JP6176330B2 - リチウムイオン二次電池用正極及びそれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
また、特開平10−50294号公報の電極では、導電ネットワークはマトリックス樹脂が膨張しても部分的には遮断されることなく残存している。したがって、特開平10−50294号公報の電極は、十分な電流遮断精度を有しておらず、過充電時に電流を完全に遮断することができない可能性がある。
また、特開2009−176599号公報のPTC層は、過加熱に伴って樹脂粒子が融解し、導電性粒子同士が非接触状態になることにより電流が遮断されることを指向したものである。しかしながら、特開2009−176599号公報のPTC層を含む正極では、電池の初期内部抵抗が上昇し、高出力化が困難であることが本発明者らの検討の結果明らかとなった。初期の内部抵抗が上昇する理由は、導電性粒子の分散が不十分であり、導電ネットワークがPTC層全体に均一に張り巡らされていないためと予想する。
<1> 正極集電体と、前記正極集電体上に設けられ、導電性粒子とポリマー粒子と水溶性高分子とを含むPTC層と、前記PTC層上に設けられる正極活物質層と、を備えるリチウムイオン二次電池用正極。
<2> 前記PTC層の厚みが1μm〜10μmである<1>に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
<3> 前記PTC層に含まれる前記導電性粒子及び前記ポリマー粒子の合計量と前記水溶性高分子との質量比(導電性粒子及びポリマー粒子の合計量:水溶性高分子)が、99.9:0.1〜95:5である<1>又は<2>に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
<4> 前記ポリマー粒子の平均粒径が0.1μm〜5μmである<1>〜<3>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
<5> <1>〜<4>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極を備えるリチウムイオン二次電池。
また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に設けられ、導電性粒子とポリマー粒子と水溶性高分子とを含むPTC層と、前記PTC層上に設けられる正極活物質層とを備える。
PTC層に水溶性高分子を用いることで、導電性粒子がPTC層内に均一に分布し易くなるため、電子移動経路である導電ネットワークがPTC層全体に形成される。また、PTC層に水溶性高分子を用いることで、集電体とPTC層、及び活物質層とPTC層の間の接着力が向上する。これらの結果、本発明のPTC層を有する正極をリチウムイオン二次電池に組み込むと、初期内部抵抗の低減が可能となり、電池の高出力化を図ることができる。
さらに、本発明に係るPTC層は、発熱によりPTC層が所定の温度になるとPTC層内の電流の流れが確実に遮断されるので、それ以上の発熱が抑制される機能(以下、PTC機能という場合もある。)を有するだけでなく、放電レート特性及び充放電サイクル特性(以下、サイクル特性という場合もある。)も向上できる。
前記導電性粒子としては、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等の炭素粒子、ニッケル粒子等の金属粒子、WC、B4C、ZrC、NbC、MoC、TiC、TaC等の金属炭化物、TiN、ZrN、TaN等の金属窒化物、WSi2、MoSi2等の金属ケイ化物などが挙げられる。これらの中でも、前記導電性粒子としては、炭素粒子及び金属粒子が好ましく、炭素粒子がより好ましい。導電性粒子は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、導電性粒子として、PTC機能を有する導電性粒子を使用してもよく、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウム鉛等のチタン酸アルカリ土類金属塩、チタン酸アルカリ土類金属塩に異種金属が固溶化された固溶体などが挙げられる。
更には、エチレン−不飽和カルボン酸系共重合体にスチレン等がグラフト重合されていてもよい。金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケル、マグネシウム、銅、鉛等が、ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素酸塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド等の形で適用される。
前記アイオノマー樹脂としては、水性エチレン系アイオノマー樹脂がより好ましい。水性エチレン系アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレンアクリル酸重合体−スチレングラフト共重合体が挙げられ、金属イオンとしては、ナトリウム、亜鉛、マグネシウム等が挙げられる。
尚、アイオノマー樹脂としては、例えば、三井化学(株)ケミパール(登録商標)、三井・デュポンポリケミカル(株)ハイミラン(登録商標)及びデュポン(株)サーリンA(登録商標)を入手することができる。エチレン−アクリル酸共重合体又はエチレン−アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、三井・デュポンポリケミカル(株)ニュクレル(登録商標)及びエルバロイ(登録商標)を入手することができる。
また、導電性粒子とポリマー粒子との含有割合は、特に制限されないが、好ましくは質量比で2:98〜20:80、より好ましくは質量比で3:97〜15:85、更に好ましくは質量比で5:95〜10:90である。導電性粒子の含有割合が2以上であれば、PTC層内での電子移動経路が確保され、電池の出力特性が向上する傾向にある。導電性粒子の含有割合が20以下であれば、PTC機能が発揮され、発熱に対する電流遮断の応答性が向上する傾向にある。
導電性粒子及びポリマー粒子の平均粒径は、例えば、導電性粒子とポリマー粒子と水溶性高分子の水分散スラリーを集電体に塗布及び水除去して、厚さが約5μmのPTC層を形成した集電体について、その中央部の縦10μm×横10μmの範囲の透過型電子顕微鏡写真の画像内における全ての粒子の長辺長さの値を算術平均化した数値とすることができる。
本発明において、“高分子”とは、水溶性高分子の数平均分子量が1000以上であることをいう。
水溶性高分子の数平均分子量は、導電性粒子の分散性の観点から、10000以上であることが好ましく、200000以上であることがより好ましく、300000以上であることが更に好ましい。水溶性高分子の数平均分子量の上限に特に制限はないが、実用的な観点から、1000000以下が好ましい。
また、水溶性高分子の重量平均分子量は、上記と同様の観点から、50000以上であることが好ましく、1000000以上であることがより好ましく、2000000以上であることが更に好ましい。水溶性高分子の重量平均分子量の上限に特に制限はないが、実用的な観点から、5000000以下が好ましい。
水溶性高分子の数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、検出器として示差屈折計を備えたHPLCシステムにGPCカラムを接続し、溶離液としてNaCl水溶液とアセトニトリルの混合溶液を用いて、標準物質としてプルランを用いた検量線から算出することができる。
また、水溶性高分子を1質量%水溶液にしたときの25℃における粘度(60回転)は、100mPa・s〜8000mPa・sが好ましく、500mPa・s〜6000mPa・sがより好ましく、1000mPa・s〜4000mPa・sが更に好ましい。
ポリマー粒子の融点は、融点が低いほど電池発熱時に低温で電流を遮断でき、融点が高いほどPTC層及び正極を形成する際の乾燥温度を高くできるため生産性をより向上できる観点から、60〜160℃であることが好ましく、80〜140℃であることがより好ましく、100〜120℃であることが更に好ましい。ポリマー粒子の融点は、示差走査熱量計を用いて、温度関数として不活性ガス中における粒子の比熱容量を測定後、吸熱ピーク温度から算出できる。
電流遮断温度を90℃〜120℃に設定する場合は、ポリマー粒子としてポリエチレン粒子を用いることが好ましい。
正極活物質としては、安全性の観点から、LixMn2O4又はLixMn2−yMyO4で表されるリチウムマンガン酸化物を含むことが好ましい。正極活物質としてリチウムマンガン酸化物を用いる場合におけるリチウムマンガン酸化物の含有率は、正極活物質の総量に対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
また、本発明のリチウムイオン二次電池において、上記のような正極活物質と導電材と結着材とを含む正極活物質層を形成するにあたり、上記の正極活物質層の充填密度は、2.2g/cm3〜2.8g/cm3の範囲にすることが好ましく、2.3g/cm3〜2.7g/cm3の範囲にすることがより好ましく、2.4g/cm3〜2.6g/cm3の範囲にすることが更に好ましい。正極活物質層の充填密度が2.8g/cm3以下であれば、正極活物質層内に非水電解質が浸透しやすくなり、大電流での充放電時におけるリチウムイオンの拡散が速くなってサイクル特性が向上する可能性がある。一方、正極活物質層の充填密度が2.2g/cm3以上であれば、正極活物質と導電材との接触が十分に確保されることで電気抵抗が低くなり、放電レート特性が向上する可能性がある。
また、本発明のリチウムイオン二次電池において、上記のような正極合剤ペーストを正極集電体に塗布して正極を作製するにあたり、正極合剤ペーストの分散媒乾燥後(正極活物質層)の塗布量は、100g/m2〜300g/m2の範囲にすることが好ましく、150g/m2〜250g/m2の範囲にすることがより好ましく、180g/m2〜220g/m2の範囲にすることが更に好ましい。前記塗布量が100g/m2以上であれば、正極活物質層が薄くなりすぎることがないため、十分な電池容量が得られる。前記塗布量が300g/m2以下であれば、正極活物質層が厚くなりすぎることがないため、大電流で充放電させた場合に、厚み方向に反応の不均一が生じることがなくサイクル特性が向上する。
また、放電容量と放電レート特性の観点から、正極活物質層の厚さは、50μm〜150μmであることが好ましく、60μm〜120μmであることがより好ましく、70μm〜110μmであることが更に好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極以外は従来のリチウムイオン二次電池と同様の構成を採ることができる。例えば、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、絶縁層及び非水電解質を含む。
また、炭素材料の中でも特に、サイクル特性及び安全性をより向上できる観点からは、X線広角回折法における炭素六角平面の間隔(d002)が3.5Å〜3.95Åである非晶質炭素が好ましい。
また、電池特性をより向上できる観点から、前記非水溶媒にビニレンカーボネート(VC)を含有することが好ましい。
前記ビニレンカーボネート(VC)を含有する場合の含有量は、非水溶媒全量に対して、0.1質量%〜2質量%が好ましく、0.2質量%〜1.5質量%がより好ましい。
ラミネート型のリチウムイオン二次電池は、例えば、次のようにして作製できる。まず、正極と負極とを角形に切断し、それぞれの電極にタブを溶接し正負極端子を作製する。正極、絶縁層、負極をこの順番に積層した積層体を作製し、その状態でアルミニウム製のラミネートパック内に収容し、正負極端子をアルミラミネートパックの外に出し、ラミネートパックを密封する。次いで、非水電解質をアルミラミネートパック内に注液し、アルミラミネートパックの開口部を密封する。これにより、リチウムイオン二次電池が得られる。
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、ニッケルメッキが施されたスチール製で有底円筒状の電池容器6を有している。電池容器6には、帯状の正極板2及び負極板3がセパレータ4を介して断面渦巻状に捲回された電極群5が収容されている。電極群5は、正極板2及び負極板3がポリエチレン製多孔質シートのセパレータ4を介して断面渦巻状に捲回されている。セパレータ4は、例えば、幅が58mm、厚さが30μmに設定される。電極群5の上端面には、一端部を正極板2に固定されたアルミニウム製でリボン状の正極タブ端子が導出されている。正極タブ端子の他端部は、電極群5の上側に配置され正極外部端子となる円盤状の電池蓋の下面に超音波溶接で接合されている。一方、電極群5の下端面には、一端部を負極板3に固定された銅製でリボン状の負極タブ端子が導出されている。負極タブ端子の他端部は、電池容器6の内底部に抵抗溶接で接合されている。従って、正極タブ端子及び負極タブ端子は、それぞれ電極群5の両端面の互いに反対側に導出されている。なお、電極群5の外周面全周には、図示を省略した絶縁被覆が施されている。電池蓋は、絶縁性の樹脂製ガスケットを介して電池容器6の上部にカシメ固定されている。このため、リチウムイオン二次電池1の内部は密封されている。また、電池容器6内には、図示しない非水電解液が注液されている。
本発明に係るPTC層を備えるリチウムイオン二次電池は、使用環境を鑑みて、電池の25℃における直流抵抗に対して、120℃での直流抵抗の抵抗上昇率が110%以上であることが好ましく、130%以上であることがより好ましく、150%以上であることが更に好ましい。
(実施例1)
(1)PTC層の作製
アセチレンブラック(導電性粒子、商品名:HS−100、平均粒径48nm(電気化学工業社カタログ値)、電気化学工業(株))と、ポリエチレン粒子の水分散液(ポリマー粒子、商品名:ケミパール(登録商標)W4005、平均粒径0.6μm(三井化学社カタログ値)、三井化学(株))と、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(水溶性高分子、商品名:CMC#2200、ダイセルファインケム社、重量平均分子量3000000、数平均分子量400000)とを、固形分の質量比(アセチレンブラック:ポリエチレン粒子:CMC)が5:94:1になるように混合し、分散させた。得られた混合物に、蒸留水を加えてPTC層形成用ペーストを作製した。このPTC層形成用ペーストを厚さ17μmのアルミニウム箔(正極集電体、三菱アルミニウム(株))の片面に塗布し、60℃で乾燥させ、厚さ5μmのPTC層を作製した。
LiMn2O4(正極活物質、三井金属(株))90質量部、アセチレンブラック(導電材、商品名:HS−100、平均粒径48nm(電気化学工業社カタログ値)、電気化学工業(株))4.5質量部、ポリフッ化ビニリデン溶液(結着材、商品名:クレハKFポリマー#1120、固形分12質量%、(株)クレハ)45.83質量部及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)4.2質量部を混合して正極合剤ペーストを調製した。この正極合剤ペーストを正極集電体上に形成したPTC層表面に塗布し、60℃で乾燥後圧延して、厚さ75μm、塗布量200g/m2、合剤密度2.5g/cm3の正極活物質層を形成し、正極を作製した。
作製した正極を、13.5cm2の角形に切断し、評価用電極を得た。リチウム箔(厚み1mm)、ポリエチレン製多孔質シートのセパレータ(商品名:ハイポア、旭化成(株)、厚さが30μm)、13.5cm2の角形に切断した正極を重ね合わせた積層体を作製した。この積層体をアルミニウムのラミネート容器(商品名:アルミラミネートフィルム、大日本印刷(株))に入れ、非水電解質(1MのLiPF6を含むエチレンカーボネート/メチルエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=2/2/3混合溶液(体積比)に、混合溶液全量に対してビニレンカーボネートを0.8質量%添加したもの、商品名:ソルライト、三菱化学(株))を1mL添加し、アルミニウムのラミネート容器を熱溶着させ、電極評価用のラミネート型電池を作製した。
図2に、実施例1で得られたPTC層表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
水溶性高分子のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩に代えて、ポリビニルピロリドン(商品名:PVP K90、和光純薬工業(株)、重量平均分子量67000、数平均分子量42000)を使用する以外は、実施例1と同様にして、本発明のラミネート型電池を作製した。
(実施例3)
水溶性高分子のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩に代えてポリアクリル酸(商品名:PAA、和光純薬工業(株)、重量平均分子量1300000、数平均分子量230000)を使用する以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
PTC層の厚さを7μmに変更する以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
(実施例5)
PTC層の厚さを10μmに変更する以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
アセチレンブラックとポリエチレン粒子の水分散液との含有割合を、固形分基準の質量比で10:89に変更する以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
(実施例7)
アセチレンブラックとポリエチレン粒子の水分散液との含有割合を、固形分基準の質量比で15:84に変更する以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
正極集電体表面にPTC層を設けない以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
(比較例2)
PTC層に水溶性高分子を含まず、アセチレンブラックとポリエチレン粒子の水分散液との含有割合を、固形分基準の質量比で5:95に変更する以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
(比較例3)
水溶性高分子のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩に代えて、界面活性剤のトリトンX(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、和光純薬工業(株)、平均分子量=646.85)を使用し、PTC層の厚さを10μmに変更する以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
(比較例4)
PTC層にポリエチレン粒子の水分散液を含まず、アセチレンブラックと水溶性高分子のポリアクリル酸(商品名:PAA、和光純薬工業(株)製)との含有割合を、固形分基準の質量比で30:70に変更する以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
水溶性高分子の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準プルラン及びポリエチレングリコールを用いた検量線から換算した。検量線は、標準プルラン及びポリエチレングリコールを用いて3次式で近似した。また、GPC測定用試料は以下のように調製した。
[GPC測定用試料の調製]
サンプル瓶に試料4mgをとり、超純水1mlを添加して24時間放置後、軽く振って試料を溶解させた。その後、下記に示す溶離液1mlを加えて、0.45μmメンブランフィルターで濾過し、GPC測定用試料とした。
[GPC条件]
装置:(ポンプ:LC−20AD[(株)島津製作所])、(検出器:RID−10A[(株)島津製作所])、
カラム:TSKgel GMPW(東ソー(株)、商品名)+Asahipak GF−7M HQ((株)島津ジーエルシー、商品名)カラムサイズ:7.5mmI.D.×300mm
溶離液:0.2M NaCl水溶液/アセトニトリル=9/1(質量比)
注入量:100μL
流量:0.8mL/分
測定温度:40℃
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られたラミネート型電池について、25℃での放電容量と放電レート特性を、充放電装置(東洋システム社、商品名:TOSCAT−3200)を用いて以下の充放電条件で測定し、電池特性とした。
(1)放電容量
4.2V、0.5Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.5Cで3Vまで定電流(CC)放電を行い、以下の評価基準で放電容量を評価した。尚、Cとは“電流値(A)/電池容量(Ah)”を意味する。
A:25mAh以上
B:24mAh以上25mAh未満
C:24mAh未満
充電は上記と同様の条件で行い、放電電流値を1C、3C、5Cと変化させて放電容量の測定を行い、下記の式から算出される値を放電レート特性とし、以下の評価基準で評価した。
放電レート特性(%)=(5Cでの放電容量/0.5Cでの放電容量)×100
A:90%以上
B:85%以上90%未満
C:80%以上85%未満
D:80%未満
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られたラミネート型電池を25℃の恒温槽内に入れ、25℃でのラミネート型電池の直流抵抗(DCR)を測定し、これを初期抵抗とした。次に、恒温槽を120℃に昇温し、120℃で15分間保持した後、恒温槽からラミネート型電池を取り出し、25℃まで降温してから直流抵抗(DCR)を測定し、これを電池温度120℃後での抵抗とした。前記初期抵抗と電池温度120℃後での抵抗から下記式に従って抵抗上昇率(%)を算出し、PTC機能の指標とした。以下の評価基準で抵抗上昇率を評価した。結果を表1に示す。
抵抗上昇率(%)=(電池温度120℃後での抵抗/初期抵抗(25℃))×100
尚、直流抵抗(DCR)は、下記の式より算出した。
A:150%以上
B:130%以上150%未満
C:110%以上130%未満
D:110%未満
(1)負極の作製
PIC(非晶質炭素、(株)クレハ)40質量部、アセチレンブラック(導電材、商品名:HS−100、平均粒径48nm(電気化学工業社カタログ値)、電気化学工業(株))2.2質量部、ポリフッ化ビニリデン溶液(結着材、商品名:クレハKFポリマー#1120、固形分12質量%、(株)クレハ)28.92質量部及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)26質量部を混合して負極合剤ペーストを調製した。この負極合剤ペーストを厚さ10μmの銅箔(負極集電体)に塗布し、100℃で乾燥後圧延して、厚さ62μm、塗布量60g/m2、合剤密度0.97g/cm3の負極活物質層を形成し、負極を作製した。
上記で作製した負極を、13.9cm2の角形に切断し、評価用電極を得た。実施例1で用いた正極(13.5cm2の角形)と同様の正極を作製し、この正極と、ポリエチレン製多孔質シートのセパレータ(商品名:ハイポア、旭化成(株)、厚さが30μm)と、13.9cm2の角形に切断した負極とをこの順に重ね合わせた積層体を作製した。この積層体をアルミニウムのラミネート容器(商品名:アルミラミネートフィルム、大日本印刷(株))に入れ、非水電解質(1MのLiPF6を含むエチレンカーボネート/メチルエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=2/2/3混合溶液(体積比)に、混合溶液全量に対してビニレンカーボネートを0.8質量%添加したもの、商品名:ソルライト、三菱化学(株))を1mL添加し、アルミニウムのラミネート容器を熱溶着させ、サイクル特性評価用電池を作製した。
実施例6で用いた正極(13.5cm2の角形)と同様の正極を作製した以外は、実施例8と同様のサイクル特性評価用電池を作製した。
正極集電体表面にPTC層を設けない以外は、実施例8と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
実施例8〜9で得られたPTC層を10mm×50mmにカットした試験片を準備し、精密万能試験機(商品名:AGS−X、(株)島津製作所)を用いて、剥離速度:100mm/min、測定距離:25mm、室温:25℃での180度剥離強度を測定し、PTC層の密着強度とした。
(正極活物質層の密着強度の評価)
実施例8〜9及び比較例5で得られた正極を10mm×50mmにカットした試験片を準備し、精密万能試験機(商品名:AGS−X、(株)島津製作所)を用いて、剥離速度:100mm/min、測定距離:25mm、室温:25℃での180度剥離強度を測定し、正極活物質層の密着強度とした。
(1)50サイクル後の放電容量維持率
ラミネート型電池について、25℃でのサイクル寿命を、充放電装置(東洋システム社、商品名:TOSCAT−3200)を用いて以下の充放電条件で測定し、サイクル寿命特性とした。4.2V、1Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、1Cで2.7Vまで定電流(CC)放電を行い、下記の式から算出される値を50サイクル後の放電容量維持率とし評価した。結果を表2に示す。
50サイクル後の放電容量維持率(%)=(50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
攪拌機、温度計、冷却管及び送液ポンプを装着した0.5リットルの3つ口フラスコ内に、水335g及びカルボキシメチルセルロース(商品名:CMC#2200、ダイセルファインケム(株))の2%水溶液21.46gを加え、アスピレーターで2.6kPa(20mmHg)に減圧後、窒素で常圧に戻す操作を3回繰り返し、溶存酸素を除去した。フラスコ内を窒素雰囲気に保ち、攪拌しながらオイルバスで60℃に加熱後、過硫酸カリウム0.26gを水8gに溶解して3つ口フラスコに加えた。
過硫酸カリウムを加えた直後から、アクリロニトリル(和光純薬工業(株))16.98g、ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株))68.26g、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(商品名:ATM−4E、新中村化学工業(株))0.34gの混合物を送液ポンプで2時間掛けて滴下して重合を行った。滴下終了から更に1時間攪拌を継続した後、80℃に昇温し、更に2時間攪拌を継続して(メタ)アクリレートを含む共重合体の粒子(平均粒径:0.25μm)を得た。
(実施例10〜18)
表3に示す組成のPTC層にした以外は、実施例1及び実施例8と同様にして密着強度、電池特性、PTC機能、及びサイクル特性を評価した。結果を表3に示す。
なお、表3においてケミパール(登録商標)S100及びS300は、三井化学(株)より入手できる。ケミパール(登録商標)S100及びS300は、アイオノマー樹脂の粒子である。
図3に、実施例10で得られたPTC層表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
実施例10〜18のPTC層の密着強度は、PTC層のアイオノマー樹脂の粒子又は(メタ)アクリレートを含む共重合体の粒子の含有割合が多くなるほど向上する。このことから、PTC層上に正極活物質層を塗工する際及び電池を組み立てる際のPTC層の剥離を低減できることが示唆される。
実施例10〜18のサイクル特性は、(メタ)アクリレートを含む共重合体の含有割合が多くなるほど向上する。このことから、より長寿命な電池が得られることが示唆される。
また、実施例10〜18は、PTC機能にも優れることが分かる。
尚、日本出願2013−205516の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
Claims (8)
- 正極集電体と、
前記正極集電体上に設けられ、導電性粒子とポリマー粒子と水溶性高分子とを含むPTC層と、
前記PTC層上に設けられる正極活物質層と、
を備え、
前記導電性粒子と前記ポリマー粒子との含有割合が、質量比で2:98〜20:80であり、
前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン及びポリアクリル酸からなる群より選択される少なくとも1種であるリチウムイオン二次電池用正極。 - 前記PTC層の厚みが1μm〜10μmである請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
- 前記PTC層に含まれる前記導電性粒子及び前記ポリマー粒子の合計量と前記水溶性高分子との質量比(導電性粒子及びポリマー粒子の合計量:水溶性高分子)が、99.9:0.1〜95:5である請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
- 前記ポリマー粒子の平均粒径が0.1μm〜5μmである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
- 前記導電性粒子が炭素粒子及び金属粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
- 前記ポリマー粒子がポリオレフィン粒子を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
- 前記ポリマー粒子がアイオノマー樹脂の粒子及び(メタ)アクリレートを含む共重合体の粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極を備えるリチウムイオン二次電池。
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