JP6177282B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
タイヤの製造においては、フォーマーのドラム上で、インナーライナー、カーカス、トレッド等の部材が組み合わされる。ドラムが拡径しこれらの形状が整えられる。これにより、ローカバーが組み立てられる。このローカバーの組み立ての工程は、成形工程とも称されている。このローカバーは、モールドとブラダー又は中子とに囲まれたキャビティにおいて、加圧されつつ加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。ローカバーからタイヤが得られる工程は、加硫工程とも称される。
タイヤの成形工程において、ローカバーの形状が整えられる際に、カーカスには、引っぱり方向のテンションが生じる。このテンションにより、特にバッドレス部近辺において、カーカスのコードの間隔が広くなることが起こる。これは、タイヤの表面のバルジ・デントの要因となりうる。これはタイヤの外観を損なう。また、カーカスのコードの間隔が広くなった部分では、加硫工程において、ゴムが流れ易い。カーカスのコードが、インナーライナー側に入りこむことが起こりうる。タイヤが転動したとき、この部分に応力の集中が起こりうる。これは、タイヤの耐久性の低下の要因となりうる。
カーカスのコードのインナーライナー側への入り込みが抑えられたタイヤについての検討が、特開平6−87976号公報に開示されている。このタイヤでは、ゴムの組成を調整することで、未加硫ゴムのグリーンモジュラスが高くされている。これにより、加硫工程におけるゴム流れが少なくされている。
特開平6−87976号公報
さらにタイヤ表面のバルジ・デントの発生が抑制され、高い耐久性が実現されたタイヤが求められている。バルジ・デントを抑制するために、バッドレス部の厚みを厚くする方法がある。このタイヤでは、カーカスのコードの間隔が広くなっても、カーカスとバッドレス部の外面との距離が大きくなっているため、バルジ・デントが起こりにくい。しかし、この方法は、タイヤの耐久性向上には寄与しない。
バッドレス部の表面をセレーション加工することで、バルジ・デントを目立たなくすることが考えられる。しかし、特に高扁平タイヤについては、セレーション加工の効果が出にくいという問題がある。さらにこの方法も、タイヤの耐久性向上には寄与しない。
バッドレス部において、サイドウォールがトレッドの外側に位置する「トレッドオンサイドウォール構造(TOS構造)」を採用する方法がある。TOS構造は、バッドレス部において、トレッドがサイドウォールの外側に位置する「サイドウォールオントレッド構造(SOT構造)」に比べて、成形工程においてカーカスにテンションがかかりにくい。TOS構造はSOT構造に比べて、バルジ・デントが発生しにくい。しかし、TOS構造においてもなおバルジ・デントが発生することがある。さらにTOS構造はSOT構造に比べて生産性が低いという問題もある。
本発明の目的は、タイヤ表面のバルジ・デントの発生が抑制され、高い耐久性が実現された空気入りタイヤの提供にある。
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド、サイドウォール、カーカス、ベルト、インナーライナー、一対の第一ゴム層及び一対の第二ゴム層を備えている。それぞれの第一ゴム層は、このタイヤのバッドレス部において、上記カーカスの外面に接合されている。それぞれの第二ゴム層は、このタイヤのバッドレス部において、上記カーカスの内面に接合されている。上記ベルトは、上記トレッドの半径方向内側において上記カーカスと積層されている。上記第一ゴム層は、上記ベルトと半径方向において重なり部分を有している。上記第二ゴム層は、上記ベルトと半径方向において重なり部分を有している。上記第一ゴム層の最大厚みは0.25mm以上2.5mm以下である。上記第二ゴム層の最大厚みは0.25mm以上2.5mm以下である。
好ましくは、上記第一ゴム層の半径方向外側端は、上記第二ゴム層の半径方向外側端よりも、軸方向内側に位置している。
好ましくは、上記第一ゴム層の外側面に沿って計測した上記第一ゴム層の半径方向外側端と内側端との距離は、10mm以上100mm以下である。
好ましくは、上記ベルトの端から上記第一ゴム層の外側面に向けて引いた法線と、上記第一ゴム層の外側面との交点がP1とされたとき、上記第一ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P1と上記第一ゴム層の半径方向外側端との距離Lo1は50mm以下である。上記第一ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P1と上記第一ゴム層の半径方向内側端との距離Li1は50mm以下である。
好ましくは、上記距離Lo1は30mm以下であり、上記距離Li1は30mm以下である。
好ましくは、上記第二ゴム層の外側面に沿って計測した上記第二ゴム層の半径方向外側端と内側端との距離が、30mm以上100mm以下である。
好ましくは、上記ベルトの端から上記第二ゴム層の外側面に向けて引いた法線と、上記第二ゴム層の外側面との交点がP2とされたとき、上記第二ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P2と上記第二ゴム層の半径方向外側端との距離Lo2は45mm以下である。上記第二ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P2と上記第二ゴム層の半径方向内側端との距離Li2は55mm以下である。
好ましくは、上記距離Lo2は25mm以下であり、上記距離Li2は45mm以下である。
好ましくは、上記第一ゴム層は第一ゴム組成物を架橋して得られており、この第一ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は30以上60以下である。
好ましくは、上記第二ゴム層は第二ゴム組成物を架橋して得られており、この第二ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は30以上60以下である。
好ましくは、上記トレッドの端は、サイドウォールの内側に位置する。
本発明に係る製造方法は、トレッド、サイドウォール、カーカス、ベルト、インナーライナー及びそのバッドレス部に一対の第一ゴム層と一対の第二ゴム層とを備えるタイヤの製造方法である。この製造方法は、ローカバーを形成する工程とローカバーを加硫する工程とを有する。上記ローカバーを形成する工程は、
上記第二ゴム層用の第二ゴム組成物のシートに電子線を照射する工程、
円筒状のドラムにおいて、上記第二ゴム組成物のシートを、電子線が照射された面が外側になるように積層して、第二ゴム組成物の層を形成する工程、
上記第二ゴム組成物の層の外側にカーカスを積層する工程、
上記カーカスの外側に上記第一ゴム層用の第一ゴム組成物のシートを積層して第一ゴム組成物の層を形成する工程、
及び
上記カーカスの外側に、上記第一ゴム組成物の層及び上記第二ゴム組成物の層と半径方向において重なりを有するように、上記ベルトを積層する工程
を有する。上記第一ゴム層の最大厚みが0.25mm以上2.5mm以下となるように上記第一ゴム組成物の層の厚みは決められている。上記第二ゴム層の最大厚みが0.25mm以上2.5mm以下となりように上記第二ゴム組成物の層の厚みは決められている。
好ましくは、上記電子線を照射する工程での電子線の照射量が10kGy以上500kGy以下であり、照射電圧が10kV以上1000kV以下である。
好ましくは、上記インナーライナーは、タイ層を有していない。
本発明に係る空気入りタイヤでは、第一ゴム層は、バッドレス部において、カーカスの外面に接合されている。第二ゴム層は、バッドレス部において、カーカスの内面に接合されている。バッドレス部において、カーカスは第一ゴム層と第二ゴム層とに挟まれている。この第一ゴム層の最大厚みT1は、0.25mm以上2.5mm以下である。この第二ゴム層の最大厚みT2は、0.25mm以上2.5mm以下である。第一ゴム層及び第二ゴム層は、ベルトと半径方向において重なり部分を有している。この第一ゴム層及び第二ゴム層を設けることで、成形工程においてカーカスに加わるテンションが効果的に緩和される。このカーカスでは、バッドレス部においてコードの間隔が広くなることが抑えられる。このタイヤでは、バルジ・デントの発生が抑えられている。さらに、カーカスのコードがインナーライナー側に入りこむことが抑えられている。このタイヤでは、良好な耐久性が実現されている。
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部が示された断面図である。 図2は、図1のタイヤの一部が示された拡大断面図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面CLに対して対称である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、一対のエッジバンド16、インナーライナー18、一対のチェーファー20、一対の第一ゴム層22及び一対の第二ゴム層24を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面26を形成する。トレッド4には、周方向に延び軸方向に並列する複数の溝28が刻まれている。これらの溝28により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、キャップ層30とベース層32とを有している。キャップ層30は、ベース層32の半径方向外側に位置している。キャップ層30は、ベース層32に積層されている。キャップ層30は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層32は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層32の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。トレッド4は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側端は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、軸方向においてカーカス12よりも外側に位置している。この実施形態では、トレッド端34近辺において、サイドウォール6は、トレッド4の外側に位置している。この構造は、サイドウォールオントレッド構造(SOT構造)と称される。サイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
トレッド端34近辺において、サイドウォール6が、トレッド4の内側に位置していてもよい。この構造は、トレッドオンサイドウォール構造(TOS構造)と称される。このタイヤ2は、TOS構造であってもよい。
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。図示されないが、クリンチ8は、リムのフランジと当接する。
それぞれのビード10は、クリンチ8の軸方向内側に位置している。ビード10は、コア36と、このコア36から半径方向外向きに延びるエイペックス38とを備えている。コア36はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス38は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス38は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス12は、カーカスプライ40からなる。カーカスプライ40は、両側のビード10の間に架け渡されている。カーカスプライ40は、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ40は、コア36の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ40には、主部40aと折返し部40bとが形成されている。カーカス12が2以上のカーカスプライを備えていてもよい。
図示されていないが、カーカスプライ40は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面CLに対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
ベルト14は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト14は、カーカス12の半径方向外側に位置している。ベルト14は、カーカス12と積層されている。ベルト14は、カーカス12を補強する。この実施形態では、ベルト14は、内側層14a及び外側層14bからなる。図1から明らかなように、内側層14aの幅は、外側層14bの幅よりも若干大きい。すなわち、この実施形態では、内側層14aの端がベルト14の端42である。図示されていないが、内側層14a及び外側層14bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面CLに対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層14aのコードの赤道面CLに対する傾斜方向は、外側層14bのコードの赤道面CLに対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト14が、3以上の層を備えてもよい。
それぞれのエッジバンド16は、ベルト14の半径方向外側であって、かつベルト14の端42の近傍に位置している。エッジバンド16は、内側層14a及び外側層14bの端を覆っている。図示されていないが、このエッジバンド16は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このエッジバンド16は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト14の端42が拘束されるので、ベルト14のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
それぞれのチェーファー20は、ビード10の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー20がリムと当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー20は、クリンチ8と一体とされている。チェーファー20の材質はクリンチ8の材質と同じである。チェーファー20が、布とこの布に含浸したゴムとからなっていてもよい。
インナーライナー18は、カーカス12の内面に接合されている。図示されないが、この実施形態では、インナーライナー18は、主層及びタイ層を備えている。このインナーライナー18は、主層とタイ層とからなる。主層は、タイヤ2の内面を構成している。主層は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。主層は、内圧を保持する役割を果たす。タイ層は、主層に積層されている。タイ層は、カーカス12の内側に沿っている。タイ層は接着性に優れた架橋ゴムよりなる。タイ層は、カーカス12の内面及び第二ゴム層24の内面に接合されている。タイ層は、主層に接合されている。タイ層を介して、主層と、カーカス12とは接合されている。
それぞれの第一ゴム層22は、タイヤ2のバッドレス部に位置している。第一ゴム層22は、カーカス12の外側に位置している。第一ゴム層22は、カーカス12の外面に接合されている。第一ゴム層22の半径方向外側端44はベルト14の端42よりも、軸方向内側に位置している。換言すれば、第一ゴム層22は、ベルト14と半径方向において重なり部分を有している。第一ゴム層22の半径方向外側部分は、ベルト14とカーカス12とに挟まれている。第一ゴム層22の半径方向内側部分は、サイドウォール6とカーカス12とに挟まれている。第一ゴム層22の半径方向外側端44の近辺は、外側に向けて先細りの形状を呈する。第一ゴム層22の半径方向内側端46の近辺は、内側に向けて先細りの形状を呈する。
図2は、図1のタイヤ2のバッドレス部が示された拡大断面図である。図2において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。図2において、両矢印T1は第一ゴム層22の最大厚みである。詳細には、第一ゴム層22の外側面の法線に沿って計測した第一ゴム層22の外側面と内側面との距離の最大値である。このタイヤ2では、最大厚みT1は、0.25mm以上2.5mm以下である。
第一ゴム層22は、第一ゴム組成物を架橋したものからなる。第一ゴム組成物は、第一基材ゴムを含む。このタイヤ2では、第一基材ゴムの主成分は好ましくはジエン系ゴムである。ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム及びアクリロニトリルブタジエンゴムが例示される。ジエン系ゴムには、共役ジエン系モノマーと芳香族ビニル系モノマーとの共重合体が含まれる。この共重合体の具体例としては、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体及び乳化重合スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。二種以上のジエン系ゴムが併用されてもよい。
加工性の観点から、ジエン系ゴム以外の他のゴムを第一基材ゴムは含むことができる。この他のゴムとしては、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム及びアクリルゴムが例示される。前述したように、第一基材ゴムの主成分は好ましくはジエン系ゴムである。第一基材ゴムがジエン系ゴム以外の他のゴムを含む場合には、第一基材ゴム全量に対するこのジエン系ゴムの量の比率は、60質量%以上、特には80質量%以上が好ましい。
第一ゴム組成物は、補強剤を含む。主たる補強剤は、カーボンブラックである。カーボンブラックの量は、基材ゴム100質量部に対して35質量部以上が好ましく、45質量部以上が特に好ましい。この量は、100質量部以下が好ましい。カーボンブラックと共に、又はカーボンブラックに代えてシリカが用いられてもよい。
第一ゴム組成物は、硫黄及び加硫促進剤を含んでいる。このゴム組成物が、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛等を含んでもよい。
それぞれの第二ゴム層24は、タイヤ2のバッドレス部に位置している。第二ゴム層24は、カーカス12の内側に位置している。第二ゴム層24は、カーカス12の内面に接合されている。第二ゴム層24は、インナーライナー18の外側に位置する。第二ゴム層24は、カーカス12とインナーライナー18とに挟まれている。第二ゴム層24の半径方向外側端48はベルト14の端42よりも、軸方向内側に位置している。換言すれば、第二ゴム層24は、ベルト14と半径方向において重なり部分を有している。第二ゴム層24の半径方向外側端48の近辺は、外側に向けて先細りの形状を呈する。第二ゴム層24の半径方向内側端の近辺は、内側に向けて先細りの形状を呈する。
図2において、両矢印T2は第二ゴム層24の最大厚みである。詳細には、第二ゴム層24の外側面の法線に沿って計測した第二ゴム層24の外側面と内側面との距離の最大値である。このタイヤ2では、最大厚みT2は、0.25mm以上2.5mm以下である。
第二ゴム層24は、第二ゴム組成物を架橋したものからなる。第二ゴム組成物は、第二基材ゴムを含む。このタイヤ2では、第二基材ゴムの主成分は好ましくはジエン系ゴムである。ジエン系ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム及びアクリロニトリルブタジエンゴムが例示される。ジエン系ゴムには、共役ジエン系モノマーと芳香族ビニル系モノマーとの共重合体が含まれる。この共重合体の具体例としては、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体及び乳化重合スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。二種以上のジエン系ゴムが併用されてもよい。
加工性の観点から、ジエン系ゴム以外の他のゴムを第二基材ゴムは含むことができる。この他のゴムとしては、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム及びアクリルゴムが例示される。前述したように、第二基材ゴムの主成分は好ましくはジエン系ゴムである。第二基材ゴムがジエン系ゴム以外の他のゴムを含む場合には、第二基材ゴム全量に対するこのジエン系ゴムの量の比率は、60質量%以上、特には80質量%以上が好ましい。
第二ゴム組成物は、補強剤を含む。主たる補強剤は、カーボンブラックである。カーボンブラックの量は、基材ゴム100質量部に対して35質量部以上が好ましく、45質量部以上が特に好ましい。この量は、100質量部以下が好ましい。カーボンブラックと共に、又はカーボンブラックに代えてシリカが用いられてもよい。
第二ゴム組成物は、硫黄及び加硫促進剤を含んでいる。このゴム組成物が、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛等を含んでもよい。
以下では、このタイヤ2の製造方法が説明される。このタイヤ2の製造方法は、ローカバーを形成する工程とローカバーを加硫する工程とを有する。
ローカバーを形成する工程は、
(1)第二ゴム組成物のシートに電子線を照射する工程、
(2)円筒状のドラムにおいて、インナーライナー18用のゴム組成物を積層する工程、
(3)上記第二ゴム組成物のシートを積層して、第二ゴム組成物の層を形成する工程、
(4)上記第二ゴム組成物の層の外側にカーカス12を積層する工程、
(5)上記カーカス12の外側に第一ゴム組成物のシートを積層して第一ゴム組成物の層を形成する工程、
(6)上記カーカス12の外側に、上記第一ゴム組成物の層及び上記第二ゴム組成物の層と半径方向において重なりを有するように、上記ベルト14を積層する工程、
(7)他の構成要素用のゴム組成物を積層する工程
及び
(8)積層された構成要素の形状を整える工程
を有している。
上記(1)の工程では、第二ゴム組成物のシートが準備される。このシートの一方の面に電子線が照射される。これにより、電子線が照射された面は、半加硫の状態となる。この工程はなくてもよい。すなわち、電子線が照射されていない第二ゴム組成物のシートが、以下の(3)の工程で使用されてもよい。
上記(2)の工程では、円筒形のドラムにおいて、インナーライナー18用のゴム組成物が積層される。この工程では、まず、主層用のゴム組成物のシートがドラムの周りに巻かれる。これにより、主層用のゴム組成物の層が形成される。この主層用のゴム組成物の層のまわりに、タイ層用のシートが巻かれる。これにより、タイ層用のゴム組成物の層が形成される。
上記(3)の工程では、インナーライナー18用のゴム組成物の外側に、第二ゴム組成物のシートが巻かれる。このとき、電子線が照射された面が外側になるように、このシートは巻かれる。このシートは、タイヤ2のバッドレス部に相当する位置に巻かれる。これにより第二ゴム組成物の層が形成される。後述するとおり、ローカバーを加硫する工程にて、第二ゴム組成物の層が架橋されて、第二ゴム層24が形成される。この第二ゴム層24の最大厚みが0.25mm以上2.5mm以下となるように、第二ゴム組成物の層が積層される。
上記(4)の工程では、第二ゴム組成物の外側にカーカス12が巻かれる。バッドレス部において、カーカス12の内面に第二ゴム組成物の層が接合される。その他の部分においては、カーカス12の内面に、インナーライナー18用のゴム組成物の層が接合される。
上記(5)の工程では、カーカス12の外側に、第一ゴム組成物のシートが巻かれる。このシートは、タイヤ2のバッドレス部に相当する位置に巻かれる。これにより第一ゴム組成物の層が形成される。後述するとおり、ローカバーを加硫する工程にて、第一ゴム組成物の層が架橋されて、第一ゴム層22が形成される。この第一ゴム層22の最大厚みが0.25mm以上2.5mm以下となるように、第一ゴム組成物の層が積層される。
上記(6)の工程では、カーカス12の外側にベルト14が積層される。ベルト14は、半径方向において、第一ゴム組成物の層及び第二組成物の層と重なりを有するように積層される。ベルト14の端42近辺の内面には、第一ゴム組成物が接合される。
上記(7)の工程では、サイドウォール6、トレッド4等の他の構成要素用のゴム組成物が積層される。
上記(8)の工程では、ドラムが拡径し構成要素の形状が整えられる。これにより、ローカバーが組み立てられる。ローカバーを形成する工程が終了する。
ローカバーを加硫する工程では、ローカバーが、モールドとブラダー又は中子とに囲まれたキャビティにおいて、加圧されつつ加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こす。第一ゴム組成物の層からは、第一ゴム層22が得られる。第二ゴム組成物の層からは、第二ゴム層24が得られる。同様に、インナーライナー18、サイドウォール6、トレッド4等の他の構成要素が得られる。これにより、タイヤ2が得られる。
以下では、本発明の作用効果が説明される。
タイヤの成形工程において、カーカスにテンションが負荷される。このテンションにより、特にバッドレス部近辺において、カーカスのコードの間隔が広くなることが起こる。これは、タイヤの表面のバルジ・デントの要因となりうる。これは、タイヤの耐久性の低下の要因となりうる。バルジ・デントを抑制するために、バッドレス部の厚みを厚くする方法がある。このタイヤでは、カーカスのコードの間隔が広くなっても、この厚みのために、バルジ・デントが起こりにくい。しかし、この方法は、タイヤの耐久性の向上には寄与しない。バッドレス部の表面をセレーション加工することで、バルジ・デントを目立たなくすることが考えられる。しかし、特に高扁平タイヤについては、セレーション加工の効果が出にくいという問題がある。さらにこの方法は、タイヤの耐久性の向上には寄与しない。
本発明に係る空気入りタイヤ2では、第一ゴム層22は、バッドレス部において、カーカス12の外面に接合されている。第二ゴム層24は、バッドレス部において、カーカス12の内面に接合されている。バッドレス部において、カーカス12は第一ゴム層22と第二ゴム層24とに挟まれている。この第一ゴム層22の最大厚みT1は、0.25mm以上2.5mm以下である。この第二ゴム層24の最大厚みT2は、0.25mm以上2.5mm以下である。第一ゴム層22及び第二ゴム層24は、ベルト14と半径方向において重なり部分を有している。この第一ゴム層22用の第一ゴム組成物の層及び第二ゴム層24用の第二ゴム組成物の層は、成形工程においてカーカス12に加わるテンションを効果的に緩和する。このカーカス12では、バッドレス部においてコードの間隔が広くなることが抑えられる。このタイヤ2では、バルジ・デントの発生が抑えられている。さらに、カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが抑えられている。このタイヤ2は、良好な耐久性が実現されている。
第一ゴム層22の最大厚みT1は、0.5mm以上がより好ましい。最大厚みT1を0.5mm以上とすることで、この第一ゴム層22用の第一ゴム組成物の層はカーカス12に加わるテンションをより効果的に緩和する。このタイヤ2ではバルジ・デントの発生が効果的に抑えられている。このタイヤ2は耐久性に優れる。最大厚みT1は、1.5mm以下がより好ましい。最大厚みT1を1.5mm以下とすることで、この第一ゴム層22の転がり抵抗に与える影響が抑えられている。このタイヤ2は、良好な転がり抵抗が維持されている。この観点から最大厚みT1は、1.0mm以下がさらに好ましい。
第二ゴム層24の最大厚みT2は、0.5mm以上がより好ましい。最大厚みT2を0.5mm以上とすることで、この第二ゴム層24用の第二ゴム組成物の層はカーカス12に加わるテンションをより効果的に緩和する。このタイヤ2ではバルジ・デントの発生が効果的に抑えられている。このタイヤ2は耐久性に優れる。最大厚みT2は、1.5mm以下がより好ましい。最大厚みT2を1.5mm以下とすることで、この第二ゴム層24の転がり抵抗に与える影響が抑えられている。このタイヤ2は、良好な転がり抵抗が維持されている。この観点から最大厚みT2は、1.0mm以下がさらに好ましい。
第一ゴム層22の半径方向外側端44は、第二ゴム層24の半径方向外側端48よりも、軸方向内側に位置しているのが好ましい。第一ゴム層22の外側端44と第二ゴム層24の外側端48とが重なると、第一ゴム層22及び第二ゴム層24が存在する部分と、第一ゴム層22及び第二ゴム層24が存在しない部分との境界において、段差が大きくなる。第一ゴム層22の上にベルト14が積層されたとき、この段差の部分でエアーが残留し易くなる。第一ゴム層22の外側端44が第二ゴム層24の外側端48よりも軸方向内側に位置することにより、段差が小さくなる。このタイヤ2では、エアーの残留が防止されている。さらに、第一ゴム層22の外側端44を第二ゴム層24の外側端48よりも軸方向内側に延ばすことで、この第一ゴム層22はベルト14のクッションとなりうる。この第一ゴム層22は、タイヤ2が転動したとき、ベルト14に加えられる衝撃を効果的に緩和する。このタイヤ2は、耐久性に優れる。
図1において、両矢印WIは、第一ゴム層22の外側端44と第二ゴム層24の外側端48との軸方向距離である。距離WIは5.0mm以上が好ましい。距離WIを5.0mm以上とすることで、第一ゴム層22の外側端44と第二ゴム層24の外側端48とが重なることによるローカバー表面の段差の発生が効果的に防止されている。このタイヤ2では、モールドとローカバーとの間のエアーの残留が防止されている。
図2において、両矢印L1は、第一ゴム層22の外側面に沿って計測した第一ゴム層22の外側端44と内側端46との距離である。両矢印L1は、第一ゴム層22の幅である。幅L1は10mm以上が好ましい。幅L1を10mm以上とすることで、この第一ゴム層22用の第一ゴム組成物の層はカーカス12に加わるテンションを効果的に緩和する。このタイヤ2ではバルジ・デントの発生が効果的に抑えられている。カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが抑えられている。このタイヤ2は耐久性に優れる。この観点から幅L1は30mm以上がより好ましい。幅L1は100mm以下が好ましい。幅L1を100mm以下とすることで、この第一ゴム層22が転がり抵抗に与える影響が抑えられる。このタイヤ2は良好な転がり抵抗が維持されている。この観点から幅L1は80mm以下がより好ましい。
図2において、直線V1は、第一ゴム層22の外側面の法線である。法線V1は、ベルト14の端42を通る。点P1は、法線V1と第一ゴム層22の外側面との交点である。両矢印Lo1は、第一ゴム層22の外側面に沿って計測した点P1と上記第一ゴム層22の半径方向外側端44との距離である。距離Lo1は、15mm以上が好ましい。距離Lo1を15mm以上とすることで、この第一ゴム層22用の第一ゴム組成物の層は、成形工程においてカーカス12に加わるテンションを効果的に緩和する。このタイヤ2では、バルジ・デントの発生が抑えられている。カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが抑えられている。さらに、この第一ゴム層22はベルト14のクッションとなりうる。この第一ゴム層22は、タイヤ2が転動したとき、ベルト14に加えられる衝撃を効果的に緩和する。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から距離Lo1は20mm以上がより好ましい。距離Lo1は、50mm以下が好ましい。距離Lo1を50mm以下とすることで、この第一ゴム層22の転がり抵抗に与える影響が抑えられる。このタイヤ2は良好な転がり抵抗が維持されている。この観点から幅Lo1は30mm以下がより好ましい。
図2において、両矢印Li1は、第一ゴム層22の外側面に沿って計測した点P1と上記第一ゴム層22の半径方向内側端46との距離である。距離Li1は、15mm以上が好ましい。距離Li1を15mm以上とすることで、この第一ゴム層22用の第一ゴム組成物の層は、成形工程においてカーカス12に加わるテンションを効果的に緩和する。このタイヤ2では、バルジ・デントの発生が抑えられている。さらに、カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが抑えられている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から距離Li1は20mm以上がより好ましい。距離Li1は、50mm以下が好ましい。距離Li1を50mm以下とすることで、この第一ゴム層22の転がり抵抗に与える影響が抑えられる。このタイヤ2は良好な転がり抵抗が維持されている。この観点から幅Li1は30mm以下がより好ましい。
図2において、両矢印L2は、第二ゴム層24の外側面に沿って計測した第二ゴム層24の外側端48と内側端50との距離である。両矢印L2は、第二ゴム層24の幅である。幅L2は30mm以上が好ましい。幅L2が30mm以上とすることで、この第二ゴム層24用の第二ゴム組成物の層はカーカス12に加わるテンションを効果的に緩和する。このタイヤ2ではバルジ・デントの発生が効果的に抑えられている。カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが抑えられている。このタイヤ2は耐久性に優れる。この観点から幅L2は40mm以上がより好ましい。幅L2は100mm以下が好ましい。幅L2を100mm以下とすることで、この第二ゴム層24が転がり抵抗に与える影響が抑えられる。このタイヤ2は良好な転がり抵抗が維持されている。この観点から幅L2は80mm以下がより好ましい。
図2において、直線V2は、第二ゴム層24の外側面の法線である。法線V2は、ベルト14の端42を通る。この実施形態では、法線V2は法線V1と重なっている。点P2は、法線V2と第二ゴム層24の外側面との交点である。両矢印Lo2は、第二ゴム層24の外側面に沿って計測した点P2と上記第二ゴム層24の半径方向外側端48との距離である。距離Lo2は、10mm以上が好ましい。距離Lo2を10mm以上とすることで、この第二ゴム層24用の第二ゴム組成物の層は、成形工程においてカーカス12に加わるテンションを効果的に緩和する。このタイヤ2では、バルジ・デントの発生が抑えられている。さらに、カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが抑えられている。このタイヤ2は耐久性に優れる。この観点から距離Lo2は15mm以上がより好ましい。距離Lo2は、45mm以下が好ましい。距離Lo2を45mm以下とすることで、この第二ゴム層24の転がり抵抗に与える影響が抑えられる。このタイヤ2は良好な転がり抵抗が維持されている。この観点から幅Lo2は25mm以下がより好ましい。
図2において、両矢印Li2は、第二ゴム層24の外側面に沿って計測した点P2と上記第二ゴム層24の半径方向内側端との距離である。距離Li2は、20mm以上が好ましい。距離Li2を20mm以上とすることで、この第二ゴム層24用の第二ゴム組成物の層は、成形工程においてカーカス12に加わるテンションを効果的に緩和する。このタイヤ2では、バルジ・デントの発生が抑えられている。さらに、カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが抑えられている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点から距離Li2は25mm以上がより好ましい。距離Li2は、55mm以下が好ましい。距離Li2を55mm以下とすることで、この第二ゴム層24の転がり抵抗に与える影響が抑えられる。このタイヤ2は良好な転がり抵抗が維持されている。この観点から幅Li2は45mm以下がより好ましい。
第一ゴム組成物のムーニー粘度M1(ML1+4、100℃)は、30以上が好ましい。ムーニー粘度M1が30以上の第一ゴム組成物は、成形工程においてカーカス12に加わるテンションを効果的に緩和する。このタイヤ2では、バルジ・デントの発生が抑えられている。さらに、カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが抑えられている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点からムーニー粘度M1は、35以上がより好ましい。ムーニー粘度M1は、60以下が好ましい。ムーニー粘度M1が60以下の第一ゴム組成物は、ローカバーを形成する工程において、ドラム上での積層が容易である。この観点からムーニー粘度M1は55以下がより好ましい。
電子線を照射する前において、又は電子線の照射をしない場合において、第二ゴム組成物のムーニー粘度M2(ML1+4、100℃)は、30以上が好ましい。ムーニー粘度M2が30以上の第二ゴム組成物は、成形工程においてカーカス12に加わるテンションを効果的に緩和する。このタイヤ2では、バルジ・デントの発生が抑えられている。さらに、カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが抑えられている。このタイヤ2は、耐久性に優れる。この観点からムーニー粘度M2は、35以上がより好ましい。ムーニー粘度M2は、60以下が好ましい。ムーニー粘度M2が60以下の第二ゴム組成物は、ローカバーを形成する工程において、ドラム上での積層が容易である。この観点からムーニー粘度M2は55以下がより好ましい。
第一ゴム組成物のムーニー粘度M1(ML1+4、100℃)及び第二ゴム組成物のムーニー粘度M2(ML1+4、100℃)は、「JIS K6300」の規定に準拠して、島津製作所社製の商品名「ムーニービスコメーターSMV200」を使用して計測される。
前述のとおり、このタイヤ2では「SOT構造」を有するのが好ましい。「SOT構造」は「TOS構造」に比べて、生産性に優れる。しかし、「SOT構造」は「TOS構造」に比べてカーカスにテンションが加わり易く、バルジ・デントが発生し易いという問題があった。このタイヤ2では、第一ゴム層22及び第二ゴム層24がバルジ・デントを効果的に防止している。「SOT構造」とすることで、バルジ・デントを抑制したうえで、良好な生産性が実現できる。
前述のとおり、このタイヤ2の製造方法では、上述の(1)の工程を有するのが好ましい。この工程では、第二ゴム組成物のシートの一方の面に電子線が照射される。これにより、第二ゴム組成物のシートの電子線が照射された面は、半加硫の状態となる。この面には、カーカス12が接合されている。この面では、加硫工程において第二ゴム組成物の流れが抑制される。このタイヤ2では、バッドレス部において、カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが特に効果的に抑えられる。これは、タイヤ2の内面における凹凸の発生を抑制する。このタイヤ2は内観に優れる。このタイヤ2では、この部分での応力の集中が抑制される。このタイヤ2は、良好な耐久性が実現されている。
上述のとおり、上記(1)の工程を備えることで、加硫工程において第二ゴム組成物の流れが抑制される。このため、上記(1)の工程を有さない場合に比べて、ローカバーを形成する工程において、カーカス12のテンションを高く設定することができる。カーカス12のテンションを高く設定しても、良好な内観及び耐久性が維持されうる。カーカス12のテンションを高くすることで、高速耐久性能が向上される。カーカス12のテンションを高くすることで、横バネ定数を上げることができる。これは、操縦安定性の向上に寄与する。このタイヤ2の製造方法では、高速耐久性及び操縦安定性に優れたタイヤ2が得られうる。
第二ゴム組成物のシートに照射する電子線の照射量は、10kGy以上が好ましい。電子線の照射量を10kGy以上とすることで、この第二ゴム組成物の表面は、加硫工程において流れが抑制される。このタイヤ2では、バッドレス部において、カーカス12のコードがインナーライナー18側に入りこむことが特に効果的に抑えられる。このタイヤ2は内観に優れる。このタイヤ2は、良好な耐久性が実現されている。この観点から、電子線の照射量は、50kGy以上がより好ましい。電子線の照射量は、500kGy以下が好ましい。電子線の照射量を500kGy以下とすることで、第二ゴム組成物の加硫が進み過ぎることが防止される。この観点から電子線の照射量は、300kGy以下がより好ましい。
第二ゴム組成物のシートに照射する電子線の照射電圧は、10kV以上1000kV以下が好ましく、100kV以上500kV以下がより好ましい。
前述の実施形態では、インナーライナー18は主層とタイ層とを備えていた。前述のとおり、電子線を照射した第二ゴム組成物のシートを使用したタイヤ2では、バッドレス部においてカーカス12のコードがインナーライナー18側に入り込むことが効果的に防止されている。この実施形態のタイヤ2では、タイ層を省略することができる。
タイ層を省略したタイヤ2では、タイ層を有するタイヤ2と比べて質量が小さくできる。これは、転がり抵抗の低減に寄与する。このタイヤ2では、低い転がり抵抗が実現されている。さらにタイ層を省略することは、製造コストの低減に寄与する。このタイヤ2では、低い転がり抵抗と製造コストが実現されうる。
このタイヤ2では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、特に言及のない限り、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。なお、タイヤ2が乗用車用である場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実験1]
[実施例1]
図1に示された構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤを得た。このタイヤのサイズは、175/70R13である。このタイヤでは、第一ゴム層の幅L1は50mmである。距離Lo1は15mmであり、距離Li1は35mmである。第二ゴム層の幅L2は50mmである。距離Lo2は10mmであり、距離Li2は40mmである。第一ゴム層の外側端と第二ゴム層の外側端との軸方向距離WIは5.0mmである。このタイヤの製造では、第二ゴム組成物に電子線の照射はされていない。このタイヤのインナーライナーは、主層とタイ層とを備えている。
[比較例1]
第一ゴム層及び第二ゴム層を備えていないことの他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。比較例1は、従来のタイヤである。実施例との比較が明確になるように、比較例1は、表1及び表4の両方に記載されている。
[比較例2]
第一ゴム層及び第二ゴム層を備えず、バットレス部の厚みを表1の通りとしたことの他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。このタイヤは、バッドレス部の厚みを厚くすることでバルジ・デントの発生を抑制したタイヤである。
[比較例3]
第一ゴム層を備えていないことの他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
[比較例4]
第二ゴム層を備えていないことの他は実施例1と同様にして、比較例4のタイヤを得た。
[実施例2−9、比較例5]
厚みT1及び厚みT2を表2−3の通りとしたことの他は実施例1と同様にして、実施例2−9及び比較例5のタイヤを得た。
[外観]
目視にてタイヤ外面のバルジ・デントの発生が確認された。この結果が、比較例1を100とした指数で下記の表1−3に示されている。数値が大きいほど、好ましい。数値が大きいほど、バルジ・デントの発生が抑制されている。
[耐久性]
タイヤを正規リム(5J−13)組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を180kPaとした。このタイヤを走行試験機に装着し、5.0kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを80km/hの速度で、走行試験機上を走行させた。タイヤに損傷が生じるまでの走行距離が測定された。この結果が、比較例1を100とした指数で下記の表1−3に示されている。数値が大きいほど、好ましい。数値が大きいほど、耐久性に優れる。
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗を測定した。
使用リム:5J−13
内圧:180kPa
荷重:5.0kN
速度:80km/h
この結果の逆数が、比較例1を100とした指数値で下記の表1−3に示されている。数値が大きいほど好ましい。
Figure 0006177282
Figure 0006177282
Figure 0006177282
[実験2]
[実施例10]
図1に示された構成を備え、下記の表4に示された仕様を備えた実施例10の空気入りタイヤを得た。このタイヤの製造において、第二ゴム組成物のシートに表4で示される量の電子線を照射した。照射電圧は、300kVである。このタイヤのインナーライナーは、タイ層を有していない。このタイヤは、これらのことの他は実施例1と同様である。
[実施例11−12]
電子線の照射量を表4の通りとしたことの他は実施例10と同様にして、実施例11−12のタイヤを得た。
[実施例13]
ローカバーの形成工程におけるカーカス12のテンションが高められた。このテンションが比較例1を100とした指数で表4に示されている。このことの他は実施例10と同様にして、実施例13のタイヤを得た。
[実施例14−15]
電子線の照射量を表4の通りとしたことの他は実施例13と同様にして、実施例14−15のタイヤを得た。
[外観]
実験1と同様にして、バルジ・デントの発生が確認された。この結果が、比較例1を100とした指数で下記の表4に示されている。数値が大きいほど、好ましい。数値が大きいほど、バルジ・デントの発生が抑制されている。
[耐久性]
実験1と同様にして、耐久性が試験された。この結果が、比較例1を100とした指数で下記の表4に示されている。数値が大きいほど、好ましい。数値が大きいほど、耐久性に優れる。
[転がり抵抗]
実験1と同様にして、転がり抵抗を測定した。この結果の逆数が、比較例1を100とした指数値で下記の表4に示されている。数値が大きいほど好ましい。
[内観]
目視にてタイヤ内面の凹凸の発生が確認された。この結果が、比較例1を100とした指数で下記の表4に示されている。数値が大きいほど、好ましい。数値が大きいほど、凹凸の発生が抑制されている。
[高速耐久性]
タイヤを標準リム(サイズ=5J−13)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を180kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、5kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、直径が1.7mであるドラムの上を走行させた。速度を段階的に上昇させて、タイヤが破壊したときの速度に基づいて、評価を行った。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表4に示されている。数値が大きいほど、高速耐久性に優れる。
[横バネ定数]
下記の条件にて、タイヤの横バネ定数を測定した。
使用リム:5J−13
内圧:180kPa
荷重:5.0kN
この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表4に示されている。数値が大きいほど、横バネ定数が大きいことを表している。数値が大きいほど、好ましい。
Figure 0006177282
表1−4に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
以上説明されたタイヤは、種々の車両に適用されうる。
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・クリンチ
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
14a・・・内側層
14b・・・外側層
16・・・エッジバンド
18・・・インナーライナー
20・・・チェーファー
22・・・第一ゴム層
24・・・第二ゴム層
26・・・トレッド面
28・・・溝
30・・・キャップ層
32・・・ベース層
34・・・トレッド端
36・・・コア
38・・・エイペックス
40・・・カーカスプライ
40a・・・主部
40b・・・折返し部
42・・・ベルトの端
44・・・第一ゴム層の外側端
46・・・第一ゴム層の内側端
48・・・第二ゴム層の外側端
50・・・第二ゴム層の内側端

Claims (18)

  1. トレッド、サイドウォール、カーカス、ベルト、インナーライナー、一対の第一ゴム層及び一対の第二ゴム層を備えており、
    それぞれの第一ゴム層が、このタイヤのバッドレス部において、上記カーカスの外面に接合されており、
    それぞれの第二ゴム層が、このタイヤのバッドレス部において、上記カーカスの内面に接合されており、
    上記ベルトが、上記トレッドの半径方向内側において上記カーカスの半径方向外側に位置しており、
    上記第一ゴム層が、上記ベルトと半径方向において重なり部分を有しており、
    上記第二ゴム層が、上記ベルトと半径方向において重なり部分を有しており、
    上記第一ゴム層の最大厚みが0.25mm以上2.5mm以下であり、
    上記第二ゴム層の最大厚みが0.25mm以上2.5mm以下であり、
    上記第一ゴム層の半径方向外側端が、上記第二ゴム層の半径方向外側端よりも、軸方向内側に位置している空気入りタイヤ。
  2. 上記第一ゴム層の外側端と上記第二ゴム層の外側端との軸方向距離WIが5.0mm以上である請求項1に記載の空気入りタイヤ。請求項1に記載のタイヤ。
  3. 上記第一ゴム層の外側面に沿って計測した上記第一ゴム層の半径方向外側端と内側端との距離が、10mm以上100mm以下である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 上記ベルトの端から上記第一ゴム層の外側面に向けて引いた法線と、上記第一ゴム層の外側面との交点がP1とされたとき、
    上記第一ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P1と上記第一ゴム層の半径方向外側端との距離Lo1が50mm以下であり、
    上記第一ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P1と上記第一ゴム層の半径方向内側端との距離Li1が50mm以下である請求項3に記載の空気入りタイヤ。
  5. 上記距離Lo1が30mm以下であり、上記距離Li1が30mm以下である請求項4に記載のタイヤ。
  6. 上記第二ゴム層の外側面に沿って計測した上記第二ゴム層の半径方向外側端と内側端との距離が、30mm以上100mm以下である請求項1から5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  7. 上記ベルトの端から上記第二ゴム層の外側面に向けて引いた法線と、上記第二ゴム層の外側面との交点がP2とされたとき、
    上記第二ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P2と上記第二ゴム層の半径方向外側端との距離Lo2が45mm以下であり、
    上記第二ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P2と上記第二ゴム層の半径方向内側端との距離Li2が55mm以下である請求項6に記載の空気入りタイヤ。
  8. 上記距離Lo2が25mm以下であり、上記距離Li2が45mm以下である請求項7に記載のタイヤ。
  9. 上記第一ゴム層が第一ゴム組成物を架橋して得られており、
    この第一ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)が30以上60以下である請求項1から8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  10. 上記第二ゴム層が第二ゴム組成物を架橋して得られており、
    この第二ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)が30以上60以下である請求項1から9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  11. 上記トレッドの端が、サイドウォールの内側に位置する請求項1から10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  12. トレッド、サイドウォール、カーカス、ベルト、インナーライナー及びそのバッドレス部に一対の第一ゴム層と一対の第二ゴム層とを備えるタイヤの製造方法であって、
    ローカバーを形成する工程とローカバーを加硫する工程とを有し、
    上記ローカバーを形成する工程が、
    上記第二ゴム層用の第二ゴム組成物のシートに電子線を照射する工程、
    円筒状のドラムにおいて、上記第二ゴム組成物のシートを、電子線が照射された面が外側になるように積層して、第二ゴム組成物の層を形成する工程、
    上記第二ゴム組成物の層の外側にカーカスを積層する工程、
    上記カーカスの外側に上記第一ゴム層用の第一ゴム組成物のシートを積層して第一ゴム組成物の層を形成する工程、
    及び
    上記カーカスの外側に、上記第一ゴム組成物の層及び上記第二ゴム組成物の層と半径方向において重なりを有するように、上記ベルトを積層する工程
    を有し、
    上記第一ゴム層の最大厚みが0.25mm以上2.5mm以下となるように上記第一ゴム組成物の層の厚みが決められ、上記第二ゴム層の最大厚みが0.25mm以上2.5mm以下となりように上記第二ゴム組成物の層の厚みが決められており、
    上記第一ゴム層の半径方向外側端が、上記第二ゴム層の半径方向外側端よりも、軸方向内側に位置するように上記第一ゴム組成物の層の形状及び上記第二ゴム組成物の層の形状が決められている空気入りタイヤの製造方法。
  13. 上記電子線を照射する工程での電子線の照射量が10kGy以上500kGy以下であり、照射電圧が10kV以上1000kV以下である請求項12に記載の製造方法。
  14. 上記インナーライナーが、タイ層を有していない請求項12又は13に記載の製造方法。
  15. 上記ベルトの端から上記第一ゴム層の外側面に向けて引いた法線と、上記第一ゴム層の外側面との交点がP1とされたとき、
    上記第一ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P1と上記第一ゴム層の半径方向外側端との距離Lo1が50mm以下であり、
    上記第一ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P1と上記第一ゴム層の半径方向内側端との距離Li1が50mm以下であるように上記第一ゴム組成物の層の形状が決められている請求項12から14のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
  16. 上記距離Lo1が30mm以下であり、上記距離Li1が30mm以下であるように上記第一ゴム組成物の層の形状が決められている請求項15に記載の空気入りタイヤの製造方法。
  17. 上記ベルトの端から上記第二ゴム層の外側面に向けて引いた法線と、上記第二ゴム層の外側面との交点がP2とされたとき、
    上記第二ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P2と上記第二ゴム層の半径方向外側端との距離Lo2が45mm以下であり、
    上記第二ゴム層の外側面に沿って計測した、上記点P2と上記第二ゴム層の半径方向内側端との距離Li2が55mm以下であるように上記第二ゴム組成物の層の形状が決められている請求項12から16のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
  18. 上記距離Lo2が25mm以下であり、上記距離Li2が45mm以下であるように上記第二ゴム組成物の層の形状が決められている請求項17に記載の空気入りタイヤの製造方法。
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