JP6052701B2 - 食品から塩類を除去する装置、及び除去方法 - Google Patents

食品から塩類を除去する装置、及び除去方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6052701B2
JP6052701B2 JP2016512528A JP2016512528A JP6052701B2 JP 6052701 B2 JP6052701 B2 JP 6052701B2 JP 2016512528 A JP2016512528 A JP 2016512528A JP 2016512528 A JP2016512528 A JP 2016512528A JP 6052701 B2 JP6052701 B2 JP 6052701B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
food
potassium
removing salts
salts
surface electrode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016512528A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2015155852A1 (ja
Inventor
柳田 友隆
友隆 柳田
未来 中村
未来 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Createrra Inc
Original Assignee
Createrra Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Createrra Inc filed Critical Createrra Inc
Application granted granted Critical
Publication of JP6052701B2 publication Critical patent/JP6052701B2/ja
Publication of JPWO2015155852A1 publication Critical patent/JPWO2015155852A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23LFOODS, FOODSTUFFS, OR NON-ALCOHOLIC BEVERAGES, NOT COVERED BY SUBCLASSES A21D OR A23B-A23J; THEIR PREPARATION OR TREATMENT, e.g. COOKING, MODIFICATION OF NUTRITIVE QUALITIES, PHYSICAL TREATMENT; PRESERVATION OF FOODS OR FOODSTUFFS, IN GENERAL
    • A23L5/00Preparation or treatment of foods or foodstuffs, in general; Food or foodstuffs obtained thereby; Materials therefor
    • A23L5/30Physical treatment, e.g. electrical or magnetic means, wave energy or irradiation
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23LFOODS, FOODSTUFFS, OR NON-ALCOHOLIC BEVERAGES, NOT COVERED BY SUBCLASSES A21D OR A23B-A23J; THEIR PREPARATION OR TREATMENT, e.g. COOKING, MODIFICATION OF NUTRITIVE QUALITIES, PHYSICAL TREATMENT; PRESERVATION OF FOODS OR FOODSTUFFS, IN GENERAL
    • A23L5/00Preparation or treatment of foods or foodstuffs, in general; Food or foodstuffs obtained thereby; Materials therefor
    • A23L5/20Removal of unwanted matter, e.g. deodorisation or detoxification

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Nutrition Science (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Preparation Of Fruits And Vegetables (AREA)
  • General Preparation And Processing Of Foods (AREA)

Description

食品の風味や食感を損なうことなく塩類を除去する装置及び該装置を用いて塩類を除去する方法に関する。特に、高カリウム血症の原因となるカリウムを食品から除去する装置、及び方法に関する。
日本透析医学会の調査によれば、わが国の慢性透析患者は2012年に30万人を超え、毎年5千人程度増加している。
腎臓は、老廃物の排泄、水分、電解質の調節を行い、体内環境を一定に保っている。腎臓の機能が低下し、体内の恒常性が維持できなくなると、いわゆる尿毒症と呼ばれる多様な症状が全身に出現する。
腎機能が廃絶している患者には日常的に透析を行う維持透析療法を行い、体内の老廃物や過剰な水分を除去する。透析には腹膜透析と、血液透析があるが、わが国では、血液を体外で循環させる血液透析が主流であり、約27万人が血液透析による治療を受けている。血液透析の場合、現在一般的には、1回4時間、週3回の透析を行うが、透析が代行する機能は、生体腎には遠く及ばない。そのため、患者は無制限に食事を摂取してよいわけではなく、自己管理により食生活の管理をすることが重要である。
透析患者は食生活において種々の成分に気を付ける必要があるが、とりわけ高カリウム血症の原因となるカリウム量を一定に制限する必要がある。高カリウム血症は、致死性の不整脈や心停止をきたすことがあるため、カリウム制限の食事指導が透析治療導入初期から、継続して行われる必要がある。一日に摂取可能なカリウム量は病期によっても異なるが、1500〜2000mg以下に制限する必要がある。
また、腎臓病患者はカリウムだけではなく、ナトリウムやリンも排出できない。そのため、食塩の摂取量を制限し、さらにリンが多く含まれるタンパク質の摂取量にも気を付ける必要がある。
特開2011−36226号公報 特開2011−135797号公報 特開平10−165113号公報 特開平6−90685号公報 特開2003−204768号公報
森 大蔵ら、東洋食品工業短大・東洋食品研究所 研究報告書(2000年)、23巻、47−56頁 渕上 倫子、日本調理科学会誌(2007年)、Vol.40、No.1、p.1−9
腎臓病患者は上述のように様々な食生活の制限があるが、カリウムはほとんどの食品に含まれているため、食品からどのようにしてカリウムを減少させるかは、患者の食生活を管理するうえで重要な要素となっている。従来から、カリウムの摂取制限をされている患者は、調理法として、水にさらす、茹でこぼす等の方法により、カリウムの摂取量を減少させるように指導されていた。高カリウム血症を予防するためには、少なくとも30%以上カリウムを減少させる必要があり、カリウム含有量の少ない食材を選ぶだけではなく、長時間茹でてから茹でこぼしたり、水にさらす必要があった。そのため、カリウムだけではなく食品の旨味成分も溶出してしまったり、食材や調理方法が限定される等、様々な問題が生じていた。
青果物に関しては、水耕栽培により低カリウム野菜を栽培する方法がすでに開示されている(特許文献1、2)。しかしながら、水耕栽培で栽培できる作物に限る等、低カリウム作物として提供できる作物の種類には限界がある。
また、食品からカリウム等の塩類を通電することによって除去する方法や装置も開示されている(特許文献3、4)。通電することによって、塩類を除去する方法は、食品の種類を限定しないという利点があるが、開示されているこれらの方法には以下のような問題があった。
特許文献3には電解液中の対向する電極間に、金属イオン透過膜中に収容した食品を浸漬し、電極間に通電することにより食品からカリウム等の金属イオンを除去する方法が開示されている。水道水や希薄食塩水等の通電を許容する液を電解液として用い、直流電流により通電することの記載はあるが、通電条件等が開示されておらず、食品の食感や味を担保しながら、金属イオンを除去することが困難であった。また、電極が食品に接していないために、通電すると電流は抵抗の少ない電解液中を流れ、食品中はほとんど通電されることがなく、金属イオンの除去効率が悪かった。さらに、希薄食塩水を電解液として用いた場合には、カリウムイオンは除去できるが、ナトリウムイオンが流入するため、ナトリウムを制限している患者にとっては、使用することができないという問題があった。
特許文献4には、対向配置された電極間に塩類を含んだ被脱塩物を挟み、通電するとともに周囲の溶媒を流入・流出させながら、脱塩する装置が記載されている。塩類を含んだ被脱塩物として、冷凍蟹等の冷凍食品、海産物等がナトリウムを多く含む食品として挙げられている。特許文献4の装置は、海産物・塩蔵品についての脱塩を目的とするものであり、多量の塩化ナトリウムを含む食品の塩辛さの低減が目的である。すなわち、実施例に開示されているように、数%という高い濃度で含まれる塩化ナトリウムを除去するための装置であり、脱塩処理完了品には、適度な塩味が残る程度のナトリウムイオン、カリウムイオン等が残っている。残存する陽イオンの量は、腎疾患を有する患者のナトリウム、カリウム摂取量低減の目的に適するほど低くはない。
本発明は、食品のもつ食感や風味をできるだけ損なわずに、カリウム、ナトリウム、さらにリンを除去することのできる装置及び方法を提供することを目的とする。
本発明の食品から塩類を除去する装置は、対向した一方の電極から食品を介して他方の電極に直流電流を通電する電極と、溶出したイオンを受容するとともに水分を供給する受容供給部と、通電時に前記食品を冷却する冷却装置を備えることを特徴とする。
対向した電極の間に配置した食品に対して、一方の電極から他方の電極に直流電流を通電することにより、カリウム、ナトリウム等の陽イオンは陰極側に移動し、食品から受容供給部に移動し除去される。本発明者らは、通電時に食品の温度を低温に保つことにより、食品の食感を保ち、風味が食品から抜け出るのを防止できることを見出した。糖などの分子量の大きい食品成分は、冷却することにより、通電した際の移動速度がより遅くなり、食品から抜け出にくくなるため、風味を保てるものと考えられる。
本発明の食品から塩類を除去する装置は、前記冷却装置が食品を0〜15℃に冷却するものであることを特徴とする。
食品の温度が高いほど、食品からカリウムやナトリウム等の塩類の除去速度が速く、短時間で脱塩できるが、同時に糖類等の旨味成分も抜け出ることが明らかとなった。0〜15℃の温度範囲で処理を行えば、味、食感ともに保ったままで食品からカリウム等の陽イオンを除去することが可能である。
本発明の食品から塩類を除去する装置であって、前記受容供給部が食品と前記電極を浸水した水槽であることを特徴とする。
水中で通電することにより、周囲から水分が供給されるため、通電することによる脱水を防ぐことができる。また、塩類が水中に溶出し拡散するため簡便な方法で塩類を除去することができる。
本発明の食品から塩類を除去する装置は、前記冷却装置は該水槽の水を冷却することを特徴とする。
水槽の水を冷却する装置を用いることによって、通電時に食品を効率良く冷却することができる。冷却装置としては、水を冷却できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。
本発明の食品から塩類を除去する装置は、前記受容供給部が前記電極と食品の間に配置されるヒドロゲルを含む部材であって、前記食品に密接した該ヒドロゲルを含む部材を介して、一方の電極から他方の電極へ通電することを特徴とする。
電極と食品の間にヒドロゲルを含む部材を配置することによって、陽イオンは陰極側の受容供給部のヒドロゲルを含む部材に、陰イオンは陽極側の受容供給部のヒドロゲル部材に吸収される。また、水もヒドロゲルより供給されることから、脱水を防止することができる。
本発明の食品から塩類を除去する装置は、前記冷却装置は前記塩類を除去する装置が設置されている雰囲気を冷却する装置であることを特徴とする。
ヒドロゲルを含む部材を受容供給部とした場合には、本発明の塩類除去装置を水槽に浸漬する必要がない。長時間かけて通電する場合に、水に浸漬して通電を行うと、浸透圧により周囲の水に水溶性の旨味成分が抜け出してしまう。ヒドロゲルを受容供給部に用いる場合には、水に浸漬する必要がないので、周囲の水に旨味成分が抜け出る心配がない。
本発明の食品から塩類を除去する装置は、通電条件が下記式(1)を満たすことを特徴とする。
A×T=D×R×B (1)
(上記式中、Aは食品の通電面積あたりの通電密度(mA/cm),Tは通電時間(hr)、Dは電極間の距離、すなわち食品の厚み(cm)、Rはカリウムイオンの除去率、Bは食品固有の定数を示す。)。
通電密度、通電時間によって、カリウム等、陽イオンは陰極側から溶出する。その際に電極間距離、すなわち食品の厚みが厚いほど、溶出に時間を要する。したがって、通電密度、通電時間の積は、電極間距離及び、陽イオンの除去率に比例する。本発明者らは、カリウムイオン除去の要請が高いことから、カリウムイオンの除去率について検討した結果、食品固有の比例定数Bが食品成分表の水分率と一定の相関があることを見出した。食品固有の定数Bを求めることによって、通電条件を設定することができる。
食品によって、イオンの移動速度は異なるが、食品固有の定数Bを求め、上記式を満たすような通電条件を設定することにより、食品が所望のカリウム濃度になるように設定することが可能である。Bは対象とする食品について、以下に示す方法により実測して求めても良いし、簡便には食品成分表の水分率をもとに計算した概算値を使ってもよい。
本発明の食品から塩類を除去する装置は、前記電極が面電極であることを特徴とする。
面状の電極を用いることにより、効率良く食品からカリウム等の塩類を除去することができる。
本発明の食品から塩類を除去する方法は、通電時に冷却しながら、対向した一方の電極から食品を介して他方の電極に直流電流を通電することにより塩類を除去することを特徴とする。
通電時に冷却しながら、対向した一方の電極から食品を介して他方の電極に直流電流を通電することにより、カリウムやナトリウム等の陽イオンは陰極側に移動し食品から除去される。この方法を用いれば、ニンジン、ジャガイモ等の根菜類や、カボチャ等、水耕栽培により低カリウム野菜として栽培することができなかった野菜類からカリウムを除去することが可能となる。さらに、肉類、魚介類等についても食品からカリウム等の陽イオン、さらにリンを除去することが可能となる。
本発明の食品から塩類を除去する方法は、前記食品の温度は0〜15℃に保つことを特徴とする。
食品を0〜15℃の温度範囲に保つことで、食品の食感、風味はそのまま保ちながら、塩類を除去することができる。
本発明の食品から塩類を除去する方法は、通電条件が下記式(1)を満たすことを特徴とする。
A×T=D×R×B (1)
(上記式中、Aは食品の通電面積あたりの通電密度(mA/cm),Tは通電時間(hr)、Dは電極間の距離、すなわち食品の厚み(cm)、Rはカリウムイオンの除去率、Bは食品固有の定数を示す。)。
上述のとおり、Bは対象とする食品について、実測しても、食品成分表の水分率をもとに計算してもよい。食品固有の定数Bを求めることによって、通電条件を設定することができる。
本発明の食品から塩類を除去する方法は、食品をペクチンの変質を防止する前処理を行い、通電密度が1〜16mA/cmで処理することを特徴とする。
食品の軟化は食味を悪化させる大きな要因であるが、ペクチンの変質を防止する前処理を行い、軟化を防止することができる。通電する電流が大きければ大きいほど、食品中の陽イオンは陰極側に早く移動するため、短時間でカリウム、ナトリウムの除去を実現できる。しかしながら、電流が高くなると、食品中の旨味成分も抜け落ちる。食品に軟化を防止する前処理を施すことによって、通電密度を16mA/cmまで上げても、食味を損なうことがない。食品によって通電密度を16mA/cmまで上げて処理が可能であることから、比較的短時間に脱塩処理を完了することができる。
ペクチンの変質を防止する方法は、塩化カルシウム処理、予加熱によるペクチンメチルエステラーゼの活性化等、公知のペクチン変質防止法であればどのような方法を用いても良い。
本発明の食品から塩類を除去する方法は、通電密度が1〜8mA/cmであることを特徴とする。
本発明者らは、通電密度が1〜8mA/cmの条件あれば、前処理を行うことなしに、旨味、食感はそのままでカリウム、ナトリウム等のイオンをある程度除去することが可能であることを見出した。
第1の実施形態、第2の実施形態の食品から塩類を除去する装置を示す図。 第3の実施形態、第4の実施形態の食品から塩類を除去する装置を示す図。 異なる通電条件によるカリウム及び糖の経時変化を示す図。 異なる温度によるカリウム及び糖の経時変化を示す図。 異なる野菜を用いた場合の通電条件によるカリウム及び糖の経時変化を示す図。 通電密度、通電時間とカリウムイオンの移動距離との関係を示す図。
以下、実施例を示しながら本発明を詳細に説明する。図1Aに本発明の第1の実施形態である食品から塩類を除去する装置1を示す。
食品2を挟むように、対向する網状の電極3、4を配置する。電極3、4は面電極を用い、食品2は直方体状にカットして電極間に挟み込み通電する。通電の際には、冷却とともに溶出したイオンのリザーバーとして機能し、同時に水分を供給するように水を張った水槽内に設置する(図1B)。すなわち、通電により陰極側では、カリウムイオン、ナトリウムイオン等の陽イオンが溶出してくることから、これら陽イオンのリザーバーとして、陽極側では、水分の供給が行われる。
また、電極3、4として可撓性の素材を用いることにより、食品と密着させ、広い面積で通電することができる。本発明の電極3、4は、直接食品に接触し、通電を行うことから、安全性に配慮したものである必要がある。具体的には、「食品、添加物等の規格基準」に定められた鉄、アルミニウム、白金及びチタンを用いれば良い。また、特に、陽極電極は金属イオン溶出を防ぐために、白金電極等の耐食性電極とする必要がある。
また、片側の電極の外側に緩衝材5を配置することにより、面電極4が食品2に対してより密着し効率良く通電を行うことができる。
緩衝材5は可撓性があり、食品から溶出したイオンが拡散することができるものであればどのようなものを用いても良い。例えば、スポンジ等の多孔性の素材や、綿、化学繊維からなる織物、山型形状の緩衝材等、電極に密着せず、溶出したイオンが周囲の水に拡散可能なものであればどのようなものを用いてもよい。
食品中のナトリウム、カリウムは通電を受け陽イオンとなり陰極側に移動し、最終的に陰極側から溶出する。図1Bに示す第1の実施形態では、食品をセットした塩類除去装置1は水を張った水槽6内に設置していることから、溶出した陽イオンは陰極側から水の中に溶出する。また、同時に食品に水分を供給することから食品の脱水を防止することができる。
図1に示した例では、食品2の上方に陽極、下方に陰極を配置しているが、対向する電極であれば、どちら側を陽極、陰極としてもよい。
通電することにより陰極側に移動したカリウム等の陽イオンは、最終的に食品の外に溶出する。緩衝材5の下方に配置する載置台7には孔8を設けてある。水槽6内の水を載置台7の下で図示しないスターラー、撹拌羽等により撹拌することにより、溶出したイオンが載置台7付近に滞留せず、周囲の水によって希釈される。そのため溶出した陽イオンが、食品の中に再度流入する量は極微量であり、無視することができる。
水槽6の水は一定の温度に冷却されている。以下に示すように温度が高いほど通電したときのイオンの溶出速度が速くなるが、同時に食品から旨味成分も抜け出る。素材及びその後の調理方法によって、適切な温度は異なるが、後述のように温度は0〜15℃の間で設定すればよい。冷却装置9は水槽の水を冷却することによって、浸漬した食品を低温に保つ。図1Bでは水槽の外部に冷却装置9を設けているが、水槽内に冷却装置を設ける構成としてもよい。
図1Cは、水槽を設けず、電極3、4と食品2の間にヒドロゲルを含む部材10からなる受容供給部を配置する第2の実施形態を示している。この構成によって、陽極側からは水を供給し、陰極側で溶出した陽イオンのリザーバーとして機能することができる。また、冷却装置9によって塩類除去装置1を設置した空間を雰囲気によって冷却することができる。
ヒドロゲルを含む部材10としては、食品と直接接触する部分であるから、水分を多量に含み、安全性が確認されている素材を用いる必要がある。例えば、ヒドロゲルの成分として、寒天、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、コラーゲン、コンニャク等が挙げられる。
また、後述するように肉類等の場合には、食品の外部に陽イオン、陰イオンが溶出しにくいことから、通電後電極に接する面を切除して除去することにより、カリウム等の陽イオンとともに、リン等の陰イオンも除去することができる。
腎臓病患者は、リンの排出量も低下するため、血中のリン濃度が上昇する高リン血症になりやすい。食品のリン含有量はタンパク質含有量と強い正の相関関係にあることから、リンの摂取制限を行うことは、タンパク質の摂取制限につながる。本発明の装置を用いることによって、肉類から、カリウムやナトリウムとともに、リンも除去することができるので、カリウムとともに、タンパク質の摂取制限を受けている腎臓病患者にとって、好ましい食材を提供することができる。
図2に、本発明の第3の実施形態を模式的に示す。多くの食品を一度に処理する場合には、第1の実施形態で示した対向する電極3、4に食品2を挟んだユニットを緩衝材5を介して、隣り合わせに多数配置すればよい。このような構成とすることにより多数の食品であっても、一度に通電し処理することができる。
ユニットは水槽6内の載置台7に配置し、載置台の下に設けられた撹拌羽11により水を撹拌することにより、陰極側から溶出したカリウム等の陽イオンを周囲の水に素早く拡散させることができる。ここでは、撹拌羽11を用いる装置を示したが、水槽6内の水を撹拌することができるのであれば、スターラー等、どのようなものを用いても良い。
また、緩衝材5も連続した山型形状のものを使用する等、電極と少ない面積で接触しながら、電極と食品との密着性を促すようなものを用いることにより、溶出した陽イオンの水への拡散を促進することができる。
また、図2Bに示す第4の実施形態のように、水槽6を設けず、電極3、4と食品2との間にヒドロゲル10を含む部材からなる受容供給部を配置し、水の供給、抜け出たカリウムイオン等のリザーバーとすれば、雰囲気冷却により食品の温度を0〜15℃の範囲に保つような構成とすることもできる。
第4の実施形態のようにヒドロゲル10を用いて、複数の食品2を一度に処理する場合には、溶出したイオンが再度食品に入り込むことのないように、電極の配置を図2Bに示すように、食品2及びヒドロゲル10を挟んだ電極3、4を1つのユニットとした場合に、各ユニット毎に電極の配置が逆方向になるようにする必要がある。
このように配置することによって、隣り合うユニットから溶出した陰イオン、陽イオンが再度食品に流入することを防止することができる。
次に食品の風味、食感をそのまま維持しながら、カリウム等の塩類を除去する条件の検討を行った。塩蔵品や海産物の冷凍品等は、塩抜き/塩辛さの低減を目的として脱塩処理され、短時間の通電処理で足り、処理後の食品中には多量のナトリウム、カリウムイオンを残している。
しかしながら、腎臓病患者の食事に用いる目的で食品中のナトリウム、カリウムイオンを極低濃度まで取り除くためには長時間通電する必要がある。食品の味や食感を保ちながら、長時間通電するためには、通電密度を一定の範囲に保ち、低温で行うことが、非常に重要であることが明らかになった。
特に、にんじん等の根菜類や、かぼちゃ等、葉物野菜以外の野菜は以下のように茹でることによるカリウムの減少が非常に少ない。そのため、調理に用いる食品が低カリウムであることが非常に重要である。
五訂増補日本食品標準成分表(文部科学省)によれば、葉物野菜の場合には、茹でることによってカリウムを除去できる。例えば、ほうれんそうの場合は、生では690mg/100gのカリウムが含まれているのに対し、茹でることによって、カリウム値が490mg/100gと30%程度減少する。さらに冷凍した場合には240mg/100gと、65%程度のカリウムを除去することができる。
しかしながら、根菜類、いも類はカリウムの除去率が非常に少なく、調理によってカリウムが減少しないか、減少するとしてもその率はわずかである。例えば、にんじんの場合は、生では270mg/100gのカリウムが含まれているのに対し、茹でることにより、240mg/100gと10%強の減少にとどまる。
また、じゃがいもの場合、生では410mg/100gのカリウムが含まれているのに対し、水煮することにより、340mg/100gと20%程度の減少である。
さらに、日本かぼちゃの場合、生では400mg/100gのカリウムが含まれているのに対し、茹でることによりカリウムは減少することはなく、480mg/100gと100gあたりのカリウム量は増加している。
したがって、通電による塩類除去は、これら「茹でる」といった調理によるカリウム除去率が低い野菜の場合には、非常に有用である。しかしながら、適切な処理条件を用いなければ、カリウム等の塩類は除去できるものの脱水が生じ、食品の変質が生じ、食感、風味がひどく損なわれてしまう。そこで、種々の条件を検討したところ、温度及び通電条件が食感、風味に影響することが明らかとなった。以下に結果を示す。
なお、カリウム、糖及びリンは、日本食品標準成分表に用いられている分析法に準拠して測定した。具体的には以下の方法で測定している。
[カリウム測定法]
未処理検体中のカリウム量、通電後の検体(以下、処理検体ということもある。)中のカリウム残存量、溶出液中カリウム濃度は原子吸光法によって測定した。全ての検体は、硝酸、過塩素酸による湿式灰化法による前処理を行い、その後、原子吸光法によってカリウム量を測定した。
[糖測定法]
通電処理後、溶出される水溶性炭水化物はほとんど糖であったことから、水溶性炭水化物を測定し、糖濃度を測定している。具体的には、乾燥濾紙を用いて濾過し、アンスロン-硫酸法により比色定量している。
[ナトリウム測定法]
未処理検体中のナトリウム量、通電後の検体中のナトリウム残存量、溶出液中ナトリウム濃度は原子吸光法によって測定した。検体は、硝酸、過塩素酸による湿式灰化法による前処理を行い、その後、原子吸光法によってナトリウム量を測定した。
[リン測定法]
肉類等については、リンの測定を行った。未処理検体、処理検体ともに、硝酸、過塩素酸分解による湿式灰化法により前処理を行い、バナドモリブデン酸吸光度法により定量した。
≪通電条件の食味、食感に与える影響≫
最初に、食品の通電面積あたりの通電密度が、食味、食感に及ぼす影響について検討した。かぼちゃは、縦2.5cm、横2.5cm、厚さ2.5cmになるようにカットし、検体として用いた。上記第1の実施形態で示した装置1を水槽6に入れて用い、温度は0℃に保ち、0〜16mA/cmまで通電密度を変えて、6時間処理し、甘味、香り、硬さ・舌触りについて検討を行った。また、通電処理を行わず、室温(23℃)で水に6時間浸漬した検体も同様に甘味等について検討した。
食味評価は4人のモニターに、処理検体を電子レンジで1分間加熱し、甘味、香り、硬さ・舌触りに関して、未処理検体と下記の基準で比較評価してもらった。
5:優/未処理検体と遜色ない
4:良/少し劣る
3:可/劣る
2:不可/著しく劣る
1:食用に適さない
の5段階、及び各段階の中間の評価(1.5、2.5、3.5、4.5)の9段階の評価をつけてもらった。さらに、5段階で総合評価をつけてもらい、4人の平均値を算出した。結果を表1に示す。
表1に示すように、通電密度が大きくなるほど、甘味、香り、硬さ・舌触りともに評価が低くなる傾向にある。特に、硬さ・舌触りに関しては、通電密度16mA/cm(試料3)では、1.1と非常に低い値となっており、食用には適さない。また、総合評価も不可となり、食用としては適さないという評価となっている。
一方、通電密度が4mA/cm(試料1)、8mA/cm(試料2)の場合には、香り、硬さ・舌触りともに良い評価を得ている。通電せず、室温で水に浸漬しただけの検体(試料4)も、甘味、香り等は未処理検体に比べ、劣っていると判断したモニターもおり、水に一定時間浸漬することにより、甘味成分、香り成分が抜け出たり、浸透圧により水分が食品内に流入することにより、味が薄くなってしまうものと考えられる。したがって、長時間の水への浸漬は避ける方が望ましい。
上記実験結果によれば、甘味、香りとともに、硬さ・舌触りが通電により最も影響を受けることが明らかとなった。また、甘味、香りと硬さ・舌触りに相関が見られることから、通電密度及び温度を変え、6時間処理し、硬さ・舌触りを食味、食感の指標とし、脱水、カリウム除去率(K除去)について検討した。結果を表2に示す。
硬さは、未処理検体と比較して、同等のものを良好、硬さが減り弾力性を持つものを軟、さらに弾力性を失い粘土様の可塑性を示したものを極軟としている。
直流電流で通電処理を行った検体(試料2−1〜2−5)はいずれもカリウムが除去されている。
一方、交流電流(試料2−6)は12%、あるいは通電を行わなかったもの(試料2−7、8)については、夫々1%、3%と温度条件によらず、ほとんどカリウムが除去されていない。
検体として用いた野菜の品種、産地、収穫後の保存期間や保存条件によって、カリウム量は変わってくることから、表2では、カリウム除去率は数回の実験結果をもとに幅のある値で示している。表2で示した実験条件で同日に行った、同じかぼちゃに由来する検体では、4mA/cmで処理した検体(試料2−1)では39%、8mA/cm、16mA/cmで処理した検体(試料2−2〜2−5)については、夫々82%、95%、91%、98%といずれも80%以上カリウムが除去されている。
また、カリウム除去装置は水槽内で検体を水に浸漬して処理を行っているにも関わらず、室温で処理を行うと著しく脱水が生じており、食味に影響を及ぼしている(試料2−5)。一方、低温(0〜10℃)で処理した検体(試料2−1〜2−4)は、通電密度に関わらず、脱水の程度がマイナス(−)〜プラス(+)の範囲であった。
0℃、4mA/cmで処理した検体(試料2−1)、あるいは8mA/cmで処理した検体(試料2−2)は、硬さも未処理検体と同等であり、脱水による凹みも8mA/cmで処理した検体(試料2−2)で1mm程度の極小さい凹みが陰極側に生じていたのみである。
また、0℃、16mA/cmで処理した検体(試料2−3)は、陰極側に強い凹みが生じていた。したがって、低温であっても、16mA/cmでは、脱水が進むため、食味、食感がやや低下する。
また、10℃、8mA/cmで処理した検体(試料2−4)では、皮以外の5面ですべて脱水による5mm程度の凹みが観察された。また、検体の硬さも軟らかくなっていた。
23℃、8mA/cmで処理した検体(試料2−5)は、脱水が激しく、検体が粘土状となっており、食感も著しく悪いものとなっている。したがって、通電条件だけではなく、温度条件が食味、食感を保つためには非常に重要である。
上記のように通電密度、及び処理時の温度条件が食味及び食感を保つために重要であることが明らかとなったので、これらの条件を変えて、経時的にカリウム、及び食味試験の甘味と相関する糖の溶出量を測定した。
≪通電密度の検討≫
通電密度は、検体としてかぼちゃを用い、温度は0℃に保ち、0〜16mA/cmまで通電密度を変えて、経時的に溶出するカリウム、糖の量を測定し検討した。結果を図3に示す。
図3から明らかなように、通電密度が高いほど、短い通電時間でカリウムが除去される。例えば、カリウムが60%溶出する時間は、16mA/cmでは約160分であるのに対し、8mA/cmでは約200分であり、16mA/cmで通電した方が早く除去することができる。しかしながら、糖も同時に抜け出るため、結果として通電密度があまり高いと食味が低下する。カリウムが60%溶出した時の糖の溶出を比べると、16mA/cmでは約2.3g/100gであるのに対し、8mA/cmでは約1.7g/100gであり、同程度のカリウムが溶出しているにも関わらず、通電密度が低いと残存している糖の量が多い。
図3に示すように、最終的なカリウムの溶出量は、通電密度16mA/cmでも8mA/cmでも大きな差はないものの、糖の溶出には大きな差が見られる。表1で示したように食味評価でも通電密度16mA/cmでは、総合評価「不可」であり、糖が多量に溶出していることが食味の悪化の一要因となっていることを裏付けている。糖の溶出の程度が食味試験の際の甘さと相関することから、かぼちゃの場合には、8mA/cmの通電処理が、糖の溶出はある程度抑えながら、短時間でカリウムを溶出することができる条件と考えられる。糖が抜け出る早さは、食品によっても異なるので、1〜16mA/cm、より好ましくは、1〜8mA/cmの通電密度であれば、食味を保ちながら、カリウムを溶出させることができる。また、カリウム除去をある程度短時間で行うことを考えると通電密度は4〜8mA/cmがより好ましい。
≪温度条件の検討≫
次に、通電密度は8mA/cmに保ち、温度を0℃〜25℃まで変えて、経時的に溶出するカリウム、糖の量を測定した。結果を図4に示す。
通電条件を変えて検討した場合ほど大きな変化は見られないが、温度が高いほど、カリウム、糖の溶出速度は速くなっている。温度が高いほど、カリウムの溶出が早いため、カリウム除去にとっては25℃程度の室温が良いものと考えられる。しかしながら、表2で示したように、温度が高くなるにしたがって、脱水が生じるため、食品が軟らかくなったり、粘土状になる等、食感が非常に悪くなり、食用には適さないものとなる。したがって、温度範囲は、0℃〜15℃が好ましく、0℃〜10℃がより好ましく、0〜5℃がさらに好ましい。
≪種々の野菜でのカリウム除去の検討≫
次に、他の野菜類でも同様にカリウムを除去することができるか確認を行った。にんじん、さつまいも、じゃがいもを縦2.5cm、横2.5cm、厚さ2.5cmになるようにカットし、0℃で通電密度を変えてカリウム及び糖の溶出を測定した。いずれの野菜もかぼちゃと同様にカリウムが溶出する。結果を図5に示す。
にんじんは、通電密度4mA/cmの条件が、食感が良好であり、糖の溶出も少なかった。通電密度8mA/cmの条件では、脱水が生じ、やや軟らかい食感となっていた。
さつまいもは、いずれの通電密度でも食感は良好であった。より高い通電密度(12mA/cm)であっても、未処理のものと遜色ない食感を得ることができる。
じゃがいもは通電密度4mA/cmの条件では、脱水が著しく、食用には適さないと思われた。じゃがいもは2mA/cmでやや長時間通電を行うことにより、変質することなく、カリウムを除去することができる。
以上のように、異なる野菜であっても、通電密度が1〜12mA/cmの範囲で調整することにより、食味、食感を保ったまま、カリウムを除去することができる。
≪食品の軟化防止のための前処理≫
加熱による食品の過度の軟化を防止し、食感の劣化や形崩れを防止するために、塩化カルシウム水溶液に浸漬処理する方法が知られている(特許文献5、非特許文献1、2)。植物の骨格形成成分であるペクチンとカルシウム塩とが結合することにより、細胞壁を強固にし、組織が硬化することを利用しているものである。この反応を利用して通電による野菜の過度の軟化が防止できるか検討を行った。
0.7重量%塩化カルシウム溶液、3Lに、縦2.5cm、横2.5cm、厚さ2.5cmに切ったかぼちゃ、約120gを浸漬し、室温で16時間、2時間毎に穏やかに撹拌して前処理を行った。
前処理後の検体は、検体からカリウムがほとんど溶出するが、硬さの評価が「軟」となる通電条件である0℃、16mA/cmで処理を行い、食品の軟化、脱水について検討を行った。結果を表3に示す。
塩化カルシウムに浸漬する前処理を行った検体は、硬さも良好であり、脱水もほとんど生じていなかった。一方、前処理を行わなかった検体は、脱水が生じ、検体も軟化していた。
塩化カルシウムによる前処理によって、通電処理による軟化が防止できるという上記結果は、ペクチン質の変質を防ぐ前処理によって、通電処理による食品の軟化を防ぐことができることを示している。したがって、ペクチンの変質を防ぐ様々な方法、例えば、ペクチンメチルエステラーゼの酵素反応を利用する50〜65℃での予備加熱処理等、ペクチンの変質を防止する前処理を行うことによって、通電による食品の軟化を防止できる。
上記結果によれば、食品の軟化を防止する処理を施すことにより、16mA/cmまで、通電処理を行うことができることから、食品によっては短時間でカリウムを除去する処理を行えることが示された。
≪通電密度、通電時間、電極間距離の検討≫
食品の内部を陽イオンが移動することにより除去されることから、通電密度だけではなく、食品の厚さも除去率には重要である。そこで、通電密度、通電時間とカリウムイオンの移動度との関係について検討を行った。
カリウムイオンは電極を結ぶ線に対し垂直方向に層状に移動し、食品の外に溶出するものと考えられる。したがって、カリウムイオン除去率から、カリウムイオンの移動距離を算出することができる。そこで、通電密度4mA/cm、8mA/cm、0℃でKイオンの除去率を測定した結果から、通電密度(mA/cm)×時間(h)を横軸に、カリウムイオンの移動距離(mm)を縦軸にとるグラフを作成した。かぼちゃを検体として用いた結果を図6に示す。
通電密度と通電時間の積に、イオンの移動距離は比例することから、下記式(1)が成立する。
A×T=D×R×B (1)
上記式中、Aは食品の通電面積あたりの通電密度(mA/cm),Tは通電時間(hr)、Dは電極間の距離、すなわち食品の厚み(cm)、Rはカリウムイオンの除去率、Bは食品固有の定数を示す。上記実施例より算出したかぼちゃの定数Bは15.2、また、にんじんでは6.7、じゃがいもでは11.3、さつまいもでは20.6となる。
上記定数Bを用いることにより、例えば、厚さ1cmのかぼちゃから、食味、硬さも良好な結果が得られている8mA/cmの通電密度で、80%カリウムイオンを除去する場合に、上記式(1)に代入することによって、1.5時間ほど通電すれば良いことが計算できる。
また、上記定数Bは本実施例の結果から算出したものであるが、本発明者らは検討の結果、定数Bは、食品の水分割合と相関し、表4に示すように食品成分表の水分以外の成分に0.6をかけた数として概算できることを見出した。
表4に示すように、水分以外の成分量に0.6をかけて算出した定数Bの計算値と、実測値との差は1未満である。これは、食品成分表に掲載されている野菜と実測した野菜とで、同一のものを使用したわけではなく、栽培品種、収穫時期、産地が一致していないことを考えれば、良く一致しているといえる。上記結果から、定数Bは実測して求めることも可能であるし、食品成分表の水分量をもとに概算することも可能である。
したがって、予め定数Bを求めておき、食品の厚み、除去したいカリウム量によって、通電量、通電時間を定めることができる。
≪肉類、魚介類からのカリウム、ナトリウム、リンの除去≫
次に、野菜と同様、肉、魚介類のカリウム除去を行うことができるか検討を行った。タンパク源である、肉類、魚介類からカリウム、リンの除去を行うことができれば、食事制限の厳しい腎臓病患者であっても、肉類、魚介類を心配なく摂取することができる。
検体としては、若鶏胸肉、刺身用真だこ(ゆで)を用いた。各検体は高さ2.5cmの樹脂性の角型筒枠に詰め、0℃、8mA/cm、4時間処理し、カリウム、ナトリウム、リンの量を測定した。結果を表5に示す。なお、通電処理後の検体は通電方向と垂直になるように、鶏胸肉は1/3ずつカットし、陰極側、中央、陽極側の3つに分けて各値を測定し、真だこは、陽極側2/3、陰極側1/3に分けて各値を測定した。
鶏胸肉、真だこともに、通電処理することによって、カリウム、ナトリウム、リン、全ての値が低くなっている。鶏胸肉では、カリウム、ナトリウム、リン全てが未処理の約50%まで減少している。真だこでは、処理後にはカリウムは未処理の約30%、ナトリウムは約50%、リンは70%にまで減少している。
また、各検体を1/3ずつ通電方向に垂直になるようにカットして測定した鶏胸肉では、カリウム、ナトリウム等の陽イオンは陰極側に、リン等の陰イオンは陽極側に移動して溶出していくため、各電極側で高い値となっている。しかし、中央部では、カリウムは未処理の17%、ナトリウムは19%、リンは46%と、非常に低い値をとっている。
肉類、魚介類は、野菜に比べ脂肪を多く含むためか、イオンの移動も野菜と異なり、各電極付近に集積し、溶出に時間がかかる傾向がある。しかしながら、電極に接する部分を切除して、電極間の中央部を用いることによって、カリウム、ナトリウム等の陽イオン、リン等の陰イオンともに低い食品を得ることができる。
また、本発明の装置では、食品表面への塗布物、食品を浸漬する水、あるいは食品を挟むヒドロゲルに、カルシウム等、溶出させる必要のないイオンや食味成分を一定量含ませることにより、栄養価、食味ともに損なうことなく、処理を行うことができる。添加するイオン等は処理時間の最初からごく薄い濃度で食品を浸漬する水やヒドロゲルに含有させておいてもよいし。処理時間の最後の30分から1時間程度添加して、食品中に回復させても良い。
以上、示してきたように本発明の塩類を除去する装置を用いることによって、野菜類だけではなく、肉類、魚介類等、どのような食品であっても、カリウム、ナトリウム等の陽イオン、リン等の陰イオンを食品の食感、風味を損なうことなく、除去することができる。
本発明の装置は、比較的簡単な構造であるため装置を小型化することもできる。したがって、腎臓病患者の各家庭において、本発明の装置を用いて日々の食材からカリウム等の塩を除去することが可能となる。また、通電時間と通電密度を設定することにより所望の量のカリウムイオンを食品から除去することができるので、多様な食材を用いても食生活を管理することができるようになる。
1・・・塩類を除去する装置、2・・・食品、3、4・・・電極、5・・・緩衝材、6・・・水槽、7・・・載置台、10・・・ヒドロゲル、11・・・撹拌羽

Claims (10)

  1. 食品から塩類を除去する装置であって、
    対向した一方の電極と他方の面電極の間に密着するように挟み込んだ食品を介して直流電流を通電する電極と、
    溶出したイオンを受容するとともに水分を供給する受容供給部と、
    通電時に前記食品を0〜15℃に冷却する冷却装置を備えることを特徴とする食品から塩類を除去する装置。
  2. 請求項1に記載の食品から塩類を除去する装置であって、
    前記受容供給部が食品と前記電極を浸水する水槽であることを特徴とする食品から塩類を除去する装置。
  3. 請求項2記載の食品から塩類を除去する装置であって、
    前記冷却装置は該水槽の水を冷却することを特徴とする食品から塩類を除去する装置。
  4. 請求項1に記載の食品から塩類を除去する装置であって、
    前記受容供給部が前記電極と食品の間に配置されるヒドロゲルを含む部材であって、
    前記食品に密接した該ヒドロゲルを含む部材を介して、一方の電極から他方の電極へ通電することを特徴とする食品から塩類を除去する装置。
  5. 請求項4記載の食品から塩類を除去する装置であって、
    前記冷却装置は前記塩類を除去する装置が設置されている雰囲気を冷却する装置であることを特徴とする食品から塩類を除去する装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の食品から塩類を除去する装置であって、
    通電条件が下記式(1)を満たすように設定することを特徴とする食品から塩類を除去する装置。
    (数1)
    A×T=D×R×B (1)
    (上記式中、Aは食品の通電面積あたりの通電密度(mA/cm)、Tは通電時間(hr)、Dは電極間の距離、すなわち食品の厚み(cm)、Rはカリウムイオンの除去率、Bは食品固有の定数を示す。)
  7. 食品から塩類を除去する方法であって、
    通電時に0〜15℃に冷却しながら、
    食品を水中に浸水させ、対向した一方の面電極と他方の面電極の間に密着するように挟み込んだ前記食品を介して直流電流を通電するか、
    又は、食品をヒドロゲルを含む部材に密接するように挟み込み、対向した一方の面電極と他方の面電極の間に食品を挟み込んだヒドロゲルを含む部材が双方の面電極に密着するように配置し、前記ヒドロゲルを含む部材及び前記食品を介して直流電流を通電することにより塩類を除去することを特徴とする食品から塩類を除去する方法。
  8. 請求項記載の食品から塩類を除去する方法であって、
    通電条件が下記式(1)を満たすことを特徴とする食品から塩類を
    除去する方法。
    (数2)
    A×T=D×R×B (1)
    (上記式中、Aは食品の通電面積あたりの通電密度(mA/cm2)、Tは通電時間(hr)、Dは電極間の距離、すなわち食品の厚み(cm)、Rはカリウムイオンの除去率、Bは食品固有の定数を示す。)。
  9. 請求項又は記載の食品から塩類を除去する方法であって、
    前記食品はペクチンの変質を防止する前処理を行い、
    通電密度が1〜16mA/cmで処理することを特徴とする食品から塩類を除去する方法。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項記載の食品から塩類を除去する方法であって、
    通電密度が1〜3mA/cmで処理することを特徴とする食品から塩類を除去する方法。
JP2016512528A 2014-04-09 2014-04-09 食品から塩類を除去する装置、及び除去方法 Active JP6052701B2 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2014/060283 WO2015155852A1 (ja) 2014-04-09 2014-04-09 食品から塩類を除去する装置、及び除去方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6052701B2 true JP6052701B2 (ja) 2016-12-27
JPWO2015155852A1 JPWO2015155852A1 (ja) 2017-04-13

Family

ID=54287455

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016512528A Active JP6052701B2 (ja) 2014-04-09 2014-04-09 食品から塩類を除去する装置、及び除去方法

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6052701B2 (ja)
WO (1) WO2015155852A1 (ja)

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05262882A (ja) * 1992-01-31 1993-10-12 W R Grace & Co 熱可逆性ハイドロゲル材料
JPH0690685A (ja) * 1992-09-11 1994-04-05 Tetsudo Kizai Kogyo Kk 脱塩装置
JPH0925306A (ja) * 1995-07-12 1997-01-28 Nitto Chem Ind Co Ltd ハイドロゲルの製造方法
JPH10165113A (ja) * 1996-12-13 1998-06-23 Hoshizaki Electric Co Ltd 食品から金属成分を除去する方法および装置
WO2001058286A1 (en) * 2000-02-11 2001-08-16 Valtion Teknillinen Tutkimuskeskus Process for preserving foodstuff
JP2002325562A (ja) * 2001-05-01 2002-11-12 Tomoki Yamazaki 海草類の脱塩法
JP2003204768A (ja) * 2002-01-11 2003-07-22 Ajinomoto Co Inc 調理用カボチャ及びその製造方法
JP2009298971A (ja) * 2008-06-16 2009-12-24 Hokkaido Univ 高分子ゲルおよびその製造方法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH05262882A (ja) * 1992-01-31 1993-10-12 W R Grace & Co 熱可逆性ハイドロゲル材料
JPH0690685A (ja) * 1992-09-11 1994-04-05 Tetsudo Kizai Kogyo Kk 脱塩装置
JPH0925306A (ja) * 1995-07-12 1997-01-28 Nitto Chem Ind Co Ltd ハイドロゲルの製造方法
JPH10165113A (ja) * 1996-12-13 1998-06-23 Hoshizaki Electric Co Ltd 食品から金属成分を除去する方法および装置
WO2001058286A1 (en) * 2000-02-11 2001-08-16 Valtion Teknillinen Tutkimuskeskus Process for preserving foodstuff
JP2002325562A (ja) * 2001-05-01 2002-11-12 Tomoki Yamazaki 海草類の脱塩法
JP2003204768A (ja) * 2002-01-11 2003-07-22 Ajinomoto Co Inc 調理用カボチャ及びその製造方法
JP2009298971A (ja) * 2008-06-16 2009-12-24 Hokkaido Univ 高分子ゲルおよびその製造方法

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN4007019434; 日本農芸化学会2004年度(平成16年度)大会講演要旨集,2004. 03. 05,P. 63(2A17a04) *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2015155852A1 (ja) 2015-10-15
JPWO2015155852A1 (ja) 2017-04-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN103503973B (zh) 低盐风味腊鱼及其制作方法
JP4763315B2 (ja) レトルト用食肉加工品の品質改善剤
KR102096169B1 (ko) 해양심층수의 염도조절수를 이용한 배추절임 제조방법
JP6281888B2 (ja) 食品からカリウムを除去するシステム、及び除去方法
Priyadarshini et al. Quality characteristics of tilapia surimi: Effect of single washing cycle and different washing media
JP6052701B2 (ja) 食品から塩類を除去する装置、及び除去方法
Winiarska‐Mieczan et al. Content of cadmium and lead in raw, fried and baked commercial frozen fishery products consumed in Poland
JP6397519B2 (ja) 加熱済み魚介類食品の制菌方法及び製造方法
JP6086417B2 (ja) 低カリウム食品、その製造方法、及び製造キット
JP2015027275A (ja) 生食用農作物の殺菌方法
JP3845107B1 (ja) ジュール加熱による食品の製造方法
KR101281637B1 (ko) 조미 건오징어채의 위해 요인 저감화 제조방법
Fuentes et al. Influence of the presence of skin on the salting kinetics of European sea bass
JP5069195B2 (ja) 塩類組成液
JPH06181680A (ja) エビの処理方法
JP2002034448A (ja) カット根菜類浸漬用組成物及びカット根菜類の製造方法
JP3187267B2 (ja) 加工食品の製造方法
JP2009027927A (ja) 海洋深層水を利用したレトルトごぼう水煮の製造方法
KR102547625B1 (ko) 용암해수를 이용한 생선 선도 유지 및 성분 함유량 향상을 위한 생선 처리 방법
Rinella Effect of Moderate Electric Fields on Sodium Chloride Diffusion in Porcine Muscle
JP6656561B1 (ja) 食肉の加工方法
JP7408582B2 (ja) 食品の保存処理方法
JP2008278756A (ja) 海洋深層水を利用した有機ぜんまい水煮の製造方法
JP4621297B1 (ja) 惣菜の製造方法及び惣菜
JP2008303182A5 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161108

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161118

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6052701

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250