本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
インク吐出ノズルからインクを吐出するヘッドと、
該ヘッドのノズル面をワイピングする布製の布ワイパーと、
該布ワイパーを湿潤液で湿らせるための湿潤部と、を有する印刷装置であって、
前記湿潤部は、前記布ワイパーに接触して湿潤液を供給する接触部材を備えることを特徴とする印刷装置。
かかる印刷装置によれば、湿潤部による布ワイパーの湿潤を適切に行うことが可能となる。
また、前記接触部材を前記布ワイパーに対して相対移動させる移送部を備え、
前記移送部は、
前記接触部材を前記布ワイパーに対して相対移動させることにより、前記接触部材から離れていた前記布ワイパーを該接触部材に接触させ、かつ、
前記布ワイパーが該接触部材に接触した際には、前記相対移動させることを中止し、
前記接触部材は、前記相対移動が中止された状態で、前記布ワイパーに接触して湿潤液を供給することとしてもよい。
かかる場合には、湿潤部による布ワイパーの湿潤をより適切に行うことが可能となる。
また、前記湿潤部は、前記接触部材として、開口部が前記布ワイパーに接触して湿潤液を供給する湿潤液供給ノズルを備え、
前記湿潤部は、さらに、湿潤液を貯留する湿潤液貯留部を有することとしてもよい。
かかる場合には、ノズルによる供給方式を採ることで湿潤液を適切に布ワイパーに送り込ませることができる。
また、前記湿潤液供給ノズルの前記開口部には、該開口部が前記布ワイパーに接触していない状態において、湿潤液によるメニスカスが形成されており、
前記開口部が前記布ワイパーに接触した際には、接触により前記メニスカスが破壊されることにより、前記湿潤液供給ノズルによる前記布ワイパーへの湿潤液の供給が行われることとしてもよい。
かかる場合には、電力の節約を実現することができる。
また、前記湿潤部はバルブを備え、
該バルブの開閉を制御するコントローラーを有し、
前記開口部が前記布ワイパーに接触した際に、前記コントローラーが前記バルブを開けることにより、前記湿潤液供給ノズルによる前記布ワイパーへの湿潤液の供給が行われることとしてもよい。
かかる場合には、湿潤液供給ノズルの不使用時に湿潤液が漏れることを確実に回避することができる。
次に、インク吐出ノズルからインクを吐出するヘッドのノズル面をワイピングする布製の布ワイパーに対して、該布ワイパーを湿潤液で湿らせるための湿潤部に備えられ前記布ワイパーに接触して湿潤液を供給する接触部材を相対移動させることにより、前記接触部材から離れていた前記布ワイパーを該接触部材に接触させることと、
前記布ワイパーが前記接触部材に接触した際には、前記相対移動させることを中止し、前記接触部材が、前記相対移動が中止された状態で、前記布ワイパーに接触して湿潤液を供給することと、
を有することを特徴とする湿潤液供給方法。
かかる湿潤液供給方法によれば、布ワイパーの湿潤を適切に行うことが可能となる。
===画像記録装置1の構成例について===
印刷装置の一例としての画像記録装置1(本実施の形態においては、インクジェット式プリンター、特に、ラテラルスキャン型のラベル印刷機)の構成例について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、画像記録装置1の概略断面図である。図2は、画像記録装置1のブロック図である。
なお、以下の説明において、「上下方向」、「左右方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、「前後方向」をいう場合は、図1において紙面に直交する方向を示すものとする。
また、本実施の形態においては、画像記録装置1が画像を記録する媒体の一例として、ロール状に巻かれた用紙(以下、ロール紙(連続紙)という)を用いて説明する。
本実施の形態に係る画像記録装置1は、図1及び図2に示すように、搬送ユニット20、及び、該搬送ユニット20がロール紙2を搬送する搬送経路(図1において、当該搬送経路は、ロール紙巻軸18からロール紙巻き取り駆動軸92までの間の、ロール紙2が位置する部分により表されている)に沿って、給送ユニット10、プラテン29、巻き取りユニット90、を有し、さらに、搬送経路上の画像記録領域Rにおいて複数種類のインクを吐出して画像記録を行うヘッドユニット30と、インク補給ユニット35と、キャリッジユニット40と、クリーニングユニット43と、ヒーターユニット70と、プラテン29上のロール紙2に風を送る送風ユニット80と、これらのユニット等を制御し画像記録装置1としての動作を司るコントローラー60と、検出器群50と、を有している。
給送ユニット10は、ロール紙2を搬送ユニット20に給送するものである。この給送ユニット10は、ロール紙2が巻かれ回転可能に支持されるロール紙巻軸18と、ロール紙巻軸18から繰り出されたロール紙2を巻き掛けて搬送ユニット20に導くための中継ローラー19と、を有している。
搬送ユニット20は、給送ユニット10により送られたロール紙2を、予め設定された搬送経路に沿って搬送するものである。この搬送ユニット20は、図1に示すように、中継ローラー19に対して水平右方に位置する中継ローラー21と、中継ローラー21から見て右斜め下方に位置する中継ローラー22と、中継ローラー22から見て右斜め上方(プラテン29から見て搬送方向上流側)に位置する第一搬送ローラー23と、中継ローラー22と第一搬送ローラー23との間に位置するステアリングユニット(舵取りユニット)20aと、第一搬送ローラー23から見て右方(プラテン29から見て搬送方向下流側)に位置する第二搬送ローラー24と、第二搬送ローラー24から見て鉛直下方に位置する反転ローラー25と、反転ローラー25から見て右方に位置する中継ローラー26と、中継ローラー26から見て上方に位置する送り出しローラー27と、を有している。
中継ローラー21は、中継ローラー19から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて下方に向かって弛ませるローラーである。
中継ローラー22は、中継ローラー21から送られたロール紙2を、左方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
第一搬送ローラー23は、不図示のモーターにより駆動される第一駆動ローラー23aと、該第一駆動ローラー23aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第一従動ローラー23bとを有している。この第一搬送ローラー23は、下方に弛ませたロール紙2を上方に引き上げ、プラテン29に対向する画像記録領域Rへ搬送するローラーである。第一搬送ローラー23は、画像記録領域R上のロール紙2の部位に対して画像印刷がなされている期間、一時的に搬送を停止させるようになっている。なお、コントローラー60の駆動制御により、第一駆動ローラー23aの回転駆動に伴って第一従動ローラー23bが回転することによって、プラテン29上に位置させるロール紙2の搬送量が調整される。
搬送ユニット20は、上述したとおり、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間に巻き掛けたロール紙2の部位を下方に弛ませて搬送する機構を有している。このロール紙2の弛みは、コントローラー60により、不図示の弛み検出用センサーからの検出信号に基づき監視される。具体的には、中継ローラー21、22と第一搬送ローラー23との間において弛ませたロール紙2の部位を、弛み検出用センサーが検出した場合には、該部位に適切な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20はロール紙2を弛ませた状態で搬送することが可能となる。一方、弛み検出用センサーが弛ませたロール紙2の部位を検出しない場合は、該部位に過剰な大きさの張力が与えられていることになるため、搬送ユニット20によるロール紙2の搬送が一時的に停止され、張力が適切な大きさに調整される。
ステアリングユニット20aは、図1に示すように、傾斜した状態で搬送経路上に位置し、回動することによりロール紙2の幅方向位置(幅方向(図1に示す前後方向)においてロール紙2が位置する位置)を変化させるためのものである。すなわち、ロール紙2が搬送経路に沿って搬送される際、中継ローラー等の軸ずれや組み付け誤差等によりロール紙2に作用する張力が変動すること等に起因して、ロール紙2の幅方向位置が変位する場合がある。そして、当該ステアリングユニット20aは、ロール紙2の当該幅方向位置を調整するためのものである。
第二搬送ローラー24は、不図示のモーターにより駆動される第二駆動ローラー24aと、該第二駆動ローラー24aに対してロール紙2を挟んで対向するように配置された第二従動ローラー24bとを有している。この第二搬送ローラー24は、ヘッドユニット30により画像が記録された後のロール紙2の部位を、プラテン29の支持面に沿って水平右方向に搬送した後に鉛直下方に搬送するローラーである。これにより、ロール紙2の搬送方向が転換されることになる。なお、コントローラー60の駆動制御により、第二駆動ローラー24aの回転駆動に伴って第二従動ローラー24bが回転することによって、プラテン29上に位置するロール紙2の部位に対して付与される所定の張力が調整される。
反転ローラー25は、第二搬送ローラー24から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め上方に向かって搬送するローラーである。
中継ローラー26は、反転ローラー25から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて上方に向かって搬送するローラーである。
送り出しローラー27は、中継ローラー26から送られたロール紙2を、左側下方から巻き掛けて巻き取りユニット90に送り出すようになっている。
このように、ロール紙2が各ローラーを順次経由して移動することにより、ロール紙2を搬送するための搬送経路が形成されることになる。なお、ロール紙2は、搬送ユニット20により、画像記録領域Rと対応した領域単位で間欠的にその搬送経路に沿って搬送される。
ヘッドユニット30は、搬送経路上の画像記録領域Rに位置するロール紙2の部位に画像を記録するためのものである。すなわち、ヘッドユニット30は、搬送ユニット20により搬送経路上の画像記録領域Rに(プラテン29上に)送り込まれたロール紙2の部位に、インク吐出ノズルからインクを吐出して画像を形成する。本実施の形態において、このヘッドユニット30は、M個のヘッド31を有している。
各々のヘッド31は、その下面(すなわち、ノズル面32)に、列方向にインク吐出ノズルが並んだインク吐出ノズル列を有している。本実施の形態においては、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)等の色毎にそれぞれ複数のインク吐出ノズル♯1〜♯Nからなるインク吐出ノズル列を有している。各インク吐出ノズル列の各インク吐出ノズル♯1〜♯Nは、ロール紙2の搬送方向に交差する交差方向(つまり、当該交差方向が前述した列方向である)に直線状に配列されている。各インク吐出ノズル列は、当該搬送方向に沿って相互に間隔をあけて平行に配置されている。
各インク吐出ノズル♯1〜♯Nには、インク滴を吐出するための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各インク吐出ノズル♯1〜♯Nから吐出される。
そして、かかるヘッド31が、前記交差方向(前記列方向)においてM個並べられ、このことにより、ヘッドユニット30が形成されている。そのため、ヘッドユニット30は、色毎にM×N個のインク吐出ノズルを有している。
インク補給ユニット35は、ヘッド31によるインクの吐出に起因してヘッドユニット30内のインクの量が減った際に、ヘッドユニット30にインクを補給するためのものである。
このインク補給ユニット35は、インクの色毎に設けられている。すなわち、イエロー色のインクを補給するためのイエローインク補給ユニット、マゼンタ色のインクを補給するためのマゼンタインク補給ユニット、シアン色のインクを補給するためのシアンインク補給ユニット、ブラック色のインクを補給するためのブラックインク補給ユニット等が設けられている。
インク補給ユニット35は、インクカートリッジ、インクの流路(通り道)となる多数のチューブ、当該チューブを開閉するための多数のバルブ等から構成されている。なお、当該インクカートリッジが設置されている場所を、図1における符号35で表している。
キャリッジユニット40は、ヘッドユニット30(ヘッド31)を移動させるためのものである。このキャリッジユニット40は、搬送方向(左右方向)に延びるキャリッジガイドレール41と(図1に二点鎖線で示す)、キャリッジガイドレール41に沿って搬送方向(左右方向)へ往復移動可能に支持されたキャリッジ42と、不図示のモーターとを有する。
キャリッジ42には、ヘッドユニット30(ヘッド31)が設けられている。そして、キャリッジ42は、不図示のモーターの駆動により、ヘッドユニット30(ヘッド31)と一体となって搬送方向(左右方向)へ移動するよう構成されている。
クリーニングユニット43は、ヘッド31をクリーニングするためのものである。クリーニングとしては、ヘッド31内のインクを吸引する吸引処理とヘッド31のノズル面32をワイピングする(拭く)ワイピング処理が、この順に行われ、クリーニングユニット43には、吸引処理とワイピング処理の双方を実現するための部材が備えられている。なお、クリーニングユニット43については、後に詳述する。
また、搬送方向(左右方向)におけるホームポジション(以下、HPと呼ぶ。図1参照)とプラテン29との間には、フラッシングユニット44が設けられており、ヘッド31(キャリッジ42)が搬送方向(左右方向)に移動してフラッシングユニット44に対向する位置に位置すると、ヘッド31は前記インク吐出ノズル列に属する各インク吐出ノズルからインクを吐出してフラッシングを行なうフラッシング動作を実行する。
プラテン29は、搬送経路上の画像記録領域Rに位置するロール紙2の部位を支持するとともに、該部位を加熱するものである。このプラテン29は、図1に示すように、搬送経路上の画像記録領域Rに対応させて設けられ、かつ、第一搬送ローラー23と第二搬送ローラー24との間の搬送経路に沿った領域に配置されている。そして、プラテン29は、ヒーターユニット70が発生させた熱の供給を受けることにより、ロール紙2の該部位を加熱することができる。
ヒーターユニット70は、ロール紙2を加熱するためのものであり、不図示のヒーターを有している。このヒーターは、ニクロム線を有しており、当該ニクロム線をプラテン29内部に、プラテン29の支持面から一定距離となるように配置させて構成されている。このため、ヒーターは、通電されることによってニクロム線自体が発熱し、プラテン29の支持面上に位置するロール紙2の部位に熱を伝導させることができる。このヒーターは、プラテン29の全域にニクロム線を内蔵させて構成されているため、プラテン29上のロール紙2の部位に対して熱を均一に伝導することができる。本実施の形態において、プラテン上のロール紙2の部位の温度が45℃となるように、該ロール紙2の部位を均一に加熱する。これにより、該ロール紙2の部位に着弾されたインクを乾燥させることができる。
送風ユニット80は、プラテン29上のロール紙2に風を送るためのものである。この送風ユニット80は、ファン81とファン81を回転させるモーター(不図示)とを備えている。ファン81は、回転することにより、プラテン29上のロール紙2に風を送り、ロール紙2に着弾されたインクを乾燥させるためのものである。このファン81は、図1に示すように、本体部に設けられた開閉可能なカバー(不図示)に複数設けられている。そして、この各々のファン81は、カバーが閉じた際に、プラテン29の上方に位置して、当該プラテン29の支持面(当該プラテン29上のロール紙2)と対向するようになっている。
巻き取りユニット90は、搬送ユニット20により送られたロール紙2(画像記録済みのロール紙)を巻き取るためのものである。この巻き取りユニット90は、送り出しローラー27から送られたロール紙2を、左側上方から巻き掛けて右斜め下方へ搬送するための中継ローラー91と、回転可能に支持され中継ローラー91から送られたロール紙2を巻き取るロール紙巻き取り駆動軸92と、を有している。
コントローラー60は、画像記録装置1の制御を行うための制御ユニットである。このコントローラー60は、図2に示すように、インターフェース部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、を有している。インターフェース部61は、外部装置であるホストコンピューター110と画像記録装置1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、画像記録装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路64により各ユニットを制御する。
検出器群50は、画像記録装置1内の状況を監視するものであり、例えば、前述の弛み検出用センサー、搬送ローラーに取り付けられてロール紙2の搬送などの制御に利用されるロータリー式エンコーダー、搬送されるロール紙2の有無を検出する用紙検出センサー、キャリッジ42(又はヘッド31)の搬送方向(左右方向)の位置を検出するためのリニア式エンコーダー、ロール紙2の幅方向における紙端(エッジ)位置を検出する紙端位置検出センサーなどがある。
===クリーニングユニット43について===
次に、クリーニングユニット43について、説明する。以下では、先ず、クリーニングユニット43の構成例について説明し、これに引き続いて、クリーニングユニット43の動作例について説明する。
<<<クリーニングユニット43の構成例について>>>
先ず、クリーニングユニット43の構成例について、図3乃至図7を用いて説明する。図3は、クリーニングユニット43を示した模式図である。図4は、布ワイパー212がノズル面32をワイピングする様子を示した模式図である。図5は、布ワイパー212が湿潤液供給ノズル240から離れているときの湿潤カートリッジ232の様子を示した模式図である。図6は、布ワイパー212に湿潤液供給ノズル240が接触しているときの湿潤カートリッジ232の様子を示した模式図である。図7は、湿潤カートリッジ232を下方から見たときの模式図である。なお、図5乃至図7においては、図を分かり易くするために、湿潤カートリッジ232が装着されるキャリッジ42の記載を省略している。
クリーニングユニット43は、前述したとおり、ヘッド31をクリーニングするためのものである。このクリーニングユニット43は、図3に示すように、キャップ部材200と、ワイピングユニット210と、湿潤部の一例としての湿潤ユニット230と、を有している。
キャップ部材200は、図3に示すように、有底箱形状を備えており、鉛直方向(上下方向)に移動することが可能となっている(移動させる機構については、後述する)。キャップ部材200は、吸引処理が実行される際に、上方向へ移動して、ヘッド31のノズル面32に密着することにより該ノズル面32をキャップする。
キャップ部材200には、不図示の吸引ポンプが接続されている。そして、キャップ部材200がノズル面32に密着した状態でコントローラー60の制御により吸引ポンプが作動すると、ヘッド31内のインクが、増粘したインクや紙粉と共に吸引され、目詰まりしたインク吐出ノズルが不吐出状態から回復するようになっている。
ワイピングユニット210は、図3に示すように、布ワイパー212と、布ワイパー巻軸214と、布ワイパー巻き取り駆動軸216と、押圧部材218と、を有している。
布ワイパー212は、ヘッド31のノズル面32をワイピングする(拭く)ための布(不織布等)製のシート状ワイパーである。本実施の形態においては、当該布ワイパー212は、ロール布である。
布ワイパー巻軸214は、布ワイパー212の繰り出しのために布ワイパー212が巻かれた軸であり、布ワイパー巻き取り駆動軸216は、布ワイパー212の巻き取りのために布ワイパー212が巻かれた軸である。布ワイパー巻軸214及び布ワイパー巻き取り駆動軸216は、鉛直方向において略同じ位置に位置している。コントローラー60の制御により布ワイパー巻き取り駆動軸216が駆動されると、布ワイパー212が、布ワイパー巻き取り駆動軸216により巻き取られ、かつ、布ワイパー巻軸214から繰り出される。そして、このことにより、布ワイパー212が左から右へ向かう方向(図3において、白矢印で示す方向)へ移動するようになっている。
押圧部材218は、ワイピング処理が実行される際に、布ワイパー212をヘッド31に押し当てる機能を有する。この押圧部材218は、前述したM個(多数)のヘッド31に対応するために、長手方向が前後方向(図3や図4において、紙面と直交する方向)に沿う長尺な円筒形状を有している。押圧部材218は、水平方向(左右方向)において、布ワイパー巻軸214と布ワイパー巻き取り駆動軸216の中間に位置している。また、鉛直方向において、これらの軸よりも上方に位置している。
ワイピングユニット210は、鉛直方向に移動することが可能となっている(移動させる機構については、後述する)。換言すると、布ワイパー212、布ワイパー巻軸214、布ワイパー巻き取り駆動軸216、押圧部材218は、一体的に鉛直方向に移動可能となっている。
そして、ワイピング処理が実行される際には、ワイピングユニット210は、鉛直方向における所定位置(布ワイパー212がノズル面32に接触可能な位置。以下、便宜上、ワイピング位置と呼ぶ)に位置し、かかる状態で、図4に示すように、ヘッド31が、キャリッジ42の移動に伴って水平方向(左右方向)に移動すると(白矢印参照。一方で、布ワイパー212の方は、前記布ワイパー巻き取り駆動軸216が駆動されず、静止している)、押圧部材218により布ワイパー212がノズル面32に押し当てられた状態(布ワイパー212がノズル面32及び押圧部材218により挟持された状態)で布ワイパー212がノズル面32に摺擦し、ノズル面32が布ワイパー212によりワイピングされることとなる。
一回のヘッド31の移動によるワイピングが行われた後には、次のワイピングの準備のために(次のワイピングで、布ワイパー212の新しい部位でノズル面32がワイピングされるように)、布ワイパー巻き取り駆動軸216が駆動されて布ワイパー212が移動することとなる(送られることとなる)。
なお、図4に示すように、ヘッド31には、ノズル面32をヘッド本体34側へ押し付ける目的等のためにカバーヘッド33が備えられている。このカバーヘッド33は、水平方向(左右方向)におけるノズル面32の両端部を覆っているため、カバーヘッド33とノズル面32との境界部Bには段差が生じている。そして、布ワイパー212は、従来のゴムワイパーと比べて、拭きにくい当該境界部Bのワイピングに適している。
また、上記において、キャップ部材200とワイピングユニット210が鉛直方向に移動可能となっていることを述べたが、キャップ部材200及びワイピングユニット210は一体的に移動するようになっている。そして、かかる移動を実現するために、クリーニングユニット43には、図3に示すように、収容ケース220と昇降装置222とが設けられている。
収容ケース220は、キャップ部材200及びワイピングユニット210を収容し、かつ、支持するためのものである。この収容ケース220は、上方に開口部を有し、有底箱形状を備えている。この収容ケース220には、布ワイパー巻軸214と布ワイパー巻き取り駆動軸216とが回転自在に支持されている。また、押圧部材218及びキャップ部材200も支持されている。このことにより、収容ケース220にワイピングユニット210及びキャップ部材200が固定されている。
そして、当該収容ケース220が、シリンダ等からなる昇降装置222の駆動により、鉛直方向に昇降され、このことにより、キャップ部材200及びワイピングユニット210の鉛直方向における一体的な移動が実現されるようになっている。
本実施の形態においては、収容ケース220(キャップ部材200及びワイピングユニット210)は、3つの異なる鉛直方向位置に位置するようになっている。第一の位置は、布ワイパー212がノズル面32に接触可能な前述したワイピング位置である(例えば、図8D参照)。また、第二の位置は、キャップ部材200がノズル面32に密着して吸引処理が実行可能な位置(以下、便宜上、キャップ位置と呼ぶ)である(例えば、図8A参照)。図3に示されているように布ワイパー212の最上部がキャップ部材200の最上部よりも上方に位置するため、このキャップ位置はワイピング位置よりも高い位置となっている。また、第三の位置は、キャップ部材200及び布ワイパー212の双方が、ノズル面32と接触することが不可能な位置(以下、便宜上、非接触位置と呼ぶ)である(例えば、図8B参照)。この非接触位置は、当然のことながら、キャップ位置やワイピング位置よりも低い位置となっている。なお、具体的にどのタイミングで、収容ケース220が昇降されるかについては、後に詳述する。
湿潤ユニット230は、布ワイパー212を湿潤液で湿らせるためのものである。
詳細については後述するが、本実施の形態においては、布ワイパー212が、第一状態の部位でノズル面32をワイピングする第一ワイピング動作と第二状態の部位でノズル面32をワイピングする第二ワイピング動作とを選択的に行うようになっている。すなわち、湿潤ユニット230により湿潤液で湿潤された状態の湿潤部位(第一状態の部位に相当)でノズル面32をワイピングする第一ワイピング動作と湿潤液で湿潤されていない状態の非湿潤部位(第二状態の部位に相当)でノズル面32をワイピングする第二ワイピング動作とを選択的に行うようになっている。また、湿潤ユニット230により第一湿潤液の一例としての水で湿潤された状態の第一湿潤部位(第一状態の部位に相当)でノズル面32をワイピングする第一ワイピング動作と湿潤ユニット230により第二湿潤液の一例としての有機溶剤で湿潤された状態の第二湿潤部位(第二状態の部位に相当)でノズル面32をワイピングする第二ワイピング動作とを選択的に行うようになっている。
つまり、より具体的には、布ワイパー212は、水で湿潤された状態の湿潤部位でノズル面32をワイピングするワイピング動作(以下、便宜上、水ワイピング動作と呼ぶ)と、有機溶剤で湿潤された状態の湿潤部位でノズル面32をワイピングするワイピング動作(以下、便宜上、有機溶剤ワイピング動作と呼ぶ)と、湿潤されていない状態の非湿潤部位でノズル面32をワイピングするワイピング動作(以下、便宜上、非湿潤ワイピング動作と呼ぶ)と、を実行することが可能となっている。
そして、湿潤ユニット230には、水ワイピング動作及び有機溶剤ワイピング動作を実現するために、二つの湿潤カートリッジ232、すなわち、布ワイパー212を水で湿らせるために布ワイパー212に水を供給する第一湿潤カートリッジ233及び布ワイパー212を有機溶剤で湿らせるために布ワイパー212に有機溶剤を供給する第二湿潤カートリッジ234が設けられている。
二つの湿潤カートリッジ232は、図3に示すように、いずれも、キャリッジ42に備えられている。具体的には、キャリッジ42には、第一湿潤カートリッジ233が着脱可能な第一装着部42aと第二湿潤カートリッジ234が着脱可能な第二装着部42bとが備えられており、第一湿潤カートリッジ233が第一装着部42aに、第二湿潤カートリッジ234が第二装着部42bに、それぞれ装着されている。なお、本実施の形態においては、図3に示されているように、第一湿潤カートリッジ233が水平方向(左右方向)においてヘッド31よりも右側に、第二湿潤カートリッジ234が水平方向(左右方向)においてヘッド31よりも左側に、それぞれ位置しており、二つの湿潤カートリッジ232が水平方向(左右方向)においてヘッド31を挟むような形態となっている。
第一湿潤カートリッジ233と第二湿潤カートリッジ234については、収容する湿潤液に相違があるものの、構成は同様であるので、以下では、主として、第一湿潤カートリッジ233の構成について説明する。
第一湿潤カートリッジ233は、図5乃至図7に示すように、上部体235及び該上部体235よりも鉛直方向下方に位置する下部体236を備え、当該下部体236に湿潤液供給ノズル240が、上部体235に湿潤液貯留部242が、それぞれ設けられている(形成されている)。
湿潤液供給ノズル240は、開口部240aが布ワイパー212に接触して湿潤液を供給する接触部材である。湿潤液供給ノズル240(開口部240a)が布ワイパー212に接触していない状態において、この湿潤液供給ノズル240の開口部240aには、図5に示すように、湿潤液によるメニスカスMが形成されている(このメニスカスMの形成は、ヘッド31のインク吐出ノズルにおけるメニスカス形成と同様の原理を用いて実現することができる)。そして、湿潤液供給ノズル240(開口部240a)が布ワイパー212に接触した際には、図6に示すように、当該接触によりメニスカスMが破壊されることにより、湿潤液が布ワイパー212に吸収されるようになっている(図6に示す矢印参照)。このようにして、湿潤液供給ノズル240による布ワイパー212への湿潤液の供給が行われる。
なお、図7に示すように、前記下部体236は、前述したM個(多数)のヘッド31に対応するために、長手方向が前後方向(図3や図6において、紙面と直交する方向)に沿う長尺な構造体となっており、当該下部体236の下面236a(湿潤液供給ノズル面)には、多数の湿潤液供給ノズル240が前後方向に並ぶようにして設けられている。
また、当該下面236a(換言すれば、湿潤液供給ノズル240の開口部240a)の鉛直方向における位置は、図3に示すように、ヘッド31のノズル面32の鉛直方向における位置と同じ位置に設定されている。
また、湿潤液供給ノズル240は、キャリッジ42に備えられているため、キャリッジ42の移動に伴い、ヘッド31と一体的に水平方向(左右方向)に移動可能となっている。
湿潤液供給ノズル240から布ワイパー212が離れている状態(例えば、図8E参照)で当該湿潤液供給ノズル240がキャリッジ42の移動に伴って水平方向(左右方向)へ移動すると、やがて、布ワイパー212が湿潤液供給ノズル240に接触する(図8F参照)。そして、布ワイパー212が湿潤液供給ノズル240に接触した際には湿潤液供給ノズル240が停止し、湿潤液供給ノズル240は、停止状態で、布ワイパー212に接触して湿潤液を供給する。
つまり、本実施の形態において、キャリッジ42は、湿潤液供給ノズル240を布ワイパー212に対して相対移動させる移送部としての役割を果たし、相対移動させることにより、湿潤液供給ノズル240から離れていた布ワイパー212を湿潤液供給ノズル240に接触させ、かつ、布ワイパー212が湿潤液供給ノズル240に接触した際には、相対移動させることを中止する。そして、湿潤液供給ノズル240は、当該相対移動が中止された状態で、布ワイパー212に接触して湿潤液を供給する。
湿潤液貯留部242は、湿潤液供給ノズル240が布ワイパー212に供給する湿潤液を貯留するためのものである。この湿潤液貯留部242は、湿潤液供給ノズル240と連結されている。
また、前記下部体236が、長手方向が前後方向に沿う長尺な構造体となっているため、図7に示すように、上部体235も同様の長尺な構造体となっている。そのため、湿潤液貯留部242も、長手方向が前後方向に沿う長尺な湿潤液収容部分を備えている。
また、本実施の形態においては、湿潤液貯留部242も、キャリッジ42に備えられている。そのため、湿潤液貯留部242は、湿潤液供給ノズル240と一体的に水平方向(左右方向)に移動する。
<<<クリーニングユニット43の動作例について>>>
次に、クリーニング処理が実行される際のクリーニングユニット43の動作例について、図8A乃至図9Dを用いて説明する。図8A乃至図8Gは、自動クリーニング処理が実行される際のクリーニングユニット43の状態を示した模式図である。図9A乃至図9Dは、手動クリーニング処理が実行される際のクリーニングユニット43の状態を示した模式図である。
本実施の形態においては、クリーニング処理として二種類の処理モードが用意されている。すなわち、予め定められたタイミングでのコントローラー60の制御により自動的にクリーニングが実行されるクリーニング処理(以下、便宜上、自動クリーニング処理と呼ぶ)と、ユーザーからホストコンピューター110等を経由してクリーニング指令をコントローラー60が受け取り、受け取ったクリーニング指令に基づいたコントローラー60の制御によりクリーニングが実行されるクリーニング処理(以下、便宜上、手動クリーニング処理と呼ぶ)とが、実行されるようになっている。
そして、いずれの処理モードにおいても、前述したとおり、ヘッド31内のインクを吸引する吸引処理とヘッド31のノズル面32をワイピングするワイピング処理が、この順に行われるが、自動クリーニング処理と手動クリーニング処理とでは、ワイピング処理において行われるワイピング動作が異なっている(一方で、吸引処理は同様である)。すなわち、自動クリーニング処理においては、布ワイパー212が、前記非湿潤ワイピング動作、前記水ワイピング動作の順に、2種類のワイピング動作を行うワイピング処理が行われるのに対し、手動クリーニング処理においては、布ワイパー212が前記有機溶剤ワイピング動作のみを行うワイピング処理が行われる。
本実施の形態に係る画像記録装置1において、このような処理モードが用意されている理由は以下の通りである。
すなわち、自動クリーニング処理においては、先ず、大きな汚れ(このような汚れの拭き取りについては、湿潤ワイピングよりも非湿潤ワイピングの方が向いている)を、湿潤されていない布ワイパー212で拭き取る(すなわち、乾拭きにより拭き取りが行われる)。そして、非湿潤ワイピングでは拭き取り難く、その結果残留してしまった小さな汚れ(例えば、前述した境界部Bの段差に埋まってしまった汚れ。ただし、かかる箇所の汚れに限定されるものではない)を、水で湿潤された布ワイパー212で拭き取る(すなわち、水拭きにより拭き取りが行われる)。水拭きにより毛細管現象を用いた拭き取りが可能となるため、上述した残留汚れも適切に拭き取ることができる。
また、手動クリーニング処理は、自動クリーニングよりも低頻度で実行されること(例えば、1年に1回)を想定した処理である。この手動クリーニング処理においては、水ワイピングでは取れない汚れが累積して固まってしまった固化汚れを、有機溶剤で湿潤された布ワイパー212で拭き取る。
以下では、先ず、自動クリーニング処理が実行される際のクリーニングユニット43の動作例について具体的に説明し、これに引き続いて、手動クリーニング処理が実行される際のクリーニングユニット43の動作例について具体的に説明する。なお、当該動作は、主として、コントローラー60により実現される。特に、本実施の形態においては、メモリー63に格納されたプログラムをCPU62が処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
コントローラー60は、先ず、キャリッジ42を制御して、ヘッド31がキャップ部材200に対向する位置にキャリッジ42を位置させると共に、昇降装置222を制御して収容ケース220(キャップ部材200)を前記キャップ位置に位置させる。このことにより、キャップ部材200がノズル面32に密着して吸引処理が実行可能な状態となる(図8A)。コントローラー60は、かかる状態で、吸引ポンプを作動させ、インクを吸引する吸引処理を実行する。
吸引処理が終了すると、コントローラー60は、昇降装置222を制御して収容ケース220をキャップ位置から前記非接触位置に下ろす(図8Aの下方向矢印)。このことにより、キャップ部材200及び布ワイパー212のいずれもがヘッド31及び湿潤カートリッジ232のいずれにも接触し得ない状態となる(図8B)。
コントローラー60は、かかる状態で、キャリッジ42を制御して、布ワイパー212が水平方向(左右方向)においてヘッド31と第二湿潤カートリッジ234の間に位置する位置までキャリッジ42を右から左へ移動させる(図8Bの左方向矢印及び図8C)。そして、さらに、昇降装置222を制御して、収容ケース220(布ワイパー212)を非接触位置から前記ワイピング位置に上げる(図8Cの上方向矢印)。このことにより、布ワイパー212がヘッド31に接触可能な位置に上げられて、ワイピング処理(具体的には、非湿潤ワイピング動作)が実行可能な状態となる(図8D)。
コントローラー60が、かかる状態で、キャリッジ42を制御して、キャリッジ42を右から左へ移動させると(図8Dの左方向矢印)、布ワイパー212がやがてヘッド31に接触する。そして、キャリッジ42のさらなる移動により、布ワイパー212はヘッド31に摺擦して当該ヘッド31をワイピングする(非湿潤ワイピング動作が行われる)。布ワイパー212がヘッド31から離れる位置までキャリッジ42が移動すると(図8E)、非湿潤ワイピング動作は終了する。そして、当該終了の後に、コントローラー60は、キャリッジ42を右から左へ移動させる制御を継続しつつ(図8Eの左方向矢印)、引き続いて行われる水ワイピング動作の準備のために、布ワイパー巻き取り駆動軸216を制御して、布ワイパー212を送る(図8Eの斜め方向矢印)。
コントローラー60が、キャリッジ42を右から左へ移動させる制御を継続させると、布ワイパー212がやがて第一湿潤カートリッジ233に接触する。そして、かかる際に、コントローラー60はキャリッジ42を停止させる(図8F)。かかる状態で、第一湿潤カートリッジ233から布ワイパー212に水が供給され、布ワイパー212が水で湿潤される。
かかる状態で、所定時間(布ワイパー212が適切に湿潤するのに十分な時間)が経過したら、コントローラー60は、キャリッジ42を制御して、今度はキャリッジ42を逆方向へ(左から右へ)移動させる(図8Fの右方向矢印)。布ワイパー212は、やがてヘッド31に接触し、キャリッジ42のさらなる移動により、水で湿潤された布ワイパー212がヘッド31に摺擦して当該ヘッド31をワイピングする(水ワイピング動作が行われる)。布ワイパー212がヘッド31から離れる位置までキャリッジ42が移動すると(図8G)、水ワイピング動作は終了する。そして、当該終了の後に、コントローラー60は、将来的に行われ得るクリーニング処理におけるワイピングの準備のために、布ワイパー巻き取り駆動軸216を制御して、布ワイパー212を送る(図8Gの斜め方向矢印)。
次に、手動クリーニング処理が実行される際のクリーニングユニット43の動作例について説明する。
コントローラー60は、自動クリーニング処理と同様、先ず、キャリッジ42を制御して、ヘッド31がキャップ部材200に対向する位置にキャリッジ42を位置させると共に、昇降装置222を制御して収容ケース220(キャップ部材200)を前記キャップ位置に位置させる。このことにより、キャップ部材200がノズル面32に密着して吸引処理が実行可能な状態となる(図9A)。コントローラー60は、かかる状態で、吸引ポンプを作動させ、インクを吸引する吸引処理を実行する。
吸引処理が終了すると、コントローラー60は、昇降装置222を制御して収容ケース220をキャップ位置から前記ワイピング位置に下ろす(図9Aの下方向矢印)。このことにより、布ワイパー212がヘッド31に接触可能な位置に下げられて、ワイピング処理(具体的には、有機溶剤ワイピング動作)が実行可能な状態となる(図9B)。
コントローラー60が、かかる状態で、キャリッジ42を制御して、キャリッジ42を右から左へ移動させる(図9Bの左方向)と、布ワイパー212がやがて第二湿潤カートリッジ234に接触する。そして、かかる際に、コントローラー60はキャリッジ42を停止させる(図9C)。このような状態で、第二湿潤カートリッジ234から布ワイパー212に有機溶剤が供給され、布ワイパー212が有機溶剤で湿潤される。
かかる状態で、所定時間(布ワイパー212が適切に湿潤するのに十分な時間)が経過したら、コントローラー60は、キャリッジ42を制御して、キャリッジ42を再度右から左へ移動させる(図9Cの左方向)。布ワイパー212は、やがてヘッド31に接触し、キャリッジ42のさらなる移動により、有機溶剤で湿潤された布ワイパー212が、ヘッド31に摺擦して当該ヘッド31をワイピングする(有機溶剤ワイピング動作が行われる)。布ワイパー212がヘッド31から離れる位置までキャリッジ42が移動すると(図9D)、有機溶剤ワイピング動作は終了する。そして、当該終了の後に、コントローラー60は、将来的に行われ得るクリーニング処理におけるワイピングの準備のために、布ワイパー巻き取り駆動軸216を制御して、布ワイパー212を送る(図9Dの斜め方向矢印)。
===本実施の形態に係る画像記録装置1の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係る画像記録装置1は、インク吐出ノズルからインクを吐出するヘッド31と、該ヘッド31のノズル面32をワイピングする布製の布ワイパー212と、該布ワイパー212を湿潤液で湿らせるための湿潤ユニット230と、を有しており、湿潤ユニット230は、布ワイパー212に接触して湿潤液を供給する接触部材(湿潤液供給ノズル240)を備えている。そして、このことにより、湿潤ユニット230による布ワイパー212の湿潤を適切に行うことが可能となる。
すなわち、比較例に係る画像記録装置1においては、湿潤ユニット230が、布ワイパー212に接触していない状態で、布ワイパー212に向けて湿潤液を噴射する(吐出する)ことにより布ワイパー212を湿らせていた。そのため、布ワイパー212の湿潤が適切に行われていなかった。つまり、噴射された湿潤液の中に布ワイパー212に到達しないものが多くあり、布ワイパー212の湿潤が不十分となる場合があった。また、このような到達しない湿潤液はミストとなって浮遊することとなり、本来湿潤液が付着することが予定されていない部位に当該ミストが付着することにより他の弊害を引き起こす場合があった。
これに対し、本実施の形態に係る画像記録装置1において、湿潤ユニット230は、布ワイパー212に接触して湿潤液を供給するため、湿潤液が確実に布ワイパー212に到達し、布ワイパー212の湿潤が十分なものとなる。また、ミストの発生も抑止される。そのため、湿潤ユニット230による布ワイパー212の湿潤が適切に行われることとなる。
また、本実施の形態においては、接触部材を布ワイパー212に対して相対移動させるキャリッジ42が備えられ、キャリッジ42は、接触部材を布ワイパー212に対して相対移動させることにより、接触部材から離れていた布ワイパー212を接触部材に接触させ、かつ、布ワイパー212が接触部材に接触した際には、相対移動させることを中止し、接触部材は、相対移動が中止された状態で、布ワイパー212に接触して湿潤液を供給することとした。すなわち、湿潤液供給ノズル240は、停止状態で、湿潤液を供給することとした。そのため、動きながら湿潤液を供給する場合と比べて、湿潤液がより確実に布ワイパー212に到達し、また、ミストの発生もより一層抑止される。そのため、湿潤ユニット230による布ワイパー212の湿潤がより適切に行われることとなる。
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、主として印刷装置について記載されているが、湿潤液供給方法等の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
また、上記実施の形態においては、媒体としてロール紙2を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、カット紙、フィルム、布であってもよい。
また、上記実施の形態においては、ヘッドユニット30が複数(M個)のヘッド31を有していることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ヘッドユニット30が、一つのヘッド31からなることとしてもよい。
また、上記実施の形態においては、第一湿潤液として水を、第二湿潤液として有機溶剤を、例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第一湿潤液及び第二湿潤液の双方を、互いに異なる種類の有機溶剤としてもよい。
また、上記実施の形態においては、接触部材として、開口部240aが布ワイパー212に接触して湿潤液を供給する湿潤液供給ノズル240を例に挙げて説明し、湿潤ユニット230が別途湿潤液を貯留する湿潤液貯留部242を有することとしたが、このような形態に限定されるものではなく、接触して湿潤液を供給するものであれば接触部材はどのようなものでも構わない。
ただし、ノズルによる供給方式を採ることで湿潤液を適切に布ワイパー212に送り込ませることができる点で、上記実施の形態の方が望ましい。
また、上記実施の形態に係る湿潤液供給ノズル240による湿潤液供給については、湿潤液供給ノズル240の開口部240aには、該開口部240aが布ワイパー212に接触していない状態において、湿潤液によるメニスカスMが形成されており、開口部240aが布ワイパー212に接触した際には、接触によりメニスカスMが破壊されることにより、湿潤液供給ノズル240による布ワイパー212への湿潤液の供給が行われることとしたが(以下、第一供給形態と呼ぶ)、これに限定されるものではなく、例えば、以下の形態であってもよい(第二供給形態と呼ぶ)。
第二供給形態について、図10及び図11を用いて説明する。図10は、図5に対応した図であり、布ワイパー212が湿潤液供給ノズル240から離れているときの第二供給形態に係る湿潤カートリッジ232の様子を示した模式図である。図11は、図6に対応した図であり、布ワイパー212に湿潤液供給ノズル240が接触しているときの第二供給形態に係る湿潤カートリッジ232の様子を示した模式図である。
第二供給形態においても、第一供給形態と同様、第一湿潤カートリッジ233は、上部体235及び下部体236を備え、当該下部体236に湿潤液供給ノズル240が、上部体235に湿潤液貯留部242が、それぞれ設けられている(形成されている)。
しかしながら、第二供給形態においては、第一供給形態とは異なり、図10及び図11に示すように、湿潤ユニット230がバルブ244を備えている。このバルブ244は、開口部240aが布ワイパー212に接触して湿潤液を供給する接触部材である湿潤液供給ノズル240に設けられ、コントローラー60によりその開閉が制御される。
図10に示すように、湿潤液供給ノズル240(開口部240a)が布ワイパー212に接触していない状態において、バルブ244は、閉じられた状態にある(図10中の「S」はバルブ閉状態を示す)。そして、湿潤液供給ノズル240(開口部240a)が布ワイパー212に接触した際には、図11に示すように、コントローラー60がバルブを開けることにより(図10中の「O」はバルブ開状態を示す)、湿潤液供給ノズル240による布ワイパー212への湿潤液の供給が行われるようになっている。
第一供給形態と第二供給形態とを比較した場合、第二供給形態の方はバルブ244を開けるために電力を要するのに対し、第一供給形態は、湿潤液供給の際に電力を必要としない点で優位性を有する。一方、第二供給形態の方は、湿潤液供給ノズル240の不使用時に湿潤液が漏れることを、バルブ244が閉じられることにより(どのような状況でも)確実に回避することができる点で、優位性を有する。
また、上記実施の形態においては、下部体236の下面236a(湿潤液供給ノズル面)に、多数の湿潤液供給ノズル240が設けられていることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図12に示すように、長手方向が前後方向(図3や図6において、紙面と直交する方向)に沿う長尺な一つの湿潤液供給ノズル240が設けられていることとしてもよい。図12は、図7に対応した図であり、変形例に係る湿潤カートリッジ232を下方から見たときの模式図である。
また、上記実施の形態においては、湿潤液供給ノズル240を布ワイパー212に対して相対移動させる移送部として、湿潤液供給ノズル240を布ワイパー212に対して移動させるキャリッジ42を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、移送部が、湿潤液供給ノズル240の方ではなく布ワイパー212の方を移動させることとしてもよい。
例えば、前述した収容ケース220が鉛直方向だけではなく水平方向(左右方向)にも移動可能となっており、収容ケース220の移動に伴った布ワイパー212の水平方向(左右方向)への移動により、布ワイパー212の湿潤液供給ノズル240への接触が実現されることとしてもよい。また、かかる場合には、湿潤液供給ノズル240の方は必ずしも移動可能となっている必要はなく、したがって、湿潤液供給ノズル240がキャリッジ42に備えられていないこととしてもよい。
また、上記実施の形態においては、湿潤カートリッジ232として、水を供給する第一湿潤カートリッジ233及び有機溶剤を供給する第二湿潤カートリッジ234の二つのカートリッジが画像記録装置1に備えられていることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、湿潤カートリッジ232を装着する装着部が一つしかないこととしてもよい。そして、第一湿潤カートリッジ233及び第二湿潤カートリッジ234を必要に応じて入れ換える運用を行えば、このような場合であっても前述した自動クリーニング及び手動クリーニングの実現が可能である。
また、上記実施の形態においては、自動クリーニング処理におけるワイピング処理において、非湿潤ワイピング動作及び水ワイピング動作が行われることとしたが、これに限定されるものではなく、当該非湿潤ワイピング動作及び水ワイピング動作は、手動クリーニング処理におけるワイピング処理において、行われることとしてもよい。また、手動クリーニング処理におけるワイピング処理において、有機溶剤ワイピング動作が行われることとしたが、これに限定されるものではなく、当該有機溶剤ワイピング動作は、自動クリーニング処理におけるワイピング処理において、行われることとしてもよい。
また、上記実施の形態においては、自動クリーニング処理におけるワイピング処理において、非湿潤ワイピング動作及び水ワイピング動作がセットで行われることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、非湿潤ワイピング動作が単独で、自動クリーニング処理又は手動クリーニング処理におけるワイピング処理において、行われることとしてもよい。また、水ワイピング動作が単独で、自動クリーニング処理又は手動クリーニング処理におけるワイピング処理において、行われることとしてもよい。
また、上記実施の形態においては、クリーニング処理において、吸引処理及びワイピング処理がセットで行われることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ワイピング処理のみが行われることとしてもよい。
また、上記実施の形態においては、印刷装置としてラテラルスキャン型のラベル印刷機を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、シリアルスキャン型のラージフォーマットプリンターであってもよい。
以下では、当該シリアルスキャン型のラージフォーマットプリンター(以下、インクジェットプリンター501と呼ぶ)について、図13乃至図15を用いて説明する。図13は、インクジェットプリンター501の外観模式図である。図14は、インクジェットプリンター501の構成を示す概略図である。図15は、インクジェットプリンター501のインクジェットヘッド541及びその周辺部材の構成を示す概略図である。
図13および図14に示すように、インクジェットプリンター501は、インクジェットヘッド541(後述する)を有するプリンター本体502と、プリンター本体502を支持する支持スタンド503と、を備えている。このインクジェットプリンター501は、基本的な構成として、インクジェットヘッド541を有し、ロール紙Rに印刷を行うための印刷手段521と、ロール紙Rを送り経路に沿って送る送り手段と、インクカートリッジ581を有し、インクジェットヘッド541にインクを供給するインク供給手段523と、インクジェットヘッド541のメンテナンスに供するメンテナンス手段524と、これら各手段を相互に関連させながら制御することにより、インクジェットプリンター501全体を制御する制御手段525と、を備えている。そして、インク供給手段523によりインクジェットヘッド541にインクを供給しながら、印刷手段521および送り手段を同期して駆動させることにより、ロール紙Rに画像を印刷するようになっている。印刷手段521は、インクジェットヘッド541を搭載したヘッドユニット531と、ヘッドユニット531を移動自在に支持し、ヘッドユニット531を移動させるヘッド移動機構532と、を備えている。
なお、ヘッド移動機構532は、予め設定されたヘッド移動領域564内でヘッドユニット531を往復動させるように構成されている。本実施形態では、ヘッド移動領域564の図示右側の端に当たる位置が、ヘッドユニット531のホーム位置に設定されており、この位置を基準位置として、ヘッドユニット531の移動位置が把握される。
メンテナンス手段524は、インクジェットヘッド541を吸引する吸引手段631と、インクジェットヘッド541の吐出ノズルの乾燥を抑制する保湿手段632と、を備えている。吸引手段631は、ホーム位置に臨んで配設されており、ホーム位置に臨んだヘッドユニット531のインクジェットヘッド541に対してキャップ641を密着させることができるようになっている(図15参照)。また、保湿手段は、吸引手段と同様、ホーム位置に臨んで配設されており、ホーム位置に臨んだヘッドユニット531のインクジェットヘッド541に対して保湿キャップを密着させることができるようになっている(図15参照)。
なお、吸引手段631(のキャップ641)は、インクジェットヘッド541を保管するためにも用いられ、インクジェットプリンター501の非稼動時には、キャップ641をインクジェットヘッド541のノズル面556に密着させて、吐出ノズルの乾燥を防止する。また、吸引手段(キャップ641)は、インクジェットヘッド541の印刷動作中においては、キャップ641がインクを受ける部分を図示しないキャップ密閉部が覆うよう構成することにより、吸引等によりキャップ641に付着したインクの乾燥が印刷動作中に進むことを防止する。