以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面、図1には不図示、図6に符号51Aとして図示)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図7中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。なお、ベルト33の詳細は後述する。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、紙搬送方向という。)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサ(図9の符号24A)で構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。また、印字検出部24には、打滴されたドットに光を照射させる光源(不図示)を備えている。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダ別に画像を集積するソーターが設けられる。なお、符号26Bはテスト印字排出部である。
次に、印字ヘッド50の構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3(a) は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。また、図3(c) は印字ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a) 中の4−4線に沿う断面図)である。記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3(a) 〜(c) 及び図4に示したように、インク滴が吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
すなわち、本実施形態における印字ヘッド50は、図3(a) ,(b) に示すように、インクを吐出する複数のノズル51が印字媒体送り方向と略直交する方向に印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
また、図3(c) に示すように、短尺の2次元に配列されたヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、印字媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。
圧力室52の天面を構成している加圧板56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP)で直線状に配列されているものとして説明する。
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン又は1個の帯状を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図5に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン又は1個の帯状の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
即ち、用紙の幅方向に1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインを印字するようなノズル駆動を主走査といい、前記主走査で形成された1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインの印字を繰り返し行うことを副走査という。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されている。本発明の実施に際して、アクチュエータ58にはピエゾ素子以外の他のアクチュエータを適用できる。
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパ効果及びリフィルを改善する機能を有する。
サブタンクにより内圧を制御する態様には、大気開放されたサブタンクとヘッド51内のインク室ユニット53とのインク水位の差によりインク室ユニット53内の内圧を制御する態様や、密閉されたサブタンクに接続されたポンプによりサブタンク及びインク室の内圧を制御する態様などがあり、何れの態様を適用してもよい。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面51Aのクリーニングを行うノズル面清掃手段66と、が設けられている。
これらキャップ64及びノズル面清掃手段66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面51Aをキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き)が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
ノズル面清掃手段66は、ノズル51のインク吐出面(ノズル面)51Aに当接されながら移動して、ノズル面51Aの汚れを除去するインク吸収ローラ66Aと、インク吸収ローラ66Aを支持する支持部66Bと、インク吸収ローラ66Aが該ノズル面に当接するように付勢する(外力を与える)付勢部66Cと、ノズル面清掃手段66を印字ヘッド51の主走査方向幅全域にわたって相対移動させる移動機構(不図示)と、を有している。なお、移動機構によるノズル面清掃手段66の移動範囲は、印字ヘッド50の主走査幅全域に限定されず、記録紙16の幅や、吐出制御に合わせて適宜変更可能である。
付勢部66Cは、図8に示すように、ばね等の弾性力を支持部66B(力点)に与え、図8に示した回転軸を支点としてインク吸収ローラ66A(作用点)に該弾性力を作用させてもよい。付勢部66Cからノズル面51Aに外力を与える態様はこれに限定されず、ノズル面51Aとインク吸収ローラ66A(作用点)との間に均一な力が加わればよく、様々な態様を適用可能である。
ノズル面51Aにインク液滴や記録紙16の紙粉などが付着した場合、インク吸収ローラ66Aをノズル面51Aに沿って移動させることでノズル面51Aを拭き取り、ノズル面51Aを清浄する。該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによってノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。なお、ノズル面清掃手段66の詳細については後述する。
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバー(駆動回路)である。なお、図7にはモータドライバ76及びモータ88のみ示したが、システムコントローラ72は複数のモータドライバ及びモータを制御している。
一例を挙げると、図6に示したメンテナンスユニットを移動させる移動機構が有するモータや、ノズル面清掃手段66の移動手段が有するモータ等がある。また、この他にも様々なモータがあり、これらのモータ(モータドライバ)はシステムコントローラ72により制御される。
また、ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバーである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
〔ノズル面のクリーニング〕
ノズル面51Aには、表面の濡れ性を均一に保つために所定の撥水処理が施されている。所定の撥水処理は、フッ素系化合物やシリコン系化合物などにより処理層(処理膜)を形成する態様でもよいし、これ以外の撥水処理を用いてもよい。
インク吐出直後には、インク滴や薬液等の液滴がノズル面51Aに付着することがあり、これらの液滴がノズル51の開口近傍に存在すると、ノズル面51Aに付着した液滴とノズル51から吐出されたインク滴とが表面張力により互いに引き合い、ノズル51から吐出されたインク滴の吐出方向(飛翔方向)に曲がりが生じてしまう。
また、ノズル面51Aに付着した液滴が印字画像に触れると、該印字画像を直接汚してしまうこともある。
一方、インクには、大気に触れると沸点の高いグリセリンやアルコールなどの水分が蒸発し、徐々に粘度が上がり増粘層を形成する性質がある。したがって、長時間吐出が行われないノズルでは、吐出開口付近からインクの増粘が起こり、これらの増粘インクは吐出不良の原因となる。また、ノズル面51Aに付着した液滴から水分が蒸発して、固まってしまうことがある。
ノズル面51Aに付着したインクが固まったものや、記録紙16の紙粉などがノズル面51Aに付着していると、ノズル51の吐出不良や印字画像の画像劣化を引き起こす原因となり得るので、ノズル面清掃手段66によってノズル面51Aを定期的にクリーニングする必要がある。
次に、図8を用いて、ノズル面51Aに付着した汚れを取り除く、ノズル面清掃手段66について説明する。
ノズル面清掃手段66は、図6及び図8にも示したように、インク吸収ローラ66A、支持部66B、付勢部66C及び不図示の移動機構等を有している。
インク吸収ローラ66Aは、印字ヘッド50の副走査方向幅より大きい幅を有し、主走査方向への1回の移動でノズル面51Aの全域を清掃することができる。もちろん、インク吸収ローラ66Aの幅を印字ヘッド50の副走査方向幅より小さくし、ノズル面清掃手段66(インク吸収ローラ66A)と印字ヘッド50とを副走査方向に相対移動可能に構成してもよい。また、印字ヘッド50が複数ある場合には、印字ヘッドごとにノズル面清掃手段66を設けてもよいし、複数の印字ヘッドに対してノズル面清掃手段66を1つ備えてもよい。
インク吸収ローラ66Aは多孔質部材で構成され、ノズル面51Aに付着した液滴を浸透圧により吸収することができる。また、インク吸収ローラ66Aの素材はウレタン多孔質素材と親インク性素材の性質を兼ね備えた材質であり、多孔質発泡ゴムなどを適用してもよく、そのゴム硬度は10°から30°であることが好ましい。
また、不図示の移動機構には、ボールネジやベルトを用いてノズル面清掃手段66を搬送する搬送手段、搬送手段を駆動するモータ、搬送時にノズル面清掃手段66を支持するガイド等の支持部材などを有している。なお、これらを用いた搬送制御は、図7に示したシステムコントローラにより行われる。
図9に示すように、インク吸収ローラ66Aは、ローラ回転軸66Dを軸として回動可能に構成されており、図8に示した往路方向に、ノズル面51Aにインク吸収ローラ66Aを当接させながらノズル面清掃手段66が移動する際には、インク吸収ローラ66Aは時計回りに従動回転する。
一方、インク吸収ローラ66Aとローラ回転軸66Dとはワンウエイクラッチ機構66Eを介して係合されており、ノズル面清掃手段66が復路方向に移動する際には、ローラ66Aは従動回転せずに、ノズル面51Aを摺動(スリップ)しながら移動するとともに、ノズル面51Aに付着した付着物を払拭除去する。ワンウエイクラッチ機構66Eに代わり、復路においてインク吸収ローラ66Aに従動負荷を与える従動負荷付与手段や従動回転と逆方向にインク吸収ローラ66Aを回転させる伝動手段を備えてもよい。
不図示の移動機構は、往路と復路とはノズル面51A内の同一領域を通過するように制御され、一往復の移動で吸液工程と、吸液除去工程では除去できない付着物を払拭除去する付着物払拭工程と、を実行することができ、清掃時間を短縮することができる。
また、往路(吸液工程)では、ノズル面51Aとインク吸収ローラ66Aとの間は転がり摩擦となるので、ノズル面51Aの処理層及びインク吸収ローラ66Aの摩耗を抑えることができる。
一方、復路(払拭工程)では、インク吸収ローラ66Aが往路の移動で吸液されるので、インク吸収ローラ66Aが湿潤された状態になる。また、ノズル面51Aもある程度湿潤される。この状態では、ノズル面51Aとインク吸収ローラ66Aとの間には、水分が介在しウエットワイピングとなる。したがって、ノズル面51Aの処理層の摩耗を抑えることができるとともに、ノズル面51Aに付着した付着物に水分が与えられるために、除去し易くなる。
次に、図10を用いて、メニスカス100表面に形成された増粘物(増粘インク)を除去する態様について説明する。図10はノズル51の概略断面図である。
ノズル51に充填されているインク102のうちメニスカス面近傍のインクは、メニスカス100表面が大気にさらされているために、水分が蒸発し、次第にインク102が増粘されていく。増粘されたインクはノズル51から吐出されにくくなり、さらに粘度が上がると吐出できなくなる。通常は、この増粘インクを除去するために予備吐出(つば吐き)などが実行される。
以下の方法により、図8に示した、ノズル面清掃手段66を用いて、メニスカス100表面の増粘インクを除去することが可能である。
まず、印字ヘッド50内部(ノズル51)の圧力を上げて、図10に示すように、メニスカス100を外部に対して凸となるようにメニスカス100の制御を行う。この状態でインク吸収ローラ66Aをメニスカス100表面に接触させると、インク吸収ローラ66Aの浸透圧により、メニスカス100の増粘インクはインク吸収ローラ66Aに吸収され、メニスカス100の表面から増粘インクが除去される。
なお、復路(払拭工程)において、メニスカスを凹方向形状に保つことで、払拭工程におけるノズル51からのインク漏れを防止し、インク消費量を低減させることが可能である。メニスカスを凹方向形状に保つ制御は通常のプリント待機状態にも行なわれる。
印字ヘッド50の内部圧力を上げる態様は、図6に示したインク供給タンク60の水位を変えて該内部圧力を上げてもよいし、インク供給系のポンプを用いて該内部圧力を上げてもよい。また、図4に示したアクチュエータ58を制御して行ってもよい。
例えば、図4に示したアクチュエータ58を制御してメニスカス100を制御する態様では、図7に示すプリント制御部80においてメニスカス100の制御が行われる。即ち、該プリント制御部80では、インクの吐出制御とメニスカス100の制御とを行う手段として兼用される。
本構成では、メニスカス100の制御を行うメニスカス制御部(メニスカス制御手段)は、図7に示すプリント制御部80(該プリント制御部内に備えられる不図示の波形形成部)、ヘッドドライバ84、図4に示す、印字ヘッド50に設けられた圧力室52、該圧力室52の天面である加圧板56に配設されたアクチュエータ58などから構成される。
上述した構成によりメニスカス100の近傍にある増粘インクを除去するには、プリント制御部80の前記波形形成部を用いて圧力室52を液排除方向に振動させるようにアクチュエータ58を動作させる駆動波形を形成して、該駆動波形をヘッドドライバ84に与える。このアクチュエータ58の動作と同期して図6に示すノズル面清掃手段66を該当のノズル51のメニスカス100に接触させて、メニスカス100表面の増粘インクが除去される。
また、図14には、図6に示すインク供給タンク60を含むインク供給路内の内圧(背圧)を正圧に制御して、メニスカス100をノズル51の外側へ凸形状にする態様における構成を示す。
本態様では、印字ヘッド50を4つのブロック50A〜50Dに分割し、印字ヘッドブロック50A〜50Dの中からメニスカス100を制御する印字ヘッドブロックを選択可能に構成されている。
図14に示すように、インク供給タンク60と各印字ヘッドブロック50A〜50Dは、メイン供給路202、分枝部204、分枝供給路206A〜206Dから成る流路によって連通され、各分枝供給路206A〜206Dに設けられた弁208A〜208Dによって流路の開通/非開通の切り換えを行うことができる。
即ち、弁208A〜208Dを選択的に開閉することにより、メニスカス100表面の増粘インクを除去する印字ヘッドブロック50A〜50Dとインク供給タンク60との流路を開通させ、インク供給タンク60に備えられた微量ポンプ210を用いてインクを加圧して、所望の印字ヘッドブロックの背圧を正圧にすることができる。
図14に示す態様では、印字ヘッド50を4つのブロックに分割したが、微量ポンプ210の性能に合わせて、4以上のブロックに分割してもよいし4未満のブロックに分割してもよい。
また、図14に示す弁208A〜208Dの開閉制御は、図7に示す、システムコントローラ72(或いは、プリント制御部80)によって制御される。
なお、上述した態様以外にも、図6により説明した不図示のサブタンクを用いて該内部圧力を制御することもできる。供給タンク60あるいは不図示のサブタンクの水位を変える場合には、これらのタンクを上下に移動させる移動機構が設けられる。
該移動機構には、インク供給タンク60(サブタンク)を移動させる搬送部、搬送部を駆動するモータ(モータドライバ)、及びインク供給タンク60(サブタンク)を支持するガイド等の支持部を有し、これらは図7に示したシステムコントローラによって制御される。
内部圧力を制御する態様では、アクチュエータを制御する態様に比べてメニスカス100の変位量を大きくとることができる。なお、これらの態様の何れか一方を用いてもよいし、両者を併用してもよい。
本例では、メニスカス100の表面をノズル外部に突出させるメニスカス100の制御を例示したが、メニスカス100の形状がノズル51の外側に凸となればよく、ノズル51の開口から外側へ出なくてもよい。
なお、インク吸収ローラ66Aがノズル面51Aに押圧された際に、わずかでもノズル51内に入り込むような軟らかい材質であれば、メニスカス100表面の状態(粘度)によってはメニスカス100の制御を行わずにメニスカス100表面にできた増粘インクを吸収することができ得るが、上述したノズル面51Aクリーニングの吸液除去工程とメニスカス100表面の増粘インク除去とを同期させて実行すると、ノズル面51Aのクリーニングとメニスカス100表面の増粘インクを効率よく除去できる。
図11に、インク吸収ローラ66Aに吸液され、その内部に浸透したインク等を回収する回収手段(絞り機構)140を示す。
ノズル面清掃手段66が印字ヘッド主走査方向の全幅を一往復し、1回の清掃工程が終了すると、インク吸収ローラ66Aに浸透したインク及び他の液類の回収が実行される。
回収手段140は、インク吸収ローラ66Aより浸透圧の高いインク吸収体142を具備し、インク吸収ローラ66Aをインク吸収体142表面に押し当てながら移動させ、インク吸収ローラ66Aの内部に浸透したインク等をインク吸収体に吸収させる。インク吸収体142内に回収されたインクは廃インクタンク(不図示)に回収される。なお、廃インクタンクは、図6に示した回収タンク68と兼用可能である。
図11に示すように、インク吸収体142に傾斜面を備え、該傾斜面に沿ってインク吸収ローラ66Aを該傾斜面に押し当てながら移動させると、インク吸収体142へインクを移動させる効果を上げることができる。なお、回収手段140は、図6により説明したメンテナンスユニット内に収納される態様が好ましい。
上述したノズル面清掃手段66の制御の流れは、以下のとおりである。
ノズル面51Aの清掃工程が開始されると、ノズル面清掃手段66が所定のイニシャル位置にセットされるとともに、印字ヘッド50内の初期化動作が実行される(初期化工程)。
その後、インク吸収ローラ66Aをノズル面51Aに当接させ、インク吸収ローラ66Aは従動回転しながら、ノズル面清掃手段66が図8に示した往路方向に移動する。その際に、ノズル面51Aに付着している液状のインクや他の液滴等がインク吸収ローラ66Aに吸収され、ノズル面51Aからインク滴が除去される(吸液工程)。
ノズル面清掃手段66が印字ヘッド50の主走査方向全幅にわたって移動を完了すると、ワンウエイクラッチ機構66Eが切り換わり(切換工程)、ノズル面清掃手段66は復路方向への移動を開始する。
復路では、インク吸収ローラ66Aはローラ回転軸66Dに対して固定され、ノズル面51Aをスリップしながら移動する(払拭工程)。
印字ヘッド50の主走査方向全幅を一往復すると、ノズル面清掃手段66は廃インク回収位置に移動し、インク吸収ローラ66A内に浸透したインク及びインク吸収ローラ66Aの表面に付着した付着物が回収される(回収工程)。回収工程が終了すると、次の清掃工程実行が可能になる。
図15は、インク吸収ローラ66Aの切り換え制御(吸液工程と払拭工程との切り換え制御)の流れを示すフローチャートである。
ノズル面51Aの清掃が開始されると(ステップS10)、ノズル面51Aの状態がウエット(湿潤状態)であるかドライ(乾燥状態)であるかが判断される(ステップS12)。ステップS12では、CCDなどのセンサを用いて直接ノズル面を検出してもよいし、ノズルの吐出制御やノズル面の温度などから間接的にノズル面51Aの状態を判断してもよい。
ステップS12において、ノズル面51Aがウエット状態であると判断されると(NO判定)、往路ではインク吸収ローラ66Aを従動回転させながらノズル面に付着した液状のインクを吸液除去する(ステップS14)。
また、復路では、インク吸収ローラとノズル面51Aとをスリップさせながら、ノズル面51Aに付着した固着物の払拭除去が行われ(ステップS16)、ノズル面51Aの清掃が完了する(ステップS18)。
一方、ステップS12においてノズル面がドライであると判断されると(YES判定)、メニスカス100がノズル51の外側に凸形状となるようにメニスカスの制御が行われ(ステップS20)、メニスカス100の表面及び近傍に形成された増粘インクの除去が行われる(ステップS22)。
ステップS22では、ステップS16に示す払拭除去が行われる。即ち、インク吸収ローラ66Aとノズル面51Aとをスリップさせながら、メニスカス100表面及び近傍の増粘インクとノズル面51Aに付着した固着物の除去が行われる。
また、復路では、インク吸収ローラ66Aを従動回転させて、往路で拭き残した液体(ミスト)状のインクの除去が行なわれ(ステップS24)、ノズル面51Aの清掃が完了する。
上述したノズル面清掃工程とノズルの吐出異常検出を組み合わせると、更に、印字ヘッド50のメンテナンス性能を上げることができる。図16は、上述したノズル面清掃制御にノズルの吐出異常検出制御を組み合わせた態様の制御の流れを示すフローチャートである。
印字途中或いは印字インターバル中に不吐出、異常吐出が発生しこれが検出されると、(ステップS100)、図7に示す、プリント制御部80では規定時間以上インクを吐出していないノズルの有無を判断する(ステップS102)。
ステップS102において、規定時間以上インクを吐出していないノズルがない場合には(NO判定)、往路では、インク吸収ローラ66Aを従動回転させながら、ノズル面51Aに付着しているインクの除去が行われる(ステップS104)。
また、復路では、インク吸収ローラ66Aを従動回転させながら、往路において拭き残した液体状のインクの除去が行われ(ステップS106)、ノズル面51Aの清掃が完了する(ステップS114)。
規定時間以内にインク吐出が行われたノズルにおいて吐出異常(吐出不良)が発生する要因には、ノズル面51Aの撥水性異常が考えられる。撥水性異常の具体例を挙げると、ノズル面51Aへのインクミストの付着などがある。
ノズル面51Aは、規定時間(インクの乾燥時間)経過していないので湿潤状態であり、往路では、インク吸収ローラ66Aを従動回転させながらノズル面51に付着したインクミストを吸液除去し、復路では、インク吸収ローラ66Aとノズル面51Aとをスリップさせながら(非回転状態で)ノズル面51Aに付着した固着物の除去を行うように制御される。
一方、ステップS102において規定時間以上インクを吐出していないノズルがあると判断されると(YES判定)、往路では、インク吸収ローラ66Aとノズル面51Aとをスリップさせながらノズル面51Aに付着した固着物の除去が行われると共に、メニスカス100がノズル51の外側に凸形状になるようにメニスカス100が制御され、メニスカス100近傍の増粘インクが除去される(ステップS110)。
即ち、規定時間以上インク吐出が行われないノズルでは、当該ノズル内のインクの増粘によって、ノズル面51Aに固着物が発生して吐出異常が起こり易くなる。したがって、メニスカス100をノズル51の外側に凸形状になるように制御し、且つ、インク吸収ローラ66Aを走査させてメニスカス100表面の増粘インクを除去する。このとき、インク吸収ローラ66Aとノズル面51Aとをスリップさせてノズル面51Aの摺動性を向上させると、ノズル51内の増粘インク及びノズル面51Aに付着した固着物の除去性能を向上させることができる。
また、復路では、インク吸収ローラ66Aを従動回転させながら往路で拭き残したインクの除去が行われる(ステップS112)。
ステップS112に示す、往路工程が完了すると、ノズル面51Aの清掃が完了する(ステップS114)。
ここでいう規定時間は、インクの粘度上昇(乾燥)が進行して、ノズル51からインクを好ましい状態で吐出できなくなるまでの時間を示している。この規定時間は、印字ヘッド50の環境温度(周囲温度)、インクの種類などによって異なるので、予め複数の値を備えておき、環境やインクの種類によって切り換えることが好ましい。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、ノズル面清掃手段66を印字ヘッド50の主走査方向全幅にわたって往復動作させ、往路は液滴を除去し(吸液工程)、復路では付着物を除去するように(払拭工程)構成した。往路ではインク吸収ローラ66Aを従動回転させることで、復路はウエットワイピングとすることで、ノズル面51A及びインク吸収ローラ66Aの摩耗を抑制する。ドライワイピング(引っかき)動作がないために、ノズル面51Aの耐久時間が長くなる。
また、付着物の除去はインク吸収ローラ66Aが湿潤状態で、かつ、従動負荷をかけた状態で行うので、ウエットワイピングとなり、付着物を確実に除去できる。
本実施形態では、1つのインク吸収ローラ66Aを往復運動させ、ノズル面51Aに付着した液類及び付着物を除去する態様を例示したが、インク吸収ローラと払拭ローラとを別々に備え、該ローラを一方向に動作させ、液類及び付着物をそれぞれのローラで除去するように構成してもよい。その際には、少なくとも払拭ローラを湿潤させる湿潤手段を備える態様が好ましい。インク吸収ローラによる吸収除去の後に払拭ローラにより付着物を除去する態様により、該湿潤手段は実現可能である。
更に、メニスカス100を制御し、メニスカス100表面に形成された増粘インクをインク吸収ローラ66Aにより吸液除去できるので、ノズル51からの吸引、つば吐きに頼らないでノズル面51Aのクリーニングと同期してノズル51の回復が可能になる。メンテナンス時間を削減でき、インク消費量を削減することができる。
次に、図12を用いてノズル面清掃手段66の変形例を説明する。本変形例では、従動回転可能なインク吸収ローラ66Aに代わり、ブレードを用いている。
ノズル面清掃手段150は、インク吸収ブレード152と、付着物除去ブレード154と、ノズル面清掃手段150を印字ヘッド50の主走査方向に沿って印字ヘッド50の主走査方向全幅の往復移動可能にする移動機構(不図示)を備えている。また、インク吸収ブレード152と付着物除去ブレード154とをノズル面51Aに当接させたり、ノズル面51Aから離したりするブレード移動機構(不図示)を備えている。
インク吸収ブレード152及び付着物除去ブレード154は印字ヘッド50の副走査方向幅より大きい幅を有し、主走査方向に印字ヘッド50の主走査方向全幅を移動することで、ノズル面51Aの全領域をクリーニングすることができる。
また、インク吸収ブレード152は、ノズル面51Aとの滑り摩擦抵抗が低く、ノズル面51Aに付着した液類を吸着除去する部材が適用される。一方、付着物除去ブレード154は、ノズル面51Aに付着した付着物を払拭(かき取り)除去する部材が適用される。なお、インク吸収ブレード152は、多孔質ゴム等の低硬度発泡性材質が好ましく、付着物除去ブレード154は、ウレタンゴム等の中硬度のゴム材質が好ましい。
ノズル面清掃手段150は、図8に示したノズル面清掃手段66と同様に、印字ヘッド50の主走査方向全幅を往復移動させながら、ノズル面51Aのクリーニングを実行する。更に、図10に示したメニスカス100表面を外側に凸状態となるように制御し、インク吸収ブレード152を用いてメニスカス100表面の増粘インクを除去し、ドライワイピングにならないように付着物除去ブレード154のノズル面51Aと当接する面を湿潤させ、ノズル面51Aと付着物除去ブレード154との摩擦抵抗を低減させることができる。
まず往路では、インク吸収ブレード152をノズル面51Aに当接させて、ノズル面51Aに付着した液類及びメニスカス100表面の増粘インクを吸着除去し、復路では、付着物除去ブレード154をノズル面に当接させて、ウエットワイピングによりノズル面51Aに付着した付着物を除去する。
吸液工程では、ノズル面51Aとインク吸収ブレード152との間に若干のクリアランスを設けてインクを吸収し、付着物除去工程では、ノズル面51Aに付着物除去ブレード154を当接させる態様でもよい。
図12に示した変形例では、往路においてウエットワイピングを実行できるので、往路のみで液類及び付着物を除去することも可能であり、復路のウエットワイピングを省略した態様が可能である。また、本態様では、往路はインク吸収工程と付着物除去工程とを兼ね、ブレードを湿潤させる手段としてメニスカスの形状を凸とする制御と併用させることでドライワイピングを回避することが可能である。
図13に、本変形例における回収手段160を示す。図11に示した回収手段140と同様の構成であり、インク吸収ブレード152に吸液され、内部に浸透したインク等の液類を回収する吸収体162を有している。
なお、回収手段160は、図11に示した回収手段140と同一であるので、ここでの説明は省略する。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10では、印字ヘッド51とノズル面清掃手段150とは相対的移動の往路を使いインク吸収、付着物の除去を行うことができ、メンテナンス時間の削減効果がある。
本実施形態では、インク吸収ローラ66A、インク吸収ブレード152及び付着物除去ブレード154は印字ヘッド50の主走査方向に相対移動させながらノズル面51Aの全領域をクリーニングしたが、これらの清掃部材の幅を印字ヘッド50の主走査方向幅より大きくし、印字ヘッド50の副走査方向に相対移動させながらノズル面51Aのクリーニングを行うように構成してもよい。
本実施形態では、フルライン型の印字ヘッドを備えたインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、印字ヘッドを用紙の幅方向に走査させながら印字を行うシャトルスキャン型インクジェット記録装置にも適用可能である。
また、本実施形態では、インク滴の吐出に圧電素子を用いたピエゾ方式を例示したが、本発明は、インク室内にエネルギー発生体を備え、このエネルギー発生体によりインク室内のインクを加熱し発生したバブルによりインクを吐出させるサーマル型インクジェット記録装置にも適用可能である。ただし、サーマル型インクジェット記録装置ではインクを加熱し発生したバブルによりメニスカスを制御することは困難である。
本発明の適用範囲はインクジェット記録装置に限定されず、ヘッドに設けられた吐出孔(ノズル)から水、薬液、処理液等の液類を吐出させる液吐出装置に適用可能である。
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