以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1の実施形態)
図1(A)および図1(B)は、熱型光検出器の一例の平面図ならびに断面図である。図1(B)は、図1(A)に示される熱型光検出器のA−A’線に沿う断面図である。図1(A)および図1(B)では、単独の熱型光検出器を示しているが、複数の熱型光検出器を、例えばマトリクス状に配置して、熱型光検出器アレイ(すなわち熱型検出装置)を構成することもできる。
図1(A)および図1(B)に示される熱型光検出器は、焦電型赤外線検出器(光センサーの一種)200である(但し、一例であり、これに限定されるものではない)。この焦電型赤外線検出器200は、2層の光吸収膜270,272における光吸収によって発生する熱を、熱伝導が良好な熱伝達部材260を経由して、熱検出素子(ここでは焦電キャパシター230)に、効率的に伝達することができる。
熱伝達部材260は、例えば、高い熱伝導率を有すると共に、入射光(具体的には、熱型光検出器が検出感度を有する波長帯域の光)を反射する特性を有する材料(例えばAl等の金属や合金、金属化合物等)によって構成することができる。熱伝導度が良好で、かつ光反射特性を有する金属材料は種々あり、特性の良好な材料を、製造プロセス等を考慮しつつ、適宜、選択することができる。よって、熱伝達部材260の設計が容易である。
熱検出素子としての焦電キャパシター230は、熱を電気信号に変換する。これによって、受光した光の強度に対応する検出信号(例えば電流信号)が得られる。以下、具体的に説明する。
(熱型光検出器としての焦電型赤外線検出器の構造の一例)
まず、図1(B)を参照して、断面構造について説明する。
(断面構造)
熱型光検出器としての焦電型赤外線検出器200は、基板(シリコン基板)10上に形成された多層の構造体によって構成されている。すなわち、熱型光検出器200としての焦電型赤外線検出器は、基板(ここではシリコン基板とする)10と、基板10の第1主面(ここでは表面とする)上に形成された、絶縁層を含む構造体100(例えば、層間絶縁層を含む多層構造:多層構造の具体例については図16を参照)と、絶縁層を含む構造体100の表面に形成されたエッチングストッパー膜130aと、熱分離用の空洞部(熱分離空洞)102と、載置部210およびアーム部212a,212bとで構成される支持部材(メンブレン)215と、支持部材(メンブレン)215上に形成された熱検出素子としての焦電キャパシター230と、焦電キャパシター230の表面を覆う絶縁層250と、熱伝達部材260と支持部材(メンブレン)215との間において、熱伝達部材260(の集熱部FL)に接して形成されている第1光吸収層(例えばSiO2層)270と、熱伝達部材260(接続部CNおよび集熱部FLを有する)と、第2光吸収層(例えばSiO2層)272と、を有する。第2光吸収層272は、熱伝達部材260(の集熱部FL)上において、熱伝達部材260(の集熱部FL)と接して形成されている。
なお、基板10および多層構造100によって、基部(ベース)が構成される。この基部(ベース)は、空洞部102において、支持部材215や焦電キャパシター230を含む素子構造体160を支持する。また、例えば、シリコン(Si)基板10の、平面視で熱検出素子としての焦電キャパシター230と重なる領域には、トランジスターや抵抗等の半導体素子を形成することができる(例えば、図16の例を参照)。
基板10上に形成される多層構造体100の表面には、上述したとおり、エッチングストッパー膜(例えばSi3N4膜)130aが設けられており、また、支持部材(メンブレン)215の裏面には、エッチングストッパー膜(例えばSi3N4膜)130b〜130dが設けられている。このエッチングストッパー膜130a〜130dは、空洞部102を形成するために犠牲層(図1では不図示,図13の参照符号101)を除去する工程において、エッチングの対象外の層が除去されるのを防止する役割を果たす。但し、エッチングストッパー膜は、支持部材(メンブレン)215を構成する材料によっては不要の場合がある。
また、素子構造体160に含まれる焦電キャパシター230は、同じく素子構造体160の構成要素である支持部材(メンブレン)215によって、空洞部102上において支持されている。
ここで、支持部材(メンブレン)215は、例えば、酸化シリコン膜(SiO)/窒化シリコン膜(SiN)/酸化シリコン膜(SiO)の3層の積層膜をパターニングすることによって形成することができる(但し、一例であり、これに限定されるものではない)。支持部材(メンブレン)215は、焦電キャパシター230を安定的に支持する必要があり、よって、支持部材(メンブレン)215のトータルの厚みは、必要な機械強度を満足する厚みを有する。
支持部材(メンブレン)215の表面上には、配向膜(不図示)が形成されており、この配向膜上に、焦電キャパシター230が形成されている。焦電キャパシター230は、下部電極(第1電極)234と、下部電極上に形成される焦電材料層(例えば焦電体としてのPZT層:チタン酸ジルコン酸鉛層)232と、焦電材料層232上に形成される上部電極(第2電極)236と、を含む。
下部電極(第1電極)234ならびに上部電極(第2電極)236は共に、例えば、3層の金属膜を積層することによって形成することができる。例えば、焦電材料層(PZT層)232から遠い位置から順に、例えばスパッタリングにて形成されるイリジウム(Ir)、イリジウム酸化物(IrOx)及びプラチナ(Pt)の三層構造とすることができる。また、焦電材料層232としては、上述のとおり、例えばPZT(Pb(Zi,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)を用いることができる。
焦電材料層(焦電体)に熱が伝達されると、その結果、焦電効果(パイロ電子効果)によって、焦電材料層232に電気分極量の変化が生じる。この電気分極量の変化に伴う電流を検出することによって、入射した光の強度を検出することができる。
この焦電材料層232は、例えば、スパッタリング法やMOCVD法等で成膜することができる。下部電極(第1電極)234および上部電極(第2電極)236の膜厚は、例えば0.4μm程度であり、焦電材料層232の膜厚は、例えば0.1μm程度である。
焦電キャパシター230は、絶縁層250ならびに第1光吸収層270によって覆われている。絶縁層250には、第1コンタクトホール252が設けられている。第1コンタクトホール252は、上部電極(第2電極)236用の電極226を、上部電極(第2電極)236に接続するために使用される。
また、第1光吸収層270(および絶縁層250)には、第2コンタクトホール254が設けられている。第2コンタクトホール254は、第1光吸収層270および絶縁層250を貫通して設けられている。この第2コンタクトホール254は、熱伝達部材260を、焦電キャパシター230の上部電極236に接続するために使用される。すなわち、熱伝達部材260を構成する材料(例えば、アルミニウム等の金属)が、第2コンタクトホール254内に充填されており(充填部分は、図中、参照符号228で示されている)、これによって、熱伝達部材260における接続部CNが構成される。
熱伝達部材230は、表面が平坦化されている第1光吸収層270上に延在する部分である集熱部FLと、この集熱部FLを、焦電キャパシター230における上部電極(第2電極)236に接続する部分である接続部CNと、を有している。
ここで、熱伝達部材260の集熱部FLは、例えば、広範囲な領域において発生した熱を集熱して、熱検出素子である焦電キャパシター230に伝達する役割を果たす。なお、集熱部FLは、例えば、平坦化された第1光吸収層270上において、平坦面を有する態様にて形成される場合があり、この場合には、「集熱部」は、「平板部あるいは平坦部」と言い換えることができる。
上述のとおり、熱伝達部材230は、熱伝導率が高く、かつ入射光に対して光の反射特性を有する材料(例えば金属材料)で構成することができる。但し、窒化アルミニウムや酸化アルミニウムのように、熱型光検出器が感度を有する波長帯域のうちの、少なくとも一部の波長帯の光に対して光透過性を有する材料を用いることもできる。なお、集熱部FLにおける材料と、接続部CNにおける材料228(例えばコンタクトホール254に埋め込まれているコンタクトプラグの材料)とを異ならせることも可能である。また、熱伝達部材260における集熱部FLは、平面視で、入射する光の一部が支持部材(メンブレン)215側に進入することを可能とするパターンを有する(この点については、図1(A)を参照して後述する)。
また、図1(B)に示すように、接続部CNの横幅をW0とし、焦電キャパシター230の横幅(ここでは、最も横幅が広い下部電極(第1電極)234の横幅)をW1とし、熱伝達部材260の集熱部FLの横幅をW2とし、第2光吸収層272の上面における横幅をW3とし、第1光吸収層270の下面(底面)における横幅をW4としたとき、W0<W1<W2<W3<W4の関係が成立する。
また、第1光吸収層270および第2光吸収層272は、支持部材(メンブレン)215上であって熱検出素子としての焦電キャパシター230の周囲に(好ましくは全周囲に)形成されている。これによって、第1光吸収層および第2光吸収層の広範囲で発生した熱は、熱検出素子に、直接的に、あるいは熱伝達部材を経由して間接的に、効率的に伝達される。よって、熱型光検出器としての焦電型赤外線検出器200の光検出感度をさらに高めることができる。また、焦電型赤外線検出器200の応答速度も、より向上する。
また、図1(B)に示されるように、第1波長をλ1、第2波長をλ2としたとき、支持部材215の、焦電キャパシター230が載置される表面と、第2光吸収層272の上面との間の距離H1(つまり、第1光吸収層270の膜厚H2と第2光吸収層272の膜厚H3の合計の膜厚H1)は、n・(λ1/4)(nは1以上の整数)に設定されている。これによって、支持部材215の、焦電キャパシター230が載置される表面と、第2光吸収層272の上面との間で、第1光共振器(λ1/4光共振器)が構成される。
また、第2光吸収層272の下面と、第2光吸収層272の上面との間の距離H3(すなわち、第2光吸収層272の膜厚H3)は、n・(λ2/4)に設定されている。これによって、第2光吸収層272の下面と、第2光吸収層272の上面との間で第2光共振器(λ2/4光共振器)が構成されている。ここで、熱伝達部材260の集熱部FLは、支持部材(メンブレン)215に平行に設けるのが好ましい。つまり、集熱部FLの主面(上面または下面)と支持部材(メンブレン)215の主面(上面または下面)とを平行に配置するのが好ましい。第1光共振器および第2光共振器が構成されることの効果については後述する。
(レイアウト構成)
次に、図1(A)を参照して、レイアウト構成について説明する。図1(A)に示すように、支持部材(メンブレン)215は、焦電キャパシター230を載置する載置部210と、この載置部210を、空洞部(熱分離空洞部)212上にて保持する2本のアーム、すなわち第1アーム部212aと第2アーム部212bと、を有している。焦電キャパシター230は、支持部材(メンブレン)215における載置部210上に形成されている。また、上述のとおり、支持部材(メンブレン)215、焦電キャパシター230、第1光吸収層270、熱伝達部材260ならびに第2光吸収層272を含めて、素子構造体160が構成される。
第1アーム部212aならびに第2アーム部212bは、上述したように、例えば、酸化シリコン膜(SiO)/窒化シリコン膜(SiN)/酸化シリコン膜(SiO)の3層の積層膜をパターニングして、細長い形状に加工することによって形成することができる。細長い形状とするのは、熱抵抗を大きくして、熱検出素子としての焦電キャパシター230からの放熱(熱の逃げ)を抑制するためである。
第1アーム部212aにおける幅広の先端部232aは、第1ポスト104a(図1(A)において破線で示される、平面視で円形の部材)によって、空洞部102上において支持されている。また、第1アーム部212a上には、一端(参照符号228)が、焦電キャパシター230の下部電極(第1電極)234に接続され、他端231aが、第1ポスト104aに接続される配線229aが形成されている。
第1ポスト104aは、例えば、図1(B)に示される絶縁層を含む構造体100と、第1アーム部212aの先端部232aとの間に設けられる。この第1ポスト104aは、例えば、空洞部102に選択的に形成される、柱状に加工された多層配線構造(層間絶縁層と、焦電キャパシター230と下地のシリコン基板10に設けられたトランジスター等の素子とを接続するための配線を構成する導電層とからなる)によって構成することができる。
同様に、第2アーム部212bは、第2ポスト104b(図1(A)において、破線で示される、平面視で円形の部材)によって、空洞部102上において支持されている。第2アーム部212bにおける幅広の先端部232bは、第2ポスト104b(図1(A)において破線で示される、平面視で円形の部材)によって、空洞部102上において支持されている。また、第2アーム部212b上には、一端(参照符号226)が、焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に接続され、他端231bが、第2ポスト104bに接続される配線229bが形成されている。
第2ポスト104bは、図1(B)に示される絶縁層を含む構造体100と、第2アーム部212bの先端部232bとの間に設けられる。また、第2ポスト104bは、例えば、空洞部102に選択的に形成される、柱状に加工された多層配線構造(層間絶縁層と、焦電キャパシター230と下地のシリコン基板10に設けられたトランジスター等の素子とを接続するための配線を構成する導電層とからなる)によって構成することができる。
図1(A)に示される例では、第1ポスト104aならびに第2ポスト104bを用いて、支持部材215や焦電キャパシター230を含む素子構造体160を、空洞部102において保持している。この構成は、共通の空洞部102において、熱検出素子としての焦電キャパシター230を複数、高密度に配置する際(つまり、熱検出素子のアレイを形成する際)に有効である。但し、この構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、図16に示される例のように、一つの熱検出素子230毎に一つの空洞102を形成し、支持部材(メンブレン)215を、空洞部102の周囲の、絶縁層を含む構造体100にて支持するようにしてもよい。
また、図1(A)において、焦電キャパシター230は、支持部材215における載置部210の中央領域に配置されており、焦電キャパシター230は、平面視で、略正方形の形状を有する。
また、熱伝達部材269の接続部CNは、平面視で、焦電キャパシターの形状(略正方形)の中心に位置している。また、上述のとおり、W0<W1<W2<W3<W4の関係が成立する。
また、熱伝達部材260の集熱部FLは、上述のとおり、平面視で、入射する光の一部が支持部材(メンブレン)215側に進入することを可能とするパターンを有する(図1(A)の例の他、例えば、図3〜図12に示されるパターン例を含む)。
図1(A)の例では、平面視で、接続部CNを中心として、接続部CNから支持部材(メンブレン)215の外縁に向かう方向に延在する8本の延在部(K1〜K8)を備える放射状のパターンが採用されている。但し、これは一例であり、このパターンに限定されるものではない。
例えば、集熱部のパターンとしては、平面視で、接続部CNを中心として、支持部材(メンブレン)215の外縁に向かう方向に延在する複数の延在部を備える十字状等のパターンとすることができ(例えば図5(B)の例を参照)、また、例えば、平面視で、環状の形状(円や多角形を含む)を有する環状部を備えるパターンとすることができる(例えば図3(B),図4,図7,図8(B)の例を参照)。また、例えば、平面視で、閉じた形状をもつ外周によって決定される領域が少なくとも一つの切り欠き部(ホール部、穴部あるいは開口部)を内包する形状(パターン)とすることができる(例えば図10〜図12の例を参照)。また、複数の孤立パターンを含むパターンとすることもできる(例えば、図9の例を参照)。各パターンの特徴点等については後述する。
このようなパターンを採用すると、熱検出素子としての焦電キャパシター230の上方に光反射特性をもつ材料からなる集熱部FLを設けたとしても、例えば、平面視で、支持部材における載置部(熱検出素子を載置することが可能な領域)の全域が完全に覆われることがなく、つまり、部分的に覆われることになる。よって、平面視で、支持部材(メンブレン)215の領域に入射する入射光の一部は、集熱部FLが存在しない領域を経由して、支持部材(メンブレン)215側(熱検出素子230側ということもできる)に進入することができる。
焦電型赤外線検出器200に入射した光の一部は、まず第2光吸収層272で吸収され、この第2光吸収層272にて熱が発生する。また、熱伝達部材260の集熱部FLで反射した光は、第2光吸収層272で吸収され、これによって第2光吸収層272にて熱が発生する。
また、集熱部FLが存在しない領域を通過した光の一部は、第1光吸収層270にて吸収されて熱が発生する。また、支持部材(メンブレン)215の表面(第1光吸収層270と支持部材215との界面)で反射した光は、第1光吸収層270および第2光吸収層272の少なくとも一方に吸収され、これによって、第1光吸収層270あるいは第2光吸収層272にて熱が発生する。
そして、第2光吸収層272で発生した熱は、熱伝達部材260を介して効率的に熱検出素子としての焦電キャパシター230に伝達され、また、第1光吸収層270で発生した熱は、直接的に、あるいは熱伝達部材260を介して焦電キャパシター230に効率的に伝達される。熱伝達部材260における集熱部FLが、例えば、焦電キャパシター230上を広く覆うように形成されている場合には(つまり図1(A)の例では)、第1光吸収層270ならびに第2光吸収層272で発生した熱の多くを、その発生場所を問わずに、効率的に焦電キャパシター230に伝達することができる。よって、例えば、焦電キャパシター230から離れた箇所で発生した熱であっても、熱伝導率が高い熱伝達部材260を経由して、焦電キャパシター230に効率的に伝達することができる。
また、熱伝達部材260における集熱部FLと、熱検出素子である焦電キャパシター230とは、熱伝達部材260における接続部CNによって接続されていることから、熱伝達部材260の集熱部FLを経由して伝達される熱を、接続部CNを介して、熱検出素子である焦電キャパシター230に直接的に伝達することができる。また、熱伝達部材260の下に熱検出素子である焦電キャパシター230が位置する(平面視で重なる位置に設けられている)ことから、例えば、平面視における熱伝達部材260の中央部と、熱検出素子とを最短で接続することが可能である。よって、熱伝達に伴うロスを減らすことができ、また、専有面積の増大を抑制することができる。
また、図1(A)に示されるように、第1光吸収層270ならびに第2光吸収層272は、平面視で、支持部材215上であって、熱検出素子である焦電キャパシター230の周囲に形成されている。したがって、第1光吸収層270および第2光吸収層272の広範囲で発生した熱は、焦電キャパシター230に、直接的に、あるいは、広範囲をカバーする広い面積をもつ熱伝達部材260を経由して間接的に、効率的に伝達される。つまり、第1光吸収層270および第2光吸収層272の広範囲で発生した熱は、焦電キャパシター230に、あらゆる方向(つまり、四方八方から)集まってくる。ここで、焦電キャパシター230は、平面視で、略正方形の熱伝達部材260の中央の下に位置している。よって、あらゆる方向から、熱伝達部材260を経由して集まってくる熱は、接続部CNを経由して、最短距離で、焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に伝達される。よって、広範囲から、多くの熱を効率的に集約し、かつ、それらの熱を、最短距離で、ロスを最小限に抑制しつつ、焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に伝達することができる。よって、熱型光検出器200の光検出感度をさらに高めることができる。また、熱型光検出器の応答速度も、より向上する。
本実施形態では、2層の光吸収層270,272によって熱を発生することから吸収効率が高まる。また、第1光吸収層270を介して熱を直接的に熱検出素子230に伝達することができる。よって、特許文献1に記載される赤外線検出素子ならびに特許文献2に記載される赤外線固体撮像素子と比較して、熱型光検出器の検出感度をより向上させることができる。また、本実施形態では、熱検出素子230は熱伝達部材260に接続されている。よって、応答速度は、特許文献1に記載される赤外線検出素子と同等に高い。また、本実施形態では、熱伝達部材260が直接に熱検出素子230に接続されているため、特許文献2に記載される赤外線固体撮像素子と比較して、より高い応答速度が得られる。
(熱型光検出器の動作等について)
図1(A)および図1(B)に示される本実施形態にかかる熱型光検出器(熱型光検出器)200は、以下のように動作する。
すなわち、熱型光検出器200に入射した光、すなわち、平面視で、支持部材(メンブレン)215の領域に入射する入射光(例えば赤外線)の一部は、まず第2光吸収層272で吸収され、その他は吸収されずに熱伝達部材260に到達する。熱伝達部材260は光反射特性を有することから、所定パターンをもつ集熱部FLによって光は反射される。一方、集熱部FLのパターンが設けられない領域では、光は反射されることなく、支持部材(メンブレン)215側に進入する。熱伝達部材260を透過した光の一部は、第1光吸収層270で吸収され、その他は、支持部材215の表面(第1光吸収層270と、支持部材215における載置部210との界面)、ならびに支持部材215に載置されている熱検出素子としての焦電キャパシター230に到達する。
支持部材215の表面(第1光吸収層270と、支持部材215における載置部210との界面)に到達した光の大部分は、支持部材(メンブレン)215の表面で反射される。例えば、第1光吸収層270がSiO2層(屈折率:1.45)で構成され、支持部材(メンブレン)215が、SiN膜(屈折率2.0)で構成される場合、第1光吸収層270の屈折率よりも、支持部材(メンブレン)215を構成する膜の屈折率(つまり、支持部材215の屈折率)の方が大きいことから、支持部材(メンブレン)215に到達した光のほとんどは、支持部材(メンブレン)215の表面で反射されることになる。
また、支持部材(メンブレン)215の構成要素として、例えばチタン(Ti)膜等の金属膜を設けて(特に、光が反射する表面に設けるのが好ましい)、支持部材(メンブレン)215の表面における光の反射率を高めることも有効である。支持部材(メンブレン)215の表面で反射された光は、第1光吸収層270や第2光吸収層272にて吸収される。
入射した光が、上述のような挙動を示す場合における、第1光吸収層270および第2光吸収層272における熱の発生、ならびに、発生した熱の、熱検出素子である焦電キャパシター230への伝達は、例えば、以下のように行われる。すなわち、熱型光検出器200に入射した光の一部が、まず第2光吸収層272で吸収され、第2光吸収層272にて熱が発生する。また、熱伝達部材260で反射した光は、第2光吸収層272で吸収され、これによって第2光吸収層272にて熱が発生する。
また、熱伝達部材260が設けられない領域を通過した光の一部は、第1光吸収層270にて吸収されて熱が発生する。また、支持部材215の表面(第1光吸収層270と、支持部材における載置部210との界面)で反射した光は、第1光吸収層270および第2光吸収層272の少なくとも一方に吸収され、これによって、第1光吸収層270あるいは第2光吸収層272にて熱が発生する。
そして、第2光吸収層272で発生した熱は、熱伝達部材260を介して効率的に熱検出素子である焦電キャパシター230に伝達され、また、第1光吸収層270で発生した熱は、直接的に、あるいは熱伝達部材260を介して焦電キャパシター230に効率的に伝達される。
すなわち、熱伝達部材260の集熱部FLは、熱検出素子(焦電キャパシター)230上を広く覆うように形成されており、よって、第1光吸収層270ならびに第2光吸収層272で発生した熱の多くを、その発生場所を問わずに、効率的に熱検出素子(焦電キャパシター)230に伝達することができる。例えば、熱検出素子230から離れた箇所で発生した熱であっても、熱伝導率が高い熱伝達部材260を経由して、熱検出素子(焦電キャパシター)230に効率的に伝達することができる。
また、熱伝達部材260の集熱部FLと、焦電キャパシター230とは、熱伝達部材260の接続部CNによって接続されていることから、熱伝達部材260の集熱部FLを経由して伝達される熱を、接続部CNを介して、焦電キャパシター230に直接的に伝達することができる。また、熱伝達部材260の下(直下)に熱検出素子としての焦電キャパシター230が位置する(平面視で重なる位置に設けられている)ことから、例えば、平面視における熱伝達部材260の中央部と、焦電キャパシター230とを最短で接続することが可能である。よって、熱伝達に伴うロスを減らすことができ、また、専有面積の増大を抑制することができる。
このように、図1(A)および図1(B)に記載される熱型光検出器(ここでは焦電型赤外線検出器)によれば、2層(複数層)の光吸収層270,272における広範囲で発生した熱を、熱検出素子である焦電キャパシター230に効率的に伝達することができ、よって、小型の熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)の光検出感度を大幅に向上させることができる。また、熱の伝達に要する時間が短縮されるため、熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)の応答速度を高めることができる。
また、図1(A)および図1(B)に記載される熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)では、第1光吸収層270および第2光吸収層272は、支持部材215(の載置部210)上において、平面視で、熱検出素子である焦電キャパシター230の周囲に形成されている。これによって、第1光吸収層270および第2光吸収層272の広範囲で発生した熱は、熱検出素子である焦電キャパシター230に、直接的に、あるいは熱伝達部材260を経由して間接的に、きわめて効率的に伝達される。よって、熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)の光検出感度をさらに高めることができる。また、熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)の応答速度も、より向上する。
また、上述のとおり、図1(A)および図1(B)に記載される熱型光検出器(焦電型赤外線検出器)では、支持部材215の、焦電キャパシター230が載置される表面と第2光吸収層272の上面との間で、第1波長λ1に対する第1光共振器が構成されており、また、第2光吸収層272の下面と、第2光吸収層272の上面との間で、第1の波長λ1とは異なる第2の波長λ2に対する第2光共振器が構成されている。すなわち、第1光吸収層270および第2光吸収層272の膜厚を調整することによって、異なる共振波長をもつ2個の光共振器が構成されている。
上述したように、支持部材215の表面(第1光吸収層270と、支持部材215における載置部210との界面)で反射した光は、第1光吸収層270および第2光吸収層272の少なくとも一方に吸収されるが、このとき、第1光共振器を構成することによって、各光吸収層における実効吸収率を高めることができる。
第1光共振器は、例えば、いわゆるλ/4光共振器とすることができる。すなわち、第1波長をλ1としたとき、支持部材215の、焦電キャパシター230が載置される表面と第2光吸収層272の上面との間の距離(つまり、第1光吸収層270および第2光吸収層272の合計の膜厚)が、n・(λ1/4)(nは1以上の整数)の関係を満足するように、第1光吸収層270および第2光吸収層272の膜厚が調整されている。これによって、入射した波長λ1の光と、支持部材215の表面で反射した波長λ1の光とが相互干渉よって打ち消され、第1光吸収層270ならびに第2光吸収層272における実効吸収率が高まる。
また、上述のとおり、熱伝達部材260で反射した光は、第2光吸収層272で吸収されるが、このとき、第2光共振器を構成することによって、第2光吸収層272における実効吸収率を高めることができる。第2光共振器は、例えば、いわゆるλ/4光共振器とすることができる。
すなわち、第2波長をλ2としたとき、第2光吸収層272の下面と第2光吸収層272の上面との間の距離(すなわち、第2光吸収層の膜厚)を、n・(λ2/4)に設定することによって、第2光共振器を構成することができる。これによって、入射した波長λ2の光と、第2光吸収層の下面(第1光吸収層270と第2光吸収層272との界面)で反射した波長λ2の光とが相互干渉よって打ち消され、第2光吸収層272における実効吸収率を高めることができる。
すなわち、図2に示すように、熱型光検出器の検出感度を有する波長帯域を広げることができる。図2は、2つの光共振器が構成される場合における、熱型光検出器の検出感度の一例を示す図である。図2に示される例では、第1光共振器による共振ピークP1が波長λ1(例えばλ1=4μm)に出現し、第2光共振器による共振ピークP2が波長λ2(例えばλ2=12μm)に出現している。これらのピーク特性が合成されることによって、熱型光検出器200の検出感度P3が広がる。つまり、広い波長域において検出感度をもつ熱型光検出器200が実現される。なお、熱伝達部材260の材料として、窒化アルミニウム(AlN)を用いた場合においても、同様の効果を得ることができる。
このように、本実施形態の熱型光検出器によれば、熱検出素子から遠い箇所で発生した熱を、熱伝達部材(熱伝達層)260の集熱部FLを経由して、熱検出素子である焦電キャパシター230に高速かつ効率的に集めることができる。また、光の波長の相互干渉を利用する(光の共振を利用する)ことによって、第1光吸収層270ならびに第2光吸収層272における光の実効的な吸収効率を高めることができ、また、熱型光検出器が検出感度を有する波長帯域を広げることもできる。
(熱伝達部材のバリエーションについて)
次に、図3〜図12を参照して、熱伝達部材260のパターンのバリエーションについて説明する。図3〜図12において、前掲の図面と共通する部分には、同じ参照符号を付してある。また、図3〜図12では、焦電キャパシター230を構成する焦電層232は省略されている。
(図3の例)
まず、図3を参照する。図3(A)および図3(B)は、熱伝達部材のパターンの一例を示す図である。図3(A)に示される例は、図1(A)に示される例と同じである。すなわち、熱伝達部材260の集熱部FLは、平面視で、接続部CNを中心として、接続部CNから支持部材(メンブレン)215の外縁に向かう方向(八方)に延在する複数の延在部K1〜K8を備える放射状パターンを有している。
延在部K1〜K8のうちの隣接する2つの延在部間には、光反射材料は存在しない。したがって、この領域から、光は、支持部材(メンブレン)215側に進入することができる。よって、第2熱吸収層272の下に位置する第1熱吸収層270においても、光吸収によって熱が発生する。また、各延在部K1〜K8は、平面視で、熱型検出素子としての焦電キャパシター230が設けられている領域を超えて延在している。よって、焦電キャパシター230から遠い位置にて発生した熱であっても、集熱部FLにおける延在部K1〜K8を経由して、焦電キャパシター230に効率的に伝達することができる。
図3(A)の例によれば、上方(つまり第2光吸収層270側)から入射する光のかなり多くを、支持部材215側に通過させることが容易にできる。よって、例えば、熱検出素子としての焦電キャパシター230に近い第1光吸収層272にて多くの熱を発生させることができる。また、延在部K1〜K8の長さを長くすることによって、平面視で、熱検出素子としての焦電キャパシター230から遠い位置において発生した熱であっても、延在部を介して、効率的に熱検出素子に集熱することが可能となる。
また、図3(A)に示される、複数の延在部K1〜K8を備える形状は、平面視で、接続部CNを中心として点対称の形状である。すなわち、熱伝達部材260の集熱部FLが、平面視で、接続部CNを中心として点対称のパターンを有する。
熱検出素子としての焦電キャパシター230は、平面視で、略正方形や円形の形状を有することができ、熱伝達部材260の接続部CNは、焦電キャパシター230の略正方形や円の中心付近に設けることができる。そして、集熱部FLのパターンは、この接続部CNに対して180度回転すると元の図形に重なるようなパターン(点対称パターン)とすることができる。点対称パターンの採用によって、焦電キャパシター230(あるいは接続部CN)の周囲(四方八方)において発生した熱を、効率的に、かつバランス良く、焦電キャパシター230に集熱することができる。
図3(B)に示される例では、熱伝達部材260の集熱部FLは、環状パターンと十字パターンとを組み合わせたパターンを有する。すなわち、熱伝達部材260の集熱部FLは、平面視で、接続部CNを中心として、接続部CNから支持部材(メンブレン)215の外縁に向かう方向(四方)に延在する複数の延在部K1〜K4を備える十字状パターンと、延在部K1〜K4の先端部同士を共通に接続するように設けられた環状部(ここでは略正方形の環状部)CLと、を有している。この環状部CLは、平面視で、接続部CNを囲むように配設されている。
環状部CLの形状は、例えば、多角形(四角形等を含む)や円を含むことができる。環状部CLを設けることによって、焦電キャパシター230の周囲領域、特に、焦電キャパシター230からの距離が離れている周囲領域において発生した熱を、環状部CLによって、焦電キャパシター230に効率的に集熱することができる。
また、環状部CLの内側の領域には、環状部CLの一部と他の一部とを結ぶ線状部(K1とK3からなる直線部、ならびにK2とK4とからなる直線部)を有している。これら線状部は、熱伝達部材260の接続部CNに接続されている。よって、環状部CL、線状部(K1とK2,K3とK4)ならびに接続部CNを経由して、周辺で発生した熱を焦電キャパシター230に、効果的に伝達することができる。
また、環状部CLは、線状部(K1とK2,K3とK4)の力学的な強度を高める補強部材としても機能する。よって、例えば、線状部(K1とK2,K3とK4)の撓みや変形が効果的に防止される。例えば、線状部(K1とK2,K3とK4)に撓みや変形が生じると、その表面で光が反射する際に乱反射等が生じやすくなる。環状部CLによって、線状部の撓みや変形が抑制されれば、上述のような不都合が生じるにくくなる。
(図4の例)
図4(A)および図4(B)は、熱伝達部材のパターンの他の例を示す図である。図4(A)および図4(B)に示される例では、先に示した図3(B)の例と同様に、熱伝達部材260の集熱部FLは、環状パターンCLと、複数の延在部(K1〜K4、K1〜K8)を有するパターンとを組み合わせてなるパターンを有している。
但し、図4(A)の例では、4本の延在部K1〜K4によって×形状が形成されている。また、図4(B)の例では、8本の延在部K1〜K8によって放射状の形状が形成されている。得られる効果は、図3(A)および図3(B)の例と同様である。
なお、突起部の本数を変えることによって、熱伝達部材260における集熱部FLの平面視における面積と、熱伝達部材260が設けられない領域の面積との比を変化させることができる。環状部CLは、上述のとおり、環状部CLの内側の領域に配置される線状部(K1〜K4あるいはK1〜K8)を力学的な強度を高める機能も有している。
(図5および図6の例)
図5(A)および図5(B)は、熱伝達部材のパターンの他の例を示す図である。図5(A)の例では、複数の延在部K1〜K4の先端には、各延在部K1〜K4の先端から枝分かれした複数本の枝部(ここでは3本の枝)を含む分岐枝部G1〜G4が設けられている。なお、分岐枝部は分岐部ということもできる。なお、分岐枝部G1〜G4を設ける箇所は、複数の延在部K1〜K4の先端には限定されない。また、好ましくは、複数の延在部K1〜K4の各々に延在部K1〜K4を設けるのがよいが、これに限定されない。分岐枝部は、複数の延在部K1〜K4の少なくとも一本に設けることができる。また、分岐枝部G1〜G4は、延在部K1〜K4の線状部から分岐して設けられる。
また、図5(B)の例では、複数の延在部K1〜K4には、各延在部K1〜K4の、接続部CNを始点とする延在方向に対して屈曲して延在する屈曲部(この屈曲部は二叉に分岐された分岐部とみることもできる)J1〜J4が設けられている。
延在部K1〜K4の、例えば先端に、さらに、分岐枝部G1〜G4や屈曲部J1〜J4を接続する(設ける)ことによって、平面視で、焦電キャパシター230から遠い位置において発生した熱であっても、分岐枝部G1〜G4や屈曲部J1〜J4ならびに延在部K1〜K4を介して、効率的に焦電キャパシター230に、熱を伝達することができる。また、分岐枝部G1〜G4や屈曲部J1〜J4を設けることによって、熱伝達部材260における集熱部FLの全体の面積が増大する。よって、より広範な領域で発生した熱を、焦電キャパシター230に集熱することができる。
図6(A)および図6(B)は、熱伝達部材のパターンの他の例を示す図である。図6(A)の例では、図5(A)に示される集熱部FLのパターンに、さらに、環状部CLが追加されている。また、図6(B)の例では、複数の延在部K1〜K4の各々の先端(一例であってこれに限定されるものではない)には、各延在部K1〜K4の、接続部CNを始点とする延在方向に対して屈曲して延在する屈曲部J5〜J8が接続されている。得られる効果は、図5(A)および図5(B)の例と同様である。
(図7の例)
図7(A)および図7(B)は、熱伝達部材のパターンの他の例を示す図である。図7(A)の例では、図4(A)の例における、平面視で四角形の環状部CLを、平面視で円形の環状部CLに置換したパターンが採用されている。図7(B)の例では、図7(A)の例におけるパターンに、さらに、内側の環状部BLを追加したパターンが採用されている。得られる効果は、前掲の例と同様である。
(図8の例)
図8(A)および図8(B)は、熱伝達部材のパターンの他の例を示す図である。図8(A)の例では、平面視で、環状部CLの一部から、支持部材(メンブレン)215の外縁に向かう方向に延在する、環状部用の延在部Q1〜Q4が設けられている。これによって、焦電キャパシター230から、より遠い位置において発生した熱であっても、環状部用の延在部Q1〜Q4,環状部CLならびに4本の延在部K1〜K4(さらに内側の環状部BL)を経由して、効率的に、焦電キャパシター230に集熱することができる。また、環状部用の延在部Q1〜Q4を設けることによって、集熱部FLの全体の面積が増大する。よって、より広範な領域で発生した熱を、焦電キャパシター230に集熱することができる。
図8(B)は、環状部用の延在部Q1〜Q4を設ける例の変形例である。図8(B)の例では、熱伝達部材260の集熱部FLは、中央部に位置する、比較的小面積の、円形の光反射面X1を有する。
この光反射面X1は、外周が閉じた形状を有する点で、広義の環状部とみることもできる。図8の例では、広義の環状部としての光反射面X1に、環状部用の延在部Q1〜Q4を接続している。光反射面X1が小面積であることから、その周囲には、入射光を通過させる領域Y1〜Y4が存在し、この領域Y1〜Y4を経由して、入射光の一部は、支持部材(メンブレン)215側に進入することができる。
環状部用の延在部Q1〜Q4が設けられていることによって、焦電キャパシター230から、より遠い位置において発生した熱であっても、焦電キャパシター230に集熱することができる。また、環状部用の延在部Q1〜Q4を設けることによって、集熱部FLの全体の面積を増やすことができる。
(図9の例)
図9(A)および図9(B)は、熱伝達部材のパターンの他の例を示す図である。図9(A)および図9(B)に示される例では、熱伝達部材260における集熱部FLのパターンとして、平面視で、複数の孤立パターンと、各孤立パターン毎に設けられた接続部と、を有するパターンが採用されている。
図9(A)の例では、集熱部FLは、4つの孤立パターンFLa1、FLb1、FLc1ならびにFLd1を有する。4つの孤立パターンFLa1、FLb1、FLc1ならびにFLd1の各々は、接続部CN1〜CN4の各々から2分岐された、互いに直交する2本の枝部を有するパターンを有する。
孤立パターンFLa1に対応して接続部CN1が設けられている。孤立パターンFLa1は、接続部CN1を介して焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に接続されている。同様に、孤立パターンFLb1に対応して接続部CN2が設けられている。孤立パターンFLb1は、接続部CN2を介して焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に接続されている。また、孤立パターンFLc1に対応して接続部CN3が設けられている。孤立パターンFLc1は、接続部CN3を介して焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に接続されている。また、孤立パターンFLd1に対応して接続部CN4が設けられている。孤立パターンFLd1は、接続部CN4を介して焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に接続されている。
また、図9(B)の例では、集熱部FLは、4つの孤立パターンFLa2、FLb2、FLc2ならびにFLd2を有する。
図9(B)の例では、集熱部FLは、4つの孤立パターンFLa2、FLb2、FLc2ならびにFLd2を有する。4つの孤立パターンFLa2、FLb2、FLc2ならびにFLd2の各々は、接続部CN1〜CN4の各々から3分岐された3本の枝部を有するパターンを有する。
孤立パターンFLa2に対応して接続部CN1が設けられている。孤立パターンFLa2は、接続部CN1を介して焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に接続されている。同様に、孤立パターンFLb2に対応して接続部CN2が設けられている。孤立パターンFLb2は、接続部CN2を介して焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に接続されている。また、孤立パターンFLc2に対応して接続部CN3が設けられている。孤立パターンFLc2は、接続部CN3を介して焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に接続されている。また、孤立パターンFLd2に対応して接続部CN4が設けられている。孤立パターンFLd2は、接続部CN4を介して焦電キャパシター230の上部電極(第2電極)236に接続されている。
このように、図9(A)および図9(B)の例では、孤立パターン(Fla1〜FLd1,FLa2〜FLd2)毎に接続部(C1〜C4)が設けられており、各孤立パターンで集熱された熱は、各接続部を経由して、焦電キャパシター230に伝達される。なお、各孤立パターンは、共通のパターンであってよく、また、各孤立バターン毎に異なるパターンとすることもできる。図9(A)および図9(B)の例では、熱伝達部材260における集熱部FLのパターンのバリエーションを豊富化することが容易である。
また、例えば、接続部(CN1〜CN4)を中心として、その周囲(例えば四隅)に孤立パターンを配置するレイアウト(図9(A),図9(B)に示されるようなレイアウト)を採用すれば、焦電キャパシター230から遠い位置にある周辺領域で発生した熱を、バランス良く、かつ効率的に焦電キャパシター230に伝達することができる。
(図10〜図12の例)
図10〜図12に示される例では、熱伝達部材260における集熱部FLのパターンとして、閉じた形状をもつ外周によって決定される領域が少なくとも一つの切り欠き部を内包する形状(パターン)を採用する。この例では、集熱部FLにおける光を反射する領域(すなわち光反射面)の面積と切り欠き部(穴部)の面積との比を調整することによって、反射光と通過光の割合を決めることができる。
図10(A)および図10(B)は、熱伝達部材のパターンの他の例を示す図である。図10(A)の例では、平面視で略正方形の光反射面X2には、焦電キャパシター230の四辺の各々に沿って、4つの、略正方形の切り欠き部Y5〜Y8が設けられている。また、図10(B)の例では、光反射面X2には、平面視で、焦電キャパシター230の四隅に、4つの、略正方形の切り欠き部Y9〜Y11が設けられている。
図11(A)および図11(B)は、熱伝達部材のパターンの他の例を示す図である。図11(A)の例では、光反射面X2には、平面視で、焦電キャパシター230の四辺に沿って、かつ四隅において、8つの、略長方形の切り欠き部Y13〜Y20設けられている。また、図11(B)の例では、光反射面X2には、平面視で、焦電キャパシター230の四隅において、8つの、略長方形の切り欠き部Y21〜Y28が設けられている。
図12(A)および図12(B)は、熱伝達部材のパターンの他の例を示す図である。図12(A)の例では、平面視で略正方形の光反射面X2には、焦電キャパシター230の四辺に沿って4つの、三角形の切り欠き部Y29〜Y32設けられている。また、図12(B)の例では、平面視で円形の光反射面X2には、焦電キャパシター230の四隅に、4つの、三角形の切り欠き部Y33〜Y36が設けられている。
図10〜図12の例では、集熱部FLにおける光を反射する領域(すなわち光反射面X2またはX3)の面積と、切り欠き部(Y5〜Y36)の面積との比を調整することによって、反射光(入射光のうちの光反射面で反射する光)と通過光(切り欠き部を通過する光)の割合を決めることができる。また、切り欠き部(Y5〜Y36)の形状や位置を調整することによって、支持部材215側への光の進入が可能な領域を、焦電キャパシター230上において、適宜、決定することができる。よって、第1光吸収層270や第2光吸収層272で発生した熱を、効率的に焦電キャパシター230に伝達できる集熱部FLのパターンを、設計の自由度を確保しつつ、比較的容易に実現することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態では、図13〜図15を参照して、熱型光検出器の製造方法について説明する。まず、図13(A)〜図13(E)を参照する。図13(A)〜図13(E)は、熱型光検出器の製造方法における、第1光吸収層を形成するまでの主要な工程を示す図である。
図13(A)に示される工程では、シリコン基板(トランジスター等の素子を有してもよい)を用意し、このシリコン基板10上に、絶縁層を含む構造体(例えば、多層配線構造体)100を形成する。絶縁層を含む構造体100上に、エッチングストッパー膜130aを形成し、さらに、犠牲層(例えば、SiO2層)101を形成する。
図13(B)の工程では、犠牲層101上にエッチングストッパー膜130bを形成する。次に、支持部材(メンブレン)215となる厚膜(例えば、3層の積層膜で構成される厚膜)を形成する。
図13(C)の工程では、支持部材(メンブレン)215に、下部電極(第1電極)234、焦電材料層(PZT層)232ならびに上部電極(第2電極)236を積層形成して、熱検出素子としての焦電キャパシター230を形成する。焦電キャパシター230の形成方法として、例えば、アトミックレイヤーCVD法を用いることができる。次に、焦電キャパシター230を覆うように絶縁層250を形成する。絶縁層250は、例えばCVD法によって形成することができる。続いて、絶縁層250をパターニングする。
図13(E)の工程では、焦電キャパシター230を覆う絶縁層250において、第1コンタクトホール252を形成し、続いて、金属材料層を堆積し、次に、その金属材料層をパターニングすることによって、上部電極(第2電極)236に接続される電極(ならびに配線)226を形成する。なお、図13(E)の工程では、併せて、下部電極(第1電極)に接続される電極ならびに配線(不図示)も形成される。
図13(E)の工程では、CVD法によって第1光吸収層(SiO2層等)270を形成する。次に、その表面を、例えば、CMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング)によって平坦化する。
次に、図14(A)〜図14(C)を参照する。図14(A)〜図14(C)は、熱型光検出器の製造方法における、第1光吸収層ならびに第2光吸収層をパターニングするまでの主要な工程を示す図である。図14(A)の工程では、第1光吸収層270に、第2コンタクトホール254を形成する。続いて、酸化アルミニウム(アルミナ:AlOx)や窒化アルミニウム(AlN)等の、高い熱伝導率と光透過性を有する材料を堆積し、パターニングすることによって、熱伝達部材(熱伝達層)260を形成する。熱伝達部材260は、集熱部FLおよび接続部CNを有する。第2コンタクトホール254内には、アルミナ等の材料が充填される。アルミナ等の材料が充填された部分238によって接続部CNが構成される。
図14(B)の工程では、第1光吸収層270上に、第2光吸収層となる材料層(SiO2層等)を堆積した後、パターニングする。これによって、第2光吸収層272が形成される。図14(C)の工程では、第1光吸収層270をパターニングする。
次に、図15(A)および図15(B)を参照する。図15(A)および図15(B)は、熱型光検出器の製造方法における、熱型光検出器が完成するまでの主要な工程を示す図である。図15(A)の工程では、支持部材(メンブレン)215をパターニングする。これによって、載置部210、第1アーム部212aならびに第2アーム部212bが形成される。図15(A)において、パターニングによって除去された部分(開口部)には参照符号OPを付してある。
図15(B)の工程では、例えば、ウエットエッチングによって犠牲層101を選択的に除去する。これによって、空洞部(熱分離空洞部)102が形成される。支持部材215の載置部210は、空洞部102によって、基部(基板10、絶縁層を含む構造体100ならびにエッチングストッパー膜130aからなる)から分離される。したがって、支持部材215を経由した放熱が抑制される。このようにして、熱型光検出器が完成する。
(第3の実施形態)
図16は、熱型光検出器の他の例を示す図である。図16に示される熱型光検出器200では、一つの熱検出素子毎に空洞部102が形成され、支持部材(メンブレン)215は、空洞部102の周囲の構造体(基部の一部)によって支持される。また、基板の、平面視で、熱検出素子に重なる領域には、回路構成要素(ここではMOSトランジスター)が形成されており、このMOSトランジスターは、多層配線を経由して、熱検出素子である焦電キャパシター230に接続される。また、図16の例では、熱伝達部材260が、配線としても利用されている。
すなわち、基板(シリコン基板)10には、ソース層(S)ならびにドレイン(D)層が形成され、また、基板10上に、ゲート絶縁膜INSとゲート電極(例えばポリシリコンゲート電極)Gが形成されており、これらによって、回路構成要素であるMOSトランジスターが形成されている。
基板10上には、絶縁層を含む構造体100が形成されている。基板10ならびに絶縁層を含む構造体100によって基部(ベース)が構成される。
絶縁層を含む構造体100は、多層構造体で構成され、より具体的には、多層配線構造体で構成される。多層配線構造体は、第1絶縁層100aと、第2絶縁層100bと、第3絶縁層100cと、第1コンタクトプラグCP1と、第1層目配線M1と、第2コンタクトプラグCP2と、第2層目配線M2と、第3コンタクトプラグCP3と、を含む。第3絶縁層100cの一部が、選択的に除去されることによって、空洞部(熱分離空洞部)102が形成される。
支持部材(メンブレン)215の載置部210上には、熱検出素子としての焦電キャパシター230が形成されている。また、熱伝達部材260は、第1光吸収層270と第2光吸収層272とによって挟まれて形成されている。
支持部材(メンブレン)215と、焦電キャパシター230と、第1光吸収層270と第2光吸収層272と、熱伝達部材260と、第4コンタクトプラグCP4と、第3層目配線M3と、第5コンタクトプラグCP5と、によって素子構造体160が構成される。上述したとおり、熱伝達部材260は、熱検出素子である焦電キャパシター230を他の素子(ここでは、基板10に形成されたCMOSトランジスター)に接続する配線の一部を兼ねている。
すなわち、熱伝達部材260は、上述のとおり、例えば、AlNやAlOx等の金属化合物で構成することができるが、金属を主成分とする材料は電気伝導も良好であることから、熱伝達部材260は、熱検出素子を他の素子に接続する配線(配線の一部を含む)としても利用することが可能である。熱伝達部材260を、配線としても利用することによって、配線を別途、設ける必要がなくなり、製造工程の簡素化を図ることができる。
(第4の実施形態)
図17は、熱型光検出装置(熱型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図である。図17の例では、複数の光検出セル(すなわち、熱型光検出器200a〜200d等)が、2次元的に配置されている。複数の光検出セル(熱型光検出器200a〜200d等)の中から一つの光検出セルを選択するために、走査線(W1a,W1b等)と、データ線(D1a,D1b等)が設けられている。
第1の光検出セルとしての熱型光検出器200aは、熱形光検出素子5としての圧電コンデンサーZCと、素子選択トランジスターM1aと、を有する。圧電コンデンサーZCの両極の電位関係は、PDr1に印加する電位を切り換えることによって反転することができる(この電位反転によって、機械的なチョッパーを設ける必要がなくなる)。なお、他の光検出セルも同様の構成である。1つの光検出セルが占める領域のサイズは、例えば20μm×20μmである。
データ線D1aの電位は、リセットトランジスターM2をオンすることによって初期化することができる。検出信号の読み出し時には、読み出しトランジスターM3がオンする。焦電効果によって生じる電流は、I/V変換回路510によって電圧に変換され、アンプ600によって増幅され、A/D変換器700によってデジタルデータに変換される。
本実施形態では、複数の熱型光検出器が2次元的に配置された(例えば、直交2軸(X軸およびY軸)の各々に沿ってアレイ状に配置された)、熱型光検出装置(熱型光アレイセンサー)が実現される。
(第5の実施形態)
本実施形態では、電子機器について説明する。
(赤外線カメラ)
図18に本実施形態の焦電型検出器または焦電型検出装置を含む電子機器の例として赤外線カメラ400Aの構成例を示す。この赤外線カメラ400Aは、光学系400、センサーデバイス(焦電型検出装置)410、画像処理部420、処理部430、記憶部440、操作部450、表示部460を含む。
光学系400は、例えば1又は複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス410への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
センサーデバイス410は、上述した本実施形態の焦電型検出器200を二次元配列させて構成され、複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。センサーデバイス410は、二次元配列された検出器に加えて、行選択回路(行ドライバー)と、列線を介して検出器からのデータを読み出す読み出し回路と、A/D変換部等を含むことができる。二次元配列された各検出器からのデータを順次読み出すことで、物体像の撮像処理を行うことができる。
画像処理部420は、センサーデバイス410からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。
処理部430は、赤外線カメラ400Aの全体の制御を行い、赤外線カメラ400A内の各ブロックの制御を行う。この処理部430は、例えばCPU等により実現される。記憶部440は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部430や画像処理部420のワーク領域として機能する。操作部450は、ユーザーが赤外線カメラ400Aを操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。表示部460は、例えばセンサーデバイス410により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイにより実現される。
このように、1セル分の焦電型検出器を赤外線センサー等のセンサーとして用いる他、1セル分の焦電型検出器を二軸方向例えば直交二軸方向に二次元配置することでセンサーデバイス410を構成することができ、こうすると熱(光)分布画像を提供することができる。このセンサーデバイス410を用いて、サーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラなどの電子機器を構成することができる。
もちろん、1セル分または複数セルの焦電型検出器をセンサーとして用いることで物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などの各種の電子機器を構成することもできる。
(運転支援装置)
図19に本実施形態の焦電型検出器または焦電型検出装置を含む電子機器の例として、運転支援装置600の構成例を示す。この運転支援装置600は、運転支援装置600を制御するCPUを備えた処理ユニット610と、車両外部の所定撮像領域に対して赤外線を検出可能な赤外線カメラ620と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサー630と、車両の走行速度を検出する車速センサー640と、運転者のブレーキ操作の有無を検出するブレーキセンサー650と、スピーカー660と、表示装置670とを備えて構成されている。
この運転支援装置600の処理ユニット610は、例えば赤外線カメラ620の撮像により得られる自車両周辺の赤外線画像と、各センサー630〜650により検出される自車両の走行状態に係る検出信号とから、自車両の進行方向前方に存在する物体及び歩行者などの対象物を検出し、検出した対象物と自車両との接触が発生する可能性があると判断したときに、スピーカー660または表示装置670により警報を出力する。
また、たとえば図20に示すように、赤外線カメラ620は、車両の前部において車幅方向の中心付近に配置されている。表示装置670は、フロントウィンドーにおいて運転者の前方視界を妨げない位置に各種情報を表示するHUD(Head Up Display)671などを備えて構成されている。
(セキュリティー機器)
図21に本実施形態の焦電型検出器または焦電型検出装置を含む電子機器の例として、セキュリティー機器700の構成例を示す。
セキュリティー機器700は、少なくとも監視エリアを撮影する赤外線カメラ710と、監視エリアへの侵入者を検知する人感センサー720と、赤外線カメラ710から出力された画像データを処理して監視エリアに侵入した移動体を検知する動き検知処理部730と、人感センサー720の検知処理を行う人感センサー検知処理部740と、赤外線カメラ710から出力された画像データを所定の方式で圧縮する画像圧縮部750と、圧縮された画像データや侵入者検知情報の送信や外部装置からセキュリティー機器700への各種設定情報などを受信する通信処理部760と、セキュリティー機器700の各処理部に対して条件設定、処理コマンド送信、レスポンス処理をCPUで行う制御部770とを備えて構成されている。
動き検知処理部730は、図示しないバッファメモリーと、バッファメモリーの出力が入力されるブロックデータ平滑部と、ブロックデータ平滑部の出力が入力される状態変化検出部とを備える。そして動き検出処理部730の状態変化検出部は、監視エリアが静止状態であれば動画で撮影した異なるフレームでも同一画像データとなるが、状態変化(移動体の侵入)があるとフレーム間の画像データで差が生じることを利用して状態変化を検知している。
また、たとえば軒下に設置されているセキュリティー機器700と、セキュリティー機器700に組み込まれている赤外線カメラ710の撮像エリアA1と、人感センサー720の検知エリアA2を側面から示したものを図22に示す。
(ゲーム機器)
図23および図24に本実施形態の焦電型検出器または焦電型検出装置を含む電子機器の例として、前述のセンサーデバイス410を用いたコントローラー820を含むゲーム機器800の構成例を示す。
図23に示すように、図24のゲーム機器800に用いられるコントローラー820は、撮像情報演算ユニット830と、操作スイッチ840と、加速度センサー850と、コネクター860と、プロセッサー870と、無線モジュール880と、を備えて構成される。
撮像情報演算ユニット830は、撮像ユニット831と、この撮像ユニット831で撮像した画像データを処理するための画像処理回路835を有する。撮像ユニット831は、センサーデバイス832(図18のセンサーデバイス410)を含み、その前方には、赤外線フィルター(赤外線だけを通すフィルター)833及び光学系(レンズ)834を配置している。そして、画像処理回路835は、撮像ユニット831から得られた赤外線画像データを処理して、高輝度部分を検知し、それの重心位置や面積を検出してこれらのデータを出力する。
プロセッサー870は、操作スイッチ840からの操作データと、加速度センサー850からの加速度データおよび高輝度部分データを一連のコントロールデータとして出力する。無線モジュール880は所定周波数の搬送波をこのコントロールデータで変調し、アンテナ890から電波信号として出力する。
なおコントローラー820に設けられているコネクター860を通して入力されたデータもプロセッサー870によって上述のデータと同様に処理されてコントロールデータとして無線モジュール880とアンテナ890を介して出力される。
図24に示すように、ゲーム機器800は、コントローラー820と、ゲーム機本体810と、ディスプレイ811と、LEDモジュール812Aおよび812Bとを備え、プレイヤー801が一方の手でコントローラー820を把持してゲームをプレイすることができる。そして、コントローラー820の撮像ユニット831をディスプレイ811の画面813を向くようにすると、ディスプレイ811の近傍に設置された二つのLEDモジュール812Aおよび812Bから出力される赤外線を撮像ユニット831が検知して、コントローラー820は、二つのLEDモジュール812A,812Bの位置や面積情報を高輝度点の情報として取得する。輝点の位置や大きさのデータがコントローラー820から無線でゲーム機本体810に送信され、ゲーム機本体810で受信される。プレイヤー801がコントローラー820を動かすと、輝点の位置や大きさのデータが変化するため、それを利用して、ゲーム機本体810はコントローラー820の動きに対応した操作信号を取得できるので、それにしたがってゲームを進行させることができる。
(体温測定装置)
図25に本実施形態の焦電型検出器または焦電型検出装置を含む電子機器の例として、体温測定装置900の構成例を示す。
図25に示すように、体温測定装置900は、赤外線カメラ910と、体温分析装置920と、情報通信装置930と、ケーブル940とを備えて構成されている。赤外線カメラ910は、図示しないレンズなどの光学系と前述のセンサーデバイス410を含んで構成されている。
赤外線カメラ910は所定の対象領域を撮影し、撮影された対象者901の画像情報を、ケーブル940を経由して体温分析装置920に送信する。体温分析装置920は、図示しないが、赤外線カメラ910からの熱分布画像を読み取る画像読取処理ユニットと、画像読取処理ユニットからのデータと画像分析設定テーブルに基づいて体温分析テーブルを作成する体温分析処理ユニットとを含み、体温分析テーブルに基づいて体温情報送信用データを情報通信装置930へ送信する。この体温情報送信用データは体温異常であることに対応する所定のデータを含んでもよい。また、撮影領域内に複数の対象者901を含んでいると判断した場合には、対象者901の人数と体温異常者の人数の情報を体温情報送信用データに含んでもよい。
(特定物質探知装置)
図26に本実施形態の焦電型検出器または焦電型検出装置を含む電子機器の例として、前述のセンサーデバイス410の焦電型検出器の光吸収材の吸収波長をテラヘルツ域としたセンサーデバイスをテラヘルツ光センサーデバイスとして用い、テラヘルツ光照射ユニットと組み合わせて特定物質探知装置1000を構成した例を示す。
特定物質探知装置1000は、制御ユニット1010と、照射光ユニット1020と、光学フィルター1030と、撮像ユニット1040と、表示部1050とを備えて構成されている。撮像ユニット1040は、図示しないレンズなどの光学系と前述の焦電型検出器の光吸収材の吸収波長をテラヘルツ域としたセンサーデバイスを含んで構成されている。
制御ユニット1010は、本装置全体を制御するシステムコントローラーを含み、該システムコントローラーは制御ユニットに含まれる光源駆動部および画像処理ユニットを制御する。照射光ユニット1020は、テラヘルツ光(波長が100μm〜1000μmの範囲にある電磁波を指す。)出射するレーザー装置と光学系を含み、テラヘルツ光を検査対象の人物1060に照射する。人物1060からの反射テラヘルツ光は、探知対象である特定物質1070の分光スペクトルのみを通過させる光学フィルター1030を介して撮像ユニット1040に受光される。撮像ユニット1040で生成された画像信号は、制御ユニット1010の画像処理ユニットで所定の画像処理が施され、その画像信号が表示部1050へ出力される。そして人物1060の衣服内等に特定物質1070が存在するか否かにより受光信号の強度が異なるので特定物質1070の存在が判別できる。
以上、いくつかの電子機器の実施形態について説明したが、上記実施形態の電子機器は説明した構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略し、あるいは他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
(センサーデバイス)
図27(A)に図18のセンサーデバイス410の構成例を示す。このセンサーデバイスは、センサーアレイ500と、行選択回路(行ドライバー)510と、読み出し回路520を含む。またA/D変換部530、制御回路550を含むことができる。行選択回路(行ドライバー)510と読み出し回路520を駆動回路と称する。このセンサーデバイスを用いることで、図5に示す、たとえばナイトビジョン機器などに用いられる赤外線カメラ400Aなどを実現できる。
センサーアレイ500には、例えば図17に示すように二軸方向に複数のセンサーセルが配列(配置)される。また複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。なお行線及び列線の一方の本数が1本であってもよい。例えば行線が1本である場合には、図27(A)において行線に沿った方向(横方向)に複数のセンサーセルが配列される。一方、列線が1本である場合には、列線に沿った方向(縦方向)に複数のセンサーセルが配列される。
図27(B)に示すように、センサーアレイ500の各センサーセルは、各行線と各列線の交差位置に対応する場所に配置(形成)される。例えば図27(B)のセンサーセルは、行線WL1と列線DL1の交差位置に対応する場所に配置されている。他のセンサーセルも同様である。
行選択回路510は、1又は複数の行線に接続される。そして各行線の選択動作を行う。例えば図27(B)のようなQVGA(320×240画素)のセンサーアレイ500(焦点面アレイ)を例にとれば、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239を順次選択(走査)する動作を行う。即ちこれらの行線を選択する信号(ワード選択信号)をセンサーアレイ500に出力する。
読み出し回路520は、1又は複数の列線に接続される。そして各列線の読み出し動作を行う。QVGAのセンサーアレイ500を例にとれば、列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319からの検出信号(検出電流、検出電荷)を読み出す動作を行う。
A/D変換部530は、読み出し回路520において取得された検出電圧(測定電圧、到達電圧)をデジタルデータにA/D変換する処理を行う。そしてA/D変換後のデジタルデータDOUTを出力する。具体的には、A/D変換部530には、複数の列線の各列線に対応して各A/D変換器が設けられる。そして、各A/D変換器は、対応する列線において読み出し回路520により取得された検出電圧のA/D変換処理を行う。なお、複数の列線に対応して1つのA/D変換器を設け、この1つのA/D変換器を用いて、複数の列線の検出電圧を時分割にA/D変換してもよい。
制御回路550(タイミング生成回路)は、各種の制御信号を生成して、行選択回路510、読み出し回路520、A/D変換部530に出力する。例えば充電や放電(リセット)の制御信号を生成して出力する。或いは、各回路のタイミングを制御する信号を生成して出力する。
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
本発明は、種々の焦電型検出器(例えば、熱伝対型素子(サーモパイル)、焦電型素子等)に広く適用することができる。検出する光の波長は問わない。また、焦電型検出器または焦電型検出装置、あるいはそれらを有する電子機器は、例えば、供給する熱量と流体が奪う熱量とが均衡する条件下にて流体の流量を検出するフローセンサーなどにも適用できる。このフローセンサーに設けられる熱伝対などに代えて本発明の焦電型検出器または焦電型検出装置を設けることができ、光以外を検出対象とすることができる。
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、熱型光検出器の検出感度を、格段に向上させることができる。
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。