特許文献2に記載される技術では、光共振による効果が得られるのは、入射光に含まれる光のうちの、波長λ付近の波長についてのみである。
本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、簡単な構成によって、熱型光検出器の検出波長帯域を広げることができる。
(1)本発明の熱型光検出器の一態様は、基板と、前記基板上に支持される支持部材と、前記支持部材に接して形成されている熱検出素子と、を有し、前記熱検出素子の第一部分の表面である第1反射面と、前記基板、前記支持部材および前記熱検出素子のいずれか一つの表面であり、前記第1反射面から第1距離だけ離れた位置に設けられている第3反射面との間で、第1波長が共振し、前記熱検出素子の第一部分とは異なる第二部分の表面であり、前記第3反射面から第2距離だけ離れた位置に設けられている第2反射面と、前記第3反射面との間で、前記第1波長とは異なる第2波長が共振する。
本態様では、熱検出素子は、支持部材に接して形成される。そして、熱検出素子の一部分の表面によって構成される第1反射面と、基板、支持部材および熱検出素子のいずれか一つの表面であり、第1反射面から第1距離だけ離れた位置に設けられている第3反射面との間で、第1波長λ1が共振する。例えば、第3反射面側から光が入射される場合、入射光に含まれる波長λ1の光と、その入射光が第1反射面で反射した光との相互干渉が生じる。これによって、例えば、熱検出素子における光の実効吸収率が高まる。また、熱検出素子が光吸収層を含む場合、光吸収層における実効吸収率が高まる。よって、第1波長λ1の光に対する熱検出素子の感度を高めることができる。
また、第1波長とは異なる第2波長をλ2としたとき、熱検出素子の第一部分とは異なる第二部分の表面であり、前記第3反射面から第2距離だけ離れた位置に設けられている第2反射面と、第2反射面から第2距離(第1距離とは異なる)離れた位置において設けられている第3反射面との間で、第2波長λ2が共振する。これによって、例えば、熱検出素子における光の実効吸収率が高まる。また、熱検出素子が光吸収層を含む場合、光吸収層における実効吸収率が高まる。よって、第2波長λ2の光に対する熱検出素子の感度を高めることができる。
本態様では、第3反射面と、熱検出素子の一部で構成される第1反射面ならびに第2反射面を利用して、異なる波長に共振する2つの光共振器を構成することから構造が簡単であり、熱型光検出器の製造が容易である。
また、上述のとおり、異なる2つの波長において共振ピークが生じることから、熱型光検出器が検出可能な光の波長帯域(波長幅)を広げることができる。したがって、例えば、簡単な構成によって、熱型光検出器の検出波長帯域を広げることができる。
(2)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記熱検出素子の第1反射面、前記第2反射面ならびに前記第3反射面は前記支持部材の表面と平行であり、前記第1波長をλ1としたとき、前記第1距離が、m・(λ1/4)(mは1以上の整数)の関係を満足し、前記第2波長をλ2としたとき、前記第2距離が、n・(λ2/4)(nは1以上の整数)の関係を満足する。
本態様では、光共振器として、いわゆるλ/4光共振器を使用する。熱検出素子の第1反射面、第2反射面ならびに第3反射面は支持部材の表面に対して平行である。すなわち、各反射面は互いに平行に配置されている。また、第1距離は、第1波長λ1としたとき、m・(λ1/4)(mは1以上の整数)の関係を満足する。また、第2距離は、n・(λ2/4)(nは1以上の整数)の関係を満足する。
本態様では、一対の反射面間の距離を調整することによって、λ/4光共振器を構成することができる。したがって、熱型光検出器の製造が容易である。また、簡単な構成で、熱型光検出器の感度を向上させることができる。
(3)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記熱検出素子は、焦電材料層を、前記支持部材側の第1電極ならびに前記支持部材側とは反対の側の第2電極によって挟んだ構造をもつ焦電キャパシターと、前記支持部材上において前記焦電キャパシターに接し、かつ、前記第1電極と前記第2電極の上に形成されている光吸収層と、を含み、前記第1電極の平面視における面積は、前記第2電極の平面視における面積よりも大きく、かつ、前記第1電極は、前記支持部材上に延在する延在部分を有し、前記第1電極の前記延在部分の表面によって前記第1反射面が構成され、前記第2電極の表面によって前記第2反射面が構成され、前記光吸収層の上面によって前記第3反射面が構成されている。
本態様では、熱検出素子は、焦電キャパシターと、光吸収層とを含む。焦電キャパシターは、焦電材料層を、支持部材側の第1電極ならびに反対側の第2電極によって挟んだ構造を有する。
また、第1電極の平面視における面積は、第2電極の平面視における面積よりも大きく設定され、かつ、第1電極は、支持部材上に延在する延在部分を含む。すなわち、焦電キャパシターは、いわゆるプレーナー構造を有する。
第1電極の延在部分の表面によって第1反射面が構成される。第2電極の表面によって第2反射面が構成される。光吸収層の上面(光吸収層が複数層によって構成される場合には最上面)によって第3反射面が構成される。
本態様によれば、プレーナー構造の焦電型キャパシターの構成要素である第1電極と第2電極、ならびに光吸収層の上面を活用することによって、特別な構造を付加することなく(つまり、熱検出素子としての焦電型光検出器の通常の構成で)2個の光共振器を構成することができる。
すなわち、第1電極と第2電極との段差(高さの差)と、光吸収層の高さ(膜厚)とを調整することによって、2つの光共振器を簡単に構成することができる。よって、熱型光検出器の構成が複雑化せず、また、製造も容易である。
また、金属材料は熱伝導性にも優れる。よって、第1電極の支持部材上に延在する延在部分上にも光吸収層を形成することによって、光吸収層の広範囲で発生する熱を集熱して、熱検出素子に効率的に伝達する効果も期待することができる。
(4)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記熱検出素子は、焦電材料層を、前記支持部材側の第1電極ならびに前記支持部材側とは反対の側の第2電極によって挟んだ構造をもつ焦電キャパシターと、前記支持部材上において前記焦電キャパシターに接し、かつ、前記第1電極と前記第2電極の上に形成されている光吸収層と、前記支持部材上に形成されている、前記第1電極に接続される第1配線ならびに前記第2電極に接続される第2配線と、を含み、前記第1配線および前記第2配線の少なくとも一方の表面によって前記第1反射面が構成され、前記第2電極の表面によって前記第2反射面が構成され、前記光吸収層の上面によって前記第3反射面が構成されている。
本態様では、熱検出素子は、焦電キャパシターと、光吸収層と、第1配線ならびに第2配線と、を含む。焦電キャパシターは、焦電材料層を、支持部材側の第1電極ならびに反対側の第2電極によって挟んだ構造を有する。また、光吸収層は、支持部材上において、焦電キャパシターに接して形成され、かつ第1電極と第2電極の上に形成されている。また、第1配線は、支持部材上において第1電極に接続されている。また、第2配線は、支持部材上において、第2電極に接続されている。なお、支持部材上というとき、何らかの部材を介して上側にある場合、あるいは、直上にある場合の双方を含む広義の意味で使用する。
第1配線および第2配線の少なくとも一方の表面によって第1反射面が構成される。また、第2電極の表面によって第2反射面が構成され、光吸収層の上面(光吸収層が複数層によって構成される場合には最上面)によって第3反射面が構成される。
本態様によれば、焦電型キャパシターの構成要素である電極ならびに配線と、光吸収層の上面とを活用することによって、特別な構造を付加することなく(つまり、熱検出素子としての焦電型光検出器の通常の構成で)、2個の光共振器を構成することができる。
すなわち、配線と第2電極との段差(高さの差)と、光吸収層の高さ(膜厚)とを調整することによって、2つの光共振器を簡単に構成することができる。よって、熱型光検出器の構成が複雑化せず、また、製造も容易である。
(5)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記第1波長λ1を10μmとし、前記第2波長λ2を8μmとし、前記第1距離を2.5μmとし、前記第2距離を2μmとする。
本態様では、第1距離を2.5μmとすることによって、10μmの波長(第1波長λ1)に対する第1光共振器を構成することができる。また、第2距離を2μmとすることによって、8μmの波長(第2波長λ2)に対する第2光共振器を構成することができる。
(6)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記熱型検出素子は、前記支持部材と一体化された感熱抵抗体を含み、前記支持部材と一体化された感熱抵抗体は、基板上において前記基板から離れて支持されており、かつ、前記感熱抵抗体の断面形状は、前記基板の表面と前記第1距離を隔てて対向する第1面を有する部分と、前記基板の表面と前記第2距離を隔てて対向する第2面を有する部分と、前記第1面を有する部分と前記第2面を有する部分とを接続する接続部とを有し、前記第1面および前記第2面は、前記基板の表面に対して平行であり、前記第1面によって前記第1反射面が構成され、前記第2面によって前記第2反射面が構成され、前記基板の表面によって前記第3反射面が構成される。
本態様では、熱検出素子は、支持部材と一体化された感熱抵抗体を備える、いわゆるボロメーターによって構成される。感熱抵抗体は、基板上において基板から離れて支持されている。
また、感熱抵抗体は、その断面形状が屈曲した形状を有する。すなわち、感熱抵抗体の断面形状は、基板の表面と第1距離を隔てて対向する第1面を有する部分と、基板の表面と第2距離を隔てて対向する第2面を有する部分と、第1面を有する部分と第2面を有する部分とを接続する接続部とを有する。
第1面および第2面は、基板の表面に対して平行である。第1面によって第1反射面が構成される。第2面によって第2反射面が構成される。また、基板の表面によって第3反射面が構成される。
本態様によれば、屈曲した断面形状をもつ感熱抵抗体の異なる2面(第1面と第2面)、ならびに基板の表面を活用することによって、特別な構造を付加することなく(つまり、ボロメーターの通常の構成で)、2個の光共振器を構成することができる。
(7)本発明の熱型光検出装置の一態様は、上記いずれかの熱型光検出器が複数、2次元配置されている。
これによって、複数の熱型光検出器(熱型光検出素子)が2次元に配置された(例えば、直交2軸の各々に沿ってアレイ状に配置された)、熱型光検出装置(熱型光アレイセンサー)が実現される。
(8)本発明の電子機器の一態様は、上記いずれかの熱型光検出器と、前記熱型光検出器の出力を処理する制御部と、を有する。
上記いずれかの熱型光検出器は、例えば、検出波長帯域が広く、また光の検出感度が高い。よって、この熱型光検出器を搭載する電子機器の性能が高まる。電子機器としては、例えば、赤外線センサー装置、サーモグラフィー装置、車載用夜間カメラや監視カメラ等が挙げられる。なお、制御部は、例えば、画像処理部やCPUで構成することができる。
(9)本発明の熱型光検出器の製造方法の一態様は、基板の主面上に絶縁層を含む構造体を形成し、前記構造体の少なくとも最上層の一部を除去して凹部を形成し、前記凹部の内表面上にエッチングストッパー膜を形成した後、前記凹部内に犠牲層を形成する工程と、前記犠牲層を含む前記構造体上に支持部材を形成する工程と、前記前記支持部材上に、焦電材料層を、前記支持部材側の第1電極ならびに前記支持部材側とは反対の側の第2電極によって挟んだ構造を有し、前記第1電極の平面視における面積が前記第2電極の平面視における面積よりも大きく、かつ前記第1電極が前記支持部材上に延在する延在部分を有する焦電キャパシターと、前記支持部材上において前記焦電キャパシターに接し、かつ前記第1電極と前記第2電極の上に形成される光吸収層と、を有する熱検出素子を形成する工程と、を含み、前記支持部材上において前記焦電キャパシターに接し、かつ、前記第1電極と前記第2電極上に形成される光吸収層と、を形成する工程と、を含み、前記熱検出素子の第1電極の前記延在部分の表面、前記第2電極の表面ならびに前記光吸収層の上面は、前記支持部材の表面と平行に形成され、第1波長をλ1としたとき、前記第1電極の前記延在部分の表面と前記光吸収層の上面との間の距離が、m・(λ1/4)(mは1以上の整数)の関係を満足し、第2波長をλ2としたとき、前記第2電極の表面と前記光吸収層の上面との間の距離が、n・(λ2/4)(nは1以上の整数)の関係を満足する。
本態様では、基板の主面に絶縁層を含む構造体を形成し、構造体の一部に形成した凹部に犠牲層を埋め込んだ後、支持部材を形成し、さらに、支持部材上に熱検出素子を形成する。熱検出素子は、支持部材側の第1電極ならびに支持部材側とは反対の側の第2電極によって焦電材料層を挟んだ構造を有し、第1電極の平面視における面積が第2電極の平面視における面積よりも大きく、かつ第1電極が支持部材上に延在する延在部分を含む焦電キャパシターと、支持部材上において焦電キャパシターに接して形成される光吸収層と、を含む。
熱検出素子の第1電極の延在部分の表面、第2電極の表面ならびに光吸収層の上面は、支持部材の表面と平行に形成される。また、第1波長をλ1としたとき、第1電極の延在部分の表面と光吸収層の上面との間の第1距離が、m・(λ1/4)(mは1以上の整数)の関係を満足するように、光吸収層の高さ(膜厚)を調整する。また、第2波長をλ2としたとき、第2電極の表面と光吸収層の上面との間の距離が、n・(λ2/4)(mは1以上の整数)の関係を満足するように、第1電極に対する第2電極の高さ、ならびに光吸収層の高さ(膜厚)を調整する。
第1波長λ1に共振する光共振器を構成することによって、光吸収層における光の実効吸収率が高まる。また、第2波長λ2に共振する光共振器を構成することによって、光吸収層における光の実効吸収率が高まる。また、2つの波長の共振ピークが重なることによって、熱型光検出器の検出波長帯域を広げることができる。
また、本態様では、第1電極と第2電極との段差(高さの差)ならびに光吸収層の膜厚を調整するだけで、異なる2つの波長に共振する光共振器を構成することができる。よって、熱型光検出器の構造が簡単であり、製造が容易である。
本態様によれば、例えば、半導体製造技術(例えばMEMS技術)を用いて、小型かつ検出感度の高い熱型光検出器を容易に実現することができる。
このように、本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、簡単な構成によって、熱型光検出器の検出波長帯域を広げることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1実施形態)
図1は、熱型光検出器の一例の平面図ならびに断面図である。図1では、単独の熱型光検出器を示しているが、複数の熱型光検出器を、例えばマトリクス状に配置して、熱型光検出器アレイ(すなわち熱型検出装置)を構成することもできる。図1に示される熱型光検出器は、焦電型赤外線検出器(光センサーの一種)200である(但し、一例であり、これに限定されるものではない)。
(レイアウト構成)
図1の下側に示される平面図を参照して、熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)200のレイアウト構成について説明する。支持部材(メンブレン)215は、焦電キャパシター230を載置する載置部210と、この載置部210を、空洞部(熱分離空洞部)212上にて保持する2本のアーム、すなわち第1アーム部212aと第2アーム部212bと、を有している。焦電キャパシター230は、支持部材(メンブレン)215における載置部210上(具体的には、載置部210の中央領域上)に形成されている。
すなわち、熱検出素子220は、焦電キャパシター230と、光吸収層270と、を有する。焦電キャパシター230は、支持部材(メンブレン)215に接して形成されている。この焦電キャパシター230は、支持部材215側の第1電極(下部電極)234と、支持部材215とは反対側の第2電極(上部電極)236とによって焦電材料層(PZT層)を挟んだ構造をもつ。
第1電極234の平面視における面積は、第2電極236の平面視における面積よりも大きく、かつ、第1電極234は、支持部材215上(具体的には、載置部210上)に延在する延在部分(図1において斜線が施されている部分)を有する。すなわち、焦電キャパシター230は、いわゆるプレーナー構造を有する。図示されるように、焦電キャパシター230は、平面視で、略正方形の形状を有する。
また、光吸収層270は、支持部材215上において、焦電キャパシター230に接して形成され、かつ第1電極234と第2電極236の上に形成されている。
支持部材(メンブレン)215は、例えば、酸化シリコン膜(SiO)/窒化シリコン膜(SiN)/酸化シリコン膜(SiO)の3層の積層膜をパターニングして、細長い形状に加工することによって形成することができる。第1アーム部212aと第2アーム部212bは細長い形状に加工されている。細長い形状とするのは、熱抵抗を大きくして、焦電キャパシター230からの放熱(熱の逃げ)を抑制するためである。
第1アーム部212aにおける幅広の先端部232aは、第1ポスト104a(図1において破線で示される、平面視で円形の部材)によって、空洞部102上において支持されている。また、第1アーム部212a上には、一端226が、第1コンタクトホール252を介して焦電キャパシター230の第1電極234に接続され、他端231aが、第1ポスト104aに接続されている配線229aが形成されている。
また、第1ポスト104aは、例えば、柱状に加工された多層配線構造(層間絶縁層と、焦電キャパシター230と下地のシリコン基板20に設けられたトランジスター等の素子とを接続するための配線を構成する導電層とからなる)によって構成することができる。
同様に、第2アーム部212bは、第2ポスト104b(破線で示される、平面視で円形の部材)によって、空洞部102上において支持されている。また、第2アーム部212b上には、一端(参照符号228)が、焦電キャパシター230の第2電極236に接続され、他端231bが、第2ポスト104bに接続される配線229bが形成されている。
第2ポスト104bは、例えば、柱状に加工された多層配線構造(層間絶縁層と、焦電キャパシター230と下地のシリコン基板20に設けられたトランジスター等の素子とを接続するための配線を構成する導電層とからなる)によって構成することができる。
図1に示される例では、第1ポスト104aならびに第2ポスト104bを用いて、支持部材215や焦電キャパシター230を含む素子構造体を、空洞部102において保持している。この構成は、共通の空洞部102において、熱検出素子220の構成要素としての焦電キャパシター230を複数、高密度に配置する際(つまり、熱検出素子のアレイを形成する際)に有効である。但し、この構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、図7に示される例のように、一つの焦電キャパシター230毎に一つの空洞102を形成し、支持部材(メンブレン)215を、空洞部102の周囲の、多層配線構造129を含む多層構造体150にて支持するようにしてもよい(この例については後述する)。
(断面構造)
次に、図1の上側の図を参照して、熱型光検出器200の断面構造について説明する。支持部材215の載置部210上には、熱検出素子220が形成されている。熱検出素子220の構成要素としての焦電キャパシター230は、上述のとおり、大面積の第1電極234と、焦電材料層(PZT)232と、第2電極236と、を有する。なお、図1では、焦電キャパシターの電極や配線などを省略している(詳細な構造については後述する)。
また、焦電キャパシター230に接して光吸収層(例えば、SiO2層)270が設けられている。
ここで注目すべきは、熱検出素子220の構成要素としての焦電キャパシター230の第一部分の表面によって構成される第1反射面A1と、第1反射面A1から第1距離H1だけ離れた位置において第1反射面A1に対向して設けられている第3反射面A3との間で、第1波長λ1に対する第1光共振器が構成されており、また、焦電キャパシター230の一部分とは異なる第二部分の表面によって構成される第2反射面A2と、第2反射面から第2距離H3だけ離れた位置において設けられている第3反射面A3との間で、第1波長λ1とは異なる第2波長λ2に対する第2光共振器が構成されている点である。
具体的には、第1電極234の延在部分(点線で囲んで示される部分Z1)の表面によって第1反射面A1が構成され、第2電極236の表面によって第2反射面A2が構成され、光吸収層270の上面(光吸収層270が複数層によって構成される場合には最上面)によって第3反射面A3が構成される。
以上は一例であり、これに限定されるものではない。第3反射面は、基板(例えば、図5に示される参照符号20)、支持部材215および熱検出素子220(焦電キャパシター230と光吸収層270とを含む)のいずれか一つの表面であり、第1反射面A1から第1距離H1だけ離れた位置に設けられている反射面を、第3反射面として使用することができる。なお、第3反射面は、二つの光共振器において共通に使用される反射面であることから、「共通反射面」ということもできる。
焦電キャパシター230の第1反射面A1、第2反射面A2ならびに光吸収層270の上面である第3反射面A3は支持部材215の表面と平行である。すなわち、各反射面A1、A2ならびにA3は、互いに平行に配置されている。
また、第1距離H1が、m・(λ1/4)(mは1以上の整数)の関係を満足し、第2距離H3が、n・(λ2/4)(nは1以上の整数)の関係を満足する。これによって、いわゆるλ/4光共振器が構成される。
図1の熱型光検出器200は、異なる共振波長λ1,λ2をもつ2個の光共振器を有しており、異なる2つの波長λ1,λ2において共振ピークが生じることから、熱型光検出器200が検出可能な光の波長帯域(波長幅)を広げることができる。すなわち、各光共振器の検出帯域が重なることによって、より広範囲な波長に感度を有する熱型光検出器200を実現することができる。
上述のとおり、第1波長λ1に対する光共振器は、焦電キャパシター230の第一部分である第1電極234の表面によって構成される第1反射面A1と、第1反射面A1から第1距離H1だけ離れた位置において第1反射面A1に対向して設けられている、光吸収層270の上面である第3反射面A3との間において形成される。
例えば、第3反射面A3側から、平面視における支持部材215(載置部210)の領域に光が入射すると、その入射光に含まれる波長λ1の光と、その入射光が第1反射面A1で反射した光との相互干渉が生じる。これによって、例えば、熱検出素子220(すなわち焦電キャパシター230)自体における光の実効吸収率が高まり、また、熱検出素子220(焦電キャパシター230)に接して設けられる光吸収層270における実効吸収率が高まる。したがって、第1波長λ1の光に対する、熱検出素子220(焦電キャパシター230)の感度を高めることができる。
また、第1波長とは異なる第2波長をλ2としたとき、熱検出素子220(焦電キャパシター230)の第一部分234とは異なる第2部分(ここでは第2電極236)の表面によって構成される第2反射面A2と、第2反射面A2から第2距離H3(第1距離H1とは異なる)離れた位置において設けられている第3反射面A3との間で、第2波長λ2に対する光共振器が構成される。これによって、熱検出素子220(焦電キャパシター230)に接して設けられている光吸収層270における実効吸収率が高まる。よって、第2波長λ2の光に対する熱検出素子220(焦電キャパシター230)の感度を高めることができる。
図1の例では、第3反射面A3と、熱検出素子220の一部で構成される第1反射面A1ならびに第2反射面A2を利用して、異なる波長(λ1,λ2)に共振する2つの光共振器を構成することから構造が複雑化しない。つまり、一対の反射面間の距離を調整することによって、λ/4光共振器を構成することができる。よって、特別な構成の付加は不要である。
具体的には、プレーナー構造の焦電型キャパシター230の構成要素である第1電極234と第2電極236、ならびに光吸収層270の上面を活用することによって、特別な構造を付加することなく(つまり、熱検出素子220としての焦電型光検出器の通常の構成で)2個の光共振器を構成することができる。すなわち、第1電極234と第2電極236との段差(高さの差)H2と、光吸収層270の高さ(膜厚)H1とを調整することによって、2つの光共振器を簡単に構成することができる。よって、熱型光検出器200の構成が複雑化せず、また、製造も容易である。
また、上述のとおり、異なる2つの波長λ1,λ2において共振ピークが生じることから、熱型光検出器200が検出可能な光の波長帯域(波長幅)を広げることができる。したがって、例えば、簡単な構成によって、熱型光検出器200の検出波長帯域を広げることができる。
また、金属材料は熱伝導性にも優れる。よって、第1電極234の、支持部材215上に延在する延在部分(点線で囲まれる部分Z1)上にも光吸収層270を形成することによって、光吸収層270の広範囲で発生する熱を集熱して、熱検出素子220(焦電キャパシター230)に効率的に伝達する効果も期待できる。
(熱型光検出器の検出感度について)
図2は、2つの光共振器が構成される場合における、熱型光検出器の検出感度の一例を示す図である。横軸は波長であり、縦軸は熱型検出器の感度(光吸収層の吸収効率)である。
図2に示される例では、第1光共振器による共振ピークP1が波長λ1(例えばλ1=8μm)に出現し、第2光共振器による共振ピークP2が波長λ2(例えばλ2=10μm)に出現している。これらのピーク特性が合成されることによって、熱型光検出器200の検出感度P3の波長帯域を広げることができる。つまり、広い波長域において検出感度をもつ熱型光検出器200が実現される。
第1波長λ1を10μmとし、第2波長λ2を8μmとしたとき、図1の例における第1距離H1を2.5μmとし、第2距離H3を2.0μmとするのが好ましい。このとき、第1反射面A1と第2反射面A2の高さの差(段差)は、0.5μmとなる。第1距離H1を2.5μmとすることによって、10μmの波長(第1波長λ1)に対する第1光共振器を構成することができる。また、第2距離H3を2μmとすることによって、8μmの波長(第2波長λ2)に対する第2光共振器を構成することができる。
このように、第1電極234(の表面)に対する第2電極236(の表面)の高さH2、ならびに光吸収層270の全体の膜厚H1(あるいは、光吸収層270の、第2電極236の表面上に位置する部分の膜厚H3ということもできる)を調整することによって、2つの波長に共振する光共振器を、特別な工程を付加することなく、容易に形成することができる。これによって、検出波長帯域がブロードであり、かつ光吸収層270における光の吸収率が高い熱型検出器200を実現することができる。
(第2実施形態)
図3は、熱型光検出器の他の例の平面図ならびに断面図である。図3において、図1と共通する部分には同じ参照符号を付してある。
図3の例では、熱検出素子220は、焦電キャパシター230と、光吸収層270と、第1配線229a’ならびに第2配線229b’と、を含む。第1配線229a’は、支持部材215上において第1電極234に接続されている。また、第2配線229b’は、支持部材215上において、第2電極236に接続されている。なお、支持部材215上というとき、何らかの部材を介して上側にある場合、あるいは、直上にある場合の双方を含む広義の意味で使用する。
具体的には、第1配線229a’の一端は、第1電極(下部電極)234に、コンタクトホール252を介して接続されている。第2配線229b’の一端は、第2電極(上部電極)236に、コンタクトホール254を介して接続されている。
第1配線229a’および第2配線229b’の少なくとも一方の表面(図3の例では双方の表面)によって第1反射面A1が構成される。また、第2電極236の表面によって第2反射面A3が構成される。また、光吸収層270の上面(光吸収層270が複数層によって構成される場合には最上面)によって第3反射面A3が構成される。
図3の例では、焦電型キャパシター230の構成要素である電極236ならびに配線(第1配線229a’,第2配線229b’)と、光吸収層270の上面と、を活用することによって、特別な構造を付加することなく(つまり、焦電型光検出器の通常の構成で)、2個の光共振器を構成することができる。
すなわち、配線(第1配線229a’,第2配線229b’)と第2電極236との段差(高さの差)と、光吸収層270の高さ(膜厚)とを調整することによって、2つの光共振器を簡単に構成することができる。よって、熱型光検出器200の構成が複雑化せず、また、製造も容易である。
なお、図3の例において、図1の例と同様に、第1電極234の表面を第1反射面A1として利用することもできる。
(第3実施形態)
図4(A)および図4(B)は、熱型光検出器の他の例の断面図である。図4(A)および図4(B)の例では、熱検出素子220としてボロメーターが採用されている。ボロメーターは、感熱抵抗体の抵抗値が温度によって変化する性質を利用した赤外線等の検出素子である。感熱抵抗体としては、チタン等の金属、酸化バナジウムやイットリュウムバリウム銅酸化物等の金属酸化物、セラミックス、シリコン単結晶などを使用することができる。
図4(A)に示される熱型光検出器200は、基板217上に設けられている支持部材(メンブレン)303を有する。支持部材(メンブレン)303には、感熱抵抗体251が埋め込まれている。つまり、感熱抵抗体251は、支持部材303に一体化されている。
支持部材(メンブレン)303は、ポスト301a,301bによって、基板217上に保持されている。つまり、支持部材303と一体化された感熱抵抗体251は、基板217上において、基板217から離れて、つまり空洞部111を介して支持されている。
また、感熱抵抗体251の断面形状は、基板217の表面D1と第1距離H4を隔てて対向する第1面C1を有する第一部分Q1と、基板217の表面D1と第2距離H5を隔てて対向する第2面C2を有する第二部分Q2と、第1面C1を有する第一部分Q1と第2面C2を有する第二部分Q2とを接続する接続部Q3と、を有する。
第1面C1および第2面C2は、基板217の表面に対して平行であり、第1面C1によって第1反射面が構成され、第2面C2によって第2反射面が構成される。また、基板217の表面D1によって第3反射面が構成される。なお、基板217の表面には、金属層等の光反射層を設けてもよい。これによって、光共振が生じやすくなる。
第1反射面C1と第3反射面D1との間の距離である第1距離H4は、m・(λ1/4)(mは1以上の整数)の関係を満足し、また、第2距離H5は、n・(λ2/4)(nは1以上の整数)の関係を満足する。これによって、いわゆるλ/4光共振器が構成される。
λ1/4光共振器が構成されることによって、熱検出素子としての感熱抵抗体251自体における光の実効吸収率が高まる。よって、第1波長λ1の光に対する熱検出素子の感度を高めることができる。λ2/4光共振器が構成されることによって、熱検出素子としての感熱抵抗体251自体における光の実効吸収率が高まる。よって、第2波長λ2の光に対する熱検出素子の感度を高めることができる。また、簡単な構成によって、熱型光検出器の検出波長帯域を広げることができる。
また、図4(B)の例では、図4(A)における空洞部111内には、光吸収層270が形成されている。その他の構成は、図4(A)に示される例と同じである。図4(B)の例によれば、光吸収層270における光の実効吸収率が高まる。よって、第2波長λ2の光に対する熱検出素子の感度を高めることができる。また、簡単な構成によって、熱型光検出器の検出波長帯域を広げることができる。
このように、本実施形態によれば、屈曲した断面形状をもつ感熱抵抗体251の異なる2面(第1面C1と第2面C2)、ならびに基板217の表面D1を活用することによって、特別な構造を付加することなく(つまり、ボロメーターの通常の構成で)、2個の光共振器を構成することができる。よって、簡単な構成によって、ボロメーター型の熱型光検出器200の感度を向上させることができる。また、ボロメーター型の熱型光検出器200の検出波長帯域を広げることができる。
(第4実施形態)
本実施形態では、図5〜図7を参照して、熱型光検出器(ここでは焦電型の熱型光検出器)の製造方法の一例について説明する。
図5(A)および図5(B)は、熱型光検出器の製造方法の一例を示すデバイスの断面図である。図5(A)の工程では、基板20の第1主面上に、多層配線構造129の構成要素である第1絶縁層30、第2絶縁膜40aを積層形成する。
基板20には、MOSトランジスターのソース層21と、ドレイン層22が形成されている。基板20の表面にはゲート絶縁膜23が形成されている。ゲート電極24の両サイドには、サイドウオール25が設けられている。ゲート電極24には、例えば配線26が接続される。また、第1絶縁層30の一部には、タングステン(W)等の金属からなるプラグM1が形成される。また、第1絶縁層30上には、Al等からなる第2層目配線M2が形成される。
図5(B)の工程では、第2絶縁層40aを、例えばCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)による平坦化処理によって平坦化する。これによって、平坦化された第2絶縁層40が形成される。
図6(A)および図6(B)は、熱型光検出器の製造方法の一例を示すデバイスの断面図である。図6(A)の工程は、図5(B)の工程に続く工程である。
図6(A)の工程では、第2絶縁層40上に第3絶縁層50を形成し、第3絶縁層50の表面の一部に凹部102を形成し、凹部102の内表面上にエッチングストッパー膜(SiN)130(130a〜130c)を形成した後、凹部102に犠牲層(例えばSiO層)135を埋め込む。これによって、支持部材(メンブレン)215多層構造体150が形成される。
図6(B)の工程では、支持部材(メンブレン)215を形成し、支持部材215上に、熱検出素子220の構成要素としての焦電キャパシター230を含む素子構造体160を形成する。素子構造体160は、半導体製造技術(フォトリソグラフィー)を用いて製造することができる。
素子構造体160は、熱検出素子220の構成要素としての焦電キャパシター230および光吸収層270を含む。
熱検出素子220は、絶縁層250と、絶縁層250に形成されている第1コンタクトホール252に一部が埋め込まれている第1コンタクト電極226と、第1コンタクト電極226に接続されている配線222と、絶縁層250に形成されている第2コンタクトホール254に一部が埋め込まれている第2コンタクト電極228と、第2コンタクト電極228に接続されている配線229と、光吸収層270と、を有する。
光吸収層270は、例えば、SiO2層である。光吸収層270は、支持部材215上において、焦電キャパシター230、第1電極234、第2電極236ならびに配線222,229に接して設けられる。
また、図6(B)に示される例では、支持部材215上には、第1電極234と同層の材料(例えばアルミニウム)で構成される孤立パターン(孤立形状)235が形成されている。
焦電キャパシター230は、先に説明したように、大面積の第1電極234と、焦電材料層(PZT)232と、第2電極236と、を有する。
また、図6(B)の例では、第1電極234の表面、ならびに第1電極234と同層の材料からなる孤立パターン(孤立形状)235の表面によって第1反射面A1が構成される。第2電極236の表面によって第2反射面A2が構成される。また、光吸収層270の上面によって第3反射面A3が構成される。
第1反射面A1と第3反射面A3との間の第1距離H1は、支持部材215上に形成される光吸収層270の膜厚によって決定される。上述のとおり、光吸収層270の膜厚は、第1距離H1がm・λ1/4の関係を満足するように調整される。
また、第1反射面A1と第2反射面A2の高さの差(段差)は、距離H2に設定される。また、第2反射面A2と第3反射面A3との間の第2距離はH3である。光吸収層270の、第2電極236の表面上に位置する部分の膜厚は、第2距離H3がn・λ2/4の関係を満足するように調整される。
一例として、第1波長λ1を10μmとし、第2波長λ2を8μmとしたとき、第1距離H1を2.5μmとし、第2距離H3を2.0μmとするのが好ましい。第1反射面A1と第2反射面A2の高さの差(段差)は、0.5μmでとなる。
このように、第1電極234(の表面)に対する第2電極236(の表面)の高さH2、ならびに光吸収層270の全体の膜厚H1(あるいは、光吸収層270の、第2電極236の表面上に位置する部分の膜厚H3ということもできる)を調整することによって、2つの波長に共振する光共振器を、特別な工程を付加することなく、容易に形成することができる。
図7は、熱型光検出器の製造方法の一例を示すデバイスの断面図である。図7の工程は、図6(B)の工程に続く工程である。図7の工程では、犠牲層135を除去する。これによって、支持部材(メンブレン)215は、基板20上に支持される状態となる。すなわち、支持部材(メンブレン)215は、基板20に対して空洞部(熱分離空洞)102を介して支持される。
図5〜図7に示される熱型光検出器の製造方法によれば、半導体製造技術(例えばMEMS技術)を用いて、小型かつ検出感度の高い熱型光検出器を容易に形成することができる。
また、図7の例では、第1電極234の支持部材215上に延在する延在部分X1,X2上にも光吸収層270が形成されている。金属材料は熱伝導性にも優れる。よって、図7の例では、第1電極234が熱伝達部材としても機能することが期待できる。すなわち、光吸収層270の広範囲で発生する熱を、第1電極234の延在部分X1,X2を介して集熱し、焦電キャパシター230に効率的に伝達する効果も期待することができる。また、図7の例では、配線222の、支持部材215上に延在する延在部分X3ならびに第2配線229の、支持部材215上に延在する延在部分X4上にも、光吸収層270が形成されている。よって、同様に、光吸収層270の広範囲で発生する熱を、各配線222,229の延在部分X3,X4を介して集熱し、焦電キャパシター230に効率的に伝達する効果も期待することができる。
(第5実施形態)
図8は、熱型光検出装置(熱型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図である。図8の例では、複数の光検出セル(すなわち、熱型光検出器200a〜200d等)が、2次元的に配置されている。複数の光検出セル(熱型光検出器200a〜200d等)の中から一つの光検出セルを選択するために、走査線(W1a,W1b等)と、データ線(D1a,D1b等)が設けられている。
第1の光検出セルとしての熱型光検出器200aは、熱検出素子5としての圧電コンデンサーZCと、素子選択トランジスターM1aと、を有する。圧電コンデンサーZCの両極の電位関係は、PDr1に印加する電位を切り換えることによって反転することができる(この電位反転によって、機械的なチョッパーを設ける必要がなくなる)。なお、他の光検出セルも同様の構成である。
データ線D1aの電位は、リセットトランジスターM2をオンすることによって初期化することができる。検出信号の読み出し時には、読み出しトランジスターM3がオンする。焦電効果によって生じる電流は、I/V変換回路510によって電圧に変換され、アンプ601によって増幅され、A/D変換器701によってデジタルデータに変換される。
本実施形態では、複数の熱型光検出器が2次元的に配置された(例えば、直交2軸(X軸およびY軸)の各々に沿ってアレイ状に配置された)、熱型光検出装置(熱型光アレイセンサー)が実現される。
(第6実施形態)
図9は、電子機器の構成の一例を示す図である。電子機器としては、例えば、赤外線センサー装置、サーモグラフィー装置、車載用夜間カメラや監視カメラ等が挙げられる。
図9に示されるように、電子機器は、光学系400と、センサーデバイス410(前掲の実施形態における熱型光検出器200に相当する)と、画像処理部420と、処理部430と、記憶部440と、操作部450と、表示部460と、を含む。なお本実施形態の電子機器は図9の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
光学系400は、例えば1または複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス410への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
センサーデバイス410は、上述した本実施形態の光検出器を二次元配列させて構成され、複数の行線(走査線(あるいはワード線))と複数の列線(データ線)が設けられる。センサーデバイス410は、二次元配列された光検出器に加えて、行選択回路(行ドライバー)と、列線を介して光検出器からのデータを読み出す読み出し回路と、A/D変換部等を含むことができる。二次元配列された各光検出器からのデータを順次読み出すことで、物体像の撮像処理を行うことができる。
画像処理部420は、センサーデバイス410からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。画像処理部420は、センサーデバイス410(熱型光検出器200)の出力を処理する制御部に相当する。処理部430は、電子機器の全体の制御や電子機器内の各ブロックの制御を行う。この処理部430は、例えばCPU等により実現される。記憶部440は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部430や画像処理部420のワーク領域として機能する。操作部450は、ユーザが電子機器を操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。
表示部460は、例えばセンサーデバイス410により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイにより実現される。
このように、1セル分の熱型光検出器を赤外線センサー等のセンサーとして用いる他、1セル分の熱型光検出器を直交二軸方向に二次元配置することでセンサーデバイス(熱型光検出装置)410を構成することができ、こうすると熱(光)分布画像を提供することができる。このセンサーデバイス410を用いて、サーモグラフィー、車載用の夜間視認カメラあるいは監視カメラなどの電子機器を構成することができる。
先に説明したように、本発明にかかる熱型光検出器は、光の検出感度が高い。よって、この熱型光検出器を搭載する電子機器の性能が高まる。
図10は、電子機器の構成の他の例を示す図である。図10の電子機器800は、熱型光検出器200と、加速度検出素子503と、を搭載したセンサーユニット600を有する。センサーユニット600には、さらにジャイロセンサー等を搭載することもできる。センサーユニット600によって、異なる種類の物理量を測定することが可能である。センサーユニット600から出力される各検出信号は、CPU700によって処理される。CPU700は、熱型光検出器200の出力を処理する制御部に相当する。
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、簡単な構成によって、熱型光検出器の検出波長帯域を広げることができる。また、例えば、熱型光検出器の検出感度を、格段に向上させることができる。
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
本発明では、焦電型の素子だけではなく、熱検出素子として、他の種類の素子、例えば、サーモパイル素子を用いることもできる。例えば、電極や配線等からなる2つ以上の平坦な光反射面を有し、また、光吸収膜の厚さ方向(基板に垂直な方向)において素子の段差が形成され、これに伴って、2以上の光反射面の高さに差が生じるような素子に、広く適用することができる。