以下、添付図面を参照して、本発明に係るインクジェット記録装置について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。
図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド(インクジェット記録ヘッド)12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部
分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
図2に示すように、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐ
ことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
次に、印字ヘッドについて説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとし、図3(a)に、本実施形態の印字ヘッド50の平面透視図を示す。
図3(a)は、ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b)は、その一部の拡大図である。また、図4は、ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図であり、図5は、一つの液滴吐出素子(一つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図3中の5A−5B線に沿った断面図)である。
記録紙16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a)、(b)に示したように、インク滴の吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙16の送り方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a)の構成に代えて、図4に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドユニット50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており(図3(a)、(b)参照)、対角線上の両隅部にノズル51への流出口と供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。なお、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など多様な形態があり得る。
図5に示したように、各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(図4においては図示省略)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは図5の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の一部(図5において天面)を構成している加圧板(振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されている。個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。なお、アクチュエータ58には、ピエゾ素子などの圧電体が好適に用いられる。インク吐出後、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのワイパーブレード(クリーニングブレード)66とが設けられている。
これらキャップ64及びワイパーブレード66を含むメンテナンスユニットは、記録紙16の搬送経路外に配置され、図示を省略したヘッド移動手段によって印字ヘッド50がワイプ位置まで移動されるようになっている。あるいはメンテナンスユニット側が印字ヘッド50に対して移動可能とし、必要に応じてメンテナンスユニットを所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動するようにしてもよい。
キャップ64は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
ワイパーブレード66は、ゴム、多孔質体あるいは樹脂などの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動手段により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A)に沿って記録紙搬送方向に摺動可能である。ブレード移動手段は、特に限定されるものではないが、例えばボールねじ搬送、ベルト・プーリ搬送あるいはラック・ピニオン搬送などが好適に用いられる。
ノズル面50Aにインク液滴又は異物が付着した場合、ワイパーブレード66をノズル面50Aに摺動させることでノズル面50Aを拭き取り、ノズル面50Aを清浄化するようになっている。ワイパーブレード66は、各色の印字ヘッド50(12K、12C、12M、12Y)毎に設けられた複数のワイパーブレード66を一体で移動させてもよいし、あるいはそれぞれを独立に移動させてもよい。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内のインク)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われ、粘度が上昇して固化した劣化インクが吸い出され除去される。
すなわち、印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用の圧力発生手段(圧電素子)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧力発生手段の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって圧力発生手段を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているワイパーブレード66等のワイパーによってノズル面50Aの汚れを清掃化した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、上述したような吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、圧力発生手段を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を当てて圧力室52内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ67で吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図6で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
次に本実施形態における印字ヘッドの清掃手段について詳しく説明する。
図7に、印字ヘッドと清掃手段(ワイパーブレード)との関係を斜視図で示す。
図7に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置10においては、各色の印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kを有する印字部12に対向して、平行に記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22が配置されているが、その記録紙搬送路外に、印字部12に平行に各印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kに対応して各ワイパーブレード66(66Y、66M、66C、66K)が配置されている。
ヘッドクリーニング時(ワイプ時)には、印字部12が図示を省略したヘッド移動手段によって図7に矢印Aで示すようにワイプ位置に移動するようになっている。
また、各ワイパーブレード66はワイプ時には、図7では図示を省略したワイプ移動手段により、図7に矢印Bで示すように記録紙搬送方向に移動して各印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kのノズル面を摺擦するようになっている。このように記録紙搬送方向にワイプするため、記録紙搬送方向に対し直交する方向への吐出インクの飛翔曲がりによるスジ等が発生し難くなり、印刷品質が向上する。
また、図7に示すように、ワイパーブレード66の長さL1は、各印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kのノズル部の長さL2よりも短い。ワイパーブレード66の長さL1をノズル部よりも短くしたため、印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kのノズル面に均一に密着し、付着インクを確実に払拭することができる。さらに、ワイパーブレード66と吸引用のキャップ64を記録紙搬送方向に対し直交する方向に並べて配置する場合に、ワイパーブレードの長さが短い分だけ装置を小型化することが可能となる。
図8に、ワイパーブレード66を拡大して斜視図で示す。
図8に示すように、ワイパーブレード66(66Y、66M、66C、66K)は、支持部材72(72Y、72M、72C、72K)に取り付けられており、各支持部材72(72Y、72M、72C、72K)は、ワイプ移動手段74の上に取り付けられている。ワイプ移動手段74としては、特に限定されるものではないが、例えばボールねじ搬送やベルト・プーリ搬送あるいはラック・ピニオン搬送等が好適に例示される。
ワイプ移動手段74は、図(図7及び図8)に矢印Bで示すように、各ワイパーブレード66を一体で記録紙搬送方向に移動する。しかし、このように各ワイパーブレード66を一体で移動するのではなく、各ワイパーブレード66をそれぞれ独立に移動するようにしてもよい。
ワイパーブレード66は、例えばゴム、多孔質体、樹脂等から成る弾性部材で形成され、その両側の表面には複数の溝70が形成されている。溝70は、ワイパーブレード66の一方の端部71に近い程高密度に形成されている。
このようにワイパーブレード66には、溝70を一様ではなく、一方の端部71の方が溝形成密度が高くなるように形成したため、溝70が多い端部71側は、溝70の毛細管作用によってインクの排除性が良い。また、ワイパーブレード66から排除されずに残留するインクは溝70の低密度側へと誘導されるため、高密度側のノズル面へのワイパーブレード66からのインクのはみ出しを防止することができ、ワイプ後の前記高密度側のノズルの吐出の信頼性を向上させることができる。
その他のワイパーブレード66の構成例を図9及び図10に示す。
まず図9(a)に示すワイパーブレード66の例は、支持部材72aに固定されたワイパーブレード66aには(図の)斜め上端から放射状に溝70aが形成されており、右側端部71a程溝70aの本数が多く密度が高くなっている。これにより、溝70aが多い右側端部71aはインクの排除性がよくなっている。
また、図9(b)に示す例では、支持部材72b上のワイパーブレード66bには平行な溝70bが形成されているが、右側端部71bへ行くほど溝70bの幅が広くなっている。これにより、右側端部71bの方がインク排除性がよい。
また、図9(c)に示す例では、支持部材72c上のワイパーブレード66cの表面に一方の端部71cに近い程高密度となるように複数の穴76を設け、ワイパーブレード66cが拭き取ったインクを、吸引路77を介して吸引手段(ポンプ)78で穴76から吸引するようになっている。この例でも、右側端部71cへ行く程吸引用の穴76の個数が多くなっているため、インク排除性がよい。
このように吸引によりワイプ時の廃インクを積極的に回収することでワイプ時の廃インクを容易に廃棄することができる。またワイパーブレード66cを常に清浄な状態に維持し、ワイパーブレード66cの弾性による復元時のインクの飛散を低減し、残留インクの増粘や固化を防止することができる。
次に図10(a)に示す例は、ワイパーブレード66dを複数の多孔質材80の接合体とし、一方の端部71dに近い程、インク吸収性の高い多孔質材80を用いるようにして、右側端部のインク吸収性を大とすることにより、この部分のインク排除性を大きくしたものである。これにより、ワイパーブレード66d上でのインク吸収性を向上させ、多孔質材80の毛細管作用によりノズル面摺擦時のノズル回復性を向上させることができる。
また、図10(b)に示す例は、ワイパーブレード66eにヒータ82を設け、一方の端部71eに近い程ヒータ線の密度を高くして、端部71eに近い程温度が高くなるようにしたものである。これにより、例えば10mPa・s以上の高粘度インクを使用する際、インクの温度を上げて低粘度化し、拭き取り性の向上を図ることができる。さらに、ワイパーブレード66e内に流動性の差を設けることで、インク排除性の差が生まれ、一方の端部71eのワイパーブレード66e外へのはみ出しインクを低減することができる。
また、図10(c)に示す例は、ワイパーブレード66fの表面を、一方の端部71fに近い程撥水性を高くして、低撥水性である他方の端部へのインク誘導性を向上させることで右側端部71fのインク排除性を大きくしたものである。
次に、ワイプ時のワイパーブレード66の動作について説明する。
ワイプ時のワイパーブレード66の動作を図11〜図14に示す。
図11は、ワイプ開始時の様子を示すものであり、図11(a)は正面図、図11(b)は側面図である。
ワイプを開始する際には、印字ヘッド50(12)を図示を省略したヘッド移動手段によって図7に矢印Aで示す方向に移動して、印字ヘッド50を、図11に示すようなワイプ開始位置に停止する。
ワイプ開始位置は、図11(a)に示すように、印字ヘッド50のノズル面50Aに付着したインク90の端部90Aが、ワイパーブレード66の表面に形成される溝70が高
密度に形成された右側端部71と一致する位置である。
またこのとき、図11(b)に示すように、側面から見ると、ワイパーブレード66は印字ヘッド50の後側に位置し、この後ワイプ時に、図に矢印Bで示す方向にワイパーブレード66が移動する際、ワイパーブレード66の先端が印字ヘッド50のノズル面50Aに付着したインク90を払拭できるような配置となっている。
図12は、ワイプ中の様子を示すものであり、図12(a)は正面図、図12(b)は側面図、図12(c)は平面図である。
ワイプ時には、図12(b)に示すように、ここでは図示を省略したワイプ移動手段74(図8参照)によりワイパーブレード66を矢印B方向に移動させる。正面から見ると、図12(a)においてワイパーブレード66は図の裏側から手前側に移動する。これにより、印字ヘッド50のノズル面50Aに付着したインク90は、ワイパーブレード66によって拭き取られその表面に形成された溝70を伝って下側へ流れ落ちる。このとき、ワイパーブレード66の右側端部71の高密度に溝70が形成された側ではインク排除性がよく、ワイパーブレード66がノズル面50Aを摺擦する際、ノズル面50Aに拭き残しのインク90が残ることはない。
従って、図12(c)に、ワイパーブレード66が矢印B方向にノズル面50Aを払拭した後の様子を示すように、ワイパーブレード66が摺擦した後のノズル面50Aには、特にワイパーブレード66の右側において、拭き残しのインク90が残ることはない。
図12(b)に矢印Bで示すように、ワイパーブレード66が印字ヘッド50の後側から表側(図の右側から左側)へノズル面50Aを摺擦すると、図13(b)に示すようにワイパーブレード66は印字ヘッド50の反対側(表側)に位置しており、こんどは図13(b)に矢印B’で示すように、ワイパーブレード66の反対側の面で反対方向からノズル面50Aを摺擦する。
この摺擦では、図12(c)に示すように前回インク90を拭き取った部分の左側の部分90Bのインク90を拭き取る。そこで、図13(a)及び(c)に示すように、印字ヘッド50を(図の右方向に)ワイパーブレード66の長さL1より短い所定量Xだけ移動する。
図14(b)に示すように、印字ヘッド50の表側から裏側(図の左側から右側)へ向かって、図に矢印B’で示すように摺擦する。このとき図14(a)に示すように、ワイパーブレード66に形成された溝70(この図では図示されたワイパーブレード66の向こう側の面がインク90を拭き取っているので図には表示されていない)が高密度に形成された端部71側程インク排除性がよいため、ワイパーブレード66の右側に拭き残しのインク90が溢れることはない。
そして図14(c)に示すように、ワイパーブレード66が矢印B’方向にノズル面50Aを摺擦することにより、符号90Bで示された部分のインク90を拭き取ることができ、すでに摺擦済みである高密度側のノズル面50Aへのインク90のはみ出しを防止することができる。従ってノズル面50Aのインク90を完全に排除できるので、吐出信頼性を向上させることができる。
以上説明したB方向及びB’方向の摺擦とヘッド送り(送り量X)とを交互に繰り返す動作を印字ヘッド50の全長が摺擦し終わるまで複数回繰り返すことにより、印字ヘッド50のノズル面50A全体をワイピングすることができる。
上で説明した例では、各印字ヘッド50(12Y、12M、12C、12K)に対してそれぞれ長さの短いワイパーブレード66を一つずつ用意して、印字ヘッド50を少しずつワイパーブレード66の長さ方向に移動しながら双方向への摺擦を繰り返すようにしていたが、図15に示すように、各印字ヘッド50(12Y、12M、12C、12K)に対して長さの短いワイパーブレード66を複数個少しずつ重複させてずらして印字ヘッド50の全長をカバーするようにワイパーブレード66の組を配置するようにしてもよい。なお、図15では、例えばイエローに対する印字ヘッド12Yに対するワイパーブレード66の組のみを表示したが、全ての印字ヘッド12Y、12M、12C、12Kに対してこのようなワイパーブレード66の組を配置するものとする。
このようにすれば、ワイプ時には、印字ヘッド50をワイプ位置に移動した後、1回だけこのワイパーブレード66の組でノズル面50Aを摺擦すればノズル面50A全面を摺擦することができる。なお、交互に双方向摺擦する場合には、ワイパーブレード66の両側に溝を形成しその一方の端部を高密度に形成する等、一方の端部のインク排除性を高くするようにする必要があるが、この例のように一回一方向にしか摺擦をしない場合には、ワイパーブレード66の片面のみ、このような一方の端部のインク排除性が高くなるような構成とすればよい。
また、本実施形態では、ヘッド移動手段により印字ヘッドをワイプ位置に移動させているが、これに限らず、ワイパーブレードに矢印A方向への移動手段を設け、ワイパーブレードをワイプ位置に移動させるようにしても良い。
次に本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、印字部12の下流側にノズル観測手段(画像認識手段)を設けて、印刷出力結果を画像情報として取り込み、吐出異常ノズルの有無を判別し、吐出異常ノズルを確認した際、吐出異常ノズル付近から摺擦(ワイピング)動作を行うようにするものである。
このようにすることで、特に異常がなくワイピング動作の必要のないノズルに対してはワイピングを行わないようにして、ワイピングによって正常なノズルに悪影響を与えることがなく、吐出信頼性を向上させることが可能となる。
図16に、本実施形態のインクジェット記録装置10の印字部12及びワイパーブレード66の周辺を示す。
図16に示すように、印字部12の下流側に設けられた印字検出部24をノズル観測手段として用いることとする。前述したように、印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出異常ノズルを検出するものである。
印字検出部24によって記録紙16上にスジやムラ等の吐出異常箇所92が検出され、そのノズルが吐出異常ノズルとされた場合には、そのノズルの位置から摺擦を開始するようにそのノズルの位置へ印字ヘッド50を移動して摺擦を開始する。
このように本実施形態では、印刷中に発生する吐出異常ノズルを確認し、ワイピング(摺擦)を実施するため、装置としての信頼性が向上する。また、印刷出力結果から異常を判定するようにしているため、印刷品質を向上させることもできる。
なお、ノズル観測手段としては、上述したようなイメージセンサで印字結果を撮像するものに限定はされず、例えば、印字ヘッド50内部のノズル近傍の圧力変化、もしくは圧
電素子の残留振動等を検知するセンサを設けるようにしてもよい。これによれば、印刷中における異常検知が可能である。
また、これらのようにノズル観測手段を印字ヘッド内に納めることで装置を小型化することもできる。
またあるいは、ノズル観測手段として、印字ヘッド50外部にノズルから吐出されるインク滴の飛翔状態を直接観測するセンサを設けるようにしてもよい。これによれば、インク滴の飛翔状態を直接観測するため、吐出異常ノズルの検知精度がよい。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、印字ヘッドのノズル面を観察して、ノズル面の汚れのある箇所から摺擦(ワイピング)動作を行うようにするものである。
図17に、本実施形態のインクジェット記録装置10の印字部12及びワイパーブレード66の周辺を示す。
図17に示すように、吸着ベルト搬送部22のベルト33の下部にノズル観察手段92を配置する。ノズル観察手段94は、特に限定されるものではないが、例えばCCD等の撮影手段であり、ベルト33に設けられた透明部33aから印字ヘッド50のノズル面50Aを観察(撮影)する。ノズル観察手段94は、記録紙搬送方向への移動手段によって図に矢印Cで示す方向に往復移動可能に設置されている。
ノズル観察手段94は、ベルト33の透明部33aの移動に合わせて移動し、透明部33a及びノズル観察手段94が印字ヘッド50との対向位置に移動しながら、ノズル面50Aの状態を観察するようになっている。
そして、観察の結果、ノズル面50Aにインク溜まりや異物付着を確認した場合には、その付近からのワイピング動作を開始するようにする。
本実施形態によれば、印刷中に発生するノズル面の異常を確認し、ワイピング動作を行うため、装置としての信頼性を向上させることができる。また、ワイピングが不要な正常なノズルに対してはワイピングを行わないようにしているため、ワイピングの信頼性を向上させることができる。
以上説明したように、従来はワイパーブレードの先端部全域の払拭インクを先端以外の場所に均一に移動させることによりワイピング性の向上を図っていたのに対して、本発明の各実施形態においては、ワイパーブレードの先端部の一方の端部に向かってインク排除性が大きくなるようにして、印字ヘッドのノズル面に残留するインクをインク排除性の小さい側の端部に導くようにしている。
また、従来は長尺ヘッドのノズル部全てをカバーするような比較的長いワイパーブレードであったのに対して、本実施形態においては、印字ヘッドのノズル部の長さよりも短いワイパーブレードとしている。
これにより、長尺ヘッドを分割して順次ワイピングする際に、ノズル面に残留するインクを次にワイピングする領域側(インク排除性の小さい端部側)に導くことができるため、すでに拭き取った側のノズル面にインクが残留することがない。
また、長尺ヘッドを記録紙搬送方向に摺擦する際に、短いワイパーブレードの方が均一
にヘッドに密着させることが容易であり、インクの拭き残しを低減することができ、印刷品質を安定化させることができる。さらに、印字ヘッドを記録流域外に移動させてワイピングする形態において、ワイパーブレードの長さが短い分、装置を小型化することが可能となる。
また、特に吐出異常ノズルやノズル面の汚れた箇所を検出してそこからワイピングを開始するようにした場合には、ワイピング開始位置からワイピング不要領域までの正常なノズルを不必要にワイピングすることがないため、インク吐出の信頼性を向上させることができる。
以上、本発明のインクジェット記録装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、20…デカール処理部、22…吸着ベルト搬送部、24…印字検出部(ノズル観測手段)、26…排紙部、28…カッター、30…加熱ドラム、31、32…ローラー、33…ベルト、34…吸着チャンバー、35…ファン、36…ベルト清掃部、40…加熱ファン、42…後乾燥部、44…加熱・加圧部、45…加圧ローラー、48…カッター、50…印字ヘッド、50A…ノズル面、51…ノズル、52…圧力室、53…圧力室ユニット、54…(インク)供給口、55…共通液室、56…振動板、58…圧電素子、60…インクタンク、62…フィルタ、64…キャップ、66…ワイパーブレード、67…吸引ポンプ、68…回収タンク、70…溝、72…支持部材、74…ワイプ移動手段、94…ノズル観察手段