以下、添付した図面を参照して、本発明に係る画像形成装置について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の一実施形態の概略を示す全体構成図である。
図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド(液体吐出ヘッド)12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送するベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26とを備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、ベルト搬送部22へと送られる。ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト搬送部22は、特に限定されるものではなく、ベルト面に設けられた吸引孔より空気を吸引して負圧により記録紙16をベルト33に吸着させて搬送する真空吸着搬送でもよいし、静電吸着による方法でもよい。
ベルト33は、記録紙16幅よりも広い幅寸法を有しており、上に述べた真空吸着搬送の場合には、ベルト面には図示を省略した多数の吸引孔が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には図示を省略した吸着チャンバーが設けられており、この吸着チャンバーをやはり図示を省略したファンで吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
図2は、インクジェット記録装置10の印字部12周辺を示す要部平面図である。
図2に示すように、印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。
各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
また、インクジェット記録装置10には、印字部12の位置に対応するベルト33の下側に印字ヘッド12K、12C、12M、12Yをクリーニングするクリーニングユニット66が設けられている。クリーニングユニット66について詳しくは後述する。
次に、印字ヘッド(液体吐出ヘッド)のノズル(液体吐出口)の配置について説明する。インク色毎に設けられている各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを表すものとし、図3に印字ヘッド50の平面透視図を示す。
図3に示すように、本実施形態の印字ヘッド50は、インクを液滴として吐出するノズル51、インクを吐出する際インクに圧力を付与する圧力室52、図3では図示を省略した共通流路から圧力室52にインクを供給するインク供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度化が図られている。
図3に示す例においては、各圧力室52を上方から見た場合に、その平面形状は略正方形状をしているが、圧力室52の平面形状はこのような正方形に限定されるものではない。圧力室52には、図3に示すように、その対角線の一方の端にノズル51が形成され、他方の端の側にインク供給口53が設けられている。
また、図3中の4−4線に沿った断面図を図4に示す。
図4に示すように、圧力室ユニット54は、インクを吐出するノズル51と連通する圧力室52によって形成され、圧力室52には、供給口53を介してインクを供給する共通流路55が連通するとともに、圧力室52の一面(図では天面)は振動板56で構成され、その上部には、振動板56に圧力を付与して振動板56を変形させる圧電素子58が接合され、圧電素子58の上面には個別電極57が形成されている。また、振動板56は共通電極を兼ねている。
圧電素子58は、共通電極(振動板56)と個別電極57によって挟まれており、これら2つの電極56、57に駆動電圧を印加することによって変形する。圧電素子58の変形によって振動板56が押され、圧力室52の容積が縮小されてノズル51からインクが吐出されるようになっている。2つの電極56、57間への電圧印加が解除されると圧電素子58がもとに戻り、圧力室52の容積が元の大きさに回復し、共通流路55から供給口53を通って新しいインクが圧力室52に供給されるようになっている。
図5は、インクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク60は印字ヘッド50にインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インクタンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図5のインクタンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図5に示したように、インクタンク60と印字ヘッド50を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは印字ヘッド50のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図5には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面50Aの清掃手段としてのワイパー(クリーニングブレード、図示省略)を有するクリーニングユニット66が設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングユニット66等によって構成されるメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動されるようになっている。
キャップ64は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面50Aのノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
クリーニングユニット66は、詳しくは後述するが、印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル面50A)に摺動可能な、ゴムなどの弾性部材で構成されたワイパーを有している。ノズル面50Aにインク液滴又は異物が付着した場合、このワイパーをノズル面50Aに摺動させることでノズル面50Aを拭き取り、ノズル面50Aを清浄するようになっている。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、そのノズル51近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内のインク)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度が上昇して固化した劣化インクの吸い出しが行われる。
すなわち、印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータ(積層圧電素子58)が動作してもノズル51からインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(積層圧電素子58の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内で)、インク受けに向かって積層圧電素子58を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面50Aの清掃手段として設けられているクリーニングユニット66のワイパー(クリーニングブレード)によってノズル面50Aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル51内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル51や圧力室52のインク内に気泡が混入した場合、或いはノズル51内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、積層圧電素子58を動作させてもノズル51からインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド50のノズル面50Aに、キャップ64を当てて圧力室52内の気泡が混入したインク又は増粘インクをポンプ67で吸引する動作が行われる。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室52内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図5で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
図6は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなどの磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒーター89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒーター89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図8において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50のアクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサー(図示省略)を含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供するものである。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行うようになっている。なお、この印字検出部24の他にあるいはこれに代えて他の不吐出検出手段を設けるようにしてもよい。印字検出部24あるいは図示しない他の不吐出検出手段により吐出異常が検出されたような場合には、プリント制御部80は、クリーニングユニット66を制御して印字ヘッド50のクリーニングを行う。このクリーニング動作については、後述する。
図7に、インクジェット記録装置10にクリーニングユニット66を組み込んだ図1に対応する概略図を示す。ただし、図7は、簡略化して示した図であり、例えば印字ヘッド12K、12C、12M、12Yも印字ヘッド50で代表させて1つのみ表示しており、またベルト搬送部22も、実際には、例えば真空吸着の場合のチャンバーや、静電吸着の場合の帯電手段、あるいは印字部12において記録紙16の平面性を保つためのプラテン等の部材が配置されるが、ここでは省略している。
例えば、真空吸着のためのチャンバーが印字部12に対応するベルト33直下に配置されている場合には、クリーニングユニット66はチャンバー内に設置されていてもよいし、あるいはクリーニング時にチャンバーを他の位置に退避して、これに代えてクリーニングユニット66を印字ヘッド50の下へ移動させるようにした構成でもよい。
図7では、ベルト33は図7に矢印A1で示すように、図の右から左へ移動する。すなわち、図7においては、ベルト33の移動方向が図1とは異なっており、図7は図1を紙面の裏側から見た状態となっている。
図7に示すように、クリーニングユニット66は、ワイパー(ブレード部材)90、ワイパートレー92、第1のインク吸収部材94、第2のインク吸収部材95等を有して構成されている。詳しくは後述するが、ワイパー90は、上下に移動可能であり、ワイパートレー92はワイパー90とともに図に矢印A2で示すように、図の左右に移動可能となっている。
また、図7に示すように、ベルト33には印字ヘッド50クリーニング用の開口部33aが設けられている。クリーニング時には、予めワイパー90とともにワイパートレー92を印字ヘッド50の直下に移動させておく。そして、ベルト33の開口部33aが印字ヘッド50の下に来たときに、開口部33aからワイパー90を上昇させて、ベルト33の移動に同期してワイパー90及びワイパートレー92を移動させて、ワイパー90で印字ヘッド50のノズル面50Aを走査してクリーニングするようになっている。
ワイパー90が印字ヘッド50のノズル面50Aの端までクリーニング動作を行ったら、ワイパー90をベルト33に当たらない位置まで下降させて、ワイパートレー92をワイパー90とともにもとの位置(ホームポジション)まで移動させる。
ワイパー90によって拭き取られたノズル面50Aのインクはワイパー90を伝って下へ流れ落ち第1のインク吸収部材94に吸収される。ワイパートレー92がホームポジションに戻ると、第1のインク吸収部材94と第2のインク吸収部材95は、第2のインク吸収部材95の接続部95aに当接し、第1のインク吸収部材94に吸収されたインクは第2のインク吸収部材95に吸収され、第2のインク吸収部材95に貯留される。
図8に、図7の印字ヘッド50とクリーニングユニット66を上方からみた斜視図を示す。なお、図8ではベルト33は図示を省略している。
図8に示すように、ワイパー90は、印字ヘッド50のノズル面50Aの長手方向に、小さなワイパー(分割ワイパー90a、90b)に分割され、一定の間隔で印字ヘッド50の長手方向に2列に配列されている。前列の分割ワイパー90aと後列の分割ワイパー90bは、左右の端部が印字ヘッド50の長手方向に沿ってそれぞれpだけオーバーラップするように配置されている。また、各分割ワイパー90a、90bはそれぞれ独立に昇降可能なように構成されている。
ワイパー90は、2列に配列された分割ワイパー90a、90bが印字ヘッド50の長手方向の全領域をカバーするように配置され、これが印字ヘッド50の短手方向(図8中に矢印で示した方向)に移動するようになっており、長手方向に各分割ワイパー90a、90bがオーバーラップしているため拭き残しを生じることはない。
ワイパートレー92はその一方の端部92aは棒状に延び、その側面には直線状の歯車(ラック)92bが形成され、歯車(ピニオン)98と係合して歯車98の回転によって図に矢印で示すように前後に移動可能なピニオン・ラック機構が形成されている。また、このワイパートレー92の移動を滑らかにするために、ワイパートレー92には棒状のガイド96が嵌合されている。
また、歯車98をステップモータ等によって駆動することにより、ワイパートレー92を印字ヘッド50の短手方向に高精度に位置制御することができる。
ワイパートレー92は、クリーニング時以外は図に破線で示す退避位置(ホームポジション)に退避している。また、ワイパートレー92がホームポジションにあることを検出するホームポジションセンサ100が設置されている。
図9に、ベルト33とワイパー90の位置関係を示す。ベルト33には開口部33aが設けられており、この開口部33aからワイパー90を上昇させて印字ヘッド50のノズル面50Aを走査して、摺擦清掃可能なようになっている。図9において、矢印で示す方向がベルト33の搬送方向であり、ワイパー90のクリーニング時にはこれと同方向あるいはこれと逆方向にクリーニング動作(走査)が行われる。なお、前述したように、前列の分割ワイパー90aと後列の分割ワイパー90bは、その左右両端(図9では上下両端)においてそれぞれpだけオーバーラップして配置されている。
図10に、ワイパー90(分割ワイパー90a、90b)の昇降機構の一例を示す。
図10に示すように、分割ワイパー90a(あるいは分割ワイパー90b)はワイパー支持部材101に固定され、ワイパー支持部材101の一方の端部101aは棒状に延び、その側面には直線状の歯車(ラック)101bが形成され、これと歯車(ピニオン)105とが係合し、歯車105の回転によってワイパー支持部材101が上下に移動することによって分割ワイパー90a(90b)が昇降するようになっている。
また、この上下移動を滑らかにするために、ワイパー支持部材101には棒状のガイド103が嵌合されており、ワイパー支持部材101の他方の端部は細長く延びた樋状のガイド102に嵌合している。さらに、ワイパー支持部材101の棒状の端部101aの先端部はホームポジションセンサ106に係合している。このホームポジションセンサ106を基準にして、歯車105をステップモータ等で駆動することにより分割ワイパー90a(90b)のノズル面50Aに対し垂直方向の微細な位置制御(ストローク制御)が可能である。
図10に示した昇降機構は一例であり、昇降機構はこれに限定されるものではないが、このような昇降機構によって各分割ワイパー90a、90bはそれぞれ個別に独立に昇降が可能である。
次に、上記クリーニングユニット66による、印字ヘッド50のノズル面50Aのクリーニング方法について説明する。
本実施形態の液体吐出ヘッド(印字ヘッド50)が有するクリーニングユニット66は独立に昇降可能な分割ワイパー90a、90bを有しており、吐出不良のあったノズルを含む部分(ノズル面50A上の領域)に対してのみこのような分割ワイパー90a、90bでワイピングし、正常なノズル51に対しては不要なワイピングをしないようにすることによりノズル面50Aの撥液層及びワイパー90の寿命を延ばそうとするものである。
あるノズル51について吐出不良が検出された場合に、そのノズル51周辺に対してクリーニングを行う。この異常ノズルの検出方法は特に限定されるものではなく、例えば、前述した印字検出部24により、記録画像を読み取って吐出不良を検出して異常ノズルを検出するようにしてもよい。
なおここで、異常ノズルとは、不吐出の場合だけでなく、例えばノズル面50Aの撥液性が損なわれたり、ノズル51の片側に形成された付着したインクメニスカスあるいは紙粉等の汚れなどによってインク飛翔方向が変化してしまったような吐出不良が発生した場合も含んでいる。
また、異常ノズルの検出方法としては、この他、光学的な方法でインクの飛翔を検出するようにしてもよい。これは図11に示すように、レーザ発光素子110aと受光素子110bとによって印字ヘッド50の下側に形成されたレーザ光束110cの中にインクを吐出して、レーザ光束110c中を飛翔しているインク滴111を検出する方法(外部検出方法)である。
あるいは、印字ヘッド50の圧力室52内に圧力センサを設けて、この圧力センサにより、インク吐出時の圧力室52内のインク圧力を測定して、その測定結果からインク吐出異常を検出する方法(内部検出方法)でもよい。
異常ノズルが上記いずれかの方法によって検出、特定されたら、クリーニングユニット66を印字ヘッド50の位置に対応するベルト33の下側に配置しておき、図7に示すようにベルト33の開口部33aが丁度印字ヘッド50の位置に来たときに、その異常ノズルが存在するノズル面50Aの領域にあたる分割ワイパー90a(または90b)をワイパー先端がノズル面50Aに当接する位置まで上昇させる。
このとき、異常ノズルに対応する分割ワイパー90a(または90b)のみでなく、その左右(もし片側しかなければ片側)の分割ワイパー90b(または90a)も上昇させる。そして図7に示すように、ベルト33の開口部33aの移動に同期させて分割ワイパー90a(または90b)をワイパートレー92とともに移動(走査)してノズル面50Aをクリーニングする。
このとき、先に分割ワイパー90aが走査して、その後から分割ワイパー90bが走査をしてクリーニングする。分割ワイパー90aはその先端をノズル面50Aに当接させてノズル面50Aに付着したインクを拭き取るが、図12(a)に示すように、分割ワイパー90aが走査した後に、その両側にインク滴91が残ってしまう。
ここで、後から走査する分割ワイパー90bもノズル面50Aに当接させて走査するとやはり同様に分割ワイパー90bが走査した後の両側にインク滴が残ってしまう。そこで、後から走査する分割ワイパー90bは、完全にノズル面50Aに当接するまでは上昇させずに、図12(b)に示すように、分割ワイパー90aの先端とはクリアランスδが存在するところまで上昇させることとする。
このように所定のクリアランスδが存在すると、図12(c)に示すように、矢印で走査方向を示すように、前を走査する分割ワイパー90aの後のノズル面50Aに残ったインク滴91に対し、後から走査する分割ワイパー90bの先端がその残留インク滴91に触れることで残留インク滴のメニスカスを形成して残留インク滴91をまとめてノズル面50Aより除去することができる。
以上、上記の説明は分割ワイパー90aに相当するノズルに異常がある場合であり、この場合分割ワイパー90aが先に、分割ワイパー90bが後を追うようにノズル面を走査する。一方、分割ワイパー90bに相当するノズルに異常がある場合は、異常ノズルに相当する分割ワイパー90bをノズル面に当接させ、その両側の分割ワイパー90aを所定のクリアランスとなるように上昇させる。そして、分割ワイパー90bが先に、分割ワイパー90aが後を追うようにノズル面を走査する。
図13に、このクリーニングの様子を印字ヘッド50を下(ノズル面50A側)から見た状態をノズル面50Aを上にして斜視図で示す。
このように前を走査する分割ワイパー90aがその両側に残したインク滴91を、左右の分割ワイパー90bがクリアランスδを有して後から走査することにより、メニスカスを形成してまとめることで除去することができる。
ここで、上記クリアランスδは、狭すぎると接触危険性があり、広すぎるとインク回収能力が悪くなるため、好ましくは0.01〜0.3mm、より好ましくは、0.05mm〜0.2mmとすることが好ましい。
また、上記分割ワイパー90a、90bによるクリーニングの走査を行う前に、ノズル面50Aに分割ワイパー90a、90bを例えば0.5mm〜1mm程度、近接させて分割ワイパー90a、90b先端にインクを吐出(パージ)して分割ワイパー90a、90b先端を均一にウエット状態とするようにしてもよい。このときマトリクス配列のノズルに対応して、ワイパートレー92を走査して各ワイパー90の先端を均一にウエット状態とする。
また、後から走査する分割ワイパー90bをノズル面50Aに当接させないでクリアランスδをもって走査することにより残留インクのメニスカスを形成して残留インクを回収しているが、これをより確実に行うためには、インクに対する分割ワイパー90bの接触角よりも、インクに対するノズル面50Aの接触角の方が大きいことが好ましい。
このようにして、異常ノズルが存在する部分に対し、ワイパートレー92をベルト開口部33aに同期させながら移動して、ワイパー90によりノズル面50Aを走査してクリーニングした後、ベルト開口部33aからワイパー90を下降させてワイパー90がベルト33に当たらないようにする。そして、ワイパー90を下げた状態で、ワイパートレー92をホームポジションに戻す。
前述したように、ホームポジションにおいては、第1のインク吸収部材94と第2のインク吸収部材95が当接し、第1のインク吸収部材94に吸収されたインクが第2のインク吸収部材95に吸収される。
このように、上で説明した例においては、異常ノズルが検出された場合に、ノズル面の全面を拭くのではなく、そのノズルがあるノズル面の部分に対応する分割ワイパーのみでクリーニングするようにしているため、ノズル面の撥液層に与えるダメージが少なく、また全てのワイパーを使用するのではないため、ワイパーの寿命に与える影響も少なく、これらの寿命を長期化させることが可能となる。
なお、ノズル面50Aのクリーニング(ワイピング)をする前に、ワイパートレー92上にベルト開口部33aを介してパージするようにしてもよい。
また、上で説明した例では、前を走査する分割ワイパー90aの後からその左右にオーバーラップした分割ワイパー90bで走査して残留インクを回収するようにしているが、このように、3つの別の分割ワイパー90a、90bをそれぞれ走査させなくとも、この3つの分割ワイパー90a及び90bを一体化させた1つのワイパーで走査するようにしてもよい。
すなわち、図14(a)に斜視図で、また図14(b)に正面図で示すように、分割ワイパー90’は、主ワイパー90a’の後ろ両側にその高さがδ分だけ低くなったサブワイパー90b’が一体化されている。このように一体化された分割ワイパー90’で走査するようにしてもよい。この場合1つの分割ワイパー90’を走査するだけであるのでその駆動系も簡素化される。
なお、クリーニングの際、必ずしも、異常ノズルを含む領域に対応する分割ワイパー90a(90b)をいきなりノズル面50Aに当接させて走査するのではなく、まずノズル面50Aとの間に所定のクリアランスを設けて走査し、ノズル面50A上に付着したインク滴を除去するようにしてもよい。
その後、再度吐出不良の検出を行い、もし再度異常ノズルと判定された場合には、今度はその異常ノズルに対応する分割ワイパー90a(90b)をノズル面50Aに当接させて前述したようにして走査するようにしてもよい。
また、ワイパーは例えばゴム等の柔軟材、弾性体で形成されており、繰り返し使用することにより次第に摩耗したり変形したりして劣化して行き、劣化したワイパーでは良好なクリーニング効果が得られなくなる。
そこで、以下このようなワイパーの多数回使用による摩耗や変形に対する対策について説明する。
ワイパーが摩耗すると、クリーニングの際、ワイパーを正常な場合と同じ位置に上昇させても、ワイパーがノズル面に適切に当接できず、充分なクリーニング効果が得られないため、ワイパーの摩耗量に応じてワイパーの上昇量を制御してワイパーを適切にノズル面に当接させる必要がある。
そこで、まずワイパーの摩耗量を特定する必要がある。ワイパーの摩耗量を特定する方法としては、例えば次のような2通りの方法が考えられる。
その1つは、予め例えば図15に示すようなワイプ回数とワイパー摩耗量との相関データを保持しておき、クリーニングのたびにワイプ回数をカウントして、カウントしたワイプ回数から上記相関データを介してワイパー摩耗量を算出する方法である。
この場合には、ワイプ回数をカウントして予め設定した規定ワイプ回数毎に、上記相関データからワイパー摩耗量を算出し、やはり同様に予め設定されたワイパー摩耗量とワイパー上昇量との関係を示すデータに基づいて、図10に示したワイパー昇降機構におけるホームポジションセンサ106によるホームポジションからの送り量(ワイパー上昇量)を補正するようにする。
このようにして、ワイパー摩耗量に応じたワイパー上昇量(ストローク)を求めて、ワイパーを上昇させることによりクリーニングに適性な当接圧でワイパーをノズル面に当接させることができる。これにより、ワイパーが摩耗しても常に安定したワイパーとノズル面の密着性を保持してクリーニング性を確保することができる。
また、このとき、上記ワイプ回数と摩耗量の相関データは、ウエットワイプ、ドライワイプ、当接力可変による複数のデータを保持し、それぞれのワイプ回数に相当する摩耗量を算出するようにしてもよい。
また、ワイパーの摩耗量を特定する他の方法としては、例えば図16に示すように、ワイパー90とワイパーホルダ96との間に圧電素子などの圧力検出手段93をはさみ、これでワイパー90をノズル面50Aに当接したときの圧力(当接圧)を検出することによって摩耗量を特定する方法もある。
すなわち、図10に示すようなワイパー昇降機構によりワイパー90(90a、90b)をホームポジションから上昇方向に送り制御しながら、圧力検出手段(圧電素子)93によって圧力を検出して、予め設定した規定の圧力になったところで送りを停止するようにして、摩耗量に応じた上昇量となるようにする。これによりいわばワイパー摩耗量を直接に測定して上昇量を決定していることとなる。
また、ノズル面50Aとワイパー90間にクリアランス(δ)を設けた状態とするには、ワイパー90を上昇し、規定の圧力を検出した位置から下降方向に送り制御し、規定のクリアランス(定量送り)で停止するようにすればよい。
また、図10に示すような、ワイパー90のホームポジションから上記規定圧力を検出した上昇位置を記憶しておき、その位置までの送り量を基準にしてワイパー90昇降の位置制御をするようにしてもよい。また、このような当接圧と当接ストロークの関係をテーブル化して保持しておき、これに基づいてノズル面50Aに対し垂直方向の位置制御をするようにしてもよい。なお、送り量の基準は規定のワイプ回数毎に更新するようにする。
また、クリーニング時に、ワイパー90をノズル面50Aに当接させて、ワイパー90とワイパーホルダ96との間にはさんだ圧力検出手段(圧電素子)93を振動して、ワイパー90に振動を与えながらノズル面50Aを摺擦動作するようにしてクリーニングしてもよい。
以下、ワイパー摩耗を考慮したクリーニング方法について説明する。
図17は、ワイパーの摩耗を考慮してワイパーのノズル面への当接力を可変制御してクリーニングする方法を示すフローチャートである。以下、図17のフローチャートに沿って説明する。
まず、ステップS100において、異常ノズルの検出を行う。異常ノズルの検出方法は特に限定されるものではなく、前述したように、印字検出部24により記録画像を読み取って吐出不良を検出するようにしてもよいし、実際に飛翔するインク滴を光学的に検出することで吐出不良を外部的に検出してもよいし、あるいは圧力室52内等に圧力検出センサを設置して吐出時のインク圧力を検出することで吐出不良を内部的に検出するようにしてもよい。
いずれかの方法で異常ノズルの検出を行い、異常ノズルが検出されなかった場合には、特にクリーニングを行う必要はなく、処理を終了する。
また、検出の結果インクの飛翔方向が曲がっている等の何らかの吐出不良が発生した異常ノズルが検出された場合には、次のステップS102において、その検出された異常ノズルを含むノズル面50A上の領域に対応するワイパー90(分割ワイパー90a、90b)を選択し、そのワイパー90をウエット状態にする。
この処理は、異常ノズル検出信号を受け取ったプリント制御部80がクリーニングユニット66等に指示を出して行う。すなわち、ベルト33の搬送にともない開口部33aが異常ノズルを有する印字ヘッド50の下に来るのに合わせて、プリント制御部80によりワイパー昇降機構を制御して、ワイパー90を所定のクリアランスを保った位置まで上昇させ、印字ヘッド50からそのワイパー90に対応する部分のノズル51からワイパー90に先端に向かってインクを吐出しワイパー90をウエット状態にする。
次に、ステップS104において、ワイパー90とノズル面50Aとのクリアランス(δ)を確保しつつ、ベルト33の開口部33aの移動に同期させてワイパートレー92を移動させてワイパー90を走査し、クリーニングを行う。このとき、ワイパー90とノズル面50Aとの間にクリアランスを確保して走査するため、ノズル面50Aに付着しているインク滴のメニスカスが形成されこれらのインク滴がまとめて除去される。
次のステップS106において、プリント制御部80内のクリーニング回数をカウントするカウンタKにクリーニング回数1をセットする。
次にステップS108において、再度異常ノズルがあるか検出を行う。その結果異常ノズルが存在しなければ、ノズル面50Aはクリーニング処理により回復したため、処理を終了する。
また、再度異常ノズルが検出された場合には、次のステップS110において、その異常ノズルを含むノズル領域に対応するワイパー90を選択し、そのワイパー90をウエット状態にする。
次にステップS112において、プリント制御部80によりワイパー昇降機構を制御して、ワイパー90を所定量上昇させる。この場合、ワイパー90の先端をノズル面50Aにある圧力で当接させる。そしてステップS114において、その当接圧の下、ワイパートレー92を移動させてワイパー90によりノズル面50Aを摺擦してクリーニングを行う。この当接圧は、常に所定範囲内となるようにプリント制御部80によってワイパー昇降機構を制御することによって制御される。このように、当接条件を所定範囲内とすることでクリーニング性能を維持し、不要なブレードの摩耗を防止することができる。
その後ステップS116で、クリーニング回数カウンタKを1増加させる。次にステップS118において、プリント制御部80において、クリーニング回数が予め設定された所定回数nに達したか否か判定する。クリーニング回数Kがまだ所定回数nに達していない場合には、ステップS108に戻り再度異常ノズル検出を行う。
再度異常ノズルの検出を行って異常ノズルが検出された場合には、前と同様にしてベルト33の開口部33aの搬送に伴い、異常ノズルに対応するワイパー90をノズル面50Aに近接した位置まで上昇させ、プリント制御部80からワイパー昇降機構に指示を出し、印字ヘッド50からワイパー90に向けてインクを吐出してワイパー90をウエット状態にしてワイパー90を所定量上昇させる。今度は、前回よりもより高く上昇させて、当接圧をより大きくする。そして前回より大きな当接圧の下でクリーニングを行う。
また、ステップS118の判定で、クリーニング回数Kが所定回数nに達している場合には、ブレードによるクリーニングだけでは異常ノズルの回復が不可能であるため、次のステップS120において、ノズル51の吸引を行うことで異常ノズルの回復をして処理を終了する。
このように、ワイパーのノズル面に対する垂直方向位置を可変にしてストローク制御を行い、ワイパーのノズル面に対する圧接力を制御することにより、小さい圧接力でクリーニングすることが可能となる。
また、今まで説明したワイパー90によるノズル面50Aのクリーニングは、図18(a)に示すように、異常ノズルが検出されると、いままでホームポジションHP1にあったワイパー90を上昇させノズル面50Aに当接させて一方向にのみ走査してクリーニングしていた。一方向のみのクリーニングを繰り返していると、図18(a)に示すように、ワイパー90の先端部は、その走査方向とは逆方向に反りかえるように変形してしまい、そのままにしておくと、適性な当接力が得られなくなり、充分なクリーニング効果が得られなくなってしまう。
そこで、所定回数一方向に走査してクリーニングを行ったら、次は逆方向に走査するようにして、ワイパー90の走査方向をときどき変更するようにしてワイパー90の反り変形を低減するようにする。
すなわち、図18(b)に示すように、ホームポジションを第1のホームポジションHP1の他に第2のホームポジションHP2を設け、図に(1)で示すように第1のホームポジションHP1から第2のホームポジションHP2までワイパー90をノズル面50Aに当接させないようにして移動し、(2)のようにワイパー90を上昇させてノズル面50Aに当接させ、(3)のように図18(a)とは逆方向にワイパー90を移動して反対側を用いてクリーニングを行い、(4)のように第1のホームポジションHP1まで戻すようにする。このように、ワイパー90の反対側を用いるようにしてワイパー90の変形を最小限に抑えるようにする。
以下、このように所定回数一定方向にワイピングしたらワイピング方向を変更してクリーニングを行う方法について説明する。
図19に、このようなワイピング方向を変更したクリーニング方法のフローチャートを示し、以下このフローチャートに沿って説明する。
まず、ステップS200において、異常ノズルの検出を行い、異常ノズルが検出されたとする。次にステップS202において、今までのワイピング方向でのワイプ回数が、予め設定された規定ワイプ回数に達しているか否か判断する。
まだ規定ワイプ回数に達していない場合には、ステップS204に進み、今までどおりの方向でクリーニングを行う。そして、ステップS206において、その方向でのワイプ回数を加算する。
また、ステップS202の判定でワイプ回数が規定ワイプ回数に達していると判断された場合には、次のステップS208でワイパー90のホームポジションを変更する。すなわち、図18(b)に示すように、ワイパー90を下げたまま、第2のホームポジションの位置へワイパー90を移動する。
そして、ステップS210において、今までとは反対方向にワイパー90を移動して、ワイパー90の反対側の面を用いてクリーニングを行う。その後、ステップS212において、今までのワイプ回数をリセットする。最後にステップS214において、新しい方向でのワイプ回数を加算する。
このようにノズル面に当接したワイパー走査方向を両方向使用可能とし、それぞれの方向にワイピングしている回数をカウントして、所定回数毎に走査方向を変更するように制御して、ワイパーのそれぞれの面によるワイプ回数を略同一回数に制御することにより、ワイパーの変形を最小限に抑えることができる。
なお、図13に示したように、分割ワイパー90aのエッジ部に残留したインク滴を、その両隣の分割ワイパー90bをノズル面50Aとの間に所定のクリアランスをもって後から走査して除去するクリーニング方法は、先に分割ワイパー90aが走査を行い、それに両隣の分割ワイパー90bが追従するようになっている。
このとき、上に説明したように、ワイパー90が両面使用可能でその走査方向を可変できるものであれば、吐出不良が発生したと特定されたノズル51に対応する分割ワイパーが図13における分割ワイパー90bであった場合、クリーニングユニット66を他方のホームポジションに移動して、図13に示す走査方向とは逆方向に走査するようにすればよい。
すなわち、他のホームポジションにクリーニングユニット66を移動した後、分割ワイパー90bをノズル面50Aに当接させて先に走査し、その後からその両隣の分割ワイパー90aを、ノズル面50Aとの間に所定のクリアランスをもって追従して走査するようにすればよい。
以上、説明したように、本実施形態によれば、記録用紙幅を有するフルライン型インクジェットヘッドに対し記録用紙幅に小さい分割ワイパーに分割されたワイパーを用いて、特に異常ノズルを含む領域に対応する分割ワイパーによって、その領域のみをクリーニングするようにしたため、ノズル面の撥液層及びワイパーの寿命を向上させることが可能となった。
また、分割ワイパーの両端をオーバーラップさせるように分割ワイパーを並べることにより、拭き残しをなくすことができるとともに、ノズル面に当接する分割ワイパーの両側の分割ワイパーはノズル面とわずかなクリアランスを確保するようにしてクリーニングすることにより、当接する分割ワイパーのエッジ部に残留したインク滴を左右両側の分割ワイパーのクリアランスに残留インク滴のメニスカスを形成してノズル面より除去することが可能となる。
また、ワイパーの摩耗量を考慮してノズル面に垂直な方向のワイパー位置を制御することにより、ワイパーとノズル面との密着性を常に確保することができ安定したクリーニング性を確保することができる。
また、ノズル面に垂直なワイパー位置を可変としてワイパーの圧接力を制御することにより、小さい圧接力でクリーニングが可能となり、ノズル面撥液及びワイパー寿命を向上させ、圧接力を上げることによりノズル面上に付着した異物の除去も可能となる。
さらに、ワイパーの走査方向を両方向使用可能とし、ワイプ回数(走査回数)をカウントして規定回数毎にワイパーの走査方向を変更してクリーニングするようにすることで、ワイパーの反り変形を抑制することができる。
以上、本発明の画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、18…給紙部、20…デカール処理部、22…吸着ベルト搬送部、24…印字検出部、26…排紙部、28…カッター、30…加熱ドラム、31、32…ローラー、33…ベルト、34…吸着チャンバー、35…ファン、36…ベルト清掃部、40…加熱ファン、42…後乾燥部、44…加熱・加圧部、45…加圧ローラー、48…カッター、50…印字ヘッド、50A…ノズル面、51…ノズル、52…圧力室、53…インク供給口、54…圧力室ユニット、55…共通液室、56…振動板(共通電極)、57…個別電極、58a…圧電体、58b…凸部、58…圧電素子、60…インクタンク、62…ポンプ、64…キャップ、66…クリーニングユニット、67…吸引ポンプ、68…回収タンク、70…通信インターフェース、72…システムコントローラ、74…画像メモリ、76…モータドライバ、78…ヒータドライバ、80…プリント制御部、82…画像バッファメモリ、84…ヘッドドライバ、86…ホストコンピュータ、88…モータ、89…ヒーター、90…ワイパー、90a、90b…分割ワイパー、91…インク滴、92…ワイパートレー、93…圧力検出手段(圧電素子)、94…第1のインク吸収部材、95…第2のインク吸収部材、96…ワイパーホルダ