず、実施形態2のガスセンサ101と同様に設計するようにしてもよい。
ただし、ガスセンサ102における第1光学系3aは、第1光学フィルタ31と、赤外光源1の窓孔19rと、赤外光源1の窓材19wと、試料セル6の反射面66と、赤外線検出器2aの窓孔29cと、の他に、赤外線検出器2cの窓材29wを含む。また、ガスセンサ102における第2光学系3bは、第2光学フィルタ32と、赤外光源1の窓孔19rと、赤外光源1の窓材19wと、試料セル6の反射面66と、赤外線検出器2aの窓孔29cと、の他に、赤外線検出器2cの窓材29wを含む。
図15(a)及び図15(b)は、図7(a)及び図7(b)に示した赤外線放射素子10の変形例の赤外線放射素子10bを示す。なお、変形例の赤外線放射素子10bについては、赤外線放射素子10と同様の構成要素に同一の符号を付して説明を適宜省略する。また、図15(a)では、保護層14の図示を省略してある。
また、図15(a)では、半導体基板11の表面111における開口部11aの、薄膜部12の第2面12dへの垂直投影領域の第1外周線11aaを二点鎖線で示してある。また、図15(a)では、半導体基板11の裏面112における開口部11aの、薄膜部12の第2面12dへの垂直投影領域の第2外周線11abを二点鎖線で示してある。赤外線放射素子10bは、開口部11aの開口形状が矩形状であり、第1外周線11aa、第2外周線11abそれぞれが互に大きさの異なる矩形状となっている。赤外線放射素子10bは、半導体基板11の表面111における開口部11aの開口面積に比べて、半導体基板11の裏面112における開口部11aの開口面積が大きくなっている。このため、第2外周線11abが第1外周線11aaよりも大きい。半導体基板11の開口部11aは、薄膜部12から離れるにつれて開口面積が徐々に大きくなる形状に形成されている。
赤外線放射層13は、平面視形状が長方形状である。赤外線放射層13は、一対の端子部16、16の並ぶ方向に長手方向が一致するように配置されている。赤外線放射層13は、長手方向の長さが、赤外線放射層13の長手方向に沿った方向における第1外周線11aaの辺の長さよりも長い。また、赤外線放射層13は、短手方向の長さが、赤外線放射層13の短手方向に沿った方向における第1外周線11aaの辺の長さよりも短い。
変形例の赤外線放射素子10bは、一対の端子部16、16の並ぶ方向において赤外線放射層13の両端部13b、13bそれぞれが、第1外周線11aaの内側と外側とに跨っている。
また、赤外線放射素子10bは、赤外線放射層13における両端部13b、13bの間の中央部13aが薄膜部12の第2面12d上に直接形成されている。赤外線放射層13の中央部13aは、第1外周線11aaの内側に位置している。また、赤外線放射素子10bは、両端部13b、13bと薄膜部12との間に、第1下地層17と、第2下地層18と、の積層膜を介在させてある。よって、赤外線放射素子10bは、第1下地層17及び第2下地層18も、第1外周線11aaの内側と外側とに跨っている。第2下地層18は、半導体基板11よりも融点が高く且つ導電性を有する材料により形成されているのが好ましい。第1下地層17は、赤外線放射層13と同じ材料により形成されているのが好ましい。赤外線放射素子10bは、互いに同じ材料により形成された第1下地層17と赤外線放射層13の端部13bとで、第2下地層18が挟まれていることにより、第2下地層18の内部の応力を低減させることが可能となる。第1下地層17の厚さは、赤外線放射層13の端部13bと同じ厚さが好ましい。第1下地層17及び第2下地層18は、長方形状に形成されている。
赤外線放射素子10bは、例えば、半導体基板11の材料をSi、赤外線放射層13の材料をTaNとした場合、第1下地層17の材料をTaN、第2下地層18の材料をTaとすることができる。また、赤外線放射素子10bは、各配線15及び各端子部16の材料としてAl−Siを採用することができる。
また、赤外線放射素子10bは、配線15が、保護層14に形成された接続孔14bを通して赤外線放射層13の端部13b上に形成され、赤外線放射層13と電気的に接続されている。また、赤外線放射素子10bは、端子部16が、保護層14に形成された孔14cを通して薄膜部12上に形成されている。保護層14の孔14cは、第2外周線11abよりも外側に位置している。これにより、赤外線放射素子10bは、端子部16に起因する応力が赤外線放射層13に発生するのを抑制することが可能となる。また、赤外線放射素子10bは、半導体基板11を、端子部16等で発生する熱を外部に放熱させるためのヒートシンクとして利用することが可能となる。なお、端子部16は、パッド電極を構成する。
赤外線放射素子10bは、半導体基板11の厚さを525μm、シリコン酸化膜12aの厚さを0.2μm、シリコン窒化膜12bの厚さを0.2μm、赤外線放射層13の厚さを0.03μmとしてある。また、赤外線放射素子10bは、第1下地層17の厚さを0.03μm、第2下地層18の厚さを0.07μm、保護層14の厚さを0.3μm、端子部16の厚さを1.5μm、としてある。赤外線放射素子10bの各構成要素それぞれの数値は一例であり、特に限定するものではない。
赤外線放射素子10bは、薄膜部12がシリコン酸化膜12aとシリコン窒化膜12bとの積層膜で構成されている。赤外線放射素子10bは、シリコン酸化膜12aとシリコン窒化膜12bとで互いの内部応力の向きが逆であり、シリコン窒化膜12bが、薄膜部12をシリコン酸化膜12aのみにより構成する場合に比べて赤外線放射層13の形状を安定化させる形状安定化層として機能する。
なお、赤外光源1は、赤外線放射素子10とパッケージ19とを備えた構成に限らず、例えば、ハロゲンランプ等を採用することもできる。この場合、ハロゲンランプのフィラメントが赤外線放射素子を構成する。
上述の実施形態1〜3等において説明した各図は、模式的なものであり、各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際のものの寸法比を反映しているとは限らない。また、実施形態1〜3等に記載した材料、数値等は、好ましいものを例示しているだけであり、それに限定するものではない。更に、本願発明は、その技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、構成に適宜変更を加えることが可能である。