以下、本発明の第1の実施の形態に係る液体吐出ヘッドについて図1、図2に基づき説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る液体吐出ヘッドのノズルプレートを外した状態の上面図である。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る液体吐出ヘッドの断面図である(液体吐出ヘッドを図1の線2A−2Bに沿って垂直に切断した断面図)。
第1の実施の形態に係る液体吐出ヘッドは、図2に示すように、ノズルプレート10に小さな液滴(小液滴)を吐出するノズル(大ノズル)11と大きな液滴(大液滴)を吐出するノズル(小ノズル)12とが設けられている。インク流路は個別流路13と共通流路23からなる。小ノズル11に対応するヒーター14と、大ノズル12に対応するヒーター15は、インク流路の一つである個別流路13を介し対向して基板21上に設けられており、ヒーター14、15上には保護層20が設けられている。大ノズル12とこれに対応するヒーター15の間には、個別流路13を介し、インク液室である大ノズル液室18が設けられ、同様に、小ノズル11とこれに対応するヒーター14の間には、個別流路13を介し、インク液室である小ノズル液室17が設けられている。大ノズル液室18、小ノズル液室17は、ノズル液室プレート16に溝等を設けることにより形成される。個別流路13は、個別流路プレート19により形成されており、インク流路の一つである共通流路23と接続されて不図示のインクタンクからインクが供給される。また、図1に示すように、各々の個別流路13は個別流路プレート19により形成された隔壁22により形成されており、液体吐出ヘッドの全体も個別流路プレート19により形成された隔壁22で囲まれており、一つの個別流路13には、小ノズル11に対応するヒーター14、大ノズル12に対応するヒーター15が各々設けられている。
本発明に係る液体吐出ヘッドでは、インクが共通流路23から個別流路13に供給され、個別流路13に供給されたインクが、後述する画像形成装置の制御系からの情報に基づき、小ノズル11と大ノズル12より吐出される。
大ノズル12は使用頻度が低いため、大ノズル12よりインクの増粘が始まるが、大ノズル液室18が設けられているため、インクの増粘は、大ノズル液室18に広がった後でなければ、個別流路13に広がることは殆どない。
よって、インクが増粘した場合後述する吸引動作を行う必要があるが、増粘したインクを除去する吸引動作の際には、大ノズル12と大ノズル液室18に溜まっているインクの吸引を行えばよく、個別流路13内のインクの吸引まではする必要がないため、吸引動作におけるインクの消費は従来に比べて少なくなる。
また、吸引はインクが増粘した場合に行われるが、先に記載したように一般に大ノズル12の方が使用頻度は低いため、大ノズル12のインクは小ノズル11のインクよりも増粘している場合が多い。大ノズル12は、ノズル径も広く、また、小ノズル液室17よりも大ノズル液室18の占める容積も大きいことから、幾何学的な流路抵抗は大ノズル12の方が低い。従って、大ノズル12では、インクの増粘により、インクの粘度が高くなりインクが流れる際の抵抗は増すが、幾何学的な流路抵抗は小さくなり、小ノズル11では、インクの増粘によるインクが流れる際の抵抗は低いが、幾何学的な流路抵抗は大きくなるため、吸引動作の際に吸引されるインクは、一方のノズルのインクのみ過大に吸引されることはなく、大ノズル12、小ノズル11ともにバランスよく吸引される。さらに、大ノズルの増粘したインクは大ノズル18内に溜まっているので、吸引動作によるインクの全体の消費量は少なくなる。小ノズル11は使用頻度が高く増粘する傾向は小さいので、必ずしも小ノズル液室17を設けなくとも良い。しかし、小ノズル液室17を設けることで、大ノズルと小ノズル周辺の形状が略相似となり、大ノズルと小ノズルの飛翔液滴形状(サテライト等)を揃えることが可能となる。
(実施例)
以下、本実施の形態に係る液体吐出ヘッドの実施例について図1、図2に基づき説明する。
本実施例の液体吐出ヘッドは、小ノズル11のノズル径は、20.3μm、大ノズル12のノズル径は、28.2μm、小ノズル11に対向するヒーター14は、一辺が23μmの略正方形であり、大ノズル12に対向するヒーター15は、一辺が31μmの略正方形である。
小ノズル11、大ノズル12のノズルの長さ、即ち、ノズルプレート10の厚さは、7μmであり、小ノズル液室17、大ノズル液室18の高さ、即ち、ノズル液室プレート16の厚さは、5μmであり、個別流路13の高さ、即ち、個別流路プレート19の厚さは、8μmである。
また、図1に示すノズルピッチPtは、84.6μmであり、このノズルピッチは300DPIに相当する。
図3は、本発明に係るインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)を備えた画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。
図3に示すように、このインクジェット記録装置110は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド(液体吐出ヘッド)112K、112C、112M、112Yを有する印字部112と、各印字ヘッド112K、112C、112M、112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、前記印字部112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、印字部112による印字結果を読み取る印字検出部124と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排出する排紙部126とを備えている。
各印字ヘッド(液体吐出ヘッド)112K、112C、112M、112Yは、図1及び図2において説明した小ノズル11と大ノズル12を各々有している。
図3では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図3のように、裁断用のカッター128が設けられており、前記カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター128は、記録紙116の搬送路幅以上の長さを有する固定刃と、前記固定刃に沿って移動する丸刃とから構成されており、印字裏面側に固定刃が設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃が配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙116は、ベルト搬送部122へと送られる。ベルト搬送部122は、ローラー131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト搬送部122は、特に限定されるものではなく、ベルト面に設けられた吸引孔より空気を吸引して負圧により記録紙116をベルト133に吸着させて搬送する真空吸着搬送でもよいし、静電吸着による方法でもよい。
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、上に述べた真空吸着搬送の場合には、ベルト面には図示を省略した多数の吸引孔が形成されている。図3に示したとおり、ローラー131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において印字部112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー134が設けられており、この吸着チャンバー134をファン135で吸引して負圧にすることによってベルト133上の記録紙116が吸着保持される。
ベルト133が巻かれているローラー131、132の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図3において、時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は、図3の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、ベルト搬送部122に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において印字部112の上流側には、加熱ファン140が設けられている。加熱ファン140は、印字前の記録紙116に加熱空気を吹きつけ、記録紙116を加熱する。印字直前に記録紙116を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
図4は、インクジェット記録装置110の印字部112周辺を示す要部平面図である。
図4に示すように、印字部112は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。
各印字ヘッド112K、112C、112M、112Yは、本インクジェット記録装置110が対象とする最大サイズの記録紙116の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙116の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図4の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド112K、112C、112M、112Yが配置されている。記録紙116を搬送しつつ各印字ヘッド112K、112C、112M、112Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部112によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙116と印字部112を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、ここで主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、用紙の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字をするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録紙の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
また本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図3に示したように、インク貯蔵/装填部114は、各印字ヘッド112K、112C、112M、112Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド112K、112C、112M、112Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部124は、印字部112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、前記イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部124は、少なくとも各印字ヘッド112K、112C、112M、112Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部124は、各色の印字ヘッド112K、112C、112M、112Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部124の後段には、後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぎ画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。カッター148は、排紙部126の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター148の構造は前述した第1のカッター128と同様であり、固定刃と丸刃とから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
図5は、インクジェット記録装置110におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インクタンク160は印字ヘッド150にインクを供給するための基タンクであり、図3で説明したインク貯蔵/装填部114に設置される。インクタンク160の形態には、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示省略)からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。なお、図5のインクタンク160は、先に記載した図3のインク貯蔵/装填部114と等価のものである。
図5に示すように、インクタンク160と印字ヘッド150を繋ぐ管路の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ162が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは印字ヘッド150のノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図には示さないが、印字ヘッド150の近傍又は印字ヘッド150と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置110には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ164と、ノズル面150Aの清掃手段としてのクリーニングブレード166とが設けられている。
これらキャップ164及びクリーニングブレード166を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって印字ヘッド150に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド150下方のメンテナンス位置に移動されるようになっている。
キャップ164は、図示しない昇降機構によって印字ヘッド150に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源OFF時や印刷待機時にキャップ164を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド150に密着させることにより、ノズル面150Aのノズル領域をキャップ164で覆うようになっている。
クリーニングブレード166は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したブレード移動機構により印字ヘッド150のインク吐出面(ノズル面150A)に摺動可能である。ノズル面150Aにインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード166をノズル面150Aに摺動させることでノズル面150Aを拭き取り、ノズル面150Aを清浄化するようになっている。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、そのノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ164に向かって予備吐出が行われる。
また、印字ヘッド150内のインクが増粘した場合、印字ヘッド150にキャップ164を当て、吸引ポンプ167で圧力室152内の増粘したインクを吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク168へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも行われ、粘度が上昇して固化した劣化インクが吸い出され除去される。
すなわち、印字ヘッド150は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、発熱素子(ヒーター)の発熱により気泡を発生させてもノズルからインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面150Aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード166等のワイパーによってノズル面150Aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、発熱素子を発熱させ気泡を発生させてもノズルからインクを吐出できなくなる。このような場合、印字ヘッド150のノズル面150Aに、キャップ164を当てて増粘インクをポンプ167で吸引する動作が行われる。このように、図1に示す複数の大ノズルと小ノズルとが配列されたヘッドに対して、1個のキャップ164により吸引される。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室152内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。本発明では、小ノズル11、大ノズル12の手前に、小ノズル液室17、大ノズル液室18を設けることにより、大ノズルと小ノズルの吸引量のバランスを保持するとともに、吸引動作によるインクの消費量を削減することができる。なお、図5で説明したキャップ164は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
また、好ましくは、キャップ164の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
図6はインクジェット記録装置110のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、メモリ174、モータドライバ176、ヒータードライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170にはUSB(Universal serial bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦メモリ174に記憶される。メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、通信インターフェース170、メモリ174、モータドライバ176、ヒータードライバ178等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ186との間の通信制御、メモリ174の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒーター189を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示にしたがってモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータードライバ178は、システムコントローラ172からの指示にしたがって後乾燥部142(図3に図示)等のヒーター189を駆動するドライバである。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、メモリ174内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号をヘッドドライバ184に供給する制御部である。プリント制御部180において所要の信号処理が施され、前記画像データに基づいてヘッドドライバ184を介してヘッド150のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御(打滴制御)が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ184はプリント制御部180から与えられる印字データに基づいて各色のヘッド112K,112C,112M,112Yの圧電素子を駆動する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
プログラム格納部190には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ172の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部190はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらのものを複数備えてもよい。なお、プログラム格納部190は動作パラメータ等の記憶手段(不図示)と兼用してもよい。
印字検出部124は、図3で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部180に提供する。プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部124から得られる情報に基づいてヘッド150に対する各種補正を行う。
なお、システムコントローラ172及びプリント制御部180は、1つのプロセッサから構成されていてもよいし、システムコントローラ172とモータドライバ176及びヒータードライバ178とを一体に構成したデバイスや、プリント制御部180とヘッドドライバとを一体に構成したデバイスを用いてもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る液体吐出ヘッドについて図7、図8に基づき説明する。
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る液体吐出ヘッドのノズルプレート30を外したときの上面図である。図8は、本発明の第2の実施の形態に係る液体吐出ヘッドの断面図である(液体吐出ヘッドを図7の線8A−8Bに沿って垂直に切断した断面図)。
第2の実施の形態に係る液体吐出ヘッドは、図8に示すように、ノズルプレート30に小さな液滴を吐出するノズル(小ノズル)31と大きな液滴を吐出するノズル(大ノズル)32とが左右対称に設けられている。インク流路は個別流路33と共通流路43からなる。小ノズル31に対応するヒーター34と、大ノズル32に対応するヒーター35は、インク流路の一つである個別流路33を介し対向して基板41上に設けられており、ヒーター34、35上には保護層40が形成されている。大ノズル32とこれに対応するヒーター35の間には、個別流路33を介し、インク液室である大ノズル液室38が設けられ、同様に、小ノズル31とこれに対応するヒーター34の間には、個別流路33を介し、インク液室である小ノズル液室37が設けられている。大ノズル液室38、小ノズル液室37は、ノズル液室プレート36に穴等を設けることにより形成される。個別流路33は、個別流路プレート39により形成されており、インク流路の一つである共通流路43と接続されて不図示のインクタンクからインクが供給される。また、図7に示すように、各々の個別流路33は個別流路プレート39により形成された隔壁42により形成されており、液体吐出ヘッドの全体も個別流路プレート39により形成された隔壁42で囲まれている。各々の個別流路33には、小ノズル31に対応するヒーター34或いは大ノズル32に対応するヒーター35が設けられている。
本発明に係る液体吐出ヘッドでは、インクが共通流路43から個別流路33に供給され、個別流路33に供給されたインクは、画像形成装置の制御系からの情報に基づき、小ノズル31と大ノズル32より吐出される。
大ノズル32は使用頻度が低いため、大ノズル32よりインクの増粘が始まるが、大ノズル液室38が設けられているため、インクの増粘は、大ノズル液室38に広がった後でなければ、個別流路33に広がることは殆どない。
よって、増粘したインクを除去する吸引動作の際には、大ノズル32と大ノズル液室38に溜まっているインクの吸引を行えばよく、個別流路33内のインクの吸引まではする必要がないため、吸引動作におけるインクの消費は従来に比べて少なくなる。
また、吸引はインクが増粘した場合に行われるが、先に記載したように一般に大ノズル32の方が使用頻度は低いため、大ノズル32のインクは小ノズル31のインクよりも増粘している場合が多い。大ノズル32は、ノズル径も広く、また、小ノズル液室37よりも大ノズル液室38の占める容積も大きいことから、幾何学的な流路抵抗は大ノズル32の方が低い。従って、大ノズル32では、インクの増粘により、インクの粘度が高くなるためインクが流れる際の抵抗は増すが、幾何学的な流路抵抗は小さくなり、小ノズル31では、インクの増粘によるインクが流れる際の抵抗は低いが、幾何学的な流路抵抗は大きくなるため、吸引動作の際に吸引されるインクは、一方のノズルのインクのみ過大に吸引されることはなく、大ノズル32、小ノズル31ともにバランスよく吸引される。さらに、大ノズル32の増粘したインクは、大ノズル液室38に溜まっているので、吸引動作による全体のインクの消費量は少なくなる。
また、図8では、小ノズル31と大ノズル32とが、走査方向に平行に配置したものであるが、制御系との関係から、図9に示すように、隔壁42により形成された共通流路43に連通する個別流路33内に、小ノズル31と大ノズル32とが千鳥状に配置されるよう、小ノズル31に対応するヒーター34と大ノズル32に対応するヒーター35を設けてもよい。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る液体吐出ヘッドについて図10に基づき説明する。
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る液体吐出ヘッドの断面図である。
第3の実施の形態に係る液体吐出ヘッドは、図10に示すようにノズルプレート50に小ノズル51と大ノズル52とが設けられている。インク流路は、個別流路53と共通流路63からなる。小ノズル51に対応するヒーター54と、大ノズル52に対応するヒーター55は、インク流路の一つである個別流路53を介し対向して基板61上に設けられており、ヒーター54、55上には保護層60が形成されている。大ノズル52とこれに対応するヒーター55の間には、個別流路53を介し、インク液室である大ノズル液室58が設けられている。個別流路53は、インク流路の一つである共通流路63と接続されて不図示のインクタンクからインクが供給される。
本発明に係る液体吐出ヘッドでは、インクが共通流路63から個別流路53に供給され、個別流路53に供給されたインクは、画像形成装置の制御系からの情報に基づき、小ノズル51と大ノズル52より吐出される。
大ノズル52は使用頻度が低いため、大ノズル52よりインクの増粘が始まるが、大ノズル液室58が設けられているため、インクの増粘は、大ノズル液室58に広がった後でなければ、個別流路53に広がることはない。
よって、増粘したインクを除去する吸引動作の際には、大ノズル52と大ノズル液室58に溜まっているインクの吸引を行えばよく、個別流路53内のインクの吸引まではする必要がないため、吸引動作におけるインクの消費は従来に比べて少なくなる。
また、吸引はインクが増粘した場合に行われるが、先に記載したように一般に大ノズル52の方が使用頻度は低いため、大ノズル52のインクは小ノズル51のインクよりも増粘している場合が多い。大ノズル52は、ノズル径も広く、また、大ノズル液室58が存在していることから、幾何学的な流路抵抗は大ノズル52の方が低い。従って、大ノズル52では、インクの増粘によるインクが流れる際の抵抗は増すが、幾何学的な流路抵抗は小さくなり、小ノズル51では、インクの増粘によるインクが流れる際の抵抗は低いが、幾何学的な流路抵抗は大きくなるため、吸引動作の際に吸引されるインクは、一方のノズルのインクのみ過大に吸引されることはなく、大ノズル52、小ノズル51ともにバランスよく吸引されるため、吸引動作によるインクの消費量は少なくてすむ。
以上、本発明の液体吐出ヘッドについて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形をおこなうことが可能である。
10…ノズルプレート、11…小ノズル、12…大ノズル、13…個別流路、14、15…ヒーター、16…ノズル液室プレート、17…小ノズル液室、18…大ノズル液室、19…個別流路プレート、20…保護膜、21…基板、22…隔壁、23…共通流路