JP6142280B2 - 固体電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
従来より、小型化に適したコンデンサとして、固体電解コンデンサが知られており、導電性高分子からなる固体電解質層を有する固体電解コンデンサが広く用いられている。
たとえば特許文献1には、実装時の熱安定性および信頼性の高い固体電解コンデンサの製造方法が記載されている。特許文献1に記載の固体電解コンデンサの製造方法では、陽極と誘電体酸化皮膜と第一の導電性高分子化合物層とを含むコンデンサ素子を導電性高分子化合物懸濁水溶液に浸漬させることにより、第二の導電性高分子化合物層が第一の導電性高分子化合物層上に形成される。このようにして形成された第二の導電性高分子化合物層の外表面は導電性高分子化合物粉末からなる凹凸を多数有しているため、第二の導電性高分子化合物層と当該第二の導電性高分子化合物層上に形成されるグラファイト層との嵌合が向上すると特許文献1に記載されている。
特開平11−121281号公報
導電性高分子からなる固体電解質層を形成したときに、固体電解質層の厚さが局所的に薄くなる場合がある。固体電解質層の厚さが相対的に薄い部分では、陽極体と、固体電解質層上に形成される陰極層とが、電気的に短絡するおそれがある。陽極体と陰極層とが電気的に短絡すると、ショート不良率の上昇または漏れ電流(以下「LC」と記す)の上昇などといった固体電解コンデンサの性能低下を招く。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、性能に優れた固体電解コンデンサを提供することであり、他の目的は、そのような固体電解コンデンサの製造方法を提供することである。
本発明に係る固体電解コンデンサは、陽極体と、陽極体を覆うように形成された誘電体被膜と、誘電体被膜を覆うように形成された第1固体電解質層と、第1固体電解質層の厚さが相対的に薄い部分を覆うように形成され、導電性高分子からなる第2固体電解質層と、第1固体電解質層および第2固体電解質層を覆うように形成された陰極層とを備える。
陽極体は、互いに対向する第1端部および第2端部を有することが好ましい。陽極体の第1端部には、陽極リードが植立されていることが好ましい。第2固体電解質層は、第1固体電解質層の厚さが相対的に薄い部分として、陽極体における第2端部側を覆うように形成されていることが好ましい。
第2固体電解質層は、第1固体電解質層全体を覆うように形成されていることが好ましい。
第2固体電解質層は、導電性高分子からなる粒子または凝集体が分散されてなる分散体を第1固体電解質層の厚さが相対的に薄い部分に付着させることによって形成されてもよいし、導電性高分子が溶解されてなる溶液を第1固体電解質層の厚さが相対的に薄い部分に付着させることによって形成されてもよい。第2固体電解質層は、ポリチオフェンを含むことが好ましい。
第1固体電解質層は、電解重合法によって形成されていることが好ましく、ポリピロールを含むことが好ましい。
本発明の固体電解コンデンサの第1の製造方法は、陽極体を形成する工程と、陽極体を覆うように誘電体被膜を形成する工程と、誘電体被膜を覆うように第1固体電解質層を形成する工程と、第1固体電解質層の厚さが相対的に薄い部分を覆うように導電性高分子からなる第2固体電解質層を形成する工程と、第1固体電解質層および第2固体電解質層を覆うように陰極層を形成する工程とを備える。
本発明の固体電解コンデンサの第2の製造方法は、陽極体を形成する工程と、陽極体を覆うように誘電体被膜を形成する工程と、誘電体被膜を覆うように第1固体電解質層を形成する工程と、第1固体電解質層に生じたバリを除去する工程と、第1固体電解質層のうちバリが除去された部分を覆うように導電性高分子からなる第2固体電解質層を形成する工程と、第1固体電解質層および第2固体電解質層を覆うように陰極層を形成する工程とを備える。
第1固体電解質層を形成する工程は、導電性高分子を電解重合によって形成する工程を含むことが好ましい。
第2固体電解質層を形成する工程は、導電性高分子からなる粒子または凝集体が分散されてなる分散体を第1固体電解質層の厚さが相対的に薄い部分に付着させることにより第2固体電解質層を形成する工程を含んでもよいし、導電性高分子が溶解されてなる溶液を第1固体電解質層の厚さが相対的に薄い部分に付着させることにより第2固体電解質層を形成する工程を含んでもよい。また、第2固体電解質層を形成する工程は、導電性高分子からなる粒子または凝集体が分散されてなる分散体を第1固体電解質層のうちバリが除去された部分に付着させることにより第2固体電解質層を形成する工程を含んでもよいし、導電性高分子が溶解されてなる溶液を第1固体電解質層のうちバリが除去された部分に付着させることにより第2固体電解質層を形成する工程を含んでもよい。
本発明によれば、性能に優れた固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供することができる。
(a)は本発明の一実施形態に係る固体電解コンデンサの構成の一例を示す断面図であり、(b)は図1(a)に示すIB領域の拡大図である。 本発明の一実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。 (a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法の一例を工程順に示す断面図である。 (a)〜(b)は本発明の一実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法の一例を工程順に示す断面図である。 (a)は本発明の別の一実施形態に係る固体電解コンデンサの構成の一例を示す断面図であり、(b)は図5(a)に示すVB領域の拡大図である。 本発明の別の一実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法の一例を示すフローチャートである。 (a)〜(c)は本発明の別の一実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法の一例を工程順に示す断面図である。 本発明のさらに別の一実施形態に係る固体電解コンデンサの構成の一例を示す断面図である。
以下、本発明に係る固体電解コンデンサおよびその製造方法について図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
≪第1の実施形態≫
[固体電解コンデンサの構成]
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る固体電解コンデンサの構成を示す断面図であり、図1(b)は図1(a)に示すIB領域の拡大図である。本実施形態に係る固体電解コンデンサは、互いに対向する第1端部11aおよび第2端部11bを有する陽極体11と、陽極体11の第1端部11aに植立された陽極リード12と、陽極体11を覆うように形成された誘電体被膜13と、誘電体被膜13を覆うように形成された第1固体電解質層14とを備える。第1固体電解質層14には、当該第1固体電解質層14の厚さが陽極体11の外周部分において相対的に薄い部分(以下では「薄肉部分」と記すことがある)14aが存在しており、導電性高分子からなる第2固体電解質層54が、薄肉部分14aを覆うように形成されている。カーボン層15および銀ペイント層16の順に積層されてなる陰極層が、第1固体電解質層14および第2固体電解質層54を覆うように形成されている。陽極体11と陽極リード12と誘電体被膜13と第1固体電解質層14と第2固体電解質層54とカーボン層15と銀ペイント層16とによってコンデンサ素子10が構成されている。
陽極リード12には、陽極端子17が接続されている。銀ペイント層16には、導電性の接着剤からなる接着層18を介して陰極端子19が接続されている。陽極端子17の一部および陰極端子19の一部が露出するように、コンデンサ素子10が外装樹脂20によって封止されている。陽極端子17および陰極端子19のそれぞれのうち外装樹脂20から露出する部分は、外装樹脂20の表面に沿うように折り曲げられている。
陽極体11の材料は、特に制限されず、導電性を有していればよい。陽極体11の材料としては、たとえば、タンタル、ニオブ、チタンおよびアルミニウムなどの弁作用金属を好適に用いることができる。また、陽極体11は、多孔質の焼結体であることが好ましい。陽極リード12の材料は、金属であれば特に限定されないが、弁作用金属を好適に用いることができる。
誘電体被膜13の材料は、特に限定されず、誘電性を有していればよい。誘電体被膜13の材料としては、たとえば、弁作用金属からなる陽極体11を化成処理することによって形成される、金属酸化物が好適である。たとえば、陽極体11の材料としてのタンタル(Ta)を化成処理した場合には誘電体被膜13はTa25からなり、陽極体11の材料としてのアルミニウム(Al)を化成処理した場合には誘電体被膜13はAl23からなる。
第1固体電解質層14は、脂肪族系化合物、芳香族系化合物、複素環式系化合物およびヘテロ原子含有化合物のうちの少なくとも1つを含む導電性高分子から構成されることが好ましい。第1固体電解質層14は、たとえば、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ならびに、ポリフランおよびその誘導体の少なくとも1つから構成されることが好ましい。中でも、第1固体電解質層14は、ポリピロールおよびその誘導体の少なくとも1つを含むことが好ましい。
第1固体電解質層14は、化学重合法により形成されても良いが、電解重合法により形成されることが好ましい。どちらの方法により第1固体電解質層14を形成した場合であっても、薄肉部分14aが形成されることがある。
従来では、薄肉部分が固体電解質層に形成されると、その薄肉部分ではカーボン層および銀ペイント層が陽極体の近くにまで侵入することとなる。そのため、薄肉部分では陽極体とカーボン層または銀ペイント層とが電気的に短絡するおそれがあり、ショート不良率の上昇またはLCの上昇などといった固体電解コンデンサの性能低下を招く。
しかし、本実施形態では、導電性高分子からなる第2固体電解質層54が薄肉部分14aを覆うように形成されている。これにより、薄肉部分14aにおいても、カーボン層15および銀ペイント層16が陽極体11の近くにまで侵入することを防止できる。それだけでなく、薄肉部分14aにおける第1固体電解質層14の厚さと第2固体電解質層54の厚さとの合計(以下では「薄肉部分14aにおける導電性高分子からなる層の厚さ」と記すことがある)を確保することができるので、薄肉部分14aにおいても導電性高分子材料が有する自己修復機能を発揮させることができる。詳細には、微小な欠陥部が誘電体被膜13のうち薄肉部分14aに接する部分に存在する場合であっても、その微小な欠陥部を流れる電流によってジュール熱が発生し、その微小な欠陥部上に設けられた導電性高分子材料が絶縁化して漏れ電流の減少を図ることができる。以上のことから、本実施形態に係る固体電解コンデンサでは、薄肉部分14aにおいて陽極体11とカーボン層15または銀ペイント層16とが電気的に短絡することを防止できるので、ショート不良率が低下し、LCが低下する。したがって、性能に優れた固体電解コンデンサを提供することができる。以下、第2固体電解質層54について示す。
第2固体電解質層54は、第1固体電解質層14と同じく、脂肪族系化合物、芳香族系化合物、複素環式系化合物およびヘテロ原子含有化合物のうちの少なくとも1つを含む導電性高分子から構成されることが好ましい。第2固体電解質層54は、たとえば、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ならびに、ポリフランおよびその誘導体の少なくとも1つから構成されることが好ましい。第2固体電解質層54は、ポリアニリンおよびその誘導体、ならびに、ポリチオフェンおよびその誘導体の少なくとも1つを含むことが好ましく、ポリチオフェンまたはその誘導体から構成されることがより好ましい。ポリチオフェンの誘導体としては、たとえば、PEDOT(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene))を用いることができる。
第2固体電解質層54は、たとえば、ポリチオフェンなどの導電性高分子からなる粒子または凝集体が分散されてなる分散体を薄肉部分14aに付着させることにより形成されても良いし、ポリアニリンなどの導電性高分子が溶解されてなる溶液を薄肉部分14aに付着させることにより形成されても良い。第2固体電解質層54は、陽極体11の外周部分における第1固体電解質層14の厚さと第2固体電解質層54の厚さとの合計(以下では「陽極体11の外周部分における固体電解質層の厚さ」と記すことがある)が1μm以上100μm以下となるように、形成されることが好ましい。
カーボン層15は、導電性を有していればよく、たとえば、グラファイトを用いることができる。また、銀ペイント層16は、銀粒子で構成することができる。陽極端子17および陰極端子19は、導電性を有していればよく、たとえば、銅などの金属を用いることができる。接着層18は、導電性と接着性とを有していればよく、たとえば銀をフィラーとして含む銀接着剤を用いることができる。外装樹脂20の材料は特に限定されず、たとえばエポキシ樹脂などの公知の樹脂を用いることができる。
[固体電解コンデンサの製造方法]
図2は、本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法を示すフローチャートである。図3(a)〜(c)および図4(a)〜(b)は、本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法を工程順に示す断面図である。
(陽極体の形成)
まず、図2のステップS11において、図3(a)に示すように陽極体11を形成する。たとえば、金属粉末を準備し、棒状体の陽極リード12の長手方向の一端側を金属粉末に埋め込んだ状態で当該粉末を所望の形状に成形する。次に、この成形体を焼結して、陽極リード12の一端が埋設された多孔質構造の陽極体11を形成する。
陽極体11の材料は特に限定されないが、誘電体被膜13の形成が容易である点からは、タンタル、ニオブ、チタンおよびアルミニウムなどの弁作用金属を用いることが好ましい。陽極リード12の材料も特に限定されないが、陽極体11と同様の観点から、弁作用金属を用いることが好ましい。
(誘電体被膜の形成)
次に、図2のステップS12において、図3(b)に示すように陽極体11を覆うように誘電体被膜13を形成する。誘電体被膜13の形成方法は特に限定されない。たとえば、陽極体11が弁作用金属からなる場合には、陽極体11を化成処理することによって陽極体11の表面に誘電体被膜13を形成することができる。化成処理としては、たとえば、陽極体11をリン酸水溶液または硝酸水溶液などの化成液に浸漬して熱処理してもよいし、陽極体11を化成液に浸漬して電圧を印加してもよい。これにより、陽極体11の表面を誘電体被膜13に変化させることができる。
(第1固体電解質層の形成)
次に、図2のステップS13において、図3(c)に示すように誘電体被膜13を覆うように第1固体電解質層14を形成する。第1固体電解質層14は、化学重合法によって形成されてもよいが、電解重合法によって形成されることが好ましい。本実施形態では、化学重合法による第1固体電解質層14の形成方法を説明してから、電解重合法による第1固体電解質層14の形成方法を説明する。
化学重合法としては、酸化剤を用いて第1固体電解質層14を構成する高分子の前駆体モノマーを酸化重合させる液相重合法、または、気相重合法などを用いることができる。なお、化学重合を繰り返し行なうことにより、第1固体電解質層14の厚さを厚くしても良い。
前駆体モノマーとしては、重合することによって、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、または、ポリフランもしくはその誘導体などの導電性高分子を形成する化合物を用いることができる。たとえば、前駆体モノマーとして、3,4−エチレンジオキシチオフェンまたはN−メチルピロールなどを用いることができる。
酸化剤は、前駆体モノマーを重合させることができればよい。たとえば、酸化剤としては、硫酸および過酸化水素などの少なくとも1つを用いることができる。
第1固体電解質層14はドーパントを含んでいても良い。ドーパントとしては、たとえば、アルキルスルホン酸、芳香族スルホン酸および多環芳香族スルホン酸などのスルホン酸化合物の酸または塩を挙げることができる。また、酸化剤の機能とドーパントの機能とを有する芳香族スルホン酸金属塩などを用いることもできる。
電解重合法による第1固体電解質層14の形成方法としては、たとえば、誘電体被膜13が形成された陽極体11の表面にプレコート層を形成してから、第1固体電解質層14の前駆体モノマーおよびドーパントを含む重合液に浸漬してプレコート層に電流を流すことによって、誘電体被膜13を覆うように第1固体電解質層14を形成させる方法がある。プレコート層としては、たとえば、上述した化学重合法により形成された導電性高分子層を用いることができる。電解重合法により第1固体電解質層14を形成する場合においても、化学重合法により第1固体電解質層14を形成する場合に使用可能な前駆体モノマーおよびドーパントを特に限定されることなく用いることができる。また、電解重合法による重合条件としては、固体電解コンデンサの固体電解質層を電解重合法により形成する場合の公知の重合条件を特に限定されることなく適用することができる。
電解重合法により第1固体電解質層14を形成したときには、バリが形成されることがある。形成されたバリの大きさが除去を必要としない程度の大きさであれば、当該バリを除去することなく次工程に移るが、当該バリの周辺に薄肉部分14aが形成されることがある。また、化学重合法により第1固体電解質層14を形成したときにも、薄肉部分14が形成されることがある。そして、薄肉部分14aが形成された第1固体電解質層14上に陰極層を形成すると、薄肉部分14aにおいて陽極体と陰極層とが電気的に短絡するおそれがあり、ショート不良率の上昇またはLCの上昇などといった固体電解コンデンサの性能低下を招く。そこで、第1固体電解質層14を形成する工程の後であって陰極層を形成する工程の前に、第2固体電解質層54を形成する。
上述のように、電解重合法により第1固体電解質層14を形成したときには、バリが形成されることがある。一方、化学重合法により第1固体電解質層14を形成したときには、バリは形成され難い。よって、化学重合により第1固体電解質層を形成した場合よりも、電解重合により第1固体電解質層を形成した場合の方が、薄肉部分14aを覆うように第2固体電解質層54を形成することにより得られる効果が顕著となる。したがって、化学重合法により第1固体電解質層14を形成するよりも電解重合法により第1固体電解質層14を形成する方が好ましい。
(第2固体電解質層の形成)
次に、図2のステップS14において、図4(a)に示すように薄肉部分14aを覆うように第2固体電解質層54を形成する。たとえば、導電性高分子からなる粒子または凝集体が分散されてなる分散体を薄肉部分14aに付着させることにより第2固体電解質層54を形成しても良いし、導電性高分子が溶解されてなる溶液を薄肉部分14aに付着させることにより第2固体電解質層54を形成しても良い。これにより、薄肉部分14aにおいても、カーボン層15および銀ペイント層16が陽極体11の近くにまで侵入することを防止できる。それだけでなく、上記[固体電解コンデンサの構成]で示したように、薄肉部分14aにおける導電性高分子からなる層の厚さを確保することができるので、薄肉部分14aにおいても導電性高分子材料が有する自己修復機能を発揮させることができる。以上のことから、本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法にしたがって製造された固体電解コンデンサでは、薄肉部分14aにおいて陽極体11とカーボン層15または銀ペイント層16とが電気的に短絡することを防止できるので、ショート不良率が低下し、LCが低下する。したがって、本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法では、性能に優れた固体電解コンデンサを製造することができる。
第1固体電解質層14は、陽極体11を構成する多孔質構造の孔内にも形成される必要があるため、化学重合法または電解重合法により形成されることが好ましい。しかし、薄肉部分14aを効果的に被覆できるという点から、第2固体電解質層54は、化学重合法および電解重合法により形成されるよりも、上記分散体または上記溶液を薄肉部分14aに付着させることにより形成されることが好ましい。これにより、薄肉部分14aにおける電気的短絡を防止することができるという効果を有効に得ることができる。
さらに、本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法では、必要な場所にのみ第2固体電解質層54を形成するため、第1固体電解質層全体を覆うように第2固体電解質層を形成する場合(後述の第3の実施形態)に比べてコストを抑えることができる。
分散体を薄肉部分14aに付着させることによる第2固体電解質層54の形成方法としては、たとえば、浸漬または塗布などの公知の方法によって分散体を薄肉部分14aに付着させるという方法が挙げられる。陽極体11の外周部分における固体電解質層の厚さが1μm以上100μm以下となるように、分散体を薄肉部分14aに付着させることが好ましい。その後、乾燥を行なって、分散体に含まれる溶媒を除去してもよい。乾燥方法としては、たとえば、分散体に含まれる溶媒の沸点以上の温度で30秒以上1時間以下乾燥させることが好ましく、より好ましくは上記沸点以上の温度であって当該沸点よりも50℃高い温度以下の温度で10分以上30分以下乾燥させることである。導電性高分子が溶解されてなる溶液を薄肉部分14aに付着させることにより第2固体電解質層54を形成する場合においても同様のことが言える。
分散体は、たとえば、導電性高分子からなる粒子または凝集体と、溶媒とを含むことが好ましい。第2固体電解質層54を構成する導電性高分子としては、上述のように脂肪族系化合物、芳香族系化合物、複素環式系化合物およびヘテロ原子含有化合物の少なくとも1つを用いることができ、たとえば、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ならびに、ポリフランおよびその誘導体の少なくとも1つを用いることができる。その中でも、分散体に含まれる粒子または凝集体を構成する導電性高分子は、PEDOTを含むことが好ましい。
分散体に含まれる溶媒としては、分散体において導電性高分子からなる粒子または凝集体を分散させることが可能な材料であれば特に限定されることなく使用される。たとえば、分散体に含まれる溶媒としては、水、アルコール、脂肪族ケトン、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素などを用いることができる。
導電性高分子が溶解されてなる溶液を薄肉部分14aに付着させることにより第2固体電解質層54を形成する場合、導電性高分子が溶解されてなる溶液は、導電性高分子と、導電性高分子を溶解可能な溶媒とを含むことが好ましい。第2固体電解質層54を構成する導電性高分子としては、上述のように脂肪族系化合物、芳香族系化合物、複素環式系化合物およびヘテロ原子含有化合物の少なくとも1つを用いることができるが、溶媒への溶解性を考慮すればポリアニリンまたはポリアニリンの誘導体を用いることが好ましい。また、導電性高分子を溶解可能な溶媒としては、導電性高分子を溶解可能な材料であれば特に限定されることなく使用される。また、導電性高分子を溶解可能な溶媒としては、分散体に含まれる溶媒として使用可能な溶媒を特に限定されることなく用いることができる。
(陰極層の形成)
次に、図2のステップS15において、図4(b)に示すように第1固体電解質層14および第2固体電解質層54を覆うようにカーボン層15および銀ペイント層16を形成する。
カーボン層15および銀ペイント層16のそれぞれの形成方法は特に限定されない。カーボン層15は、たとえば、カーボン粒子を分散させた溶液に第1固体電解質層14および第2固体電解質層54が形成された陽極体11を浸漬し、その後乾燥処理することによって形成することができる。また、銀ペイント層16は、たとえば、カーボン層15を形成後、銀粒子を含む溶液に該陽極体11を浸漬して乾燥処理することによって形成することができる。以上の工程により、コンデンサ素子10が製造される。
(コンデンサ素子の封止)
次に、図2のステップS16において、図1(a)に示すようにコンデンサ素子10を封止して固体電解コンデンサを製造する。封止の方法としては、特に限定されないが、たとえば、以下の方法がある。
すなわち、まず、陽極端子17の一端を、陽極体11から露出する陽極リード12の一端に接続する。また、銀ペイント層16上に接着層18を形成し、その接着層18により陰極端子19の一端を銀ペイント層16に接続する。次に、陽極端子17および陰極端子19の各他端が露出するように、コンデンサ素子10を外装樹脂20によって封止する。最後に、露出している陽極端子17および陰極端子19を外装樹脂20に沿うように折り曲げてエージング処理する。これにより、図1(a)に示す固体電解コンデンサが製造される。
薄肉部分14aが形成される位置は、図1(a)に示す位置に限定されない。また、複数の薄肉部分14aが第1固体電解質層14に形成される場合もある。いずれの場合であっても第2固体電解質層54が薄肉部分14aを覆うように形成されていれば、薄肉部分14aにおいて陽極体11と陰極層とが電気的に短絡することを防止することができる。よって、ショート不良率が低下し、LCが低下する。これにより、性能に優れた固体電解コンデンサを提供することができる。
≪第2の実施形態≫
本発明の第2の実施形態では、電解重合法により第1固体電解質層を形成したときに生じたバリを除去したために薄肉部分が形成された場合に、当該薄肉部分における陽極体と陰極層との電気的な短絡が防止された固体電解コンデンサおよびその製造方法を示す。以下では、上記第1の実施形態とは異なる点を主に示す。
[固体電解コンデンサの構成]
図5(a)は本実施形態に係る固体電解コンデンサの構成を示す断面図であり、図5(b)は図5(a)に示すVB領域の拡大図である。本実施形態では、第1固体電解質層24は電解重合法により形成されている。電解重合法により第1固体電解質層24を形成すると、バリ94(図7(a)参照)が第1固体電解質層24に形成されることがある。バリ94が形成されたまま固体電解コンデンサを製造しようとすると、バリ94が陰極端子19に接触するおそれがあり、バリ94が外装樹脂20から露出するおそれがある。そのため、バリ94を除去することが好ましい。バリ94を除去するとき、バリ94直下の第1固体電解質層24などがバリ94と一緒に除去されることがある。これにより、薄肉部分24aが形成される。つまり、本実施形態では、薄肉部分24aは、第1固体電解質層24のうちバリ94が除去された部分に相当する。陽極体11と電解重合を行なうときに使用する電極との配置関係などによって、バリ94は、陽極体11の第2端部11b側に形成された第1固体電解質層24に形成される場合が多い。そのため、薄肉部分24aは、陽極体11の第2端部11b側に形成された第1固体電解質層24に形成される。
第2固体電解質層64は、薄肉部分24aを覆うように形成されている。これにより、本実施形態においても、薄肉部分24aにおいて陽極体11とカーボン層15または銀ペイント層16とが電気的に短絡することを防止できる。よって、ショート不良率が低下し、LCが低下する。したがって、性能に優れた固体電解コンデンサを提供することができる。なお、薄肉部分24aは陽極体11の第2端部11b側に形成されるため、第2固体電解質層64は陽極体11の第2端部11b側に形成された第1固体電解質層24を覆うように形成されている。
[固体電解コンデンサの製造方法]
図6は、本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法を示すフローチャートである。図7(a)〜(c)は、本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法を工程順に示す断面図である。
まず、図6のステップS11において陽極体11を形成してから、図6のステップS12において誘電体被膜13を形成する。陽極体11を形成する工程および誘電体被膜13を形成する工程はいずれも上記第1の実施形態で示したとおりである。
(第1固体電解質層の形成)
次に、図6のステップS23において、図7(a)に示すように誘電体被膜13を覆うように第1固体電解質層24を形成する。上記第1の実施形態における電解重合法による第1固体電解質層14の形成方法にしたがって、第1固体電解質層24を形成することができる。
本実施形態では、電解重合法によって第1固体電解質層24を形成するので、図7(a)に示すようにバリ94が陽極体11の第2端部11b側に形成される。バリ94が形成される原因としては種々考えられ、たとえば導電性高分子の一部が電解重合中に陽極体11から電極(電解重合に使用される電極)へ向かって成長することなどが考えられる。バリ94は外装樹脂20から露出することがあり、その結果、固体電解コンデンサの製造歩留まりの低下などを招く。よって、バリ94を除去する。
(バリの除去)
次に、図6のステップS24において、図7(b)に示すようにバリ94を除去する。バリ94を除去する方法としては、切断、研磨もしくはブラストなどの機械的な除去方法、または、化学研磨もしくは電解研磨などの化学的な除去方法を用いることができる。
バリ94を除去するとき、バリ94直下の第1固体電解質層24がバリ94と一緒に除去される。よって、図7(b)に示すように、第1固体電解質層24のうちバリ94が除去された部分が薄肉部分24aとなる。したがって、本実施形態では、薄肉部分24aは、陽極体11の第2端部11b側に形成される。
(第2固体電解質層の形成)
次に、図6のステップS14において、図7(c)に示すように薄肉部分24aを覆うように第2固体電解質層64を形成する。第2固体電解質層64の形成方法としては、上記第1の実施形態で示した通りであり、導電性高分子からなる粒子または凝集体が分散されてなる分散体を薄肉部分24aに付着させることにより第2固体電解質層64を形成しても良いし、導電性高分子が溶解されてなる溶液を薄肉部分24aに付着させることにより第2固体電解質層64を形成しても良い。本実施形態では、薄肉部分24aが陽極体11の第2端部11b側に形成されているので、第2固体電解質層64は陽極体11の第2端部11b側に形成される。
次に、図6のステップS15において陰極層を形成してから、図6のステップS16においてコンデンサ素子10を封止する。陰極層を形成する工程およびコンデンサ素子10を封止する工程はいずれも上記第1の実施形態で示したとおりである。このようにして図5(a)に示す固体電解コンデンサが製造される。
≪第3の実施形態≫
本発明の第3の実施形態では、第2固体電解質層が上記第2の実施形態における第1固体電解質層全体を覆うように形成されている。以下では、上記第2の実施形態とは異なる点を主に示す。
[固体電解コンデンサの構成]
図8は、本実施形態に係る固体電解コンデンサの構成を示す断面図である。本実施形態では、第2固体電解質層74は第1固体電解質層24全体を覆うように形成されている。
[固体電解コンデンサの製造方法]
まず、上記第1の実施形態で記載の方法にしたがって陽極体11を形成する工程および誘電体被膜13を形成する工程を順に行なう。次に、第1固体電解質層24を形成する。
第1固体電解質層24を形成する工程では、上記第2の実施形態で記載の方法にしたがって電解重合法により第1固体電解質層24を形成する。電解重合法により第1固体電解質層24を形成すると、バリ94(図7(a)参照)が第1固体電解質層24に形成される。よって、上記第2の実施形態で記載した方法にしたがってバリ94を除去する。
バリ94(図7(a)参照)を除去するとき、バリ94直下の第1固体電解質層24などがバリ94と一緒に除去され、よって、薄肉部分24a(図7(a)参照)が形成される。その後、第2固体電解質層74を形成する工程を行なう。
第2固体電解質層74を形成する工程では、薄肉部分24aだけでなく第1固体電解質層24全体を覆うように第2固体電解質層74を形成する。たとえば、第1固体電解質層24が形成された陽極体11を、導電性高分子からなる粒子または凝集体が分散されてなる分散体に浸漬させても良いし、導電性高分子が溶解されてなる溶液に浸漬させても良い。このように第1固体電解質層24全体を覆うように第2固体電解質層74を形成すると、第2固体電解質層74は薄肉部分24aをもれなく覆う。よって、上記第1〜第2の実施形態に比べて、ショート不良率がさらに低下し、LCがさらに低下する。また、陽極体11の外周部分における固体電解質層の厚さを確保することができる。よって、上記第1〜第2の実施形態に比べて、等価直列抵抗(以下「ESR」と記す)が低下する。さらに、薄肉部分24aが形成された場所を確認することなく第2固体電解質層74を形成することができるため、第2固体電解質層74を容易且つ短時間で形成することができる。この効果は、薄肉部分24aが複数箇所にわたって形成されている場合に顕著となる。浸漬時間は特に限定されず、陽極体11の外周部分における固体電解質層の厚さが1μm以上100μm以下となるように調整されることが好ましい。
その後、上記第1の実施形態で記載の方法にしたがって、陰極層を形成する工程およびコンデンサ素子10を封止する工程を順に行なう。このようにして図8に示す固体電解コンデンサが製造される。
上記第1の実施形態において第1固体電解質層14全体を覆うように第2固体電解質層を形成してもよい。この場合にも本実施形態における効果が得られる。
上記第1〜第2の実施形態では、固体電解コンデンサの製造コストを上記第3の実施形態よりも低く抑えることができる。一方、固体電解コンデンサの性能は、上記第1の実施形態、上記第2の実施形態および上記第3の実施形態の順に高くなる。製造コストおよび要求される性能などをふまえて、上記第1〜第3の実施形態に係る固体電解コンデンサのいずれを採用するかを決定すればよい。
以上第1〜第3の実施形態において本発明の固体電解コンデンサを示したが、本発明の固体電解コンデンサは上記第1〜第3の実施形態に係る固体電解コンデンサに限定されず、公知の形状に応用することができる。公知の形状としては、たとえば、巻回型の固体電解コンデンサ、および、弁作用金属からなる箔を用いた積層型の固体電解コンデンサなどを挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
(陽極体の形成)
まず、タンタル粉末を準備し、棒状体のタンタルからなる陽極リードの長手方向の一端側をタンタル粉末に埋め込んだ状態で当該タンタル粉末を直方体に成形した。そして、この成形体を焼結し、陽極リードの一端が埋設された多孔質構造の陽極体を形成した。このときの陽極体の寸法は、縦×横×高さが4.5mm×3.5mm×2.5mmであった。
(誘電体被膜の形成)
次に、陽極体をリン酸溶液に浸漬して、陽極リードを介して陽極体に30Vの電圧を印加した。これにより、陽極体を覆うようにTa25からなる誘電体被膜を形成した。
(プレコート層の形成)
次に、化学重合法によって導電性のプレコート層を形成した。具体的には、まず、重合液として、ピロールを0.03mol/lの濃度で含むエタノール溶液と、過硫酸アンモニウムおよびp−トルエンスルホン酸を含む水溶液とを準備した。そして、誘電体被膜が形成された陽極体を上記エタノール溶液および上記水溶液に順に浸漬し、上記水溶液から引き上げた陽極体を室温で放置した。これにより、誘電体被膜を覆うようにポリピロールからなるプレコート層を形成した。
(第1固体電解質層の形成)
次に、電解重合法によって第1固体電解質層を形成した。具体的には、まず、電解重合液として、ピロールおよびアルキルナフタレンスルホン酸をそれぞれ0.03mol/Lの濃度で含む水溶液を準備した。この水溶液で電解重合用装置の電解槽を満たしたのち、プレコート層などが形成された陽極体をこの水溶液に浸漬させた。そして、プレコート層に0.5mAの電流を3時間流した。これにより、プレコート層を覆うようにポリピロールからなる第1固体電解質層を形成した。このとき、陽極体の下面上(陽極体の第2端部側)に形成された第1固体電解質層には、薄肉部分が形成されていた。
(第2固体電解質層の形成)
次に、PEDOTの分散液を用いて第2固体電解質層を形成した。具体的には、分散液として、PEDOTからなる粒子を5wt%の濃度で含む水溶液を準備した。次に、第1固体電解質層などが形成された陽極体をこの分散液に5分間浸漬させてから引き上げ、100℃で30分間乾燥させた。これにより、PEDOTからなる第2固体電解質層を形成した。このとき、薄肉部分も含めて第1固体電解質層全体を覆うように第2固体電解質層を形成した。
(陰極層の形成)
次に、第2固体電解質層上にグラファイト粒子懸濁液を塗布して大気中で乾燥させた。これにより、第2固体電解質層を覆うようにカーボン層を形成した。その後、銀粒子を含む溶液を用いて銀ペイント層をカーボン層上に形成した。これらの操作によってコンデンサ素子を製造した。
(コンデンサ素子の封止)
コンデンサ素子において、陽極リードに銅からなる陽極端子を溶接し、銀ペイント層に銀接着剤を塗布して接着層を形成し、その接着層に銅からなる陰極端子の一端を接着させた。さらに、陽極端子および陰極端子の一部が露出するように、コンデンサ素子をエポキシ樹脂からなる外装樹脂で封止した。外装樹脂から露出する陽極端子および陰極端子を当該外装樹脂に沿うように折り曲げた後、エージング処理を行った。これにより、実施例1の固体電解コンデンサを製造した。製造された固体電解コンデンサの寸法は、縦×横×高さが7.3mm×4.3mm×3.8mmであった。
<実施例2>
第1固体電解質層を形成したときにバリが形成されたために当該バリを除去してから第2固体電解質層を形成したことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって、実施例2の固体電解コンデンサを製造した。
まず、上記実施例1に記載の方法にしたがって、誘電体被膜、プレコート層および第1固体電解質層を形成した。このとき、陽極体の下面上(陽極体の第2端部側)に形成された第1固体電解質層にはバリが形成されていた。
次に、第1固体電解質層に形成されたバリを研磨により除去した。このとき、バリ周辺の第1固体電解質層がバリと一緒に除去され、よって、薄肉部分が陽極体の下面上に形成された。
次に、上記実施例1に記載の方法にしたがって第2固体電解質層を形成した。つまり、薄肉部分も含めて第1固体電解質層全体を覆うように第2固体電解質層を形成した。その後、上記実施例1に記載の方法にしたがって、陰極層を形成してからコンデンサ素子を封止した。これにより、実施例2の固体電解コンデンサを製造した。
<実施例3>
薄肉部分を覆うようにして第2固体電解質層を形成したことを除いては上記実施例2に記載の方法にしたがって、実施例3の固体電解コンデンサを製造した。
まず、上記実施例1に記載の方法にしたがって、誘電体被膜、プレコート層および第1固体電解質層を形成した。このとき、陽極体の下面上(陽極体の第2端部側)に形成された第1固体電解質層にはバリが形成されていた。その後、上記実施例2に記載の方法にしたがってバリを除去した。このとき、バリ周辺の第1固体電解質層がバリと一緒に除去され、よって、薄肉部分が陽極体の下面上に形成された。
次に、薄肉部分が形成された陽極体の下面(陽極体の第2端部側)を上記実施例1で準備したPEDOTからなる粒子を含む水溶液に5分間浸漬させてから引き上げ、100℃で30分間乾燥させた。これにより、薄肉部分を覆うようにPEDOTからなる第2固体電解質層を形成した。
次に、上記実施例1に記載の方法にしたがって、陰極層を形成してからコンデンサ素子を封止した。これにより、実施例3の固体電解コンデンサを製造した。
<実施例4>
ポリアニリンが溶解されてなる溶液を用いて第2固体電解質層を形成したことを除いては上記実施例2に記載の方法にしたがって、実施例4の固体電解コンデンサを製造した。
まず、上記実施例1に記載の方法にしたがって、誘電体被膜、プレコート層および第1固体電解質層を形成した。このとき、陽極体の下面上(陽極体の第2端部側)に形成された第1固体電解質層にはバリが形成されていた。その後、上記実施例2に記載の方法にしたがってバリを除去した。このとき、バリ周辺の第1固体電解質層がバリと一緒に除去され、よって、薄肉部分が陽極体の下面上に形成された。
次に、ポリアニリンが溶解されてなる溶液を用いて第2固体電解質層を形成した。まず、ポリアニリンが溶解されてなる溶液として、ポリアニリンを1wt%の濃度で含み、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液を準備した。次に、第1固体電解質層などが形成された陽極体をこの溶液に5分間浸漬させてから引き上げ、100℃で30分間乾燥させた。これにより、ポリアニリンからなる第2固体電解質層を形成した。このとき、バリを除去することによって厚さが薄くなった第1固体電解質層の部分(薄肉部分)も含めて第1固体電解質層全体を覆うように第2固体電解質層を形成した。
次に、上記実施例1に記載の方法にしたがって、陰極層を形成してからコンデンサ素子を封止した。これにより、実施例4の固体電解コンデンサを製造した。
<比較例1>
第2固体電解質層を形成しなかったことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって、比較例1の固体電解コンデンサを製造した。
<比較例2>
第2固体電解質層を形成しなかったことを除いては上記実施例2に記載の方法にしたがって、比較例2の固体電解コンデンサを製造した。
<比較例3>
化学重合法により第1固体電解質層を形成したことを除いては上記比較例1に記載の方法にしたがって、比較例3の固体電解コンデンサを製造した。比較例3では、上記実施例1におけるプレコート層の形成方法にしたがって第1固体電解質層を形成した。
<比較例4>
第1固体電解質層を形成してから第2固体電解質層を形成したことを除いては上記比較例3に記載の方法にしたがって、比較例4の固体電解コンデンサを製造した。比較例4では、上記実施例1における第2固体電解質層の形成方法にしたがって第2固体電解質層を形成した。
<容量の測定>
各実施例1〜4および各比較例1〜4の固体電解コンデンサからそれぞれランダムに20個ずつ抽出した。抽出された各固体電解コンデンサについて、4端子測定用のLCRメータを用いて周波数120Hzにおける各固体電解コンデンサの容量を測定し、各実施例1〜4および各比較例1〜4における平均値を算出した。容量が大きい方が固体電解コンデンサの性能が優れていることを表わす。
<ESRの測定>
各実施例1〜4および各比較例1〜4の固体電解コンデンサからそれぞれランダムに20個ずつ抽出した。抽出された各固体電解コンデンサについて、4端子測定用のLCRメータを用いて周波数100kHzにおける各固体電解コンデンサのESR(mΩ)を測定し、各実施例1〜4および各比較例1〜4における平均値を算出した。ESRが小さい方が固体電解コンデンサの性能が優れていることを表わす。
<LCの測定>
各実施例1〜4および各比較例1〜4の固体電解コンデンサからそれぞれランダムに20個ずつ抽出した。抽出された各固体電解コンデンサに1kΩの抵抗を直列につないで、その抵抗に対して並列に電圧計を接続して、定格の電圧を加えたときに流れた電流値を測定した。LCが低い方が固体電解コンデンサの性能が優れていることを表わす。
<外形寸法の良品率>
各実施例1〜4および各比較例1〜4の固体電解コンデンサからそれぞれランダムに100個ずつ抽出した。抽出された各固体電解コンデンサの外形寸法を測定し、測定された外形寸法が規格外となった固体電解コンデンサを不良品とみなし、(外形寸法の良品率)=(不良品の個数)/(100個)×100を用いて外形寸法の良品率を測定した。外形寸法の良品率が高い方が固体電解コンデンサの性能が優れていることを表わす。
固体電解コンデンサの製造条件を表1に示し、容量などの測定結果を表2に示す。
Figure 0006142280
Figure 0006142280
実施例1では、比較例1に比べて、ESRが低く、LCも低かった。その理由として次に示すことが考えられる。実施例1では、第2固体電解質層が第1固体電解質層を覆うように形成されているので、薄肉部分において陽極体と陰極層とが電気的に短絡することを防止することができる。一方、比較例1では、第2固体電解質層が形成されていないので、薄肉部分において陽極体と陰極層とが電気的に短絡することがある。
実施例1では、比較例1に比べてESRおよびLCともに向上したのに対して、比較例3と比較例4とでは、ESRにもLCにも大差はなかった。その理由としては、次に示すことが考えられる。実施例1および比較例1では、電解重合により第1固体電解質層を形成しているため、バリが当該第1固体電解質層に形成されているおそれがある。よって、第1固体電解質層を覆うように第2固体電解質層を形成することにより、ESRの低下およびLCの低下を図ることができる。一方、比較例3〜4では、化学重合により第1固体電解質層を形成しているため、バリは当該第1固体電解質層に形成されない。そのため、第1固体電解質層を覆うように第2固体電解質層を形成しても、ESRの低下およびLCの低下を図ることが難しい。以上より、少なくとも薄肉部分を覆うように第2固体電解質層を形成することにより得られる効果は、化学重合により第1固体電解質層を形成した場合よりも、電解重合により第1固体電解質層を形成した場合の方が顕著となる。
実施例2では、比較例2に比べて、ESRが大幅に低く、LCも大幅に低かった。その理由として次に示すことが考えられる。実施例2では、第2固体電解質層が第1固体電解質層を覆うように形成されているので、薄肉部分において陽極体と陰極層とが電気的に短絡することを防止することができる。一方、比較例2では、バリを除去したにも関わらず第2固体電解質層が形成されていないので、薄肉部分において陽極体と陰極層とが電気的に短絡しやすい。
実施例2〜3では、実施例1に比べて、LCが低かった。その理由として次に示すことが考えられる。実施例2〜3では、第1固体電解質層に形成されたバリを除去しているので、組立工程(たとえば端子接続工程または樹脂モールド工程など)において外部応力が固体電解質コンデンサの構成要素(たとえば図1に示す陰極端子19など)に掛かり難い。一方、実施例1では、第1固体電解質層に形成されたバリを除去していないので、上記組立工程において外部応力などを受け易い。また、実施例2〜3では、実施例1に比べて、外形寸法の良品率が高かった。その理由として実施例2〜3では第1固体電解質層に形成されたバリを除去しているのに対し実施例1では当該バリを除去していないことが考えられる。このことは、比較例2では比較例1よりも外形寸法の良品率が高かったという結果に対しても言える。
実施例2では、実施例3に比べて、ESRが低く、LCも低かった。その理由として次に示すことが考えられる。実施例2では、第1固体電解質層を覆うように第2固体電解質層が形成されているので、第2固体電解質層は薄肉部分をもれなく覆う。また、陽極体の外周部分における固体電解質層の厚さを確保することができる。
実施例3では、比較例2に比べて、ESRが低く、LCも低かった。その理由として次に示すことが考えられる。実施例3では、第2固体電解質層が第1固体電解質層を覆うように形成されているので、薄肉部分において陽極体と陰極層とが電気的に短絡することを防止することができる。一方、比較例2では、第2固体電解質層が形成されていないので、薄肉部分において陽極体と陰極層とが電気的に短絡することがある。
実施例3では、薄肉部分を覆うように第2固体電解質層を形成しているので、実施例2などに比べて製造コストを抑えることができた。
実施例4においても、実施例2と同様の結果が得られた。このことから、第2固体電解質層としてポリアニリンを用いた場合であっても、第2固体電解質層としてPEDOTを用いた場合と同様の効果が得られること分かる。
なお、比較例2では、比較例1に比べて、LCがさらに高かった。その理由として、次に示すことが考えられる。比較例1ではバリを除去していないのに対し、比較例2ではバリを除去している。そのため、薄肉部分が形成される確率は、比較例2の方が比較例1よりも高くなる。
また、比較例3では、比較例1に比べて、ESRがさらに高く、LCもさらに高かった。その理由としては、次に示すことが考えられる。比較例1では電解重合により第1固体電解質層を形成しているのに対し、比較例3では化学重合により第1固体電解質層を形成している。そのため、比較例1の方が比較例3よりも緻密な第1固体電解質層を形成することができる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 コンデンサ素子、11 陽極体、11a 第1端部、11b 第2端部、12 陽極リード、13 誘電体被膜、14,24 第1固体電解質層、14a,24a 薄肉部分、15 カーボン層、16 銀ペイント層、17 陽極端子、18 接着層、19 陰極端子、20 外装樹脂、54,64,74 第2固体電解質層。

Claims (4)

  1. 陽極体を形成する工程と、
    前記陽極体を覆うように誘電体被膜を形成する工程と、
    前記誘電体被膜を覆うように第1固体電解質層を形成する工程と、
    前記第1固体電解質層に生じたバリを除去する工程と、
    前記第1固体電解質層のうち前記バリが除去された部分を覆うように、導電性高分子からなる第2固体電解質層を形成する工程と、
    前記第1固体電解質層および前記第2固体電解質層を覆うように、陰極層を形成する工程とを備えた、固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 前記第1固体電解質層を形成する工程は、導電性高分子を電解重合によって形成する工程を含む、請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 前記第2固体電解質層を形成する工程は、前記導電性高分子からなる粒子もしくは凝集体が分散されてなる分散体または前記導電性高分子が溶解されてなる溶液を、前記第1固体電解質層の厚さが相対的に薄い部分に付着させることにより前記第2固体電解質層を形成する工程を含む、請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 前記第2固体電解質層を形成する工程は、前記導電性高分子からなる粒子もしくは凝集体が分散されてなる分散体または前記導電性高分子が溶解されてなる溶液を、前記第1固体電解質層のうち前記バリが除去された部分に付着させることにより前記第2固体電解質層を形成する工程を含む、請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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