以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔第1の実施形態;インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明が適用される画像形成装置の一実施形態であるインクジェット記録装置の全体概略図である。図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図3乃至図5)、印字部12を構成する各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、図2に示すように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインクの吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
また詳細については後述するが、印字検出部24は、後述する折り返しノズルの液滴吐出量を補正するために、テストパターンの濃度分布を測定する。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
図3は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図である。記録紙面上に印字されるドット間ピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズル間ピッチを高密度化する必要がある。本実施形態の印字ヘッド50は、図3に示すように、インク滴を吐出するノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状(2次元的)に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズル間ピッチの高密度化を達成している。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。
図4は、図3に示した印字ヘッド50のノズル配列を示す拡大図である。図4に示すように、本実施形態における印字ヘッド50のノズル配列は、図22に示した従来のマトリクス型ヘッドと同様であり、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで複数のノズル51(インク室ユニット53)を配列させた構造になっている。
主走査方向に隣り合うノズル列51A、51Aの境目(つなぎ部分)である折り返し位置(ノズル列つなぎ部)は、例えば、ノズル列51A-1の主走査方向上流側端部のノズル51-17 とノズル列51A-2の主走査方向下流側端部のノズル51-21 の間である。また、この場合、折り返し位置における斜めの列方向のノズル列端部のノズルである折り返しノズルはノズル51-17 、51-21 である。以下では、折り返しノズルをまとめて符号151で表し、特に、主走査方向に隣り合うノズル列51A、51Aのうち、主走査方向上流側のノズル列51Aの主走査方向下流側端部の折り返しノズルを151A、主走査方向下流側のノズル列51Aの主走査方向上流側端部の折り返しノズルを151Bで表す。上例の場合では、折り返しノズル151Aがノズル51-17 であり、折り返しノズル151Bがノズル51-21 である。
印字ヘッド50が副走査方向(紙搬送方向)に対して所定角度をなすように正確に取付けられている場合には、折り返しノズル151A、151Bの主走査方向のノズル間ピッチ(折り返し位置における主走査方向のノズル間ピッチ)P2は、他の主走査方向のノズル間ピッチP0と等しく(即ち、P2=P0)、主走査方向に投影されるノズル列はノズル間ピッチP0(=P2)で均等に並ぶ。従って、図4下段に示すように、記録紙16上の主走査方向にはドット間ピッチP(=P0、P2)で均等に並んだドット列が形成される。
このように本実施形態における印字ヘッド50では、主走査方向については、各ノズル51が一定のノズル間ピッチP0で直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1列のドットによるライン又は複数のドット列から成るラインを印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図4に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 、51-17 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-27 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-37 を1つのブロック、…として)記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-17 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1列のドットによるライン又は複数のドット列から成るラインを繰り返し行うことを副走査と定義する。
本実施形態では、折り返し位置によって生じる濃度むらの視認性を低減するために、折り返しノズル151A、151Bの液滴吐出量を補正する打滴制御を行う。なお、印字ヘッド50の打滴制御方法については後述する。
図5は、図3中5−5線に沿う断面図であり、インク室ユニット53の立体的構成を表している。図5に示すように、圧力室52は、一端でノズル51に連通し、他端で供給口54を介して共通流路55に連通する。なお、共通流路55はインク供給源たるインクタンク(図5中不図示、図6中符号60として記載)と連通しており、インクタンク60から供給されるインクは図5の共通流路55を介して圧力室52に供給される。
圧力室52の天面を構成している振動板56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインク滴が吐出される。なお、振動板56は共通電極を兼ねている。インク滴が吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
なお、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ58の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
図6は、インクジェット記録装置10のインク供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図6に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによってノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84、印字検出部24、ヘッド角度検知部90等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、ヘッド角度検知部90、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
ヘッド角度検知部90は、印字ヘッド50の紙搬送方向に対する角度(ヘッド角度)を検出し、その結果をシステムコントローラ72に通知する。システムコントローラ72では、ヘッド角度検知部90から通知されたヘッド角度を不図示のメモリ部に記憶する。また、システムコントローラ72では、メモリ部に記憶されているヘッド角度と、ヘッド角度検知部90から通知されたヘッド角度との比較を行い、その結果をプリント制御部80に通知する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
さらに、プリント制御部80には、液滴量補正部80Aが設けられ、折り返し位置における折り返しノズル151及びその隣接ノズル(折り返し隣接ノズル)の液滴吐出量を補正する。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータ58(図5参照)を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80において既知のディザ法、誤差拡散法などの手法によりインク色ごとのドットデータに変換される。
こうして、プリント制御部80で生成されたドットデータに基づき、印字ヘッド50が駆動制御され、印字ヘッド50からインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期して印字ヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。なお、ラインセンサの読み取り開始タイミングは、センサとノズル間の距離及び記録紙16の搬送速度から決定される。また、図1に示した例では、印字検出部24が印字面側に設けられており、ラインセンサの近傍に配置された冷陰極管などの光源(不図示)によって印字面を照明し、その反射光をラインセンサで読み取る構成になっているが、本発明の実施に際しては他の構成でもよい。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。例えば、印字検出部24を通じて得られた検出情報に基づいてノズル51の吐出/不吐出を判断した場合には、不吐出ノズルが検出された場合には所定の回復動作を実施する制御を行う。
特に、本実施形態では、印字検出部24は、テストパターンの濃度分布を測定し、その測定結果を液滴量補正部80Aに提供する。液滴量補正部80Aは、印字検出部24から提供されたテストパターンの濃度分布の測定結果に基づいて、ヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50の折り返しノズル151(151A、151B)の液滴吐出量を補正する制御を行う。
図8は、図7に示したヘッド角度検知部90の構成例を表す説明図である。ヘッド角度検知部90は、搬送機構基準板94の印字ヘッド50側の表面(ギャップセンサ設置面)94aに設けられたギャップセンサ96によって構成される。搬送機構基準板94は、印字ヘッド50に並設して固定配置されており、図8中矢印で示す紙搬送方向に対して搬送機構基準板94のギャップセンサ設置面94aが平行となるように構成されている。
搬送機構基準板94上のギャップセンサ96は、印字ヘッド50との間隔を精密に測定することができるものである。そのため、印字ヘッド50の長手方向と紙搬送方向との角度(ヘッド角度)αはギャップセンサ96の測定値から容易に把握することが可能である。なお、ヘッド角度は、印字ヘッド50の長手方向と紙搬送方向との角度に限定されるものでなく、例えば、印字ヘッド50の短手方向やその他の方向と紙搬送方向との角度をヘッド角度としてもよいし、紙搬送方向のばらつきを毎回検出するようにしてもよい。また、ギャップセンサは公知のものを用いればよいため、その説明は省略する。
〔打滴制御方法〕
本実施形態では、印字ヘッド50が図4中矢印A1の方向に傾いて取付けらた場合は折り返しノズル151(151A、151B)の液滴吐出量が多くなるように補正し、逆に図4中矢印A2方向に傾いて取付けらた場合は折り返しノズル151(151A、151B)の液滴吐出量が少なくなるように補正する。以下では、図9乃至図11に示した本実施形態における印字ヘッド50の打滴制御方法を表したフローチャート図に従って、本打滴制御方法について詳説する。
図9は、印字ヘッド50の初期設定フローである。
同図に示すように、まず、出力濃度毎にテストパターンを記録紙16上に出力する(ステップS110)。このとき、折り返しノズル151(151A、151B)の液滴吐出量(補正量)を変化させながら、複数のパターンをそれぞれ出力する。
図12は、テストパターンの一例である。同図に示すように、出力濃度d1、d2、d3毎にテストパターン100A、100B、100Cを出力する。各テストパターン100A、100B、100Cは、紙搬送方向に直交する主走査方向の複数の直線から構成され、各直線は折り返しノズル151(151A、151B)の液滴吐出量を3段階(大・中・小)に変化させて出力されたものである。このように主走査方向に延びる直線によって構成されるテストパターンは、主走査方向における濃度ばらつきを測定するのに好適である。また出力濃度毎に各テストパターンは構成することによって、後述するように、出力濃度毎に折り返しノズル151の液滴吐出量を補正することができる。
図13は、折り返しノズル151(151A、151B)の液滴吐出量の制御例であり、折り返しノズル151に連通する圧力室52に対応して設けられるアクチュエータ58に印加する駆動電圧波形を表している。例えば、図12に示したように折り返しノズル1151の液滴吐出量を3段階(大・中・小)で変化させるためには、図13に示すように、アクチュエータ58に印加する駆動電圧の大きさを3段階(大・中・小)で変化させればよい。
次に、図9に示すように、印字検出部24において、テストパターンの各パターンの濃度分布を測定する(ステップS120)。図12の例では、各直線の濃度分布を測定する。なお、各パターンの全域にわたって濃度分布を測定してもよいし、濃度むらが視認されやすいノズル折り返し位置に相当する部分を中心に濃度分布を測定してもよい。
次に、各テストパターンの複数のパターンの中から最も濃度ばらつきが小さいと判定されたパターンを形成したときの折り返しノズル151(151A、151B)の液滴吐出量を補正液滴吐出量Aとして選択する(ステップS130)。
図14は、印字検出部24による濃度分布の測定結果の一例を表しており、横軸は主走査方向であり、縦軸は濃度値である。ステップS120によって、テストパターンの各パターン毎に、同図に示すような濃度測定結果が得られる。例えば、図12の場合では、テストパターン100A、100B、100Cに対してそれぞれ3つの濃度分布の測定結果が得られる。図14において、濃度値の異なる部分は折り返し位置毎(即ち、主走査方向に隣り合うノズルのノズル間ピッチP1毎)に現れており、折り返し位置における濃度値とその他の位置における濃度値の差(濃度ばらつき幅)をXとする。ステップS130では、各テストパターン毎に最も濃度ばらつき幅Xの小さなパターンを形成したときの折り返しノズル151(151A、151B)の液滴吐出量を補正液滴吐出量Aとして選択する。
図15は、図14に示した濃度分布の測定結果を周波数分析した結果を表しており、横軸は空間周波数、縦軸は濃度ばらつき量である。図15に示すように、濃度分布の測定結果をシステムコントローラ72(図7参照)で周波数分析を行い、折り返しノズル151の現れる周波数(折り返しノズル周波数)での濃度ばらつき量が最も小さくなるパターンを形成したときの折り返しノズル151(151A、151B)の液滴吐出量を補正液滴吐出量Aとして選択してもよい。
このようにして各出力濃度dに対応するテストパターン毎に折り返しノズル151(151A、151B)の補正液滴吐出量Aを選択する。そして、これらの補正液滴吐出量Aをデータテーブルとして不図示のメモリ部に記憶しておく。図12の例では、各テストパターンの出力濃度d1、d2、d3のそれぞれに対して折り返しノズル151の補正液滴吐出量A1、A2、A3を選択する。そして、図16(a)に示すデータテーブル設定例のように、出力濃度d1、d2、d3に対して折り返しノズル151の補正液滴吐出量A1、A2、A3をそれぞれ関連付けして、データテーブルに設定する。なお、図16(b)に示すように、所定の範囲の出力濃度に対応するように折り返しノズル151の補正液滴吐出量を関連付けしておいてもよい。
次に、印字ヘッド50の紙搬送方向に対する角度(ヘッド角度)αを測定する(ステップS140)。ヘッド角度αは、前述したように、ヘッド角度検知部90において測定される。そして、このとき測定されたヘッド角度αを、図17に示すように、現在のヘッド角度を表す現状値として不図示のメモリ部に記憶しておく。
次に、全ての印字ヘッド50に対する処理が終了していなければ、ステップS110に戻って未処理の印字ヘッド50に対して同様の処理を繰り返し、全ての印字ヘッド50に対する処理が終了していれば本フローを終了する(ステップS150)。このようにして、各色毎に設けられた印字ヘッド50(12K、12C、12M、12Y)に対する初期設定が行われる。
図10は、印字ヘッド50の印刷動作時のフローである。なお、図9に示した初期設定フローは既に行われているものとする。
まず、図10に示すように、画像データから出力濃度d’を求める(ステップS210)。
次に、図9のステップ130において不図示のメモリ部に記憶されたデータテーブルから、画像データから求められる出力濃度d’に対応する折り返しノズル151の補正液滴吐出量Aを選択する(ステップS220)。なお、データテーブルに出力濃度d’に対応する補正液滴吐出量Aが存在しない場合には、出力濃度d’に最も近い出力濃度dに対応する補正液滴吐出量Aを選択する。
そして、ヘッドドライバ84を介して折り返しノズル151が補正液滴吐出量Aで打滴するように制御を行う(ステップS230)。このとき、印字ヘッド50の折り返しノズル151以外のノズル51は通常の打滴動作を行う。そして、画像データに対応した打滴動作が終了すると本フローを終了する。
図11は、印字ヘッド50を印字部12から一旦離脱し再結合した時のフローである。なお、図9に示した初期設定フローは既に行われているものとする。
図11に示すように、まず、ヘッド角度検知部90において現在のヘッド角度α’を測定する(ステップS310)。
次に、現在のヘッド角度α’と、不図示のメモリ部に記憶されているヘッド角度αを比較する(ステップS320)。
ヘッド角度α’とヘッド角度αに差がある場合には(α’≠α)、ヘッド角度α’が予め想定された所定の範囲にあるか判定する(ステップS330)。
ヘッド角度α’が所定の範囲外の場合は、印字ヘッド50を再度離脱して再結合する(ステップ340)。そして、ステップS310に戻ってヘッド角度α’を再び測定して、同様の処理を行う。
一方、ヘッド角度α’が所定の範囲内にある場合は、ヘッド角度α’とヘッド角度αの角度差(α’−α)に応じて、折り返しノズル151の液滴吐出量を補正する。例えば、図18に示すような吐出量補正テーブルを不図示のメモリ部に記憶させておき、この吐出量補正テーブルから上記角度差(α’−α)に対応する電圧値補正係数を求める。そして、図19に示されるような波形のアクチュエータ58の駆動電圧に前記電圧値補正係数を乗じて、折り返しノズル151の液滴吐出量を補正する(ステップS350)。なお、図19において、破線は補正前の駆動電圧波形を表し、実線は補正後の駆動電圧波形を表している。そして、現在のヘッド角度α’と折り返しノズル151の補正後の液滴吐出量(又は電圧値補正係数)を現状値として不図示のメモリ部に記憶する(ステップS360)。
ステップS320において現在のヘッド角度α’がメモリ部に記憶されるヘッド角度αに等しい場合(α=α’)、又は、ステップ360の処理を終了した場合には、本フローを終了する。
このように本実施形態の印字ヘッド50では、図9に示したフローチャートに従って初期設定が行われ、出力濃度d毎に応じた折り返しノズル151の補正液滴吐出量Aが不図示のメモリ部にデータテーブルとして記憶される。また、印字ヘッド50の紙搬送方向に対する角度(ヘッド角度)αも現状値としてメモリ部に記憶される。
そして、印字ヘッド50の印刷動作時には、図10に示したフローチャートに従って、画像データから求められる出力濃度d’に対応する折り返しノズル151の補正液滴吐出量Aが不図示のメモリ部に記憶されるデータテーブルより選択され、折り返しノズル151がその補正液滴吐出量Aで打滴を行うように制御を行う。
また、ヘッドメンテナンス等のように印字ヘッド50が離脱して再結合された場合には、図11に示したフローチャートに従って、現在のヘッド角度α’が測定され、不図示のメモリ部に記憶されているヘッド角度αとの比較が行われ、折り返しノズル151の液滴吐出量の調整が行われる。
以上のように、本実施形態の印字ヘッド50では、折り返しノズル151の液滴吐出量を補正する制御によって、折り返し位置によって生じる濃度むらの視認性をより低減することができる。特に、折り返しノズル151の液滴吐出量は、ヘッド角度や出力濃度に応じて補正が行われるため、よりきめ細かく、より確実に、折り返し位置によって生じる濃度むらの視認性を低減することができる。
なお、本実施形態では、印字ヘッド50がフルライン型ヘッドである場合について説明したが、本発明の実施に際しては、これに限定されず、シャトル型ヘッドであってもよい。
〔第2の実施形態〕
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。本実施形態では、折り返しノズル151だけでなく、折り返しノズル151の主走査方向に隣接する折り返し隣接ノズルの液滴吐出量も制御する。図4において、折り返しノズル51-17 (151A)、51-21 (151B)の折り返し隣接ノズルは、それぞれノズル51-16 、51-22 である。なお、折り返しノズル151に対する折り返し隣接ノズルを符号251で表し、折り返しノズル151A、151Bに対する折り返し隣接ノズルをそれぞれ251A、251Bで表す。
折り返しノズル151(151A、151B)に対する制御は、第1の実施形態と同様に行われる。これにより、折り返しノズル151(151A、151B)の液滴吐出量の補正によって折り返し位置によって生じる濃度むらの視認性は低減する。しかし、上記補正は、折り返しノズル151とその折り返し隣接ノズル251との間(折り返しノズル151Aと折り返し隣接ノズル251Aとの間、折り返しノズル151Bと折り返し隣接ノズル251Bとの間)に新たな濃度むらを視認させる要因となる場合がある。そこで、本実施形態では、折り返しノズル151の液滴吐出量の補正によって生じる新たな濃度むらの視認性を低減させるために、折り返し隣接ノズル251(251A、251B)の液滴吐出量を補正する制御を行う。
図20は、第2の実施形態における吐出量補正テーブルであり、図18に示した第1の実施形態における吐出量補正テーブルに相当するものである。図20に示す吐出量補正テーブルには、現在のヘッド角度α’と不図示のメモリ部に記憶されるヘッド角度αとの角度差(α’−α)に応じて、折り返しノズル151(151A、151B)に対する電圧値補正係数だけでなく、折り返し隣接ノズル251(251A、251B)に対する電圧値補正係数が設定されている。この吐出量補正テーブルでは、折り返しノズル151の電圧値補正係数が1より大きい場合には折り返し隣接ノズル251の電圧値補正係数が1より小さく設定されている。即ち、折り返しノズル151の液滴吐出量が多くなるように補正する場合は折り返し隣接ノズル251の液滴吐出量が少なくなるように補正している。
図21(a)、(b)は、それぞれ折り返しノズル151、折り返し隣接ノズル251に対応するアクチュエータ58に印加される駆動電圧波形を示しており、破線は補正前の駆動電圧波形を表し、実線は補正後の駆動電圧波形を表している。図21(a)に示すように、折り返しノズル151の駆動電圧が大きくなるように補正する場合は、図21(b)に示すように、折り返し隣接ノズル251の駆動電圧が小さくなるように補正する。
また、折り返しノズル151と折り返し隣接ノズル251の電圧値補正係数が逆の場合は、上記の場合とは逆に、折り返しノズル151の液滴吐出量が少なくなるように補正し、折り返し隣接ノズル251の液滴吐出量が多くなるように補正する。
さらに、電圧値補正係数から1を引いた差の絶対値は、折り返しノズル151より折り返し隣接ノズル251の方が小さくなるように設定されている。即ち、折り返しノズル151の補正量より折り返し隣接ノズル251の補正量の方が小さくなるように設定されている。
このように本実施形態では、折り返しノズル151だけでなく折り返し隣接ノズル251の液滴吐出量を補正している。これにより、折り返し位置によって生じる濃度むらを低減するだけでなく、さらに、折り返しノズル151の液滴吐出量の補正を要因とする濃度むらの視認性を低減することができる。
特に、折り返しノズル151の液滴吐出量が少なくなるように補正する場合には折り返し隣接ノズル251の液滴吐出量が多くなるように補正を行い、折り返しノズル151の液滴吐出量が多くなるように補正する場合には折り返し隣接ノズル251の液滴吐出量が少なくなるように補正を行っている。即ち、折り返しノズル151と折り返し隣接ノズル251の液滴吐出量の補正を逆位相で行っている。さらに、折り返し隣接ノズル251の液滴吐出量の補正量が折り返しノズル151の液滴吐出量の補正量より小さくなるように補正を行っている。これらにより、折り返し位置の周辺部で生じる濃度むらの視認性を滑らかに低減することができる。
なお、本実施形態では、折り返しノズル151の主走査方向に隣接する1つのノズルを折り返し隣接ノズル251とする場合について説明したが、本発明の実施に際しては、折り返しノズル151の主走査方向に隣接する2つ以上のノズルを折り返し隣接ノズル251としてもよい。例えば、図4の場合、折り返しノズル51-17 に対応する折り返し隣接ノズルを51-17 、51-16 としてもよい。なお、折り返し隣接ノズル251の液滴吐出量の補正量は、折り返しノズル151から離れるに従って徐々に小さくなるように構成されることが好ましい。
以上、本発明の液滴吐出装置及び画像記録方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…インクジェット記録装置、24…印字検出部、50…印字ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、58…アクチュエータ、84…ヘッドドライバ、90…ヘッド角度検知部、151、151A、151B…折り返しノズル、251、251A、251B…折り返し隣接ノズル