JP3583554B2 - コーンビームx線断層撮影装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーンビームX線撮影装置に関し、特に、被検体内部を3次元的に画像化する際の画像の定量性を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、被検体内部の3次元分布を画像化する技術としては、被検体の周囲の360度からコーンビーム状のX線を照射しながら撮像したX線透過像を再構成し、被検体の内部を画像化するコーンビームCT技術がある。
【0003】
このときのコーンビームCTの画像データの取得から3次元画像再構成までのデータ補正処理方法は、たとえば、医用画像工学研究会ジャミットフロンティア95(JAMIT Frontier ’95)講演論文集、23−28頁(1995年)に記載の方法がある。
【0004】
この文献に記載の方法は、連続的に撮影を行うことが可能な2次元X線画像検出器としてX線イメージインテンシファイアを用いて、まず、多方向から被検体のX線透過像を撮影し、次に、X線透過像に含まれる検出器の歪みと感度の補正とを行い、さらに、被検体の検出器からのはみ出しの補正を行った後、コーンビームCTの3次元画像再構成アルゴリズムを用いて、3次元画像再構成を行うというものである。
【0005】
前述するように、連続的に撮影を行うことが可能な2次元X線画像検出器として、最も広く利用されている検出器は、X線イメージインテンシファイアと結像光学系とテレビカメラから構成される検出器である。しかしながら、この他にも、蛍光板と結像光学系とテレビカメラから構成される検出器、蛍光板と2次元フォトダイオードアレイ及び2次元薄膜トランジスタ(TFT)配列から構成される検出器、さらには、セレン膜と2次元薄膜トランジスタ配列から構成される検出器等の2次元X線画像検出器がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、前記従来技術を検討した結果、以下の問題点を見いだした。
【0007】
従来のコーンビームCT装置では、検出器の歪み、検出器の感度のばらつきおよび被検体の検出器からのはみ出しと共に、X線イメージインテンシファイアの出力蛍光面で発生する拡散光(ベーリンググレアとも呼ばれる)と、X線が被検体内部を透過する際に発生する散乱X線とが得られたX線透過像にぼけを加えるという現象となって、X線透過像の画質の低下の一因となり、この結果、再構成によって得られた3次元像もまた画質が低下するという現象を引き起こしている。
【0008】
なお、前述する2次元X線画像検出器のうち、セレン膜以外の検出器においては、X線像を光学像に変換し、光学像をさらに電気信号に変換するという過程により画像が計測されるので、これらの検出器では、検出器内部における光の拡散により発生した拡散光が発生する。
【0009】
特に、散乱X線は、どのような2次元X線画像検出器を用いても避けることのできない画質低下原因であり、被検体内部におけるX線散乱により発生した散乱X線が実測画像へ混入することによって、X線透過像にぼけが発生することになる。
【0010】
一般的には、前述する散乱X線によるX線透過像の画質の低下を防止するために、2次元X線画像検出器のX線入射面の全面に散乱X線を遮蔽するためのX線グリッドが配置されている。このX線グリッドは、検出器に入射するX線の入射方向を限定することにより、散乱X線の多くの割合を遮蔽する効果があるが、散乱X線の2次元X線画像検出器への入射角は広く分布するので、散乱X線のX線透過像(実測画像)への混入を全て遮蔽することは不可能である。
【0011】
しかしながら、コーンビームCT装置においては、一般の透視や撮影の場合と異なり、被検体の内部のX線吸収係数を画像化するので、散乱X線の影響により、同一の画像濃度であるべき領域内で画像の値に偏りが発生することが問題となる。
【0012】
したがって、X線透過像から混入した散乱X線による影響(ぼけ)を取り除くための補正処理が必要となるわけであるが、前述する拡散光と散乱X線の補正方法に関しては、文献、メディカルフィジックス誌(Medical Physics)、20巻59−69頁(1993年)に拡散光と散乱X線を一体として補正する方法が開示されている。
【0013】
また、コーンビームCT装置では、被検体の幅よりも検出器の幅が小さい場合には、投影のはみ出しの補正が別に必要となり、この補正ははみ出しにより計測されなかった被検体の形状を推定しなければならないから補正には誤差があり、定量性を劣化する。また、X線吸収率のデータが必要となるので吸収率がゼロの部分、即ち被検体の存在していない部分が計測画像に含まれることが望ましい。すなわち、コーンビームCT装置においては、被検体の周囲に吸収体の存在しない領域が計測画像(X線透過像)に取り込まれることが望ましく、そのために2次元X線画像検出器は大型化されている。
【0014】
したがって、被検体の厚さがゼロの領域を視野に含むことがコーンビームCTの特徴である。また、被検体の形状によっては、透視や撮影のときも吸収体の厚さがゼロの領域を含む場合がある。
【0015】
しかしながら、前述する従来の散乱X線の補正方法では、被検体の厚さがゼロの部分を視野に含む場合は考慮されておらず、撮影で計測されたX線透過像の散乱X線による画質の低下を適切に補正する方法がなかった。
【0016】
前述する2次元X線画像検出器のうち、特に、X線イメージインテンシファイアとテレビカメラとを用いた方式では、検出器の歪みと感度分布とが大きく、これらの補正が必要とされるので、拡散光と散乱X線の補正を含め、総合的な補正アルゴリズムが必要とされる。
【0017】
しかしながら、前述するメディカルフィジックス誌には、拡散光と散乱X線を補正する一般的な方法は開示されているが、コーンビームCTの画像生成法における散乱X線の補正を行うアルゴリズムは開示されていない。
【0018】
本発明の第1の目的は、被検体の厚さがゼロの部分を視野に含む場合にも、実測されたX線透過像において散乱X線による画質の低下を簡便に補正し、3次元再構成により得られた画像の画質とCT値の定量性を向上できるコーンビームCT装置を提供することである。
【0019】
本発明の第2の目的は、実測されたX線透過像において計測系における拡散光による画質の低下を簡便に補正し、3次元再構成により得られた画像の画質とCT値の定量性を向上できるコーンビームCT装置を提供することである。
【0020】
本発明の第3の目的は、実測されたX線透過像において計測系における画像の幾何学的歪みと感度分布がある場合にも、歪み、感度分布、拡散光、及び散乱X線をそれぞれ簡便に補正し、3次元再構成により得られた画像の画質とCT値の定量性を向上できるコーンビームCT装置を提供することである。
【0021】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかになるであろう。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0023】
(1)円錐状もしくは角錐状のX線を照射するX線源と、被検体の2次元X線像を撮像する2次元X線像撮像手段と、該2次元X線像撮像手段が撮像した2次元X線像から3次元X線CT像を再構成する再構成手段とを有するコーンビームX線断層撮影装置において、所定のX線吸収体の厚さと該厚さに対する散乱X線成分の割合との関係を予め計測する計測手段と、前記2次元X線像と撮像条件とから前記被検体のX線吸収量と前記X線吸収体のX線吸収量とが等しくなるときの前記X線吸収体の厚さを算出する吸収体厚さ算出手段と、該吸収体厚さ算出手段が算出した吸収体厚さと予め設定される吸収体厚さとを比較し、該比較の結果、前記被検体の吸収体厚さが前記予め設定される吸収体厚さよりも薄い場合には、前記予め設定される吸収体厚さに対応する散乱X線成分の割合を前記2次元X線像撮像手段が撮像した2次元X線像の散乱X線成分の割合とする比較置換手段と、前記散乱X線成分の割合に基づいて、前記2次元X線像の散乱X線を補正する散乱X線補正手段とを具備する。
【0024】
(2)円錐状もしくは角錐状のX線を照射するX線源と、被検体の2次元X線像を2次元光学像に変換する光学像変換手段と、該2次元光学像を撮像する2次元光学像撮像手段と、該2次元光学像撮像手段が撮像した2次元光学像から3次元X線CT像を再構成する再構成手段とを有するコーンビームX線断層撮影装置において、予め計測した拡散光成分の割合と点像分布関数とに基づいて、前記2次元光学像の拡散光を補正する拡散光補正手段と、前記X線を照射せずに撮像した感度分布画像に基づいて、前記拡散光補正手段による補正後の2次元光学像の感度分布を補正する感度分布補正手段と、予め計測した歪み変換テーブルに基づいて、前記感度分布補正手段による補正後の2次元光学像の歪みを補正する歪み補正手段と、前記歪み補正手段による補正後の2次元X線像の散乱X線を補正する散乱X線補正手段と、該散乱X線補正手段による補正後の2次元光学像を対数変換する対数変換手段と、対数変換後の2次元光学像のはみ出し補正を行うはみ出し補正手段とを具備し、前記再構成手段は、はみ出し補正後の2次元光学像から3次元X線CT像を再構成する。
【0025】
(3)前述する(2)に記載のコーンビームX線断層撮影装置において、所定のX線吸収体の厚さと該厚さに対する散乱X線成分の割合との関係を予め計測する計測手段と、前記2次元X線像と撮像条件とから前記被検体のX線吸収量と前記X線吸収体のX線吸収量とが等しくなるときの前記X線吸収体の厚さを算出する吸収体厚さ算出手段と、該吸収体厚さ算出手段が算出した吸収体厚さと予め設定される吸収体厚さとを比較し、該比較の結果、前記被検体の吸収体厚さが前記予め設定される吸収体厚さよりも薄い場合には、前記予め設定される吸収体厚さに対応する散乱X線成分の割合を前記2次元X線像撮像手段が撮像した2次元X線像の散乱X線成分の割合とする比較置換手段とを具備し、前記散乱X線補正手段が前記散乱X線成分の割合に基づいて、前記2次元X線像の散乱X線を補正する。
【0026】
(4)前述する(1)あるいは(3)に記載のコーンビームX線断層撮影装置において、前記散乱X線補正手段は、前記割合計測値と点像分布関数との積を計算する手段と、該計算結果を前記2次元X線像に対して畳み込み演算し、散乱X線成分画像を生成する手段と、前記2次元X線像から前記散乱X線成分画像を減算する手段とを具備する。
【0027】
(5)前述する(2)あるいは(3)に記載のコーンビームX線断層撮影装置において、前記拡散光補正手段は、前記拡散光成分の割合と前記点像分布関数との積を計算する手段と、該計算結果を前記2次元X線像に対して畳み込み演算し、拡散光成分画像を生成する手段と、前記2次元X線像から前記拡散光成分画像を減算する手段とを具備する。
【0028】
(6)前述する(2)あるいは(3)に記載のコーンビームX線断層撮影装置において、前記拡散光補正手段は、前記拡散光成分の割合と点像分布関数の積との関数として、フーリエ空間における拡散光補正フィルタを生成する手段と、前記2次元X線像をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、該フーリエ変換後のX線像に対して前記拡散光補正フィルタを積演算する手段とを具備する。
【0029】
(7)前述する(2)ないし(6)の内のいずれかに記載のコーンビームX線断層撮影装置において、X線遮蔽体のエッジ部分が2次元光学像撮像手段の2次元配列の行方向もしくは列方向に直交すると共に、視野中心付近となるようにX線遮蔽体を配置して撮像した2次元X線像の断面プロファイルを、前記2次元光学像撮像手段および光学像変換手段の空間分解能を表すガウス関数成分と拡散光成分を表す指数関数成分とで2成分フィッティングし、ガウス関数成分と指数関数成分とに分離する手段と、分離した前記ガウス関数成分と前記指数関数成分とから前記拡散光成分の割合と線像分布関数とを計算する手段と、前記線像分布関数から点像分布関数を近似する手段とを具備する。
【0030】
(8)前述する(2)ないし(6)の内のいずれかに記載のコーンビームX線断層撮影装置において、X線遮蔽体のエッジ部分が2次元光学像撮像手段の2次元配列の行方向もしくは列方向に直交すると共に、視野中心付近となるようにX線遮蔽体を配置し、該X線遮蔽体に種々の厚さの被検体模擬被写体を重ねて散乱体としたものを撮像した2次元X線像の断面プロファイルを、前記2次元光学像撮像手段および光学像変換手段の空間分解能を表すガウス関数成分と散乱X線成分を表す指数関数成分とで2成分フィッティングし、ガウス関数成分と指数関数成分とに分離する手段と、分離した前記ガウス関数成分と前記指数関数成分とから前記散乱X線成分の割合と線像分布関数とを計算する手段と、前記線像分布関数から点像分布関数を近似する手段とを具備する。
【0031】
(9)前述する(1)ないし(8)の内のいずれかに記載のコーンビームX線断層撮影装置において、前記拡散光補正手段は、任意の撮像条件で撮像した2次元X線像から拡散光成分の割合と点像分布関数とを計算する手段と、該点像分布関数を前記2次元光学像撮像手段の画素を単位とする関数に変換する手段とを具備し、撮像条件を変更した場合であっても、前記拡散光成分の強度比と前記点像分布関数に基づいて、拡散光を補正する。
【0032】
(10)前述する(2)ないし(9)の内のいずれかに記載のコーンビームX線断層撮影装置において、前記2次元X線像撮像手段のオフセットレベルの補正を行う手段を具備し、前記拡散光の補正に先立ち、前記2次元X線像撮像手段のオフセットレベルの補正を行う。
【0033】
前述する(1)の手段によれば、たとえば、予め計測手段が所定のX線吸収体の厚さとこのX線吸収体の厚さに対する散乱X線成分の割合を計測しておく。
【0034】
2次元X線像の撮影が行われたならば、まず、吸収体厚さ算出手段がこの散乱X線成分の割合と2次元X線像を撮影したときの撮影条件とに基づいて、被検体のX線吸収体厚さの代表値に対する散乱X線の割合を計算する。
【0035】
次に、比較置換手段が所定のX線吸収体の厚さと被検体のX線吸収体厚さの代表値とを比較した結果に基づいて、大きい方の値に対応する散乱X線成分の割合を散乱X線補正手段に出力し、この散乱X線成分の割合に基づいて、散乱X線補正手段が散乱X線を補正するので、被検体の厚さの最小値がゼロである場合にも、被検体吸収体厚さがある程度大きいときの条件で散乱X線補正を行うことができる。
【0036】
すなわち、画像内に被検体の薄い部分が入っている場合に被検体が厚い部位の散乱X線を補正する際に、補正精度が低下してしまうのを防止できる。
【0037】
したがって、被検体の厚さの最小値がゼロである場合であっても、3次元再構成により得られた画像の画質とCT値の定量性を向上できる。
【0038】
前述する(2)の手段によれば、ぼけの要因を加わった順番と逆の順番で補正(除去)するので、後述する補正順番の検討に示す理由により、歪み、感度分布、拡散光、及び散乱X線をそれぞれ簡便にかつ正確に補正できる。
【0039】
したがって、3次元再構成により得られた画像の画質とCT値の定量性を向上できる。
【0040】
前述する(3)の手段によれば、ぼけの要因を加わった順番と逆の順番で補正(除去)すると共に、散乱X線を補正する際に、散乱X線補正手段が散乱X線成分の割合に基づいて補正を行うので、歪み、感度分布、拡散光、及び散乱X線をそれぞれ簡便に補正できると共に、被検体の厚さの最小値がゼロである場合にも、被検体吸収体厚さがある程度大きいときの条件で散乱X線補正を行うことができる。
【0041】
前述する(4)の手段によれば、散乱X線成分の割合と点像分布関数との積を計算する手段が計算した結果を、散乱X線成分画像を生成する手段が2次元X線像に対して畳み込み演算した後に、2次元X線像から散乱X線成分画像を減算する手段が減算を行うことにより、散乱X線の補正ができるので、前述する効果に加え、簡便に散乱X線の補正ができる。
【0042】
前述する(5)の手段によれば、まず、拡散光分布を生成する手段が予め計測した拡散光成分の割合と点像分布関数との積を計算することによって拡散光分布を生成し、次に、畳み込み演算をする手段が拡散光補正前の2次元X線像に対して拡散光分布を畳み込み演算することにより、2次元X線像の拡散光を補正できるので、前述する効果に加え、簡便に拡散光の補正ができる。
【0043】
前述する(6)の手段によれば、まず、拡散光補正フィルタを生成する手段が拡散光成分の割合と点像分布関数の積の関数として、フーリエ空間における拡散光補正フィルタを生成する。次に、フーリエ変換手段が拡散光補正前の2次元X線像をフーリエ変換した後、フーリエ変換後のX線像に対して、拡散光補正フィルタを積演算することにより、2次元X線像の拡散光を補正できるので、前述する効果に加え、前述する(6)の手段よりさらに簡便に拡散光の補正ができる。
【0044】
前述する(7)の手段によれば、X線遮蔽体のエッジ部分が2次元光学像撮像手段の2次元配列の行方向もしくは列方向に直交すると共に、視野中心付近となるようにX線遮蔽体を配置して撮像した2次元X線像の断面プロファイルを、分離する手段が2次元光学像撮像手段および光学像変換手段の空間分解能を表すガウス関数成分と拡散光成分を表す指数関数成分とで2成分フィッティングし、ガウス関数成分と指数関数成分とに分離した後、ガウス関数成分と指数関数成分とから拡散光成分の割合と線像分布関数とを計算し、近似する手段がこの線像分布関数から点像分布関数を近似することによって、2次元光学像撮像手段と光学像変換手段の空間分解能に依存しない拡散光成分の割合と点像分布関数とを、特殊な被写体を用いることなく求められる。
【0045】
前述する(8)の手段によれば、X線遮蔽体のエッジ部分が2次元光学像撮像手段の2次元配列の行方向もしくは列方向に直交すると共に、視野中心付近となるようにX線遮蔽体を配置し、これに種々の厚さの被検体模擬被写体を重ねて散乱体としたものを撮像した2次元X線像の断面プロファイルを、2次元光学像撮像手段および光学像変換手段の空間分解能を表すガウス関数成分と散乱X線成分を表す指数関数成分とで2成分フィッティングし、分離する手段がガウス関数成分と指数関数成分とに分離した後、分離したガウス関数成分と指数関数成分とから散乱X線成分の割合と線像分布関数とを計算し、近似する手段が線像分布関数から点像分布関数を近似することによって、2次元光学像撮像手段あるいは光学像変換手段の空間分解能に依存しない散乱X線成分の割合と点像分布関数とを、特殊な被写体を用いることなく求められる。
【0046】
前述する(9)の手段によれば、任意の撮像条件で撮像した2次元X線像から拡散光成分の割合と点像分布関数とを計算し、点像分布関数を2次元光学像撮像手段の画素を単位とする関数とし、撮像条件を変更した場合であっても、拡散光成分の割合と点像分布関数を変更することなく散乱光を補正することにより、拡散光補正のために予め求めておかなければならないパラメータの数を減少できるので、簡便に拡散光の補正ができる。
【0047】
前述する(10)の手段によれば、2次元X線像撮像手段のオフセットレベルの補正を行う手段が、拡散光の補正に先立ち、2次元X線像撮像手段のオフセットレベルの補正を行うことにより、たとえば、被検体の周囲360度から撮影した2次元X線像のオフセットレベルを揃えることができるので、3次元構成によって得られる画像の画質とCT値の定量性をさらに向上できる。
【0048】
以下、前述する補正順番について、詳述する。
【0049】
X線透過像に順に加わったぼけの要因は、加わった順と逆の順に除去することにより、理論的に正確な補正が可能である。以下、補正の順番を変えた場合に起こる障害について説明する。なお、以下の説明において、ぼけの要因が加わった順と逆の順で補正を行うことを理論的に正しいという意味で正順補正、ぼけの要因が加わった順と同じ順で補正を行うすなわち正順補正と逆の順で補正を行うことを逆順補正とする。
【0050】
(検討1)オフセット補正と拡散光補正の順について検討する。ただし、オフセット成分画像をM1、オフセット成分が加わった画像をM2、拡散光成分の強度をav、分布関数をPSFvとする。
【0051】
正順補正では、オフセット補正後に拡散光補正を行う。したがって、正順補正後の画像は下記の式1で表される。以下、記号**は2次元コンボリューションを表す。
【0052】
【数1】
M=(M2−M1)−(M2−M1)**av・PSFv ・・・・・(式1)
逆順補正では、拡散光補正後にオフセット補正を行う。逆順補正後の画像M’は下記の式2で表される。
【0053】
【数2】
以上の式1及び式2より、逆順補正では正順補正に対して、過補正となる。過補正分を補うためには、正順補正の演算に加えて、オフセット成分画像M1に拡散光成分分布av・PSFvを畳み込む演算と和演算とが必要となり、演算量が増大してしまう。
【0054】
(検討2)拡散光補正と感度分布補正との順について検討する。拡散光成分画像をM3、拡散光成分が加わった画像をM4、感度分布画像をM5とする。正順補正では、拡散光補正後に感度分布補正を行う。正順補正後の画像Mを求める演算は、下記の式3で表される。
【0055】
【数3】
M=ln(M4−M3)−ln(M5) ・・・・・(式3)
一方、逆順補正では、感度分布補正後に拡散光補正を行う。その場合、拡散光成分画像M3と拡散光成分が加わった画像M4の両方に感度分布補正を行った後に、拡散光補正を行う必要がある。さらには、感度分布補正は対数演算、拡散光補正は実数演算であるために、逆順補正後の画像M’を求める演算は下記の式4となる。
【0056】
【数4】
式3及び式4より、逆順補正演算は正順補正演算に対して複雑であり、明らかに演算量が増大してしまう。
【0057】
(検討3)感度分布補正と幾何学的歪み補正の順について検討する。正順補正では、感度分布補正後に幾何学的歪み補正を行う。この場合、幾何学的歪み補正演算は1回である。一方、逆順補正では、幾何学的歪み補正後に感度分布補正を行うことになる。この場合、感度分布は画像上の位置に依存するため、補正前の画像と感度分布画像との両方に対して幾何学的歪み補正を行った後に、感度分布補正を行う必要がある。したがって、逆順補正では、幾何学的歪み補正演算が2回必要となり、正順補正に対して、演算量が倍増してしまうことになる。
【0058】
(検討4)幾何学的歪み補正と散乱X線補正について検討する。正順補正では、幾何学的歪み補正後に散乱X線補正を行う。逆順補正では、散乱X線補正後に幾何学的歪み補正を行うため、歪みが加わった状態で散乱X線補正を行うことになる。この場合、散乱X線補正は幾何学的歪みが発生する以前に発生したぼけであるから、散乱X線分布関数にも幾何学的歪みの影響を付加する必要が生じる。したがって、幾何学的歪みは位置に依存するので、画像上で局所的に分布関数の形状が異なることになる。一方、歪み量に合わせて関数の形状を変化させることは困難である。また、画像内で関数の形状が変化すると、フーリエ変換を用いた一括処理が不可能になる。したがって、正順補正に比べて逆順補正では補正演算が複雑になる。
【0059】
以上に示す検討1〜4の結果から明らかなように、ぼけが加わった順番とは逆の順番で、オフセット補正、拡散光補正、感度分布補正、幾何学的歪み補正、散乱X線補正の順番で画像の補正を行うことにより、正確かつ簡潔にぼけを補正できる。
【0060】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、発明の実施の形態(実施例)とともに図面を参照して詳細に説明する。
【0061】
なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0062】
図1は、本発明の一実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置の概略構成を示すブロック図であり、図1(a)はコーンビームX線断層撮影装置全体の概略構成を示すブロック図であり、図1(b)は本実施の形態の2次元X線画像検出器の概略構成を示すブロック図である。
【0063】
図1において、1は撮影制御装置、2はX線管、3はX線グリッド、4は2次元X線画像検出器(2次元X線撮像手段)、5は画像収集及び処理装置、6は表示装置、7は回転板、8は寝台天板、9は被検体、21はX線イメージングインテンシファイア、22は光学系、23はテレビカメラ、25は入力蛍光面、26は出力蛍光面を示す。
【0064】
図1(a)において、撮影制御手段1は、たとえば、周知の情報処理装置で実行されるプログラムによって実現される手段であり、本実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置の動作を制御する。
【0065】
X線管2は円錐状もしくは角錐状のX線を照射する周知のX線管であり、グリッド3は被検体9の内部で散乱したX線を遮断するための周知のグリッドであり、本実施の形態のグリッド3は内側のセプタの向きが、全てX線管2の中心に向かうように構成されている。
【0066】
画像収集及び処理装置5は、たとえば、周知の情報処理装置で実行される画像処理プログラムによって実現される画像処理手段と、この画像処理プログラムによって制御される周知の格納手段、切り替え手段及び信号変換手段等から構成される手段であり、2次元X線画像検出器4で撮像されたX線透過像(2次元X線像)に、補正処理を含む後述する処理を行った後、表示装置に画像信号を出力する。
【0067】
特に、前述する切り替え手段は、X線透過像に対し、後述する補正を実行するか否かを決定するための手段であり、たとえば、周知のスイッチ、周知のボタン、あるいは、制御画面上でのアイコンの選択等による切り替え方法が考えられる。なお、本実施の形態においては、スイッチをONにすれば補正処理が実行され、OFFにすれば補正処理は実行されない。したがって、本実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置の操作者は、この切り替え手段を制御することによって、補正処理の有無を制御できる。また、この切り替え手段により、補正処理の実施の有無を確認できることはいうまでもない。
【0068】
表示装置6は、たとえば、周知のモニタであり、画像収集及び処理装置5から出力される映像信号を映像に変換する。
【0069】
回転板7は、撮影制御手段1に制御される図示しない駆動手段によって、この回転板7に設置されるX線管2、グリッド3及び2次元X線画像検出器4を被検体9の周囲に回転させるものである。
【0070】
寝台天板8は、被検体9を所定の位置に配置するための周知の寝台天板であり、被検体9の撮影体位は仰臥位とする。ただし、撮影体位、寝台天板8と回転板7との角度等は任意に変えることができることはいうまでもない。
【0071】
次に、図1に基づいて本実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置の動作を説明すると、X線管2と2次元X線画像検出器4は回転板7上に固定され、被写体8の周囲を回転しながら透視あるいは撮影を行い、複数方向からのX線透過像を得る。
【0072】
たとえば、透視モードでは、撮像したX線透過像(2次元X線像)は画像収集及び処理装置5で補正された後に、表示装置6に即時表示される。一方、撮影モードでは、撮像したX線透過像は画像収集及び処理装置5で補正された後に、図示しない格納手段に保存され、その後、表示装置に表示される。また、補正されたX線透過像は画像収集及び処理装置5で3次元再構成された後に、表示装置6に表示される。
【0073】
このとき、画像収集及び処理装置5に設けられた図示しない切り替え手段によって、作業者は撮影したX線透過像の補正を実行するか否かを決定する切り替えることができる。
【0074】
被写体9を透過したX線像は、X線イメージインテンシファイアで光学像に変換された後に、光学系で結像され、テレビカメラで読み出される。このテレビカメラの出力信号は、テレビカメラに設けられた図示しないAD変換器でAD変換され、画像収集及び処理装置5で処理された後に、表示装置6に表示される。
【0075】
図1(b)において、X線イメージインテンシファイア21は、周知のX線イメージインテンシファイアであり、入力蛍光面25から入力したX線像を出力蛍光面26に光学像として出力する。
【0076】
光学系22は、たとえば、周知のレンズ群で構成されており、出力蛍光面26から出力される光学像をテレビカメラ23の撮像素子上に結像させる。
【0077】
テレビカメラ23は、周知のテレビカメラであり、図示しない撮像素子上に結像する光学像をアナログの電気信号に変換する。
【0078】
A/D変換器は、アナログの電気信号をデジタルの信号に変換する周知のA/D変換器である。
【0079】
次に、図1に基づいて、本実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置におけるX線像の画質低下要因となる歪み、散乱X線及び拡散光等の発生原因及びその順番を説明する。
【0080】
まず、X線管2から照射されたX線は、被写体9を通過する際に、被写体9の内部で散乱を起こし、散乱X線を生じるので、散乱X線を含んだX線像がX線イメージインテンシファイア21の入力蛍光面25(以下、入力面と略記する)で電子像に変換されることになる。
【0081】
散乱X線を含む電子像は、X線イメージインテンシファイア21の内部で増幅され、X線イメージインテンシファイア21の出力蛍光面26に結像される。
【0082】
X線イメージインテンシファイア21の入力蛍光面25の形状は、球面状の形状をしており、一方、X線イメージインテンシファイア21の出力蛍光面26の形状は平面形状をしているので、入力蛍光面25で得た像が平面の出力蛍光面26に結像する際に、X線イメージインテンシファイア21の内部でX線像に幾何学的な歪みが生じることになる。
【0083】
このときの歪みの形状は、画像周辺部に向かうほど画像が引き延ばされるいわゆる糸巻き型である。
【0084】
さらには、周辺部ほど画像が引き延ばされるので、画像周辺に向かうほど感度が低下したような現象が発生し、電子像には感度分布のむらが生じる。ただし、増幅時の電子軌道の歪みや入力蛍光面および出力蛍光面自体の感度分布むらのため、歪みや感度分布は局所的に異なる。
【0085】
電子像は出力蛍光面26において、光学像に変換されるが、その際に、光の拡散が生じることになるが、この光の拡散を防止することはほとんど不可能である。次に、光学像は光学系22を経た後、テレビカメラ23で読み出される(電気信号に変換される)が、その際、オフセットレベル分のレベルシフトが生じる。
【0086】
このように、被写体を透過したX線透過像には、散乱X線、幾何学的歪み、感度分布むら、拡散光及びオフセットの画像低下要因がこの順番で加わることになり、これらの画像低下要因が計測画像すなわちX線投影像にぼけとして加わった状態で、X線投影像が得られることになる。
【0087】
したがって、コーンビームX線断層撮影装置により得られたX線投影像の画質は、前述する散乱X線、感度分布むら、幾何学的歪み、拡散光により劣化するので、これらのX線投影像から再構成される3次元再構成画像は、画質の劣化が生じると共に、CT値の定量性の低下を生じることになる。
【0088】
図2は本実施の形態の画像収集及び処理装置の画像処理手段の概略構成を示すブロック図であり、201は第1のオフセットレベル補正手段、202は第2のオフセットレベル補正手段、203は第1の拡散光補正手段、204は第2の拡散光補正手段、205は感度分布補正手段、206は歪み補正手段(幾何学的歪み補正手段)、207は散乱X線補正手段、208は対数変換手段、209ははみ出し補正手段、210はコーンビーム画像再構成演算手段を示す。
【0089】
ただし、画像収集及び処理装置5の画像処理手段を構成する201から210の各手段は、図1の説明に記載したように、たとえば、周知の情報処理装置で実行されるプログラムによって実現される。
【0090】
図2において、第1のオフセットレベル補正手段201は、実測画像すなわち被検体9を撮像したX線透過像のオフセットレベルを補正する手段であり、X線を照射しないで予め撮像したX線像とX線透過像とから、X線透過像のオフセットレベルを補正したオフセット補正画像を生成する。
【0091】
第2のオフセットレベル補正手段202は、検出器感度分布画像のオフセットレベルを補正する手段であり、X線を照射しないで予め撮像したX線像と被検体9を配置せずに空気のみを撮像したX線像(空気投影像、エア像)とから、検出器感度分布画像のオフセットレベルを補正したオフセット補正画像を生成する。
【0092】
第1の拡散光補正手段203は、オフセットレベルを補正した後のX線透過像のオフセット補正画像に含まれる拡散光による影響を補正する手段であり、第2の拡散光補正手段204は、オフセットレベルを補正した後の検出器感度分布画像のオフセット補正画像に含まれる拡散光による影響を補正する手段である。
【0093】
感度分布補正手段205は、X線透過像のオフセット補正画像と検出器感度分布画像のオフセット補正画像とから、オフセット補正後のX線透過像に含まれる感度分布の差を補正した感度分布補正画像を生成する手段である。
【0094】
歪み補正手段206は、予め計測したチャート投影像に基づいて作成した変換テーブルに基づいて、感度分布補正画像の幾何学的歪みを補正した幾何学的歪み補正画像を生成する手段である。
【0095】
散乱X線補正手段209は、後述する手順により作成した散乱X線分布に基づいて、幾何学的歪み補正画像に含まれる散乱X線による影響を補正し、散乱X線補正画像を生成する手段である。
【0096】
対数変換手段208は散乱X線補正画像を対数変換する手段であり、はみ出し補正手段209は周知の視野はみ出しの補正を行う手段であり、コーンビーム画像再構成演算手段210ははみ出し補正後のX線像(投影像)を逆投影することによって3次元再構成画像を生成する手段である。
【0097】
次に、図3に本実施の形態の画像収集及び処理装置の画像処理手段の動作を説明するためのフローを示し、以下、図3に基づいて、画像処理手段の動作を説明する。
【0098】
まず、ステップ0として、事前に、X線を照射しないで撮影を行い、オフセット成分画像Aを得る。エッジ画像から拡散光成分の強度(割合)と点像分布関数とを求め、この両者の積をとり、拡散光分布Bを求める。
【0099】
次に、被検体9を配置せずに、被検体9のX線透過像(投影像、X線像)Cを撮像する方向と同じ方向から、空気投影像Dを撮影する。
【0100】
各画素における幾何学的歪みの量を計測するための周知のチャートを配置し、被検体9の投影像Cを撮影する方向と同じ方向から、前述するチャートのチャート投影像Eを撮影する。次に、このチャート投影像に基づいて、歪みの無い画像における各画素が、歪みを含む画像のどの画素に対応するかを示す変換テーブルFを作成する。
【0101】
図示しない計測手段が数種類のX線吸収体厚さに対する散乱X線成分の割合を求め、X線吸収体の厚さと散乱X線成分の割合との関係Gとを求め、画像最大値をとるX線吸収体の厚さHを推定する。また、数種類のX線吸収体厚さに対して、エッジ画像から散乱X線の点像分布関数Iを求める。
【0102】
次に、各被検体投影像C0に対し、ステップ1〜6の処理を行う。
【0103】
まず、ステップ1として、被検体投影像C0に対し、次のオフセットレベル補正と拡散光補正処理とを行う。
【0104】
第1のオフセットレベル補正手段201が、被検体投影像C0からオフセット成分画像Aを減算し、オフセット成分補正画像C1を作成する(101)。
【0105】
第1の拡散光補正手段203が、オフセット成分補正画像C1に拡散光分布Bを畳み込み、拡散光成分画像C2を作成する(102)。
【0106】
第1の拡散光補正手段203が、オフセット成分補正画像C1から拡散光成分画像C2を減算し、拡散光補正画像C3を作成する(103)。
【0107】
次に、ステップ2として、被検体投影像C0と同じ方向から撮影した空気投影像D0に対し、被検体投影像C0と同様に、次のオフセットレベル補正と拡散光補正処理を行う。
【0108】
空気投影像D0からオフセット成分画像Aを減算し、オフセット成分補正画像D1を作成する(104)。
【0109】
次に、オフセット成分補正画像D1に拡散光分布Bを畳み込み、拡散光成分画像D2を作成する(105)。
【0110】
オフセット成分補正画像D1から拡散光成分画像D2を減算し、拡散光補正画像D3を作成する(106)。
【0111】
次に、ステップ3として、感度分布補正手段205が、拡散光補正被検体画像C3を対数変換し、対数画像C4を作成する(107)。
【0112】
拡散光補正空気画像D3を対数変換し、対数画像D4を作成する(108)。
【0113】
感度分布補正手段205は、被検体の対数画像C4から、空気の対数画像D4を減算した後(109)、この減算した画像を逆対数変換して、被検体の感度分布補正画像C5を作成する(110)。
【0114】
ただし、3次元再構成を行う場合には、感度分布補正205の後で対数変換208を行う。したがって、感度分布補正の際に逆対数変換110を省略するならば、対数変換208を省略することもできる。
【0115】
ステップ4として、被検体の感度分布補正画像C5に対し、変換テーブルFを用いて、次に示す幾何学的歪みの補正を行う。
【0116】
まず、幾何学的歪み補正手段206は、歪みの無い画像すなわち歪み補正後の画像C6における各画素が、歪みを含む感度分布補正画像C5のどの画素に対応するのかを、変換テーブルFから索引する。
【0117】
次に、幾何学的歪み補正手段206は、索引された感度分布補正画像C5上の画素の値を、歪み補正画像C6上の画素に格納する(111)。
【0118】
ステップ5として、被検体9の歪み補正画像C6に対して、画像の計測条件と画像の値とから、被検体厚さの代表値Jを求める。
【0119】
ここで、被検体厚さの代表値Jが、前述するステップ0で予め指定したX線吸収体の厚さHよりも小さい場合には、被検体厚さの代表値Jを予め指定した厚さHに置き換える。
【0120】
前述するステップ0で求めたX線吸収体の厚さと散乱X線成分の割合との関係Gを用いて、被検体厚さの代表値Jから散乱X線成分の割合Kを求める。また、ステップ0で求めた、数種類のX線吸収体厚さに対する散乱X線の点像分布関数Iを用い、被検体厚さの代表値Jに対する散乱X線の平均的点像分布関数Lを補間して求める。
【0121】
散乱X線成分の割合Kと点像分布関数Lの積をとり、被検体厚さの代表値Iに対する散乱X線分布Mを求める。
【0122】
なお、このステップ5については、後に詳細にその動作を説明する。
【0123】
ステップ6として、被検体の歪み補正画像C6に対し、次の散乱X線補正処理を行う。
【0124】
まず、散乱X線補正手段207は、被検体の歪み補正画像C6に散乱X線分布Mを畳み込み、散乱X線成分画像C7を作成する(112)。
【0125】
次に、散乱X線補正手段207は、歪み補正画像C6から散乱X線成分画像C7を減算し、散乱X線補正画像C8を作成する(113)。
【0126】
ここで、透視モードの場合、前述するステップ0〜6の補正処理により求めた各補正画像C8を表示装置6に表示する。
【0127】
一方、撮影モードの場合、各補正画像C8を用いて、以下の手順に従って、3次元再構成を行う。
【0128】
まず、対数変換手段208が各補正画像C8を対数変換した後、はみ出し補正手段209が視野はみ出しの補正を行い、フィルタを畳み込んだ投影像C9を作成する。
【0129】
次に、コーンビーム画像再構成演算手段210が、各投影像C9を逆投影し、再構成画像C10を求める。
【0130】
なお、前述する空気投影像Dは、被検体9を撮影する全ての方向において撮影する。また、空気投影像Dの格納領域を縮小し、空気投影像Dに対する補正処理を簡略化するため、撮影方向が近い場合には、代表的な空気投影像あるいは平均的な空気投影像を用いてもよいことはいうまでもない。
【0131】
さらには、全撮影方向に対しても、代表的な空気投影像あるいは平均的な空気投影像を用いてもよい。
【0132】
幾何学的歪みを計測する周知のチャートには、たとえば、格子の交点に穴を開けたX線遮蔽板を用いる。また、X線吸収体としては、たとえば、周知のアクリル板を用いる。
【0133】
本実施の形態では、拡散光成分画像C2、D2及び散乱X線成分画像C7を作成する際に畳み込みを行う構成としたが、畳み込みの代わりに、フーリエ変換を利用することも可能である。
【0134】
図4は拡散光分布を計測するためのエッジ画像の計測系を説明するための図であり、12はX線遮蔽版を示す。なお、図4中に示す矢印及びX,Y,Zは、それぞれX軸、Y軸、Z軸を示す。
【0135】
図4において、X線遮蔽版12は、たとえば、金属板であり、このX線遮蔽版12を、たとえば、X線グリッド3から25cm程度離して配置する。このとき、X線遮蔽版12のエッジ部分14が2次元X線画像検出器4の視野の中央部になると共に、このエッジ部分14がY軸と平行になるように配置し、X線像(以下、エッジ画像と記す)を撮影する。
【0136】
次に、X線遮蔽版12のエッジ部分14が2次元X線画像検出器4の視野の中央部になると共に、このエッジ部分14がX軸と平行になるように配置し、エッジ画像を撮影する。
【0137】
次に、図5に拡散光分布の算出法を説明するためのフローを示し、以下、図5に基づいて、拡散光分布の算出手順を説明する。なお、本実施に形態では、2次元X線画像検出器のX−Y軸と、撮影されたエッジ画像(投影像)のX−Y軸は一致しているものとする。
【0138】
まず、ステップ11として、被検体9とほぼ同じ位置に画像の左半分が隠れるようにX線遮蔽板12を置き、ほぼ画像の中心でY軸に平行なエッジを作る。このとき、被検体9を置かずに、エッジ画像P0を撮影する。
【0139】
ステップ12として、エッジ画像P0のほぼ中心を通り、X軸に平行なプロファイルデータP1をとる。プロファイルデータP1のうち、エッジ位置を中心とし、X線が遮蔽されていた側(本実施の形態の場合には、エッジ画像の左側)のプロファイルデータP2をとる。ただし、前述するエッジ位置は、例えば、プロファイルデータP1を微分し、ピークの位置とする。
【0140】
ステップ13として、X線が遮蔽されていた側のプロファイルデータP2から、ほぼ2次元X線画像検出器4の分解能に当たる幅だけエッジに近いデータを削除した、プロファイルデータP3を作成する。次に、このプロファイルデータP3を関数でフィッティングし、近似式P4を求める。このときの関数としては、たとえば、指数関数を用いる。また、フィッティングの精度を向上させるために、フィッティングの際に、エッジ部分14に近いデータほど重みを付ける。
【0141】
ステップ14として、近似式P4に従い、エッジ位置までX線が遮蔽された側のプロファイルデータP5を作成する。このプロファイルデータP5をエッジとの交点で点対称に折り返したプロファイルデータP6を作成する。このプロファイルデータP6をプロファイルデータP1から減算した、プロファイルデータP7を作成する。
【0142】
ステップ15として、プロファイルデータP7のうち、エッジ位置を中心とし、X線が遮蔽されていた側のプロファイルデータP8をとる。
【0143】
ステップ16として、X線が遮蔽されていた側のプロファイルデータP8を関数でフィッティングし、近似式P9を求める。前述の関数としては、たとえば、誤差関数を用いる。次に、フィッティングの精度を向上させるために、たとえば、フィッティングの際に、エッジに近いデータほど重みを付ける。また、関数の最大値としては、プロファイルデータP7の最大値を用いる。
【0144】
ステップ17として、近似式P4のエッジ位置での値を、近似式P9のエッジ位置での値で除し、この結果をX軸方向の拡散光成分の割合P10とする。次に、近似式P4を微分し、その面積が1になるように規格化し、エッジ位置でエッジに線対称に折り返し、その結果をX軸方向の拡散光線像分布関数P11とする。
【0145】
ステップ18として、被検体9とほぼ同じ位置に画像の下半分が隠れるようにX線遮蔽板12を置き、ほぼ画像の中心でX軸に平行なエッジを作り、Y軸を90度回転したと考えて、前述するステップ1〜7を実行し、Y軸方向の拡散光成分の割合P12とY軸方向の拡散光線像分布関数P13を求める。
【0146】
ステップ19として、X軸方向の拡散光成分の割合P10とY軸方向の拡散光成分の割合P12とを合成し、その結果を拡散光成分の割合P14とする。なお、合成方法としては、たとえば、両者の平均値をとる。
【0147】
次に、X軸方向の拡散光線像分布関数P11とY軸方向の拡散光線像分布関数P13とを合成し、その結果を拡散光点像分布関数P15とする。なお、合成方法としては、たとえば、両者の積をとる。
【0148】
次に、拡散光成分の割合P14と拡散光点像分布関数P15との積をとり、その結果を拡散光分布P16とする。
【0149】
また、拡散光点像分布関数P15を画像検出器の画素を単位として求めることにより、X線イメージインテンシファイアのモード変更に関わらず、同じ拡散光点像分布関数P15を用いることができ、この場合には、拡散光補正のために予め求めておくパラメータの数が少なくできる。さらには、補正演算に必要なパラメータの数が少ないので、簡便に補正演算を行うことができる。
【0150】
図6は散乱X線分布を計測するためのエッジ画像の計測系を説明するための図であり、13はX線吸収体を示す。なお、図6中に示す矢印及びX,Y,Zは、それぞれX軸、Y軸、Z軸を示す。
【0151】
図6において、X線吸収体13は、たとえば、アクリル板であり、本計測系ではこのX線吸収体13とともに、X線遮蔽板12をX線グリッド3から25cm程度離して配置する。このとき、X線遮蔽版12のエッジ部分14が2次元X線画像検出器4の視野の中央部になると共に、このエッジ部分14がY軸と平行になるように配置し、エッジ画像を撮影する。
【0152】
次に、X線遮蔽版12のエッジ部分14が2次元X線画像検出器4の視野の中央部になると共に、このエッジ部分14がX軸と平行になるように配置し、エッジ画像を撮影する。
【0153】
このとき、前述するエッジ画像には、X線管2から照射されるX線がX線吸収体13を透過する際に発生した散乱X線によるぼけが加わっている。
【0154】
次に、図7に散乱X線分布の算出法を説明するためのフローを示し、以下、図7に基づいて、散乱X線分布の算出手順を説明する。なお、本実施に形態においても、2次元X線画像検出器のX−Y軸と、撮影されたエッジ画像のX−Y軸は一致しているものとする。
【0155】
まず、ステップ21として、被検体9とほぼ同じ位置に画像の左半分が隠れるようにX線遮蔽板12を置き、ほぼ画像の中心でY軸に平行なエッジを作る。X線源2から見てエッジ後方にX線吸収体13を配置し、エッジ画像Q0を撮影する。このとき、数種類の厚さのX線吸収体13に対して、エッジ画像の撮影を行う。各X線吸収体厚におけるエッジ画像Q0に対して、以下に示すステップ22〜28の処理を行う。
【0156】
ステップ22として、エッジ画像Q0に前述のステップ19で求めた拡散光分布P16を畳み込み、拡散光成分画像Q1を作成する。エッジ画像Q0から拡散光成分画像Q1を減算し、拡散光補正画像Q2を作成する。
【0157】
続いて、拡散光補正画像Q2に対して、前述するステップ3,4と同様に、感度分布の補正と画像歪みの補正とを行い、歪み補正画像Q21を作成する。
【0158】
ステップ23として、歪み補正画像Q21のほぼ画像の中心を通り、X軸に平行なプロファイルデータQ3をとる。このプロファイルデータQ3のうち、エッジ位置を中心とし、X線が遮蔽されていた側(本実施の形態の場合には、エッジ画像の左側)のプロファイルデータQ4をとる。ただし、エッジ位置は、たとえば、プロファイルデータQ3を微分し、このときのピークの位置とする。
【0159】
ステップ24として、X線が遮蔽されていた側のプロファイルデータQ4から、ほぼ2次元X線画像検出器4の分解能に当たる幅だけエッジに近いデータを削除し、プロファイルデータQ5を作成する。このプロファイルデータQ5を関数でフィッティングし、近似式Q6を求める。このときの関数としては、たとえば、指数関数を用いる。また、フィッティングの精度を向上させるため、フィッティングに際し、エッジに近いデータほど重みを付ける。
【0160】
ステップ25として、近似式Q6に従って、エッジ位置までX線が遮蔽された側のプロファイルデータQ7を作成する。このプロファイルデータQ7をエッジとの交点で点対称に折り返したプロファイルデータQ8を作成する。次に、プロファイルデータQ8をプロファイルデータQ3から減算したプロファイルデータQ9を作成する。
【0161】
ステップ26として、プロファイルデータQ9のうち、エッジ位置を中心とし、X線が遮蔽されていた側のプロファイルデータQ10をとる。
【0162】
ステップ27として、X線が遮蔽されていた側のプロファイルデータQ10を関数でフィッティングし、近似式Q11を求める。なお、関数としては、たとえば、誤差関数を用いる。また、フィッティングの精度を向上させるために、フィッティングの際に、エッジに近いデータほど重みを付ける。さらには、関数の最大値として、プロファイルデータQ9の最大値を用いる。
【0163】
ステップ28として、近似式Q6のエッジ位置での値を、近似式Q11のエッジ位置での値で除し、その結果をX軸方向の散乱X線成分の割合Q12とする。
【0164】
次に、近似式Q6を微分し、その面積が1になるように規格化し、エッジ位置でエッジに対して線対称に折り返し、その結果をX軸方向の散乱X線線像分布関数Q13とする。
【0165】
ステップ29として、被検体9とほぼ同じ位置に画像の下半分が隠れるようにX線遮蔽板12を置き、画像のほぼ中心でX軸に平行なエッジを作る。X線源から見てエッジ後方にX線吸収体13を配置し、エッジ画像Q14を撮影する。このとき、数種類の厚さのX線吸収体板13に対して、エッジ画像の撮影を行う。
【0166】
各エッジ画像Q14に対し、Y軸を90度回転したと考えて、前述するステップ22〜28の処理を行い、Y軸方向の散乱X線成分の割合Q15とY軸方向の散乱X線線像分布関数Q16を求める。
【0167】
ステップ30として、同じX線吸収体厚さに対して求めた、X軸方向の散乱X線成分の割合Q12とY軸方向の散乱X線成分の割合Q15とを合成し、その合成結果を散乱X線成分の割合Q17とする。ただし、合成方法としては、たとえば、両者の平均値をとる。次に、同じX線吸収体厚さに対するX軸方向の散乱X線線像分布関数Q13とY軸方向の散乱X線線像分布関数Q16とを合成し、その結果を散乱X線点像分布関数Q18とする。このときの合成方法としては、たとえば、両者の積をとる。
【0168】
前述するステップ22の拡散光補正を簡便化し、プロファイルデータに対して行うこともできる。すなわち、エッジ画像Q0において、画像のほぼ画像の中心を通り、X軸に平行なプロファイルデータQ20をとり、前述のステップ19で求めたX軸方向の拡散光成分の割合P10とX軸方向の拡散光線像分布関数P11との積を畳み込み、拡散光成分プロファイルデータQ21を作成する。次に、プロファイルデータQ20から拡散光成分プロファイルデータQ21を減算し、拡散光補正プロファイルデータQ22を作成する。このデータを前述のステップ23におけるX軸に平行なプロファイルデータQ3として用いる。Y軸に平行なプロファイルデータに対しても、同様に求めることができる。
【0169】
次に、図8に散乱X線分布を生成する方法を説明するための図を示し、以下、図8に基づいて、前述するステップ5に示す散乱X線分布の生成手順を詳細に説明する。
【0170】
まず、散乱X線補正前の画像とその画像の撮影条件とから被検体9の吸収体厚さの代表値rbを求める(112)。この求め方は別に示す。次に、この被検体9の吸収体厚さの代表値rbと予め定めた吸収体厚さの代表値最大限界値raとの大小関係の比較を行う(113)。
【0171】
比較の結果、被検体9の吸収体厚さの代表値rbが最大限界値raより大きい場合には、このときの吸収体厚さの代表値rbに対応する散乱X線強度比と散乱X線分布関数とを散乱X線補正処理114に適用し(114)、散乱X線補正画像を生成する。
【0172】
一方、比較の結果、被検体9の吸収体厚さの代表値rbが予め定めた吸収体厚さの代表値最大限界値raより小さい場合には、被検体9の吸収体厚さの代表値rbに吸収体厚さの代表値最大限界値raを代入し(116)、散乱X線補正処理を行う(114)。すなわち、吸収体厚さの代表値をraとして、このraに対応する散乱X線強度比と散乱X線分布関数とを散乱X線補正に適用し、散乱X線補正画像115を生成する。
【0173】
ただし、前述するステップ114の散乱X線補正処理は、補正前の画像110に対して、散乱X線強度比と散乱X線分布関数との積の畳み込み演算により散乱X線画像を生成し、この散乱X線画像を補正前の画像から減算する処理である。
【0174】
図9は本実施の形態の散乱X線分布の生成手順による効果を説明するための図であり、図9(a)は被検体9を代表する吸収体厚さrbが最大限界値raより大きいときの効果を説明するための図であり、図9(b)は最大限界値raが被検体9を代表する吸収体厚さrbより大きいときの効果を説明するための図である。
【0175】
図9において、曲線Sは直接X線画像の値の対数(横軸)と散乱X線画像の値の対数(縦軸)との関係を示したものである。この曲線Sは、グリッド3、X線管2に印加する管電圧及びイメージインテンシファイアのモードが同一の条件における吸収体の厚さとそのときの散乱X線強度比の実測値との関係をフィッティングにより求めたものである。
【0176】
図9の横軸すなわち画像レベル(画像の値)は、所定の撮影条件における吸収体の厚さと下記の式5とにより関係付けられる。したがって、横軸の下の吸収体厚さのスケールは、式5に基づく計算値を示している。
【0177】
なお、図9の縦軸及び横軸は、対数目盛である。
【0178】
【数5】
L=(1/μ)ln{(Io×Tp)/Ip} ・・・・・ (式5)
ただし、μは吸収体の吸収係数、Ioは撮影条件におけるグリッドと吸収体とがない場合の画像の値の計算値、Tpはグリッドの直接線透過率、Ipは直接線画像の値である。
【0179】
図9において、直接X線画像の値と吸収体の厚さとは、画像の値の最大値が吸収体の厚さゼロに相当し、この時の散乱X線成分の画像の値はゼロになる。また、散乱X線成分の画像の値は、吸収体の厚さが約5cmのときに最大値をとるので、本実施の形態においては、最大限界値raは散乱X線画像の値が最大値付近になる5cmの値に設定する。
【0180】
本実施の形態では、被検体9を代表する吸収体厚さrbとして、画像の最大値に相当する厚さを用いることにしてあり、図9(a)に示す例では、その値rbが12cmの場合を表している。この場合、rbに対応する曲線S上の点の値を通り、縦軸と横軸との画像の値が比例関係となる直線Tの関係を直接X線と散乱X線との強度の関係として適用する。
【0181】
この場合には、図9(a)に示すように、直線Tが曲線Sから離れるほど補正演算の相対誤差が増大する。この場合、直線Tは常に曲線Sの下にあるので散乱X線補正は不足補正となり、そのときの相対誤差は画像の値が小さい場合ほど増大することになるが、画像の値が小さい時の絶対誤差は小さく、画像の値がゼロに近づくにしたがい、絶対誤差もゼロに収束するので、比較的よい近似であるといえる。
【0182】
図9(b)に示す例は、被検体を代表する吸収体厚さrb、すなわち、画像の最大値に相当する吸収体の厚さrbが1cmの場合を示している。この場合には、被検体を代表する吸収体の厚さrbは、吸収体厚さの限界指定値raの値(5cm)より小さいので、横軸raに対応する曲線S上の点を通り、縦軸と横軸との画像の値が比例関係となる直線Vの関係を直接X線と散乱X線との強度の関係として適用する。
【0183】
この場合の誤差は、吸収体の厚さがrbより大きくraより小さい場合は過補正、吸収体の厚さがraより大きい場合は不足補正となるが、全体としては近似的に補正される。
【0184】
一方、被検体を代表する厚さrbをそのまま用いた場合の直線Uは、図9(b)から明らかなように、曲線Sから大きく離れているので、補正演算の相対誤差が増大する。
【0185】
この結果から明らかなように、本実施の形態の散乱X線分布の生成手順を用いる、すなわち、被検体を代表する吸収体厚さrbと吸収体厚さの代表値最大限界値raとの大小関係を比較し、大きい方の値に基づいて、散乱X線分布を近似することにより、raがrbより大きい場合、すなわち、X線透過像に被検体9の周囲であり吸収体が存在しない領域(被検体の厚さの最小値がゼロの領域)が撮影されている場合であっても、被検体吸収体厚さがある程度大であるときの条件により、相対誤差の小さな散乱X線補正演算を行うことができる。
【0186】
以上説明したように、本実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置によれば、X線透過像に順に加わったぼけの原因を、加わった順と逆の順に除去するので、前述する理由により、簡単な演算で補正ができる。また、その演算量も少ない演算量でよい。
【0187】
したがって、実測されたX線透過像において、計測系における画像の幾何学的歪みと感度分布がある場合にも、歪み、感度分布、拡散光、及び散乱X線をそれぞれ簡便に補正し、3次元再構成により得られた画像の画質とCT値の定量性を向上できる。
【0188】
また、被検体を代表する吸収体厚さrbと吸収体厚さの代表値最大限界値raとの大小関係を比較し、大きい方の値に基づいて、散乱X線分布を近似することにより、raがrbより大きい場合、すなわち、X線透過像に被検体9の周囲であり吸収体が存在しない領域が撮影されている場合であっても、相対誤差の小さな補正演算が可能となる。
【0189】
したがって、被検体9の厚さがゼロの部分を視野に含む場合にも、実測されたX線透過像において散乱X線による画質の低下を簡便に補正できる。また、3次元再構成により得られた画像の画質とCT値の定量性を向上できる。
【0190】
さらには、拡散光成分の強度と線像強度分布関数とを、検出器の2次元配列の行方向または列方向に直行する位置にX線吸収体のエッジを視野中心部付近に配置し、2次元投影像を計測し、その断面プロファイルを検出器の空間分解能成分によるガウス関数成分と、拡散光成分による指数関数成分との2成分フィッティングとにより求め、該線像分布関数から点像分布関数P15を近似的に求めることにより、拡散光成分の強度と点像強度分布関数を特殊な被写体を必要とせず、しかも検出器の空間分解能に依存しないデータとして簡便に求めることが可能となる。
【0191】
したがって、実測されたX線透過像において計測系における拡散光による画質の低下を簡便に補正し、3次元再構成により得られた画像の画質とCT値の定量性を向上できる。
【0192】
同様に、散乱X線成分の強度と点像分布関数を、2次元X線検出器の2次元配列の行方向または列方向に直行する位置にX線吸収体のエッジを視野中心部付近に配置し、これに種々の厚さの被検体模擬被写体を重ねて散乱体としたものの2次元投影像を撮影し、その投影像の断面プロファイルを検出器の空間分解能成分によるガウス関数成分と、散乱X線成分による指数関数成分との2成分フィッティングにより求めるので、散乱X線成分の強度と点像分布関数を特殊な被写体を必要とせず、しかも検出器の空間分解能に依存しないデータとして簡便に求めることができる。
【0193】
なお、本実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置では、拡散光分布及び散乱X線分布を求める際、ノイズを減少させるため、フィッティングに用いるプロファイルデータに対して、エッジに平行な方向に数ライン加算を行う、あるいはエッジに垂直な方向に数点ずつ加算を行う。
【0194】
本実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置では、ノイズの少ないX線が遮蔽された側のプロファイルデータを用いたが、X線が照射した側のプロファイルデータを用いてもよいことはいうまでもない。また、遮蔽に係わらず全プロファイルデータを用いて、フィッティングを行ってもよいことはいうまでもない。
【0195】
本実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置では、左右あるいは上下のエッジに対し、プロファイルの形状がほぼ等しいと仮定し、片側のプロファイルから求めた近似式を折り返して分布関数を求めた。しかしながら、エッジの向きによって分布が異なる場合には、各エッジの向きに対して分布関数を求めて、合成する必要がある。逆に、上下左右のエッジに対し、プロファイルの形状がほぼ等しいならば、どれか一つのプロファイルで代表させることもできる。
【0196】
本実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置では、テレビカメラのX−Y軸と撮影された投影像のX−Y軸は一致しているものとしたが、ずれている場合も考えられ、その場合には、回転角度を考慮して、分布関数の合成を行うことはいうまでもない。
【0197】
本実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置では、2次元X線画像検出器4としてイメージインテンシファイアとテレビカメラとを用いる場合について、その動作及び効果を説明したが、これに限定されることはなく、たとえば、アモルファスセレン膜とTFT配列とを用いる2次元X線検出器、蛍光板と2次元フォトダイオードアレイとを用いる2次元X線検出器、蛍光板とTFT配列を用いる2次元X線検出器、蛍光板と光学系とテレビカメラを用いる2次元X線検出器等の2次元X線画像検出器でもよいことはいうまでもない。
【0198】
また、前述する2次元X線検出器のうち、アモルファスセレン膜を用いる2次元X線検出器では拡散光の発生過程が存在しないので、補正処理において、拡散光に関する部分を削除することができる。
【0199】
さらには、光学系及びイメージインテンシファイアを用いない2次元X線検出器では幾何学的歪みの発生過程が存在しないので、補正処理において幾何学的歪みに関する部分を削除することができる。
【0200】
なお、本実施の形態ではイメージインテンシファイアとテレビカメラとを用いているので、感度分布むらが大きく補正を必要とするが、感度分布むらが小さい場合は補正を行わなくてもよい。
【0201】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【0202】
【発明の効果】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0203】
(1)被検体の厚さがゼロの部分を視野に含む場合にも、実測されたX線透過像において散乱X線による画質の低下を簡便に補正できると共に、3次元再構成により得られる画像の画質とCT値の定量性とを向上できる。
【0204】
(2)実測されたX線透過像において計測系における拡散光による画質の低下を簡便に補正できると共に、3次元再構成により得られる画像の画質とCT値の定量性とを向上できる。
【0205】
(3)実測されたX線透過像において計測系における画像の幾何学的歪みと感度分布がある場合にも、歪み、感度分布、拡散光、及び散乱X線をそれぞれ簡便に補正できると共に、3次元再構成により得られた画像の画質とCT値の定量性とを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のコーンビームX線断層撮影装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態の画像収集及び処理装置の画像処理手段の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態の画像収集及び処理装置の画像処理手段の動作を説明するためのフローである。
【図4】拡散光分布を計測するためのエッジ画像の計測系を説明するための図である。
【図5】拡散光分布の算出法を説明するためのフローである。
【図6】散乱X線分布を計測するためのエッジ画像の計測系を説明するための図である。
【図7】散乱X線分布の算出法を説明するためのフローである。
【図8】散乱X線分布を生成する方法を説明するための図である。
【図9】本実施の形態の散乱X線分布の生成手順による効果を説明するための図である。
【符号の説明】
1…撮影制御装置、2…X線管、3…X線グリッド、4…2次元X線画像検出器(2次元X線撮像手段)、5…画像収集及び処理装置、6…表示装置、7…回転板、8…寝台天板、9…被検体、13…X線吸収体、201…第1のオフセットレベル補正手段、202…第2のオフセットレベル補正手段、203…第1の拡散光補正手段、204…第2の拡散光補正手段、205…感度分布補正手段、206…歪み補正手段、207…散乱X線補正手段、208…対数変換手段、209…はみ出し補正手段、210…コーンビーム画像再構成演算手段。
Claims (9)
- 被検体に照射する円錐状又は角錐状のX線を発生するX線源と、前記被検体の2次元X線像を撮像する撮像手段と、前記2次元X線像から3次元X線CT像を再構成する再構成手段とを有するコーンビームX線断層撮影装置に於いて、X線吸収体の厚さと該厚さに対する散乱X線成分の割合との間の予め計測された関係を用いて、前記2次元X線像の撮像条件と前記2次元X線像とから、前記被検体のX線吸収量と前記X線吸収体のX線吸収量とが等しくなる時の前記X線吸収体の厚さを算出する吸収体厚さ算出手段と、該吸収体厚さ算出手段が算出した吸収体の厚さと予め設定される所定の前記X線吸収体の厚さとを比較し、前記被検体の吸収体の厚さが予め設定される所定の前記X線吸収体の厚さよりも薄い場合に、前記所定の前記X線吸収体の厚さに対応する前記散乱X線成分の割合を前記2次元X線像の散乱X線成分の割合とする置換手段と、前記散乱X線成分の割合に基づいて前記2次元X線像の散乱X線による影響を補正する散乱X線補正手段とを具備することを特徴とするコーンビームX線断層撮影装置。
- 請求項1に記載のコーンビームX線断層撮影装置に於いて、予め計測した拡散光成分の割合と拡散光点像分布関数とに基づいて前記2次元光学像の拡散光を補正する拡散光補正手段と、前記X線を照射せずに撮像した感度分布画像に基づいて前記拡散光の補正後の前記2次元光学像の感度分布を補正する感度分布補正手段と、予め計測した歪み変換テーブルに基づいて前記感度分布の補正後の前記2次元光学像の歪みを補正する歪み補正手段と、前記歪み補正後の前記2次元光学像の散乱X線成分を補正する散乱X線補正手段と、前記散乱X線成分の補正後の前記2次元光学像を対数変換する対数変換手段と、対数変換後の前記2次元光学像のはみ出しの補正を行うはみ出し補正手段とを具備し、前記再構成手段は、前記はみ出しの補正後の前記2次元光学像から3次元X線CT像を再構成することを特徴とするコーンビームX線断層撮影装置。
- 請求項1に記載のコーンビームX線断層撮影装置に於いて、前記散乱X線補正手段は、前記散乱X線成分の割合の計測値と散乱X線点像分布関数との積を計算する手段と、前記積を拡散光の補正前の2次元X線像に対して畳み込み演算して前記散乱X線による影響が補正された散乱X線成分画像を生成する手段と、前記2次元X線像から前記散乱X線成分画像を減算する手段とを具備することを特徴とするコーンビームX線断層撮影装置。
- 請求項2に記載のコーンビームX線断層撮影装置に於いて、前記拡散光補正手段は、前記拡散光成分の割合と前記拡散光点像分布関数との積を計算する手段と、前記積を拡散光の補正前の前記2次元光学像に対して畳み込み演算し拡散光による影響が補正された拡散光成分画像を生成する手段と、前記2次元光学像から前記拡散光成分画像を減算する手段とを具備することを特徴とするコーンビームX線断層撮影装置。
- 請求項2に記載のコーンビームX線断層撮影装置に於いて、前記拡散光補正手段は、前記拡散光成分の割合と前記拡散光点像分布関数の積との関数としてフーリエ空間に於ける拡散光補正フィルタを生成する手段と、拡散光の補正前の前記2次元光学像をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、該フーリエ変換後の前記2次元光学像に対して前記拡散光補正フィルタを積演算する手段とを具備することを特徴とするコーンビームX線断層撮影装置。
- 請求項2に記載のコーンビームX線断層撮影装置に於いて、X線遮蔽体のエッジ部分が前記撮像手段の2次元X線検出器の2次元配列の行方向又は列方向に直交すると共に、前記X線遮蔽体を前記撮像手段の視野の中心付近となるように配置して撮像した前記2次元X線像の断面プロファイルを、前記撮像手段及び前記像変換手段の空間分解能を表すガウス関数と前記拡散光を表す指数関数とによりフィッティングし前記ガウス関数と前記指数関数とに分離する手段と、前記ガウス関数と前記指数関数とから前記拡散光成分の割合と拡散光線像分布関数とを計算する手段と、前記拡散光線像分布関数から前記拡散光点像分布関数を近似する手段とを具備することを特徴とするコーンビームX線断層撮影装置。
- 請求項2に記載のコーンビームX線断層撮影装置に於いて、種々の厚さの被検体模擬被写体を重ねた散乱体をX線遮蔽体として用いて、前記X線遮蔽体のエッジ部分が前記撮像手段の2次元X線検出器の2次元配列の行方向又は列方向に直交すると共に、前記X線遮蔽体を前記撮像手段の視野の中心付近となるように配置して撮像した前記2次元X線像の断面プロファイルを、前記撮像手段及び前記像変換手段の空間分解能を表すガウス関数と散乱X線成分を表す指数関数とでフィッティングし前記ガウス関数と前記指数関数とに分離する手段と、前記ガウス関数と前記指数関数とから前記散乱X線成分の割合と散乱X線線像分布関数とを計算する手段と、前記散乱X線線分布関数から散乱X線点像分布関数を近似する手段とを具備することを特徴とするコーンビームX線断層撮影装置。
- 請求項2に記載のコーンビームX線断層撮影装置に於いて、前記拡散光補正手段は、任意の撮像条件で撮像した前記2次元X線像から前記拡散光成分の割合と前記拡散光点像分布関数とを計算する手段と、前記拡散光点像分布関数を前記撮像手段の画素を単位とする関数に変換する手段とを具備し、前記撮像条件を変更した場合であっても、前記拡散光成分の割合と前記拡散光点像分布関数に基づいて、前記拡散光を補正することを特徴とするコーンビームX線断層撮影装置。
- 請求項2に記載のコーンビームX線断層撮影装置に於いて、前記撮像手段のオフセットレベルの補正を行う手段を具備し、前記拡散光の補正に先立ち、前記撮像手段のオフセットレベルの補正を行うことを特徴とするコーンビームX線断層撮影装置。
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