以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態による放射線画像解析装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、本実施形態による放射線画像撮影システムは、撮影装置10と、システムを制御する制御装置20と、画像解析装置30(放射線画像解析装置)とを備える。
撮影装置10は被写体KにX線を照射するX線源12と、被写体Kを透過したX線を検出して被写体Kの放射線画像を取得する放射線検出器14とを備える。なお、本実施形態においては、被写体Kと放射線検出器14との間には、被写体Kを透過したX線のうち、被写体Kにより散乱した散乱線を除去するための散乱線除去グリッド(グリッド)は配置されない。
制御装置20は、設定された撮影条件に従ってX線源12を駆動制御する線源駆動制御部22と、放射線検出器14を制御し、被写体の放射線画像(被写体画像)を取得して記憶部42に記憶する検出器制御部24とを備える。
画像解析装置30は、検出器制御部24または後述の記憶部42などから被写体Kを撮影して得られた被写体画像Ikを取得する画像取得部31と、初期体厚分布T0(所定の体厚分布)を有する被写体Kの仮想モデルMを取得する仮想モデル取得部32と、仮想モデルMに基づいて、仮想モデルの放射線撮影により得られる一次線画像を推定した推定一次線画像Ipと、仮想モデルの放射線撮影により得られる散乱線画像を推定した推定散乱線画像Isとを合成した画像を、被写体Kの放射線撮影により得られる放射線画像を推定した推定画像Imとして生成する推定画像生成部33と、推定画像Imと被写体画像Ikに基づいて、推定画像Imと被写体画像Ikの違いが小さくなるように仮想モデルMの初期体厚分布T0を修正する修正部34と、修正された体厚分布Tn−1(nは自然数)を被写体画像Ikの体厚分布Tkとして決定する体厚分布決定部35と、決定した体厚分布Tk(x,y)に基づいて被写体画像Ikに含まれるX線の散乱線成分を表す散乱線情報を取得する散乱線情報取得部36と、散乱線情報取得部36が取得した散乱線情報に基づいて、放射線検出器14により取得された被写体画像Ikの散乱線除去処理を行う散乱線除去部37と、入力部38と、表示部40と、メモリおよびハードディスクなどの記憶媒体から構成され各種情報を記憶する記憶部42とを備える。なお、入力部38は、画像解析装置30に対する操作者の各種入力を受け付ける。具体的には入力部38は、キーボード、マウス、タッチパネル等からなる。表示部40は、CRT、液晶ディスプレイ等からなり、撮影装置10により取得された放射線画像および後述する散乱線除去処理に必要な各種入力の補助を行う。
以上述べた画像取得部31と、仮想モデル取得部32と、推定画像生成部33と、修正部34と、体厚分布決定部35と、散乱線情報取得部36、散乱線除去部37、入力部38、表示部40および記憶部42は、例えば一般的なパーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムから構成することができる。
画像解析装置30は、検査対象者である被写体Kに放射線を照射することにより撮影された被写体画像Ikを解析して、被写体Kの体厚分布Tkを推定するものである。
画像解析装置30の記憶部42には、検出器制御部24によって取得した被写体画像Ikとその撮影線量、管電圧、X線源12と放射線検出器14の検出面との距離SID、線源のターゲットおよびフィルタの材質、撮影に使用される放射線検出器の種類並びにエアギャップ量(被写体から放射線検出器までの距離)などの撮影条件が記憶される。記憶部42には、複数の撮影条件ごとに濃度値(画素値)と体厚とを対応付けた対応付けテーブルLUTが予め作成されて記憶されている。また、記憶部42には、初期体厚分布T0(x,y)を有する被写体Kの仮想モデルMが記憶される。また、記憶部42には、各処理で必要とされる各種パラメータ、生成された画像(推定一次線画像、推定散乱線画像など)が適宜記憶されるものとする。なお、本明細書における体厚は、照射された放射線の経路上における空気領域を除いた被写体領域の厚さの総計を意味する。なお、ここでは検出器制御部24より撮影条件が取得され記憶部42に記憶されたが、線源駆動制御部22によって取得されて記憶部42に記憶されてもよい。
以下、図2に示すフローチャートを用いて本実施形態に係る画像解析装置30によって実施される放射線画像解析処理の流れを説明する。
まず、画像取得部31は、記憶部42から、被写体Kである患者を放射線撮影して得られた被写体画像Ikを取得する(S01)。
次に仮想モデル取得部32は、記憶部42から、初期体厚分布T0(x,y)を有する被写体Kの仮想モデルMを取得する(S02)。仮想モデルMは、初期体厚分布T0(x,y)に従った体厚がxy平面上の各位置に対応付けられた被写体Kを仮想的に表すデータである。また、仮想モデルMに含まれる構造物(ここでは肺野、骨、臓器などの解剖学的構造物)と構造物の配置と、構造物の放射線に対する特性などを示す特性情報は、比較用被写体の胸腹部の肺野、骨などの解剖学的構造物の配置および組成に基づいて設定されている。
また、仮想モデルMの初期体厚分布T0(x,y)には任意の分布とされてよいが、本実施形態においては、仮想モデル取得部32によって初期体厚分布T0が生成されて取得される。仮想モデル取得部32は、被写体Kの撮影線量、管電圧、SIDなどの撮影条件を取得し、記憶部42から被写体Kの撮影条件に応じた画素値と体厚の対応付けテーブルLUTを取得する。図3に画素値と体厚の対応付けテーブルLUTの一例を示す。そして、記憶部42から比較用被写体(人体)を放射線撮影して得られた画像データを取得し、対応付けテーブルLUTに基づいて、比較用被写体の画像データの各画素の画素値に対応する体厚を特定することにより比較用被写体の画像データの体厚分布を取得する。そして、仮想モデル取得部32は、画像データの体厚分布を仮想モデルMの初期体厚分布T0(所定の体厚分布)として取得する。なお、初期体厚分布T0は、本実施形態のように仮想モデルMの取得処理の際に生成されてもよく、仮想モデルMの取得処理に先立って予め設定されていてもよい。
次いで推定画像生成部33は、被写体画像と同等の撮影条件で仮想モデルMを撮影した場合に得られる推定一次線画像Ipと、被写体画像と同等の撮影条件で仮想モデルMを撮影した場合に得られる推定散乱線画像Isとを合成した推定画像Imを生成する(S03)。図4A、図4Bは、推定画像Imの生成方法を説明するための図である。
図4Aに示すように、推定画像生成部33は、仮想モデルMを、被写体画像Ikと同等の撮影条件で仮想モデルMを撮影した場合に得られる推定一次線画像Ipを、下記式(2)に従って生成し、生成した推定一次線画像Ipを用いて、式(3)に従って推定散乱線画像Isを生成する。そして、推定画像生成部33は、式(4)に示すように推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを合成することにより、推定画像Imを生成する(S03)。なお、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを1回目に作成する際には、推定式(2)、式(3)において初期体厚分布T0(x,y)が用いられる(式(2)、(3)においてn=1である)。
ここで、(x,y)は被写体画像Ikの画素位置の座標、Ip(x,y)は画素位置(x,y)における推定一次線画像、Is(x,y)は画素位置(x,y)における推定散乱線画像、Io(x,y)は画素位置(x,y)における線量、Im(x,y)は画素位置(x,y)における推定画像、μは被写体の線減弱係数、Ks(x,y,Tn(x’,y’),θx’,y’)は画素位置(x,y)における被写体厚に応じた点拡散関数(Point Spread Function)を表す畳みこみカーネルである。なお、線量Io(x,y)は、被写体が存在しないと仮定した際に放射線が検出器で検出される線量であり、X線源12と放射線検出器14の検出面との距離(SID)、管電圧、撮影線量に応じて変化する。また、θx’,y’は、管電圧などの撮影条件や仮想モデルMの特性情報によって特定されるパラメータを表している。
なお、推定画像Imは、仮想モデルMを放射線撮影した場合に得られると推定される画像であればよく、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを合成した画像と実質的に見なせるものであればよい。例えば、図3Bに示すように、式(2)〜(4)に替えて下記式(5)を用いて、一次線成分と散乱線成分を合わせたカーネルを畳み込み積分して推定画像Imを生成してもよい。ここで、Kp+s(x,y,Tn−1(x’,y’),θx’,y’)は、一次線成分と散乱線成分を合わせた点拡散関数を表すカーネルである。また、放射線撮影により得られた画像から推定一次線画像および推定散乱線画像を合成した推定画像を生成可能であれば、任意のモデル関数を用いてよい。
図2のフローチャートに従って、続く処理を説明する。続いて、体厚分布決定部35は、被写体画像Ikと推定画像Imとの違いが終了条件を満たすか否かを判定する(S04)。ここでは、式(6)、式(7)に示すように、下記の被写体画像Ikと推定画像Imとの違いを表すエラー値Verrorを定義し、終了条件としてエラー値Verrorが閾値以下であるか否かを判定する。また、式(7)に示すように、被写体画像Ikから推定画像Imを減算した差分画像Idの各画素値の2乗和をエラー関数ferrorとして規定する。なお、終了条件として、被写体画像Ikと推定画像Imとの違いが許容可能な程度に十分小さくなったことを判定可能なあらゆる判定手法を適用可能である。
また、上記例に限定されず、エラー関数ferrorを、被写体画像Ikと推定画像Imとの違いを表すあらゆる方法で規定することができる。例えば、下記式(8)に示すように、被写体画像Ikから推定画像Imを減算した差分画像Idの各画素値の絶対値の総和をエラー関数ferrorとしてもよい。
エラー値Verrorが終了条件を満たさない場合には(S04,No)、修正部34は、体厚分布Tn−1(n=1の場合には、初期体厚分布T0)を修正する修正処理を行う(S05)。
体厚分布Tn−1の修正処理を行うために、被写体画像Ikと推定画像Imの違いが小さくなるように体厚分布Tn−1の各位置の修正値を取得できる任意の方法を適用可能である。本実施形態では、仮想モデルMの一画素以上の部分領域ごとに、仮想モデルMの体厚分布Tn−1を変動させて、推定画像Imと被写体画像Ikとの違いを小さくする部分領域の体厚を算出する処理を実施する。そして、算出された各部分領域の体厚によって仮想モデルの体厚分布を修正する。
具体的には、本実施形態は、最急降下法を用いて体厚分布Tn−1の体厚の修正値を求めるものとする。下記式(9)、(10)を用いて、仮想モデルMの画素のうち、Tn−1(x,y)において1つの特定の座標の体厚のみを変動させて、エラー関数ferrorの一次偏微分(勾配)に基づいて繰り返しdTn−1(x,y)を算出することにより、エラー関数ferrorの出力値を最小化することができる。そして、エラー関数ferrorの出力値を最小化した際の、1つの特定の座標の体厚を、その特定の座標の体厚の修正値として決定する。また、他の画素についても同様に、それぞれ体厚の修正値を求めることにより、各画素の体厚分布を修正し、修正した体厚分布Tnを取得する。
ただし、式(9)において、αは、体厚の更新速度を表すパラメータである更新係数である。式(10)に示すKp+sの微分値部分の算出方法の一例として、例えば、Tn−1(x,y)に極めて小さい値dtを加えたとき値の変化を式(11)によって算出して、式(10)のKp+sの値とすることができる。なお、式(1)〜(12)において、同じ要素には同じ符号を付して、説明を省略する。被写体画像Ikと推定画像Imの違いを表すエラー値Verrorを最小化するあらゆる最適化手法を適用可能であり、例えば、シンプレックス法や最急降下法、共役勾配法を用いることができる。
修正された体厚分布Tnを取得すると、体厚分布決定部35は、nの値を1つ増加して更新し(n=n+1とする)、仮想モデル取得部32は修正された体厚分布Tnを取得する(S02)。そして、取得された体厚分布Tnに対して、推定画像生成部33と体厚分布決定部35はS03乃至S04の処理をそれぞれ先述同様に実行する。そして、被写体画像Ikと推定画像Imとの違いを示すエラー値Verrorが終了条件を満たすまで、上記同様に、体厚分布Tnの修正処理(S05)と、修正された体厚分布Tnを有する仮想モデルMの取得処理(S02)と、体厚分布Tnを用いた新たな推定画像Imの生成処理(S03)と、新たに生成された推定画像Imと被写体画像Ikとの違いが終了条件を満たすかを判定する処理(S04)とが繰り返される。
一方、体厚分布決定部35は、エラー値Verrorが終了条件を満たしていることを判定した場合には(S04,Yes)、終了条件を満たした際にエラー値Verrorに用いられた体厚分布Tnを被写体画像Ikの体厚分布Tkとして決定して本実施形態における画像解析処理を終了する(S06)。
なお、本実施形態では、図3に示す体厚分布決定処理(S06)が実施された後に、ユーザの被写体画像Ikに対する散乱線除去処理の指示入力を受け付けた場合には、画像解析装置30のオプションの機能として散乱線情報取得処理と散乱線除去処理を実施する。ここでは、散乱線情報取得部36は、取得した体厚分布Tkを適用して、式(2)によって被写体画像Ikの推定一次線画像を取得し、式(3)に従って、被写体画像Ik(x,y)の推定散乱線画像Is(x,y)を取得する。そして、散乱線除去部37は、被写体画像Ikの推定散乱線画像Is(x,y)を被写体画像Ik(x,y)から減算することにより散乱線による影響を除去した処理後画像を生成して記憶部42に記憶する。処理後画像は、ユーザ指示に応じて適宜表示部40に表示される。なお、終了条件の判定(S04)において、エラー値Verrorが終了条件を満たした際には、被写体画像Ikと推定画像Imとの違いは許容可能な程度に小さくなっており、推定一次線画像Ipと被写体画像Ikの一次線画像との違いも小さくなっている。このため、被写体画像Ikから散乱線を除去した処理後画像を取得したい場合には、終了条件を満たしたエラー値Verrorの算出に用いられた推定一次線画像Ipを被写体画像Ikの一次線画像、すなわち被写体画像Ikから散乱線除去処理を行った後の処理後画像として取得してもよい。
本実施形態によれば、仮想モデルMを放射線撮影した場合に得られると推定される画像である、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを合成した推定画像Imを生成して、推定画像Imと被写体画像Ikとの違いが小さくなるように、仮想モデルMの体厚分布を修正しているため、推定画像Imと被写体画像Ikとの違いに基づいて、推定画像Imが被写体画像Ikに近似するように正確に体厚分布Tnを修正でき、修正した仮想モデルMの体厚分布Tnを被写体Kの体厚分布Tkとすることにすることにより、正確に被写体画像Ikの体厚分布Tkを決定することができる。また、従来方法ではグリッドを用いないで撮影された画像からは散乱線成分による影響が大きく正確な体厚分布を算出することが難しかったことに対し、本実施形態の手法によれば、推定画像Imが被写体画像Ikに近似するように正確に体厚分布Tnを修正して、被写体Kの体厚分布Tkとして決定しているため、被写体画像Ikがグリッドを用いないで撮影された画像であっても、従来方法よりも正確に体厚分布Tkを得ることができる。
また、本実施形態に示すように、仮想モデル取得部32が、修正された体厚分布Tnを有する仮想モデルMをさらに取得し、推定画像生成部33が、修正された体厚分布Tnを有する仮想モデルMから推定画像Imをさらに生成し、修正部34が、さらに生成された推定画像Imと被写体画像Ikの違いが小さくなるように仮想モデルMの体厚分布Tnをさらに修正する場合には、修正された体厚分布Tnを有する仮想モデルに基づいて、体厚分布Tの修正を繰り返すことにより、推定画像Imが被写体画像Ikにより近似するように体厚分布Tをより正確に修正できるため、修正した仮想モデルMの体厚分布Tn+1を被写体Kの体厚分布Tkとすることで、さらに正確に被写体画像Ikの体厚分布Tkを決定することができる。
また、本実施形態に示すように、体厚分布決定部35が、推定画像Imと被写体画像Ikとの違いが許容可能な程度に十分小さくなった場合に、仮想モデルMの体厚分布Tnを被写体Kの体厚分布Tkとして決定している場合には、推定画像Imと被写体画像Ikとが近似する体厚分布となるように、繰り返し体厚分布を修正して、非常に正確に被写体画像の体厚分布を決定することができる。また、体厚分布決定部35は、推定画像Imと被写体画像Ikとの違いが閾値以下となったか否かを判定することにより、推定画像Imと被写体画像Ikとの違いが許容可能な程度に十分小さくなったか否かを好適に判別して、推定画像Imと被写体画像Ikとが近似する体厚分布となるように、繰り返し体厚分布を修正して、非常に正確に被写体画像の体厚分布を決定することができる。
また、本実施形態において、修正部34が、推定画像と被写体画像の違い画像の画素値の絶対値の総和または違い画像の画素値の二乗和が小さくなるように、仮想モデルの体厚分布を修正しているため、好適に推定画像Imと被写体画像Ikとの違いの大きさを判定することができる。
また、本実施形態に示すように、修正部34が、仮想モデルMの1画素以上の部分領域ごとに、仮想モデルMの体厚分布Tn−1のうち1つの部分領域の体厚を変動させて、推定画像Imと被写体画像Ikとの違いを最小化する場合のその1つの部分の体厚を算出し、算出された各部分の体厚によって仮想モデルMの体厚分布を修正する場合には、各画素の体厚の修正値を正確に算出でき、好適に修正された体厚分布Tnを取得することができる。
本実施形態によれば、決定された被写体Kの体厚分布Tkを用いて被写体画像の散乱線を推定した散乱線情報を取得する散乱線情報取得部36と、取得した散乱線情報に基づいて、被写体画像の散乱線の除去処理を行う散乱線除去部37を備えているため、精度よく散乱線除去処理を行った処理後画像を取得することができる。
また、本実施形態の第2の実施形態として、推定画像生成部33が、被写体画像Ikに含まれる構造物と、構造物の配置と、構造物の放射線に対する特性を表す特性情報を仮想モデルMの特性情報として取得し、特性情報に基づいて、仮想モデルMの各位置に対応する構造物に応じて推定画像Imを算出するためのパラメータを選択して推定画像Imを生成してもよい。例えば式(12)で示すように、特性情報に基づいて、仮想モデルMから式(2)を用いて推定一次線画像Ipを作成する際の式(2)の線減弱係数を、各位置における構造物(構造物の組成)に応じて切り換えて用いることが考えられる。放射線撮影された画像において一次線成分や散乱線成分は、被写体の骨、臓器の種類、臓器などに含まれる空洞の有無などの被写体に含まれる構造物と、構造物の空間的な位置によって、放射線撮影された画像の各位置において複雑に変動する。このため、被写体画像Ikの特性情報を仮想モデルMの特性情報として取得し、仮想モデルMの各位置に(仮想的に)含まれる構造物に応じて、推定一次線画像や推定散乱線画像などに用いるパラメータを適切に選択することにより、構造物に起因する一次線成分や散乱線成分の誤差を低減して、より正確に推定一次線画像Ip、推定散乱線画像Isを生成することができる。
なお、式(3)で示すKsのパラメータθx’,y’についても、構造物ごとに異なるθx’,y’の値を設定し、各位置の構造物に応じて各位置に適用されるθx’,y’を異ならせてもよい。また、被写体画像Ikと同一の被写体Kを撮影したCT画像やMRI画像などの3次元画像を取得し、取得したCT画像やMRI画像から被写体画像Ikの特性情報を測定して取得してもよい。同じ被写体Kの3次元画像を用いて特性情報を取得した場合には、臓器や骨の空間的な位置などの情報についても正確に取得できる。
初期体厚分布(所定の体厚分布)として種々の体厚分布を用いてよい。例えば、初期体厚分布を一様分布とすることもできるが、計算負荷の観点から、ある程度被写体Kに近いと推測される体厚分布を初期体厚分布とすることが好ましい。この観点から、例えば、同一の被写体Kについて過去に測定した体厚分布Tを初期体厚分布T0とすることが好ましい。この場合には、姿勢や経時変化による被写体Kの違いなどの微小な修正を行うだけで体厚分布の決定をすることができ、計算負荷を軽減することができる。
また、初期体厚分布T0が、被写体とは異なる比較用被写体を放射線撮影して得た比較用被写体画像と、比較用被写体を3次元撮影して得たCT画像やMRI画像などの3次元画像を取得し、取得された3次元画像の各位置において、比較用被写体画像の放射線経路に対応する直線上の比較用被写体の体厚を計測することにより作成されていてもよい。3次元画像を用いることより、初期体厚分布を正確なものとすることができるため、被写体の姿勢などによる微小な修正を行うだけで体厚分布の決定をすることができ、計算負荷を軽減することができる。
また、比較用被写体に関する体厚分布を用意する場合、複数の比較用被写体について、各比較用被写体を測定して得た体厚分布と比較用被写体の体格を表す体格情報とを互いに対応付けたセットを複数用意し、被写体の体格情報を取得し、被写体の体格情報と類似する体格情報を有する比較用被写体の体厚分布を特定し、特定された比較用被写体の体厚分布を、被写体画像の初期体厚分布T0とすることが考えられる。この場合には、被写体と体格が類似する比較用被写体の体厚分布を初期体厚分布とすることにより、初期体厚分布を被写体の体厚分布と類似するものとできる可能性が高くなり、被写体の姿勢などによる微小な修正を行うだけで体厚分布の決定をすることができ、計算負荷を軽減することができる。また、この被写体の体格情報と比較用被写体の体格情報は、ユーザ入力により入力されたものであってもよく、被写体画像と比較用被写体の放射線画像のそれぞれの濃度ヒストグラムのヒストグラム幅(濃度値の最大値と最小値の差)など被写体画像と比較用被写体から抽出された体格情報であってもよい。また、被写体画像と比較用被写体から抽出可能な体格情報であれば、あらゆる情報を体格情報とすることができ、例えば、被写体の所定部位の長さなどを被写体の体格情報として用いてもよい。
また、被写体の放射線撮影の前後等に超音波センサまたはデジタルメジャーなどの距離を測定可能な測定装置によってX線源側の被写体表面と検出器との距離を測定し、測定装置またはユーザ入力などからこの測定値を取得して、取得した被写体の体表面と検出器との距離を、初期体厚分布を決定するための指標値として用いてもよい。この場合には、例えば、被写体の体表面と検出器との距離を上記被写体の体格情報として用いることができる。また、初期体厚分布を被写体の体表面と検出器との距離の一様分布としてもよい。
また、推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを生成できる種々の方法を適用してよい。例えば、式(2)および(3)に替えて、例えば、加藤秀起、「ディジタルX線画像の後処理による散乱線成分除去法」, 日本放射線技術学会雑誌第62巻第9号, 2006年9月, p.1359-1368に記載されたように、モンテカルロシミュレーション法を用いて推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを生成してもよい。また、モンテカルロシミュレーション法を用いる場合に、仮想モデルMに含まれる構造物と構造物の配置と構造物の放射線に対する特性とを表す情報である特性情報を用いることが好ましい。この場合には、より高精度に推定一次線画像Ipと推定散乱線画像Isを生成することができる。
また、上記各実施形態において、実際に使用されたと考えられる撮影条件を取得する撮影条件取得部をさらに備えてもよい。管電圧や撮影線量、X線源と検出器の面との距離SIDは、被写体の体型や診断目的や放射線撮影システムが設置される施設の環境などに応じて変更されるものである。このため、撮影条件取得部を備えて被写体画像Ikの撮影条件を取得し、推定画像生成部33が、取得した撮影条件に応じて、推定画像Imの生成に用いられる、撮影条件によって変動するパラメータ(例えば、上記式(3)、(5)におけるθx’,y’など)を選択し、選択したパラメータを用いて推定画像Imの生成処理(S03)を行うことが好ましい。
撮影条件取得部は、撮影条件を取得可能であればあらゆる方法で撮影条件を取得してよく、例えば、撮影条件取得部をユーザに入力された撮影条件または被写体が存在しない位置において検出器で検出される画素値から算出した撮影条件を取得するものとしてもよい。この場合、被写体が存在しない領域である素抜け領域の濃度値と撮影線量とを対応づけたテーブルを記憶部42に記憶しておき、素抜け領域の濃度値に基づいてこのテーブルを参照して撮影線量を取得すればよい。また、撮影条件取得部は、実際に被写体画像の撮影に適用された撮影条件を取得可能な種々の方法を適用できる。
例えば、撮影条件取得部は、X線源と検出器の面との距離SIDを任意の方法で取得してよく、例えば超音波センサまたはデジタルメジャーなどの距離を測定可能な測定装置によって測定されたX線源と検出器との距離をSIDとして取得することができる。また、撮影条件取得部は、X線源12と放射線検出器14との間であって放射線検出器14から既知の距離離間した位置に配置された3次元マーカを放射線撮影して得られた放射線画像を取得し、この放射線画像中の3次元マーカの位置や散乱線成分を解析してSIDを算出してもよい。
また、撮影条件取得部は、撮影線量を任意の方法で取得してよく、例えば、面積線量計などの測定機器を用いて測定された線量を、放射線検出器14に入射する撮影線量として取得してもよい。また、撮影条件取得部は、厚さが既知のアクリルモデルを被写体とともに撮影し、取得された放射線画像におけるアクリルモデルの部分の濃度に基づいて、撮影線量を取得するようにしてもよい。この場合、アクリルモデルの濃度と撮影線量とを対応づけたテーブルを記憶部42に記憶しておき、アクリルモデルの濃度に基づいてこのテーブルを参照して撮影線量を取得すればよい。なお、撮影条件は、放射線画像撮影システムが設置される施設に応じて決まっていることが多い。このため、実際の撮影時の撮影条件が不明である場合は、施設に応じた撮影条件を使用すればよい。
また、放射線検出器14の種類ごとに被写体画像Ikの画素値が変動する可能性があるため、撮影条件に放射線検出器14の種類を特定する情報を含むようにし、撮影線量と、管電圧と、SIDと、放射線検出器14の種類との組合せごとに、予め測定して得られた濃度値(画素値)と放射線検出器14に到達した線量とを対応付けた線量特定テーブルを予め作成して記憶部42に記憶しておくことが好ましい。そして、撮影条件取得部は、被写体画像Ikの撮影に用いられた放射線検出器14の種類を取得し、取得した放射線検出器14の種類に対応する線量特定テーブルを参照して、各位置の濃度値に対応する線量を特定して撮影線量として用いてもよい。
また、修正部34が、取得した撮影条件に応じて、推定画像Imの生成に用いられる、撮影条件によって変動するパラメータ(例えば、上記式(10)、(11)におけるθx’,y’など)を選択し、選択したパラメータを用いて推定画像Imの体厚分布の修正処理(S05)を行うことが好ましい。この場合には、被写体画像Ikの撮影条件に応じて、撮影条件によって変動するパラメータを適切に設定して推定画像Imを生成することができるため、推定画像Imをより正確に推定して生成することができる。このため、結果として、被写体Kの体厚分布をより正確に決定することができる。
また、上記各実施形態において、画像取得部31は、グリッドを用いないで撮影された被写体画像Ikを取得するものとしたが、これに限定されず、画像取得部31は、グリッドを用いて被写体Kを放射線撮影した放射線画像に対して、グリッドに起因する縞模様を除去する処理を施した画像を被写体画像Ikとして取得してもよい。グリッドに起因する縞模様を除去する処理は、グリッドに起因する縞模様を除去可能な種々の手法によって行われたものであってよく、例えば特開2012−203504号公報に記載された手法などが参照できる。
また、画像取得部31が、グリッドを用いて被写体Kを放射線撮影した放射線画像に対して、グリッドに起因する縞模様を除去する処理を施した画像を被写体画像Ikとして取得する場合には、グリッドの種類を特定するグリッド情報ごとに散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを対応付けたテーブルを予め作成して記憶部42に記憶しておくことが好ましい。そして、推定画像生成部33は、グリッド情報ごとに散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを対応付けたテーブルに基づいて、被写体の撮影に用いられたグリッド情報に対応する散乱線透過率Tskおよび一次線透過率Tpkを特定し、条件式(4)に換えて下記条件式(4−1)を用いて推定画像を生成することが好ましい。この場合には、仮想モデルの推定一次線画像を、被写体画像に使用されたものと同じ種類のグリッドによる一次線の吸収を反映したものとすることができ、仮想モデルの推定散乱線画像を、被写体画像に使用されたものと同じ種類のグリッドによる散乱線の吸収を反映したものとすることができる。このように、被写体画像に使用されたグリッドに基づいて、推定画像を同グリッドによる散乱線と一次線の吸収を反映したものにすることにより、被写体画像に使用されたグリッドに放射線が吸収されることに起因する体厚分布の誤差を低減することができる。なお、グリッド情報を、グリッド比、グリッド密度、収束型か平行型か、収束型の場合の集束距離およびインタースペース素材(アルミニウム、ファイバー、ベークライト等)に含まれる1つ以上の要素の任意の組合せとすることができる。
続いて、図5、図6を用いて、本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、本発明の第3の実施形態に係る放射線画像解析装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図であり、図6は、本発明の第3の実施形態に係る放射線画像解析装置によって行われる処理を示すフローチャートである。
図5に示すように、第3の実施形態に係る画像解析装置30は、グリッドを使用することなく撮影を行うことにより取得された被写体画像に対して、実際にグリッドを使用して撮影を行った場合と同様の散乱線を除去する効果を付与するように、被写体画像に対して画像処理を施す散乱線解析部43を備える。散乱線解析部43は、後述の特性取得部39と、散乱線情報取得部36と、散乱線除去部37により構成される。第3の実施形態は、画像解析装置30が、仮想的なグリッドの特性である仮想グリッド特性を取得する特性取得部39を更に備え、散乱線情報取得部36が散乱線情報として被写体画像Ikに含まれるX線の散乱成分を表す散乱成分情報をさらに取得し、散乱線除去部が特性取得部39に取得された仮想グリッド特性および散乱線情報取得部36が取得した散乱成分情報に基づいて、放射線検出器14により取得された被写体画像の散乱線除去処理を行う点が上記各実施形態と異なる。なお、第3の実施形態においては、図1に示す画像解析装置30と共通する各構成要素を備え、上記の相違点を除いて各構成要素の機能および処理も概ね共通するため、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明し、共通部分については適宜説明を省略する。
特性取得部39は、操作者による入力部38からの入力により仮想グリッド特性を取得する。第3の実施形態においては、仮想グリッド特性は、仮想グリッドについての散乱線透過率Ts、および被写体Kを透過して直接放射線検出器14に照射される一次線の透過率(一次線透過率)Tpとする。なお、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは0〜1の間の値をとる。
特性取得部39は、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpの値の入力を直接受け付けることにより仮想グリッド特性を取得してもよいが、第3の実施形態においては、グリッドの種類を表すグリッド情報、被写体についての情報(被写体情報)、および被写体画像Ikの取得時の撮影条件の少なくとも1つの指定を受け付けることにより、仮想グリッド特性、すなわち散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを取得する。なお、以下、特性取得部39に用いられる撮影条件を、特性取得用撮影条件と記載する。
ここで、グリッド情報とは、グリッド比、グリッド密度、収束型か平行型か、収束型の場合の集束距離、インタースペース素材(アルミニウム、ファイバー、ベークライト等)等の、グリッドの種類を特定する情報の少なくとも1つを含む。散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpはグリッドの種類に応じて異なるものとなる。このため、グリッド情報に関して、各種グリッド情報の少なくとも1つと仮想グリッド特性とを対応づけたテーブルが記憶部42に記憶されている。
被写体情報は、胸部、腹部および頭部等の被写体の種類を含む。ここで、被写体画像Ikの撮影時には、一般的に撮影部位に応じて使用するグリッドの種類が決められており、グリッドの種類に応じて散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpが異なるものとなる。このため、被写体情報に関して、各種被写体情報と仮想グリッド特性とを対応づけたテーブルが記憶部42に記憶されている。
特性取得用撮影条件は、撮影時の撮影距離(SID)、撮影線量、管電圧、線源のターゲットおよびフィルタの材質、並びに撮影に使用される放射線検出器の種類等のうちの少なくとも1つを含む。ここで、被写体画像Ikの撮影時には、一般的に撮影条件に応じて使用するグリッドの種類が決められており、グリッドの種類に応じて散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpが異なるものとなる。このため、特性取得用撮影条件に関して、各種特性取得用撮影条件と仮想グリッド特性とを対応づけたテーブルが記憶部42に記憶されている。なお、特性取得用撮影条件は、仮想グリッド特性の取得に必要なパラメータを含むものであれば、体厚分布の決定に用いる撮影条件(体厚分布決定用撮影条件)や後述の散乱線情報の取得に用いる散乱線情報取得用撮影条件と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
特性取得部39は、記憶部42に記憶されたテーブルを参照して、入力部38から入力されたグリッド情報、被写体情報および特性取得用撮影条件の少なくとも1つに基づいて、仮想グリッド特性を取得する。なお、グリッド情報、被写体情報および特性取得用撮影条件は、入力部38の直接の入力を受け付ければよいが、各種グリッド情報、各種被写体情報および各種特性取得用撮影条件のリストを表示部40に表示し、リストからのグリッド情報、被写体情報および特性取得用撮影条件の少なくとも1つの選択を受け付けることにより、グリッド情報、被写体情報および特性取得用撮影条件の入力を行うようにしてもよい。
また、第3の実施形態においては,散乱線除去処理は、後述するように被写体画像Ikを周波数分解することにより行われる。第3の実施形態においては、仮想グリッド特性は、周波数分解による得られる被写体画像Ikの複数の周波数帯域のそれぞれについて取得される。このため、上記テーブルにおける仮想グリッド特性は、複数の周波数帯域のそれぞれに対応づけられたものとなっている。
また、グリッド情報、被写体情報および特性取得用撮影条件のすべてと仮想グリッド特性とを対応づけたテーブルを記憶部42に記憶しておき、グリッド情報、被写体情報および特性取得用撮影条件のすべてに基づいて仮想グリッド特性を取得するようにしてもよい。この場合、テーブルは、各種グリッド情報、各種被写体情報および各種特性取得用撮影条件と、仮想グリッド特性とを対応づけた少なくとも4次元のテーブルとなる。
なお、グリッドを使用することによって増加する照射線量の増加率である露出倍数、グリッドを使用した場合と使用しない場合とのコントラストの比率であるコントラスト改善係数、および一次X線透過率の散乱X線透過率に対する比率である選択度は、グリッドの特性を表す特性値であり、これらの特性値から散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを算出することができる。このため、特性取得部39において、露出倍数、コントラスト改善係数および選択度の少なくとも1つの指定を受け付けることにより、仮想グリッド特性、すなわち散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを算出して取得するようにしてもよい。
また、第3の実施形態において画像解析装置30は、仮想グリッド特性のみならず、散乱成分情報にも基づいて散乱線除去処理を行う。このため、散乱線情報取得部36は散乱線情報としてさらに散乱成分情報を取得する。第3の実施形態においては、散乱成分情報は、例えば被写体Kが胸部であれば、縦隔が存在する被写体画像Ikの中央部分ほど散乱線が多く、肺野が存在する周辺部ほど散乱線が少ないという、被写体画像Ikにおける散乱線含有率分布とする。
散乱線情報取得部36は、撮影により取得された被写体画像Ikを解析することにより、散乱成分情報すなわち散乱線含有率分布を取得する。被写体画像Ikの解析は、被写体画像Ikの撮影時における照射野情報、被写体情報および撮影条件に基づいて行う。
照射野情報とは、照射野絞りを用いて撮影を行った場合における、被写体画像Ikに含まれる照射野の位置および大きさに関する照射野分布を表す情報である。被写体情報とは、上述した胸部、腹部および頭部等の被写体の種類に加えて、被写体の被写体画像Ik上での位置、被写体の組成の分布、被写体の大きさおよび被写体の厚さ等に関する情報である。散乱線情報取得部36に用いられる撮影条件とは、撮影線量(管電流×照射時間)、管電圧、撮影時の撮影距離(SID)、エアギャップ量(被写体から放射線検出器までの距離)、および放射線検出器の特性等に関する情報である。なお、以下、散乱線情報取得部36に用いられる撮影条件を、散乱線情報取得用撮影条件と記載する。散乱線情報取得用撮影条件は、散乱線情報の取得に必要なパラメータを含むものであれば、体厚分布の決定に用いた撮影条件や特性取得用の撮影条件と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
これらの照射野情報、被写体情報および散乱線情報取得用撮影条件は、被写体画像Ikに含まれる散乱線の分布を決める要因となっている。例えば、散乱線の大小は照射野の大きさにより左右され、被写体の厚さが大きいほど散乱線は多くなり、被写体と放射線検出器との間に空気が存在すると散乱線が減少する。したがって、これらの情報を用いることにより、より正確に散乱線含有率分布を取得することができる。
散乱線情報取得部36は、被写体Kの体厚分布Tk(x,y)から、式(13)、(14)にしたがって一次線像および散乱線像を算出し、算出した一次線像および散乱線像から式(15)に基づいて、散乱線含有率分布S(x,y)を算出する。なお、散乱線含有率分布S(x,y)は0〜1の間の値をとる。
Ip(x,y) = Io(x,y)×exp(-Tk(x,y)×μ) (13)
Is(x,y) = Io(x,y)*Sσ(Tk(x,y)) (14)
S(x,y) = Is(x,y)/(Is(x,y)+Ip(x,y)) (15)
ここで、(x,y)は被写体画像Ikの画素位置の座標、Ip(x,y)は画素位置(x,y)における一次線像、Is(x,y)は画素位置(x,y)における散乱線像、Io(x,y)は画素位置(x,y)における被写体表面への入射線量、μは被写体の線減弱係数、Sσ(Tk(x,y))は画素位置(x,y)における被写体厚に応じた散乱の特性を表す畳みこみカーネルである。なお、先述の式(2)と式(13)は公知の指数減弱則に基づく式であり、式(14)は「J M Boon et al, An analytical model of the scattered radiation distribution in diagnostic radiolog, Med. Phys. 15(5), Sep/Oct 1988」(参考文献1)に記載された手法に基づく式である。なお、上記式(13)、(14)において、被写体表面への入射線量Io(x,y)は、どのような値を定義してもS(x,y)を算出する際に除算によってキャンセルされるため、例えば値を1とする等、任意の値としてもよい。
ここで、式(14)における*は畳みこみ演算を表す演算子である。カーネルの性質は、被写体の厚さの他に、照射野の分布、被写体の組成の分布、撮影時の照射線量、管電圧、撮影距離、エアギャップ量、および放射線検出器の特性等によっても変化する。参考文献1に記載された手法によれば散乱線は一次線に対する位置拡張関数(point spread function、式(14)におけるSσ(Tk(x,y))の畳みこみにより近似することができる。なお、Sσ(Tk(x,y))は、照射野情報、被写体情報および散乱線情報取得用撮影条件等に応じて実験的に求めることができる。
第3の実施形態においては、撮影時の照射野情報、被写体情報および散乱線情報取得用撮影条件に基づいてSσ(Tk(x,y))を算出してもよいが、各種照射野情報、各種被写体情報および各種散乱線情報取得用撮影条件とSσ(Tk(x,y))とを対応づけたテーブルを記憶部42に記憶しておき、撮影時の照射野情報、被写体情報および散乱線情報取得用撮影条件に基づいて、このテーブルを参照してSσ(Tk(x,y))を求めるようにしてもよい。なお、Sσ(Tk(x,y))をTk(x,y)にて近似するようにしてもよい。
散乱線除去部37は、仮想グリッド特性および散乱成分情報に基づいて、被写体画像Ikにおける散乱線と見なせる周波数帯域の周波数成分を低減させることにより、散乱線除去処理を行う。このため、散乱線除去部37は、被写体画像Ikを周波数分解して複数の周波数帯域毎の周波数成分を取得し、少なくとも1つの周波数成分のゲインを低減する処理を行い、処理済みの周波数成分およびこれ以外の周波数成分を合成して、散乱線除去処理済みの被写体画像Ikを取得する。なお、周波数分解の手法としては、被写体画像Ikを多重解像度変換する手法の他、ウェーブレット変換、フーリエ変換等、公知の任意の手法を用いることができる。
散乱線除去部37は、仮想グリッド特性である散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tp、並びに散乱線含有率分布S(x,y)から、周波数成分を変換する変換係数R(x,y)を下記の式(16)により算出する。
R(x,y) = S(x,y)×Ts + (1-S(x,y))×Tp (16)
散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tp、並びに散乱線含有率分布S(x,y)は0〜1の間の値となるため、変換係数R(x,y)も0〜1の間の値となる。散乱線除去部37は、変換係数R(x,y)を複数の周波数帯域のそれぞれについて算出する。
なお、以降の説明において、被写体画像Ikの画素値をIk(x,y)、周波数分解により得られる周波数成分画像をIk(x,y,r)、周波数合成をIk(x,y)=ΣrIk(x,y,r)、周波数帯域毎の変換係数をR(x,y,r)、周波数帯域毎の散乱線透過率および一次線透過率をTs(r)、Tp(r)で表すものとする。なお、rは周波数帯域の階層を表し、rが大きいほど低周波であることを表すものとする。したがって、Ik(x,y,r)は、ある周波数帯域の周波数成分画像となる。散乱線含有率分布S(x,y)は被写体画像Ikについてのものをそのまま用いればよいが、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpと同様に周波数帯域のそれぞれについて取得するようにしてもよい。
第3の実施形態においては、周波数成分毎に変換係数R(x,y,r)を算出し、周波数成分画像Ik(x,y,r)に対して対応する周波数帯域の変換係数R(x,y,r)を乗算して、周波数成分画像Ik(x,y,r)の画素値を変換し、変換係数R(x,y,r)が乗算された周波数成分画像Ik(x,y,r)(すなわち、Ik(x,y,r)×R(x,y,r))を周波数合成して処理済みの被写体画像Ik′(x,y)を取得する。したがって、散乱線除去部37において行われる処理は、下記の式(17)により表される。なお、変換係数R(x,y,r)は0〜1の間の値となるため、周波数成分Ik(x,y,r)に対して対応する周波数帯域の変換係数R(x,y,r)を乗算することにより、その周波数成分の画素位置(x,y)における画素値すなわちゲインが低減されることとなる。
Ik′(x,y)=Σr{Ik(x,y,r)×R(x,y,r)}
=Σr{Ik(x,y,r)×(S(x,y)×Ts(r)+(1-S(x,y))×Tp(r))} (17)
ここで、第3の実施形態においては、被写体画像Ikを6つの周波数帯域に周波数分解するものとし、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは6つの周波数帯域について取得されるものとする。この場合、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは、例えば下記式(18)に示す値となる。なお、式(18)では右側ほど低周波数帯域の値を表すものとする。
Ts={0.7, 0.7, 0.7, 0.7, 0.3, 0.2}
Tp={0.7, 0.7, 0.7, 0.7, 0.7, 0.7} (18)
式(18)に示すように、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpは、高周波数帯域(r=1〜4)では同一の値であるが、低周波数帯域(r=5〜6)においては、散乱線透過率Tsの方が低い値となる。これは、グリッドは散乱線の周波数成分が支配的である低周波帯域ほどその除去率が高いが、一次線については除去率の周波数依存性が小さいからである。
例えば、胸部を放射線撮影して得られた被写体画像であれば、散乱線の含有率が高い縦隔部および肺野の周囲において、式(16)、(18)に基づいて算出した変換係数の値が小さくなり、より大きく画素値が低減されることとなる。したがって、このように算出した変換係数を用いて式(17)に示す処理を行うことにより取得された処理済みの被写体画像Ik′(処理後画像Ik′)においては、使用が想定されるグリッドの種類に応じて散乱線成分が除去されたものとなる。
なお、散乱線除去部37においては、下記のようにして被写体画像Ikの散乱線を除去するようにしてもよい。まず、上記と同様に周波数合成をIk(x,y)=ΣrIk(x,y,r)で表すとすると、散乱線除去部37は、周波数成分画像Ik(x,y,r)を、下記の式(19)により、散乱線含有率分布S(x,y)を用いて、散乱線像(散乱線成分)Is(x,y,r)と一次線像(一次線成分)Ip(x,y,r)とに分解する。
Is(x,y,r)= S(x,y)×Ik(x,y,r)
Ip(x,y,r)=(1-S(x,y))×Ik(x,y,r) (19)
さらに散乱線除去部37は、下記の式(20)により、散乱線成分Is(x,y,r)および一次線成分Ip(x,y,r)のそれぞれに対して、仮想グリッド特性である散乱線透過率Ts(r)および一次線透過率Tp(r)を適用して画像変換し、変換された散乱線成分Is′(x,y,r)および一次線成分Ip′(x,y,r)を算出する。
Is′(x,y,r)=Is(x,y,r)×Ts(r)=S(x,y)×Ik(x,y,r)×Ts(r)
Ip′(x,y,r)=Ip(x,y,r)×Tp(r)=(1-S(x,y))×Ik(x,y,r)×Tp(r) (20)
そして下記の式(21)により、Is′(x,y,r)および一次線成分Ip′(x,y,r)を周波数合成して、処理済みの被写体画像Ik(x,y)′を算出する。
Ik′(x,y)=Σr{Is′(x,y,r)+Ip′(x,y,r)}
=Σr{S(x,y)×Ik(x,y,r)×Ts(r)+(1-S(x,y))×Ik(x,y,r)×Tp(r)}
=Σr{Ik(x,y,r)×(S(x,y)×Ts(r)+(1-S(x,y))×Tp(r))} (21)
次いで、第3の実施形態において行われる処理について説明する。図6は第3の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。撮影装置10において取得された被写体画像Ikが画像解析装置30に入力されると(S21)、第1の実施形態と同様に被写体画像Ikの体厚分布を決定する処理が行われる(S22)。なおS22は、図2のS02〜S06に示す処理に対応する。続いて、特性取得部39がグリッド情報、被写体情報および撮影条件の少なくとも1つの入力部38からの入力を受け付け(グリッド情報等入力、S23)、仮想グリッド特性、すなわち散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを取得する(S24)。
また、散乱線情報取得部36が被写体画像Ikを解析し(S25)、散乱線成分情報、すなわち散乱線含有率分布S(x,y)を取得する(S26)。一方、散乱線除去部37は、被写体画像Ikを周波数分解する(S27)。なお、S23,S24の処理、S25,S26の処理およびS27の処理は並列に行ってもよく、S25,S26の処理を先に行ってもよく、S27の処理を先に行ってもよい。
そして、散乱線除去部37は、上記式(16)により周波数帯域毎の変換係数R(x,y,r)を算出し(S28)、変換係数R(x,y,r)により周波数成分画像Ik(x,y,r)を変換する(S29)。そして変換された周波数成分画像Ik′(x,y,r)を周波数合成して、処理後画像Ik′を取得し(S30)、処理を終了する。なお、処理後画像Ik′は表示部40に表示されて診断に供されるか、外部の画像サーバに送信されて保存される。
このように、第3の実施形態においては、画像解析装置30が、グリッドを使用しないで撮影された被写体画像に対して、実際にグリッドを使用して撮影を行った場合と同様の散乱線を除去する効果を付与するように、被写体画像に対して画像処理を施す散乱線解析部43を備え、被写体画像Ikの撮影時に散乱線を除去するために使用が想定されるグリッドの特性である仮想グリッド特性を取得し、さらに散乱性成分情報を取得し、仮想グリッド特性および散乱線成分情報に基づいて、被写体画像Ikの散乱線除去処理を行うようにしたものである。このため、実際に使用する散乱線除去グリッドと同様の散乱線除去の効果を被写体画像Ikに付与することができる。また、被写体画像Ikの画質を、様々な種類の散乱線除去グリッドを使用して撮影を行うことにより取得した被写体画像の画質に近づけることができる。
また、収束型のグリッドを使用した場合、放射線の斜入により被写体画像Ikに濃度ムラが発生するおそれがあるが、第3の実施形態においては、グリッドを使用しないで撮影された被写体画像に対して散乱線を除去する処理を実施することにより、放射線の斜入による濃度ムラが発生しなくなるため、より高画質の処理後画像Ik′を取得することができる。
次いで、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、第4の実施形態においては、画像解析装置の構成は第3の実施形態と同様であり、行われる処理のみが異なるため、ここでは装置についての詳細な説明は省略する。上記第3の実施形態においは、被写体画像Ikを周波数分解し、変換後の周波数成分画像を周波数合成して処理後画像Ik′を取得しているが、第4の実施形態においては、被写体画像Ikから除去すべき周波数帯域の周波数成分を抽出し、抽出された周波数成分に対して散乱線除去処理を行い、処理後の周波数成分を被写体画像Ikに加減算することにより、処理後画像Ik′を取得するようにした点が第3の実施形態と異なる。
第4の実施形態においては、散乱線除去部37は、以下のように処理を行う。まず、第3の実施形態と同様に、被写体画像Ikを周波数分解して周波数成分画像Ik(x,y,r)を取得し、下記の式(22)により、除去のための変換係数R′(x,y,r)を周波数帯域毎に算出する。
R′(x,y) = S(x,y)×(1-Ts(r)) + (1-S(x,y))×(1-Tp(r)) (22)
そして、下記の式(23)により、周波数帯域毎の除去成分ΔIk(x,y,r)を算出する。
ΔIk(x,y,r)=Ik(x,y,r)×R′(x,y,r)
=Ik(x,y,r)×{S(x,y)×(1-Ts(r))+(1-S(x,y))×(1-Tp(r))} (23)
そして、除去成分ΔIk(x,y,r)を周波数合成し、被写体画像Ik(x,y)から周波数合成した除去成分ΣrΔIk(x,y,r)を減算して、処理済みの被写体画像Ik′(x,y)を取得する。
Ik′(x,y)=Ik(x,y)-ΣrΔIk(x,y,r)
=Ik(x,y)-Σr{Ik(x,y,r)×{S(x,y)×(1-Ts(r))+(1-S(x,y))×(1-Tp(r))}}
(24)
次いで、第4の実施形態において行われる処理について説明する。図7は第4の実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。なお、S31〜S37までの処理は第3の実施形態におけるS21〜S27の処理と同一であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
S37に続き、散乱線除去部37は、上記の式(22)により除去のための変換係数R′(x,y,r)を周波数帯域毎に算出し(S38)、上記の式(23)により周波数帯域毎の除去成分ΔIk(x,y,r)を算出する(S39)。そして、除去成分ΔIk(x,y,r)を周波数合成し(S40)、周波数合成した除去成分ΣrΔIk(x,y,r)を被写体画像Ikから減算して、処理後画像Ik′を取得し(S41)、処理を終了する。なお、処理後画像Ik′は表示部40に表示されて診断に供されるか、外部の画像サーバに送信されて保存される。
なお、上記第4の実施形態において、散乱線除去部37は下記のようにして被写体画像Ikの散乱線を除去するようにしてもよい。まず、上記と同様に周波数分解をIk(x,y)=ΣrIk(x,y,r)で表すとすると、周波数成分画像Ik(x,y,r)を、上記の式(19)により、散乱線含有率分布S(x,y)を用いて、散乱線成分Is(x,y,r)と一次線成分Ip(x,y,r)とに分解する。さらに、下記の式(25)により、散乱線成分Is(x,y,r)および一次線成分Ip(x,y,r)のそれぞれに対して、仮想グリッド性能としての散乱線透過率Ts(r)、一次線透過率Tp(r)を適用して画像変換し、散乱線除去成分ΔIs(x,y,r)および一次線除去成分ΔIp(x,y,r)を算出する。
ΔIs(x,y,r)=Is(x,y)×(1-Ts(r))=S(x,y)×Ik(x,y)×(1-Ts(r))
ΔIp(x,y,r)=Ip(x,y)×(1-Tp(r))=(1-S(x,y))×Ik(x,y)×(1-Tp(r)) (25)
そして下記の式(26)により、散乱線除去成分ΔIs(x,y,r)および一次線除去成分ΔIp(x,y,r)を周波数合成し、周波数合成した散乱線除去成分ΣrΔIs(x,y,r)および一次線除去成分ΣrΔIp(x,y,r)を被写体画像Ikから減算して、処理済みの被写体画像Ik′(x,y)を算出する。
Ik′(x,y)=Ik(x,y) -Σr(ΔIs(x,y,r)+ΔIp(x,y,r)) (26)
なお、上記第3および第4の実施形態において、被写体画像Ikが放射線検出器への入射線量に比例した画素値を持つ、放射線量に対してリニアな空間において散乱線除去処理を行い、その後に対数変換を行って、人間の視覚と比例する対数リニアな空間に変換することが好ましい。
また、上記第3および第4の実施形態においては、特性取得部39において、仮想グリッド特性として、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpを取得しているが、散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpの一方のみを取得するようにしてもよい。
また、上記第3および第4の実施形態においては、グリッドを使用せずに撮影を行うことにより取得した被写体画像Ikに対して散乱線除去処理を行っているが、グリッドを使用して撮影を行うことにより取得した被写体画像を処理の対象としてもよい。この場合、被写体画像に対して、グリッドに起因する縞模様を除去する処理を施し、その後、散乱線除去処理を行う。また、かかる散乱線除去処理においては、所望のグリッドである第1のグリッドが使用されて撮影された放射線画像(第1グリッド使用画像)を取得し、所望の仮想的なグリッドに対応する仮想グリッド特性を取得し、取得された第1グリッド使用画像中の散乱線量と一次線線量を、取得した仮想グリッド特性に対応するグリッド(取得した仮想グリッド特性の散乱線透過率と一次線透過率を有するグリッド)に対応する散乱線量と一次線線量になるように変換すればよい。また、第1のグリッドと仮想グリッド特性に対応するグリッドは、どちらの散乱線除去効果が大きくてもよく、目的や事情に応じて任意に選択されてよい。なお、グリッドに起因する縞模様を除去する処理としては、例えば特開2012−203504号公報に記載された手法を用いることができる。
また、グリッド無しで撮影された被写体画像に1つの仮想グリッド特性(第1の仮想グリッド特性)を適用して散乱線除去処理を行った処理後画像を第3および第4の実施形態における散乱線除去処理の対象としてもよい。この場合、第1の仮想グリッド特性と該第1の仮想グリッド特性が適用された処理後画像である第1処理後画像とを取得し、第1の仮想グリッド特性とは異なる所望の仮想的なグリッドに対応する第2仮想グリッド特性を取得する。そして、第2の仮想グリッド特性に基づいて、第1処理後画像中の散乱線量と一次線線量を、第2の仮想グリッド特性に対応する散乱線量と一次線線量になるように変換すればよい。また、第1の仮想グリッド特性と第2の仮想グリッド特性は、どちらの散乱線除去効果が大きくてもよく、目的や事情に応じて任意に選択されてよい。
このような処理を行うことにより、例えば、グリッド比が3:1であるグリッドを用いて撮影した被写体画像(またはグリッド無しで撮影された被写体画像に第1の仮想グリッド特性に基づいて散乱線除去処理を行った第1処理後画像)に基づいて、使用したグリッドとは異なる、10:1のグリッド比をもつグリッドを用いて撮影したかのような処理後画像を仮想的に取得することが可能となる。また、逆に、グリッド比が10:1であるグリッドを用いて撮影した被写体画像(またはグリッド無しで撮影された被写体画像に第1の仮想グリッド特性に基づいて散乱線除去処理を行った第1処理後画像)に基づいて、使用したグリッドとは異なる、3:1のグリッド比をもつグリッドを用いて撮影したかのような処理後画像を仮想的に取得することが可能となる。これらの場合には、被写体の撮影を繰り返さなくても、容易にグリッド比を変換した画像を取得することができるため、意図しないグリッド比をもつグリッドで撮影された被写体画像や上記の第1処理後画像から、所望のグリッド比のグリッドを使用して散乱線除去処理を行った処理後画像を得ることができる。このため、被写体の再撮影無しに、異なる度合いで散乱線除去処理を行った処理後画像を観察したいという要望に応えることができる。
具体的な方法としては、例えば第3の実施形態において、変換前のグリッドに対応する変換前グリッド情報と、変換後のグリッドに対応する変換後グリッド情報の組合せごとに、式(14)における散乱の特性を表すSσを対応付けたテーブルを記憶部42に記憶しておく。なお、かかるテーブルにおけるSσは、変換前のグリッドによる散乱の特性を変換後のグリッドによる散乱の特性に相対的に変換できるように、あらかじめ実験等により求めたものとする。そして、散乱線情報取得部36は、実際に使用された使用グリッド(または仮想的なグリッド)に対応する第1グリッド情報を変換前グリッド情報として取得し、所望の仮想的なグリッドに対応する第2グリッド情報を変換後グリッド情報として取得し、上記テーブルに基づいて第1グリッド情報と第2グリッド情報に対応するSσを取得する。そして、式(13)と式(14)を用いて、Io(x,y)を例えば1とし、取得したSσを用いて一次線像Ip(x,y)と、散乱線像Is(x,y)とをそれぞれ算出する。そして、算出された一次線像Ip(x,y)と、散乱線像Is(x,y)とに基づいて、式(15)により散乱線含有率分布S(x,y)を算出すればよい。
また、散乱線除去部37は、式(18)に示す周波数帯域毎の散乱線透過率Tsおよび一次線透過率Tpについて、実際に使用された使用グリッド(または仮想的なグリッド)に対応する第1のグリッド特性(一次線透過率Tp1、散乱線透過率Ts1)と、所望の仮想的なグリッドに対応する第2の仮想グリッド特性(一次線透過率Tp2、散乱線透過率Ts2)を取得し、変換前の第1のグリッドによる散乱の特性を変換後の第2のグリッドによる散乱の特性に相対的に変換するために、Tp2/Tp1を式(18)における一次線透過率Tpとして取得し、Ts2/Ts1を式(18)における散乱線透過率Tsとして取得する。そして、散乱線除去部37は、取得した散乱線透過率Ts(=Ts2/Ts1)と一次線透過率Tp(=Tp2/Tp1)を式(16)に適用して変換係数Rを求めて、この変換係数Rを用いて第3の実施形態と同様に散乱線除去処理を行えばよい。なお、上記式(16)において、変換係数R(x,y)は、第1のグリッド特性の散乱線透過率Ts1に対して第2のグリッド特性の散乱線透過率Ts2が大きい場合には、1より大きい値となる場合がある。
また、第1のグリッド特性と第2のグリッド特性は、任意の方法で取得されてよい。例えば、グリッド情報ごとに予め実験等により求めたグリッド特性(一次線透過率Tp、散乱線透過率Ts)を対応付けたテーブルを用意して記憶部42に記憶しておく。そして、散乱線除去部37が、第1および第2のグリッド情報を取得し、このテーブルに基づいて、第1および第2のグリッド情報に対応する第1のグリッド特性と第2のグリッド特性を取得するようにしてもよい。また、第1および第2のグリッド特性を入力部38からのユーザ入力に基づいて取得するようにしてもよい。なお、グリッド情報は、入力部38からの入力により取得してもよく、例えば特開2003−260053号公報に記載されたように、グリッドの種類に応じた突起をグリッドに形成しておき、その突起を検出することによりグリッド情報を取得するようにしてもよい。
一方、撮影部位によっては、散乱線除去グリッドを使用しないで撮影した被写体画像を用いて画像の観察をしたいという要求がある。このような部位を撮影することにより取得した被写体画像に対して、上記第3および第4の実施形態の散乱線除去処理を行うことは好ましくない。このため、撮影部位に応じて、第3の実施形態の散乱線除去処理のオン/オフを撮影部位に応じて切り替えるようにすることが好ましい。なお、撮影部位の情報は、操作者が入力することにより取得してもよく、撮影フローの制御を行う周知のコンソールPC(不図示)に入力される撮影依頼から自動的に取得してもよく、撮影後にシステムが被写体画像に付帯して保存する情報を利用してもよい。また、このような情報が取得できない場合には、被写体画像に対して部位認識処理を行うことにより取得してもよい。この場合、部位に応じて処理のオン/オフを対応づけたテーブルを記憶部42に記憶しておき、このテーブルを参照して処理のオン/オフを切り替えるようにすればよい。
また、上記第3および第4の実施形態において、処理後画像Ik′および処理前の被写体画像Ikの双方を表示し、いずれの被写体画像Ikを診断に使用するかを選択できるようにしてもよい。
また、病気の治癒状況あるいは進行状況の診断を行うために、過去の被写体画像を用いて経時比較観察を行う場合がある。このような場合において、散乱線除去グリッドを使用せずに撮影を行うことにより取得した被写体画像(第1の被写体画像とする)と、散乱線除去グリッドを使用して撮影を行うことにより取得した被写体画像(第2の被写体画像とする)とを比較する場合には、第1の被写体画像に対してグリッドに起因する縞模様を除去する処理を施した際の処理条件に応じて、第3または第4の実施形態の散乱線除去処理の条件を修正し、第1および第2の被写体画像の画質を一致させるようにすることが好ましい。
なお、第3、4の実施形態における被写体画像Ikの体厚分布を決定する一連の処理(図6のS22、図7のS32)は、少なくとも、仮想モデル取得部32が所定の体厚分布を有する被写体の仮想モデルを取得する処理と、推定画像生成部33が仮想モデルの放射線撮影により得られる一次線画像を仮想モデルから推定した推定一次線画像と仮想モデルの放射線撮影により得られる散乱線画像を仮想モデルから推定した推定散乱線画像とを合成した画像を、被写体の放射線撮影により得られる被写体画像を推定した画像である推定画像として生成する処理と、修正部34が推定画像と被写体画像の違いが小さくなるように仮想モデルの体厚分布を修正する処理と、体厚分布決定部35が修正された仮想モデルの体厚分布を被写体の体厚分布として決定する処理を少なくとも含むもの(本発明に係る体厚分布を決定する処理)であれば、被写体Kの体厚分布Tkを決定するいかなる処理としてもよい。例えば、体厚分布を決定する一連の処理(図6のS22、図7のS32)を、第2の実施形態に対応する処理を含むようにしてもよい。また、第3、4の実施形態における被写体画像Ikの体厚分布を決定する一連の処理(図6のS22、図7のS32)は、散乱線情報取得部36が被写体Kの体厚分布Tk(x,y)から、式(13)、(14)にしたがって一次線像および散乱線像を算出する処理に先立って実行されるものであれば、任意のタイミングで実行されてよい。
また、被写体画像Ikを取得してから、本発明による被写体画像の体厚分布を決定する一連の処理(例えば図2のS02〜S06参照)を実施し、決定した被写体画像の体厚分布を用いて散乱線除去処理などのその他所望の画像処理を行って処理後画像を生成して表示する場合に、被写体画像取得から処理後画像表示までの所要時間(被写体画像を取得してから、被写体画像の体厚分布を決定する処理と、被写体画像に対する散乱線除去処理などのその他所望の画像処理とを実施し、得られた処理後画像を表示するまでの時間)をできるだけ短縮化することが好ましい。このために、上記各実施形態の被写体画像の体厚分布を決定する一連の処理において、画像取得部31が被写体画像を所定のサイズに縮小した縮小画像を生成して取得し、仮想モデル取得部32が縮小画像に対応するサイズの仮想モデルを取得し、推定画像生成部33が縮小画像に対応するサイズの推定画像を生成し、修正部34が推定画像と縮小画像の違いが小さくなるように仮想モデルの体厚分布を修正し、体厚分布決定部35が修正された仮想モデルの体厚分布を例えば被写体画像Ikのサイズなどの所望のサイズに拡大して被写体の体厚分布として決定してもよい。この場合には、被写体画像の体厚分布を決定する処理に含まれる少なくとも1つ以上の処理(特に、推定画像生成部33が縮小画像に対応するサイズの推定画像を生成する処理、修正部34が推定画像と縮小画像の違いが小さくなるように仮想モデルの体厚分布を修正する処理など)の処理負荷を低減できる可能性が高く、被写体画像取得から処理後画像表示までの所要時間を低減して、ユーザの待ち時間を低減することによりユーザの観察作業の効率化を支援することができる。さらに、医療機関などにおいて、複数の被写体を放射線撮影した複数の被写体画像を取得し、これらの複数の被写体画像に対してそれぞれ上記各実施形態に示すような被写体画像の体厚分布を決定する処理と散乱線除去処理などの所望の画像処理を順次実施し、得られた処理後画像をユーザが順に表示させて観察する状況下において、上記効果が大いに有益であり、ユーザの作業時間を著しく低減できることができる。なお、縮小画像は、縮小画像から取得した特徴情報とモデル画像の特徴情報を用いて類似を好適に判別可能な解像度を維持する範囲内で解像度をできるだけ小さくすることが好ましい。具体的には、撮影対象部位毎に特徴的・代表的な臓器や組織が識別・モデル選択可能な範囲で圧縮率を変えればよい。
また、医療機関などにおいて、複数の被写体を放射線撮影した複数の被写体画像を取得し、これらの複数の被写体画像に対してそれぞれ本発明における被写体画像の体厚分布を決定する処理(例えば図2のS02〜S06参照)と、散乱線除去処理などの所望の画像処理を順次実施し、得られた処理後画像をユーザが順に表示させて観察する場合には、被写体画像取得から処理後画像表示までの所要時間を有効活用することが好ましい。一例として、上記各実施形態による被写体画像取得から処理後画像表示までの所要時間中に、処理後画像の表示に先だって、画像観察の参照になる情報を表示することが考えられる。
例えば、第1の実施形態の画像解析装置の変形例である第5の実施形態として、被写体画像を取得した後、被写体画像Ikの体厚分布Tkを決定する一連の処理(図2のS02〜S06)の処理期間中に、散乱線情報取得部36が予め設定された仮体厚分布を用いて被写体画像の散乱線情報を取得し、散乱線除去部37が仮体厚分布を用いて取得した散乱線情報に基づいて被写体画像Ikの散乱線除去処理を実施して仮処理後画像を生成し、表示部40に仮処理後画像を表示させる処理(仮処理後画像の生成表示処理)の一部または全部を実施するようにしてもよい。
図8に、第5の実施形態のフローチャートを示す。第5の実施形態の画像解析装置は、被写体画像Ikの体厚分布Tkを決定する一連の処理(図2のS02〜S06)の処理期間中に、散乱線情報取得部36が予め設定された仮体厚分布に基づいて被写体画像Ikに含まれるX線の散乱線を表す散乱線情報を取得し、散乱線除去部37が仮体厚分布に基づいて取得された散乱線情報に基づいて被写体画像の散乱線除去処理を実施して仮処理後画像を生成し、表示部40に仮処理後画像を表示させる点において第1の実施形態と異なる。なお、その他の部分については、第5の実施形態における画像解析装置は、図1に示す画像解析装置30と共通する各構成要素を備え、各構成要素の機能および処理も概ね共通するため、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明し、共通部分については適宜説明を省略する。
第5の実施形態では、図8に示すように、画像取得部31が上記第1の実施形態のS01と同様に被写体画像Ikを取得し(S51)、上記第1の実施形態(図2のS02〜S06)と同様に被写体画像Ikの体厚分布Tkを決定する処理(S52)を実施し、上記第1の実施形態のオプションの例と同様に条件式(1)、(2)に基づいて、決定された体厚分布Tkを用いて散乱線情報(一次線像Ipと散乱線像Is)を取得し、上記第1の実施形態のオプションの例と同様に、取得した散乱線像Isを被写体画像Ikから減算して散乱線除去処理(S53)を実施する。
また、第5の実施形態では、画像取得部31が被写体画像を取得すると(S51)、S52の処理と並行して、散乱線情報取得部36は、予め設定された仮体厚分布を取得し、上記第1の実施形態のオプションの例と同様に上記条件式(1)、(2)に基づいて、取得した仮体厚分布を用いて散乱線情報(一次線像Ipと散乱線像Is)を取得し(S55)、仮体厚分布を用いて取得した散乱線像Is′に基づいて上記第1の実施形態のオプションの例と同様に被写体画像Ikから散乱線像Is′を減算することにより散乱線による影響を除去した仮処理後画像を生成して、記憶部42に記憶する(S56)。続いて、画像解析装置30は、S53に示す散乱線を除去する処理により得られる処理後画像が生成されているか否かを判定し、処理後画像が生成されていない場合には(S57,No)、処理後画像が生成されるまで、仮処理後画像を表示部40に表示させる(S58)。一方、S53に示す処理により得られる処理後画像が生成されている場合には(S57,Yes)、画像解析装置は処理後画像を表示部40に表示させる(S54)。
第5の実施形態によれば、被写体画像Ikを取得し、被写体画像Ikの体厚分布Tkを決定する処理を実施した後、散乱線除去処理などの所望の画像処理を実施し、得られた処理後画像を表示する放射線画像解析装置において、被写体画像Ikの体厚分布Tkを決定する一連の処理の処理期間中に、予め設定された仮体厚分布を用いて被写体画像の散乱線除去処理などの所望の画像処理を実施し、仮体厚分布を用いて得られた処理後画像を仮処理後画像として生成し、仮処理後画像を表示部40に表示させる処理の一部または全部を実施するようにしたため、ユーザが処理後画像の表示までの時間を有効活用して、仮体厚分布を用いた仮処理後画像を観察することで被写体画像の注目すべき部分や、被写体画像に適用された放射線撮影の撮影条件の適否などを大まかに把握できる可能性があり、ユーザの観察を効率化するとともにユーザの観察の参考になる情報を提供することができる。
第5の実施形態において、「予め設定された体厚分布」は、被写体Kに概ね対応するような任意の体厚分布を用いることができ、たとえば、過去の複数の被写体画像から体厚決定処理を実施して得られた体厚分布のうち最新の体厚分布とすることができ、標準的な被写体の体厚分布とすることもできる。
また、第5の実施形態における被写体画像Ikの体厚分布を決定する一連の処理(S52)は、少なくとも、仮想モデル取得部32が所定の体厚分布を有する被写体の仮想モデルを取得する処理と、推定画像生成部33が仮想モデルの放射線撮影により得られる一次線画像を仮想モデルから推定した推定一次線画像と仮想モデルの放射線撮影により得られる散乱線画像を仮想モデルから推定した推定散乱線画像とを合成した画像を、被写体の放射線撮影により得られる被写体画像を推定した画像である推定画像として生成する処理と、修正部34が推定画像と被写体画像の違いが小さくなるように仮想モデルの体厚分布を修正する処理と、体厚分布決定部35が修正された仮想モデルの体厚分布を被写体の体厚分布として決定する処理を少なくとも含むもの(本発明に係る体厚分布を決定する処理)であれば、被写体Kの体厚分布Tkを決定するいかなる処理としてもよい。例えば、体厚分布を決定する一連の処理(S52)を、第2の実施形態に対応する処理を含むようにしてもよい。
また、第5の実施形態における被写体画像Ikから散乱線を除去する処理(S53、S56)は、ここでは第1の実施形態における被写体画像Ikから散乱線を除去する処理と共通するものとしたが、被写体画像Ikから散乱線を除去可能な任意の方法を適用できる。例えば、第5の実施形態における被写体画像Ikから散乱線除去する処理(S53、S56)を第3の実施形態の図6のS23〜S30に対応する処理としてもよく、または、第4の実施形態の図7のS33〜S41に対応する処理としてもよい。また、第5の実施形態において、被写体画像Ikから散乱線除去処理(S53、S54)を行う例を説明したが、これに限られず、散乱線除去処理に換えて被写体画像Ikに他の画像処理を実施してもよく、散乱線除去処理にあわせてさらに被写体画像Ikに他の画像処理を行ってもよい。また、S55〜S58の処理は、S52の処理と一部または全部が重複するような任意の期間に実施でき、仮処理後画像をより早く表示してユーザの観察の参考になる情報をより早く提供するためには、被写体画像Ikの取得後S55〜S58の処理を早いタイミングで実施することが好ましい。
また、上記の各実施形態において、図2のS01に示す被写体画像Ikの取得処理は、S04に示す被写体画像と推定画像の違いの判定処理に先だって行われるものであれば任意のタイミングで行ってよい。
上記実施形態において、画像解析装置30を、散乱線情報取得部36および散乱線除去部37を省略した構成とし、散乱線情報取得処理および散乱線除去処理を実施しない態様としてもよい。この場合、他の装置に決定した被写体Kの体厚分布Tkを出力し、他の装置で体厚分布Tkを用いて被写体画像Ikの画像処理や撮影条件を決定する処理を実施することが考えられる。
なお、本各実施形態に限定されず、本発明によって得られた被写体の体厚分布は、被写体画像に対して、被写体の体厚に応じた画像処理条件を決定するためのあらゆる処理に用いることができる。例えば、本発明によって得られた体厚分布を静止画像または動画像である被写体画像に対する、濃度、コントラストなどの階調処理、ノイズ抑制処理、ダイナミックレンジ調整処理、周波数強調処理などに用いることが考えられる。また、本発明により得られた体厚分布を、被写体画像に対して、体厚に応じた撮影条件を決定するためのあらゆる処理に用いることができる。本発明により得られた体厚分布を用いて各画像処理条件または撮影条件を決定した場合には、被写体画像に対する正確な体厚分布が適用されることにより、決定された画像処理条件または撮影条件による画質改善効果を高めることができる。
また、例えば、管電圧を異ならせて高エネルギーと低エネルギーの放射線をそれぞれ撮影して取得された2つの放射線画像の違いによって放射線画像を取得するエネルギーサブトラクション技術において、本発明によって得られた被写体の体厚分布に応じて、高エネルギー画像から低エネルギー画像を減算する際に体厚の大きい位置における高エネルギー画像の重み付けを大きくするように重み係数を決定する処理を行ってもよい。この場合には、被写体画像に対する正確な体厚分布が適用されることにより、被写体の厚さに応じて放射線の線質が変動するビームハードニング現象の発生の影響を低減して、処理後画像の画質を好適に改善することができる。
また、放射線透視画像の適用技術や、トモシンセシス技術など同一の被写体を複数回撮影して複数の放射線画像を取得する技術分野においては、最初に撮影された被写体画像に対して本発明の手法により被写体の体厚分布を取得し、取得した体厚分布に基づいて後続して撮影される被写体の撮影条件を決定することが好ましい。後続して撮影される被写体画像を、体厚に応じた適切な撮影条件で撮影できるため、後続して撮影される被写体画像を診断に適した画質の画像とすることができる。
また、本発明によって得られた被写体の体厚分布と撮影条件とを対応付けた線量管理情報を、被写体毎にそれぞれ記憶することが好ましい。なお、撮影条件は、線源等に設定される設定値と曝射時間を含むものとすることができ、実際に照射された線量等を検出器等で測定した実績値と曝射時間を含むものとすることもできる。被検者ごとに、該被検者の複数の線量管理情報を線量履歴情報として取得し、この線量履歴情報に基づいて、被検者の所定期間中の各位置における累積被曝量を算出することにより、累積被曝量が所定の臓器などの所定領域に対して許容できない所定の閾値以上となっていないかなど領域毎の線量管理の指標となる有用な情報を提供することができる。また、複数の異なる被検者に対する線量管理情報をそれぞれ取得して、統計解析することにより、体厚分布の傾向に応じてどのような撮影条件が用いられたかを特定することができ、新たな被写体に対する撮影条件の決定または過去の被写体に対する撮影条件の推定のために参考になる情報を提供することができる。
また、トモシンセシス撮影装置によって撮影された複数の被写体画像から、立体視画像を構成する2つの被写体画像を選択する際に、本発明によって得られた被写体の体厚分布を取得し、取得された体厚分布に応じて適切な視差量または輻輳角(立体視画像を構成する2つの被写体画像の各撮影方向がなす角度)となるように2つの被写体画像を選択することが好ましい。例えば、被写体の体厚分布から最大値、平均値、中央値など体厚分布の特徴を示す指標値を抽出し、指標値の範囲ごとに被写体の体厚が大きい程視差量(または輻輳角)が大きくなるように適切な視差量(または輻輳角)を対応付けた視差決定情報を予め作成して取得し、視差決定情報に基づいて、被写体の体厚分布から抽出された指標値に対応する視差量(または輻輳角)を、立体視画像の視差量(または輻輳角)として決定し、かかる視差量(または輻輳角)となるような2つの被写体画像を立体視画像を構成する被写体画像として選択することができる。一例として、被写体の体厚分布に応じて、体厚分布の特徴を示す指標値を算出して、該指標値により、被写体を、細め型、標準型、太め型など複数の体格的な分類に区分し、区分された分類に対応する視差量(または輻輳角)を被写体のステレオ画像の視差量として決定し、かかる視差量となるような2つの被写体画像を立体視画像を構成する被写体画像として選択することができる。このように、複数の被写体画像から、立体視画像を構成する2つの被写体画像を選択する際に、本発明によって得られた被写体の体厚分布を取得し、取得された体厚分布に応じて体厚が大きい程視差量または輻輳角が大きくなるように2つの被写体画像を適切に選択した場合には、体厚分布に応じて、観察に適した品質の立体視画像を生成することができる。なお、視差量、輻輳角については、本出願の過去出願(特開2013-198736号公報、特開2013-198508号公報、特開2013-154165号公報等)を参考にすることができる。
なお、収束型グリッドを用いて被写体画像が撮影されている場合に、放射線の斜入によって濃度むらが生じる恐れがある。このような濃度むらの発生に備えて、本発明により得られた体厚分布を取得し、人体を正面から撮影した画像などのように被写体画像の被写体が左右対称の体厚分布を有することが既知である場合には、体厚分布が実質的に左右対称であるか否かを判定し、左右対称でない場合には、表示や音声により再撮影を促すようにしてもよい。斜入による濃度むらによって観察に適した品質の処理後画像が得られないことを防ぐことができる。
上記の各実施形態はあくまでも例示であり、上記のすべての説明が本発明の技術的範囲を限定的に解釈するために利用されるべきものではない。本発明の態様は、上述した個々の実施例(第1〜第5実施形態、その他の変形例および応用例)に限定されるものではなく、個々の実施例の各要素のいかなる組合せも本発明に含み、また、当業者が想到しうる種々の変形も含むものである。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
また、上記の実施形態におけるシステム構成、ハードウェア構成、処理フロー、モジュール構成、ユーザインターフェースや具体的処理内容等に対して、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な改変を行ったものも、本発明の技術的範囲に含まれる。たとえば、画像解析装置の構成要素の一部または全部は、1台のワークステーションにより構成されたものであってもよく、ネットワークを介して接続された一台以上のワークステーション、サーバ、記憶装置によって構成されたものであってもよい。
また、上記実施形態においては、放射線検出器14を用いて被写体の放射線画像を撮影する撮影装置10において取得した放射線画像を用いて散乱線除去処理を行っているが、特開平8−266529号公報、特開平9−24039号公報等に示される放射線検出体としての蓄積性蛍光体シートに被写体の放射線画像情報を蓄積記録し、蓄積性蛍光体シートから光電的に読み取ることにより取得した放射線画像を用いた場合においても、本発明を適用できることはもちろんである。