JP6168250B2 - 放熱部材、電子デバイスおよびバッテリー - Google Patents

放熱部材、電子デバイスおよびバッテリー Download PDF

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Description

本発明は、放熱部材、電子デバイスおよびバッテリーに関する。
高分子フィルムを熱処理することで得られるグラファイトシートは、優れた熱伝導性を示すため、熱伝導体として用いられている(特許文献1)。
近年の電子機器は、高性能化、高機能化に伴い発熱量が増大しているため、該機器には、放熱特性にさらに優れる熱伝導体を使用することが求められている。このような熱伝導体として、グラファイトシートと金属板とを接着剤で接着した積層体を用いる旨が開示されている(特許文献2〜5)。
前記特許文献3には、接着剤として、ゴム状弾性接着剤やシリコーン系熱伝導性接着剤を用いる旨が記載されており、前記特許文献4には、銀、金、銅等の導電性フィラーが含有された接着剤を用いる旨が記載されている。また、前記特許文献5には、アクリル系接着剤を用いる旨が記載されている。
特開平11−21117号公報 特開2001−144237号公報 特開平10−247708号公報 特開2004−23066号公報 特開2009−280433号公報
しかしながら、従来の熱伝導体(積層体)では、グラファイトシートと金属板との接着強度に劣る場合があった。
また、接着剤からなる層(接着層)は、通常、熱伝導率が小さく、該層の厚みが厚くなるにつれ、前記積層体の積層方向の熱抵抗が大きくなる。このため、できるだけ厚みの薄い接着層を用いることが求められている。
しかしながら、前記特許文献に記載の接着層は、グラファイトシートと金属板との接着強度に劣るため、接着層の厚みを厚くしなければ、電子機器などに使用可能な熱伝導体を得ることができない場合があった。この接着層の厚い積層体は、特に積層体の積層方向の熱抵抗が大きく、放熱特性に劣ることがあった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、金属層とグラファイト層との接着強度に優れ、厚みの薄い接着層を有する、放熱特性に優れた放熱部材を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、金属層とグラファイト層とを接着層を介して積層した特定の積層体を含む放熱部材によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明の放熱部材は、金属層が接着層との接合面において表面粗化構造を有し、その表面粗度と接着層の厚みとがほぼ同じであることによって、接着層の厚みが薄くても金属層とグラファイト層との接着強度に優れる。また、このような本発明の放熱部材は、金属層とグラファイト層との接着強度および積層体の積層方向の熱伝導性にバランス良く優れ、放熱部材として良好な特性を示す。
なお、本発明において、「積層体の積層方向」とは、例えば、図1において、縦方向、つまり、積層体(放熱部材)1の金属層2、接着層3、グラファイト層4が積層された方向のことをいう。具体的には、金属層2から接着層3、グラファイト層4に向かう方向、またはグラファイト層4から接着層3、金属層2に向かう方向のことをいう。
本発明の構成は以下の通りである。
[1] 金属層とグラファイト層とを接着層を介して積層した積層体を含み、
該金属層のうち、接着層に接する面が粗化処理され、該接着層の厚み(t)が金属層の表面粗度(Rz)と同等である、放熱部材。
[2] 前記接着層の厚み(t)から、金属層の該接着層に接する面の表面粗度(Rz)を引いた差(t−Rz)が−0.5μm以上1.0μm未満である、[1]に記載の放熱部材。
[3] 前記金属層の接着層に接する面の表面粗度(Rz)と該接着層の厚み(t)との差の絶対値(|Rz−t|)が0.5μm以下である、[1]または[2]に記載の放熱部材。
[4] 前記金属層のうち、接着層に接する面の表面粗度(Rz)が0.5〜5.0μmである、[1]〜[3]の何れかに記載の放熱部材。
[5] 前記金属層のうち、接着層に接する面の表面粗度(Rz)が1.0〜3.0μmである、[1]〜[4]の何れかに記載の放熱部材。
[6] 前記接着層の厚み(t)が0.5〜5.0μmである、[1]〜[5]の何れかに記載の放熱部材。
[7] 前記接着層がポリビニルアセタール樹脂を含む組成物から形成される、[1]〜[6]の何れかに記載の放熱部材。
[8] 前記積層体の積層方向の熱伝導率が0.05〜50W/m・Kである、[1]〜[7]の何れかに記載の放熱部材。
[9] 前記積層体の積層方向の熱伝導率が1.0〜50W/m・Kである、[1]〜[8]の何れかに記載の放熱部材。
[10] 前記ポリビニルアセタール樹脂が、下記構成単位A、BおよびCを含む、[7]に記載の放熱部材。
Figure 0006168250
(構成単位A中、Rは独立に水素またはアルキルである。)
Figure 0006168250
Figure 0006168250
[11] 前記ポリビニルアセタール樹脂が、さらに、下記構成単位Dを含む、[10]に記載の放熱部材。
Figure 0006168250
(構成単位D中、R1は独立に水素または炭素数1〜5のアルキルである。)
[12] 前記構成単位AにおけるRが水素または炭素数1〜3のアルキルである、[10]または[11]に記載の放熱部材。
[13] 前記金属層の厚みが前記グラファイト層の厚みの0.01〜100倍である、[1]〜[12]の何れかに記載の放熱部材。
[14] 前記金属層の厚みが5〜1000μmである、[1]〜[13]の何れかに記載の放熱部材。
[15] 前記金属層の厚みが10〜50μmである、[1]〜[14]の何れかに記載の放熱部材。
[16] 前記金属層が、銀、銅、アルミニウム、ニッケルおよびこれらの少なくともいずれか1つの金属を含有する合金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む層である、[1]〜[15]の何れかに記載の放熱部材。
[17] 前記金属層の熱伝導率が50W/m・K以上である[1]〜[16]の何れかに記載の放熱部材。
[18] 前記グラファイト層の、前記積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導率が250〜2000W/m・Kである、[1]〜[17]の何れかに記載の放熱部材。
[19] 前記グラファイト層の厚みが15〜600μmである、[1]〜[18]の何れかに記載の放熱部材。
[20] 前記放熱部材の最外層の、接着層と接する面と反対側の面の一方または両方に樹脂層を有する、[1]〜[19]の何れかに記載の放熱部材。
[21] [1]〜[20]の何れかに記載の放熱部材を含む電子デバイス。
[22] [1]〜[20]の何れかに記載の放熱部材を含むバッテリー。
本発明によれば、接着層の厚みが薄く、金属層とグラファイト層との接着強度が高く、該接着強度および積層体の積層方向の熱伝導性にバランス良く優れる放熱部材を提供することができる。
また、本発明によれば、優れた加工性を有する、および/または折り曲げ可能である放熱部材を提供することができる。
さらに、本発明によれば、軽量化、小型化可能な、電子デバイスやバッテリーなどを提供することができる。
図1は、本発明の放熱部材を含む電子デバイスの一例を示す断面概略図である。 図2は、穴を設けたグラファイト層の一例を示す概略図である。 図3は、スリットを設けたグラファイト層の一例を示す概略図である。 図4は、本発明の放熱部材を含む電子デバイスの一例を示す断面概略図である。 図5は、本発明の放熱部材を含むLED照明の一例を示す断面概略図である。
≪放熱部材≫
本発明の放熱部材は、金属層とグラファイト層とを接着層を介して積層した積層体を含み、該金属層のうち、接着層に接する面が粗化処理され、該接着層の厚みは、金属層の表面粗度(Rz)と同等であることを特徴とする。
前記積層体は、金属層とグラファイト層とが前記接着層を介して積層されるため、該積層体を含む本発明の放熱部材は、金属層とグラファイト層との接着強度が高く、加工性に優れ、折り曲げ可能である。
本発明の放熱部材は、電子機器およびモーター類等の放熱部品として使用することができる。電子機器およびモーター類は振動する条件下で使用されることがあるため、積層体である放熱部材は、各層間において充分な接着強度を有することが望ましい。充分な接着強度を有しない場合、使用環境下で剥離し、電子機器、モーター類の性能を損なう恐れがある。
また、本発明の放熱部材は、熱伝導性能が高いことが要求される。接着層は通常、断熱層として働くため、薄いほど熱伝導性能が高い放熱部材が得られることが判っているが、従来の接着層は、厚みが薄いと十分な接着強度が確保できなかった。
本発明は表面粗化された金属層を使用し、その粗化処理後の凹凸のくぼみに接着層を装填することによって、接着層の厚みが薄くても、良好な接着強度と熱伝導率を同時に達成できる。
<金属層>
前記金属層は、接着層に接する面が粗化処理されたものである。
前記金属層は、熱伝導率が高く、加工が容易であり、放熱部材の使用条件において安定であり、入手が容易な箔または板状であることが好ましい。以下では、金属板および金属箔等のことを併せて「金属板等」ともいう。
充分な熱伝導性能を有する放熱部材を得るために、前記金属層の熱伝導率は50W/m・K以上であることが好ましく、70〜500W/m・Kであることがより好ましい。
前記金属層は、金属層の熱伝導率が前記範囲となるように金属を選択した層であることが好ましく、銀、銅、アルミニウム、ニッケルおよびこれらの少なくともいずれか1つの金属を含有する合金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む層であることが、熱伝導性が良好な放熱部材が得られるなどの点で好ましい。
加工および入手が容易であり、放熱部材の通常の使用条件で安定である点で銅、アルミニウムまたはニッケルを含む層が好ましく、銅、アルミニウムまたはニッケルからなる層がより好ましく、表面粗化処理済の金属板等の調製または入手が容易である点で銅またはアルミニウムからなる層が特に好ましい。
前記合金としては、具体的には、リン青銅、銅ニッケル、ジュラルミンなどが挙げられる。
表面が粗化処理された金属層としては、金属板等を従来公知の方法で表面粗化処理したものを用いてもよく、粗化処理された市販品を用いてもよい。
前記金属層を表面粗化処理する方法としては、特に制限されないが、例えば、市販の金属板等を、放電加工機を用い、電流値等の条件を振って粗化処理する方法、フライス盤で加工する方法、または研削加工する方法等の手段から適宜選択、組合せることができる。
なお、前記金属層は、少なくとも接着層に接する面が粗化処理されていればよく、接着層と接する面および該面と反対側の面が粗化処理されていてもよい。
前記金属層の粗化面の表面粗度は十点平均粗さ(Rz)で表すことができ、Rzは0.5〜5.0μmであることが調整または金属板等の入手が良好であるなどの点で好ましく、1.0〜3.0μmであることが接着性と放熱特性とにバランス良く優れる放熱部材が得られるなどの点でより好ましく、1.5〜3.0μmであることが特に好ましい。
表面粗度の測定は、例えば面粗さ測定装置、原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて行うことができる。具体的には、通常、JIS B 0651に基づいて測定できる。なお、JIS B 0652-1973に記載の光波干渉式表面粗さ測定器を用いて測定してもよい。
前記金属層の厚みは、特に制限されず、得られる放熱部材の用途、重さ、熱伝導性などを考慮して適宜選択すればよいが、入手の容易さなどの点から、好ましくは5〜1000μmであり、より好ましくは10〜50μmであり、特に好ましくは12〜40μmである。また、放熱特性および機械強度に優れる放熱部材を得ることができるなどの点から、好ましくはグラファイト層の0.01〜100倍の厚みであり、より好ましくは0.1〜10倍の厚みである。
前記金属層の厚みは、単位面積当たりの重量を測定し、測定した重量と、金属層を形成する金属等の成分の比重とから算出することができる。
<接着層>
前記接着層は、金属層とグラファイト層とを接着することができる層であれば特に制限されず、樹脂を含む組成物を金属層またはグラファイト層に塗布し、必要により乾燥、硬化させて得られる層であることが好ましい。
接着層としては天然系接着層、合成系接着層のいずれも使用できるが、安定した特性が得られる点で合成系接着層が好ましい。
合成系接着層としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、エーテル系セルロース、エチレン・酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、酢酸ビニル樹脂、ポリシアノアクリレート、シリコーン系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ニトリルゴム、ニトロセルロース、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、レゾルシノール樹脂等の1種もしくは2種以上を含む層またはこれらの1種もしくは2種以上を含む組成物から形成された層を用いることが好ましい。
前記接着層は、金属層とグラファイト層との接着強度に優れ、折り曲げ可能であり、放熱特性、靭性、柔軟性、耐熱性および耐衝撃性等に優れる放熱部材を得ることができるなどの点から、ポリビニルアセタール樹脂を含む組成物から形成された層であることが好ましい。該組成物は、ポリビニルアセタール樹脂の他に、金属層の種類等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、添加剤、熱伝導性フィラーおよび溶剤等を含んでもよい。
〔ポリビニルアセタール樹脂〕
前記ポリビニルアセタール樹脂は、特に制限されないが、靭性、耐熱性および耐衝撃性に優れ、厚みが薄くても金属層やグラファイト層との接着性に優れる接着層が得られるなどの点から、下記構成単位A、BおよびCを含む樹脂であることが好ましい。
Figure 0006168250
前記構成単位Aは、アセタール部位を有する構成単位であって、例えば、連続するポリビニルアルコ−ル鎖単位とアルデヒド(R−CHO)との反応により形成され得る。
構成単位AにおけるRは独立に、水素またはアルキルである。前記Rが嵩高い基(例えば炭素数が多い炭化水素基)であると、ポリビニルアセタール樹脂の軟化点が低下する傾向がある。また、前記Rが嵩高い基であるポリビニルアセタール樹脂は、溶媒への溶解性は高くなるが、一方で耐薬品性に劣ることがある。そのため前記Rは、水素または炭素数1〜5のアルキルであることが好ましく、得られる接着層の靭性などの点から水素または炭素数1〜3のアルキルであることがより好ましく、水素またはプロピルであることがさらに好ましく、耐熱性などの点から水素であることが特に好ましい。
Figure 0006168250
Figure 0006168250
前記ポリビニルアセタール樹脂は、構成単位A〜Cに加えて、下記構成単位Dを含むことができる。
Figure 0006168250
前記構成単位D中、R1は独立に水素または炭素数1〜5のアルキルであり、好ましくは水素または炭素数1〜3のアルキルであり、より好ましくは水素である。
前記ポリビニルアセタール樹脂における構成単位A、B、CおよびDの総含有率は、該樹脂の全構成単位に対して80〜100mol%であることが好ましい。
前記ポリビニルアセタール樹脂において、構成単位A〜Dは、規則性をもって配列(ブロック共重合体、交互共重合体など)していても、ランダムに配列(ランダム共重合体)していてもよいが、ランダムに配列していることが好ましい。
前記ポリビニルアセタール樹脂における各構成単位は、該樹脂の全構成単位に対して、構成単位Aの含有率が49.9〜80mol%であり、構成単位Bの含有率が0.1〜49.9mol%であり、構成単位Cの含有率が0.1〜49.9mol%であり、構成単位Dの含有率が0〜49.9mol%であることが好ましい。より好ましくは、前記ポリビニルアセタール樹脂の全構成単位に対して、構成単位Aの含有率が49.9〜80mol%であり、構成単位Bの含有率が1〜30mol%であり、構成単位Cの含有率が1〜30mol%であり、構成単位Dの含有率が1〜30mol%である。
耐薬品性、可撓性、耐摩耗性および機械的強度に優れるポリビニルアセタール樹脂を得るなどの点から、構成単位Aの含有率は49.9mol%以上であることが好ましい。
前記構成単位Bの含有率が0.1mol%以上であると、ポリビニルアセタール樹脂の溶媒への溶解性が良くなるため好ましい。また、構成単位Bの含有率が49.9mol%以下であると、ポリビニルアセタール樹脂の耐薬品性、可撓性、耐摩耗性および機械的強度が低下しにくいため好ましい。
前記構成単位Cは、ポリビニルアセタール樹脂の溶媒への溶解性や得られる接着層の金属層やグラファイト層との接着性などの点から、含有率が49.9mol%以下であることが好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂の製造において、ポリビニルアルコ−ル鎖をアセタール化する際、構成単位Bと構成単位Cが平衡関係となるため、構成単位Cの含有率は0.1mol%以上であることが好ましい。
金属層やグラファイト層との接着強度に優れる接着層を得ることができるなどの点から、構成単位Dの含有率は前記範囲にあることが好ましい。
前記ポリビニルアセタール樹脂における構成単位A〜Cのそれぞれの含有率は、JIS K 6728またはJIS K 6729に準じて測定することができる。
前記ポリビニルアセタール樹脂における構成単位Dの含有率は、以下に述べる方法で測定することができる。
1mol/l水酸化ナトリウム水溶液中で、ポリビニルアセタール樹脂を、2時間、80℃で加温する。この操作により、カルボキシル基にナトリウムが付加し、−COONaを有するポリマーが得られる。該ポリマーから過剰な水酸化ナトリウムを抽出した後、脱水乾燥を行なう。その後、炭化させて原子吸光分析を行い、ナトリウムの付加量を求めて定量する。
なお、構成単位B(ビニルアセテート鎖)の含有率を分析する際に、構成単位Dは、ビニルアセテート鎖として定量されるため、前記JIS K 6728またはJIS K6729に準じて測定された構成単位Bの含有率より、定量した構成単位Dの含有率を差し引き、構成単位Bの含有率を補正する。
前記ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、5000〜300000であることが好ましく、10000〜150000であることがより好ましい。重量平均分子量が前記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、放熱部材を容易に製造でき、成形加工性や曲げ強度に優れる放熱部材が得られるため好ましい。
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、GPC法により測定することができる。具体的な測定条件は以下の通りである。
検出器:830−RI (日本分光(株)製)
オ−ブン:西尾工業(株)製 NFL−700M
分離カラム:Shodex KF−805L×2本
ポンプ:PU−980(日本分光(株)製)
温度:30℃
キャリア:テトラヒドロフラン
標準試料:ポリスチレン
前記ポリビニルアセタール樹脂のオストワルド粘度は、1〜100mPa・sであることが好ましい。オストワルド粘度が前記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、放熱部材を容易に製造でき、靭性に優れる放熱部材が得られるため好ましい。
オストワルド粘度は、ポリビニルアセタール樹脂5gをジクロロエタン100mlに溶解した溶液を用い、20℃で、Ostwald−Cannon Fenske Viscometerを用いて測定することができる。
前記ポリビニルアセタール樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタールおよびこれらの誘導体等が挙げられ、グラファイト層との接着性および、接着層の耐熱性などの点から、ポリビニルホルマールが好ましい。
前記ポリビニルアセタール樹脂としては、前記樹脂を単独で用いてもよく、構成単位の結合の順番や結合の数等が異なる樹脂を2種以上併用してもよい。
前記ポリビニルアセタール樹脂は、合成して得てもよく、市販品でもよい。
前記構成単位A、BおよびCを含む樹脂の合成方法は、特に制限されないが、例えば、特開2009−298833号公報に記載の方法を挙げることができる。また、前記構成単位A、B、CおよびDを含む樹脂の合成方法は、特に制限されないが、例えば、特開2010−202862号公報に記載の方法を挙げることができる。
前記ポリビニルアセタール樹脂の市販品としては、ポリビニルホルマールとして、ビニレック C、ビニレック K(商品名、JNC(株)製)などが挙げられ、ポリビニルブチラールとして、デンカブチラール 3000−K(商品名、電気化学工業(株)製)などが挙げられる。
〔添加剤〕
前記組成物には、通常用いられる範囲で安定剤、改質剤等の添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、市販されている添加剤を使用できる。また、前記ポリビニルアセタール樹脂を含む組成物には、ポリビニルアセタール樹脂の特性を損なわない範囲で他の樹脂を添加することもできる。
これらの添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記添加剤としては、例えば、接着層を形成する樹脂が金属との接触により劣化する場合には、特開平5−48265号公報に挙げられているような銅害防止剤または金属不活性化剤の添加が好ましく、前記組成物が熱伝導性フィラーを含む場合には、該熱伝導性フィラーとポリビニルアセタール樹脂との密着性を向上させるために、シランカップリング剤の添加が好ましく、接着層の耐熱性(ガラス転移温度)を向上させるにはエポキシ樹脂の添加が好ましい。
前記シランカップリング剤としては、JNC(株)製のシランカップリング剤(商品名;S330、S510、S520、S530)などが好ましい。
前記シランカップリング剤の添加量は、金属層との接着性を向上させることができるなどの点から、接着層に含まれる樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部である。
前記エポキシ樹脂(商品名)としては、三菱化学(株)製、jER828、jER827、jER806、jER807、jER4004P、jER152、jER154;(株)ダイセル製、セロキサイド2021P、セロキサイド3000;新日鐵化学(株)製、YH−434;日本化薬(株)製、EPPN−201、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1020、EOCN−1025、EOCN−1027、DPPN−503、DPPN−502H、DPPN−501H、NC6000、EPPN−202;(株)ADEKA製、DD−503;新日本理化(株)製、リカレジンW−100;などが好ましい。
前記エポキシ樹脂の添加量は、接着層のガラス転移温度を高くできるなどの点から、接着層に含まれる樹脂の総量100重量%に対して、好ましくは1〜49重量%である。
前記エポキシ樹脂を添加する際には、さらに、硬化剤を添加することが好ましい。該硬化剤としては、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、フェノールノボラック系硬化剤、イミダゾール系硬化剤などが好ましい。
前記放熱部材を高温多湿環境で使用するなどの場合には、前記接着層に銅害防止剤や金属不活性化剤を添加してもよい。
前記ポリビニルアセタール樹脂は、古くからエナメル線などに使用されており、金属と接触することにより劣化したり、金属を劣化させたりし難い樹脂ではあるが、放熱部材を高温多湿環境で使用する場合などでは、銅害防止剤や金属不活性化剤を添加してもよい。
前記銅害防止剤(商品名)としては、(株)ADEKA製、Mark ZS−27、Mark CDA−16;三光化学工業(株)製、SANKO−EPOCLEAN;BASF社製、Irganox MD1024;などが好ましい。
前記銅害防止剤の添加量は、接着層の金属と接触する部分の樹脂の劣化を防止できるなどの点から、接着層に含まれる樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは0.1〜3重量部である。
〔熱伝導性フィラー〕
前記接着層は、熱伝導率を向上させることを目的として少量の熱伝導性フィラーを含んでいてもよいが、熱伝導性フィラーの添加は接着性能を低下させる傾向にあるので添加する際には添加量と接着性能とのバランスに留意する必要がある。また、金属層の粗化面の形状によっては熱伝導性フィラーの添加はボイド(空隙)の形成を促進することもあるため、フィラーを用いる場合には留意する必要がある。
前記熱伝導性フィラーとしては、特に制限されないが、金属粉、金属酸化物粉、金属窒化物粉、金属水酸化物粉、金属酸窒化物粉および金属炭化物粉などの金属または金属化合物含有フィラー、ならびに炭素材料を含むフィラー等が挙げられる。
これらの熱伝導性フィラーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記熱伝導性フィラーは、平均径や形状が所望の範囲にある市販品をそのまま用いてもよく、平均径や形状が所望の範囲になるように市販品を粉砕、分級、加熱等したものを用いてもよい。
なお、前記熱伝導性フィラーの平均径や形状は、本発明の放熱部材の製造過程で変化することがあるが、前記組成物に前記平均径や形状を有するフィラーを配合すればよい。
前記熱伝導性フィラーの好ましい配合量は前記組成物100重量%に対して、1〜20重量%である。
〔溶剤〕
前記溶剤としては、前記ポリビニルアセタール樹脂を溶解できるものであれば特に制限されないが、熱伝導性フィラーを分散させることができるものであることが好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、n−オクタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチレンクロライド、クロロホルムなどの塩素化炭化水素系溶媒;トルエン、ピリジンなどの芳香族系溶媒;ジメチルスルホキシド;酢酸;テルピネオール;ブチルカルビトール;ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記溶剤は、組成物中の樹脂濃度が、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%となる量で用いることが、放熱部材の製造容易性および放熱特性などの点から好ましい。
〔接着層の物性等〕
前記接着層は、前記積層体の積層方向の熱伝導率が、好ましくは0.05〜50W/m・Kであり、より好ましくは0.1〜20W/m・Kである。接着層の熱伝導率が前記範囲にあることで、放熱特性および接着性に優れる放熱部材を得ることができる。
接着層の熱伝導率が前記範囲の上限以下であると、前記金属層とグラファイト層との接着力が高く、機械的強度および耐久性に優れる放熱部材が得られるため好ましい。一方、接着層の熱伝導率が前記範囲の下限以上であると、放熱特性に優れる放熱部材が得られるため好ましい。
前記接着層の、積層体の積層方向の熱伝導率は、レーザーフラッシュまたはキセノンフラッシュ熱拡散率測定装置から得られる熱拡散率、示差走査熱量測定装置(DSC)から得られる比熱、アルキメデス法で得られる密度から算出することができる。
本発明の放熱部材に使用される積層体は、金属層の表面粗度(Rz)とほぼ同じ厚みの接着層を有するため、接着性および積層方向の熱伝導性にバランス良く優れる。
前記金属層の表面粗度は好ましくは0.5〜5.0μmであり、さらに好ましくは1.0〜3.0μmであるので、接着層厚みも好ましくは0.5〜5.0μmであり、さらに好ましくは1.0〜3.0μmである。
前記接着層の厚み(t)から金属層の接着層に接する面の表面粗度(Rz)を引いた差(t−Rz)は、接着性および熱伝導性にバランス良く優れる放熱部材が得られるなどの点から、好ましくは−0.5μm以上1.0μm未満であり、より好ましくはRzとtとの差の絶対値(|Rz−t|)が、接着性および熱伝導率にバランス良く優れる放熱部材が得られるなどの点から、より好ましくは0.5μm以下であり、特に好ましくは0.2μm以下である。なお、|Rz−t|の下限は0μmであってもよい。
また、接着性に特に優れる放熱部材が得られるなどの点から、Rzおよびtは、前記関係を満たし、かつ、Rz<tであることが好ましい。
前記金属層の接着層に接する面の表面粗度(Rz)と接着層の厚み(t)との関係が前記範囲にある場合には、接着層の厚みが金属層の表面粗度と同等であるといえる。
前記接着層の厚み(t)から金属層の接着層に接する面の表面粗度(Rz)を引いた差(t−Rz)が−0.5μm未満である場合には、接着層は、金属層とグラファイト層とを接着できるだけの厚みとならず、得られる放熱部材は接着強度に劣る傾向にある。
本発明における厚みの薄い接着層とは、厚みが例えば3μm以下の接着層が挙げられる。
接着層の厚みは、例えば、前記組成物を金属層またはグラファイト層に塗布する際の条件を種々変更することによって調整することができる。変更可能な条件としては塗布方式、固形分濃度、塗工速度等である。
なお、前記接着層の厚みとは、1層の接着層の片面に接する金属層またはグラファイト層と、該接着層の金属層またはグラファイト層が接した面と反対の面に接する、金属層またはグラファイト層との間の厚みのことをいう。ただし、図2や図3に示すようなグラファイト層を用いる場合であっても、金属層および/またはグラファイト層間の厚みのことをいい、該グラファイト層の穴やスリット部に充填され得る接着層の厚みは含まない。
前記金属層や接着層に含まれ得る熱伝導性フィラーは、グラファイト層に突き刺さっている場合などがあるが、この場合であっても、接着層の厚みは、グラファイト層に突き刺さった部分を考慮せず、金属層および/またはグラファイト層間の厚みのことをいう。
前記接着層の厚みは、具体的には、表面粗化処理された金属層の表面に形成される粗さ曲線に平均線を引いた時の該平均線とグラファイト層との距離のことをいう。
前記接着層の厚みは、具体的には、未塗工部分の膜厚計による厚み(粗化処理によってRzに応じたばらつきあり)の平均値と接着層形成成分塗工済み部分の厚みの平均値の差で算出することができる。未塗工部分の平均厚みは前記平均線から非粗化処理端までの距離になる。
接着層形成成分塗工済み部分の厚みは、例えば、接着層が形成された金属層の厚みと接着層が形成されていない金属層との厚みの差から段差計を用いて測定することができる。
<グラファイト層>
前記グラファイト層は、大きな熱伝導率を有し、軽くて柔軟性に富んでいる。このようなグラファイト層を用いることで、放熱特性に優れ、軽量な放熱部材を得ることができる。
前記グラファイト層は、グラファイトからなる層であれば、特に制限されないが、例えば、特開昭61−275117号公報および特開平11−21117号公報に記載の方法で製造したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
市販品としては、合成樹脂シートから製造された人工グラファイトシート(商品名)として、eGRAF SPREADERSHIELD SS−1500(GrafTECH International製)、グラフィニティー((株)カネカ製)、PGSグラファイトシート(パナソニック(株)製)などが挙げられ、天然グラファイトから製造された天然グラファイトシート(商品名)としてはeGRAF SPREADERSHIELD SS−500(GrafTECH International製)などが挙げられる。
前記グラファイト層は、前記積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導率が、好ましくは250〜2000W/m・Kであり、より好ましくは500〜2000W/m・Kである。グラファイト層の熱伝導率が前記範囲にあることで、放熱特性および均熱性等に優れる放熱部材を得ることができる。
前記グラファイト層の、積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導率は、レーザーフラッシュまたはキセノンフラッシュ熱拡散率測定装置、DSCおよびアルキメデス法で、それぞれ熱拡散率、比熱および密度を測定し、これらを掛け合わせることで算出することができる。
前記グラファイト層の厚みは、特に制限されず、放熱特性に優れる放熱部材を得るためには、厚い層であることが好ましいが、より好ましくは15〜600μmであり、さらに好ましくは15〜500μmであり、特に好ましくは15〜300μmである。
<放熱部材の構成等>
本発明の放熱部材は、前記積層体を含めば特に制限されず、前記積層体のグラファイト層の上に、金属層およびグラファイト層が交互に、または、金属層および/またはグラファイト層を任意の順番に、前記接着層を介して複数積層した積層体であってもよい。
複数の金属層、グラファイト層または接着層を用いる場合、これらの層は、それぞれ同様の層であってもよく、異なる層であってもよいが、同様の層を用いることが好ましい。
また、これらの層の厚みも、同様であってもよく、異なってもよい。
複数の金属層を用いる場合には、接着層に接する面が粗化処理された金属層を用いることが好ましい。
積層の順番は、所望の用途に応じて適宜選択すればよく、具体的には、所望の放熱特性等を考慮して選択すればよい。また、前記積層数は、所望の用途に応じて適宜選択すればよく、具体的には、放熱部材の大きさや放熱特性等を考慮して選択すればよい。
本発明の放熱部材は、その最外層が金属層であることが、機械的強度および加工性に優れる放熱部材が得られるなどの点から好ましい。
また、本発明の放熱部材を、図1に示すような態様で使用する場合には、発熱体7から最も遠い層(図1では金属層6)の接着層と接しない側の形状を、表面積が大きくなるような形状、例えば、剣山状や蛇腹状にすることで、発熱体7から最も遠い層の接着層に接した面と反対の面が外気に接触する面積を増大させてもよい。
本発明の放熱部材は、放熱特性、機械的強度、軽量性および製造容易性などに優れる点から、図1に示すような、金属層2、接着層3、グラファイト層4、接着層5および金属層6がこの順で積層された積層体1であることが好ましい。
なお、例えば、図1に示す積層体1を含む放熱部材を製造する場合であって、所望の用途に応じ、特に、グラファイト層4を介した金属層同士(2および6)の接着強度の高い積層体を製造したい場合には、接着層3および5が直接接するようにしてもよい。このような例としては、図2に示すような穴8を設けたグラファイト層4'や、図3に示すようなスリット9を設けたグラファイト層4''を用いる方法が挙げられる。
また、金属層2および6の大きさ(板の縦および横の長さ)より小さいグラファイト層4を用い、接着層3および5が直接接するようにすることで、機械的強度の高い放熱部材を製造することができる。
前記穴やスリットの形状、数や大きさは、放熱部材の機械的強度および放熱特性などの点から、適宜選択すればよい。
穴やスリットを設けたグラファイト層を用いる場合には、例えば、該穴やスリットが無い場合に比べ、接着層を厚めに金属層の上に形成し、張り合わせ時の温度を高めに設定することで、加熱圧着時などに接着層形成成分が穴やスリットに流れ込み、穴やスリット部に該接着層形成成分を充填させることができる。また、金属層上のグラファイト層のスリットや穴にあたる部分の接着層を、予めディスペンサーなどで厚めに形成しておいてもよい。
本発明の放熱部材は、酸化防止や意匠性向上のために、その最外層の接着層と接する面と反対側の面の一方または両方に樹脂層を有していてもよい。つまり、本発明の放熱部材は、その最外層として樹脂層を有していてもよい。前記樹脂層は、金属層やグラファイト層上に直接形成されてもよく、前記接着層を介して金属層やグラファイト層上に形成されてもよい。
<放熱部材の製造方法>
本発明の放熱部材は、例えば、前記組成物を、前記金属層を形成する金属板等またはグラファイト層を形成するグラファイト板に塗布し、必要により予備乾燥した後、金属板等とグラファイト板とを該組成物を挟むように配置して、圧力をかけながら加熱することで製造することができる。また、前記放熱部材を製造する際には、金属板等とグラファイト板との両方に前記組成物を塗布することが、金属層とグラファイト層との接着強度が高い放熱部材が得られるなどの点から好ましい。
前記組成物を塗布する前には、金属層とグラファイト層との接着強度が高い放熱部材を得ることができるなどの点から、金属層は、前記組成物を塗布する面の酸化層を除去したり、脱脂洗浄しておくことが好ましく、グラファイト層は、酸素プラズマ装置や強酸処理などにより、前記組成物を塗布する面を易接着処理しておいてもよい。
前記組成物を金属板等またはグラファイト板に塗布する方法としては、特に制限されないが、組成物を均一にコーティング可能なウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法のうち、膜厚の薄い接着層を形成する場合には、簡便で均質な膜を成膜可能であるスピンコート法が好ましい。生産性を重視する場合には、グラビアコート法、ダイコート法、バーコート法、リバースコート法、ロールコート法、スリットコート法、スプレーコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロッドコート法などが好ましい。
前記予備乾燥は、特に制限されず、溶媒を含む組成物を用いる場合には、該溶媒等に応じて適宜選択すればよく、室温で1〜7日間程度静置することで行ってもよいが、ホットプレートや乾燥炉などを用いて40〜120℃程度の温度で、1〜10分間程度加熱することが好ましい。
また、前記予備乾燥は、大気中で行えばよいが、所望により、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。特に、高い温度で短時間に乾燥させる場合には不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
前記圧力をかけながら加熱する方法は、特に制限されず、接着層を形成する成分等に応じて適宜選択すればよいが、圧力としては、好ましくは0.1〜30MPaであり、加熱温度としては、好ましくは200〜250℃であり、加熱加圧時間は、好ましくは1分〜1時間である。また、加熱は、大気中で行えばよいが、所望により、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。特に、高い温度で短時間に加熱する場合には不活性ガス雰囲気下または減圧下で行うことが好ましい。
最外層の接着層と接する面と反対側の面の一方または両方に樹脂層を有する放熱部材は、前記放熱部材の最外層である金属層やグラファイト層の接着層と接する面と反対側の面の一方または両方に樹脂を含む塗料を塗布し、必要により乾燥させ、その後該塗料を硬化させることで製造してもよい。また、予め樹脂製フィルムを形成し、前記放熱部材の最外層である金属層やグラファイト層の接着層と接する面と反対側の面の一方または両方に前記接着層を形成し得る組成物を塗布し、必要により予備乾燥した後、該塗布面に樹脂製フィルムを接触させ、必要により圧力をかけたり、加熱することなどで製造することもできる。
前記樹脂層は、樹脂を含む層であれば特に制限されないが、該樹脂としては、例えば、塗料として広く使用されているアクリル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂が挙げられ、これらの中でも耐熱性のある樹脂が望ましい。
前記樹脂を含む塗料の市販品としては、耐熱塗料(オキツモ(株):商品名、耐熱塗料ワンタッチ)などが挙げられる。
≪放熱部材の用途≫
本発明の放熱部材(積層体)は、金属層とグラファイト層との接着強度に優れ、厚みの薄い接着層を有する。本発明の放熱部材は、積層方向および積層方向に対して略垂直方向への熱伝導率が高く、全体の厚みが薄くても、従来の厚みの厚い放熱板と同等またはそれ以上の放熱特性を有する。また、切断、穴あけ、型抜きなどの加工性に優れ、金属層とグラファイト層との接着力が強く折り曲げ可能である。このため、本発明の放熱部材は、様々な用途に用いることができ、特に、電子デバイスやバッテリーに好適に用いられる。
また、本発明の放熱部材は、液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンス照明の色ムラを防ぐための均熱板としても好適である。
本発明の放熱部材の、電子デバイス等への使用例としては、図1や図4に示すように、電子デバイス中の発熱体7に本発明の放熱部材(積層体)1を接するように配置して使用することが挙げられる。
図1は、本発明の放熱部材(積層体)1を、該積層体の積層方向が発熱体7の面に略垂直になるように配置した電子デバイスの一例を示す断面概略図である。
このように本発明の放熱部材1を配置することで、該放熱部材(積層体)の積層方向および積層方向に対して略垂直方向(横方向)に熱を拡散させ、熱源付近の温度上昇を緩和させることができる。
また、図4は、図1に示すような放熱部材1を90°回転させて、発熱体7に接するように配置した電子デバイスの一例を示す断面概略図である。
このように本発明の放熱部材1を配置することで、該放熱部材(積層体)の積層方向および積層方向に対して略垂直方向(縦方向)に熱を拡散させ、熱源付近の温度上昇を緩和させることができる。
なお、図4に示すように本発明の放熱部材を配置する場合、放熱部材(積層体)を、該放熱部材の積層方向に切断したものを用いてもよい。本発明の放熱部材を図4のように配置した場合、発熱体7から発生した熱を素早く放熱(例えば、冷却装置に移動)させることができるので、発熱体7の温度上昇を効果的に抑えることができる。
<電子デバイス>
前記電子デバイスとしては、例えば、画像処理やテレビ、オーディオなどに使用されるASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のチップ、パーソナルコンピュータ、スマートフォンなどのCPU(Central Processing Unit)、LED(Light Emitting Diode)照明などが挙げられる。
〔LED照明〕
図5を参照して前記LED照明について説明する。なお、図5は、LED本体の裏面に本発明の放熱部材が熱伝導パッドを介して接触するように配置したLED照明の一例を示す断面概略図である。特に、前記LED本体として、超高輝度LEDなど発熱量が非常に大きいLEDを用いる場合には、本願の放熱部材の使用は有効である。
電気エネルギーを光エネルギーに変換するLED本体は、点灯に伴い熱が発生し、この熱をLED本体の外へ排出させる必要がある。この熱は、LED本体から熱伝導パッドを介して本発明の放熱部材に伝達され、該放熱部材により放熱される。
〔バッテリー〕
前記バッテリーとしては、自動車や携帯電話などに用いられるリチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素電池などが挙げられる。
前記リチウムイオンキャパシタとしては、リチウムイオンキャパシタセルが複数直列または並列に接続されたモジュールであってもよい。
この場合、本発明の放熱部材は、モジュール全体の外表面の一部に接するように、またはモジュール全体を覆うように配置してもよく、各リチウムイオンキャパシタセルの外表面の一部に接するように、または各セルを覆うように配置してもよい。
以下に本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、以下の実施例に記載された内容に限定されるものではない。
本発明の実施例に用いた材料は次のとおりである。
<接着層用樹脂>
・「PVF−C1」:ポリビニルホルマール樹脂、JNC(株)製、ビニレック C(商品名)
・「PVF−K」:ポリビニルホルマール樹脂、JNC(株)製、ビニレック K(商品名)
前記「PVF−C1」および「PVF−K」の構造および物性を下記表1に記載する。
Figure 0006168250
<溶剤>
・シクロペンタノン:和光純薬工業(株)製、和光一級
<グラファイトシート>
・グラファイトシート(人工グラファイト):GrafTECH International製、SS−1500(商品名)、厚み25μm、(シートの面方向の熱伝導率:1500W/m・K)
<金属板>
・フレキシブル基板用電解銅箔(古河電工(株)製、粗化処理済み)、厚み:12、18、または35μm、Rz:2.1または2.6μm
・電解銅箔 (福田金属箔粉(株)製、粗化処理済み)、厚み:18μm、Rz:1.2μm
・電解銅箔 (三井金属工業(株)製、粗化処理なし)、厚み:18μm、Rz:0.2μm
・圧延銅箔 (福田金属箔粉(株)製、粗化処理済み)、厚み:18μm、Rz:3.0μm
<熱伝導率の評価>
得られた放熱部材の、板面に垂直方向(積層体の積層方向)の熱伝導率は下記のように求めた。下記実施例1〜7および比較例1〜6で得られた放熱部材を約9.8mmの正方形の平板に切り抜き、両面をカーボンスプレー(日本船舶工具有限会社製:DGF)で塗装した後、NETZSCH社製LFA−447型キセノンフラッシュ熱拡散率測定装置のサンプルホルダーにセットした。セットした放熱部材に該サンプルホルダーが25℃なった後でキセノンランプを所定の強度で照射し、該放熱部材のランプ照射面と反対の面からの熱放射強度の時間変化を測定し、付属のソフトウエアで解析することにより、熱拡散率を求めた。検出器のゲインなどの測定条件は自動とし、解析は、放熱部材の総合的な熱物性を評価するために1層の板とし計算した。
さらに、放熱部材の比熱((株)パーキンエルマー製、diamond DSC型入力補償型示差走査熱量測定装置で測定した。)と比重(アルファーミラージュ(株)製、MD−300s型電子比重計により測定した。)を求め、熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重の式より熱伝導率を求めた。下記実施例1〜7および比較例1〜6で得られた放熱部材の熱伝導率を表2に示す。
積層型の放熱部材の場合、積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導は熱伝導率の高い層の割合に支配されるので、放熱部材の作製方法には大きく影響されず、ほぼ設計どおりの性能が得られる。一方、各々の層の界面における、積層体の積層方向の熱抵抗の低減は、各層の界面の熱抵抗と、接着層の熱抵抗に大きく依存し、その低減をすることが好ましい。すなわち、積層体の積層方向の熱伝導率が高いほど、金属層とグラファイト層とが良好に接着できている、すなわち高性能な放熱部材であるといえる。
[実施例1]
ポリビニルホルマール樹脂(PVF−C1)をシクロペンタノンに固形分濃度が10重量%となるように溶解した溶液を調製し、接着剤とした。この接着剤を、大きさ50mm×50mm、厚み0.018mm、Rz=2.1μmの電解銅箔の粗化処理面に、得られる接着層の厚みが2μmになるようにスピンコーター(ミカサ(株)製:1H−D3型)を用いて1500回転/分で塗布後、80℃に設定したホットプレート上で80℃で3分間予備乾燥し、接着塗膜付きの銅箔を得た。
この接着塗膜付の銅箔を2枚作成し、接着塗膜を内側にして、予め50mm×50mmに切断した厚み25μmのグラファイトシート(SS−1500)を2枚の銅箔で挟みこみ、小型加熱プレス(井元製作所製:IMC−19EC型小型加熱手動プレス)の熱板の上に静置した。2枚の銅板とグラファイトシートがずれないように注意しながら、加圧と減圧を数回繰り返すことにより接着塗膜を脱気した後、6MPaになるまで加圧した。その後、加熱ヒーターにより220℃まで熱板を加熱し、30分間温度と圧力を保持した。30分経過後、圧力は保持したまま加熱ヒーターの電源を切り、およそ50℃になるまで自然冷却した。冷却後、圧力を解き放ち、放熱部材を得た。なお、放熱部材全体の厚みから、2枚の金属板の厚みと、グラファイトシートの厚みを差し引いた値の1/2を接着層の厚みとした。放熱部材の厚みは(株)ミツトヨ製デジマチックインジケータID−C112CXBにより測定した。
[実施例2〜7、および比較例1〜6]
金属層の種類、接着層に含まれる樹脂の種類および接着層の厚みを表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして放熱部材を得た。
<接着性の評価>
実施例1〜7および比較例1〜6で得られた放熱部材の金属層とグラファイト層との接着強度は、グラファイト層が、へき開(層内で剥離)する特性があるので、引き剥がす際の引っ張り荷重などの数値で求めることは難しい。したがって、実施例および比較例で作製した放熱部材の金属部分を引き剥がし、金属層内側表面の状態を目視で観察することにより評価した。引き剥がした金属層の表面全体が、へき開したグラファイトで覆われている場合は◎、わずかに金属層または接着層が現れているものを○、1/4以上金属層または接着層が現れているものを△、ほとんどもしくは全くグラファイトが残っていないものを×とした。結果を表2に示す。
Figure 0006168250
<放熱特性の評価>
放熱部材の片面に、(オキツモ(株)製:耐熱塗料ワンタッチ)を塗膜の厚さが約30μmになるようにスプレーし、乾燥させた。この放熱部材の耐熱塗料未塗装面側とT0220パッケージのトランジスタ((株)東芝製:2SD2013)とを両面テープ(住友スリーエム(株)製、熱伝導性接着剤転写テープNo.9885)を用いて貼り合わせた。トランジスタの放熱部材を張り合わせた面の裏面にはK熱電対(理化工業(株)製ST−50)が取り付けられており、温度データロガー(グラフテック(株)製GL220)を用いてパソコンでトランジスタの放熱部材が張り合わされた面と反対側の面の温度を記録できる。この熱電対を取り付けたトランジスタを雰囲気温度40℃に静置し、トランジスタに直流安定化電源を用いて1.35V、1.8Aを印加し、表面の温度変化をサーモグラフィーで測定した。トランジスタは同じワット数が印加されていれば一定の熱量を発生しているので、取り付けてある放熱部材の放熱効果が高いほど温度は低下する。すなわち、トランジスタの温度が低くなるほど放熱部材の放熱効果が高いといえる。
実施例1および比較例3で調製した放熱部材の電圧印加後3000秒後のトランジスタの温度を測定した。その結果を表3に示す。
Figure 0006168250
[金属層のRzと接着層の厚み]
表2に示したように、使用した金属層のRzと接着層の厚み(t)がRz≒tである場合に最も熱伝導率と接着性のバランスがよいことがわかる。また、Rz≫tである場合には熱伝導率は良好であるが接着性が不十分であり、Rz≪tである場合には接着性は良好であるが熱伝導率が低くなる傾向が確認された。これは、金属箔の粗化面の凹凸を接着層がまんべんなくカバーし、かつ、粗化面の凸部がグラファイトに直接接触することによって金属粗化面の凸部では熱の伝達を抑制する傾向にある接着層を経由せず、効率よくグラファイトに熱を伝達できるためであると考えられる。また、金属粗化面の凸部が針状である場合、その針の部分がグラファイト層に刺さっていると考えられ、その部分により、効率よく金属層からグラファイト層に熱を伝えることができると考えられる。
前記実施例において、PVF−C1やPVF−Kの代わりに、エポキシ樹脂(jER828(三菱化学(株)製))、フェノール系接着剤(YSPOLYSTER T160(ヤスハラケミカル(株)製))、アクリル接着剤(アクリルダインB(新興プラスチックス(株)製))を用いて放熱部材を作成し、評価した。
ポリビニルアセタール樹脂(PVF−C1やPVF−K)は、金属層およびグラファイト層に対する接着性に優れているので、エポキシ樹脂などの他の接着剤を使用した場合に比べ、膜厚が薄くても(Rz≒t)、より接着性および熱伝導性に優れる放熱部材を得ることができた。
1:放熱部材(積層体)
2:金属層
3:接着層
4、4'、4'':グラファイト層
5:接着層
6:金属層
7:発熱体
8:穴
9:スリット

Claims (21)

  1. 金属層とグラファイト層とを接着層を介して積層した積層体を含み、
    該金属層のうち、接着層に接する面が粗化処理面であり、該接着層の厚み(t)から、金属層の該接着層に接する面の表面粗度(Rz)を引いた差(t−Rz)が−0.5μm以上1.0μm未満である、放熱部材。
  2. 前記金属層の接着層に接する面の表面粗度(Rz)と該接着層の厚み(t)との差の絶対値(|Rz−t|)が0.5μm以下である、請求項1に記載の放熱部材。
  3. 前記金属層のうち、接着層に接する面の表面粗度(Rz)が0.5〜5.0μmである、請求項1〜の何れか1項に記載の放熱部材。
  4. 前記金属層のうち、接着層に接する面の表面粗度(Rz)が1.0〜3.0μmである、請求項1〜の何れか1項に記載の放熱部材。
  5. 前記接着層の厚み(t)が0.5〜5.0μmである、請求項1〜の何れか1項に記載の放熱部材。
  6. 前記接着層がポリビニルアセタール樹脂を含む組成物から形成される、請求項1〜の何れか1項に記載の放熱部材。
  7. 前記積層体の積層方向の熱伝導率が0.05〜50W/m・Kである、請求項1〜の何れか1項に記載の放熱部材。
  8. 前記積層体の積層方向の熱伝導率が1.0〜50W/m・Kである、請求項1〜の何れか1項に記載の放熱部材。
  9. 前記ポリビニルアセタール樹脂が、下記構成単位A、BおよびCを含む、請求項に記載の放熱部材。
    Figure 0006168250
    (構成単位A中、Rは独立に水素またはアルキルである。)
    Figure 0006168250
    Figure 0006168250
  10. 前記ポリビニルアセタール樹脂が、さらに、下記構成単位Dを含む、請求項に記載の放熱部材。
    Figure 0006168250
    (構成単位D中、R1は独立に水素または炭素数1〜5のアルキルである。)
  11. 前記構成単位AにおけるRが水素または炭素数1〜3のアルキルである、請求項または10に記載の放熱部材。
  12. 前記金属層の厚みが前記グラファイト層の厚みの0.01〜100倍である、請求項1〜11の何れか1項に記載の放熱部材。
  13. 前記金属層の厚みが5〜1000μmである、請求項1〜12の何れか1項に記載の放熱部材。
  14. 前記金属層の厚みが10〜50μmである、請求項1〜13の何れか1項に記載の放熱部材。
  15. 前記金属層が、銀、銅、アルミニウム、ニッケルおよびこれらの少なくともいずれか1つの金属を含有する合金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む層である、請求項1〜14の何れか1項に記載の放熱部材。
  16. 前記金属層の熱伝導率が50W/m・K以上である請求項1〜15の何れか1項に記載の放熱部材。
  17. 前記グラファイト層の、前記積層体の積層方向に対して略垂直な方向の熱伝導率が250〜2000W/m・Kである、請求項1〜16の何れか1項に記載の放熱部材。
  18. 前記グラファイト層の厚みが15〜600μmである、請求項1〜17の何れか1項に記載の放熱部材。
  19. 前記放熱部材の最外層の、接着層と接する面と反対側の面の一方または両方に樹脂層を有する、請求項1〜18の何れか1項に記載の放熱部材。
  20. 請求項1〜19の何れか1項に記載の放熱部材を含む電子デバイス。
  21. 請求項1〜19の何れか1項に記載の放熱部材を含むバッテリー。
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