(実施形態1)
以下では、本実施形態の赤外線受光ユニット2について図1〜図8に基づいて説明する。
赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20と、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32と、基板43と、パッケージ29とを備えている。
赤外線検出素子20は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bを有する。第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの受光面(図3(a)における上面)の前方に配置されている。基板43は、赤外線検出素子20が実装される。パッケージ29は、赤外線検出素子20、第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32及び基板43を収納する。
パッケージ29は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の光入射面(図3(a)、図8における上面)側にある窓孔29cと、窓孔29cを塞ぎ赤外線を透過可能な窓材29wとを有する。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32がパッケージ29内に収納され外気に曝されるのを抑制することが可能となり、フィルタ特性の経時変化を抑制することが可能となる。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、例えば、図7に示すように、1つの受光部2rと、受光部2rに電気的に接続された第1出力端子2j及び第2出力端子2kとを備えた焦電素子を用いることができる。受光部2rは、焦電体基板2gの表側、裏側それぞれに形成され互いに対向する第1電極2h、第2電極2iと、この焦電体基板2gにおいて第1電極2hと第2電極2iとに挟まれた部分2ggとで構成される。第1出力端子2jは、焦電体基板2gの表側に形成されて第1電極2hと電気的に接続されている。第2出力端子2kは、焦電体基板2gの裏側に形成されて第2電極2iと電気的に接続されている。第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが、焦電体基板2gの厚み方向において重ならないように配置されている。
回路ブロック44の基板43は、電気絶縁性を有する絶縁性基材43aと、2つの第1リード端子43jと、2つの第2リード端子43kとを備えている。各第1リード端子43j及び各第2リード端子43kは、絶縁性基材43aと一体に設けられている。各第1リード端子43jは、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の第1出力端子2jが、導電性接着剤からなる第1接合部7j(図5参照)を介して電気的に接続される。各第2リード端子43kは、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の第2出力端子2kが、導電性接着剤からなる第2接合部7k(図5参照)を介して電気的に接続される。
絶縁性基材43aは、赤外線検出素子20の搭載予定領域の外側から赤外線検出素子20の厚み方向に沿った方向に突出し赤外線検出素子20を位置決めする壁43rが形成されている。壁43rの高さ寸法は、赤外線検出素子20の厚み寸法よりも小さい。
これにより、赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20を壁43rにより位置決めでき、赤外線検出素子20の位置精度を高めることが可能となるから、赤外線検出素子20の位置精度に起因する冗長設計が不要となり、小型化及び感度の向上を図ることが可能となる。赤外線受光ユニット2の製造時において、基板43に赤外線検出素子20を実装する際には、コレット等のピックアップツールが赤外線検出素子20の表側に接触することなく赤外線検出素子20を保持した状態で、赤外線検出素子20を基板43に対して位置決めすることが可能となる。よって、基板43に赤外線検出素子20を実装する工程のタクトタイムを短縮することが可能となり、生産性の向上及び低コスト化を図ることが可能となる。
また、赤外線受光ユニット2は、第1電極2hと第2電極2iとの短絡の発生を抑制することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、第1電極2hと第2電極2iとの間のリークに伴う浮動電荷によるノイズの発生を抑制することが可能となり、S/N比の向上及び高感度化を図ることが可能となる。
ところで、図23の構成の赤外線受光装置91では、製造時に、ピックアップツールにより、第1受光素子92及び第2受光素子93を1個ずつピックアップし矩形窓94a、94b内に入れる必要があると考えられる。このため、赤外線受光装置91では、矩形窓94a、94bの大きさを第1受光素子92、第2受光素子93それぞれの平面サイズよりも比較的大きくする必要があり、第1赤外線フィルタ片101及び第2赤外線フィルタ片102の平面サイズが大きくなってしまう。よって、赤外線受光装置91では、第1赤外線フィルタ片101及び第2赤外線フィルタ片102のコストが高くなってしまう。
また、赤外線受光装置91では、第1受光素子92と第1赤外線フィルタ片101との距離がばらつく懸念があり、また、第2受光素子93と第2赤外線フィルタ片102との距離がばらつく懸念がある。また、特許文献1には、各リード線106〜109と第1受光素子92及び第2受光素子93との間の配線の構造について具体的に明記されていない。
一方、赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20の厚み方向に沿った方向に突出し第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32を位置決めする位置決め部43dが形成されている。これにより、赤外線受光ユニット2は、基板43において第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32を位置決めすることが可能となる。よって、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32と第1受光素子2a及び第2受光素子2bとの相対的な位置精度を高めることが可能となり、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の小型化を図ることが可能となる。赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の小型化により、低コスト化が可能となる。
また、赤外線受光装置91では、第1赤外線フィルタ片101及び第2赤外線フィルタ片102の平面サイズを小さくするために第1受光素子92及び第2受光素子93の平面サイズを小さくすると、感度が低下してしまう。
これに対して、赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bを小型化することなく、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の平面サイズを小さくすることが可能となる。
ところで、図23の赤外線受光装置91では、第1受光素子92及び第2受光素子93それぞれの出力信号がセラミック基板94の配線及びリード線106〜109を通して外部へ取り出される。しかしながら、赤外線受光装置91では、第1受光素子92及び第2受光素子93それぞれの出力信号が微弱なので、ノイズの影響を受けやすく、S/N比や感度が低下してしまう懸念がある。
一方、赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの出力信号を各別に増幅する第1増幅回路41及び第2増幅回路42(図3、図6参照)が基板43に設けられている。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bと第1増幅回路41及び第2増幅回路42との間の配線長を短くすることが可能となり、S/N比や感度の低下を抑制することが可能となる。
赤外線受光ユニット2は、基板43、第1増幅回路41及び第2増幅回路42等により、回路ブロック44を構成している。したがって、赤外線受光ユニット2は、回路ブロック44が、パッケージ29に収納されている。
以下では、赤外線受光ユニット2の各構成要素について、より詳細に説明する。
赤外線検出素子20は、例えば、図7に示すように、第1受光素子2aと第2受光素子2bとが、1枚の焦電体基板2gに形成されたものとすることができる。これにより、赤外線検出素子20は、容易に、第1受光素子2aの特性と第2受光素子2bの特性とを略同じとすることが可能となる。赤外線検出素子20は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとが、別々の焦電体基板2gに形成されたものでもよい。この場合、第1受光素子2aと第2受光素子2bとは、製造時に同じ焦電体ウェハに形成され、この焦電体ウェハから切り出されたもの同士を用いるのが好ましい。そして、赤外線検出素子20は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとの一側面同士を接着剤により接着した構成とすることが好ましい。
赤外線検出素子20は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとが、並んで配置されているのが好ましい。赤外線検出素子20は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとの並ぶ方向の中心点を中心として点対称となるように配置されているのが好ましい。これにより、赤外線検出素子20は、第1受光素子2aの受光部2rが基板43から受ける応力と、第2受光素子2bの受光部2rが基板43から受ける応力とを略等しくすることが可能となり、第1受光素子2aの感度と第2受光素子2bの感度とを略等しくすることが可能となる。
赤外線検出素子20は、第1受光素子2aにおける第2受光素子2b側とは反対側に第1出力端子2j、第2出力端子2kが配置されているのが好ましい。また、赤外線検出素子20は、第1受光素子2aにおいて第1電極2hと第1出力端子2jとを接続する第1配線2m、第2電極2iと第2出力端子2kとを接続する第2配線2nも、第1受光素子2aにおける第2受光素子2b側とは反対側に配置されているのが好ましい。同様に、赤外線検出素子20は、第2受光素子2bにおける第1受光素子2a側とは反対側に第1出力端子2j、第2出力端子2kが配置されているのが好ましい。また、赤外線検出素子20は、第2受光素子2bにおいて第1電極2hと第1出力端子2jとを接続する第1配線2m、第2電極2iと第2出力端子2kとを接続する第2配線2nも、第2受光素子2bにおける第1受光素子2a側とは反対側に配置されているのが好ましい。
赤外線検出素子20は、平面視において各受光部2rの各々の一部を除いて各受光部2rの各々を取り囲み厚み方向に貫通する孔2sが形成されているのが好ましい。孔2sは、上述の受光部2rの一部として第1配線2m及びその周部、第2配線2n及びその周部を避けて、受光部2rを取り囲むように形成されているのが好ましい。第1受光素子2aにおけるこれにより、赤外線検出素子20は、受光部2r同士を熱絶縁することが可能となり、また、突発的なノイズであるポップコーンノイズを低減することが可能となる。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが、焦電体基板2gの厚み方向において重ならないように配置されている。これにより、赤外線検出素子20は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々において第1出力端子2jと第2出力端子2kとの間に寄生容量が発生するのを防止することができ、また、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが短絡するのを抑制することが可能となる。
焦電体基板2gは、例えば、単結晶のLiTaO3基板を採用することができる。焦電体基板2gの材料としては、LiTaO3を採用しているが、これに限らず、例えば、LiNbO3、PbTiO3、PZT(:Pb(Zr,Ti)O3)、PZT−PMN(:Pb(Zr,Ti)O3−Pb(Mn,Nb)O3)等を採用してもよい。
焦電体基板2gの自発分極の方向は、この焦電体基板2gの厚み方向に沿った一方向であり、図7(b)の上方向である。
焦電体基板2gの厚さは、50μmに設定してあるが、この値に限定するものではない。焦電体基板2gの厚さは、例えば、薄い方が赤外線検出素子20の感度を向上させる観点から好ましい。このため、焦電体基板2gの厚さは、30μm〜150μm程度の範囲で設定するのが好ましい。焦電体基板2gの厚さは、30μmよりも薄いと脆弱性による破損の懸念があり、150μmよりも厚いと感度が低下してしまう懸念がある。
第1電極2h及び第2電極2iは、導電性を有し且つ検知対象の赤外線を吸収可能な導電膜により構成されている。この導電膜は、NiCr膜からなる。導電膜は、NiCr膜に限らず、例えば、Ni膜や金黒膜等でもよい。また、第1出力端子2jは、第1電極2hの導電膜と同じ材料及び膜厚の導電膜により構成することができる。また、第2出力端子2kは、第2電極2iの導電膜と同じ材料及び膜厚の導電膜により構成することができる。
赤外線検出素子20は、図9に示す第1変形例のように、第1電極2hの表面が第1電極2hよりも輻射率の高い赤外線吸収層26により覆われている構成を採用することもできる。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの赤外線吸収率が向上し、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの高感度化を図ることが可能となる。赤外線の輻射率と赤外線吸収率とは、同じ値である。
赤外線吸収層26は、例えば、樹脂中に、カーボン系微粉末、金属系微粉末、金属酸化物系微粉末の群から選択される少なくとも1種の導電性微粉末が分散された樹脂層からなる。導電性微粉末は、導電性を有する微粉末である。赤外線吸収層26における導電性微粉末の体積濃度は、17%に設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。導電性微粉末の体積濃度は、例えば、1〜30%程度の範囲内で設定することができる。これにより、赤外線吸収層26は、導電性を有するが、第1電極2hに比べて比抵抗が大きくなる。
赤外線吸収層26は、樹脂に導電性微粉末を分散させ有機溶剤を混合させたペースト(印刷インク)を、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等により印刷してから、ベークすることで硬化させることによって形成することができる。赤外線吸収層26の形成にあたっては、例えば、ペーストにおける導電性微粉末の組成を8.5%とすれば、赤外線吸収層26における導電性微粉末の体積濃度を17%程度とすることが可能である。
赤外線吸収層26は、より広い温度範囲で化学的及び物理的に安定していることが望ましい。このため、赤外線吸収層26の樹脂としては、熱硬化性樹脂が望ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。そして、赤外線検出素子20は、これらの熱硬化性樹脂のうち、赤外線検出素子20の検出対象の赤外線の吸収率がより高い熱硬化性樹脂を採用することが好ましい。これにより、赤外線検出素子20は、赤外線吸収層26の厚みを薄くすることが可能となり、感度をより高めることが可能となる。検出対象の赤外線を吸収可能な樹脂は、検出対象の赤外線に対する吸収率が30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましい。
カーボン系微粉末としては、固体炭素材料で赤外線吸収率が高く、樹脂中に分散できる微粉末が適している。この種のカーボン系微粉末としては、例えば、非晶質(微結晶)炭素として分類される、カーボンブラック、カーボンファイバー、黒鉛等や、ナノカーボンとして分類される、フラーレン、ナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。特に、カーボンブラックは、粒子径が小さく、化学的にも安定しており、好ましい。
金属系微粉末に関しては、粒子径が0.1μm程度以下の金属系微粉末が、赤外線を吸収する性質があり、幅広い赤外波長域で吸収率が高いという特徴を有している。そして、この特徴は、金属の種類に依存しない。このため、金属系微粉末の材料としては、化学的に安定なAu、Pt、Ag等の貴金属や、耐熱性の高いW、Mo等の高融点金属や、微粉末の作りやすいZn、Mg、Cd、Al、Cu、Fe、Cr、Ni、Co、Snや、それらの2種以上の合金等、が挙げられる。
金属酸化物系微粉末は、遠赤外線を効率よく吸収し、また、化学的にも安定しているため、赤外線検出素子20を人体の検知等の用途に適用する場合等に好適に採用することができる。金属酸化物系微粉末の材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、AZO(AlドープZnO)、GZO(GaドープZnO)等が挙げられる。
赤外線吸収層26は、上述の例に限らず、例えば、カーボンブラック層により構成してもよい。
赤外線検出素子20は、図10に示す第2変形例のように、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々が、焦電体基板2gの裏側に、第2出力端子2kの外周面のうち焦電体基板2gの側面に沿った一面を除いて囲む電気絶縁層2pを備えていてもよい。電気絶縁層2pは、焦電体基板2gよりも導電性接着剤に対する濡れ性が低い材料(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等)からなる。これにより、赤外線受光ユニット2は、製造時に、導電性接着剤によって第1出力端子2jと第2出力端子2kとが短絡する不良品の発生をより抑制することが可能となり、製造コストの低コスト化を図ることが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、第1出力端子2jと第2出力端子2kとの間の電気絶縁性をより向上させることが可能となる。
基板43は、例えば、MID(Molded Interconnect Devices)基板、部品内蔵基板、セラミック基板、プリント基板等により構成することができる。MID基板は、樹脂成形品からなる絶縁性基材43aの表面に第1リード端子43j、第2リード端子43kや、その他の配線を適宜形成すればよい。
また、赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20が、基板43に実装されている。赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の第1出力端子2jと各第1リード端子43jとが、導電性接着剤からなる第1接合部7jを介して電気的に接続される。また、赤外線受光ユニット2は、各第2リード端子43kと、第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々の第2出力端子2kとが、導電性接着剤からなる第2接合部7kを介して電気的に接続される。導電性接着剤は、例えば、AgまたはAu粉末を含んだエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂の接着剤である。導電性接着剤としては、導電ペーストを用いることができる。導電ペーストは、例えば、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト等である。
導電性接着剤としては、有機樹脂系の導電性接着剤を採用するのが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、基板43から赤外線検出素子20への熱伝導を抑制することが可能となる。
回路ブロック44は、第1受光素子2aの出力信号を増幅して出力する第1増幅回路41と、第2受光素子2bの出力信号を増幅して出力する第2増幅回路42とを備えている。
なお、赤外線受光ユニット2は、第1増幅回路41と第2増幅回路42とを集積化して1チップのIC素子とし、パッケージ29内に設けてもよい。また、第1増幅回路41及び第2増幅回路42の各々は、複数のディスクリート部品を適宜接続して構成してもよい。
赤外線受光ユニット2は、基板43の厚み方向の一面側に赤外線検出素子20が配置され、基板43の厚み方向の他面側に第1増幅回路41及び第2増幅回路42が配置されているのが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、基板43の厚み方向の一面側において赤外線検出素子20の側方に第1増幅回路41及び第2増幅回路42が配置されている場合に比べて、小型化を図ることが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、第1増幅回路41及び第2増幅回路42それぞれで発生した熱が赤外線検出素子20へ伝熱されることを、より抑制することが可能となる。
第1増幅回路41及び第2増幅回路42の各々は、ベアチップのIC素子により形成されており、基板43の上記他面側に設けた凹部43y(図3参照)の内底面に、エポキシ樹脂等のダイボンド材により固定されている。また、基板43には、図6に示すように、第1増幅回路41及び第2増幅回路42が導電性の金属細線(ワイヤ)45を介して電気的に接続される導電部46を備えている。金属細線45の材料としては、例えば、金、アルミニウム、銅等を採用することができる。導電部46としては、第1増幅回路41及び第2増幅回路42への給電用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46sと、グランド用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46gとがある。また、導電部46としては、第1増幅回路41の出力信号を取り出す第1出力用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46aと、第2増幅回路42の出力信号を取り出す第2出力用のリードピン29dに電気的に接続される導電部46bとがある。
第1増幅回路41、第2増幅回路42及び各金属細線45は、封止材料(例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等)からなる封止部(図示せず)により覆われているのが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、各金属細線45の断線やパッケージ29との接触を防止することが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、封止部を設けたことによって、第1増幅回路41及び第2増幅回路42の各々で発生した熱が赤外線検出素子20側へ伝熱されにくくなるという利点もある。
第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、赤外線受光ユニット2の用途に必要とされる光学特性を有するようにフィルタ特性を設計すればよい。
第1光学フィルタ31は、例えば、図8(a)に示すように、基板31sと、第1フィルタ部31aと、第2フィルタ部31bとを備えている。また、第2光学フィルタ32は、例えば、図8(b)に示すように、基板32sと、第3フィルタ部32aと、第4フィルタ部32bとを備えた構成を採用することができる。基板31s、32sは、赤外線を透過可能なものである。基板31s、32sとしては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、サファイア基板、酸化マグネシウム基板等を採用することができる。赤外線受光ユニット2は、第2フィルタ部31bと第4フィルタ部32bとを同じ構成とすることができる。これにより、赤外線受光ユニット2は、第2フィルタ部31bの分光特性と第4フィルタ部32bの分光特性とを略同じとすることが可能となる。
第1フィルタ部31aは、例えば、λ/4多層膜34と、波長選択層35と、λ/4多層膜36とで構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ/4多層膜34は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31aa、31ab)が積層された多層膜である。λ/4多層膜36は、複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31aa、31ab)が積層された多層膜である。波長選択層35は、λ/4多層膜34とλ/4多層膜36との間に介在する。波長選択層35は、選択波長に応じて光学膜厚を各薄膜31aa、31abの光学膜厚とは異ならせてある。λ/4多層膜34及びλ/4多層膜36は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第3フィルタ部32aは、例えば、λ/4多層膜37と、波長選択層38と、λ/4多層膜39とで構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ/4多層膜37は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32aa、32ab)が積層された多層膜である。λ/4多層膜39は、複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32aa、32ab)が積層された多層膜である。波長選択層38は、λ/4多層膜37とλ/4多層膜39との間に介在する。波長選択層38は、選択波長に応じて光学膜厚を各薄膜32aa、32abの光学膜厚とは異ならせてある。λ/4多層膜37及びλ/4多層膜39は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第1フィルタ部31aの薄膜31aa、31abと第3フィルタ部32aの薄膜32aa、32abとはそれぞれ同じ材料を採用することができる。
第1フィルタ部31a、第3フィルタ部32aは、屈折率周期構造の中に光学膜厚の異なる波長選択層35、38を設けて屈折率周期構造に局所的な乱れを導入することにより、反射帯域の中に反射帯域幅に比べてスペクトル幅の狭い透過帯域を局在させることができる。第1フィルタ部31a、第3フィルタ部32aは、波長選択層35、38の光学膜厚を適宜変化させることによって、透過波長域の透過ピーク波長を変化させることができる。
第1フィルタ部31aの選択波長は、第1フィルタ部31aの透過波長域の中心波長λ1である。また、第3フィルタ部32aの選択波長は、第3フィルタ部32aの透過波長域の中心波長λ2である。
第2フィルタ部31bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31ba、31bb)が積層された多層膜である。第2フィルタ部31bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。SiOxは、SiOやSiO2である。SiNx等は、SiN、Si3N4等である。
第4フィルタ部32bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32ba、32bb)が積層された多層膜である。第4フィルタ部32bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32とは、図11に示す他の構成例のように、1チップ化したものでもよい。
赤外線受光ユニット2のパッケージ29としては、例えば、キャンパッケージを採用することができる。キャンパッケージは、台座(ステム)29aと、台座29aに固着されるキャップ29bとを備え、キャップ29bにおける第1受光素子2a及び第2受光素子2bの前方に1つの窓孔29cが形成された構成とすることができる。
台座29aは、金属製である。台座29aは、円板状に形成されている。キャップ29bは、金属製である。キャップ29bは、缶状に形成されている。
台座29aには、4本のリードピン29dが厚み方向に貫通して設けられる。台座29aは、これら4本のリードピン29dを保持している。各リードピン29dは、回路ブロック44に結合されている。4本のリードピン29dは、給電用、グラウンド用、第1増幅回路41の出力信号の取り出し用、及び第2増幅回路42の出力信号の取り出し用それぞれに、1本ずつ利用される。グラウンド用のリードピン29dは、台座29aに対して導電性の封止材で固定されており、台座29aと電気的に接続されている。それ以外のリードピン29dは、台座29aに対して電気絶縁性の封止材(ガラス)で固定されており、台座29aと電気的に絶縁されている。なお、赤外線受光ユニット2は、回路ブロック44に、グラウンド用のリードピン29dが電気的に接続されるシールド板やシールド層を設けてもよい。
台座29aは、平面視形状が円形状であるが、これに限らず、例えば、多角形状でもよい。また、キャップ29bの形状は、台座29aの形状に応じて適宜変更すればよい。例えば、台座29aの平面視形状が矩形状の場合、キャップ29bの平面視形状は、円形状でもよいし、矩形状でもよい。
窓孔29cは、第1受光素子2aと第2受光素子2bとを併せたサイズよりもやや大きな開口サイズとしてある。窓孔29cの開口形状は、矩形状であるが、これに限らず、例えば、円形状や矩形以外の多角形状等でもよい。
窓孔29cを塞ぐ窓材29wは、赤外線を透過する機能を有する。窓材29wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材29wは、窓孔29cの開口サイズよりもやや大きな矩形板状に形成されている。窓材29wは、導電性材料(例えば、半田、導電性接着剤等)によりキャップ29bに固着されているのが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、窓材29wをキャップ29bと略同電位とすることが可能となり、外来の電磁ノイズの影響を受けにくくなるという利点がある。窓材29wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板等でもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、窓材29wとしては、レンズを採用することもできる。レンズは、半導体レンズ(例えば、シリコンレンズ等)により構成することができる。
半導体レンズの製造にあたっては、例えば、半導体基板(例えば、シリコン基板等)を準備する。その後には、所望のレンズ形状に応じて半導体基板との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成する。その後には、半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成する。その後には、当該多孔質部を除去することにより半導体レンズを形成する。この種の陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法については、例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報等に開示されている半導体レンズの製造方法等を適用できる。なお、上述の半導体レンズからなるレンズは、例えば、半導体基板として半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)を用い、多数のレンズを形成した後に、ダイシング等によって個々のレンズに分離すればよい。
レンズは、レンズ部と当該レンズ部を全周に亘って囲むフランジ部とが連続一体に形成されている半導体レンズが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、厚みが略一定で厚み方向の両面の各々が平面状であるフランジ部を備えることにより、レンズの光軸方向におけるレンズと赤外線検出素子20との距離の精度を高めることが可能となる。
基板43の絶縁性基材43aは、各受光部2rの投影領域に熱絶縁用の穴43bが設けられていることが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、受光部2rと絶縁性基材43aとの間の熱絶縁性を高めることが可能となり、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの感度の向上を図ることが可能となる。熱絶縁用の穴43bは、各受光部2rに対して1つずつ設けてもよいが、投影視で2つの受光部2rに跨って設けられているのが好ましい。
絶縁性基材43aにおける赤外線検出素子20の搭載予定領域は、平面視において赤外線検出素子20が重なる領域である。赤外線検出素子20を位置決めする壁43rは、絶縁性基材43aにおいて、赤外線検出素子20の搭載予定領域の外側の部位から、赤外線検出素子20の厚み方向に沿った方向(図3における上方向)に突出している。よって、絶縁性基材43aには、2つの受光部2rの並ぶ方向の両側の各々において、壁43rが1つずつ形成されている。これにより、赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20を2つの壁43rにより位置決めでき、2つの受光部2rの並ぶ方向における赤外線検出素子20の位置精度を高めることが可能となるから、赤外線検出素子20の位置精度に起因する冗長設計が不要となり、小型化及び感度の向上を図ることが可能となる。また、赤外線受光ユニット2は、壁43rが無い場合や例えば図12に示す比較例に比べて、第1電極2hと第2電極2iとの短絡の発生を抑制することが可能となり、信頼性の向上を図ることが可能となる。比較例は、絶縁性基材43aにおける赤外線検出素子20の四隅それぞれの近傍に、赤外線検出素子20の厚み寸法よりも高さ寸法の大きな突起43pが形成されている。
また、赤外線受光ユニット2は、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが赤外線検出素子20の厚み方向において重ならず、且つ、赤外線検出素子20が壁43rにより位置決めされるから、第1電極2hと第2電極2iとの間のリークに伴う浮動電荷によるノイズの発生を抑制することが可能となり、S/N比の向上及び高感度化を図ることが可能となる。
また、赤外線受光ユニット2は、壁43rの高さ寸法が赤外線検出素子20の厚み寸法よりも小さいので、赤外線検出素子20の表よりも壁43rの上面が高さ方向において低い位置にある。これにより、赤外線受光ユニット2は、製造時に、第1接合部7jの導電性接着剤が赤外線検出素子20の表側で広がりすぎるのを抑制することが可能となる。よって、赤外線受光ユニット2は、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが第1接合部7jを介して短絡するのをより確実に抑制することが可能となる。
基板43は、第1リード端子43j及び第2リード端子43kが、赤外線検出素子20の搭載予定領域と当該搭載予定領域の外側とに跨って設けられている。そして、第1接合部7jは、赤外線検出素子20の表側に設けられている。一方、第2接合部7kは、赤外線検出素子20の裏側に設けられている。
基板43は、図13に示す第3変形例のように、第1リード端子43jが、赤外線検出素子20の搭載予定領域の外側に設けられ、第2リード端子43kが、赤外線検出素子20の搭載予定領域と当該搭載予定領域の外側とに跨って設けられていてもよい。この場合も、第1接合部7jは、赤外線検出素子20の表側に設けられ、第2接合部7kは、赤外線検出素子20の裏側に設けられている。これにより、赤外線受光ユニット2は、図4のように、第1リード端子43j及び第2リード端子43kが、赤外線検出素子20の搭載予定領域と当該搭載予定領域の外側とに跨って設けられている場合に比べて、第1出力端子2jと第2出力端子2kとが短絡するのをより確実に抑制することが可能となる。
図13の第3変形例における第1リード端子43jは、搭載予定領域側の端面が、壁43rの壁面の一部を構成し、窓材29w側の表面が壁43rの上面の一部を構成している。よって、図13の第3変形例の赤外線受光ユニット2では、第1リード端子43jにおける第1接合部7jとの接触面積を大きくすることが可能となる。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1出力端子2jと第1リード端子43jとの電気的な接続信頼性を高めることが可能となり、また、第1出力端子2jと第1リード端子43jとの間の抵抗値を低減することが可能となる。
赤外線受光ユニット2において、位置決め部43dは、平面視で第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32との並ぶ方向に直交する方向おける第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の位置を規定する壁部43eと、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32が架設される支持部43fとを備えることが好ましい。壁部43e及び支持部43fは、平面視で第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32との並ぶ方向に直交する方向おける両側の各々に形成されている。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32と赤外線検出素子20との相対的な位置精度を高めることが可能となる。よって、赤外線受光ユニット2は、小型化及び高感度化を図ることが可能となる。なお、支持部43fからの壁部43eの高さ寸法は、特に限定するものではなく、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の厚さ寸法よりも小さくてもよい。
第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、例えば、壁部43eに対して接着剤により固定することが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32を支持部43fに対して接着剤により固定する場合に比べて、赤外線検出素子20と第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32との距離の精度を高めることが可能となる。赤外線受光ユニット2は、支持部43fの突出寸法が赤外線検出素子20の厚み寸法よりも大きく、赤外線検出素子20の厚み方向において第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32と赤外線検出素子20との間に間隙があることが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、赤外線検出素子20と第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32とを熱絶縁することが可能となり、赤外線検出素子20の高感度化を図ることが可能となる。
赤外線受光ユニット2は、壁部43eに、先端面及び第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32との対向面が開放された窪み部43gが形成されており、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32が、窪み部43g内の接着剤からなる接着部9により壁部43eに固定されていることが好ましい。これにより、赤外線受光ユニット2は、製造時に、接着剤の塗布量を安定させることが可能となり、生産性の向上を図ることが可能となる。窪み部43gの内側面は、滑らかに連続する面でもよいし、複数の平面の組み合わせでもよい。窪み部43gの内側面は、R面取り部やC面取り部と同様の形状とすることもできる。接着部9の接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などを採用することができる。接着剤としては、熱硬化型の接着剤でもよいが、紫外線硬化型の接着剤を採用するのがより好ましい。
赤外線受光ユニット2は、例えば、図14に示す第4変形例のように、支持部43fにおける赤外線検出素子20の側面との対向面に凹部43hが形成されていてもよい。これにより、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32から赤外線検出素子20への熱伝導をより抑制することが可能となり、赤外線検出素子20のより一層の高感度化を図ることが可能となる。
赤外線受光ユニット2は、図1〜図8で説明した構成に対して、第1変形例〜第4変形例や他の構成例を適宜に組み合わせて適用してもよい。
以下では、赤外線受光ユニット2を備えた赤外線応用装置の一例として赤外線式ガスセンサ100について図15〜図20に基づいて説明する。
赤外線式ガスセンサ100は、光源1と、光検出器である赤外線受光ユニット2と、光源1と赤外線受光ユニット2との間に配置された試料セル6と、信号処理部4とを備える。なお、図15中の矢印付きの線は、光源1から放射された赤外線の進行経路を模式的に示したものである。
第1光学フィルタ31は、検知対象のガスの吸収波長の赤外線を透過するように第1透過波長域が設定されている。第2光学フィルタ32は、検知対象のガスに吸収されない参照波長の赤外線を透過し第1透過波長域に重複しない第2透過波長域が設定されている。信号処理部4は、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分もしくは比に基づいて検知対象のガスの濃度を求める。赤外線式ガスセンサ100は、光検出器として赤外線受光ユニット2を用いているので、信頼性の向上を図れ且つ高感度化を図ることが可能となる。
また、信号処理部4は、第1増幅回路41にて増幅された出力信号と第2増幅回路42にて増幅された出力信号との差分や比に基づく出力を発生する信号処理回路145を備えている。赤外線応用装置が赤外線式ガスセンサ100の場合、信号処理回路145は、第1増幅回路41にて増幅された出力信号と第2増幅回路42にて増幅された出力信号との差分や比に基づいて、検知対象のガスの濃度を求め、この濃度に相当する出力を発生する。
光源1は、熱放射により赤外線を放射する赤外光源である。第1光学フィルタ31は、光源1と第1受光素子2aとの間に配置される第1光学系3aを構成し、第2光学フィルタ32は、光源1と第2受光素子2bとの間に配置される第2光学系3bを構成している。第1光学系3aと第2光学系3bとは、互いに透過波長域(透過帯域)が異なる。図8(a)の第1光学フィルタ31は、基板31sと、第1光学系3aの透過波長域を規定する第1フィルタ部31aと、第1フィルタ部31aの透過波長域よりも長波長側の所定波長域の赤外線の透過率を低くする第2フィルタ部31bとを備えている。また、図8(b)の第2光学フィルタ32は、基板32sと、第2光学系3bの透過波長域を規定する第3フィルタ部32aと、第3フィルタ部32aの透過波長域よりも長波長側の所定波長域の赤外線の透過率を低くする第4フィルタ部32bとを備えている。図8(a)における第2フィルタ部31bは、所定波長域の赤外線を吸収することで遮断するフィルタである。図8(b)における第4フィルタ部32bは、所定波長域の赤外線を吸収することで遮断するフィルタである。
図19は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32の透過スペクトルの模式的な説明図である。ここで、図19(c)は、図19(a)の透過スペクトルを有する第1フィルタ部31aと、図19(b)の透過スペクトルを有する第2フィルタ部31bとを備えた第1光学フィルタ31の透過スペクトルを示している。また、図19(f)は、図19(d)の透過スペクトルを有する第3フィルタ部32aと、図19(e)の透過スペクトルを有する第4フィルタ部32bとを備えた第2光学フィルタ32の透過スペクトルを示している。図19(a)〜(f)のλ1は、第1フィルタ部31aの透過波長域の中心波長を示している。また、図19(a)〜(f)のλ2は、第3フィルタ部32aの透過波長域の中心波長を示している。
図19からも分かるように、赤外線式ガスセンサ100は、第1光学フィルタ31が、第1フィルタ部31a及び第2フィルタ部31bを備え、第2光学フィルタ32が、第3フィルタ部32a及び第4フィルタ部32bを備えていることにより、所定波長域の赤外線の透過率を低減することが可能となり、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの出力信号のS/N比を向上させることが可能となる。また、赤外線式ガスセンサ100は、第2フィルタ部31b及び第4フィルタ部32bが、所定波長域の赤外線を吸収することで透過率を低くするフィルタであるので、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32それぞれでの赤外線の反射を抑制することが可能となる。
試料セル6は、検知対象のガスを含む気体もしくは検知対象のガスが導入されるセルである。赤外線式ガスセンサ100では、検知対象のガスの種類によって赤外線の吸収波長が異なるので、ガスの識別性を高めることが可能となる。吸収波長は、例えば、CH4(メタン)が3.3μm、CO2(二酸化炭素)が4.3μm、CO(一酸化炭素)が4.7μm、NO(一酸化窒素)が5.3μmである。このため、赤外線受光ユニット2は、赤外線式ガスセンサ100に適用する場合、例えば、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を検知対象のガスの吸収波長に設定し、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を検知対象のガス及び他のガス(H2O、CH4、CO、NO等)での吸収のない波長に設定すればよい。第1フィルタ部31a及び第3フィルタ部32aとしては、透過スペクトルの半値全幅が狭いバンドパスフィルタが好ましい。また、赤外線式ガスセンサ100は、第1フィルタ部31aの中心波長λ1と第3フィルタ部32aの中心波長λ2との差が小さい方が好ましい。これにより、赤外線式ガスセンサ100は、検知対象のガスが存在しないときの第1フィルタ部31aを透過する赤外線の光量と第3フィルタ部32aを透過する赤外線の光量との差を少なくすることが可能となる。赤外線式ガスセンサ100は、検知対象のガスが例えば二酸化炭素の場合、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を4.3μmに設定し、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を例えば3.9μmに設定することができる。
赤外線式ガスセンサ100は、光源1を駆動する駆動回路5を備えている。赤外線式ガスセンサ100は、駆動回路5によって、光源1から放射される赤外線の強度を変調させる。駆動回路5は、光源1から放射される光の強度が一定周期で周期的に変化するように光源1を駆動するが、光の強度が連続的に変化するように駆動してもよいし光の強度が間欠的に変化するように駆動するようにしてもよい。
光源1は、熱放射により赤外線を放射するものであるから、赤外発光ダイオードに比べて広い波長域の赤外線を放射することができる。そして、光源1は、上述の第1フィルタ部31aの中心波長λ1及び第3フィルタ部32aの中心波長λ2を含む広帯域の赤外線を放射することができる。要するに、光源1は、第1光学フィルタ31の透過波長域と第2光学フィルタ32の透過波長域とを包含する波長域の赤外線を放射することができる。
光源1としては、例えば、赤外線を放射する赤外線放射素子10と、この赤外線放射素子10を収納したパッケージ19とを備えたものを用いることができる。パッケージ19としては、例えば、赤外線放射素子10の前方に窓孔19rを有し、窓材19wにより窓孔19rが塞がれている構成のものを用いることができる。赤外線放射素子10としては、例えば、図18に示す構成のものを用いることができる。図18に示した構成の赤外線放射素子10は、MEMS(micro electro mechanical systems)の製造技術等を利用して製造することができる。この赤外線放射素子10は、基板11と、基板11の一表面側に設けられた薄膜部12と、基板11の厚み方向に貫通した孔11aと、薄膜部12における基板11側とは反対側に設けられた赤外線放射層13とを備えている。また、赤外線放射素子10は、薄膜部12における基板11側とは反対側で赤外線放射層13を覆う保護層14と、赤外線放射層13に電気的に接続された複数のパッド16とを備えている。保護層14は、赤外線放射層13から放射される赤外線を透過可能な材料により形成されている。赤外線放射層13と各パッド16とは、配線15を介して電気的に接続されている。
この赤外線放射素子10は、赤外線放射層13への通電により赤外線放射層13が発熱し、赤外線放射層13から熱放射により赤外線が放射される。
基板11は、例えば、単結晶のシリコン基板、多結晶のシリコン基板等を採用することができる。
薄膜部12は、例えば、基板11側のシリコン酸化膜12aと、シリコン酸化膜12aにおける基板11側とは反対側に積層されたシリコン窒化膜12bとの積層膜により構成することができる。薄膜部12は、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜の単層構造でもよい。
赤外線放射層13の材料は、例えば、窒化タンタル、窒化チタン、ニッケルクロム、タングステン、チタン、トリウム、白金、ジルコニウム、クロム、バナジウム、ロジウム、ハフニウム、ルテニウム、ボロン、イリジウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウム、ニッケル、ホルミウム、コバルト、エルビウム、イットリウム、鉄、スカンジウム、ツリウム、パラジウム、ルテチウム、導電性ポリシリコン等を採用してもよい。
赤外線放射素子10は、例えば、駆動回路5から一対のパッド16間に与える入力電力を調整することにより、赤外線放射層13に発生するジュール熱を変化させることができ、赤外線放射層13の温度を変化させることができる。よって、赤外線放射素子10は、赤外線放射層13の温度を変化させることで赤外線放射層13から放射される赤外線のピーク波長を変化させることができる。
パッケージ19としては、例えば、キャンパッケージを採用することができる。キャンパッケージは、赤外線放射素子10が実装される台座(ステム)19aと、赤外線放射素子10を覆うように台座19aに固着されるキャップ19bとを備え、キャップ19bにおける赤外線放射素子10の前方に窓孔19rが形成された構成とすることができる。なお、台座19aには、赤外線放射素子10への給電用の複数本のピン19dが厚み方向に貫通して設けられている。パッケージ19としては、キャンパッケージに限らず、例えば、セラミックパッケージ等を採用してもよい。
窓材19wは、赤外線を透過する機能を有する。窓材19wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材19wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板等でもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、窓材19wとしては、レンズを採用することもできる。レンズは、半導体レンズ(例えば、シリコンレンズ等)により構成することができる。
レンズは、レンズ部と当該レンズ部を全周に亘って囲むフランジ部とが連続一体に形成されている半導体レンズが好ましい。これにより、光源1は、厚みが略一定で厚み方向の両面の各々が平面状であるフランジ部を備えることにより、レンズの光軸方向におけるレンズと赤外線放射素子10との距離の精度を高めることが可能となる。
赤外線式ガスセンサ100では、光源1の窓材19wの代わりに、所定波長域の赤外線を反射する光学フィルタを配置してもよい。光源1における光学フィルタは、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32それぞれの透過波長域の赤外線の反射率を低減する反射防止膜を基板にコーティングした無反射コートフィルタであり、所定波長域の赤外線を反射するように光学設計されたものが好ましい。基板としては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、サファイア基板等を採用することができる。このような場合には、光学フィルタが、第1光学系3a及び第2光学系3bそれぞれの一部を構成している。
光源1は、赤外線放射素子10とパッケージ19とを備えた構成に限らず、例えば、ハロゲンランプ等を採用することもできる。
第1光学フィルタ31は、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を検知対象のガスの吸収波長に設定してあるのが好ましい。これにより、第1光学フィルタ31は、検知対象のガスの吸収波長の赤外線をより高い透過率で透過することが可能となる。第1フィルタ部31aは、中心波長λ1の赤外線に対する透過率が50%以上であるのが、好ましく、70%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのが更に好ましい。第2光学フィルタ32は、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を検知対象のガス及び他のガスに吸収されない波長(以下、「参照波長」ともいう。)に設定してあるのが好ましい。第3フィルタ部32aの透過波長域は、第1フィルタ部31aの透過波長域とは重複しないのが好ましい。第3フィルタ部32aは、中心波長λ2の赤外線に対する透過率が50%以上であるのが、好ましく、70%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのが更に好ましい。第3フィルタ部32aの中心波長λ2の赤外線に対する透過率は、第1フィルタ部31aの中心波長λ1の赤外線に対する透過率との差が小さいほうが好ましい。
赤外線式ガスセンサ100は、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分や比が検知対象のガス(例えば、二酸化炭素)の濃度に応じた値となるから、信号処理部4において検知対象のガスの濃度を精度良く求めることが可能となる。赤外線式ガスセンサ100は、ダイナミックレンジを広くする観点から、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分に基づいてガスの濃度を求めるのが好ましい。一方、赤外線式ガスセンサ100は、経時変動を抑制する観点から、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との比に基づいてガスの濃度を求めるのが好ましい。
次に、赤外線式ガスセンサ100の試料セル6について図16、図17及び図20に基づいて説明する。
試料セル6は、筒状に形成されている。試料セル6は、その内部空間と外部とを連通させる複数の通気孔69が、試料セル6の軸方向に直交する方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6が、円筒状に形成されている場合、通気孔69は、試料セル6の径方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6は、通気孔69を通して外部からの気体が導入されたり、内部空間の空気が導出されたりする。
赤外線式ガスセンサ100は、試料セル6の軸方向の一端部側に光源1が配置され、試料セル6の軸方向の他端部側に赤外線受光ユニット2が配置されている。赤外線式ガスセンサ100は、通気孔69を通って試料セル6の内部空間に、例えば、外部からの検知対象のガス、あるいは検知対象のガスを含む気体が導入される。このため、赤外線式ガスセンサ100では、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が増加すると、赤外線受光ユニット2へ入射する赤外線の光量が低下し、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が低下すると、赤外線受光ユニット2へ入射する赤外線の光量が増加する。
試料セル6は、この試料セル6の中心軸OX(図20参照)を含む平面で分割された対になる半割体64、65(図16参照)を結合することにより形成されている。半割体64と半割体65とは、例えば、嵌め合い、超音波溶着、接着等から選択される技術により結合することができる。
試料セル6は、光源1から放射された赤外線を赤外線受光ユニット2側へ反射する光学要素を兼ねているのが好ましい。ここで、試料セル6は、例えば、合成樹脂により形成されている場合、内側に、赤外線を反射する反射層を備えた構成とするのが好ましい。
試料セル6の材料は、合成樹脂に限らず、例えば、金属を採用してもよい。試料セル6は、特定波長の赤外線に対する反射率が比較的高い金属により形成されている場合、反射層を別途に備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
要するに、試料セル6は、筒状であり、その内面が光源1から放射された赤外線を反射する反射面66であるのが好ましい。上述の反射層を備えている場合には、この反射層の表面が反射面66を構成することができる。なお、図20中の矢印付きの線は、光源1から放射された赤外線の進行経路を模式的に示したものである。
赤外線式ガスセンサ100は、光源1を保持する保持部材70を備え、この保持部材70が試料セル6に取り付けられている。また、赤外線式ガスセンサ100は、赤外線受光ユニット2を保持する保持部材80を備え、この保持部材80が試料セル6に取り付けられている。
保持部材70は、キャップ部71と、押さえ板72とからなる。キャップ部71は、円盤状であって、試料セル6側の端面に、試料セル6の一端部が挿入される凹部71aが設けられ、凹部71aの底部の中央に、光源1が挿入される貫通孔71bが設けられている。押さえ板72は、キャップ部71に対して光源1を押さえるためのものである。
保持部材70は、押さえ板72及びキャップ部71の孔72b,71dに通された取付ねじ(図示せず)が試料セル6の一端部のねじ部64d,65dにねじ込まれることによって、試料セル6に取り付けられている。
保持部材80は、キャップ部81と、押さえ板82とからなる。キャップ部81は、円盤状であって、試料セル6側の端面に、試料セル6の他端部が挿入される凹部81aが設けられ、凹部81aの底部の中央に、赤外線受光ユニット2が挿入される貫通孔81bが設けられている。押さえ板82は、キャップ部81に対して赤外線受光ユニット2を押さえるためのものである。
保持部材80は、押さえ板82及びキャップ部81の孔82b,81cに通された取付ねじ(図示せず)が試料セル6の他端部のねじ部にねじ込まれることによって、試料セル6に取り付けられている。
なお、保持部材70,80それぞれの構造は、特に限定するものではない。また、試料セル6への保持部材70,80それぞれの取付構造も特に限定するものではない。
ところで、試料セル6の反射面66は、試料セル6の中心軸OX上に規定した長軸を回転軸とする回転楕円体の長軸方向の両端部それぞれを長軸に直交する2つの平面VP1、VP2(図20参照)によりカットした形状としてある。よって、試料セル6は、回転楕円体(長楕円体)の一部に対応する内部空間が形成されている。
赤外線式ガスセンサ100は、光源1を、試料セル6の中心軸OX上において、上記回転楕円体の一方の焦点P1に配置し、赤外線受光ユニット2を、試料セル6の中心軸OX上において、上記回転楕円体の他方の焦点P2よりも光源1に近い側に配置するのが好ましい。
赤外線式ガスセンサ100は、光源1が、上記回転楕円体の一方の焦点P1近傍に配置されている。近傍とは、焦点P1と光源1との距離が所定値より小さい全ての点からなる部分集合であり、焦点P1の点も含む。上記所定値は、上記回転楕円体の焦点P1と焦点P2との距離によって変わる。要するに、光源1は、厳密な意味で焦点P1に配置されている必要はなく、実質的に焦点P1に配置されているとみなせる位置にあればよい。光源1から斜め方向に放射された赤外線は、反射面66によって反射されて、他方の焦点P2に集光されるように導光される。しかしながら、他方の焦点P2に赤外線受光ユニット2を配置した比較例の赤外線式ガスセンサでは、試料セル6の他端部において反射面66で反射されて第1光学フィルタ31や第2光学フィルタ32に入射する赤外線の入射角が大きくなりやすい。そして、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、入射角が大きくなるほど、透過スペクトル(透過率−波長特性)が短波長側へのずれが大きくなり、選択波長を含む特定波長域の赤外線の透過率が低下してしまう。よって、比較例の赤外線式ガスセンサでは、S/N比が低下してしまう懸念がある。一方、比較例の赤外線式ガスセンサでは、試料セル6の中心軸OXに沿った方向における試料セル6と赤外線受光ユニット2との距離が長くなるほど、赤外線のロスが多くなってしまう。
これに対して、本実施形態の赤外線式ガスセンサ100は、赤外線受光ユニット2を、試料セル6の中心軸OX上において、反射面の他方の焦点P2よりも光源1に近い側に配置してある。つまり、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32、第1受光素子2a、第2受光素子2bが、試料セル6の中心軸OXに沿った方向において、他方の焦点P2とよりも光源1に近い側であって、試料セル6と他方の焦点P2との間に配置されている。これにより、本実施形態の赤外線式ガスセンサ100は、試料セル6の中心軸OXに沿った方向における試料セル6と赤外線受光ユニット2との距離を比較例と同じとした場合、比較例に比べて、試料セル6の他端部において反射面66で反射されて第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32に入射する赤外線の入射角を小さくすることが可能となる。よって、本実施形態の赤外線式ガスセンサ100は、比較例の赤外線式ガスセンサに比べて、特定波長域(第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32それぞれの設計上の透過波長域)の赤外線の透過率が低下するのを抑制することが可能となり、S/N比を向上させることが可能となる。また、第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32を透過した赤外線が、第1光学フィルタ31、第2光学フィルタ32に対向している第1受光素子2a、第2受光素子2b以外の第2受光素子2b、第1受光素子2aに入射するクロストークの発生を抑制することが可能となり、測定精度の向上を図ることが可能となる。試料セル6の中心軸OXに沿った方向における試料セル6と赤外線受光ユニット2との距離は、短い方が好ましく、零がより好ましい。
なお、赤外線式ガスセンサ100は、光源1と赤外線受光ユニット2との間に配置される部材(試料セル6等)の形状や数、配置等を特に限定するものではない。
上述の赤外線式ガスセンサ100では、赤外線受光ユニット2に関して、例えば、図21に示すように、第1受光素子2aの第1電極2hの平面形状と第2受光素子2bの第1電極2hの平面形状とを併せた形状を、焦電体基板2gの表と上述の回転楕円体との交線に沿った形状とすることができる。これにより、赤外線式ガスセンサ100は、受光部2rにおいて赤外線の受光に寄与しない領域を削減することが可能となり、受光部2rの熱容量を低減することが可能となって、高感度化を図ることが可能となる。
(実施形態2)
以下では、実施形態1で説明した赤外線受光ユニット2を用いた赤外線応用装置として、図22に示す構成を備えた人体検知センサBを例示する。人体検知センサBは、赤外線を放射する物体である人の動きを検知して検知信号を出力するものである。人体検知センサBは、例えば、照明負荷と電源との間に設けたスイッチ要素(スイッチング素子、リレー等)をオンオフさせる制御回路等と合わせて用いることもできる。また、人体検知センサBは、例えば、人の移動方向に関する検知信号を出力するものでもよい。
人体検知センサBは、赤外線受光ユニット2と、IC素子213と、回路基板211と、カバー212とを備えている。
赤外線受光ユニット2は、人体検知センサに適用する場合、第1増幅回路41及び第2増幅回路42を、例えば、人の動きに近い周波数成分(1Hzを中心とする成分)の電圧信号を増幅するバンドパスアンプで構成することが好ましい。
人体検知センサBでは、検知対象の赤外線の波長が8〜13μm程度であり、中心波長が10μm程度である。このため、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、8μmよりも短波長の所定波長(例えば、5μm)以下の波長の電磁波をカットするようにフィルタ特性が設定されているのが好ましい。
IC素子213は、赤外線受光ユニット2の出力信号を信号処理して検知信号を出力する信号処理回路が形成されている。
赤外線受光ユニット2及びIC素子213は、回路基板211に実装される。回路基板211は、例えば、プリント配線板により構成することができる。
カバー212は、赤外線受光ユニット2のパッケージ29を覆うように回路基板211に取り付けられるのが好ましい。この場合、赤外線受光ユニット2は、台座29aと回路基板211との間に隙間が形成されるように回路基板211に実装されているのが好ましい。これにより、人体検知センサBは、カバー212とパッケージ29と回路基板211とで囲まれた空間が空気層からなる気体層を構成するから、回路基板211から台座29aへの熱伝導を抑制することが可能となり、人体検知センサBの周囲の熱のゆらぎに起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。カバー212は、赤外線受光ユニット2に取り付けるようにしてもよい。
カバー212は、赤外線を透過可能とするために、ポリエチレン製であるのが好ましい。カバー212の形状は、例えば、ドーム状の形状とすることができる。カバー212は、パッケージ29における窓材29w側とは反対側から入射する赤外線を透過する領域が、当該反対側から入射する赤外線を赤外線検出素子20(例えば、図1参照)へ集光可能なレンズ状の形状に形成されていることが好ましい。このレンズ形状は、複数のレンズ部が組み合わされ各レンズ部の焦点位置が同じであるアレイレンズでもよいし、1つのレンズとしてもよい。
信号処理回路は、例えば、検知回路と、出力回路とを備えていればよい。検知回路は、例えば、第1増幅回路41、第2増幅回路42で増幅された各出力信号を適宜設定した閾値と比較し各出力信号が閾値を越えた場合に検知信号を出力する。このような検知回路は、例えば、コンパレータ等を用いた比較回路で構成することができる。出力回路は、検知回路の検知信号を所定の人体検出信号として出力する。
また、検知回路は、第1増幅回路41で増幅された出力信号と第2増幅回路42で増幅された出力信号との差分もしくは比を求め、その値を適宜設定した閾値と比較し閾値を越えた場合に検知信号を出力するようにしてもよい。この場合は、例えば、第1光学フィルタ31のフィルタ特性を、検知対象の赤外線を透過するように設定し、第2光学フィルタ32のフィルタ特性を、検知対象の赤外線を透過しないように設定すればよい。
検知回路は、第1増幅回路41で増幅された出力信号が閾値を越えるタイミングと、第2増幅回路42で増幅された出力信号が閾値を越えるタイミングとに基づいて人の移動方向を判別するようにしてもよい。この場合、検知回路は、例えば、マイクロコンピュータに適宜のプログラムを搭載することにより実現することができる。また、この場合は、第1光学フィルタ31のフィルタ特性と第2光学フィルタ32のフィルタ特性とを同じに設定するのが好ましい。
赤外線応用装置は、赤外線式ガスセンサ100や人体検知センサBに限らない。赤外線応用装置は、赤外線を利用する装置であればよく、例えば、非分散型ガス分析計、火災時に炎の中の炭酸ガス(CO2ガス)の共鳴放射(「CO2共鳴放射」とも呼ばれている。)により発生する特定波長(4.3μm乃至4.4μm)の赤外線を検出して炎検知を行う赤外線式炎検知器等でもよい。