JP2014142319A - 赤外線応用装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期安定性を向上させることが可能な赤外線応用装置を提供する。
【解決手段】赤外線応用装置100は、光源1と、第1受光素子2aと、第2受光素子2bと、第1光学系3aと、第2光学系3bと、信号処理部4とを備える。第1光学系3aは、光源1と第1受光素子2aとの間に配置される。第2光学系3bは、光源1と第2受光素子2bとの間に配置される。第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、赤外線を受光して光電変換した出力信号を発生する。信号処理部4は、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分もしくは比に基づく出力を発生する。光源1は、熱放射により赤外線を放射する赤外光源である。第1光学系3aと第2光学系3bとは、互いに透過波長域が異なり、且つ、各透過波長域の両方よりも長波長側の所定波長域の平均透過率が等しい。
【選択図】図1
【解決手段】赤外線応用装置100は、光源1と、第1受光素子2aと、第2受光素子2bと、第1光学系3aと、第2光学系3bと、信号処理部4とを備える。第1光学系3aは、光源1と第1受光素子2aとの間に配置される。第2光学系3bは、光源1と第2受光素子2bとの間に配置される。第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、赤外線を受光して光電変換した出力信号を発生する。信号処理部4は、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分もしくは比に基づく出力を発生する。光源1は、熱放射により赤外線を放射する赤外光源である。第1光学系3aと第2光学系3bとは、互いに透過波長域が異なり、且つ、各透過波長域の両方よりも長波長側の所定波長域の平均透過率が等しい。
【選択図】図1
Description
本発明は、赤外線応用装置に関するものである。
赤外線応用装置としては、例えば、光源と、2つ受光素子と、前記光源と各前記受光素子との間に配置された2つの光学系と、2つの前記受光素子の出力信号の差分もしくは比に基づく出力を発生する信号処理部とを備えたものがある。この種の赤外線応用装置としては、例えば、赤外線式ガスセンサ等が知られている。赤外線式ガスセンサとしては、例えば、図15に示す構成を備えたCOセンサ121が知られている(特許文献1)。
COセンサ121は、赤外線(「赤外光」ともいう。)を発生する光源105と、光源105からの赤外線を検出する2つの検出器106a、106bと、2つのフィルタ107a、107bとを備えている。また、COセンサ121は、2つの検出器106a、106bの差動出力からCOの濃度に関係する出力を発生する検出値処理手段を備えている。
COセンサ121は、光源105としてタングステンランプが用いられている。また、COセンサ121は、検出器106a、106bの各々が、例えば、サーモパイル、ボロメータ、焦電素子等の受光素子により構成されている。フィルタ107aの透過の窓は、COの吸収波長帯域である4.6μm波長帯域に設定されている。フィルタ107bの透過の窓は、COの吸収波長帯域及び対象環境に含まれる赤外吸収波長帯域以外である4.0μm波長帯域に設定されている。
COセンサ121では、光源105の経時的な特性変化に起因して感度が低下してしまう懸念がある。赤外線応用装置は、COセンサ121に限らず、光源の経時的な特性変化が長期安定性に影響を与えることが考えられる。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、長期安定性を向上させることが可能な赤外線応用装置を提供することにある。
本発明の赤外線応用装置は、光源と、第1受光素子と、第2受光素子と、前記光源と前記第1受光素子との間に配置される第1光学系と、前記光源と前記第2受光素子との間に配置される第2光学系と、前記第1受光素子の出力信号と前記第2受光素子の出力信号との差分もしくは比に基づく出力を発生する信号処理部とを備え、前記光源は、熱放射により赤外線を放射する赤外光源であり、前記第1光学系と前記第2光学系とは、互いに透過波長域が異なり、且つ、前記各透過波長域の両方よりも長波長側の所定波長域の平均透過率が等しいことを特徴とする。「平均透過率が等しい」とは、厳密に同一でなくてもよく、略同一であればよいという意味であり、例えば、|〔前記第1光学系の前記平均透過率と前記第2光学系の前記平均透過率との差〕/〔前記第1光学系の前記平均透過率又は前記第2光学系の前記平均透過率〕|×100(%)が5%以下であるのが好ましく、3%以下であるのがより好ましい。
この赤外線応用装置において、前記第1光学系は、前記第1光学系の前記透過波長域を規定する第1フィルタ部と、前記所定波長域の赤外線の透過率を低くする第2フィルタ部とを備え、前記第2光学系は、前記第2光学系の前記透過波長域を規定する第3フィルタ部と、前記所定波長域の赤外線の透過率を低くする第4フィルタ部とを備えることが好ましい。
この赤外線応用装置において、前記第2フィルタ部及び前記第4フィルタ部は、前記所定波長域の赤外線を吸収することで透過率を低くするフィルタであることが好ましい。
この赤外線応用装置において、前記第2フィルタ部と前記第4フィルタ部とは、1枚の基板に形成されてなることが好ましい。
この赤外線応用装置において、前記第1光学系は、前記所定波長域の赤外線を反射することで透過率を低くする第5フィルタ部を備え、前記第2光学系は、前記所定波長域の赤外線を反射することで透過率を低くする第6フィルタ部を備えることが好ましい。
この赤外線応用装置において、前記第5フィルタ部と前記第6フィルタ部とは、1枚の基板に形成されてなることが好ましい。
本発明の赤外線応用装置は、長期安定性を向上させることが可能となる。
(実施形態1)
以下では、赤外線応用装置100について図1に基づいて説明する。
以下では、赤外線応用装置100について図1に基づいて説明する。
赤外線応用装置100は、光源1と、第1受光素子2aと、第2受光素子2bと、第1光学系3aと、第2光学系3bと、信号処理部4とを備える。第1光学系3aは、光源1と第1受光素子2aとの間に配置される。第2光学系3bは、光源1と第2受光素子2bとの間に配置される。第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、赤外線を受光して光電変換した出力信号を発生する。信号処理部4は、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との比に基づく出力を発生する。信号処理部4は、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との比ではなく、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分に基づく出力を発生するようにしてもよい。
光源1は、熱放射により赤外線を放射する赤外光源である。第1光学系3aと第2光学系3bとは、互いに透過波長域(透過帯域)が異なる。第1光学系3aとしては、例えば、図2(a)に示すような第1光学フィルタ31を用いることができる。また、第2光学系3bとしては、例えば、図2(b)に示すような第2光学フィルタ32を用いることができる。図2(a)の第1光学フィルタ31は、基板31sと、第1光学系3aの透過波長域を規定する第1フィルタ部31aと、第1フィルタ部31aの透過波長域よりも長波長側の所定波長域の赤外線の透過率を低くする第2フィルタ部31bとを備えている。また、図2(b)の第2光学フィルタ32は、基板32sと、第2光学系3bの透過波長域を規定する第3フィルタ部32aと、第3フィルタ部32aの透過波長域よりも長波長側の所定波長域の赤外線の透過率を低くする第4フィルタ部32bとを備えている。図2(a)における第2フィルタ部31bは、所定波長域の赤外線を吸収することで遮断するフィルタである。図2(b)における第4フィルタ部32bは、所定波長域の赤外線を吸収することで遮断するフィルタである。
図3は、第1光学系3a及び第2光学系3bの透過スペクトルの模式的な説明図である。ここで、図3(c)は、図3(a)の透過スペクトルを有する第1フィルタ部31aと、図3(b)の透過スペクトルを有する第2フィルタ部31bとで構成される第1光学系3aの透過スペクトルを示している。また、図3(f)は、図3(d)の透過スペクトルを有する第3フィルタ部32aと、図3(e)の透過スペクトルを有する第4フィルタ部32bとで構成される第2光学系3bの透過スペクトルを示している。図3(a)〜(f)のλ1は、第1フィルタ部31aの透過波長域の中心波長を示している。また、図3(a)〜(f)のλ2は、第3フィルタ部32aの透過波長域の中心波長を示している。
図3からも分かるように、赤外線応用装置100は、第1光学系3aが、第1フィルタ部31a及び第3フィルタ部31bを備え、第2光学系3bが、第2フィルタ部32a及び第4フィルタ部32bを備えていることにより、所定波長域の赤外線の透過率を低減することが可能となり、各受光素子2a,2bそれぞれの出力信号のS/N比を向上させることが可能となる。また、赤外線応用装置100は、第2フィルタ部31b及び第4フィルタ部32bが、所定波長域の赤外線を吸収することで透過率を低くするフィルタであるので、第1光学系3a及び第2光学系3bそれぞれでの赤外線の反射を抑制することが可能となる。
ところで、本願発明者らは、鋭意研究の結果、第1光学系3aと第2光学系3bとで、第1光学系3aの透過波長域と第2光学系3bの透過波長域との両方よりも長波長側の透過率が異なりやすいという実験結果を得た。図4には、第1光学系3aの透過スペクトル(透過率の波長依存性)を模式的に説明するために実線で示し、第2光学系3bの透過スペクトルを模式的に説明するために一点鎖線で示してある。
一方、熱放射により赤外線を放射する光源1では、例えば、この光源1の経時的な特性変化に起因して、同じ入力電力での光源1の到達温度が低下した場合、放射スペクトル(放射エネルギの波長依存性)が変化する。図4には、温度T1(例えば、800℃)での光源1の放射スペクトルを模式的に説明するために二点鎖線で示し、温度T2(<T1)での光源1の放射スペクトルを模式的に説明するために破線で示してある。
そして、本願発明者らは、光源1への同じ入力電力での光源1の到達温度が低下した場合、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれのS/N比が変化し、第1受光素子2aのS/N比と第2受光素子2bのS/N比との相対比が変化するため、感度が変化してしまうと考えた。
一方、本願発明者らは、鋭意研究の結果、第1光学系3a同士でも製造ばらつき等によって、透過波長域よりも長波長側の透過率にばらつきが生じるという実験結果を得た。そこで、本願発明者らは、赤外線応用装置100の第1光学系3aと第2光学系3bとで、第1光学系3aの透過波長域と第2光学系3bの透過波長域との両方よりも長波長側の所定波長域の平均透過率が等しい第1光学系3aと第2光学系3bとの組み合わせを用いることを考えた。このような組み合わせを用いるには、例えば、予め、多数の第1光学系3aの所定波長域の平均透過率のデータを1対1で記録しておくとともに、多数の第2光学系3bの所定波長域の平均透過率のデータを1対1で記録しておき、所定波長域の平均透過率が等しい第1光学系3aと第2光学系3bとの組み合わせを適宜選択することが考えられる。これにより、赤外線応用装置100は、第1光学系3aと第2光学系3bとで、第1光学系3aの透過波長域と第2光学系3bの透過波長域との両方よりも長波長側の所定波長域の平均透過率を等しくすることが可能となる。また、赤外線応用装置100の製造方法で考えた場合には、多数の第1光学系3a及び多数の第2光学系3bから第1光学系3a及び第2光学系3bを、より無駄なく利用することが可能となり、低コスト化を図ることが可能となる。
そして、本実施形態の赤外線応用装置100は、第1光学系3aと第2光学系3bとで、第1光学系3aの透過波長域と第2光学系3bの透過波長域との両方よりも長波長側の所定波長域の平均透過率が等しいことを特徴とする。これにより、赤外線応用装置100は、光源1の経時的な特性劣化が長期安定性に与える影響を低減することが可能となる。よって、赤外線応用装置100は、長期安定性の優れたものとすることが可能となる。「平均透過率」とは、所定波長域における透過率の平均値である。この「平均透過率」の算出方法については、例えば、赤外線波長域のうち所定波長域の最短波長から最長波長の間における、透過率が100%となる仮想透過スペクトルを積分した面積(S1)に対する、分光器等により実測した透過スペクトルを積分した面積(S2)の割合(S2/S1)を平均透過率と定義することができる。面積S1は、仮想スペクトルと当該仮想スペクトルの横軸(波長軸)とで囲まれた領域の面積である。例えば、最短波長を10μm、最長波長を25μmとした場合には、S1=100×(25−10)となる。面積S2は、実測したスペクトルと当該スペクトルの横軸(波長軸)とで囲まれた領域の面積である。「平均透過率が等しい」とは、厳密に同一でなくてもよく、略同一であればよいという意味であり、例えば、|〔第1光学系3aの平均透過率と第2光学系3bの平均透過率との差〕/〔第1光学系3aの平均透過率又は第2光学系3bの平均透過率〕|×100(%)が5%以下であるのが好ましく、3%以下であるのがより好ましい。「光源1の経時的な特性劣化が長期安定性に与える影響を低減する」とは、光源1への同じ入力電力での光源1の到達温度が低下した場合、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれのS/N比が変化しても、第1受光素子2aのS/N比と第2受光素子2bのS/N比との相対比の変化を抑制することができ、感度の変化を抑制できることを意味する。
図1に示した構成の赤外線応用装置100は、赤外線式ガスセンサである。なお、図1中の矢印付きの線は、光源1から放射された赤外線の進行経路を模式的に示したものである。
赤外線式ガスセンサは、光源1と各受光素子2a、2bとの間に配置された試料セル6を備えている。試料セル6は、検知対象のガスを含む気体もしくは検知対象のガスが導入されるセルである。赤外線式ガスセンサでは、検知対象のガスの種類によって赤外線の吸収波長が異なるので、ガスの識別性を高めることが可能となる。吸収波長は、例えば、CH4(メタン)が3.3μm、CO2(二酸化炭素)が4.3μm、CO(一酸化炭素)が4.7μm、NO(一酸化窒素)が5.3μmである。このため、赤外線応用装置100は、赤外線式ガスセンサの場合、例えば、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を検知対象のガスの吸収波長に設定し、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を検知対象のガス及び他のガス(H2O、CH4、CO、NO等)での吸収のない波長に設定すればよい。赤外線応用装置100は、第1フィルタ部31a及び第3フィルタ部32aとして、透過スペクトルの半値全幅が狭いバンドパスフィルタが好ましい。また、赤外線応用装置100は、第1フィルタ部31aの中心波長λ1と第2フィルタ部32aの中心波長λ2との差が小さい方が好ましい。これにより、赤外線応用装置100は、検知対象のガスが存在しないときの第1フィルタ部31aを透過する赤外線の光量と第3フィルタ部32aを透過する赤外線の光量との差を少なくすることが可能となる。赤外線応用装置100は、検知対象のガスが例えば二酸化炭素の場合、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を4.3μmに設定し、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を例えば3.9μmに設定することができる。所定波長域は、光源1の放射スペクトルと、第1光学系3a及び第2光学系3bのフィルタとしての性能等に起因して赤外線の漏れが生じる波長領域とに基づいて適宜設定するのが好ましい。赤外線応用装置100が赤外線式ガスセンサの場合、所定波長域は、例えば、5μm〜30μmの範囲とすることができるが、特に限定するものではなく、例えば、10μm〜25μmの範囲としてもよい。
赤外線式ガスセンサは、光源1を駆動する駆動回路5を備えている。赤外線式ガスセンサは、駆動回路5によって、光源1から放射される赤外線の強度を変調させる。駆動回路5は、光源1から放射される光の強度が一定周期で周期的に変化するように光源1を駆動するが、光の強度が連続的に変化するように駆動してもよいし光の強度が間欠的に変化するように駆動するようにしてもよい。
光源1は、熱放射により赤外線を放射するものであるから、赤外発光ダイオードに比べて広い波長域の赤外線を放射することができる。そして、光源1は、上述の第1フィルタ部31aの中心波長λ1及び第3フィルタ部32aの中心波長λ2を含む広帯域の赤外線を放射することができる。要するに、光源1は、第1光学フィルタ31の透過波長域と第2光学フィルタ32の透過波長域とを包含する波長域の赤外線を放射することができる。
光源1としては、例えば、赤外線を放射する赤外線放射素子10と、この赤外線放射素子10を収納したパッケージ19とを備えたものを用いることができる。パッケージ19としては、例えば、赤外線検出素子10の前方に窓孔19rを有し、窓材19wにより窓孔19rが塞がれている構成のものを用いることができる。赤外線放射素子10としては、例えば、図5に示す構成のものを用いることができる。図5に示した構成の赤外線放射素子10は、MEMS(micro electro mechanical systems)の製造技術等を利用して製造することができる。この赤外線放射素子10は、基板11と、基板11の一表面側に設けられた薄膜部12と、基板11の厚み方向に貫通した孔11aと、薄膜部12における基板11側とは反対側に設けられた赤外線放射層13とを備えている。また、赤外線放射素子10は、薄膜部12における基板11側とは反対側で赤外線放射層13を覆う保護層14と、赤外線放射層13に電気的に接続された複数のパッド16とを備えている。保護層14は、赤外線放射層13から放射される赤外線を透過可能な材料により形成されている。赤外線放射層13と各パッド16とは、配線15を介して電気的に接続されている。
この赤外線放射素子10は、赤外線放射層13への通電により赤外線放射層13が発熱し、赤外線放射層13から熱放射により赤外線が放射される。
基板11は、例えば、単結晶のシリコン基板、多結晶のシリコン基板等を採用することができる。
薄膜部12は、例えば、基板11側のシリコン酸化膜12aと、シリコン酸化膜12aにおける基板11側とは反対側に積層されたシリコン窒化膜12bとの積層膜により構成することができる。薄膜部12は、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜の単層構造でもよい。
赤外線放射層13の材料は、例えば、窒化タンタル、窒化チタン、ニッケルクロム、タングステン、チタン、トリウム、白金、ジルコニウム、クロム、バナジウム、ロジウム、ハフニウム、ルテニウム、ボロン、イリジウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、オスミウム、レニウム、ニッケル、ホルミウム、コバルト、エルビウム、イットリウム、鉄、スカンジウム、ツリウム、パラジウム、ルテチウム、導電性ポリシリコン等を採用してもよい。
赤外線放射素子10は、例えば、駆動回路5から一対のパッド16間に与える入力電力を調整することにより、赤外線放射層13に発生するジュール熱を変化させることができ、赤外線放射層13の温度を変化させることができる。よって、赤外線放射素子10は、赤外線放射層13の温度を変化させることで赤外線放射層13から放射される赤外線のピーク波長を変化させることができる。
パッケージ19としては、例えば、キャンパッケージを採用することができる。キャンパッケージは、赤外線放射素子10が実装される台座19aと、赤外線放射素子10を覆うように台座19aに固着されるキャップ19bとを備え、キャップ19bにおける赤外線放射素子10の前方に窓孔19rが形成された構成とすることができる。なお、台座19aには、赤外線放射素子10への給電用の複数本のピン19dが厚み方向に貫通して設けられている。パッケージ19としては、キャンパッケージに限らず、例えば、セラミックパッケージ等を採用してもよい。
窓材19wは、赤外線を透過する機能を有する。窓材19wは、平板状のシリコン基板により構成してある。窓材19wは、シリコン基板に限らず、例えば、ゲルマニウム基板や硫化亜鉛基板などでもよいが、シリコン基板を用いたほうが低コスト化の点で有利である。また、窓材19wとしては、レンズを採用することもできる。レンズは、半導体レンズ(例えば、シリコンレンズなど)により構成することができる。
半導体レンズの製造にあたっては、例えば、半導体基板(例えば、シリコン基板など)を準備する。その後には、所望のレンズ形状に応じて半導体基板との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成する。その後には、半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成する。その後には、当該多孔質部を除去することにより半導体レンズを形成する。この種の陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法については、例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報などに開示されている半導体レンズの製造方法などを適用できる。なお、上述の半導体レンズからなるレンズは、例えば、半導体基板として半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)を用い、多数のレンズを形成した後に、ダイシングなどによって個々のレンズに分離すればよい。
レンズは、レンズ部と当該レンズ部を全周に亘って囲むフランジ部とが連続一体に形成されている半導体レンズが好ましい。これにより、光源1は、厚みが略一定で厚み方向の両面の各々が平面状であるフランジ部を備えることにより、レンズの光軸方向におけるレンズと赤外線放射素子10との距離の精度を高めることが可能となる。
光源1は、赤外線放射素子10とパッケージ19とを備えた構成に限らず、例えば、ハロゲンランプ等を採用することもできる。
第1光学フィルタ31は、第1フィルタ部31aの中心波長λ1を検知対象のガスの吸収波長に設定してあるのが好ましい。これにより、第1光学フィルタ31は、検知対象のガスの吸収波長の赤外線をより高い透過率で透過することが可能となる。第1フィルタ部31aは、中心波長λ1の赤外線に対する透過率が50%以上であるのが、好ましく、70%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのが更に好ましい。第2光学フィルタ32は、第3フィルタ部32aの中心波長λ2を検知対象のガス及び他のガスに吸収されない波長(以下、「参照波長」ともいう。)に設定してあるのが好ましい。第3フィルタ部32aの透過波長域は、第1フィルタ部31aの透過波長域とは重複しないのが好ましい。第3フィルタ部32aは、中心波長λ2の赤外線に対する透過率が50%以上であるのが、好ましく、70%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのが更に好ましい。第3フィルタ部32aの中心波長λ2の赤外線に対する透過率は、第1フィルタ部31aの中心波長λ1の赤外線に対する透過率との差が小さいほうが好ましい。
赤外線式ガスセンサは、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分や比が検知対象のガス(例えば、二酸化炭素)の濃度に応じた値となるから、信号処理部4において検知対象のガスの濃度を精度良く求めることが可能となる。赤外線式ガスセンサは、ダイナミックレンジを広くする観点から、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との差分に基づいてガスの濃度を求めるのが好ましく、一方、経時変動を抑制する観点から、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との比に基づいてガスの濃度を求めるのが好ましい。
ところで、第1受光素子2aの出力信号は、信号成分とノイズ成分とを含んでいる。ここで、第1受光素子2aの出力信号は、第1受光素子2aへの赤外線の入射光量によって決まる。ここで、単位時間当りの第1受光素子2aへの赤外線の入射光量は、光源1の放射エネルギと第1光学系3aの透過スペクトルとで決まる。ここで、第1受光素子2aの出力電圧は、赤外線の波長をλ、光源1からの赤外線の放射エネルギをP(λ)、透過スペクトルをTa(λ)とし、第1光学系3aの透過波長域をλ1−Δλ1〜λ1+Δλ1、所定波長域をλc〜λd、第1受光素子2aの出力電圧をDaとすると、下記の(1)式の関係が成り立つ。ただし、(1)式では、光源1からの赤外線の放射エネルギの伝搬損失を無視している。
また、単位時間当りの第2受光素子2bへの赤外線の入射光量は、光源1の放射エネルギと第2光学系3bの透過スペクトルとで決まる。ここで、第2受光素子2bの出力電圧は、赤外線の波長をλ、光源1からの赤外線の放射エネルギをP(λ)、透過スペクトルをTb(λ)、第2光学系3bの透過波長域をλ2−Δλ2〜λ2+Δλ2、所定波長域をλc〜λd、この第2受光素子2bの出力電圧をDbとすると、下記の(2)式の関係が成り立つ。ただし、(2)式では、光源1からの赤外線の放射エネルギの伝搬損失を無視している。
また、第1受光素子2aの出力信号と第2受光素子2bの出力信号との比をκとすると、κは、下記の(3)式で表わされる。
また、第1受光素子2aの出力信号のS/N比は、下記の(4)式で表される。
また、第2受光素子2bの出力信号のS/N比は、下記の(5)式で表される。
よって、本願発明者らは、光源1から放射される赤外線の放射スペクトルが変化した場合の感度の変動を抑制する観点から、Ta(λ)とTb(λ)との比が1に近いのが好ましいという結論に至った。そこで、本実施形態の赤外線応用装置100では、上述のように、第1光学系3aと第2光学系3bとで、第1光学系3aの透過波長域と第2光学系3bの透過波長域との両方よりも長波長側の所定波長域の平均透過率が等しいことを特徴としてある。
第1受光素子2aは、第1光学フィルタ31における光源1側とは反対側に配置されている。第2受光素子2bは、第2光学フィルタ32における光源1側とは反対側に配置されている。第1受光素子2aと第2受光素子2bとは、同じ構成であるのが好ましい。これにより、赤外線応用装置100は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとの特性を略同じとすることが可能となる。
第1受光素子2aと第2受光素子2bとは、並んで配置されているのが好ましい。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bの各々は、例えば、図6に示すように、1つの受光部2rと、受光部2rに電気的に接続された2つの出力端子2j、2kとを備えた焦電素子を用いることができる。受光部2rは、焦電体基板2gの表側、裏側それぞれに形成され互いに対向する第1電極2h、第2電極2iと、この焦電体基板2gにおいて第1電極2hと第2電極2iとに挟まれた部分とで構成される。また、2つの出力端子2j、2kの一方の出力端子2jは、焦電体基板2gの表側に形成されて第1電極2hと電気的に接続され、他方の出力端子2kは、焦電体基板2gの裏側に形成されて第2電極2iと電気的に接続されている。
焦電体基板2gは、例えば、単結晶のLiTaO3基板を採用することができる。焦電体基板2gの材料としては、LiTaO3を採用しているが、これに限らず、例えば、LiNbO3、PbTiO3、PZT(:Pb(Zr,Ti)O3)、PZT−PMN(:Pb(Zr,Ti)O3−Pb(Mn,Nb)O3)等を採用してもよい。第1電極2h及び第2電極2iは、導電性を有し且つ検知対象の赤外線を吸収可能な導電膜により構成されている。この導電膜は、NiCr膜からなる。導電膜は、NiCr膜に限らず、例えば、Ni膜や金黒膜等でもよい。また、出力端子2jは、第1電極2hの導電膜と同じ材料及び膜厚の導電膜により構成することができる。また、出力端子2kは、第2電極2iの導電膜と同じ材料及び膜厚の導電膜により構成することができる。
赤外線応用装置100は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとが、1枚の焦電体基板2gに形成されたものとすることができる。これにより、赤外線応用装置100は、容易に、第1受光素子2aの特性と第2受光素子2bの特性とを略同じとすることが可能となる。ここで、赤外線応用装置100は、平面視において受光部2rを取り囲み厚み方向に貫通する孔2sが形成されているのが好ましい。これにより、赤外線応用装置100は、受光部2r同士を熱絶縁することが可能となり、また、突発的なノイズであるポップコーンノイズを低減することが可能となる。赤外線応用装置100は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとが、別々の焦電体基板2gに形成されたものでもよい。この場合、第1受光素子2aと第2受光素子2bとは、製造時に同じ焦電体ウェハに形成され、この焦電体ウェハから切り出されたもの同士を用いるのが好ましい。
第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、焦電素子に限らず、他の熱型の赤外線検出素子(例えば、サーモパイル、抵抗ボロメータ等)でもよい。第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、量子型の赤外線検出素子でもよい。要するに、第1受光素子2a及び第2受光素子2bは、熱型の赤外線検出素子、量子型の赤外線検出素子等の光電変換素子であればよい。
赤外線応用装置100は、第1受光素子2aと第2受光素子2bとを備えた赤外線受光ユニット2を備えている。赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bが収納されたパッケージ29を備えている。赤外線受光ユニット2は、例えば、パッケージ29における第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの前方に窓孔29c、29cを有し、各窓孔29c、29cそれぞれを塞ぐように第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32を配置することができる。
第1受光素子2aと第2受光素子2bとは、光源1の光軸に直交する一平面上において、この光軸と当該一平面との交点を中心として点対称となるように配置されているのが好ましい。
第1光学フィルタ31は、上述のように、基板31sと、第1フィルタ部31aと、第2フィルタ部31bとを備えている。また、第2光学フィルタ32は、基板32sと、第3フィルタ部32aと、第4フィルタ部32bとを備えている。基板31s、32sは、光源1から放射される赤外線を透過可能なものである。基板31s、32sとしては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、サファイア基板、酸化マグネシウム基板等を採用することができる。なお、赤外線受光ユニット2は、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32それぞれが別々の基板31s、32sを備えているが、例えば、図7に示すように、基板31sと基板32sとが連続した1枚の基板でもよい。図7では、第2フィルタ部31bと第4フィルタ部32bとを同じ構成としてある。これにより、赤外線応用装置100は、第2フィルタ部31bの分光特性と第4フィルタ部32bの分光特性とを略同じとすることが可能となり、また、第1光学フィルタ31と第2光学フィルタ32とを併せた光学要素の小型化を図ることが可能となる。
第1フィルタ部31aは、例えば、λ/4多層膜34と、波長選択層35と、λ/4多層膜36とで構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ/4多層膜34は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31aa、31ab)が積層された多層膜である。λ/4多層膜36は、複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31aa、31ab)が積層された多層膜である。波長選択層35は、λ/4多層膜34とλ/4多層膜36との間に介在する。波長選択層35は、選択波長に応じて光学膜厚を各薄膜31aa、31abの光学膜厚とは異ならせてある。λ/4多層膜34及びλ/4多層膜36は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第3フィルタ部32aは、例えば、λ/4多層膜37と、波長選択層38と、λ/4多層膜39とで構成されるバンドパスフィルタとすることができる。λ/4多層膜37は、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32aa、32ab)が積層された多層膜である。λ/4多層膜39は、複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32aa、32ab)が積層された多層膜である。波長選択層38は、λ/4多層膜37とλ/4多層膜39との間に介在する。波長選択層38は、選択波長に応じて光学膜厚を各薄膜32aa、32abの光学膜厚とは異ならせてある。λ/4多層膜37及びλ/4多層膜39は、屈折率周期構造を有していればよく、3種類以上の薄膜を積層したものでもよい。薄膜の材料としては、例えば、Ge、Si、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
第1フィルタ部31aの薄膜31aa、31abと第3フィルタ部32aの薄膜32aa、32abとはそれぞれ同じ材料を採用することができる。
第1フィルタ部31a、第3フィルタ部32aは、屈折率周期構造の中に光学膜厚の異なる波長選択層35、38を設けて屈折率周期構造に局所的な乱れを導入することにより、反射帯域の中に反射帯域幅に比べてスペクトル幅の狭い透過帯域を局在させることができる。第1フィルタ部31a、第3フィルタ部32aは、波長選択層35、38の光学膜厚を適宜変化させることによって、透過波長域の透過ピーク波長を変化させることができる。
第1フィルタ部31aの選択波長は、第1フィルタ部31aの透過波長域の中心波長λ1である。また、第3フィルタ部32aの選択波長は、第3フィルタ部32aの透過波長域の中心波長λ2である。
第2フィルタ部31bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜31ba、31bb)が積層された多層膜である。第2フィルタ部31bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。SiOxは、SiOやSiO2である。SiNx等は、SiN、Si3N4等である。
第4フィルタ部32bは、屈折率が異なり且つ光学膜厚が等しい複数種類の薄膜(図示例では、2種類の薄膜32ba、32bb)が積層された多層膜である。第4フィルタ部32bは、相対的に屈折率の高い薄膜の材料として、例えば、Ge、Si等を採用することができ、相対的に屈折率の低い薄膜の材料として、例えば、MgF2、Al2O3、SiOx、Ta2O5、SiNx等を採用することができる。
赤外線受光ユニット2のパッケージ29としては、例えば、キャンパッケージを採用することができる。キャンパッケージは、台座29aと、台座29aに固着されるキャップ29bとを備え、キャップ29bにおける第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれの前方に窓孔29c、29cが形成された構成とすることができる。
信号処理部4は、第1受光素子2aの出力信号を増幅する第1増幅回路を有する第1のIC素子41と、第2受光素子2bの出力信号を増幅する第2増幅回路を有する第2のIC素子42とを備えている。また、信号処理部4は、第1増幅回路にて増幅された出力信号と第2増幅回路にて増幅された出力信号との差分や比に基づく出力を発生する信号処理回路45とを備えている。赤外線応用装置100が赤外線式ガスセンサの場合、信号処理回路45は、第1増幅回路にて増幅された出力信号と第2増幅回路にて増幅された出力信号との差分や比に基づいて、検知対象のガスの濃度を求め、この濃度に相当する出力を発生する。
赤外線受光ユニット2は、第1のIC素子41及び第2のIC素子42もパッケージ29内に収納されているのが好ましい。この場合、赤外線受光ユニット2は、例えば、第1のIC素子41及び第2のIC素子42と、第1のIC素子41及び第2のIC素子42が実装された基板43とで構成される回路ブロック44が、パッケージ29内に収納されているのが好ましい。この場合、台座29aには、例えば、4本のリードピン29dが厚み方向に貫通して設けられる。4本のリードピン29dは、2本のリードピン29dが、IC素子41の出力信号を取り出すために利用され、他の2本のリードピン29dが、IC素子42の出力信号を取り出すために利用される。
基板43は、例えば、MID基板、部品内蔵基板、セラミック基板、プリント基板等により構成することができる。また、赤外線受光ユニット2は、第1受光素子2a及び第2受光素子2bが、回路ブロック44の基板43に実装された構成とすることができる。
なお、信号処理部4は、この信号処理部4の全部を赤外線受光ユニット2のパッケージ29内に設けてもよい。また、信号処理部4は、第1増幅回路と第2増幅回路と信号処理回路45とを集積化して1チップのIC素子とし、パッケージ29内に設けてもよい。また、信号処理部4は、複数のディスクリート部品を適宜接続して構成してもよい。また、信号処理部4は、この信号処理部4の全部を赤外線受光ユニット2とは別に設けてもよい。
次に、赤外線式ガスセンサの試料セル6について図8〜図10に基づいて説明する。
試料セル6は、筒状に形成されている。試料セル6は、その内部空間と外部とを連通させる複数の通気孔69が、試料セル6の軸方向に直交する方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6が、円筒状に形成されている場合、通気孔69は、試料セル6の径方向に貫通して形成されているのが好ましい。試料セル6は、通気孔69を通して外部からの気体が導入されたり、内部空間の空気が導出されたりする。
赤外線式ガスセンサは、試料セル6の軸方向の一端部側に光源1が配置され、試料セル6の軸方向の他端部側に赤外線受光ユニット2が配置されている。赤外線式ガスセンサは、通気孔69を通って試料セル6の内部空間に、例えば、外部からの検知対象のガス、あるいは検知対象のガスを含む気体が導入される。このため、赤外線式ガスセンサでは、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が増加すると、赤外線受光ユニット2へ入射する赤外線の光量が低下し、試料セル6の内部空間にある検知対象のガスの濃度が低下すると、赤外線受光ユニット2へ入射する赤外線の光量が増加する。
試料セル6は、この試料セル6の中心軸OX(図10参照)を含む平面で分割された対になる半割体64、65(図8参照)を結合することにより形成されている。半割体64と半割体65とは、例えば、嵌め合い、超音波溶着、接着等から選択される技術により結合することができる。
試料セル6は、光源1から放射された赤外線を赤外線受光ユニット2側へ反射する光学要素を兼ねているのが好ましい。ここで、試料セル6は、例えば、合成樹脂により形成されている場合、内側に、赤外線を反射する反射層を備えた構成とするのが好ましい。
試料セル6の材料は、合成樹脂に限らず、例えば、金属を採用してもよい。試料セル6は、特定波長の赤外線に対する反射率が比較的高い金属により形成されている場合、反射層を別途に備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
要するに、試料セル6は、筒状であり、その内面が光源1から放射された赤外線を反射する反射面66であるのが好ましい。上述の反射層を備えている場合には、この反射層の表面が反射面66を構成することができる。なお、図10中の矢印付きの線は、光源1から放射された赤外線の進行経路を模式的に示したものである。
赤外線式ガスセンサは、光源1を保持する保持部材70を備え、この保持部材70が試料セル6に取り付けられている。また、赤外線式ガスセンサは、赤外線受光ユニット2を保持する保持部材80を備え、この保持部材80が試料セル6に取り付けられている。
保持部材70は、キャップ部71と、押さえ板72とからなる。キャップ部71は、円盤状であって、試料セル6側の端面に、試料セル6の一端部が挿入される凹部71aが設けられ、凹部71aの底部の中央に、光源1が挿入される貫通孔71bが設けられている。押さえ板72は、キャップ部71に対して光源1を押さえるためのものである。
保持部材70は、押さえ板72及びキャップ部71の孔72b,71dに通された取付ねじ(図示せず)が試料セル6の一端部のねじ部64d,65dにねじ込まれることによって、試料セル6に取り付けられている。
保持部材80は、キャップ部81と、押さえ板82とからなる。キャップ部81は、円盤状であって、試料セル6側の端面に、試料セル6の他端部が挿入される凹部81aが設けられ、凹部81aの底部の中央に、赤外線受光ユニット2が挿入される貫通孔81bが設けられている。押さえ板82は、キャップ部81に対して赤外線受光ユニット2を押さえるためのものである。
保持部材80は、押さえ板82及びキャップ部81の孔82b,81cに通された取付ねじ(図示せず)が試料セル6の他端部のねじ部にねじ込まれることによって、試料セル6に取り付けられている。
なお、保持部材70,80それぞれの構造は、特に限定するものではない。また、試料セル6への保持部材70,80それぞれの取付構造も特に限定するものではない。
ところで、試料セル6の反射面66は、試料セル6の中心軸OX上に規定した長軸を回転軸とする回転楕円体の長軸方向の両端部それぞれを長軸に直交する2つの平面VP1、VP2(図10参照)によりカットした形状としてある。よって、試料セル6は、回転楕円体(長楕円体)の一部に対応する内部空間が形成されている。
赤外線式ガスセンサは、光源1を、試料セル6の中心軸OX上において、上記回転楕円体の一方の焦点P1に配置し、赤外線受光ユニット2を、試料セル6の中心軸OX上において、上記回転楕円体の他方の焦点P2よりも光源1に近い側に配置するのが好ましい。
赤外線式ガスセンサは、光源1が、上記回転楕円体の一方の焦点P1近傍に配置されている。近傍とは、焦点P1と光源1との距離が所定値より小さい全ての点からなる部分集合であり、焦点P1の点も含む。上記所定値は、上記回転楕円体の焦点P1と焦点P2との距離によって変わる。要するに、光源1は、厳密な意味で焦点P1に配置されている必要はなく、実質的に焦点P1に配置されているとみなせれる位置にあればよい。光源1から斜め方向に放射された赤外線は、反射面66によって反射されて、他方の焦点P2に集光されるように導光される。しかしながら、他方の焦点P2に赤外線受光ユニット2を配置した比較例の赤外線式ガスセンサでは、試料セル6の他端部において反射面66で反射されて第1光学フィルタ31や第2光学フィルタ32に入射する赤外線の入射角が大きくなりやすい。そして、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32は、入射角が大きくなるほど、透過スペクトル(透過率−波長特性)が短波長側へのずれが大きくなり、選択波長を含む特定波長域の赤外線の透過率が低下してしまう。よって、比較例の赤外線式ガスセンサでは、S/N比が低下してしまう懸念がある。一方、比較例の赤外線式ガスセンサでは、試料セル6の中心軸OXに沿った方向における試料セル6と赤外線受光ユニット2との距離が長くなるほど、赤外線のロスが多くなってしまう。
これに対して、本実施形態の赤外線式ガスセンサは、赤外線受光ユニット2を、試料セル6の中心軸OX上において、反射面の他方の焦点P2よりも光源1に近い側に配置してある。つまり、赤外線受光ユニット2は、各光学フィルタ31,32及び各受光素子2a,2bが、試料セル6の中心軸OXに沿った方向において、他方の焦点P2とよりも光源1に近い側であって、試料セル6と他方の焦点P2との間に配置されている。これにより、本実施形態の赤外線式ガスセンサは、試料セル6の中心軸OXに沿った方向における試料セル6と赤外線受光ユニット2との距離を比較例と同じとした場合、比較例に比べて、試料セル6の他端部において反射面66で反射されて各光学フィルタ31,32に入射する赤外線の入射角を小さくすることが可能となる。よって、本実施形態の赤外線式ガスセンサは、比較例の赤外線式ガスセンサに比べて、特定波長域(各光学フィルタ31,32の設計上の透過波長域)の赤外線の透過率が低下するのを抑制することが可能となり、S/N比を向上させることが可能となる。また、各光学フィルタ31、32を透過した赤外線が、各光学フィルタ31,32に対向している各受光素子2a,2b以外の各受光素子2b,2aに入射するクロストークの発生を抑制することが可能となり、測定精度の向上を図ることが可能となる。試料セル6の中心軸OXに沿った方向における試料セル6と赤外線受光ユニット2との距離は、短い方が好ましく、零がより好ましい。
なお、赤外線式ガスセンサは、光源1と赤外線受光ユニット2との間に配置される部材(試料セル6等)の形状や数、配置等を特に限定するものではない。
以上説明した本実施形態の赤外線式ガスセンサでは、第1光学系3aと第2光学系3bとで、第1光学系3aの透過波長域と第2光学系3bの透過波長域との両方よりも長波長側の所定波長域の平均透過率が等しい。よって、赤外線式ガスセンサは、光源1への同じ入力電力での光源1の到達温度が低下した場合、第1受光素子2a及び第2受光素子2bそれぞれのS/N比が変化しても、第1受光素子2aのS/N比と第2受光素子2bのS/N比との相対比の変化を抑制することができ、感度の変化を抑制できる。
(実施形態2)
以下では、本実施形態の赤外線応用装置100について、図11に基づいて説明する。なお、本実施形態の赤外線応用装置100は、実施形態1の赤外線応用装置100と略同じなので、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
以下では、本実施形態の赤外線応用装置100について、図11に基づいて説明する。なお、本実施形態の赤外線応用装置100は、実施形態1の赤外線応用装置100と略同じなので、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の赤外線応用装置100では、実施形態1で説明した光源1の窓材19w(図1参照)の代わりに、所定波長域の赤外線を反射する光学フィルタ19fを配置している点が相違する。光学フィルタ19fは、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32それぞれの透過波長域の赤外線の反射率を低減する反射防止膜を基板にコーティングした無反射コートフィルタであり、所定波長域の赤外線を反射するように光学設計されている。図12は、光学フィルタ19fの光学特性の一例を示す。図12に示す光学特性では、赤外線応用装置100が実施形態1と同様の赤外線式ガスセンサの場合、検知対象のガスの吸収波長及び参照波長の赤外線の反射率を略0%にすることが可能となり、所定波長域の赤外線の反射率を70〜80%とすることが可能となる。図13は、第1光学系3aの透過スペクトルの説明図であり、光学フィルタ19fを備えたことにより、透過波長域よりも長波長側での赤外線の透過率に関して、実線で示す透過率から一点鎖線で示す透過率へ低減することが可能となる。なお、透過波長域の透過率については、光学フィルタ19fの有無による差異は殆どない。また、第2光学系3bの透過スペクトルは、図示していないが、第1光学系3aの透過スペクトルと同様、透過波長域よりも長波長側での赤外線の透過率を低減することが可能となる。基板としては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、サファイア基板などを採用することができる。
本実施形態の赤外線応用装置100では、光学フィルタ19fが、第1光学系3a及び第2光学系3bそれぞれの一部を構成している。よって、第1光学系3aは、所定波長域の赤外線を反射することで透過率を低くする第5フィルタ部として光学フィルタ19fを備えている。また、第2光学系3bは、所定波長域の赤外線を反射することで透過率を低くする第6フィルタ部として光学フィルタ19fを備えている。よって、本実施形態の赤外線応用装置100では、実施形態1の赤外線応用装置100に比べて、第1光学系3a及び第2光学系3bの各々について、所定波長域の赤外線の透過率をより低減することが可能となる。
また、本実施形態の赤外線応用装置100では、第5フィルタ部と第6フィルタ部とが、1枚の基板に形成されているので、第5フィルタ部と第6フィルタ部とを併せた光学要素の小型化を図ることが可能となる。
(実施形態3)
以下では、本実施形態の赤外線応用装置100について、図14に基づいて説明する。なお、本実施形態の赤外線応用装置100は、実施形態2の赤外線応用装置100と略同じなので、実施形態2と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
以下では、本実施形態の赤外線応用装置100について、図14に基づいて説明する。なお、本実施形態の赤外線応用装置100は、実施形態2の赤外線応用装置100と略同じなので、実施形態2と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の赤外線応用装置100は、赤外線受光ユニット2の構成が実施形態1,2とは相違する。本実施形態の赤外線応用装置100における赤外線受光ユニット2は、パッケージ32の窓孔29cが1つであり、この窓孔29cを塞ぐように1つの光学フィルタ29wが配置されている。また、赤外線受光ユニット2は、光学フィルタ29wと第1受光素子2a及び第2受光素子2bとの間に、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32が配置されている。光学フィルタ29wとしては、実施形態2で説明した光学フィルタ19fと同様の光学特性のものを用いることができる。要するに、光学フィルタ29wは、第1光学フィルタ31及び第2光学フィルタ32それぞれの透過波長域の赤外線の反射率を低減する反射防止膜を基板にコーティングした無反射コートフィルタであり、所定波長域の赤外線を反射するように光学設計されている。よって、本実施形態の赤外線応用装置100では、実施形態2の赤外線応用装置100に比べて、第1光学系3a及び第2光学系3bの各々について、所定波長域の赤外線の透過率をより低減することが可能となる。
本実施形態の赤外線応用装置100では、光学フィルタ29wが、第1光学系3a及び第2光学系3bそれぞれの一部を構成している。よって、第1光学系3aは、所定波長域の赤外線を反射することで透過率を低くする第5フィルタ部として光学フィルタ19f及び光学フィルタ29wを備えている。また、第2光学系3bは、所定波長域の赤外線を反射することで透過率を低くする第6フィルタ部として光学フィルタ19f及び光学フィルタ29wを備えている。
上述の各実施形態1〜3では赤外線応用装置100として赤外線式ガスセンサを例示したが赤外線応用装置100は、赤外線式ガスセンサに限らない。赤外線応用装置は、赤外線を利用する装置であればよく、例えば、非分散型ガス分析計、火災時に炎の中の炭酸ガス(CO2ガス)の共鳴放射(「CO2共鳴放射」とも呼ばれている。)により発生する特定波長(4.3μm乃至4.4μm)の赤外線を検出して炎検知を行う赤外線式炎検知器等でもよい。
1 光源
2 赤外線受光ユニット
2a 第1受光素子
2b 第2受光素子
3a 第1光学系
3b 第2光学系
4 信号処理部
19 光学フィルタ(第5フィルタ部、第6フィルタ部)
29W 光学フィルタ(第5フィルタ部、第6フィルタ部)
31 第1光学フィルタ
31a 第1フィルタ部
31b 第2フィルタ部
31s 基板
32 第2光学フィルタ
32a 第3フィルタ部
32b 第4フィルタ部
32s 基板
100 赤外線応用装置
2 赤外線受光ユニット
2a 第1受光素子
2b 第2受光素子
3a 第1光学系
3b 第2光学系
4 信号処理部
19 光学フィルタ(第5フィルタ部、第6フィルタ部)
29W 光学フィルタ(第5フィルタ部、第6フィルタ部)
31 第1光学フィルタ
31a 第1フィルタ部
31b 第2フィルタ部
31s 基板
32 第2光学フィルタ
32a 第3フィルタ部
32b 第4フィルタ部
32s 基板
100 赤外線応用装置
Claims (6)
- 光源と、第1受光素子と、第2受光素子と、前記光源と前記第1受光素子との間に配置される第1光学系と、前記光源と前記第2受光素子との間に配置される第2光学系と、前記第1受光素子の出力信号と前記第2受光素子の出力信号との差分もしくは比に基づく出力を発生する信号処理部とを備え、前記光源は、熱放射により赤外線を放射する赤外光源であり、前記第1光学系と前記第2光学系とは、互いに透過波長域が異なり、且つ、前記各透過波長域の両方よりも長波長側の所定波長域の平均透過率が等しいことを特徴とする赤外線応用装置。
- 前記第1光学系は、前記第1光学系の前記透過波長域を規定する第1フィルタ部と、前記所定波長域の赤外線の透過率を低くする第2フィルタ部とを備え、前記第2光学系は、前記第2光学系の前記透過波長域を規定する第3フィルタ部と、前記所定波長域の赤外線の透過率を低くする第4フィルタ部とを備えることを特徴とする請求項1記載の赤外線応用装置。
- 前記第2フィルタ部及び前記第4フィルタ部は、前記所定波長域の赤外線を吸収することで透過率を低くするフィルタであることを特徴とする請求項2記載の赤外線応用装置。
- 前記第2フィルタ部と前記第4フィルタ部とは、1枚の基板に形成されてなることを特徴とする請求項2又は3記載の赤外線応用装置。
- 前記第1光学系は、前記所定波長域の赤外線を反射することで透過率を低くする第5フィルタ部を備え、前記第2光学系は、前記所定波長域の赤外線を反射することで透過率を低くする第6フィルタ部を備えることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の赤外線応用装置。
- 前記第5フィルタ部と前記第6フィルタ部とは、1枚の基板に形成されてなることを特徴とする請求項5記載の赤外線応用装置。
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---|---|---|---|
JP2013012368A JP2014142319A (ja) | 2013-01-25 | 2013-01-25 | 赤外線応用装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPWO2017043263A1 (ja) * | 2015-09-09 | 2018-06-07 | 株式会社村田製作所 | ガス濃度検出装置 |
JP2020027205A (ja) * | 2018-08-14 | 2020-02-20 | 株式会社タムロン | 撮像光学系及び撮像装置 |
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2013
- 2013-01-25 JP JP2013012368A patent/JP2014142319A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPWO2017043263A1 (ja) * | 2015-09-09 | 2018-06-07 | 株式会社村田製作所 | ガス濃度検出装置 |
JP2020027205A (ja) * | 2018-08-14 | 2020-02-20 | 株式会社タムロン | 撮像光学系及び撮像装置 |
JP7178821B2 (ja) | 2018-08-14 | 2022-11-28 | 株式会社タムロン | 撮像光学系及び撮像装置 |
US11662307B2 (en) | 2021-03-29 | 2023-05-30 | Asahi Kasei Microdevices Corporation | Optical concentration measuring device, module for optical concentration measuring device and optical concentration measuring method |
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