JP5496708B2 - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解コンデンサの製造方法に関し、特に、導電性高分子層を有する固体電解コンデンサの製造方法に関する。
従来より、小型化に適したコンデンサとして、固体電解コンデンサが広く知られている。固体電解コンデンサは、表面に誘電体被膜が形成された陽極体を有し、さらに、陽極体と陰極層との間に固体電解質を有している。
陽極体には、弁作用金属の金属板または金属箔をエッチングしたもの、および弁作用金属の粉末の成形体を焼結したものなどがあり、このような陽極体の表面を電解酸化することにより、誘電体被膜を形成することができる。このようにして形成される誘電体被膜は、極めて緻密であり、耐久性が高く、かつ非常に薄い。
また、固体電解質の材料としては、二酸化マンガン、導電性高分子などが知られている。特に、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子からなる固体電解質の電気伝導性は高く、固体電解コンデンサの等価直列抵抗(以下、「ESR」という。)を低くすることが可能となる。このため、電解質として導電性高分子層を有する固体電解コンデンサは、他のコンデンサ、たとえば、紙コンデンサやフィルムコンデンサと比較して、高い性能を有することができる。
上記のような導電性高分子層を形成する方法としては、化学重合を利用する方法および電解重合を利用する方法がある。化学重合を利用する方法では、たとえば、誘電体被膜が形成された陽極体を、酸化剤と導電性高分子の前駆体とを含む溶液に浸漬し、誘電体被膜上で前駆体を重合させることによって、導電性高分子層を形成することができる。また、電解重合を利用する方法では、たとえば、誘電体被膜が形成された陽極体を電解液に浸漬させ、アノードで生じる酸化反応を利用して前駆体を酸化重合させることにより、誘電体被膜上に導電性高分子層を形成することができる。
たとえば、引用文献1には、誘電体被膜上に化学重合によって導電性高分子からなるプレコート層を形成し、その後電解重合によってプレコート層上に導電性高分子層を形成し、該導電性高分子層を洗浄、乾燥した後に陰極層を形成する方法が記載されている。この方法によれば、(1)誘電体被膜に直接電解重合による導電性高分子層を形成することが困難である、(2)化学重合による導電性高分子層の強度が弱く、電気伝導度が低い、というそれぞれの欠点を補って、質の高い導電性高分子層を形成することができる。この技術によれば、小型で静電容量が大きく、ESRの低い、高性能な固体電解コンデンサを製造することができる。
特開2006−261439号公報
しかしながら、さらに高性能の固体電解コンデンサの需要は未だ高まっており、上述の技術よりもさらに優れた技術を開発する必要がある。そこで、本発明の目的は、高性能の固体電解コンデンサの製造方法を提供することである。
上記目的を達成すべく、本発明者は従来の製造方法で製造された固体電解コンデンサについて検討した。そして、従来の製造方法で製造された固体電解コンデンサの導電性高分子層中に粘度の高い不純物が存在しており、これが固体電解コンデンサの性能、特にESRを低下させる原因となっていることを付きとめた。
そこで、本発明者は、導電性高分子層中の不純物を除去するために、鋭意検討を行ったところ、導電性高分子層から水を除去する工程の後に、不純物を除去する工程を設けることによって、不純物を効率的に除去でき、もって高性能の固体電解コンデンサを製造できることを知見した。
すなわち、本発明は、表面に誘電体被膜が形成された陽極体と、誘電体被膜上に形成された導電性高分子層と、を備える固体電解コンデンサの製造方法において、陽極体の表面に誘電体被膜を形成する工程と、誘電体被膜上で導電性高分子層を構成する高分子の前駆体を重合させることによって、誘電体被膜上に導電性高分子層を形成する工程と、導電性高分子層を溶媒を用いて洗浄する工程と、洗浄後の導電性高分子層を大気圧下で乾燥させて、溶媒を除去する工程と、その後、導電性高分子層を大気圧よりも低い気圧下で減圧乾燥する工程と、を有する固体電解コンデンサの製造方法である。
本発明において、導電性高分子層を、化学重合および電解重合のうち、少なくとも電解重合によって形成することが好ましい。
本発明では、減圧乾燥させる工程において、500Pa以下の気圧下で減圧乾燥するであることが好ましい。
本発明において、溶媒を除去する工程において、前記導電性高分子層を、10分以上大気圧下で乾燥させることが好ましい。
本発明において、ポリピロール骨格を有する化合物を用いて、導電性高分子層を形成することが好ましい。
本発明では、減圧乾燥する工程において、導電性高分子層を105℃以下に加熱しながら減圧乾燥することが好ましい。
上記固体電解コンデンサの製造方法において、陽極体として、弁作用金属粉末からなる焼結体を用いることが好ましい。
なお、本明細書において、大気圧とは、圧力範囲が500hPa以上2000hPa以下の場合を示すものとする。前駆体とは、重合することによって、導電性高分子層を構成することのできるモノマーを示すものとする。
本発明によれば、ESRの低い、高性能な固体電解コンデンサを製造することができる。
本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法の好ましい一例のフローチャートである。 (a)〜(e)は、図1のフローチャートに沿った製造方法を図解する模式的な断面図である。 電解重合用装置の構成を模式的に示す図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。なお、図面における長さ、大きさ、幅などの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法を表していない。
<固体電解コンデンサの製造方法>
以下に、本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法の好ましい一例を説明する。ここでは、焼結体からなる陽極体を有する、固体電解コンデンサの製造方法について、図1および図2を用いて説明する。
図1は、本発明に係る固体電解コンデンサの製造方法の好ましい一例のフローチャートであり、図2の(a)〜(e)は、図1のフローチャートに沿った製造方法を図解する模式的な断面図である。
1. 陽極体の形成(陽極体形成工程)
まず、図1のステップS101において、図2(a)に示す陽極体11を形成する。
具体的には、弁作用金属粉末を準備し、棒形状の陽極リード16の長手方向の一端側を金属粉末に埋め込んだ状態で、当該粉末を所望の形状、たとえば長方形に成形する。そして、この成形体を焼結して、陽極リード16の一端が埋設された多孔質構造の陽極体11を形成する。弁作用金属としては、タンタル、ニオブ、チタン、アルミニウムなどを用いることができる。また、陽極リード16は金属からなるが、弁作用金属を好適に用いることができる。
2. 誘電体被膜の形成(誘電体被膜形成工程)
次に、図1のステップS102において、図2(b)に示すように、陽極体11の表面に誘電体被膜12を形成する。
本工程において、誘電体被膜12は、弁作用金属を化成処理することによって形成される。化成処理の方法としては、陽極体11を、リン酸水溶液または硝酸水溶液などの化成溶液中に浸して電圧を印加して、電解酸化する方法がある。たとえば、弁作用金属としてタンタル(Ta)を用いた場合の誘電体被膜12の組成はTa25となり、弁作用金属としてアルミニウム(Al)を用いた場合の誘電体被膜12の組成はAl2となる。
3. 導電性高分子層の形成(導電性高分子層形成工程)
次に、図1のステップS103において、誘電体被膜12上で前駆体を重合させることによって、図2(c)に示すように、誘電体被膜12上に導電性高分子層13を形成する。
導電性高分子層13は、化学重合によって形成されてもよく、電解重合によって形成されてもよく、これらを組み合わせて形成してもよい。好ましい一例として、以下に、化学重合および電解重合の両方を利用して、導電性高分子層13を形成する方法について説明する。
≪化学重合≫
まず、化学重合によって、誘電体被膜12上に導電性高分子層(A)を形成する。この導電性高分子層(A)は、たとえば、誘電体被膜12が形成された陽極体11を、前駆体、酸化剤およびドーパントを含む溶液に浸漬して、誘電体被膜12上で前駆体を酸化重合させることによって形成することができる。また、陽極体11を、酸化剤を含む溶液、ドーパントを含む溶液および前駆体を含む溶液のそれぞれに浸漬してもよい。また、単量体、酸化剤およびドーパントのうちのいずれか2つの成分を含む溶液と残りの1つを含む溶液とを用いてもよい。2つ以上の溶液を用いて酸化重合を行う場合、各溶液への浸漬の順序は特に制限されるものではない。
上記の方法は、化学重合のうちの液相重合であるが、液相重合の代わりに気相重合によって導電性高分子層(A)を形成してもよい。たとえば、誘電体被膜12が形成された陽極体11を酸化剤およびドーパントを含む溶液に浸漬し、その後陽極体11を前駆体を含むガスに曝露することによって、導電性高分子層(A)を形成することができる。また、酸化剤を含む溶液とドーパントを含む溶液をそれぞれ用いてもよい。なお、各溶液は陽極体11に塗布してもよい。
前駆体としては、脂肪族系化合物、芳香族系化合物、複素環式系化合物およびヘテロ原子含有化合物のうちの少なくとも1種類を用いることができる。なかでも、チオフェンおよびその誘導体、ピロールおよびその誘導体、アニリンおよびその誘導体、ならびにフランおよびその誘導体が好ましく、特に、ピロールおよびその誘導体を好適に用いることができる。これらを用いることにより、ポリチオフェン骨格、ポリピロール骨格、ポリアニリン骨格およびポリフラン骨格からなる導電性高分子層(A)を形成することができる。
酸化剤として、公知の酸化剤を用いることができ、たとえば過酸化水素、過マンガン酸、次亜塩素酸、クロム酸などを挙げることができる。また、ドーパントとして、公知のドーパントを用いることができ、たとえば、アルキルスルホン酸、芳香族スルホン酸、多環芳香族スルホン酸などのスルホン酸化合物の酸または塩、硫酸、硝酸などを挙げることができる。また、酸化剤およびドーパントの代わりに、公知の酸化剤兼ドーパントを用いることができる。
≪電解重合≫
次に、電解重合によって、導電性高分子層(A)上に導電性高分子層(B)を被覆して、導電性高分子層13を形成する。この導電性高分子層(B)は、たとえば、導電性高分子層(A)が形成された陽極体11を前駆体を含む電解液に浸漬し、導電性高分子層(A)に電流を給電して、電解液中の前駆体を導電性高分子層(A)上で重合させることによって、導電性高分子層(A)上に被覆させることができる。
前駆体を含む電解液としては、前駆体およびドーパントを溶媒、たとえば水に添加した溶液を用いることができる。前駆体としては、脂肪族系化合物、芳香族系化合物、複素環式系化合物およびヘテロ原子含有化合物のうちの少なくとも1種類を用いることができる。なかでも、チオフェンおよびその誘導体、ピロールおよびその誘導体、アニリンおよびその誘導体、ならびにフランおよびその誘導体が好ましく、特に、ピロールおよびその誘導体を好適に用いることができる。これらを用いることにより、ポリチオフェン骨格、ポリピロール骨格、ポリアニリン骨格およびポリフラン骨格からなる導電性高分子層(B)を形成することができる。
ドーパントとしては、公知のドーパントを用いることができ、たとえば、アルキルスルホン酸、芳香族スルホン酸、多環芳香族スルホン酸などのスルホン酸化合物の酸または塩、硫酸、硝酸などを挙げることができる。また、他にも、カルボン酸、硫酸エステル、リン酸エステルなどを用いてもよい。なお、本工程で用いられる前駆体およびドーパントは、導電性高分子層(A)を形成する工程で用いた前駆体およびドーパントと同じでもよく、異なっていてもよい。導電性高分子層(A)上に導電性高分子層(B)を被覆させることにより、導電性高分子層(A)および導電性高分子層(B)からなる、導電性高分子層13を形成することができる。
上述の電解液を用いて導電性高分子層13を形成する場合に、たとえば図3の電解重合用装置300を用いることができる。
図3において、電解重合用装置300は、電解槽31と、直流電源32とを有する。直流電源32の正極側には陽極電極片33が接続されており、直流電源32の負極側には、陰極電極片34が接続されている。電解槽31内には、電解液35が満たされ、直流電源32、陽極電極片33、陰極電極片34、および電解液35で1つの電気回路が構成される。以下に、電解重合用装置300を用いて導電性高分子層13を形成する方法について具体的に説明する。
上記電解重合用装置300において、まず、電解槽31内に、前駆体およびドーパントを含む電解液35を満たす。次に、陽極電極片33、陰極電極片34および導電性高分子層(A)が形成された陽極体11を電解液35に浸漬する。このとき、導電性高分子層(A)と陽極電極片33とが接触するように配置する。この接触部分が、導電性高分子層(A)に電流を給電するための給電点Pとして機能する部分となる。
その後、直流電源32をオンにすることにより給電点Pに電流が給電され、給電点P近傍における電解液35の電気分解が開始される。この電気分解に伴って電解液35中の前駆体が導電性高分子層(A)上で重合し、導電性高分子層13が形成される。
以上のように、化学重合によって、導電性高分子層(A)を誘電体被膜12上に形成することにより、容易に電解重合によって導電性高分子層(B)を形成することができる。これにより、導電性高分子層(A)および導電性高分子層(B)からなる導電性高分子層13を形成することができる。誘電体被膜12上に導電性高分子層13を形成することにより、図2(c)に示すコンデンサ素子10が作製される。
4. 導電性高分子層の洗浄(洗浄工程)
次に、図1のステップS104において、導電性高分子層13を溶媒を用いて洗浄する。
洗浄方法としては、たとえば、上記工程で作製されたコンデンサ素子10を溶媒に浸漬して引上げる操作を繰り返す方法がある。また、コンデンサ素子10に溶媒をかけ流す操作を繰り返してもよい。このような操作により、コンデンサ素子10の最外層を構成する導電性高分子層13を洗浄することができ、導電性高分子層13に付着する不要な前駆体、酸化剤などを除去することができる。溶媒としては、水を好適に用いることができる。
5. 導電性高分子層の大気圧下での乾燥(溶媒除去工程)
次に、図1のステップS105において、導電性高分子層13を大気圧下で乾燥させて、溶媒を除去する。
乾燥方法としては、たとえば、コンデンサ素子10を乾燥炉に入れ、大気圧下で送風乾燥する方法がある。本工程により、上述の洗浄工程によって導電性高分子層13に付着した水を除去することができる。乾燥時間は5分以上であることが好ましい。乾燥時間が5分未満の場合、導電性高分子層13中の水の除去が不十分となる。また、製造効率の観点から、乾燥時間は20分以下であることが好ましい。
また、本工程において、導電性高分子層13を加熱してもよい。導電性高分子層13を加熱することにより、より効果的に導電性高分子層13中の水を除去することができる。ただし、加熱温度が200℃を超えると、導電性高分子層13に欠陥が発生する虞があるため、加熱温度は200℃以下であることが好ましい。
6. 導電性高分子層の減圧乾燥(減圧乾燥工程)
次に、図1のステップS106において、導電性高分子層13を大気圧よりも低い気圧下で減圧乾燥させる。
減圧乾燥方法としては、たとえば、コンデンサ素子10を乾燥炉に入れ、大気圧よりも低い気圧下で乾燥する方法がある。本発明者は、導電性高分子層13中に粘度の高い不純物が存在しており、上述の溶媒除去工程の後に本工程を行うことによって、この不純物を除去できることを知見している。不純物の詳しい組成については明らかではないが、粘度が約10Pa・sと非常に高いことから、ある程度重合したものの、高分子となるまで重合できなかった前駆体由来のオリゴマーが含まれていると考えられる。
乾燥時間は10分以上であることが好ましい。導電性高分子層13中の不純物は、導電性高分子層13の内部深く、誘電体被膜12の近傍にまで存在しているため、乾燥時間が10分未満の場合、ESRの低下という効果を確実に得ることができないことがわかっている。これは、導電性高分子層13中の内部深くに、すなわち、誘電体被膜12近傍に存在している不純物が除去されないためと考えられる。また、製造効率の観点から、乾燥時間は60分以下であることが好ましい。
また、本発明者は、鋭意検討を重ねることによって、本工程において、気圧が500Paを超える圧力の場合、上記不純物の除去の効果が低減することを知見している。したがって、減圧乾燥時の気圧は、500Pa以下であることが好ましい。なお、発明者は、導電性高分子層13が真空圧下でも破壊されないことを知見している。また、本工程において、導電性高分子層13を加熱してもよい。導電性高分子層13を加熱することにより、より効果的に導電性高分子層13中の不純物を除去することができる。ただし、加熱温度が200℃を超えると、導電性高分子層13に欠陥が発生する虞があるため、加熱温度は200℃以下であることが好ましい。
導電性高分子層13中の不純物を除去するために、溶媒除去工程および減圧乾燥工程の両方が必要な理由は明確でない。しかしながら、少なくとも、水と不純物との沸点の差、粘度の高い不純物と水との相互作用、さらには導電性高分子層13の非常に緻密な構造と、導電性高分子層13よりも大きな穴を有する陽極体11の多孔質構造とが関係しているものと思われる。
7. 陰極層の形成(陰極層形成工程)
次に、図1のステップS107において、導電性高分子層13上に、陰極層を形成する(図2(d)参照。)。
陰極層は、カーボン層14および銀ペイント層15からなり、いずれも、公知の方法によって形成することができる。陰極引出層としてのカーボン層14は導電性を有していればよく、たとえば、グラファイトを用いて構成することができる。本工程により、図2(e)に示すように、導電性高分子層13上にカーボン層14および銀ペイント層15からなる陰極層が形成される。
8. コンデンサ素子の封止(封止工程)
最後に、図1のステップS108において、陰極層が形成されたコンデンサ素子10に、公知の技術にしたがって、陽極端子17の一端を陽極リード16に溶接し、陰極端子19の一端を導電性の接着層18を介して銀ペイント層15に接続させる。そして、陽極端子17の他端および陰極端子19の他端のみが外部に露出するように、コンデンサ素子10を外装樹脂20にて封止する。そして、外装樹脂20の外部に露出している陽極端子17および陰極端子19を外装樹脂20に沿うように折り曲げた後に、エージング処理する。以上の操作により、図2(e)に示す固体電解コンデンサ100の製造を完了する。なお、陽極端子17および陰極端子19は、たとえば銅または銅合金などの金属で構成することができ、外装樹脂20の素材としては、たとえばエポキシ樹脂を用いることができる。
以上に詳述した実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法によれば、導電性高分子層13は水で洗浄された後、大気圧下で乾燥され、その後大気圧よりも低い気圧下で減圧乾燥される。これにより、導電性高分子層13中の水はもちろん、導電性高分子層13中の不純物を効率的に除去することができる。したがって、固体電解コンデンサ100のESRの低下させることができ、もって高性能の固体電解コンデンサを提供することができる。
また、本発明に係る製造方法は、上記の実施形態で製造される固体電解コンデンサに限定されず、公知の形状の固体電解コンデンサを製造する場合に応用することができる。公知の形状としては具体的に、巻回型の固体電解コンデンサ、弁金属の板を用いた積層型の固体電解コンデンサなどがある。
ただし、焼結体からなる陽極体11は極めて緻密な多孔質体であって複雑な構造を有するため、焼結体からなる陽極体11の上に形成される導電性高分子層13の構造もまた、複雑になる。さらに、導電性高分子層13を複雑な構造上に形成することにより、前駆体がポリマーとなれずにオリゴマーとして残存してしまう確率が高い。すなわち、焼結体からなる陽極体11上に形成された導電性高分子層13中には、他の陽極体を用いた場合よりも、不純物が多く存在し、他の陽極体よりも不純物の除去が困難となる。このため、本発明は、焼結体からなる陽極体11に導電性高分子層13を形成する場合に、より好適に用いることができる。
また、化学重合のみによって形成された導電性高分子層中に不純物が残存した場合にも、本発明を好適に用いることができる。ただし、電解重合によって形成される導電性高分子層のほうが、化学重合によって形成される導電性高分子層よりも構造が緻密であるため、不純物が多く存在し、また、その除去も困難となると考えられる。このため、本発明は、電解重合によって導電性高分子層を形成する場合に、より好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各実施例および各比較例において、固体電解コンデンサを100個ずつ製造した。
<実施例1>
1. 陽極体の形成(陽極体形成工程)
まず、タンタル粉末を準備し、ワイヤー状の陽極リード16の一端側をタンタル粉末に埋め込んた状態で、タンタル粉末を縦×横×高さが1.5mm×2.8mm×2.5mmの直方体に成形した。そして、これを焼結することにより、陽極リード16の一端が埋め込まれた陽極体11を形成した。陽極リード16には、タンタルからなるワイヤーを用いた。このときの陽極体11の大きさは、縦×横×高さが1.4mm×2.7mm×2.4mmであった。
2. 誘電体被膜の形成(誘電体被膜形成工程)
次に、陽極体11を0.05%のリン酸水溶液に浸漬し、陽極体11に30Vの電圧を印加して電解酸化することにより、陽極体の表面にTa23からなる誘電体被膜12を形成した。
3. 導電性高分子層の形成(導電性高分子層形成工程)
次に、以下の化学重合および電解重合を行って、誘電体被膜12上に導電性高分子層13を形成した。
≪化学重合≫
まず、ピロールを3mol/Lの濃度で含むエタノール溶液と、過硫酸アンモニウムおよびパラトルエンスルホン酸を含有する水溶液を準備した。そして、25℃に調整した上記エタノール溶液中に、誘電体被膜12が形成された陽極体11を5分間浸漬して、誘電体被膜12に前駆体としてのピロールを付着させた。その後、陽極体11をエタノール溶液から引き上げて、引き続き、25℃に設定された上記水溶液に5分間浸漬した。そして、陽極体11を水溶液から引き上げて、100℃で10分間以上放置して乾燥させた。以上の操作により、導電性高分子層(A)を誘電体被膜12上に形成した。
≪電解重合≫
図3に示す電解重合用装置300を用い、まず、電解液として、ピロールおよびアルキルナフタレンスルホン酸を含む水溶液を準備し、該水溶液を電解重合用装置300の電解槽31内に満たした。導電性高分子層(A)が形成された陽極体11を陽極電極片33に接触させて給電点Pを構成させ、直流電源32をオンにして、0.5mAの電流を3時間通電した。この操作により、導電性高分子層(A)上に導電性高分子層(B)が形成され、導電性高分子層13を有するコンデンサ素子10が作製された。このときの導電性高分子層13の厚さは0.05mmであった。
4. 導電性高分子層の洗浄(洗浄工程)
そして、作製したコンデンサ素子10に水をかけ流すことにより、導電性高分子層13を洗浄した。このとき、導電性高分子層13の全面に均一に水がかかるように洗浄を行った。
5. 導電性高分子層の大気圧下での乾燥(溶媒除去工程)
次に、内部の気圧が1013hPaの乾燥器内にコンデンサ素子10を配置した。そして、乾燥器内の温度を105℃に調製して、コンデンサ素子10を10分間静置することにより、導電性高分子層13を大気圧乾燥した。
6. 導電性高分子層の減圧乾燥(減圧乾燥工程)
次に、乾燥器内の気圧を200Pa以下とし、かつ乾燥器内の温度を105℃に制御して、コンデンサ素子10を20分間静置することにより、導電性高分子層13を減圧乾燥した。
7. 陰極層の形成(陰極層形成工程)
次に、コンデンサ素子10に、グラファイト粒子懸濁液を塗布して大気中で乾燥させることによりカーボン層14を形成し、さらに、公知の技術にしたがって、銀ペイント層15を形成した。
8. コンデンサ素子の封止(封止工程)
陽極リード16に銅からなる陽極端子17を溶接し、銀ペイント層15に銀接着剤を塗布して接着層18を形成し、接着層18に銅からなる陰極端子19の一端を接着させた。さらに、陽極端子17および陰極端子19の一部が露出するように、コンデンサ素子10を外装樹脂20で封止した。露出する陽極端子17および陰極端子19を外装樹脂20に沿うように折り曲げた後、エージング処理することにより、固体電解コンデンサ100を完成させた。固体電解コンデンサ100の定格電圧は10V、定格容量は330μFであり、縦×横×高さが7.3mm×4.3mm×3.8mmであった。
<実施例2>
乾燥器内を加熱せずに減圧乾燥工程を行った以外は、実施例1と同様の方法により、固体電解コンデンサ100を製造した。なお、このときの乾燥器内の温度は約30℃であった。
<比較例1>
減圧乾燥工程を行なわなかった以外は、実施例1と同様の方法により、固体電解コンデンサ100を製造した。
<比較例2>
乾燥器内を200℃に過熱して減圧乾燥工程を行った以外は、実施例1と同様の方法により、固体電解コンデンサ100を製造した。
<比較例3>
溶媒除去工程を行わなず、減圧乾燥工程を20分間行った以外は、実施例1同様の方法により、固体電解コンデンサを製造した。
<性能評価>
≪ESRの測定≫
各実施例1、2および各比較例1〜3の固体電解コンデンサについて、4端子測定用のLCRメータを用いて周波数100kHzにおける各固体電解コンデンサのESR(mΩ)を測定した。各実施例1、2および各比較例1〜3における平均値を算出した。この結果を表1の「ESR(mΩ)」に示した。
Figure 0005496708
表1を参照して、実施例1および比較例1を比較すると、実施例1において、ESRが比較例1よりも小さかった。この結果から、導電性高分子層13を水で洗浄後、大気圧下で乾燥した場合よりも、導電性高分子層13を水で洗浄後、大気圧下で乾燥し、さらに減圧乾燥した場合のほうが、製造される固体電解コンデンサの性能が高いことが分かった。
また、実施例1および実施例2を比較すると、ESRはほぼ同じ結果であった。一方、実施例2と比較例2と比較すると、減圧乾燥時の加熱温度を200℃にすると、減圧乾燥時に加熱せずに製造した固体電解コンデンサに比べてESRが上昇することが分かった。
これは、導電性高分子層13を構成するポリピロールの一部が加熱によって破壊されたためと考えられる。これらの結果から、導電性高分子層13が破壊されない温度であれば、減圧乾燥工程において、導電性高分子層を加熱しても問題がないことがわかった。減圧乾燥工程においてコンデンサ素子10を加熱することによって、不純物の除去効率が高まるため、固体電解コンデンサの製造時間を短縮することができる。
また、実施例1および比較例3を比較すると、洗浄後のコンデンサ素子10を大気圧下で乾燥することなく直接減圧乾燥した場合よりも、大気圧下で乾燥後に減圧乾燥した場合のほうが、製造される固体電解コンデンサの性能が高いことがわかった。
比較例3のように、大気圧下で乾燥せずに減圧乾燥のみを行っても、固体電解コンデンサの性能を顕著に向上させることはできなかった理由は明確ではない。しかしながら、粘度の高い不純物と水との相互作用、さらには導電性高分子層13の非常に緻密な構造と、導電性高分子層13よりも大きな穴を有する陽極体11の多孔質構造とが関係しているものと思われる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、固体電解コンデンサとしての特性、特にESRを低下させるために広く利用することができる。
10 コンデンサ素子、11 陽極体、12 誘電体被膜、13 導電性高分子層、14 カーボン層、15 銀ペイント層、16 陽極リード、17 陽極端子、18 接着層、19 陰極端子、20 外層樹脂、31 電解槽、32 直列電源、33 陽極電極片、34 陰極電極片、35 電解液、36 制御装置、100 固体電解コンデンサ、300 電解重合用装置。

Claims (7)

  1. 表面に誘電体皮膜が形成された陽極体と、前記誘電体皮膜上に形成された導電性高分子層と、を備える固体電解コンデンサの製造方法において、
    前記陽極体の表面に誘電体皮膜を形成する工程と
    記誘電体皮膜上に導電性高分子層を形成する工程と、
    前記導電性高分子層を溶媒を用いて洗浄する工程と、
    洗浄後の前記導電性高分子層を大気圧下で乾燥させて、溶媒を除去する工程と、
    その後、前記導電性高分子層を大気圧よりも低い気圧下で減圧乾燥する工程と、を有し、
    前記減圧乾燥する工程において、前記導電性高分子層を105℃以下に加熱しながら減圧乾燥する、固体電解コンデンサの製造方法。
  2. 前記導電性高分子層を、前記誘電体皮膜上で導電性高分子層を構成する高分子の前駆体を重合させることによって形成する、請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  3. 前記導電性高分子層を、化学重合および電解重合のうち、少なくとも前記電解重合によって形成する、請求項1または2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  4. 前記減圧乾燥する工程において、500Pa以下の気圧下で減圧乾燥する、請求項1から3のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  5. 前記溶媒を除去する工程において、前記導電性高分子層を、10分以上大気圧下で乾燥させる、請求項1からのいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  6. ポリピロール骨格を有する化合物を用いて、前記導電性高分子層を形成する、請求項1からのいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
  7. 前記陽極体として、弁作用金属の粉末からなる焼結体を用いる、請求項1から6のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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