(実施形態1)
以下では、本実施形態のガス測定装置100について図1に基づいて説明する。
ガス測定装置100は、光源1と、第1受光素子2aと、第2受光素子2bと、光源1と第1受光素子2aとの間に設けられた第1光学フィルタ31と、光源1と第2受光素子2bとの間に設けられた第2光学フィルタ32と、を備える。また、ガス測定装置100は、光源1に所定パルス幅の駆動電圧を供給する駆動回路5と、駆動回路5を制御する制御部51と、を備える。また、ガス測定装置100は、第1受光素子2aの第1出力信号と第2受光素子2bの第2出力信号とに基づいて測定対象のガスの濃度を求める信号処理部4を備える。
光源1は、熱放射により赤外線を放射する発熱体を有する赤外光源である。
第1光学フィルタ31は、測定対象のガスの吸収波長の赤外線を透過するように第1透過波長域が設定されている。
第2光学フィルタ32は、測定対象のガスに吸収されない参照波長の赤外線を透過し前記第1透過波長域に重複しない第2透過波長域が設定されている。
信号処理部4は、アナログ信号処理部40と、A/D変換回路45aと、濃度演算部45bと、を備える。アナログ信号処理部40は、第1出力信号、第2出力信号それぞれを増幅するように構成されている。A/D変換回路45aは、アナログ信号処理部40にて増幅された第1出力信号、第2出力信号それぞれをアナログ−ディジタル変換して出力するように構成されている。濃度演算部45bは、A/D変換回路45aにてそれぞれディジタル化された第1出力信号と第2出力信号との比に基づいて測定対象のガスの濃度を演算するように構成されている。
制御部51には、光源1の抵抗値を設定する設定部52が接続されている。制御部51は、設定部52により設定された抵抗値に基づいて、駆動回路5から光源1への投入電力が規定値となるように所定パルス幅を決定するように構成されている。駆動回路5は、制御部51にて決定された所定パルス幅の駆動電圧を光源1へ供給するように構成されている。これにより、ガス測定装置100は、光源1の製造ばらつき等に起因して光源1の抵抗値がばらついていても、製造時に、予め測定した光源1の抵抗の測定値を設定部52により抵抗値として設定することにより、光源1への投入電力のばらつきを抑制することが可能となり、測定精度の高精度化を図ることが可能となる。
ガス測定装置100の各構成要素については、以下により詳細に説明する。
図1(a)に示した構成のガス測定装置100は、測定対象のガス(以下、「検知対象のガス」ともいう。)の濃度を測定する赤外線式ガスセンサ(以下、「ガスセンサ」という。)である。なお、図1(b)中の矢印付きの線は、ガスセンサにおいて光源1から放射された赤外線の進行経路を模式的に示したものである。
ガスセンサは、図1(b)に示すように、光源1と各受光素子2a、2bとの間に配置された試料セル6を備えている。試料セル6は、検知対象のガスを含む気体もしくは検知対象のガスが導入されるセルである。ガスセンサでは、検知対象のガスの種類によって赤外線の吸収波長が異なるので、ガスの識別性を高めることが可能となる。吸収波長は、例えば、CH4(メタン)が3.3μm、CO2(二酸化炭素)が4.3μm、CO(一酸化炭素)が4.7μm、NO(一酸化窒素)が5.3μmである。このため、ガス測定装置100は、ガスセンサの場合、例えば、第1透過波長域の中心波長を、検知対象のガスの吸収波長に設定し、第2透過波長域の中心波長を、検知対象のガス及び他のガス(H2O、CH4、CO、NO等)での吸収のない波長に設定すればよい。また、ガス測定装置100は、第1透過波長域の中心波長と第2透過波長域の中心波長との差が小さいほうが好ましい。これにより、ガス測定装置100は、検知対象のガスが存在しないときに第1光学フィルタ31を透過する赤外線の光量と第2光学フィルタ32を透過する赤外線の光量との差を少なくすることが可能となる。ガス測定装置100は、検知対象のガスが例えばCO2の場合、第1透過波長域の中心波長を4.3μmに設定し、第2透過波長域の中心波長を例えば3.9μmに設定することができる。
光源1は、熱放射により赤外線を放射する発熱体を有する赤外光源であるから、赤外発光ダイオードに比べて広い波長域の赤外線を放射することができる。光源1は、第1透過波長域の中心波長及び第2透過波長域の中心波長を含む広帯域の赤外線を放射することができる。要するに、光源1は、第1光学フィルタ31の透過波長域と第2光学フィルタ32の透過波長域とを包含する波長域の赤外線を放射することができる。
光源1としては、例えば、赤外線を放射する赤外線放射素子10と、この赤外線放射素子10を収納したパッケージ19と、を備えた赤外光源を用いることができる。
パッケージ19としては、例えば、赤外線検出素子10の前方に窓孔19rを有し、窓材19wにより窓孔19rが塞がれている構成のものを用いることができる。
赤外線放射素子10としては、例えば、図2に示す構成のものを用いることができる。図2に示した構成の赤外線放射素子10は、MEMS(micro electro mechanical systems)の製造技術等を利用して製造することができる。この赤外線放射素子10は、基板11と、基板11の一表面側に設けられた薄膜部12と、基板11の厚み方向に貫通した孔11aと、薄膜部12における基板11側とは反対側に設けられた赤外線放射層13と、を備えている。また、赤外線放射素子10は、保護層14と、赤外線放射層13に電気的に接続された複数のパッド16と、を備えている。保護層14は、薄膜部12における基板11側とは反対側で赤外線放射層13を覆うように形成されている。保護層14は、赤外線放射層13から放射される赤外線を透過可能な材料により形成されている。赤外線放射層13と各パッド16とは、配線15を介して電気的に接続されている。
赤外線放射素子10は、赤外線放射層13への通電により赤外線放射層13が発熱し、赤外線放射層13から熱放射により赤外線が放射される。赤外線放射素子10の赤外線放射層13は、赤外光源における発熱体を構成している。
基板11としては、単結晶のシリコン基板を採用している。基板11は、単結晶のシリコン基板に限らず、例えば、多結晶のシリコン基板等を採用することができる。
薄膜部12は、例えば、基板11側のシリコン酸化膜12aと、シリコン酸化膜12aにおける基板11側とは反対側に積層されたシリコン窒化膜12bとの積層膜により構成することができる。薄膜部12は、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜の単層構造でもよい。
赤外線放射層13の材料としては、窒化タンタルを採用している。つまり、赤外線放射層13は、窒化タンタル層からなる。赤外線放射層13の材料は、窒化タンタルに限らず、例えば、窒化チタン、ニッケルクロム、タングステン、チタン、トリウム、白金、ジルコニウム、クロム、バナジウム、ロジウム、ハフニウム、ルテニウム、ボロン、イリジウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウム、ニッケル、ホルミウム、コバルト、エルビウム、イットリウム、鉄、スカンジウム、ツリウム、パラジウム、ルテチウムを採用してもよい。また、赤外線放射層13の材料としては、導電性ポリシリコンを採用してもよい。つまり、赤外線放射層13は、導電性ポリシリコン層により構成してもよい。赤外線放射層13について、高温で化学的に安定であり、且つ、シート抵抗の設計容易性という観点からは、窒化タンタル層、窒化チタン層、導電性ポリシリコン層等を採用することが好ましい。窒化タンタル層及び窒化チタン層は、その組成を変えることにより、シート抵抗を変えることが可能である。導電性ポリシリコン層は、不純物濃度を変えることにより、シート抵抗を変えることが可能である。なお、赤外線放射層13の材料について、基板11と赤外線放射層13との線膨張係数差に伴う熱応力に起因して赤外線放射層13が破壊されるのを防止するという観点からは、基板11の材料との線膨張係数差が小さい材料が好ましい。
保護層14は、シリコン窒化膜により構成してある。保護層14は、シリコン窒化膜に限らず、例えば、シリコン酸化膜により構成してもよいし、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層構造を有していてもよい。保護層14は、耐湿性等の信頼性を確保するためのパッシベーション膜である。保護層14は、赤外線放射層13への通電時に赤外線放射層13から放射される所望の波長域の赤外線に対する透過率が高いほうが好ましいが、透過率が100%であることを必須とするものではない。
赤外線放射層13の厚さは、赤外線放射層13の低熱容量化を図るという観点から0.2μm以下とするのが好ましい。
薄膜部12の厚さと赤外線放射層13の厚さと保護層14の厚さとの合計厚さは、薄膜部12と赤外線放射層13と保護層14との積層構造の低熱容量化を図るという観点から、例えば、0.1μm〜1μm程度の範囲で設定することが好ましく、0.7μm以下とするのがより好ましい。
配線15の材料としては、アルミニウム合金(Al−Si)を採用している。配線15の材料は、特に限定するものではなく、例えば、金、銅等を採用してもよい。また、配線15は、赤外線放射層13と接する部分が赤外線放射層13とオーミック接触が可能な材料であればよく、単層構造に限らず、多層構造でもよい。例えば、配線15は、その厚さ方向において、赤外線放射層13側から順に、第1層、第2層、第3層が積層された3層構造として、赤外線放射層13に接する第1層の材料を高融点金属(例えば、クロム等)とし、第2層の材料をニッケルとし、第3層の材料を金としてもよい。
パッド16の材料としては、アルミニウム合金(Al−Si)を採用している。パッド16の材料は、配線15と同じ材料を採用しているが、パッド16の材料と異なる材料でもよい。
赤外線放射素子10は、駆動回路5から一対のパッド16間に与える入力電力を調整することにより、赤外線放射層13に発生するジュール熱を変化させることができ、赤外線放射層13の温度を変化させることができる。よって、赤外線放射素子10は、赤外線放射層13の温度を変化させることで赤外線放射層13から放射される赤外線のピーク波長を変化させることができる。
パッケージ19としては、例えば、キャンパッケージを採用することができる。キャンパッケージは、赤外線放射素子10が実装される台座19aと、赤外線放射素子10を覆うように台座19aに固着されるキャップ19bと、を備え、キャップ19bにおける赤外線放射素子10の前方に窓孔19rが形成された構成とすることができる。なお、台座19aには、赤外線放射素子10への給電用の端子として、2本のリードピン19dが厚み方向に貫通して設けられている。赤外線放射素子10のパッド16とリードピン19dとは、金属細線(図示せず)を介して電気的に接続されている。パッケージ19としては、キャンパッケージに限らず、例えば、セラミックパッケージ等を採用してもよい。
窓材19wは、赤外線を透過する機能を有する。窓材19wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材19wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板等でもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、窓材19wとしては、レンズを採用することもできる。レンズは、半導体レンズ(例えば、シリコンレンズ等)により構成することができる。
半導体レンズの製造にあたっては、例えば、半導体基板(例えば、シリコン基板等)を準備する。その後には、所望のレンズ形状に応じて半導体基板との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成する。その後には、半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成する。その後には、当該多孔質部を除去することにより半導体レンズを形成する。なお、上述の半導体レンズからなるレンズは、例えば、半導体基板として半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)を用い、多数のレンズを形成した後に、ダイシング等によって個々のレンズに分離すればよい。
レンズは、レンズ部と当該レンズ部を全周に亘って囲むフランジ部とが連続一体に形成されている半導体レンズが好ましい。これにより、光源1は、厚みが略一定で厚み方向の両面の各々が平面状であるフランジ部を備えることにより、レンズの光軸方向におけるレンズと赤外線放射素子10との距離の精度を高めることが可能となる。
光源1の抵抗の測定値とは、室温(例えば、25℃)下において光源1に電圧を印加したときに光源1に流れる電流を測定し、オームの法則から求めた値である。光源1の抵抗は、ガス測定装置100の製造段階或いはガス測定装置100の製造前に、予め測定すればよい。光源1の抵抗の測定値は、赤外線放射素子10の赤外線放射層13の抵抗と、パッケージ19の端子と赤外線放射層13との間の電路の抵抗と、の合成抵抗の値である。光源1は、赤外線放射層13で発生するジュール熱を大きくし、赤外線放射層13から効率良く赤外線を放射させるという観点から、赤外線放射層13の抵抗値が、電路の抵抗値よりも十分に大きいのが好ましい。言い換えれば、光源1は、光源1の抵抗の測定値が、赤外線放射層13の抵抗値とみなせる程度に電路の抵抗値が小さいのが好ましい。
光源1は、赤外線放射素子10とパッケージ19とを備えた構成に限らず、例えば、ハロゲンランプ等を採用することもできる。
第1受光素子2aは、第1光学フィルタ31における光源1側とは反対側に配置されている。第2受光素子2bは、第2光学フィルタ32における光源1側とは反対側に配置されている。第1受光素子2aと第2受光素子2bとは、同じ構成であるのが好ましい。これにより、ガス測定装置100は、第1受光素子2aの特性と第2受光素子2bの特性とを略同じとすることが可能となる。
第1受光素子2aは、第1光学フィルタ31を透過した赤外線を受光して光電変換した第1出力信号を発生する。
第2受光素子2bは、第2光学フィルタ32を透過した赤外線を受光して光電変換した第2出力信号を発生する。
第1受光素子2aと第2受光素子2bとは、同一平面上で並んで配置されているのが好ましい。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、例えば、図3(a)〜(c)に示すように、1つの受光部2rと、受光部2rに電気的に接続された2つの出力端子2j、2kと、を備えた焦電素子を用いることができる。
受光部2rは、焦電体基板2gの表側、裏側それぞれに形成され互いに対向する第1電極2h、第2電極2iと、焦電体基板2gにおいて第1電極2hと第2電極2iとに挟まれた部分2ggと、を備えている。受光部2rは、第1電極2hを覆う赤外線吸収層26を備えているのが好ましい。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、焦電体基板2gに、平面視において受光部2rの一部を除いて受光部2rを取り囲む孔2sが形成されている。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、焦電体基板2gの表側、裏側それぞれに形成され第1電極2h、第2電極2iそれぞれに電気的に接続された第1配線2m、第2配線2nを備えている。孔2sは、第1配線2m及び第2配線2nを避けた位置に形成されている。また、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、第1出力端子2jと、第2出力端子2kと、を備えている。第1出力端子2jは、第1配線2mを介して第1電極2hに電気的に接続されている。第2出力端子2kは、第2配線2nを介して第2電極2iに電気的に接続されている。
焦電体基板2gは、焦電性を有する基板である。焦電体基板2gの自発分極の方向は、この焦電体基板2gの厚み方向に沿った一方向であり、図3(b)の上方向である。
焦電体基板2gは、例えば、単結晶のLiTaO3基板を採用することができる。焦電体基板2gの材料としては、LiTaO3を採用しているが、これに限らず、例えば、LiNbO3、PbTiO3、PZT(:Pb(Zr,Ti)O3)、PZT−PMN(:Pb(Zr,Ti)O3−Pb(Mn,Nb)O3)等を採用してもよい。
焦電体基板2gは、平面視形状を矩形状としてある。焦電体基板2gの平面視形状は、特に限定するものではない。
焦電体基板2gの厚さは、50μmに設定してあるが、この値に限定するものではない。焦電体基板2gの厚さは、例えば、薄いほうが第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の感度を向上させる観点から好ましい。このため、焦電体基板2gの厚さは、30μm〜150μm程度の範囲で設定するのが好ましい。焦電体基板2gの厚さは、30μmよりも薄いと脆弱性による破損の懸念があり、150μmよりも厚いと感度が低下してしまう懸念がある。
受光部2rの平面視形状は、長方形状としてある。受光部2rは、第1電極2hと、この第1電極2hに対向する第2電極2iとが同じ形状であり、第2電極2iが、第1電極2hの投影領域に一致するように配置されている。受光部2rは、第1電極2hと第2電極2iとで大きさが異なってもよい。
受光部2rの平面視形状は、長方形状に限らず、例えば、正方形状や、円形状、半円形状、楕円形状、半楕円形状、矩形以外の多角形状等でもよい。
第1電極2h及び第2電極2iは、導電性を有し且つ検出対象の赤外線を吸収可能な導電膜により構成されている。この導電膜は、Ni膜からなる。導電膜は、Ni膜に限らず、例えば、NiCr膜や金黒膜等でもよい。この導電膜は、膜厚が厚いほうが、電気抵抗が小さくなる一方、膜厚が薄いほうが、赤外線の吸収量を高めることが可能となる。このため、受光部2rは、第1電極2hの膜厚を第2電極2iの膜厚よりも薄くしてもよい。受光部2rは、第1電極2hの膜厚と第2電極2iの膜厚とを同じとしてもよい。
第1電極2hの膜厚は、30nmに設定してあるが、この値に限定するものではない。第1電極2hの膜厚は、100nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましい。第1電極2hは、例えば、蒸着法やスパッタ法等により形成することができる。
第2電極2iの膜厚は、100nmに設定してあるが、この値に限定するものではない。第2電極2iの膜厚は、40nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。第2電極2iは、例えば、蒸着法やスパッタ法等により形成することができる。
受光部2rは、第1電極2hの膜厚と第2電極2iの膜厚とを同じとする場合、第1電極2h及び第2電極2iの膜厚を、例えば、40nm〜100nm程度の範囲で設定すればよい。
第1電極2hは、シート抵抗の値によって赤外線吸収率が変化する。第1電極2hの赤外線吸収率は、例えば、20%〜50%の範囲で設定するのが好ましい。第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々において赤外線吸収層26を設けない場合、第1電極2hの赤外線吸収率の理論的な最大値は、50%である。第1電極2hの赤外線吸収率が50%となる第1電極2hのシート抵抗は、189Ω/□(189Ω/sq.)である。つまり、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、第1電極2hのシート抵抗を189Ω/□とすれば、第1電極2hの赤外線吸収率を最大とすることが可能となる。したがって、第1電極2hにおいて例えば40%以上の赤外線吸収率を確保するためには、第1電極2hのシート抵抗を73〜493Ω/□の範囲で設定すればよい。
第1電極2hの外周縁は、この第1電極2hを囲む孔2sの第1電極2h側の開孔縁から離れているのが好ましい。これにより、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、高感度化を図りながらも、第1電極2hと第2電極2iとの短絡をより確実に抑制することが可能となる。
また、第2電極2iの外周縁は、この第2電極2iを囲む孔2sの第2電極2i側の開孔縁から離れているのが好ましい。これにより、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、第1電極2hと第2電極2iとの短絡をより確実に抑制することが可能となり、電気的安定性の低下を抑制することが可能となる。
赤外線吸収層26は、焦電体基板2gの表側で、平面視において孔2sで囲んだ領域全体を覆うように形成されているのが好ましい。赤外線吸収層26は、樹脂中に、カーボン系微粉末、金属系微粉末、金属酸化物系微粉末の群から選択される少なくとも1種の導電性微粉末が分散された樹脂層からなる。
赤外線吸収層26は、上述のように、樹脂中に、カーボン系微粉末、金属系微粉末、金属酸化物系微粉末の群から選択される少なくとも1種の導電性微粉末が分散された樹脂層により構成される。導電性微粉末は、導電性を有する微粉末である。赤外線吸収層26における導電性微粉末の体積濃度は、17%に設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。導電性微粉末の体積濃度は、例えば、1〜30%程度の範囲内で設定することができる。これにより、赤外線吸収層26は、導電性を有するが、第1電極2hに比べて比抵抗が大きくなる。
赤外線吸収層26は、樹脂に導電性微粉末を分散させ有機溶剤を混合させたペースト(印刷インク)を、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等により印刷してから、ベークすることで硬化させることによって形成することができる。赤外線吸収層26の形成にあたっては、例えば、ペーストにおける導電性微粉末の組成を8.5%とすれば、赤外線吸収層26における導電性微粉末の体積濃度を17%程度とすることが可能である。
赤外線吸収層26は、より広い温度範囲で化学的及び物理的に安定していることが望ましい。このため、赤外線吸収層26の樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、これらの熱硬化性樹脂のうち、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々における検出対象の赤外線の吸収率がより高い熱硬化性樹脂を採用することが好ましい。これにより、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、赤外線吸収層26の厚みを薄くすることが可能となり、感度をより高めることが可能となる。赤外線吸収層26の樹脂は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々における検出対象の赤外線に対する吸収率が30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。
検出対象の赤外線の波長が3〜8μm、特に3〜5μmの範囲内にある場合、赤外線吸収層26の樹脂としては、水酸基を含む樹脂が好ましい。水酸基を含む樹脂は、多分子間で水素結合しているため、3μm付近から長波長側にかけて赤外線を吸収する特性を有している。この種の樹脂としては、フェノール系樹脂が挙げられる。フェノール系樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、シクロペンタジエン、フェノール重合体、ナフタレン型フェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
カーボン系微粉末としては、固体炭素材料で赤外線吸収率が高く、樹脂中に分散できる微粉末が適している。この種のカーボン系微粉末としては、例えば、非晶質(微結晶)炭素として分類される、カーボンブラック、カーボンファイバー、黒鉛等や、ナノカーボンとして分類される、フラーレン、ナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。特に、カーボンブラックは、粒子径が小さく、化学的にも安定しており、好ましい。
金属系微粉末に関しては、粒子径が0.1μm程度以下の金属系微粉末が、赤外線を吸収する性質があり、幅広い赤外波長域で吸収率が高いという特徴を有している。そして、この特徴は、金属の種類に依存しない。このため、金属系微粉末の材料としては、化学的に安定なAu、Pt、Ag等の貴金属や、耐熱性の高いW、Mo等の高融点金属や、微粉末の作りやすいZn、Mg、Cd、Al、Cu、Fe、Cr、Ni、Co、Snや、それらの2種以上の合金等、が挙げられる。
金属酸化物系微粉末の材料としては、例えば、ITO(Indium TinOxide)、AZO(AlドープZnO)、GZO(GaドープZnO)等が挙げられる。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、赤外線吸収層26を設けたことにより、赤外線吸収率を高めることが可能となり、且つ、赤外線吸収層26が第1電極2hとともに焦電体基板2gの自発分極で発生した電荷を集める電極として機能するため、焦電電流の検出領域を大きくすることが可能となる。よって、第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、赤外線吸収層26を設けていない場合に比べて、高感度化を図ることが可能となる。
焦電体基板2gの表側の第1配線2m及び第1出力端子2jは、材料、厚みそれぞれを第1電極2hと同じとしてあるのが好ましい。これにより、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の形成にあたっては、第1配線2m及び第1出力端子2jを第1電極2hと同時に形成することが可能となり、且つ、第1電極2hと第1配線2mと第1出力端子2jとを連続膜として形成することが可能となる。
焦電体基板2gの裏側の第2配線2n及び第2出力端子2kは、材料、厚みそれぞれを第2電極2iと同じとしてあるのが好ましい。これにより、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の形成にあたっては、第2配線2n及び第2出力端子2kを第2電極2iと同時に形成することが可能となり、且つ、第2電極2iと第2配線2nと第2出力端子2kとを連続膜として形成することが可能となる。
ガス測定装置100は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとが、1枚の焦電体基板2gに形成されたものとすることができる。これにより、ガス測定装置100は、容易に、第1受光素子2aの特性と第2受光素子2bの特性とを略同じとすることが可能となる。第1受光素子2aと第2受光素子2bとが1枚の焦電体基板2gに形成された赤外線検出素子20は、平面視において受光部2rを取り囲み厚み方向に貫通する孔2sが形成されているのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20は、受光部2r同士を熱絶縁することが可能となり、また、突発的なノイズであるポップコーンノイズを低減することが可能となる。
赤外線検出素子20は、焦電体基板2gにおいて2つの受光部2rの並ぶ方向の両端部の各々に、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが設けられている。また、赤外線検出素子20は、2つの受光部2rの並ぶ方向に直交し且つ焦電体基板2gの中心を通る平面を対称面として面対称となるように、各受光部2r、各第1配線2m、各第2配線2n、各第1出力端子2j、各第2出力端子2k及び各孔2sが設けられている。
赤外線検出素子20は、受光部2rの第1電極2hに電気的に接続された第1出力端子2jと、この受光部2rの第2電極2iに電気的に接続された第2出力端子2kとが、焦電体基板2gの厚み方向において重ならないように配置されている。これにより、赤外線検出素子20は、各受光素子2a、2bの各々において、第1出力端子2jと第2出力端子2kとの間の寄生容量を低減することが可能となる。また、赤外線検出素子20は、第1出力端子2jと第2出力端子2kとの間の沿面距離を長くすることが可能となる。
ガス測定装置100は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとが、別々の焦電体基板2gに形成されたものでもよい。この場合、第1受光素子2aと第2受光素子2bとは、製造時に同じ焦電体ウェハに形成され、この焦電体ウェハから切り出されたもの同士を用いるのが好ましい。焦電体ウェハは、焦電体基板2gを多数個取りすることが可能なウェハである。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、焦電素子に限らず、他の熱型の赤外線検出素子(例えば、サーモパイル、抵抗ボロメータ等)でもよい。第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、量子型の赤外線検出素子でもよい。要するに、第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、熱型の赤外線検出素子、量子型の赤外線検出素子等の光電変換素子であればよい。
ガス測定装置100は、赤外線検出素子20を備えた赤外線受光ユニット2(以下、「受光ユニット2」という。)を備えている。要するに、受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bを備えている。
受光ユニット2は、図4〜6に示すように、第1受光素子2a及び第2受光素子2bが収納されたパッケージ29を備えている。なお、図7は、受光ユニット2の要部の概略斜視図である。
第1受光素子2aと第2受光素子2bとは、光源1の光軸に直交する一平面上において、この光軸と当該一平面との交点を中心として点対称となるように配置されているのが好ましい。
受光ユニット2は、赤外線検出素子20と、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32と、基板43と、パッケージ29とを備えている。
赤外線検出素子20は、上述のように、第1受光素子2a及び第2受光素子2bを有する。第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32は、第1受光素子2a、第2受光素子2bそれぞれの受光面(図6(a)における上面)の前方に配置されている。基板43は、赤外線検出素子20が実装される。パッケージ29は、赤外線検出素子20、第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32及び基板43を収納する。
パッケージ29は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の光入射面(図6(a)、図10(a)、(b)における上面)側にある窓孔29cと、窓孔29cを塞ぎ赤外線を透過可能な窓材29wと、を備える。これにより、受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32がパッケージ29内に収納され、外気に曝されるのを抑制することが可能となる。よって、受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32それぞれのフィルタ特性(分光特性)の経時変化を抑制することが可能となる。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、上述のように、1つの受光部2rと、受光部2rに電気的に接続された第1出力端子2j及び第2出力端子2kと、を備えた焦電素子である。
受光ユニット2は、赤外線検出素子20が、基板43に実装されている。第1受光素子2aと第2受光素子2bとが別々のチップの場合には、第1受光素子2a及び第2受光素子2bを基板43に実装すればよい。
基板43は、電気絶縁性を有する絶縁性基材43aと、2つの第1リード端子43jと、2つの第2リード端子43kと、を備えている。受光ユニット2は、絶縁性基材43aの厚み方向と赤外線検出素子20の厚み方向とが一致するように、赤外線検出素子20が基板43に実装されている。
基板43は、例えば、MID(Molded InterconnectDevices)基板、部品内蔵基板、セラミック基板、プリント基板等により構成することができる。MID基板は、樹脂成形品からなる絶縁性基材43aの表面に第1リード端子43j、第2リード端子43kや、その他の配線を適宜形成すればよい。
受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の第1出力端子2jと基板43の各第1リード端子43jとが、導電性接着剤からなる第1接合部7j(図8(a)、(b)参照)を介して電気的に接続される。また、受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の第2出力端子2kと、基板43の各第2リード端子43kとが、導電性接着剤からなる第2接合部7k(図8(c)参照)を介して電気的に接続される。導電性接着剤は、例えば、AgまたはAu粉末を含んだエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂の接着剤である。導電性接着剤としては、導電ペーストを用いることができる。導電ペーストは、例えば、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト等である。
導電性接着剤としては、有機樹脂系の導電性接着剤を採用するのが好ましい。これにより、受光ユニット2は、基板43から赤外線検出素子20への熱伝導を抑制することが可能となる。
絶縁性基材43aは、赤外線検出素子20を位置決めする突起43cが形成されている。突起43cは、絶縁性基材43aの厚み方向の一面側において、この厚み方向に沿った方向に突出している。突起43cは、互いに隣り合う第1リード端子43jと第2リード端子43kとの間で、絶縁性基材43aにおける赤外線検出素子20の搭載予定領域の外側から突出している。絶縁性基材43aにおける赤外線検出素子20の搭載予定領域は、平面視において赤外線検出素子20が重なる領域である。
絶縁性基材43aには、2つの受光部2rの並ぶ方向の両側の各々において、突起43cが1つずつ形成されている。これにより、受光ユニット2は、赤外線検出素子20を2つの突起43cにより位置決めでき、2つの受光部2rの並ぶ方向における赤外線検出素子20の位置精度を高めることが可能となるから、赤外線検出素子20の位置精度に起因する冗長設計が不要となり、小型化及び感度の向上を図ることが可能となる。また、受光ユニット2は、突起43cが無い場合や例えば赤外線検出素子20の四隅それぞれの近傍に突起が位置している場合等に比べて、第1電極2hと第2電極2iとの短絡の発生を抑制することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。また、受光ユニット2は、第1電極2hと第2電極2iとの間のリークに伴う浮動電荷によるノイズの発生を抑制することが可能となり、S/N比の向上及び高感度化を図ることが可能となる。
また、受光ユニット2は、突起43cの突出寸法が、第1接合部7jの高さ寸法よりも大きいことが好ましい。これにより、受光ユニット2は、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが第1接合部7jを介して短絡するのをより確実に抑制することが可能となる。
基板43は、第1リード端子43jが、赤外線検出素子20の搭載予定領域の外側に設けられ、第2リード端子43kが、赤外線検出素子20の搭載予定領域と当該搭載予定領域の外側とに跨って設けられている。そして、第1接合部7jは、赤外線検出素子20の表側に設けられている。一方、第2接合部7kは、赤外線検出素子20の裏側に設けられている。よって、受光ユニット2は、第1リード端子43j及び第2リード端子43kが、赤外線検出素子20の搭載予定領域と当該搭載予定領域の外側とに跨って設けられている場合に比べて、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが短絡するのをより確実に抑制することが可能となる。
基板43の絶縁性基材43aは、各受光部2rの投影領域に熱絶縁用の穴43bが設けられていることが好ましい。これにより、受光ユニット2は、受光部2rと絶縁性基材43aとの間の熱絶縁性を高めることが可能となり、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの感度の向上を図ることが可能となる。熱絶縁用の穴43bは、各受光部2rに対して1つずつ設けてもよいが、投影視で2つの受光部2rに跨って設けられているのが好ましい。
また、絶縁性基材43aは、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32を位置決めする位置決め部43dが形成されている。位置決め部43dは、絶縁性基材43aの厚み方向の一面側において、この厚み方向に沿った方向に突出している。
位置決め部43dは、壁部43eと、支持部43fと、を備えている。壁部43eは、平面視で第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32との並ぶ方向に直交する方向おける第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の位置を規定するように形成されている。支持部43fは、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32が架設されるように形成されている。壁部43e及び支持部43fは、平面視で第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32との並ぶ方向に直交する方向おける両側の各々に形成されている。これにより、受光ユニット2は、第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32と、第1受光素子2a、第2受光素子2bとの相対的な位置精度を高めることが可能となる。よって、受光ユニット2は、小型化及び高感度化を図ることが可能となる。なお、支持部43fからの壁部43eの高さ寸法は、特に限定するものではなく、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の厚さ寸法よりも小さくてもよい。
第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、例えば、壁部43eに対して接着剤により固定することが好ましい。これにより、受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32を支持部43fに対して接着剤により固定する場合に比べて、第1受光素子2aと第1光学フィルタ31との距離、第2受光素子2bと第2光学フィルタ32との距離、それぞれの精度を高めることが可能となる。受光ユニット2は、支持部43fの突出寸法が赤外線検出素子20の厚み寸法よりも大きく、赤外線検出素子20の厚み方向において第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32と赤外線検出素子20との間に間隙があることが好ましい。これにより、受光ユニット2は、赤外線検出素子20と第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32とを熱絶縁することが可能となり、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの高感度化を図ることが可能となる。
受光ユニット2は、壁部43eに、窪み部43gが形成されている。窪み部43gは、壁部43eの先端面、壁部43eにおける第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32との対向面が開放されるように形成されている。受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32が、窪み部43g内の接着剤からなる接着部9(図6(b)参照)により壁部43eに固定されていることが好ましい。これにより、受光ユニット2は、製造時に、接着剤の塗布量を安定させることが可能となり、生産性の向上を図ることが可能となる。接着部9の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等を採用することができる。接着剤は、熱硬化型の接着剤でもよいが、紫外線硬化型の接着剤を採用するのがより好ましい。
第1光学フィルタ31は、例えば、図10(a)に示すように、基板31sと、第1フィルタ部31aと、第2フィルタ部31bと、を備えている。また、第2光学フィルタ32は、例えば、図10(b)に示すように、基板32sと、第3フィルタ部32aと、第4フィルタ部32bと、を備えている。基板31s、32sは、赤外線を透過可能なものである。基板31s、32sとしては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、サファイア基板、酸化マグネシウム基板等を採用することができる。受光ユニット2は、第2フィルタ部31bと第4フィルタ部32bとを同じ構成とすることができる。これにより、受光ユニット2は、第2フィルタ部31bの分光特性と第4フィルタ部32bの分光特性とを略同じとすることが可能となる。
第1フィルタ部31aは、例えば、λ/4多層膜34と、波長選択層35と、λ/4多層膜36とで構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ/4多層膜34は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31aa、31ab)が積層された多層膜である。λ/4多層膜36は、複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31aa、31ab)が積層された多層膜である。波長選択層35は、λ/4多層膜34とλ/4多層膜36との間に介在する。波長選択層35は、選択波長に応じて光学膜厚を各薄膜31aa、31abの光学膜厚とは異ならせてある。λ/4多層膜34及びλ/4多層膜36は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。SiOxは、SiOやSiO2である。SiNxは、SiN、Si3N4等である。
第1フィルタ部31aは、屈折率周期構造の中に光学膜厚の異なる波長選択層35を設けることで、屈折率周期構造に局所的な乱れを導入することにより、第1反射帯域の中に第1反射帯域幅に比べてスペクトル幅の狭い第1透過波長域(第1透過帯域)を局在させることができる。第1フィルタ部31aは、波長選択層35の光学膜厚を適宜変化させることによって、第1透過波長域の透過ピーク波長を変化させることができる。
第1フィルタ部31aの選択波長は、第1フィルタ部31aの第1透過波長域の中心波長である。
第3フィルタ部32aは、例えば、λ/4多層膜37と、波長選択層38と、λ/4多層膜39とで構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ/4多層膜37は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32aa、32ab)が積層された多層膜である。λ/4多層膜39は、複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32aa、32ab)が積層された多層膜である。波長選択層38は、λ/4多層膜37とλ/4多層膜39との間に介在する。波長選択層38は、選択波長に応じて光学膜厚を各薄膜32aa、32abの光学膜厚とは異ならせてある。λ/4多層膜37及びλ/4多層膜39は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第1フィルタ部31aの薄膜31aa、31abと第3フィルタ部32aの薄膜32aa、32abとはそれぞれ同じ材料を採用することができる。
第3フィルタ部32aは、屈折率周期構造の中に光学膜厚の異なる波長選択層38を設けることで、屈折率周期構造に局所的な乱れを導入することにより、第2反射帯域の中に第2反射帯域幅に比べてスペクトル幅の狭い第2透過波長域(第2透過帯域)を局在させることができる。第3フィルタ部32aは、波長選択層38の光学膜厚を適宜変化させることによって、第2透過波長域の透過ピーク波長を変化させることができる。
第3フィルタ部32aの選択波長は、第3フィルタ部32aの第2透過波長域の中心波長である。
第2フィルタ部31bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31ba、31bb)が積層された多層膜である。第2フィルタ部31bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第4フィルタ部32bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32ba、32bb)が積層された多層膜である。第4フィルタ部32bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
ガスセンサでは、検知対象のガスの種類によって赤外線の吸収波長が異なるので、ガスの識別性を高めることが可能となる。吸収波長は、例えば、CH4が3.3μm、CO2が4.3μm、COが4.7μm、NOが5.3μmである。このため、受光ユニット2は、例えば、第1フィルタ部31aの第1中心波長を検知対象のガスの吸収波長に設定し、第3フィルタ部32aの第2中心波長を検知対象のガス及び他のガス(H2O、CH4、CO、NO等)での吸収のない波長(参照波長)に設定すればよい。第1フィルタ部31a及び第3フィルタ部32aとしては、透過スペクトルの半値全幅が狭いバンドパスフィルタが好ましい。また、受光ユニット2は、第1フィルタ部31aの中心波長と第3フィルタ部32aの中心波長との差が小さい方が好ましい。これにより、受光ユニット2は、検知対象のガスが存在しないときの第1フィルタ部31aを透過する赤外線の光量と第3フィルタ部32aを透過する赤外線の光量との差を少なくすることが可能となる。受光ユニット2は、ガスセンサの検知対象のガスが例えば二酸化炭素の場合、第1フィルタ部31aの中心波長を4.3μmに設定し、第3フィルタ部32aの中心波長を例えば3.9μmに設定することができる。
第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32とは、1チップ化したものでもよい。
また、受光ユニット2は、第1増幅回路41及び第2増幅回路42を備えている。第1増幅回路41及び第2増幅回路42は、基板43に設けられている。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々が焦電素子の場合、第1受光素子2aから出力される第1出力信号、第2受光素子2bから出力される第2出力信号は、いずれもアナログの電流信号となる。このため、第1増幅回路41及び第2増幅回路42の各々は、例えば、電流信号を電圧信号に変換する電流−電圧変換回路と、この電流−電圧変換回路により変換された電圧信号のうち所定の周波数帯域の電圧を増幅する電圧増幅回路(バンドパスアンプ)と、を備えた構成とすることができる。ガス測定装置100は、第1増幅回路41と第2増幅回路42とで、アナログ信号処理部40(図1(a)参照)を構成している。
受光ユニット2は、基板43、第1増幅回路41及び第2増幅回路42等により、回路ブロック44を構成している。したがって、受光ユニット2は、回路ブロック44が、パッケージ29に収納されている。これにより、ガス測定装置100は、第1受光素子2aと第1増幅回路41との間の配線長、第2受光素子2bと第2増幅回路42との間の配線長それぞれを短くすることが可能となり、S/N比や感度を向上させることが可能となる。
なお、受光ユニット2は、第1増幅回路41と第2増幅回路42とを集積化して1チップのIC素子とし、パッケージ29内に設けてもよい。つまり、受光ユニット2は、アナログ信号処理部40を1チップのIC素子とし、パッケージ29内に設けてもよい。また、第1増幅回路41及び第2増幅回路42の各々は、複数のディスクリート部品を適宜接続して構成してもよい。
受光ユニット2は、基板43の厚み方向の一面側に第1受光素子2a及び第2受光素子2bが配置され、基板43の厚み方向の他面側に第1増幅回路41及び第2増幅回路42が配置されているのが好ましい。これにより、受光ユニット2は、基板43の厚み方向の上記一面側において第1受光素子2a、第2受光素子2bの側方に第1増幅回路41、第2増幅回路42がそれぞれ配置されている場合に比べて、小型化を図ることが可能となる。また、受光ユニット2は、第1増幅回路41及び第2増幅回路42それぞれで発生した熱が第1受光素子2a、第2受光素子2bへ伝熱されることを、より抑制することが可能となる。
第1増幅回路41及び第2増幅回路42の各々は、ベアチップのIC素子により形成されており、基板43の上記他面側に設けた凹部43y(図6、9参照)の内底面に、エポキシ樹脂等のダイボンド材により固定されている。また、基板43には、図9に示すように、第1増幅回路41及び第2増幅回路42が導電性の金属細線(ワイヤ)47を介して電気的に接続される導電部46を備えている。金属細線47の材料としては、例えば、金、アルミニウム、銅等を採用することができる。導電部46としては、第1増幅回路41及び第2増幅回路42への給電用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46sと、グランド用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46gと、がある。また、導電部46としては、第1増幅回路41の出力信号を取り出す第1出力用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46aと、第2増幅回路42の出力信号を取り出す第2出力用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46bと、がある。
第1増幅回路41、第2増幅回路42及び各金属細線47は、封止材料(例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等)からなる封止部(図示せず)により覆われているのが好ましい。これにより、受光ユニット2は、各金属細線47の断線や各金属細線47とパッケージ29との接触を防止することが可能となる。
受光ユニット2のパッケージ29としては、例えば、キャンパッケージを採用することができる。キャンパッケージは、台座29aと、台座29aに固着されるキャップ29bとを備え、キャップ29bにおける第1受光素子2a及び第2受光素子の前方に1つの窓孔29cが形成された構成とすることができる。
台座29aは、金属製である。台座29aは、円板状に形成されている。キャップ29bは、金属製である。キャップ29bは、缶状に形成されている。具体的には、キャップ29bは、筒体29baと、筒体29baの第1端部から外方へ突出した第1フランジ29bbと、筒体29baの第2端部から内方へ突出した第2フランジ29bcと、を有する。筒体29baは、円筒状の形状としてある。筒体29baは、円筒状に限らず、筒状の形状であればよく、例えば、角筒状でもよい。第1フランジ29bbの外周形状は、円形状である。第1フランジ29bbの外周形状は、円形状に限らず、例えば、楕円形状や多角形状等でもよい。窓孔29cは、第2フランジ29bcにより囲まれている。第2フランジ29bcの内周形状は、矩形状である。よって、窓孔29cは、矩形状の孔である。
台座29aには、4本のリードピン29dが厚み方向に貫通して設けられる。台座29aは、これら4本のリードピン29dを保持している。各リードピン29dは、回路ブロック44に結合されている。4本のリードピン29dは、給電用、グラウンド用、第1増幅回路41の出力信号の取り出し用、及び第2増幅回路42の出力信号の取り出し用それぞれに、1本ずつ利用される。グラウンド用のリードピン29dは、台座29aに対して導電性の封止材で固定されており、台座29aと電気的に接続されている。それ以外のリードピン29dは、台座29aに対して電気絶縁性の封止材(ガラス)で固定されており、台座29aと電気的に絶縁されている。なお、受光ユニット2は、回路ブロック44に、グラウンド用のリードピン29dが電気的に接続されるシールド板やシールド層を設けてもよい。
台座29aは、平面視形状が円形状であるが、これに限らず、例えば、多角形状でもよい。また、キャップ29bの形状は、台座29aの形状に応じて適宜変更すればよい。例えば、台座29aの平面視形状が矩形状の場合、キャップ29bの平面視形状は、円形状でもよいし、矩形状でもよい。
窓孔29cは、第1受光素子2aと第2受光素子2bとを併せたサイズよりもやや大きな開口サイズとしてある。窓孔29cの開口形状は、矩形状であるが、これに限らず、例えば、円形状や矩形以外の多角形状等でもよい。
窓孔29cを塞ぐ窓材29wは、赤外線を透過する機能を有する。窓材29wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材29wは、窓孔29cの開口サイズよりもやや大きな矩形板状に形成されている。窓材29wは、導電性材料(例えば、半田、導電性接着剤等)によりキャップ29bに固着されているのが好ましい。これにより、受光ユニット2は、窓材29wをキャップ29bと略同電位とすることが可能となり、外来の電磁ノイズの影響を受けにくくなるという利点がある。窓材29wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板等でもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、窓材29wとしては、レンズを採用することもできる。レンズは、半導体レンズ(例えば、シリコンレンズ等)により構成することができる。
半導体レンズの製造にあたっては、例えば、半導体基板(例えば、シリコン基板等)を準備する。その後には、所望のレンズ形状に応じて半導体基板との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成する。その後には、半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成する。その後には、当該多孔質部を除去することにより半導体レンズを形成する。なお、上述の半導体レンズからなるレンズは、例えば、半導体基板として半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)を用い、多数のレンズを形成した後に、ダイシング等によって個々のレンズに分離すればよい。
レンズは、レンズ部と当該レンズ部を全周に亘って囲むフランジ部とが連続一体に形成されている半導体レンズが好ましい。これにより、受光ユニット2は、厚みが略一定で厚み方向の両面の各々が平面状であるフランジ部を備えることにより、レンズの光軸方向におけるレンズと第1受光素子2a及び第2受光素子2bとの距離の精度を高めることが可能となる。
ガスセンサは、図1(b)に示すように、光源1と受光ユニット2との間に、上述の試料セル6が配置されている。試料セル6は、筒状に形成されている。試料セル6は、その内部空間と外部とを連通させる複数の通気孔69が、試料セル6の軸方向に直交する方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6が、円筒状に形成されている場合、通気孔69は、試料セル6の径方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6は、通気孔69を通して外部からの気体が導入されたり、内部空間の空気が導出されたりする。
ガスセンサは、試料セル6の軸方向の一端部側に光源1が配置され、試料セル6の軸方向の他端部側に受光ユニット2が配置されている。ガスセンサは、外部からの検知対象のガス、あるいは検知対象のガスを含む気体が、通気孔69を通って試料セル6の内部空間に導入される。このため、ガスセンサでは、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が増加すると、受光ユニット2へ入射する赤外線の光量が低下し、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が低下すると、受光ユニット2へ入射する赤外線の光量が増加する。
また、ガス測定装置100は、濃度演算部45bでの演算により求めた濃度を表示させる表示部8を備えている。表示部8は、例えば、液晶表示装置や、有機EL表示装置や、発光ダイオードを用いた表示装置等により構成することができる。
濃度演算部45bは、第1増幅回路41にて増幅された第1出力信号と第2増幅回路42にて増幅された第2出力信号との比から、濃度を演算するように構成されている。濃度演算部45bでは、〔第1増幅回路41にて増幅された第1出力信号〕/〔第2増幅回路42にて増幅された第2出力信号〕の値が大きいほど、濃度が高くなる。
濃度演算部45bは、A/D変換回路45aにてそれぞれディジタル化された第1出力信号と第2出力信号との差分に基づいて測定対象のガスの濃度を演算するように構成してもよい。この場合、濃度演算部45bでは、|〔第1増幅回路41にて増幅された第1出力信号〕−〔第2増幅回路42にて増幅された第2出力信号〕|の値が大きいほど、濃度が高くなる。
ガス測定装置100は、制御部51と濃度演算部45bとを備える演算部が、マイクロコンピュータに適宜のプログラムを搭載することにより構成されている。演算部は、例えば、カスタムIC等により構成してもよい。
駆動回路5は、光源1から放射される赤外光の強度が一定周期で周期的に変化するように光源1を駆動する。駆動回路5は、制御部51からの制御信号を昇圧して駆動電圧を生成するように構成されている。駆動回路5は、制御信号として与えられる入力電圧を昇圧する昇圧機能を有している。制御信号は、所定パルス幅を指示する信号である。
ところで、ガス測定装置100は、駆動回路5から光源1へ供給する駆動電圧が同じでも、光源1の抵抗値の違いによって、発熱体の温度(以下、「光源1の温度」という。)が異なる。光源1が上述の赤外線放射素子10とパッケージとで構成されている場合、発熱体は、赤外線放射層13により構成される。
図11(a)、(b)は、互いに光源1の抵抗値が異なる場合について、駆動電圧E1と光源1の温度との関係を模式的に示している。図11(a)、(b)の各々の横軸は時間である。また、図11(a)、(b)の各々の縦軸は、駆動電圧及び光源1の温度である。また、図11(a)、(b)の各々におけるE1は、駆動電圧の波形を示している。また、図11(a)、(b)の各々におけるT1は、温度の時間変化を示している。図11(b)は、図11(a)の場合に比べて、光源1の抵抗値が小さい場合であり、図11(a)の場合に比べて、光源1の温度がより高い温度まで上昇する。このため、光源1は、抵抗値が小さいほど、放射エネルギが増大し、逆に、抵抗値が大きいほど、放射エネルギが減少する。
図12(a)、(b)は、互いに光源1の抵抗値が異なる場合のA/D変換回路45aの入力信号を模式的に示している。図12(a)、(b)の各々の横軸は時間である。また、図12(a)、(b)の各々の縦軸は、A/D変換回路45aの入力信号である。図12(b)は、図12(a)の場合に比べて、光源1の抵抗値が小さい場合であり、図12(a)の場合に比べて、A/D変換回路45aの入力信号が大きくなり、A/D変換回路45aの入力電圧のダイナミックレンジを超え、A/D変換回路45aの入力信号のフルスケール電圧V1(例えば、2.7V)で飽和している。このため、ガス測定装置100は、光源1の抵抗値が小さすぎると濃度の測定が不可能となる懸念がある。また、ガス測定装置100は、光源1の抵抗値が大きすぎると、S/N比が低下し、測定精度が低下する懸念がある。
しかしながら、ガス測定装置100は、上述のように、制御部51が、設定部52により設定された抵抗値に基づいて、駆動回路5から光源1への投入電力が規定値となるように所定パルス幅を決定するように構成されている。設定部52は、例えば、不揮発性記憶素子により構成することができる。設定部52は、例えば、ガス測定装置100の出荷検査時等に、別途に測定した光源1の抵抗の測定値を、光源1の抵抗値として記憶させることで設定するものである。制御部51は、所定パルス幅を決定する際、設定部52から光源1の抵抗値を読み出し、所定の演算式に当該抵抗値を代入して演算を行うことで所定パルス幅を決定する。更に、ガス測定装置100は、駆動回路5が、制御部51にて決定された所定パルス幅の駆動電圧を光源1へ供給するように構成されている。これにより、ガス測定装置100は、光源1の製造ばらつき等に起因して光源1の抵抗値がばらついていても、製造時に、予め測定した光源1の抵抗の測定値を設定部52により抵抗値として設定することにより、光源1への投入電力のばらつきを抑制することが可能となり、測定精度の高精度化を図ることが可能となる。要するに、ガス測定装置100は、製造時に所定パルス幅を光源1の抵抗の測定値に基づいて初期調整する機能を有しており、測定精度の高精度化を図ることが可能となる。
(実施形態2)
以下では、本実施形態のガス測定装置100について図13に基づいて説明する。なお、実施形態1のガス測定装置100と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態のガス測定装置100は、光源1の周囲温度を測定するためのサーミスタ53と、サーミスタ53の第3出力信号から温度を求める温度演算部54と、を備えている。
A/D変換回路45aは、第3出力信号、第1出力信号、第2出力信号を時系列的にアナログ−ディジタル変換するように構成されている。A/D変換回路45aは、例えば、A/D変換部と、第3出力信号、第1出力信号、第2出力信号を時系列的にA/D変換部に入力させるマルチプレクサと、を備えた構成を採用することができる。
制御部51は、駆動回路5を制御する前に、温度演算部54にて求めた温度に基づいて、光源1の放射エネルギが所定値となるように所定パルス幅を補正する機能を有する。これにより、ガス測定装置100は、光源1の周囲温度が変化しても光源1の放射エネルギを所定値とすることが可能となり、光源1の周囲温度の変化に起因して第1出力信号、第2出力信号が変化するのを抑制することが可能となる。よって、ガス測定装置100は、測定精度の更なる高精度化を図ることが可能となる。
ガス測定装置100は、制御部51と濃度演算部45bと温度演算部54とを備える演算部が、マイクロコンピュータに適宜のプログラムを搭載することにより構成されている。演算部は、カスタムIC等により構成してもよい。
制御部51は、例えば、下記の1次式からなる補正式で所定パルス幅を補正するように構成すればよい。
W1=A1×(25−t)+W0
A1は、光源1の放射エネルギの温度特性から決定される定数である。W0は、温度演算部54にて求めた温度が室温(25℃)のときに光源1の放射エネルギが所定値となる所定パルス幅である。W1は、温度演算部54にて求めた温度がt(℃)のときの補正後の所定パルス幅である。
図14は、本実施形態のガス測定装置100の動作説明図である。図14の横軸は、温度演算部54にて求めた温度、縦軸はアナログ信号処理部40にて増幅された第1出力信号の振幅値である。ただし、図14における第1出力信号の振幅値は、ガスが導入されていない状態での値である。図14では、A2が上記補正を行わない場合の第1出力信号の振幅値を示し、A1が上記補正を行った場合の第1出力信号の振幅値を示している。また、図14中の一点鎖線は、A/D変換回路45aの入力信号のフルスケール電圧を示している。第2出力信号は、ガスが導入されていない状態での第1出力信号と同様の傾向である。
本実施形態のガス測定装置100では、光源1の周囲温度が変化しても第1出力信号、第2出力信号の振幅値を略一定とすることが可能となり、光源1の周囲温度によらず、測定精度を略一定とすることが可能となる。
補正式は、上述の1次式に限らず、2次式、3次式等の多次式でもよく、次数が多いほど、測定精度のより一層の向上を図ることが可能となる。
実施形態1、2では、ガス測定装置100が、第1受光素子2aと第2受光素子2bとの組を1組だけ備えているが、これに限らず、第1受光素子2aと第2受光素子2bとの組を複数組備えていてもよい。これにより、ガス測定装置100は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとの組の数だけの種類のガスの濃度を測定することが可能となる。つまり、ガス測定装置100は、測定対象のガスの種類を1種類だけに限らず、複数種類とすることもできる。第2受光素子2bについては、各組ごとに1つずつ備えていてもよいし、各組に共通の1つだけとしてもよい。
実施形態1、2では、ガス測定装置100としてガスセンサを例示したが、ガス測定装置100は、ガスセンサに限らず、例えば、赤外線ガス分析装置等でもよい。