JP6128463B2 - 放射線画像処理装置および方法並びにプログラム - Google Patents

放射線画像処理装置および方法並びにプログラム Download PDF

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Description

本発明は、放射線画像に対して散乱線除去処理を含む画像処理を施す放射線画像処理装置および方法並びに放射線画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
従来、被写体を透過した放射線により被写体の放射線画像を撮影する際、とくに被写体の厚さが大きいと、被写体内において放射線が散乱し、この散乱放射線(以下散乱線とする)により、取得される放射線画像のコントラストが低下するという問題がある。このため、放射線画像の撮影時には、放射線を検出して放射線画像を取得するための放射線検出器に散乱線が照射されないように、被写体と放射線検出器との間に散乱線除去グリッド(以下単にグリッドとする)を配置して撮影を行うことがある。グリッドを用いて撮影を行うと被写体により散乱された放射線が放射線検出器に照射されにくくなるため、放射線画像のコントラストを向上させることができる。
一方、グリッドを用いた撮影を行うと、被写体像とともにグリッドに対応した細かな縞模様(モアレ)が放射線画像に含まれてしまうため、画像が見難いものとなってしまう。このため、グリッドに起因する縞模様を放射線画像から除去する処理が知られている。
グリッドは、放射線を透過しない鉛等と、放射線を透過しやすいアルミニウムやファイバー等のインタースペース素材とが、例えば4.0本/mm程度の細かな格子密度で交互に配置されて構成されていることから、重量があるものとなっている。このため、撮影装置を搭載した回診車を用いて病室等において行うポータブル撮影では、寝ている患者と放射線検出器との間にグリッドを配置する必要があり、その結果、配置の作業の負担、および撮影時の患者の負担が大きいものとなる。また、収束型のグリッドの場合、放射線の斜入により放射線画像に濃度ムラが発生するおそれがある。また、放射線画像には被写体像とともにグリッドのピッチに対応した細かな縞模様(モアレ)が記録されてしまい、放射線画像が見難いものとなってしまうおそれもある。
このため、グリッドを使用することなく放射線画像の撮影を行い、グリッドによる散乱線の除去による画質改善の効果を、撮影条件に基づいて、画像処理により放射線画像に対して付与する処理が提案されている(特許文献1,2および非特許文献1参照)。特許文献1および非特許文献1の手法は、放射線画像を複数の周波数成分に周波数分解し、散乱線の成分と見なせる低周波成分に対して、コントラストまたはラチチュードを制御する散乱線除去処理を行い、処理後の周波数成分を合成することにより、散乱線の成分が除去された放射線画像を取得するものである。なお、上記特許文献1に記載された手法は、低周波成分の階層および低周波成分の画素値に応じたゲインを低周波成分に乗算することにより、散乱線除去処理を行っている。ここで、ゲインは1未満の値であり、低周波帯域ほど、また明るい画素値ほど小さな値となっている。また、非特許文献1に記載された手法では、低周波成分をその画素値に応じて変換するテーブルを用いて、低周波帯域ほど等比数列的に大きく抑制されるようにしている。
特許文献1,2および非特許文献1の手法によれば、撮影時にグリッドが不要となるため、撮影時の患者の負担を軽減することができ、かつ濃度ムラおよびモアレによる画質の低下を防止することができる。
一方、被写体を透過した放射線により被写体の放射線画像を撮影する際、被写体の厚さが大きいほど被写体内部における放射線の散乱の発生、放射線透過率の低下等の影響が大きくなり、取得される放射線画像の画質が変動することが知られている。このため、撮影条件と放射線画像の信号値、放射線画像の信号値のヒストグラム幅、放射線画像における被写体の所定方向の長さ等種々の情報によって大まかに被写体の厚さを推定し、推定した被写体の厚さに応じて、撮影された放射線画像に対する散乱線除去処理等の画像処理条件や、放射線画像の撮影に適用される撮影条件を変更する技術が提案されている。
例えば特許文献3には、あらかじめ既知の厚みを有する模擬被写体を既知の撮影条件で放射線撮影して得られた画像の画素値を測定することにより、体厚と画素値の関係を対応付けた対応付けテーブルを用意し、対応付けテーブルに基づいて、放射線画像の画素値に応じて概略的な体厚分布を推定し、放射線画像の体厚分布に応じた放射線画像の散乱成分を推定して、放射線画像から散乱成分を減算した処理後画像を取得する手法が開示されている。
また、非特許文献2には、人体の体厚分布に応じて放射線画像の散乱成分を推定して除去する手法が開示されている。非特許文献2の画像処理方法によれば、放射線画像の画素値から推定した体厚分布に基づいて、入力された放射線画像に所定の関数を適用することにより放射線画像に含まれる散乱線の像を推定した推定散乱線画像を生成し、放射線画像から推定散乱線画像を減算することにより、入力された放射線画像から一次線画像を推定した推定一次線画像を生成する。さらに、生成した推定一次線画像に所定の関数を適用することによりさらなる推定散乱線画像を生成し、放射線画像からさらなる推定散乱線画像を減算してさらなる推定一次線画像を生成する処理を所定の収束条件下で収束するまで繰り返して、収束した推定散乱線画像を算出し、この推定散乱線画像を放射線画像から減算することにより最終的に散乱成分を除去した処理後画像を取得することができる。また、非特許文献1には、放射線画像に含まれる散乱線の像を推定するための所定の関数を体厚に応じて調整する方法が開示されている。
一方、一般的な放射線画像撮影システムにおいては、撮影する被写体である患者の撮影手技(例えば撮影部位、撮影方向(正面や側面)、読影目的、撮影条件線源のターゲットおよびフィルタの種類等)をシステムに入力すると、撮影手技に応じたデフォルトの撮影条件(管電圧、管電流時間積であるmAs値(すなわち管電流×曝射時間)、線源距離(SID)等)が線源に設定され、デフォルトの撮影条件に問題がなければ、その撮影条件を用いて撮影を行うことにより、所望の放射線画像を取得することができる。このため、システムには、各種撮影手技に対するデフォルトの撮影条件が対応付けられてテーブルとして保存されている。撮影時には指定された撮影手技に対応した撮影条件が設定されて撮影が行われ、さらに撮影手技は放射線画像とともに保存されるため、撮影後に放射線画像に対して画像処理等を施す場合には、放射線画像とともに保存された撮影手技の情報を参照することにより、放射線画像を取得した際の撮影条件を取得することができる。
米国特許第8064676号明細書 特開平06−014911号公報 特開平02−244881号公報
C Fivez et al, Multi-resolution contrast amplification in digital radiography with compensation for scattered radiation, 1996 IEEE, pp339-342. Trotter, 他4名, "Thickness-dependent Scatter Correction Algorithm for Digital Mammography", Proc. SPIE Vol.4682, 2002年5月, p.469-478
一方、放射線画像から散乱線の影響を除去するために、放射線画像の撮影時に散乱線を除去するために使用が想定される仮想的なグリッドの特性である仮想グリッド特性を取得し、仮想グリッド特性に基づいて、放射線画像の散乱線除去処理を行うことも可能である。このような散乱線除去処理を行う場合、放射線画像の取得時の撮影条件に基づいて仮想グリッド特性を取得し、散乱線除去処理を行うことが可能である。例えば、撮影時に使用した撮影手技に応じた撮影条件を用いることにより、撮影部位、さらにはその撮影部位に対して使用が想定される仮想グリッドの特性を取得し、仮想グリッドの特性および撮影時の撮影条件に基づいて散乱線除去処理を行うことができる。
しかしながら、被写体の体型に応じて、撮影手技に応じて設定された撮影条件を修正する場合がある。例えば、太った被写体については管電圧および/またはmAs値を大きくし、痩せた被写体については管電圧および/またはmAs値を小さくするように撮影条件を修正する場合がある。ここで、実際に使用した撮影条件は、撮影後に行われる画像処理の段階において取得されないことが多い。とくに、撮影装置と画像処理装置とでメーカーが異なったり、回診車を用いて病室でポータブル撮影を行ったような場合には、撮影条件が後段で取得できない場合が多い。
このような場合、上述した散乱線除去処理において使用される撮影条件は、撮影に使用した実際の撮影条件とは異なるものとなってしまうため、精度良く散乱成分を除去することができず、その結果、所望とする画質の放射線画像を得ることができなくなってしまう。この場合、実際の撮影条件をメモ等により残しておき、散乱線除去処理時に実際の撮影条件をシステムに入力することが考えられる。しかしながら、そのような作業は操作者にとって煩雑であり、またメモを紛失するおそれもある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、放射線画像に含まれる散乱線を精度良く除去して、より高画質の放射線画像を取得することができるようにすることを目的とする。
本発明による放射線画像処理装置は、被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像を取得する画像取得手段と、
少なくとも撮影条件を用いて、撮影時に被写体を透過した放射線に含まれる散乱成分を放射線画像から除去する処理を行う散乱線除去処理手段と、
散乱線除去処理が行われた放射線画像に対する修正指示に応じて、散乱成分の除去の度合いを修正するための修正情報を取得し、修正情報に基づいて撮影条件を変更する修正情報取得手段とを備え、
散乱線除去手段は、変更された撮影条件に基づいて、放射線画像から散乱成分を除去する処理を行う手段であることを特徴とするものである。
ここで、放射線画像の撮影時には、撮影手技に応じて撮影条件が設定されている。「撮影条件」とは、例えばこのような手技に応じてあらかじめ設定された撮影条件を意味する。
なお、本発明による放射線画像処理装置においては、修正情報を、被写体の体型に関する情報としてもよい。
「体型に関する情報」とは、被写体の体型を表す情報であり、例えば太め、細め等の情報を用いることができる。
また、本発明による放射線画像処理装置においては、放射線画像および撮影条件に基づいて、被写体の体厚分布を推定する体厚分布推定手段をさらに備えるものとし、
修正情報取得手段を、修正指示に応じて、体厚分布の情報を修正情報として取得し、修正情報に基づいて撮影条件を変更する手段とし、
体厚分布推定手段を、変更された撮影条件に基づいて、体厚分布を推定する手段としてもよい。
この場合、散乱線除去処理手段を、変更された撮影条件および体厚分布に基づいて、散乱成分を除去する処理を行う手段としてもよい。
また、本発明による放射線画像処理装置においては、修正情報取得手段を、体厚分布に基づいて、被写体の体型に関する情報を取得し、体型に関する情報を表示して修正情報の入力を受け付けることにより修正情報を取得する手段としてもよい。
この場合、修正情報取得手段を、放射線画像から、インプラントの領域を検出し、放射線画像におけるインプラント領域以外の領域における体厚分布に基づいて体型に関する情報を取得する手段としてもよい。
「インプラント領域」とは、被写体内に金属、シリコン等のインプラントに対応する放射線画像内の領域である。インプラント領域は、被写体の組織と比較して高輝度となるため、しきい値処理により放射線画像からインプラント領域を抽出することが可能である。
本発明による放射線画像処理方法は、被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像を取得し、
少なくとも撮影条件を用いて、撮影時に被写体を透過した放射線に含まれる散乱成分を放射線画像から除去する処理を行い、
散乱線除去処理が行われた放射線画像に対する修正指示に応じて、散乱成分の除去の度合いを修正するための修正情報を取得し、修正情報に基づいて撮影条件を変更し、
変更された撮影条件に基づいて、放射線画像から散乱成分を除去する処理を行うことを特徴とするものである。
なお、本発明による放射線画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
本発明によれば、少なくとも撮影条件を用いて、放射線画像に含まれる、撮影時に被写体を透過した放射線に含まれる散乱成分が除去され、散乱線除去処理が行われた放射線画像に対する修正指示に応じて、修正情報が取得される。そして、修正情報に基づいて撮影条件が変更され、変更された撮影条件に基づいて、放射線画像から散乱成分が除去される。このため、修正情報に応じてより適切に散乱成分を除去することができ、その結果、より高画質の放射線画像を取得することができる。
また、被写体の体厚分布を推定し、修正指示に応じて体厚分布の情報を修正情報として取得し、修正情報に基づいて撮影条件を変更し、変更された撮影条件に基づいて体厚分布を推定することにより、より適切に体厚分布を推定することができる。
この場合、変更された撮影条件および体厚分布に基づいて、散乱成分を除去する処理を行うことにより、推定された体厚分布に応じてより適切に散乱成分を除去することができるため、より高画質の放射線画像を取得することができる。
また、体厚分布に基づいて、被写体の体型に関する情報を取得し、これを表示して修正情報の入力を受け付けることにより、修正情報の入力が容易となるため、操作者の負担を軽減できる。
この場合、放射線画像におけるインプラント領域以外の領域における体厚分布に基づいて、体型に関する情報を取得することにより、より正確に体型に関する情報を取得することができる。
本発明の第1の実施形態による放射線画像処理装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図 第1の実施形態における放射線画像撮影システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図 各種撮影手技と撮影条件とを対応付けたテーブルを示す図 胸部の放射線画像における散乱線含有率分布を示す図 図4に示す散乱線含有率分布を示す場合において算出した変換係数を示す図 確認画面の例を示す図 各種修正情報と撮影条件とを対応付けたテーブルを示す図 第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャート 第2の実施形態における放射線画像撮影システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図 体厚推定部の構成を示す概略ブロック図 第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャート 体厚推定処理のフローチャート 体厚分布の対応付けテーブルの例を示す図 推定画像の生成方法の例を説明するための図 推定画像の生成方法の他の例を説明するための図 確認画面の他の例を示す図
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態による放射線画像処理装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、本実施形態による放射線画像撮影システム1は、移動型の撮影装置を備えたシステムであり、移動台車11の上に放射線画像撮影システム1の制御を行う制御装置12が搭載されている。制御装置12はコンピュータ2と、コンピュータ2に接続された表示部3および入力部4とを備えている。なお、図1においては、コンピュータ2、表示部3および入力部4は、説明のために制御装置12の外部に接続されているように示されているが、制御装置12に搭載されてなるものである。また、放射線画像撮影システム1は、病院内に設置された中央コンソールPC5とコンピュータ2によりネットワークを介して接続されている。
移動台車11には、支柱13が移動台車11に対して垂直に旋回可能に取り付けられている。支柱13には支柱13に沿って上下方向および支柱13の長さ方向に対して垂直方向へ移動可能な線源支持アーム14が設けられている。線源支持アーム14の回転、上下方向および支柱13に対する垂直方向の移動は、支柱13に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。一方、線源支持アーム14の先端には放射線照射部15が取り付けられている。放射線照射部15内には放射線源16と、放射線源コントローラ32とが収納されている。また、放射線照射部15の下部には、放射線の照射範囲を設定するためのコリメータ17が取り付けられている。
なお、コリメータ17には照射野ランプ(不図示)が設けられており、撮影準備のためのポジショニングを行う際には照射野ランプを点灯することにより、被写体に対する放射線の照射範囲を設定することが可能となっている。
放射線源コントローラ32は、放射線源16から放射線を照射するタイミングと、放射線源16における撮影条件(管電流およびmAs値等)を制御するものである。
このような移動式の放射線画像撮影システム1は、通常は病院内の所定場所に留め置かれる。そして、ベッド21に寝ている被写体Mについて、放射線画像の撮影が必要となったときに、放射線画像撮影システム1は病室内へ移動され、ベッド21上の被写体Mの放射線撮影に供される。
放射線画像撮影システム1には、放射線検出器20が固定支持されておらず、放射線検出器20は撮影者によって台車に搭載され、もしくは単体で持ち運ばれ、病室へ搬送される。そして、放射線検出器20は、放射線画像の撮影時に、ベッドに横たわった被写体Mとベッド21との間に設置される。そして、放射線検出器20は、移動台車11の移動によって被写体Mの撮影部位へ位置決めされた放射線照射部15から発せられ、被写体Mを透過した放射線を検出する。
なお、図1においては、ベッド21上に放射線検出器20を載置し、その上に被写体Mを横臥させたが、放射線検出器20はベッド21に内蔵されていてもよい。
放射線検出器20は、放射線画像の記録と読み出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフさせることによって放射線画像信号が読み出される、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
なお、本実施形態においては、被写体Mと放射線検出器20との間には、被写体Mを透過した放射線のうち、被写体Mにより散乱した散乱線を除去するための散乱線除去グリッドは配置されない。
放射線検出器20は、ケーブル26を介してあるいは無線により制御装置12と接続される。制御装置12には、放射線検出器20からの電荷信号の読み出しを制御する検出器コントローラ33が備えられている。また、制御装置12の内部には、放射線検出器20から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部等が設けられた回路基板等も設置されている。
このような放射線画像撮影システム1を使用するに際し、放射線画像撮影システム1には、撮影依頼が入力される。撮影依頼は、放射線画像の撮影をする患者名および撮影手技(例えば胸部正面撮影、胸部側面撮影等)の情報を含む。撮影依頼は、病院に設置された中央コンソールPC5、あるいは病院の放射線科部門内における診療予約および診断記録等の情報管理を行う放射線情報システム(以下、「RIS(Radiology Information System)」)から、ネットワーク経由で送信される。操作者は、撮影依頼に基づいて放射線画像処理システム1を患者のいる病室へ移動し、撮影手技に基づいて放射線検出器20を設置して、放射線画像の撮影を行う。
コンピュータ2は、中央処理装置(CPU)、半導体メモリ、通信インターフェースおよびハードディスクやSSD等のストレージデバイス等を備えており、これらのハードウェアによって、図2に示すような制御部41、特性取得部42、散乱線情報取得部43、散乱線除去部44、修正情報取得部45および記憶部46が構成されている。なお、特性取得部42、散乱線情報取得部43、散乱線除去部44、修正情報取得部45および記憶部46が、本発明の放射線画像処理装置40を構成する。
制御部41は、各種のコントローラ31〜33に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものである。
特性取得部42は、放射線画像の撮影時に、散乱線を除去するために使用が想定される、仮想的なグリッドの特性である仮想グリッド特性を取得する。
散乱線情報取得部43は、放射線画像に含まれる放射線の散乱成分を表す散乱成分情報を取得する。
散乱線除去部44は、特性取得部42が取得した仮想グリッド特性および散乱線情報取得部43が取得した散乱成分情報に基づいて、放射線検出器20により取得された放射線画像の散乱線除去処理を行う。
修正情報取得部45は、散乱成分の除去の程度を修正するための修正情報を取得し、取得した修正情報に基づいて、後述するように撮影条件を変更する。
記憶部46は、各種撮影手技に対するデフォルトの撮影条件を対応付けたテーブル等の各種情報を記憶する。
なお、表示部3は、CRT、液晶ディスプレイ等からなり、撮影により取得された放射線画像および後述する散乱線除去処理に必要な各種入力の補助を行う。入力部4は、キーボード、マウス、タッチパネル等からなる。
本実施形態においては、放射線画像処理装置40は、グリッドを使用することなく撮影を行うことにより取得された放射線画像に対して、実際にグリッドを使用して撮影を行った場合と同様の散乱線を除去する効果を付与するように、放射線画像に対して散乱線除去処理を施すものであるが、上記特許文献1,2および非特許文献1に記載された手法とは異なり、仮想グリッド特性に基づいて散乱線除去処理を行うものである。このため、特性取得部42は仮想グリッド特性を取得する。本実施形態においては、仮想グリッド特性は、仮想グリッドについての散乱線透過率Ts、および被写体Mを透過して直接放射線検出器20に照射される一次線の透過率(一次線透過率)Tpとする。なお、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは0〜1の間の値をとる。
特性取得部42は、入力部4から散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpの値の入力を直接受け付けることにより仮想グリッド特性を取得してもよいが、本実施形態においては、撮影条件に基づいて仮想グリッド特性、すなわち散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを取得する。
撮影条件は、撮影時の撮影距離(SID)、管電圧、mAs値(管電流時間積)、線源のターゲットおよびフィルタの材質、並びに撮影に使用される放射線検出器の種類等のうちの少なくとも1つを含む。ここで、放射線画像の撮影時には、撮影手技に応じて撮影条件が定められており、さらに、撮影条件に応じて使用するグリッドの種類が定められている。また、グリッドは、グリッド比、グリッド密度、収束型か平行型か、収束型の場合の集束距離、インタースペース素材(アルミニウム、ファイバー、ベークライト等)等に応じて種類が異なり、グリッドの種類に応じて、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは異なるものとなる。このため、本実施形態においては、各種撮影手技と撮影条件とを対応付けたテーブル、および各種撮影条件と仮想グリッド特性とを対応付けたテーブルが記憶部46に記憶されている。図3は各種撮影手技と撮影条件とを対応付けたテーブルを示す図である。図3に示すようにテーブルLUT1は、胸部正面、胸部側面等の各種撮影手技と撮影条件(管電圧およびmAs値)とが対応付けられている。
特性取得部42は、記憶部46に記憶された各種撮影手技と撮影条件とを対応付けたテーブルLUT1を参照して、撮影手技から撮影条件を取得し、各種撮影条件と仮想グリッド特性とを対応付けたテーブルを参照して、撮影条件から仮想グリッド特性を取得する。
また、本実施形態においては,散乱線除去処理は、後述するように放射線画像を周波数分解することにより行われる。本実施形態においては、仮想グリッド特性は、周波数分解による得られる放射線画像の複数の周波数帯域のそれぞれについて取得される。このため、各種撮影条件と仮想グリッド特性とを対応付けたテーブルにおける仮想グリッド特性は、複数の周波数帯域のそれぞれに対応付けられたものとなっている。
また、本実施形態において放射線画像処理装置40は、仮想グリッド特性のみならず、散乱成分情報にも基づいて散乱線除去処理を行う。このため、散乱線情報取得部43は散乱成分情報を取得する。本実施形態においては、散乱成分情報は、例えば被写体Mが胸部であれば、縦隔が存在する放射線画像の中央部分ほど散乱線が多く、肺野が存在する周辺部ほど散乱線が散乱線が少ないという、放射線画像における散乱線含有率分布とする。
散乱線情報取得部43は、撮影により取得された放射線画像を解析することにより、散乱成分情報すなわち散乱線含有率分布を取得する。放射線画像の解析は、放射線画像の撮影時における照射野情報、被写体情報および撮影条件に基づいて行う。
照射野情報とは、照射野絞りを用いて撮影を行った場合における、放射線画像に含まれる照射野の位置および大きさに関する照射野分布を表す情報である。被写体情報とは、上述した胸部、腹部および頭部等の被写体の種類に加えて、被写体の放射線画像上での位置、被写体の組成の分布、被写体の大きさおよび被写体の厚さ等に関する情報である。撮影条件とは、管電圧、mAs値、撮影距離(放射線源から被写体までの距離と被写体から放射線検出器までの距離との合計)に加えて、エアギャップ量(被写体から放射線検出器までの距離)、および放射線検出器の特性等に関する情報を含む。これらの照射野情報、被写体情報および撮影条件は、放射線画像に含まれる散乱線の分布を決める要因となっている。例えば、散乱線の大小は照射野の大きさにより左右され、被写体の厚さが大きいほど散乱線は多くなり、被写体と放射線検出器との間に空気が存在すると散乱線が減少する。したがって、これらの情報を用いることにより、より正確に散乱線含有率分布を取得することができる。
散乱線情報取得部43は、撮影により取得した放射線画像内の被写体厚の分布T(x,y)から、下記の式(1)、(2)にしたがって一次線像および散乱線像を算出し、算出した一次線像および散乱線像から式(3)に基づいて、散乱線含有率分布S(x,y)を算出する。なお、散乱線含有率分布S(x,y)は0〜1の間の値をとる。
Icp(x,y) = Io(x,y)×exp(-μ×T(x,y)) …(1)
Ics(x,y) = Io(x,y)*Sσ(T(x,y)) …(2)
S(x,y) = Ics(x,y)/(Ics(x,y)+Icp(x,y)) …(3)
ここで、(x,y)は放射線画像の画素位置の座標、Icp(x,y)は画素位置(x,y)における一次線像、Ics(x,y)は画素位置(x,y)における散乱線像、Io(x,y)は画素位置(x,y)における被写体表面への入射線量、μは被写体の線減弱係数、Sσ(T(x,y))は画素位置(x,y)における被写体厚に応じた散乱の特性を表す畳みこみカーネルである。式(1)は公知の指数減弱則に基づく式であり、式(2)は「J M Boon et al, An analytical model of the scattered radiation distribution in diagnostic radiolog, Med. Phys. 15(5), Sep/Oct 1988」(参考文献1)に記載された手法に基づく式である。なお、被写体表面への入射線量Io(x,y)は、どのような値を定義してもS(x,y)を算出する際に除算によってキャンセルされるため、例えば値を1とする等、任意の値とすればよい。
また、被写体厚の分布T(x,y)は、放射線画像における輝度分布が被写体の厚さの分布と略一致するものと仮定し、放射線画像の画素値を線減弱係数値により厚さに変換することにより算出すればよい。これに代えて、センサ等を用いて被写体の厚さを計測してもよく、立方体あるいは楕円柱等のモデルで近似してもよい。
ここで、式(2)における*は畳みこみ演算を表す演算子である。カーネルの性質は、被写体の厚さの他に、照射野の分布、被写体の組成の分布、および撮影条件(すなわち撮影時の管電圧、mAs値撮影距離、エアギャップ量、および放射線検出器の特性等)によって変化する。参考文献1に記載された手法によれば散乱線は一次線に対する位置拡張関数(point spread function、式(2)におけるSσ(T(x,y)))の畳みこみにより近似することができる。なお、Sσ(T(x,y))は、照射野情報、被写体情報および撮影条件等に応じて実験的に求めることができる。
本実施形態においては、撮影時の照射野情報、被写体情報および撮影条件に基づいてSσ(T(x,y))を算出してもよいが、各種照射野情報、各種被写体情報および各種撮影条件とSσ(T(x,y))とを対応付けたテーブルを記憶部46に記憶しておき、撮影時の照射野情報、被写体情報および撮影条件に基づいて、このテーブルを参照してSσ(T(x,y))を求める。なお、Sσ(T(x,y))をT(x,y)にて近似するようにしてもよい。
散乱線除去部44は、仮想グリッド特性および散乱成分情報に基づいて、放射線画像における散乱線と見なせる周波数帯域の周波数成分を低減させることにより、散乱線除去処理を行う。このため、散乱線除去部44は、放射線画像を周波数分解して複数の周波数帯域毎の周波数成分を取得し、少なくとも1つの周波数成分のゲインを低減する処理を行い、処理済みの周波数成分およびこれ以外の周波数成分を合成して、散乱線除去処理済みの放射線画像を取得する。なお、周波数分解の手法としては、放射線画像を多重解像度変換する手法の他、ウェーブレット変換、フーリエ変換等、公知の任意の手法を用いることができる。
散乱線除去部44は、仮想グリッド特性である散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tp、並びに散乱線含有率分布S(x,y)から、周波数成分を変換する変換係数R(x,y)を下記の式(4)により算出する。
R(x,y) = S(x,y)×Ts + (1-S(x,y))×Tp …(4)
散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tp、並びに散乱線含有率分布S(x,y)は0〜1の間の値となるため、変換係数R(x,y)も0〜1の間の値となる。散乱線除去部44は、変換係数R(x,y)を複数の周波数帯域のそれぞれについて算出する。
なお、以降の説明において、放射線画像の画素値をI(x,y)、周波数分解により得られる周波数成分画像をI(x,y,r)、周波数合成をI(x,y)=ΣrI(x,y,r)、周波数帯域毎の変換係数をR(x,y,r)、周波数帯域毎の散乱線透過率および一次線透過率をTs(r)、Tp(r)で表すものとする。なお、rは周波数帯域の階層を表し、rが大きいほど低周波であることを表すものとする。したがって、I(x,y,r)は、ある周波数帯域の周波数成分画像となる。散乱線含有率分布S(x,y)は放射線画像についてのものをそのまま用いればよいが、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpと同様に周波数帯域のそれぞれについて取得するようにしてもよい。
本実施形態においては、周波数成分毎に変換係数R(x,y,r)を算出し、周波数成分画像I(x,y,r)に対して対応する周波数帯域の変換係数R(x,y,r)を乗算して、周波数成分画像I(x,y,r)の画素値を変換し、変換係数R(x,y,r)が乗算された周波数成分画像I(x,y,r)(すなわち、I(x,y,r)×R(x,y,r))を周波数合成して処理済みの放射線画像I′(x,y)を取得する。したがって、散乱線除去部44において行われる処理は、下記の式(5)により表される。なお、変換係数R(x,y,r)は0〜1の間の値となるため、周波数成分(x,y,r)に対して対応する周波数帯域の変換係数R(x,y,r)を乗算することにより、その周波数成分の画素位置(x,y)における画素値すなわちゲインが低減されることとなる。
I’(x,y)=Σr{I(x,y,r)×R(x,y,r)}
=Σr{I(x,y,r)×(S(x,y)×Ts(r)+(1-S(x,y))×Tp(r))} …(5)
ここで、本実施形態においては、放射線画像を6つの周波数帯域に周波数分解するものとし、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは6つの周波数帯域について取得されるものとする。この場合、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは、例えば下記式(6)に示す値となる。なお、式(6)では右側ほど低周波数帯域の値を表すものとする。
Ts={0.7, 0.7, 0.7, 0.7, 0.3, 0.2}
Tp={0.7, 0.7, 0.7, 0.7, 0.7, 0.7} …(6)
式(6)に示すように、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは、高周波数帯域(r=1〜4)では同一の値であるが、低周波数帯域(r=5〜6)においては、散乱線透過率Tsの方が低い値となる。これはグリッドは散乱線の周波数成分が支配的である低周波帯域ほどその除去率が高いが、一次線については除去率の周波数依存性が小さいからである。
図4は胸部の放射線画像における散乱線含有率分布S(x,y)を示す図である。図4においては、散乱線含有率分布S(x,y)が高いほど各画素位置における輝度が高くなっている。図4より胸部の画像においては縦隔部および肺野の周囲において散乱線の含有率が高いことが分かる。このような散乱線含有率分布S(x,y)を示す場合において、式(4)、(6)に基づいて算出した変換係数を図5に示す。図5において、輝度が低いほど値が小さく、より大きく画素値が低減されることとなる。図4および図5を比較すると、散乱線の含有率が高い縦隔部および肺野の周囲において、変換係数の値が小さくなっていることが分かる。したがって、このように算出した変換係数を用いて式(5)に示す処理を行うことにより取得された処理済みの放射線画像においては、使用が想定されるグリッドの種類に応じて散乱成分が除去されたものとなる。
なお、散乱線除去部44においては、下記のようにして放射線画像の散乱線を除去するようにしてもよい。まず、上記と同様に周波数合成をI(x,y)=ΣrI(x,y,r)で表すとすると、散乱線除去部44は、周波数成分画像I(x,y,r)を、下記の式(7)により、散乱線含有率分布S(x,y)を用いて、散乱成分Ics(x,y,r)と一次線成分Icp(x,y,r)とに分解する。
Ics(x,y,r)= S(x,y)×I(x,y,r)
Icp(x,y,r)=(1-S(x,y))×I(x,y,r) …(7)
さらに散乱線除去部44は、下記の式(8)により、散乱成分Ics(x,y,r)および一次線成分Icp(x,y,r)のそれぞれに対して、仮想グリッド特性である散乱線透過率Ts(r)および一次線透過率Tp(r)を適用して画像変換し、変換された散乱成分Ics′(x,y,r)および一次線成分Icp′(x,y,r)を算出する。
Ics′(x,y,r)=Ics(x,y,r)×Ts(r)=S(x,y)×I(x,y,r)×Ts(r)
Icp′(x,y,r)=Icp(x,y,r)×Tp(r)=(1-S(x,y))×I(x,y,r)×Tp(r) …(8)
そして下記の式(9)により、Ics′(x,y,r)および一次線成分Icp′(x,y,r)を周波数合成して、処理済みの放射線画像I(x,y)′を算出する。
I′(x,y)=Σr{Ics′(x,y,r)+Icp′(x,y,r)}
=Σr{S(x,y)×I(x,y,r)×Ts(r)+(1-S(x,y))×I(x,y,r)×Tp(r)}
=Σr{I(x,y,r)×(S(x,y)×Ts(r)+(1-S(x,y))×Tp(r))} …(9)
ここで、本実施形態においては、撮影手技に応じた撮影条件を用いて散乱線除去処理を行っている。しかしながら、実際の撮影時には、被写体Mの体型に応じて撮影条件を変更して撮影を行う場合がある。例えば、太った患者の場合、管電圧およびmAs値を大きくし、痩せた患者の場合は管電圧およびmAs値を小さくすることがある。このような場合、撮影手技に応じた撮影条件は、実際に使用した撮影条件とは異なるため、撮影手技に応じた撮影条件を用いて散乱線除去処理を行うと、精度良く散乱成分を除去することができず、その結果、所望とする画質の放射線画像を得ることができなくなるおそれがある。
修正情報取得部45は、散乱成分の除去の程度を修正するための修正情報を取得する。図6は修正情報の取得を説明するための確認画面を示す図である。図6に示すように表示部3に表示される確認画面50には、処理済みの放射線画像を表示する画像表示領域51、被写体Mの体型を選択するための体型選択領域52、確認完了ボタン53、修正ボタン54および再撮影ボタン55が表示されている。体型選択領域52は、被写体Mの体型を入力するため、太め、やや太め、普通、やや細め、細めの体型を表す5通りのアイコンが表示されている。
操作者は、修正の必要がない場合には確認完了ボタン53を選択する。これにより、装置40は散乱線除去処理を終了する。一方、修正の必要がある場合には、操作者は入力部4を用いてポインタ57を体型選択領域52において移動させ、所望とする体型のアイコンを選択した態で修正ボタン54を選択する。これにより、修正情報取得部45は、選択された体型の情報(太め、やや太め、普通、やや細め、細め)を修正情報として取得する。そして、取得した修正情報に基づいて、撮影手技に応じた撮影条件を変更し、変更した撮影条件を特性取得部42、散乱線情報取得部43および散乱線除去部44に出力する。
具体的には、修正情報が「太め」の場合には、管電圧およびmAs値を大きくするように撮影条件を変更し、修正情報が「細め」の場合には、管電圧およびmAs値を小さくするように撮影条件を変更する。なお、本実施形態においては、修正情報(すなわち、太め、やや太め、普通、やや細め、細め)と撮影条件とを対応付けたテーブルLUT2が記憶部46に記憶されている。図7は各種修正情報と撮影条件とを対応付けたテーブルを示す図である。図7に示すように、テーブルLUT2は修正情報と撮影条件とが対応付けられている。なお、テーブルLUT2においては、修正情報と撮影条件との対応付けは、撮影手技毎になされている。修正情報取得部45は、このテーブルLUT2を参照して、変更された撮影条件を取得する。
特性取得部42は、変更された撮影条件に基づいて、仮想グリッド特性を取得する。また、散乱線除去部44は、変更された撮影条件に基づいてカーネルSσ(T(x,y))を求め、上記式(1)〜(3)を用いて新たな散乱線含有率分布S(x,y)を算出し、式(4)および(5)を用いて、新たな処理済みの放射線画像I′(x,y)を取得する。
次いで、第1の実施形態において行われる処理について説明する。図8は第1の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。撮影依頼に基づいて、撮影手技に応じた撮影条件を用いての被写体Mの撮影が行われて、放射線画像がコンピュータ2に入力されると(ステップST1)、特性取得部42が撮影手技に応じた撮影条件に基づいて、仮想グリッド特性、すなわち散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを取得する(ステップST2)。
また、散乱線情報取得部43が放射線画像を解析し(ステップST3)、散乱成分情報、すなわち散乱線含有率分布S(x,y)を取得する(ステップST4)。一方、散乱線除去部44は、放射線画像を周波数分解する(ステップST5)。なお、ステップST2の処理、ステップST3,ST4の処理およびステップST5の処理は並列に行ってもよく、ステップST3,ST4の処理を先に行ってもよく、ステップST5の処理を先に行ってもよい。
そして、散乱線除去部44は、上記式(4)により周波数帯域毎の変換係数R(x,y,r)を算出し(ステップST6)、変換係数R(x,y,r)により周波数成分画像I(x,y,r)を変換する(ステップST7)。そして変換された周波数成分画像I′(x,y,r)を周波数合成して、処理済みの放射線画像を取得し(ステップST8)、表示部3に表示する(ステップST9)。
次いで制御部41は、体型の修正指示があったか否かを判定する(ステップST10)。ステップST10が肯定されると、修正情報取得部45が修正情報を取得し、さらに修正情報に基づいて撮影条件を変更する(ステップST11)。そして、ステップST2に戻り、変更された撮影条件に基づいて、特性情報取得部42,散乱線情報取得部43および散乱線除去部44がステップST2〜ステップST9の処理を行う。ステップST10が否定されると、制御部41は再撮影ボタン55が選択されたか否かを判定し(ステップST12)、ステップST12が肯定されると、再撮影を行うべく処理を終了する。ステップST12が否定されると、制御部41は確認完了ボタン53が選択されたか否かを判定し(ステップST13)、ステップST13が否定されるとステップST10に戻る。一方、ステップST13が肯定されると処理を終了する。なお、処理済みの放射線画像は中央コンソールPC5に送信されて保存される。
このように、第1の実施形態においては、撮影手技に応じた撮影条件に基づいて、放射線画像に含まれる、撮影時に被写体を透過した放射線に含まれる散乱成分を除去するが、散乱成分の除去の度合いを修正するための修正情報が取得されると、修正情報に基づいて撮影条件を変更して放射線画像から散乱成分を除去するようにしたものである。このため、修正情報に応じてより適切に散乱成分を除去することができるため、より高画質の放射線画像を取得することができる。
次いで、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は第2の実施形態による放射線画像撮影装置のコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図である。図9に示すように、第2の実施形態においては、放射線画像を解析して、被写体Mの体厚分布を推定する体厚推定部47を備えた点が第1の実施形態と異なる。
図10は体厚推定部の構成を示す概略ブロック図である。図10に示すように、体厚推定部47は、仮想モデル取得部61、推定画像生成部62、修正部63および体厚分布決定部64を備える。
仮想モデル取得部61は、初期体厚分布T0(所定の体厚分布)を有する被写体Mの仮想モデルKを取得する。
推定画像生成部62は、仮想モデルKに基づいて、仮想モデルの放射線撮影により得られる一次線画像を推定した推定一次線画像Ipと、仮想モデルの放射線撮影により得られる散乱線画像を推定した推定散乱線画像Isとを合成した画像を、被写体Mの放射線撮影により得られる放射線画像を推定した推定画像Imとして生成する。
修正部63は、推定画像Imと放射線画像とに基づいて、推定画像Imと放射線画像の違いが小さくなるように仮想モデルKの初期体厚分布T0を修正する。
体厚分布決定部64は、修正された体厚分布Tn−1(nは自然数)を放射線画像の体厚分布Tkに決定する。
また、第2の実施形態においては、記憶部46には、初期体厚分布T0(x,y)を有する被写体Mの仮想モデルKが記憶される。なお、体厚とは、照射された放射線の経路上における空気領域を除いた被写体領域の厚さの総計を意味する。
次いで、第2の実施形態において行われる処理について説明する。図11は第2の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。撮影手技に応じた撮影条件を用いての被写体Mの撮影が行われて、放射線画像がコンピュータ2に入力されると(ステップST21)、体厚推定部47が体厚推定処理を行う(ステップST22)。
図12は体厚推定処理のフローチャートである。体厚推定部47の仮想モデル取得部61は、記憶部46から、初期体厚分布T0(x,y)を有する被写体Mの仮想モデルKを取得する(ステップST31)。仮想モデルKは、初期体厚分布T0(x,y)に従った体厚がxy平面上の各位置に対応付けられた被写体Mを仮想的に表すデータである。また、仮想モデルKに含まれる構造物(ここでは肺野、骨、臓器等の解剖学的構造物)と構造物の配置と、構造物の放射線に対する特性等を示す特性情報は、比較用被写体の胸腹部の肺野、骨等の解剖学的構造物の配置および組成に基づいて設定されている。
また、仮想モデルKの初期体厚分布T0(x,y)は任意の分布とされてよいが、本実施形態においては、仮想モデル取得部61によって初期体厚分布T0が生成されて取得される。仮想モデル取得部61は、被写体Mの撮影線量、管電圧、SID等の撮影条件を取得し、記憶部46から被写体Mの撮影条件に応じた画素値と体厚とを対応付けたテーブルを取得する。なお、この場合の撮影条件は、撮影手技に応じた撮影条件である。図13に画素値と体厚とを対応付けたテーブルの例を示す。そして、仮想モデル取得部61は、図13に示すテーブルに基づいて、被写体Mの放射線画像の各画素の画素値に対応する体厚を特定することにより、放射線画像の体厚分布を取得する。そして、仮想モデル取得部61は、放射線画像の体厚分布を仮想モデルKの初期体厚分布T0(所定の体厚分布)として取得する。なお、初期体厚分布T0は、本実施形態のように仮想モデルKの取得処理の際に生成されてもよく、仮想モデルKの取得処理に先立ってあらかじめ設定されていてもよい。以上の処理は下記の式(11)により表される。なお、I(x,y)は、放射線画像における各画素の画素値、T0(x,y)は各画素位置における初期体厚分布を示す。
次いで推定画像生成部62は、放射線画像と同等の撮影条件で仮想モデルKを撮影した場合に得られる推定一次線画像Ipと、放射線画像と同等の撮影条件で仮想モデルKを撮影した場合に得られる推定散乱線画像Isとを合成した推定画像Imを生成する(ステップST32)。図14および図15は、推定画像Imの生成方法を説明するための図である。
図14に示すように、推定画像生成部62は、放射線画像と同等の撮影条件で仮想モデルKを撮影した場合に得られる推定一次線画像Ipを下記式(12)に従って生成し、生成した推定一次線画像Ipを用いて、式(13)に従って推定散乱線画像Isを生成する。そして、推定画像生成部62は、式(14)に示すように推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isとを合成することにより、推定画像Imを生成する(ステップST32)。なお、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isとを1回目に作成する際には、推定式(12)、式(13)において初期体厚分布T0(x,y)が用いられる(式(12)、(13)においてn=1である)。
ここで、(x,y)は放射線画像の画素位置の座標、Ip(x,y)は画素位置(x,y)における推定一次線画像、Is(x,y)は画素位置(x,y)における推定散乱線画像、Io(x,y)は画素位置(x,y)における線量、Im(x,y)は画素位置(x,y)における推定画像、μは被写体の線減弱係数、Ks(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)は画素位置(x,y)における被写体厚に応じた点拡散関数(Point Spread Function)を表す畳みこみカーネルである。なお、線量Io(x,y)は、被写体が存在しないと仮定した際に放射線検出器20により検出される放射線の線量であり、X線源16と放射線検出器20の検出面との距離(SID)、管電圧およびmAs値に応じて変化する。また、θx’,y’は、管電圧等の撮影条件や仮想モデルKの特性情報によって特定されるパラメータを表している。
なお、推定画像Imは、仮想モデルKを放射線撮影した場合に得られると推定される画像であればよく、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isとを合成した画像と実質的に見なせるものであればよい。例えば、図15に示すように、式(12)〜(14)に替えて下記式(15)を用いて、一次線成分と散乱成分とを合わせたカーネルを畳みこみ積分して推定画像Imを生成してもよい。ここで、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)は、一次線成分と散乱成分とを合わせた点拡散関数を表すカーネルである。また、放射線撮影により得られた画像から推定一次線画像および推定散乱線画像を合成した推定画像を生成可能であれば、任意のモデル関数を用いてよい。
なお、Ks(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)は、撮影条件等に応じて実験的に求めることができる。
本実施形態においては、撮影時の撮影条件に基づいてカーネルKs(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)を算出してもよいが、各種撮影条件とカーネルKs(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)とを対応付けたテーブルを記憶部46に記憶しておき、撮影時の照射野情報、被写体情報および撮影条件に基づいて、このテーブルを参照してカーネルKs(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)を求める。
図12のフローチャートに従って、続く処理を説明する。続いて、体厚分布決定部64は、放射線画像と推定画像Imとの違いが終了条件を満たすか否かを判定する(ステップST33)。ここでは、式(16)および式(17)に示すように、下記の放射線画像と推定画像Imとの違いを表すエラー値Verrorを定義し、終了条件としてエラー値Verrorが閾値以下であるか否かを判定する。また、式(17)に示すように、放射線画像から推定画像Imを減算した差分画像Idの各画素値の2乗和をエラー関数ferrorとして規定する。なお、終了条件として、放射線画像と推定画像Imとの違いが許容可能な程度に十分小さくなったことを判定可能なあらゆる判定手法を適用可能である。
また、上記例に限定されず、エラー関数ferrorを、放射線画像と推定画像Imとの違いを表すあらゆる方法で規定することができる。例えば、下記式(18)に示すように、放射線画像から推定画像Imを減算した差分画像Idの各画素値の絶対値の総和をエラー関数ferrorとしてもよい。
体厚分布決定部64は、エラー値Verrorが終了条件を満たさない場合には(ステップST33:No)、体厚分布Tn−1(n=1の場合には、初期体厚分布T0)を修正する修正処理を行う(ステップST34)。
体厚分布Tn−1の修正処理を行うために、放射線画像と推定画像Imとの違いが小さくなるように体厚分布Tn−1の各位置の修正値を取得できる任意の方法を適用可能である。本実施形態では、仮想モデルKの一画素以上の部分領域毎に、仮想モデルKの体厚分布Tn−1を変動させて、推定画像Imと放射線画像との違いを小さくする部分領域の体厚を算出する処理を実施する。そして、算出された各部分領域の体厚によって仮想モデルの体厚分布を修正する。
具体的には、本実施形態は、最急降下法を用いて体厚分布Tn−1の体厚の修正値を求めるものとする。下記式(19)、(20)を用いて、仮想モデルKの画素のうち、Tn−1(x,y)において1つの特定の座標の体厚のみを変動させて、エラー関数ferrorの一次偏微分(勾配)に基づいて繰り返しdTn−1(x,y)を算出することにより、エラー関数ferrorの出力値を最小化することができる。そして、エラー関数ferrorの出力値を最小化した際の、1つの特定の座標の体厚を、その特定の座標の体厚の修正値として決定する。また、他の画素についても同様に、それぞれ体厚の修正値を求めることにより、各画素の体厚分布を修正し、修正した体厚分布Tnを取得する。
ただし、式(19)において、αは、体厚の更新速度を表すパラメータである更新係数である。式(20)に示すKp+sの微分値部分の算出方法の一例として、例えば、Tn−1(x,y)に極めて小さい値dtを加えたとき値の変化を式(21)によって算出して、式(20)のKp+sの値とすることができる。なお、式(11)〜(21)において、同じ要素には同じ符号を付して、説明を省略する。放射線画像と推定画像Imとの違いを表すエラー値Verrorを最小化するあらゆる最適化手法を適用可能であり、例えば、シンプレックス法や最急降下法、共役勾配法を用いることができる。
修正された体厚分布Tnを取得すると、体厚分布決定部64は、nの値を1つ増加して更新し(n=n+1とする)、仮想モデル取得部61は修正された体厚分布Tnを取得する(ステップST31)。そして、取得された体厚分布Tnに対して、推定画像生成部62および体厚分布決定部64はステップST31〜ステップST33の処理をそれぞれ上記と同様に実行する。そして、放射線画像と推定画像Imとの違いを示すエラー値Verrorが終了条件を満たすまで、上記同様に、体厚分布Tnの修正処理(ステップST34)と、修正された体厚分布Tnを有する仮想モデルKの取得処理(ステップST31)と、体厚分布Tnを用いた新たな推定画像Imの生成処理(ステップST32)と、新たに生成された推定画像Imと放射線画像との違いが終了条件を満たすかを判定する処理(ステップST33)の処理とが繰り返される。
一方、体厚分布決定部64は、エラー値Verrorが終了条件を満たしていることを判定した場合には(ステップST33:Yes)、終了条件を満たした際にエラー値Verrorに用いられた体厚分布Tnを放射線画像の体厚分布Tkとして決定して体厚推定処理を終了する(ステップST35)。
図11に戻り、体厚推定処理に続いて、推定された体厚分布を用いての散乱線除去処理が行われる(ステップST23)。散乱線除去処理は、図8に示すフローチャートのステップST2〜ステップST8の処理と同一であるため、ここでは詳細な説明は省略する。なお、ここでは式(1)、(2)における体厚分布T(x,y)は、第1の実施形態と同様に算出される。散乱線除去処理が行われた処理済みの放射線画像は、表示部3に表示される(ステップST24)。なお、第2の実施形態における確認画面は、図6に示す確認画面において、体型選択領域52が省略され、画像表示領域51、確認完了ボタン53、修正ボタン54および再撮影ボタン55のみが表示されたものとなる。
次いで、制御部41は、体型の修正指示があったか否かを判定する(ステップST25)。ステップST25が肯定されると、修正情報取得部45は、体厚推定部47が推定した体厚分布Tk(x,y)に基づいて、被写体Mの体型を修正情報として取得し(ステップST26)、修正情報に基づいて撮影条件を変更する(ステップST27)。なお、記憶部46には各種体厚分布と体型(太め、やや太め、普通、やや細め、細め)とを対応付けたテーブルが記憶されており、修正情報取得部45はこのテーブルを参照して被写体Mの体型を修正情報として取得し、さらに上記テーブルLUT2を参照して変更された撮影条件を取得する。
そして、ステップST22に戻り、変更された撮影条件に基づいて、ステップST22〜ステップST23の体厚推定処理および散乱線除去処理が行われる。なお、体厚推定処理においては、変更された撮影条件に基づいて、カーネルKs(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)を算出して新たな体厚分布Tkが推定される。散乱線除去処理においては、変更された撮影条件に基づいてカーネルSσ(T(x,y))を求め、上記式(1)〜(3)を用いて新たな散乱線含有率分布S(x,y)を算出し、式(4)および(5)を用いて、新たな処理済みの放射線画像I′(x,y)が取得される。
ステップST25が否定されると、制御部41は再撮影ボタン55が選択されたか否かを判定し(ステップST28)、ステップST28が肯定されると、再撮影を行うべく、処理を終了する。ステップST28が否定されると、制御部41は確認完了ボタン53が選択されたか否かを判定し(ステップST29)、ステップST29が否定されるとステップST25に戻る。一方、ステップST29が肯定されると処理を終了する。なお、処理済みの放射線画像は、中央コンソールPC5に送信されて保存される。
このように、第2の実施形態においては、被写体の体厚分布を推定し、修正指示があった場合、体厚分布を修正情報として撮影条件を変更し、変更された撮影条件に基づいて散乱成分を除去する処理を行うようにしたものである。これにより、推定された体厚分布に応じてより適切に散乱成分を除去することができるため、より高画質の放射線画像を取得することができる。
また、変更された撮影条件に基づいて体厚分布を推定することにより、より適切に体厚分布を推定することができる。
なお、上記第2の実施形態においては、修正指示がなされた場合に、変更された撮影条件に基づいて、体厚推定処理および散乱線除去処理の双方を行っているが、変更された撮影条件に基づいて体厚推定処理のみを行うようにしてもよい。
また、上記第2の実施形態において、推定された体厚分布を確認画面における体型選択のための補助情報として用いてもよい。図16は確認画面の他の例を示す図である。図16に示すように、確認画面50Aには、画像表示領域51、体型選択領域52、確認完了ボタン53、修正ボタン54および再撮影ボタン55に加えて、体厚表示領域56が表示されている。体厚表示領域には、体厚推定部47が推定した体厚分布Tk(x,y)の代表値が表示されている。図6においては27cmの値が表示されている。なお、代表値としては、体厚分布Tk(x,y)の最大値、平均値、大きく外れた値を除外した重み付け平均値、メディアン値および放射線画像の中央位置の体厚等を用いることができる。また、体厚の代表値に代えて、放射線画像の各画素位置と体厚とを対応付けた体厚分布のカラーマップを表示するようにしてもよい。
このように体厚分布の代表値を表示することにより、体型選択領域52における体型の選択を容易に行うことができるため、修正指示を行う際の操作者の負担を軽減することができる。
なお、放射線画像には、手術により体内に埋め込んだ金属、シリコン等のインプラントが含まれる場合がある。このような場合、放射線画像に含まれるインプラント領域は、被写体M内の組織と比較して高輝度となるため、インプラント領域における体厚分布Tk(x,y)は正確でない可能性が高い。このため、修正情報取得部45が体厚の代表値を算出する際には、インプラント領域を除外することが好ましい。
また、体厚分布の最大値を代表値として用いる場合、画像表示領域51に表示された放射線画像上において、体厚分布が最大値となった画素位置にマークを付与する等して、操作者に通知するようにしてもよい。
なお、上記第1および第2の実施形態において、放射線画像が放射線検出器への入射線量に比例した画素値を持つ、放射線量に対してリニアな空間において散乱線除去処理を行い、その後に対数変換を行って、人間の視覚と比例する対数リニアな空間に変換することが好ましい。
また、上記第1および第2の実施形態においては、特性取得部42において、仮想グリッド特性として、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを取得しているが、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpの一方のみを取得するようにしてもよい。
また、上記第1および第2の実施形態においては、確認画面において、被写体Mの体型に応じたアイコンを選択することにより所望とする体型に関する情報を入力しているが、アイコンの選択に代えて、スライドバーを用いて体型に関する情報を入力するようにしてもよい。この場合、スライドバーは太めおよび細めの間の任意の位置を選択可能とされており、操作者は所望とする体型に応じてスライドバーの位置を移動し、修正ボタン54を選択する。これにより、修正情報取得部45がスライドバーの位置に応じた体型の情報を修正情報として取得する。また、体型を表す数値を入力するようにしてもよい。この場合、例えば標準体型を50、最も痩せた体型を10、最も太った体型を90というように、体型に応じた値をあらかじめ定義しておき、被写体Mの体型に応じた値を確認画面において入力するようにすればよい。
一方、撮影部位によっては、散乱線除去グリッドを使用しないで撮影を行う場合がある。このような部位を撮影することにより取得した放射線画像に対して、上記第1および第2の実施形態の散乱線除去処理を行うことは好ましくない。このため、撮影部位に応じて、本実施形態の散乱線除去処理のオン/オフを撮影部位に応じて切り替えるようにすることが好ましい。なお、撮影部位の情報は、操作者が入力することにより取得してもよく、撮影フローの制御を行う周知のコンソールPC(不図示)に入力される撮影依頼から自動的に取得してもよく、撮影後にシステムが放射線画像に付帯して保存する情報を利用してもよい。また、このような情報が取得できない場合には、放射線画像に対して部位認識処理を行うことにより取得してもよい。この場合、部位に応じて処理のオン/オフを対応づけたテーブルを記憶部46に記憶しておき、このテーブルを参照して処理のオン/オフを切り替えるようにすればよい。
また、上記第1および第2の実施形態において、処理済みの放射線画像および処理前の放射線画像の双方を表示し、いずれの放射線画像を診断に使用するかを選択できるようにしてもよい。
なお、変更する撮影条件のうちのmAs値について、厚さが既知のアクリルモデルを被写体とともに撮影し、取得された放射線画像におけるアクリルモデルの部分の濃度に基づいて、mAs値を取得するようにしてもよい。この場合、アクリルモデルの濃度とmAs値とを対応付けたテーブルを記憶部46に記憶しておき、アクリルモデルの濃度に基づいてこのテーブルを参照してmAs値を取得すればよい。また、放射線検出器20に直接X線が照射することにより得られる素抜け領域が放射線画像に含まれる場合、素抜け領域の濃度に基づいて、mAs値を取得するようにしてもよい。この場合、素抜け領域の濃度とmAs値とを対応付けたテーブルを記憶部46に記憶しておき、素抜け領域の濃度に基づいてこのテーブルを参照してmAs値を取得すればよい。
また、病気の治癒状況あるいは進行状況の診断を行うために、過去の放射線画像を用いて経時比較観察を行う場合がある。このような場合において、散乱線除去グリッドを使用せずに撮影を行うことにより取得した放射線画像(第1の放射線画像とする)と、散乱線除去グリッドを使用して撮影を行うことにより取得した放射線画像(第2の放射線画像とする)とを比較する場合には、第1の放射線画像に対してグリッドに起因する縞模様を除去する処理を施した際の処理条件に応じて、本実施形態の散乱線除去処理の条件を修正し、第1および第2の放射線画像の画質を一致させるようにすることが好ましい。
また、上記実施形態においては、放射線検出器20を用いて被写体の放射線画像を撮影するシステムにおいて取得した放射線画像を用いて散乱線除去処理を行っているが、特開平8−266529号公報、特開平9−24039号公報等に示される放射線検出体としての蓄積性蛍光体シートに被写体の放射線画像情報を蓄積記録し、蓄積性蛍光体シートから光電的に読み取ることにより取得した放射線画像を用いた場合においても、本発明を適用できることはもちろんである。
1 放射線画像撮影装置
2 コンピュータ
3 表示部
4 入力部
16 X線源
20 放射線検出器
41 制御部
42 特性取得部
43 散乱線情報取得部
44 散乱線除去部
45 修正情報取得部
46 記憶部
47 体厚推定部
50,50A 確認画面
51 画像表示領域
52 体型選択領域
53 確認完了ボタン
54 修正ボタン
55 再撮影ボタン
56 体厚表示領域
61 仮想モデル取得部
62 推定画像生成部
63 修正部
64 体厚分布決定部

Claims (13)

  1. 被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像を取得する画像取得手段と、
    第1の仮想グリッド特性を取得する特性取得手段と、
    前記第1の仮想グリッド特性および撮影条件を用いて、前記撮影時に前記被写体を透過した放射線に含まれる散乱成分を前記放射線画像から除去する散乱線除去処理を行う散乱線除去手段と、
    前記散乱線除去処理が行われた放射線画像に対する修正指示に応じて、前記散乱成分の除去の度合いを修正するため前記撮影条件を変更する修正情報取得手段とを備え、
    前記特性取得手段は、前記変更された撮影条件から第2の仮想グリッド特性を取得する手段であり、
    前記散乱線除去手段は、前記第2の仮想グリッド特性および前記変更された撮影条件に基づいて、前記放射線画像に対してさらなる前記散乱線除去処理を行う手段であることを特徴とする放射線画像処理装置。
  2. 前記特性取得手段は、撮影手技に応じた前記撮影条件を取得し、該撮影条件から前記第1の仮想グリッド特性を取得する手段であり、
    前記散乱線除去処理が行われた放射線画像を表示する表示手段をさらに備え、
    前記修正情報取得手段は、前記表示された放射線画像に基づいて入力された前記修正指示に応じて、前記撮影条件を変更して前記変更された撮影条件を取得する手段であることを特徴とする請求項1記載の放射線画像処理装置。
  3. 前記修正情報取得手段は、前記修正指示に応じて、前記散乱成分の除去の度合いを修正するための修正情報を取得し、該修正情報に基づいて前記撮影条件を変更する手段であることを特徴とする請求項1記載の放射線画像処理装置。
  4. 前記修正情報は、前記被写体の体型に関する情報であることを特徴とする請求項記載の放射線画像処理装置。
  5. 前記放射線画像および前記撮影条件に基づいて、前記被写体の体厚分布を推定する体厚分布推定手段をさらに備え、
    前記修正情報取得手段は、前記修正指示に応じて、前記体厚分布の情報を前記修正情報として取得し、該修正情報に基づいて前記撮影条件を変更する手段であり、
    前記体厚分布推定手段は、前記変更された撮影条件に基づいて、前記体厚分布をさらに推定する手段であることを特徴とする請求項項記載の放射線画像処理装置。
  6. 前記散乱線除去処理手段は、前記第2の仮想グリッド特性、前記変更された撮影条件および前記さらに推定された体厚分布に基づいて、前記さらなる散乱線除去処理を行う手段であることを特徴とする請求項記載の放射線画像処理装置。
  7. 前記修正情報取得手段は、前記体厚分布に基づいて、前記被写体の体型に関する情報を取得し、前記体型に関する情報を表示して前記修正情報の入力を受け付けることにより該修正情報を取得する手段であることを特徴とする請求項または記載の放射線画像処理装置。
  8. 前記修正情報取得手段は、前記放射線画像から、インプラントの領域を検出し、前記放射線画像における前記インプラント領域以外の領域における前記体厚分布に基づいて前記体型に関する情報を取得する手段であることを特徴とする請求項記載の放射線画像処理装置。
  9. 前記体厚分布推定手段は、所定の体厚分布を有する前記被写体の仮想モデルを取得する仮想モデル取得手段と、
    前記仮想モデルの放射線撮影により得られる一次線画像を前記仮想モデルから推定した推定一次線画像と前記仮想モデルの放射線撮影により得られる散乱線画像を前記仮想モデルから推定した推定散乱線画像とを合成した画像を、前記被写体の放射線撮影により得られる放射線画像を推定した画像である推定画像として生成する推定画像生成手段と、
    前記推定画像と前記放射線画像の違いが小さくなるように前記仮想モデルの前記体厚分布を修正する修正手段と、
    前記修正された前記仮想モデルの前記体厚分布を前記被写体の体厚分布として決定する体厚分布決定手段とを備えたことを特徴とする請求項5から8のいずれか1項記載の放射線画像解析装置。
  10. 前記第1および第2の仮想グリッド特性は、一次線透過率および散乱線透過率であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の放射線画像処理装置。
  11. 前記前記散乱線除去手段は、前記放射線画像における散乱線含有率分布をさらに用いて、前記散乱線除去処理を行う手段であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の放射線画像処理装置。
  12. 被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像を取得し、
    第1の仮想グリッド特性を取得し、
    前記第1の仮想グリッド特性および撮影条件を用いて、前記撮影時に前記被写体を透過した放射線に含まれる散乱成分を前記放射線画像から除去する散乱線除去処理を行い、
    前記散乱線除去処理が行われた放射線画像に対する修正指示に応じて、前記散乱成分の除去の度合いを修正するため前記撮影条件を変更し、
    前記変更された撮影条件に基づいて第2の仮想グリッド特性を取得し、
    前記第2の仮想グリッド特性および前記変更された撮影条件に基づいて、前記放射線画像に対してさらなる前記散乱線除去処理を行うことを特徴とする放射線画像処理方法。
  13. 被写体に放射線を照射することにより撮影された放射線画像を取得する手順と、
    第1の仮想グリッド特性を取得する手順と、
    前記第1の仮想グリッド特性および撮影条件を用いて、前記撮影時に前記被写体を透過した放射線に含まれる散乱成分を前記放射線画像から除去する散乱線除去処理を行う手順と、
    前記散乱線除去処理が行われた放射線画像に対する修正指示に応じて、前記散乱成分の除去の度合いを修正するため前記撮影条件を変更する手順と、
    前記変更された撮影条件に基づいて第2の仮想グリッド特性を取得する手順と、
    前記第2の仮想グリッド特性および前記変更された撮影条件に基づいて、前記放射線画像に対してさらなる前記散乱線除去処理を行う手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする放射線画像処理プログラム。
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