JP6168250B2 - 放熱部材、電子デバイスおよびバッテリー - Google Patents
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Description
また、接着剤からなる層(接着層)は、通常、熱伝導率が小さく、該層の厚みが厚くなるにつれ、前記積層体の積層方向の熱抵抗が大きくなる。このため、できるだけ厚みの薄い接着層を用いることが求められている。
[1] 金属層とグラファイト層とを接着層を介して積層した積層体を含み、
該金属層のうち、接着層に接する面が粗化処理され、該接着層の厚み(t)が金属層の表面粗度(Rz)と同等である、放熱部材。
[3] 前記金属層の接着層に接する面の表面粗度(Rz)と該接着層の厚み(t)との差の絶対値(|Rz−t|)が0.5μm以下である、[1]または[2]に記載の放熱部材。
[5] 前記金属層のうち、接着層に接する面の表面粗度(Rz)が1.0〜3.0μmである、[1]〜[4]の何れかに記載の放熱部材。
[9] 前記積層体の積層方向の熱伝導率が1.0〜50W/m・Kである、[1]〜[8]の何れかに記載の放熱部材。
[14] 前記金属層の厚みが5〜1000μmである、[1]〜[13]の何れかに記載の放熱部材。
[15] 前記金属層の厚みが10〜50μmである、[1]〜[14]の何れかに記載の放熱部材。
[22] [1]〜[20]の何れかに記載の放熱部材を含むバッテリー。
また、本発明によれば、優れた加工性を有する、および/または折り曲げ可能である放熱部材を提供することができる。
さらに、本発明によれば、軽量化、小型化可能な、電子デバイスやバッテリーなどを提供することができる。
本発明の放熱部材は、金属層とグラファイト層とを接着層を介して積層した積層体を含み、該金属層のうち、接着層に接する面が粗化処理され、該接着層の厚みは、金属層の表面粗度(Rz)と同等であることを特徴とする。
前記積層体は、金属層とグラファイト層とが前記接着層を介して積層されるため、該積層体を含む本発明の放熱部材は、金属層とグラファイト層との接着強度が高く、加工性に優れ、折り曲げ可能である。
本発明は表面粗化された金属層を使用し、その粗化処理後の凹凸のくぼみに接着層を装填することによって、接着層の厚みが薄くても、良好な接着強度と熱伝導率を同時に達成できる。
前記金属層は、接着層に接する面が粗化処理されたものである。
前記金属層は、熱伝導率が高く、加工が容易であり、放熱部材の使用条件において安定であり、入手が容易な箔または板状であることが好ましい。以下では、金属板および金属箔等のことを併せて「金属板等」ともいう。
加工および入手が容易であり、放熱部材の通常の使用条件で安定である点で銅、アルミニウムまたはニッケルを含む層が好ましく、銅、アルミニウムまたはニッケルからなる層がより好ましく、表面粗化処理済の金属板等の調製または入手が容易である点で銅またはアルミニウムからなる層が特に好ましい。
前記合金としては、具体的には、リン青銅、銅ニッケル、ジュラルミンなどが挙げられる。
前記金属層を表面粗化処理する方法としては、特に制限されないが、例えば、市販の金属板等を、放電加工機を用い、電流値等の条件を振って粗化処理する方法、フライス盤で加工する方法、または研削加工する方法等の手段から適宜選択、組合せることができる。
なお、前記金属層は、少なくとも接着層に接する面が粗化処理されていればよく、接着層と接する面および該面と反対側の面が粗化処理されていてもよい。
表面粗度の測定は、例えば面粗さ測定装置、原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて行うことができる。具体的には、通常、JIS B 0651に基づいて測定できる。なお、JIS B 0652-1973に記載の光波干渉式表面粗さ測定器を用いて測定してもよい。
前記接着層は、金属層とグラファイト層とを接着することができる層であれば特に制限されず、樹脂を含む組成物を金属層またはグラファイト層に塗布し、必要により乾燥、硬化させて得られる層であることが好ましい。
合成系接着層としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、エーテル系セルロース、エチレン・酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、酢酸ビニル樹脂、ポリシアノアクリレート、シリコーン系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ニトリルゴム、ニトロセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、レゾルシノール樹脂等の1種もしくは2種以上を含む層またはこれらの1種もしくは2種以上を含む組成物から形成された層を用いることが好ましい。
前記ポリビニルアセタール樹脂は、特に制限されないが、靭性、耐熱性および耐衝撃性に優れ、厚みが薄くても金属層やグラファイト層との接着性に優れる接着層が得られるなどの点から、下記構成単位A、BおよびCを含む樹脂であることが好ましい。
1mol/l水酸化ナトリウム水溶液中で、ポリビニルアセタール樹脂を、2時間、80℃で加温する。この操作により、カルボキシル基にナトリウムが付加し、−COONaを有するポリマーが得られる。該ポリマーから過剰な水酸化ナトリウムを抽出した後、脱水乾燥を行なう。その後、炭化させて原子吸光分析を行い、ナトリウムの付加量を求めて定量する。
検出器:830−RI (日本分光(株)製)
オ−ブン:西尾工業(株)製 NFL−700M
分離カラム:Shodex KF−805L×2本
ポンプ:PU−980(日本分光(株)製)
温度:30℃
キャリア:テトラヒドロフラン
標準試料:ポリスチレン
オストワルド粘度は、ポリビニルアセタール樹脂5gをジクロロエタン100mlに溶解した溶液を用い、20℃で、Ostwald−Cannon Fenske Viscometerを用いて測定することができる。
前記ポリビニルアセタール樹脂としては、前記樹脂を単独で用いてもよく、構成単位の結合の順番や結合の数等が異なる樹脂を2種以上併用してもよい。
前記構成単位A、BおよびCを含む樹脂の合成方法は、特に制限されないが、例えば、特開2009−298833号公報に記載の方法を挙げることができる。また、前記構成単位A、B、CおよびDを含む樹脂の合成方法は、特に制限されないが、例えば、特開2010−202862号公報に記載の方法を挙げることができる。
前記組成物には、通常用いられる範囲で安定剤、改質剤等の添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、市販されている添加剤を使用できる。また、前記ポリビニルアセタール樹脂を含む組成物には、ポリビニルアセタール樹脂の特性を損なわない範囲で他の樹脂を添加することもできる。
これらの添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記シランカップリング剤の添加量は、金属層との接着性を向上させることができるなどの点から、接着層に含まれる樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部である。
前記エポキシ樹脂の添加量は、接着層のガラス転移温度を高くできるなどの点から、接着層に含まれる樹脂の総量100重量%に対して、好ましくは1〜49重量%である。
前記ポリビニルアセタール樹脂は、古くからエナメル線などに使用されており、金属と接触することにより劣化したり、金属を劣化させたりし難い樹脂ではあるが、放熱部材を高温多湿環境で使用する場合などでは、銅害防止剤や金属不活性化剤を添加してもよい。
前記銅害防止剤の添加量は、接着層の金属と接触する部分の樹脂の劣化を防止できるなどの点から、接着層に含まれる樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは0.1〜3重量部である。
前記接着層は、熱伝導率を向上させることを目的として少量の熱伝導性フィラーを含んでいてもよいが、熱伝導性フィラーの添加は接着性能を低下させる傾向にあるので添加する際には添加量と接着性能とのバランスに留意する必要がある。また、金属層の粗化面の形状によっては熱伝導性フィラーの添加はボイド(空隙)の形成を促進することもあるため、フィラーを用いる場合には留意する必要がある。
これらの熱伝導性フィラーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、前記熱伝導性フィラーの平均径や形状は、本発明の放熱部材の製造過程で変化することがあるが、前記組成物に前記平均径や形状を有するフィラーを配合すればよい。
前記熱伝導性フィラーの好ましい配合量は前記組成物100重量%に対して、1〜20重量%である。
前記溶剤としては、前記ポリビニルアセタール樹脂を溶解できるものであれば特に制限されないが、熱伝導性フィラーを分散させることができるものであることが好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、n−オクタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチレンクロライド、クロロホルムなどの塩素化炭化水素系溶媒;トルエン、ピリジンなどの芳香族系溶媒;ジメチルスルホキシド;酢酸;テルピネオール;ブチルカルビトール;ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記接着層は、前記積層体の積層方向の熱伝導率が、好ましくは0.05〜50W/m・Kであり、より好ましくは0.1〜20W/m・Kである。接着層の熱伝導率が前記範囲にあることで、放熱特性および接着性に優れる放熱部材を得ることができる。
接着層の熱伝導率が前記範囲の上限以下であると、前記金属層とグラファイト層との接着力が高く、機械的強度および耐久性に優れる放熱部材が得られるため好ましい。一方、接着層の熱伝導率が前記範囲の下限以上であると、放熱特性に優れる放熱部材が得られるため好ましい。
前記接着層の、積層体の積層方向の熱伝導率は、レーザーフラッシュまたはキセノンフラッシュ熱拡散率測定装置から得られる熱拡散率、示差走査熱量測定装置(DSC)から得られる比熱、アルキメデス法で得られる密度から算出することができる。
また、接着性に特に優れる放熱部材が得られるなどの点から、Rzおよびtは、前記関係を満たし、かつ、Rz<tであることが好ましい。
前記金属層の接着層に接する面の表面粗度(Rz)と接着層の厚み(t)との関係が前記範囲にある場合には、接着層の厚みが金属層の表面粗度と同等であるといえる。
前記金属層や接着層に含まれ得る熱伝導性フィラーは、グラファイト層に突き刺さっている場合などがあるが、この場合であっても、接着層の厚みは、グラファイト層に突き刺さった部分を考慮せず、金属層および/またはグラファイト層間の厚みのことをいう。
前記接着層の厚みは、具体的には、未塗工部分の膜厚計による厚み(粗化処理によってRzに応じたばらつきあり)の平均値と接着層形成成分塗工済み部分の厚みの平均値の差で算出することができる。未塗工部分の平均厚みは前記平均線から非粗化処理端までの距離になる。
接着層形成成分塗工済み部分の厚みは、例えば、接着層が形成された金属層の厚みと接着層が形成されていない金属層との厚みの差から段差計を用いて測定することができる。
前記グラファイト層は、大きな熱伝導率を有し、軽くて柔軟性に富んでいる。このようなグラファイト層を用いることで、放熱特性に優れ、軽量な放熱部材を得ることができる。
前記グラファイト層は、グラファイトからなる層であれば、特に制限されないが、例えば、特開昭61−275117号公報および特開平11−21117号公報に記載の方法で製造したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
前記グラファイト層の、積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導率は、レーザーフラッシュまたはキセノンフラッシュ熱拡散率測定装置、DSCおよびアルキメデス法で、それぞれ熱拡散率、比熱および密度を測定し、これらを掛け合わせることで算出することができる。
本発明の放熱部材は、前記積層体を含めば特に制限されず、前記積層体のグラファイト層の上に、金属層およびグラファイト層が交互に、または、金属層および/またはグラファイト層を任意の順番に、前記接着層を介して複数積層した積層体であってもよい。
複数の金属層、グラファイト層または接着層を用いる場合、これらの層は、それぞれ同様の層であってもよく、異なる層であってもよいが、同様の層を用いることが好ましい。
また、これらの層の厚みも、同様であってもよく、異なってもよい。
複数の金属層を用いる場合には、接着層に接する面が粗化処理された金属層を用いることが好ましい。
また、本発明の放熱部材を、図1に示すような態様で使用する場合には、発熱体7から最も遠い層(図1では金属層6)の接着層と接しない側の形状を、表面積が大きくなるような形状、例えば、剣山状や蛇腹状にすることで、発熱体7から最も遠い層の接着層に接した面と反対の面が外気に接触する面積を増大させてもよい。
また、金属層2および6の大きさ(板の縦および横の長さ)より小さいグラファイト層4を用い、接着層3および5が直接接するようにすることで、機械的強度の高い放熱部材を製造することができる。
本発明の放熱部材は、例えば、前記組成物を、前記金属層を形成する金属板等またはグラファイト層を形成するグラファイト板に塗布し、必要により予備乾燥した後、金属板等とグラファイト板とを該組成物を挟むように配置して、圧力をかけながら加熱することで製造することができる。また、前記放熱部材を製造する際には、金属板等とグラファイト板との両方に前記組成物を塗布することが、金属層とグラファイト層との接着強度が高い放熱部材が得られるなどの点から好ましい。
また、前記予備乾燥は、大気中で行えばよいが、所望により、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。特に、高い温度で短時間に乾燥させる場合には不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
前記樹脂を含む塗料の市販品としては、耐熱塗料(オキツモ(株):商品名、耐熱塗料ワンタッチ)などが挙げられる。
本発明の放熱部材(積層体)は、金属層とグラファイト層との接着強度に優れ、厚みの薄い接着層を有する。本発明の放熱部材は、積層方向および積層方向に対して略垂直方向への熱伝導率が高く、全体の厚みが薄くても、従来の厚みの厚い放熱板と同等またはそれ以上の放熱特性を有する。また、切断、穴あけ、型抜きなどの加工性に優れ、金属層とグラファイト層との接着力が強く折り曲げ可能である。このため、本発明の放熱部材は、様々な用途に用いることができ、特に、電子デバイスやバッテリーに好適に用いられる。
また、本発明の放熱部材は、液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンス照明の色ムラを防ぐための均熱板としても好適である。
このように本発明の放熱部材1を配置することで、該放熱部材(積層体)の積層方向および積層方向に対して略垂直方向(横方向)に熱を拡散させ、熱源付近の温度上昇を緩和させることができる。
このように本発明の放熱部材1を配置することで、該放熱部材(積層体)の積層方向および積層方向に対して略垂直方向(縦方向)に熱を拡散させ、熱源付近の温度上昇を緩和させることができる。
前記電子デバイスとしては、例えば、画像処理やテレビ、オーディオなどに使用されるASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のチップ、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなどのCPU(Central Processing Unit)、LED(Light Emitting Diode)照明などが挙げられる。
図5を参照して前記LED照明について説明する。なお、図5は、LED本体の裏面に本発明の放熱部材が熱伝導パッドを介して接触するように配置したLED照明の一例を示す断面概略図である。特に、前記LED本体として、超高輝度LEDなど発熱量が非常に大きいLEDを用いる場合には、本願の放熱部材の使用は有効である。
前記バッテリーとしては、自動車や携帯電話などに用いられるリチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素電池などが挙げられる。
この場合、本発明の放熱部材は、モジュール全体の外表面の一部に接するように、またはモジュール全体を覆うように配置してもよく、各リチウムイオンキャパシタセルの外表面の一部に接するように、または各セルを覆うように配置してもよい。
本発明の実施例に用いた材料は次のとおりである。
・「PVF−C1」:ポリビニルホルマール樹脂、JNC(株)製、ビニレック C(商品名)
・「PVF−K」:ポリビニルホルマール樹脂、JNC(株)製、ビニレック K(商品名)
前記「PVF−C1」および「PVF−K」の構造および物性を下記表1に記載する。
・シクロペンタノン:和光純薬工業(株)製、和光一級
・グラファイトシート(人工グラファイト):GrafTECH International製、SS−1500(商品名)、厚み25μm、(シートの面方向の熱伝導率:1500W/m・K)
・フレキシブル基板用電解銅箔(古河電工(株)製、粗化処理済み)、厚み:12、18、または35μm、Rz:2.1または2.6μm
・電解銅箔 (福田金属箔粉(株)製、粗化処理済み)、厚み:18μm、Rz:1.2μm
・電解銅箔 (三井金属工業(株)製、粗化処理なし)、厚み:18μm、Rz:0.2μm
・圧延銅箔 (福田金属箔粉(株)製、粗化処理済み)、厚み:18μm、Rz:3.0μm
得られた放熱部材の、板面に垂直方向(積層体の積層方向)の熱伝導率は下記のように求めた。下記実施例1〜7および比較例1〜6で得られた放熱部材を約9.8mmの正方形の平板に切り抜き、両面をカーボンスプレー(日本船舶工具有限会社製:DGF)で塗装した後、NETZSCH社製LFA−447型キセノンフラッシュ熱拡散率測定装置のサンプルホルダーにセットした。セットした放熱部材に該サンプルホルダーが25℃なった後でキセノンランプを所定の強度で照射し、該放熱部材のランプ照射面と反対の面からの熱放射強度の時間変化を測定し、付属のソフトウエアで解析することにより、熱拡散率を求めた。検出器のゲインなどの測定条件は自動とし、解析は、放熱部材の総合的な熱物性を評価するために1層の板とし計算した。
ポリビニルホルマール樹脂(PVF−C1)をシクロペンタノンに固形分濃度が10重量%となるように溶解した溶液を調製し、接着剤とした。この接着剤を、大きさ50mm×50mm、厚み0.018mm、Rz=2.1μmの電解銅箔の粗化処理面に、得られる接着層の厚みが2μmになるようにスピンコーター(ミカサ(株)製:1H−D3型)を用いて1500回転/分で塗布後、80℃に設定したホットプレート上で80℃で3分間予備乾燥し、接着塗膜付きの銅箔を得た。
金属層の種類、接着層に含まれる樹脂の種類および接着層の厚みを表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして放熱部材を得た。
実施例1〜7および比較例1〜6で得られた放熱部材の金属層とグラファイト層との接着強度は、グラファイト層が、へき開(層内で剥離)する特性があるので、引き剥がす際の引っ張り荷重などの数値で求めることは難しい。したがって、実施例および比較例で作製した放熱部材の金属部分を引き剥がし、金属層内側表面の状態を目視で観察することにより評価した。引き剥がした金属層の表面全体が、へき開したグラファイトで覆われている場合は◎、わずかに金属層または接着層が現れているものを○、1/4以上金属層または接着層が現れているものを△、ほとんどもしくは全くグラファイトが残っていないものを×とした。結果を表2に示す。
放熱部材の片面に、(オキツモ(株)製:耐熱塗料ワンタッチ)を塗膜の厚さが約30μmになるようにスプレーし、乾燥させた。この放熱部材の耐熱塗料未塗装面側とT0220パッケージのトランジスタ((株)東芝製:2SD2013)とを両面テープ(住友スリーエム(株)製、熱伝導性接着剤転写テープNo.9885)を用いて貼り合わせた。トランジスタの放熱部材を張り合わせた面の裏面にはK熱電対(理化工業(株)製ST−50)が取り付けられており、温度データロガー(グラフテック(株)製GL220)を用いてパソコンでトランジスタの放熱部材が張り合わされた面と反対側の面の温度を記録できる。この熱電対を取り付けたトランジスタを雰囲気温度40℃に静置し、トランジスタに直流安定化電源を用いて1.35V、1.8Aを印加し、表面の温度変化をサーモグラフィーで測定した。トランジスタは同じワット数が印加されていれば一定の熱量を発生しているので、取り付けてある放熱部材の放熱効果が高いほど温度は低下する。すなわち、トランジスタの温度が低くなるほど放熱部材の放熱効果が高いといえる。
実施例1および比較例3で調製した放熱部材の電圧印加後3000秒後のトランジスタの温度を測定した。その結果を表3に示す。
表2に示したように、使用した金属層のRzと接着層の厚み(t)がRz≒tである場合に最も熱伝導率と接着性のバランスがよいことがわかる。また、Rz≫tである場合には熱伝導率は良好であるが接着性が不十分であり、Rz≪tである場合には接着性は良好であるが熱伝導率が低くなる傾向が確認された。これは、金属箔の粗化面の凹凸を接着層がまんべんなくカバーし、かつ、粗化面の凸部がグラファイトに直接接触することによって金属粗化面の凸部では熱の伝達を抑制する傾向にある接着層を経由せず、効率よくグラファイトに熱を伝達できるためであると考えられる。また、金属粗化面の凸部が針状である場合、その針の部分がグラファイト層に刺さっていると考えられ、その部分により、効率よく金属層からグラファイト層に熱を伝えることができると考えられる。
ポリビニルアセタール樹脂(PVF−C1やPVF−K)は、金属層およびグラファイト層に対する接着性に優れているので、エポキシ樹脂などの他の接着剤を使用した場合に比べ、膜厚が薄くても(Rz≒t)、より接着性および熱伝導性に優れる放熱部材を得ることができた。
2:金属層
3:接着層
4、4'、4'':グラファイト層
5:接着層
6:金属層
7:発熱体
8:穴
9:スリット
Claims (21)
- 金属層とグラファイト層とを接着層を介して積層した積層体を含み、
該金属層のうち、接着層に接する面が粗化処理面であり、該接着層の厚み(t)から、金属層の該接着層に接する面の表面粗度(Rz)を引いた差(t−Rz)が−0.5μm以上1.0μm未満である、放熱部材。 - 前記金属層の接着層に接する面の表面粗度(Rz)と該接着層の厚み(t)との差の絶対値(|Rz−t|)が0.5μm以下である、請求項1に記載の放熱部材。
- 前記金属層のうち、接着層に接する面の表面粗度(Rz)が0.5〜5.0μmである、請求項1〜2の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記金属層のうち、接着層に接する面の表面粗度(Rz)が1.0〜3.0μmである、請求項1〜3の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記接着層の厚み(t)が0.5〜5.0μmである、請求項1〜4の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記接着層がポリビニルアセタール樹脂を含む組成物から形成される、請求項1〜5の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記積層体の積層方向の熱伝導率が0.05〜50W/m・Kである、請求項1〜6の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記積層体の積層方向の熱伝導率が1.0〜50W/m・Kである、請求項1〜7の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記構成単位AにおけるRが水素または炭素数1〜3のアルキルである、請求項9または10に記載の放熱部材。
- 前記金属層の厚みが前記グラファイト層の厚みの0.01〜100倍である、請求項1〜11の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記金属層の厚みが5〜1000μmである、請求項1〜12の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記金属層の厚みが10〜50μmである、請求項1〜13の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記金属層が、銀、銅、アルミニウム、ニッケルおよびこれらの少なくともいずれか1つの金属を含有する合金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む層である、請求項1〜14の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記金属層の熱伝導率が50W/m・K以上である請求項1〜15の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記グラファイト層の、前記積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導率が250〜2000W/m・Kである、請求項1〜16の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記グラファイト層の厚みが15〜600μmである、請求項1〜17の何れか1項に記載の放熱部材。
- 前記放熱部材の最外層の、接着層と接する面と反対側の面の一方または両方に樹脂層を有する、請求項1〜18の何れか1項に記載の放熱部材。
- 請求項1〜19の何れか1項に記載の放熱部材を含む電子デバイス。
- 請求項1〜19の何れか1項に記載の放熱部材を含むバッテリー。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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