JP3774902B2 - 液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置に係り、特にノズル(液滴吐出口)に連通する圧力室内の気泡除去に有効な液滴吐出ヘッドの構造及びそのヘッドを用いたインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録装置は、インク吐出用のノズルを備えた記録ヘッドに対して記録紙等の記録媒体を相対的に移動させながら、印字信号に応じて記録ヘッドからインクを吐出させることにより記録媒体上にインク滴を着弾させ、そのインクドットによって画像を記録するものである。
インクジェットヘッド(記録ヘッド)は、ノズルに連通する圧力室にインクを供給し、該圧力室内の液体に圧力変動を与えてノズルから液滴を吐出させる構成であるため、圧力室内に気泡が存在すると、吐出に必要な圧力がインクに伝わらず、吐出不良を引き起こす。このような、吐出不良を防止するため、圧力室内の気泡混入インクを吸引し、インクとともに気泡を排出する動作(吸引動作)が行われる。しかし、吸引動作を実施するとインク消費量が増大するという問題がある。
かかる課題に対し、特許文献1に開示されたインクジェットヘッドは、ノズルに連通するインク室に流体抵抗の異なる二つのインク供給口が設けられている。これら二つのインク供給口はそれぞれ別々のリザーバタンクと連通しており、ポンプの制御によってインクの循環モード(インクの循環方向)を切り替えることでインク室内の気泡を一方のリザーバタンクへ排出できるようになっている。
また、特許文献2によれば、複数の圧力室に連通する共通流路に還流路を設け、共通流路中の気泡をインクとともに回収する構造が開示されている。
その他、特許文献3には、インク吐出に必要な熱エネルギーを発生する発熱抵抗体を備えたサーマルジェット方式のインクジェットヘッドにおいて、ノズルに供給するインクを循環させる構造が開示されている。
特開平6−24000号公報 特開2002−355961号公報 特開2002−254643号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献3で提案されている構成は、吐出駆動時に循環路に圧力が逃げるため、より大きな吐出アクチュエータ力が必要となる。一方、特許文献2で提案されている構成では、共通流路内の気泡は排除できるものの、圧力室内の気泡を排除することができない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ヘッド内、特に圧力室内の気泡をノズルからの吸引動作を実施することなく、除去することができる液滴吐出ヘッドの構造及びそのヘッドを用いたインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、液滴を吐出するノズルと、前記ノズルに連通し該ノズルから吐出させる液体が充填される圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変化を生じさせて前記ノズルから液滴を吐出させる圧力発生手段と、を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧力室は、その平面形状が略三角形状に形成され、前記圧力室から前記ノズルに液体を導く第1の液管路と、前記圧力室に液体を流入させる第2の液管路と、前記圧力室内の液体を該圧力室の外へ排出させる第3の液管路とがそれぞれ前記略三角形状の異なる頂点近傍位置に連通された構造を有し、前記第2の液管路及び第3の液管路のうち少なくとも一方の液管路に当該流路を開閉する開閉手段を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、圧力室の平面形状を略三角形状とし、各頂点に対応する位置にそれぞれ当該圧力室の流出入路たる第1、第2及び第3の液管路が連通する液管路口を設けたので、圧力室内の液体の流れが淀みにくく、圧力室内における気泡溜まりを防止できる。また、第2の液管路から圧力室に流入させた液体を圧力室から第3の液管路を通して外部へ排出できるため、圧力室内の気泡を除去することができる。更に、ノズルから液滴を吐出させる吐出動作時に開閉手段を閉じておくことにより、圧力損失を防止して吐出力を確保できる。更にまた、圧力室の平面形状が略三角形状という構造から多数の圧力室を高密度で2次元的に配置することが可能であり、ノズルの高密度化を実現できる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の液滴吐出ヘッドに係り、前記開閉手段は、前記第3の液管路に設けられていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の液滴吐出ヘッドに係り、前記液滴吐出ヘッドには、前記圧力室が複数個設けられ、各圧力室の前記第2の液管路に連通する共通流路と、各圧力室の前記第3の液管路に連通する循環流路とを備えていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の液滴吐出ヘッドに係り、前記各圧力室に対応して設けられている複数の前記開閉手段を同時に開閉制御する開閉制御手段を備えていることを特徴とする。
かかる態様は、各圧力室に対応して設けられている複数の開閉手段をそれぞれ個別に開閉制御する構成と比較して、開閉用アクチュエータ等の数を減らすことができ、コスト低減を実現できるとともに、製造適性もアップする。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドに係り、前記第2の液管路側を加圧する供給路側圧力調整手段と、前記第3の液管路側を減圧する循環路側圧力調整手段の、少なくとも一方を有し、前記供給路側圧力調整手段による加圧及び前記循環路側圧力調整手段による減圧により前記第2の液管路から前記圧力室へ液体を流入させるとともに前記圧力室から前記第3の液管路へ液体を流出させる液体の流れ発生させることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の液滴吐出ヘッドに係り、前記第2の液管路側の圧力Ps 、前記第3の液管路側の圧力Pc 、大気圧Pa とすると、前記圧力室内の液体を前記第3の液管路へ流出させる場合に、Pa >Ps >Pc を満たすように設定されることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドをインクジェット記録ヘッドとして用い、該インクジェット記録ヘッドに対して被記録媒体を相対移動させながら、前記ノズルからインク滴を吐出することにより前記被記録媒体上に画像を記録することを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
なお、本発明の実施に際して、記録ヘッドの形態は特に限定されず、被記録媒体の送り方向と略直交する方向に記録ヘッドが往復動作しながら印字を行うシャトル方式の記録ヘッドであってもよいし、インクを吐出する複数のノズルが被記録媒体の送り方向と略直交する方向に前記印字媒体の全幅に対応する長さにわたって配列されたノズル列を有するフルライン型の記録ヘッドであってもよい。
「フルライン型の記録ヘッド」は、通常、被記録媒体の相対的な送り方向と直交する方向に沿って配置されるが、送り方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿って記録ヘッドを配置する態様もあり得る。また、記録ヘッドにおけるノズルの配列形態は、1列のライン状配列に限定されず、複数列からなるマトリックス配列でもよい。更には、被記録媒体の全幅に対応する長さに満たないノズル列を有する短尺記録ヘッドユニットを複数個組み合わせることによって、これらユニット全体として被記録媒体の全幅に対応するノズル列を構成する形態もあり得る。
「被記録媒体」は、記録ヘッドの作用によって画像の記録を受ける媒体(印字媒体、被画像形成媒体、記録媒体、受像媒体など呼ばれ得るもの)であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。なお、本明細書において「印字」という用語は、文字を含む広い意味での画像を形成する概念を表すものとする。
被記録媒体と記録ヘッドを相対的に移動させる移動手段(搬送手段)は、停止した(固定された)記録ヘッドに対して被記録媒体を搬送する態様、停止した被記録媒体に対して記録ヘッドを移動させる態様、或いは、記録ヘッドと被記録媒体の両方を移動させる態様の何れをも含む。
請求項8記載の発明は、請求項7記載のインクジェット記録装置に係り、前記画像の記録中には前記開閉手段を閉じ、非記録時に前記開閉手段を開けて前記圧力室内の液体を前記第3の液管路へ流出させるように制御する循環制御手段を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、圧力室の平面形状を略三角形状とし、その頂点位置に第1、第2及び第3の液管路を連通させる構造にしたので、圧力室内における気泡溜まりを防止できる。また、第2の液管路から圧力室に流入させた液体を圧力室から第3の液管路を通じて外部へ排出できるため、ノズルから吸引することなく、圧力室内の気泡を除去することができる。更に、吐出動作時に開閉手段を閉じておくとにより、圧力損失を防止して吐出力を確保できる。更にまた、圧力室の平面形状が略三角形状という構造から多数の圧力室を高密度で2次元的に配置することが可能であり、ノズルの高密度化を実現できる。
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置(プリンター)10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図10中符号150として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図4乃至図8)、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の送り方向(以下、紙搬送方向という。)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されており、記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドが各インク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
なお、用紙(記録紙16)の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサ又はエリアセンサで構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダ別に画像を集積するソーターが設けられる。
図3はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。なお、インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図3のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
図3に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図3には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズルの乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。
印字中又は待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、ノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、その劣化インクを排出すべくキャップ64に向かって予備吐出が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室内)に気泡が混入した場合、印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。
すなわち、印字ヘッド50は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用のアクチュエータが動作してもインクがノズルから吐出できなくなってしまう。したがって、この様な状態になる手前(アクチュエータで吐出が可能な粘度の範囲内)で、インク受けに向かってアクチュエータを動作させ、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面の清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパー(不図示)によってノズル表面の汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
また、ノズル内及び圧力室内に気泡が混入したり、ノズル内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、以下に述べる吸引動作を行う。
すなわち、ノズル内及び圧力室のインク内に気泡が混入すると、アクチュエータが動作してもインクがノズルから吐出できなくなる。また、ノズル内のインク粘度があるレベル以上に上昇すると、アクチュエータが動作してもインクがノズルから吐出できなくなる。このような場合、ノズル面に圧力室内のインクをポンプ等で吸い込む吸引手段を当接させて、気泡が混入したインク又は増粘インクを吸引する。
ただし、上記の吸引動作は、圧力室内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合はなるべく予備吐出を行うことが好ましい。
なお、図3で説明したキャップ64は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得る。
本発明の実施形態では、圧力室内の気泡を上述の吸引動作なしで排除可能なヘッド構造を有しているため、吸引動作によるインク消費量を抑制できる。以下、その構造について説明する。
〔印字ヘッドの構造〕
図4は印字ヘッド50内部構造を示した平面模式図であり、図5は図4の要部拡大図、図6は図5の6−6線に沿う断面図、図7は図5の7−7線に沿う断面図である。
図4において符号70は圧力室、71はノズルを示す。なお、図4では便宜上、圧力室70の個数を省略して描いているが、印字ヘッド50には、同様の構成の圧力室70が所定の間隔でマトリックス状に多数配列されている。
記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。そのため、本例の印字ヘッド50は、ノズル71と該ノズル71に連通する圧力室70とを含む吐出素子(画像記録素子)73を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより主走査方向に並ぶように投影させたときのノズルピッチの高密度化を達成している。
図4に示す印字ヘッド50は、ヘッドの長手方向に対して僅かな傾き角度ψを有する斜めの行方向に並ぶノズル列がその行方向に直交する列方向について所定の間隔で4本平行に並んで形成された構造を有している。ただし、本発明の実施に際してノズルの配列構造はこの例に限定されない。
図4中符号75は各圧力室70にインクを供給する共通流路(供給側共通流路)、符号76は圧力室70から排出したインクを循環系へと導く循環流路(共通循環流路)、符号77は、後述する個別循環流路(図5乃至図8において符号86として記載)を開閉する弁手段(図8においてメンブレン95)を動作させるための空気流路である。
図4に示したように、印字ヘッド50には、各ノズル列に対応して、ノズル列と平行に共通流路75、循環流路76及び空気流路77が設けられている。
ノズル列毎に設けられた各共通流路75は、ノズルエリア(ノズル71が形成されているエリア)を避けた印字ヘッド50の端の領域(図4上で左側の領域)でまとめられて供給系接続口78に連通している。供給系接続口78は供給系管路(図4中不図示)に連結されており、各共通流路75は該供給系管路を介してインク供給源(図4中不図示のサブタンク又はインク供給タンク60)に連通する。なお、供給系管路には供給流路の圧力を調整する供給路ポンプ(図4中不図示)が設けられている。
同様に、ノズル列に対応した各循環流路76は、ノズルエリアを避けた印字ヘッド50の端の領域(図4上で右側の領域)でまとめられて循環系接続口79に連通している。循環系接続口79は循環系管路(図4中不図示)に連結されており、各循環流路76は循環系接続口79を介してインク供給源(図4中不図示のサブタンク又はインク供給タンク60)に連通する。循環系管路には循環流路の圧力を調整する循環路ポンプ(図4中不図示)が設けられており、圧力室から循環流路へ排出されたインクは循環系管路を介して供給側へと戻される。なお、印字ヘッド50へのインク供給系及び印字ヘッド50からのインク循環系の構成例について詳細は後述する(図9,図10)。
また、図4に示したように、ノズル列に対応した各空気流路77は、ノズルエリアを避けた印字ヘッド50の端の領域(図4上で右側の領域)でまとめられて空気穴80に連通している。空気穴80に接続される弁動作用ポンプ(図4中不図示)によって空気流路77は加圧又は減圧される。
図5に示したように、各圧力室70は、その平面形状が概略三角形状となっており、各頂点位置に対応してノズル流路81、個別供給路85及び個別循環路(排出流路)86が形成されている。図6及び図7に示したように、ノズル流路81はノズル71に連通し、圧力室70からノズル71へインクを導く管路である。なお、ノズル71は、液が吐出する最後の絞り部分である。
個別供給路85は共通流路75に連通し、共通流路75からインクを圧力室70へ導く管路である。個別循環路86は循環流路76に連通し、圧力室70からインクを循環流路76へ導く管路である。
また、図6に示したように、圧力室70の天面を構成している振動板90にはピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ92が接合されている。アクチュエータ92は個別電極93を備えており、該個別電極93に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ92を変形させ、振動板90を介して圧力室70内のインクに圧力変化を与えることによって、インクをノズル71から吐出させる。ノズル71からインクが吐出されると、共通流路75から個別供給路85を通って新しいインクが圧力室70に供給される。
図6において囲み円Aで示した部分の拡大図を図8に示す。図8に示したように、個別循環路86には、流路を開閉する弁94が設けられている。この弁94は、シリコンラバー等によるメンブレン(柔軟部材)95を空気圧で変形させる構成となっている。すなわち、個別循環路86を構成する第1支持基板97の一部に流路を遮る所要の形状を有した弁部材98が突設されており、この弁部材98と対向する流路面にメンブレン95が配置されている。メンブレン95は、空気流路77を画成する第2支持基板99に取り付けられており、空気流路77を減圧又は加圧することによって、メンブレン95を移動させて流路を開閉する。
空気流路77を減圧すると、図8の実線で示したようにメンブレン95が下がって流路が開く。その一方、空気流路77を大気開放(加圧)すると、大気圧によってメンブレン95は図8の二点鎖線で示した位置に移動して弁部材98に当接し、流路が閉じられる。
このような構成にすれば、空気流路77内のエアーの加圧/減圧手段を複数の圧力室70で共用するので、1つのポンプ(弁動作用ポンプ)で加圧又は減圧することにより、ヘッド内の全圧力室70の弁94を同時に(一斉に)制御できる。
かかる構造によれば、各圧力室70について個別に弁駆動用のアクチュエータ等を設ける態様と比較して、アクチュエータを大幅に削減することができる。
また、図8に例示した構造の弁94については、吐出動作時にメンブレン95を加圧しておくことが望ましい。仮に、吐出動作時にメンブレン95を加圧しておかないとすると、吐出動作時のアクチュエータ92の駆動によってメンブレン95が動いて弁94が開き、圧力が逃げてしまう。したがって、吐出動作時に空気流路77を加圧しておき、上記のような吐出動作時のメンブレン95の変動を抑制することにより、一層安定した吐出が可能となる。
また、弁94の動作はキャップ64の動作と連動して行う態様も可能である。図9及び図10にその例を示す。図9に示した例では、弁動作用ポンプ100に連通するチューブ102の端の空気穴接続部104がキャップ64の内部に配設された構造となっている。かかる構造において、非キャップ時にはメンブレン95を変形させる空気流路77を大気に開放させる。また、印字ヘッド50のノズル面106にキャップ64をすると、該ノズル面106に形成された空気穴80に空気穴接続部104が連結される。この状態で弁動作用ポンプ100を駆動することで印字ヘッド50内の空気流路77が加圧又は減圧され、図8で説明したとおりメンブレン95を変形させることができる。
図9において、符号200は供給系管路、202は供給路側圧力調整手段として機能するポンプ(供給路ポンプ)、210は循環系管路、212は循環路側圧力調整手段として機能するポンプ(循環路ポンプ)である。
供給路ポンプ202を加圧駆動することにより、インク供給タンク60から印字ヘッド50にインクが送られ、ヘッド内の共通流路75にインクが供給される。また、循環路ポンプ212を減圧駆動することにより、ヘッド内のインクは循環系管路210へと送り出され、インク循環タンク214へと送られる。
インク循環タンク214は、印字ヘッド50から循環回収されたインクを貯留するタンクであり、該インク循環タンク214は、ポンプ220を備えた送液用の流路222を介してインク供給タンク60と接続されている。
図示のとおり、送液用の流路222は、ポンプ220と、吸入側管路224、吐出側管路226、並びに制御弁228、230を含んで構成される。インク循環タンク214は、制御弁228を介して吸入側管路224に接続され、該吸入側管路224はポンプ220の吸入口に接続されている。また、インク供給タンク60は、制御弁230を介して吐出側管路226に接続され、該吐出側管路226はポンプ220の吐出口に接続されている。なお、制御弁228,230の開閉は、システムコントローラ(図9中不図示、図11中符号112として記載)によって制御される。図9に示した制御弁228,230を開けて、ポンプ220を駆動することにより、インク循環タンク214内のインクがインク供給タンク60へと送られ、再利用される。
図10に示した別の例では、弁動作用ポンプ100に連通するチューブ102の端の空気穴接続部104がキャップ64の外に設けられた構造を有し、空気穴接続部104とキャップ64とが不図示の支持部材を介して一体的に構成されている。図10において図9の例と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図10に示したように、印字ヘッド50のノズル面106にキャップ64をすると、該ノズル面106に形成された空気穴80に空気穴接続部104が連結される。この状態で弁動作用ポンプ100を駆動することで印字ヘッド50内の空気流路77が加圧又は減圧され、図8で説明したとおりメンブレン95を変形させることができる。
図9及び図10で説明したように、キャップ動作と連動して弁94の動作を行う構成とすることにより、吐出駆動時には印字ヘッド50からの余分な管(チューブ102等)がないため、ヘッドの構成が簡単になる。また、印字時(吐出駆動時)にヘッドと印字媒体とを近づけることができる。
なお、図9及び図10では、供給側を加圧する供給路ポンプ202と、循環側を減圧する循環路ポンプ212とを備えた構成を例示したが、本発明の実施に際しては、何れか一方のポンプを省略する構成も可能である。
〔制御系の説明〕
次に、インクジェット記録装置10の制御系について説明する。
図11はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース110、システムコントローラ112、画像メモリ114、ポンプ116、キャップ駆動部118、ブレード駆動部120、モータドライバ122、ヒータドライバ124、プリント制御部126、画像バッファメモリ128、ヘッドドライバ130等を備えている。
ポンプ116は、吸引ポンプ67の他、弁動作用ポンプ100、供給路ポンプ、循環路ポンプ等を含むブロックである。キャップ駆動部118はキャップ64を移動させる駆動手段である。ブレード駆動部120は、クリーニングブレード66を移動させる駆動手段である。
通信インターフェース110は、ホストコンピュータ140から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース110にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ140から送出された画像データは通信インターフェース110を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ114に記憶される。画像メモリ114は、通信インターフェース110を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ112を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ114は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ112は、通信インターフェース110、画像メモリ114、ポンプ116、キャップ駆動部118、ブレード駆動部120、モータドライバ122、ヒ
ータドライバ124等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ112は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ140との間の通信制御、画像メモリ114の読み書き制御等を行うとともに、ポンプ116、キャップ駆動部118、ブレード駆動部120、搬送系のモータ150及びヒータ152等を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ122は、システムコントローラ112からの指示にしたがってモータ150を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ124は、システムコントローラ112からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ152を駆動するドライバである。
プリント制御部126は、システムコントローラ112の制御に従い、画像メモリ114内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ130に供給する制御部である。
プリント制御部126において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ130を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部126には画像バッファメモリ128が備えられており、プリント制御部126における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ128に一時的に格納される。なお、図10において画像バッファメモリ128はプリント制御部126に付随する態様で示されているが、画像メモリ114と兼用することも可能である。また、プリント制御部126とシステムコントローラ112とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ130はプリント制御部126から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータ92を駆動する。ヘッドドライバ130にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部126に提供する。
プリント制御部126は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
次に、上記の如く構成されたインクジェット記録装置10の動作について説明する。
図12は、印字開始時のシーケンスを示すフローチャートである。同図に示したように、本インクジェット記録装置10に印字指示が入力されると(ステップS210)、システムコントローラ112は、弁動作用ポンプを加圧駆動してメンブレン95を加圧する(ステップS212)。次に、印字ヘッド50からキャップ64を離間させて(ステップS214)、ヘッドクリーニングを実施する(ステップS216)。
ヘッドクリーニング終了後、アクチュエータを駆動制御して印字を開始する(ステップS218)。印字動作中は、メンブレン95が加圧されており、アクチュエータ92による吐出圧力の損失が防止される。
図13は、印字終了時の気泡除去シーケンスを示すフローチャートである。同図に示したように、印字終了の指示が入力されると(ステップS310)、印字ヘッド50にキャップ64が装着される(ステップS312)。次いで、システムコントローラ112は、ヘッド内インクの循環の要否を判断する(ステップS314)。この判断処理は、所定の判断アルゴリズムに従い、印字枚数、各ノズルの稼働状況、休止時間、前回の循環動作からの経過時間、脱気量などから判断する。
ステップS314において、インク循環不要と判定した場合には、キャップした状態を保持して待機する(ステップS316)。そして、プリント指示の有無を判断し(ステップ330)、プリント指示がない場合は、ステップ314へ戻る。
ステップS314においてインク循環が必要であると判定した場合には、弁動作用ポンプを吸引駆動してメンブレン95を減圧する(ステップS320)。こうして、個別循環路86の流路を開き、供給路ポンプ及び循環路ポンプを動作させて圧力室70内の液体を循環させる(ステップS322)。このとき、供給流路側圧力Ps 、循環流路側圧力Pc 、大気圧Pa とすると、次式、
〔式1〕 Pa >Ps >Pc …(1)
を満たすように圧力制御される。
この時、供給路ポンプはOFF、循環路ポンプをONとすると上記式(1)を容易に満たし、ノズルからのインク漏れも防止できるので好ましい。
この圧力勾配によって圧力室70内のインクは循環流路76に排出され、新たなインクが共通流路75側から圧力室70に充填される。このインク循環により、圧力室70内の気泡はインクとともに排除される。
循環路から排除された気泡が混入したインクは、サブタンクに送られ脱気装置で脱気された後、再び供給路から圧力室へ気泡が除去されたインクが供給される。
ステップS322の循環動作を一定時間継続し(ステップS324)、ステップS330へ進む。
このような制御によって、ノズル71からの吸引動作を行うことなく、圧力室70内の気泡を除去することが可能である。
なお、図13のフローチャートでは、印字ヘッド50にキャップ64を装着した状態で循環動作を行う例を示したが、〔式1〕の条件によれば、キャップ64をせずに、気泡排除が可能である。
上記実施形態で説明した印字ヘッド50においては、図14の要部拡大図に示したように、共通流路75と循環流路76がノズル列ごとにそれぞれ設けられていたが、本発明の実施に際しては、図15に示すように、上下の隣り合う圧力室(異なるノズル列の圧力室)70で同じ流路を共用する形態も可能である。かかる態様によれば、圧力室70をより一層高密度に配置することが可能である。
また、上記循環動作時に吐出用のアクチュエータ92を吐出力に満たない範囲で微振動させる態様も好ましい。かかる微振動によって圧力室70の流路壁に付着している気泡の移動を促すことができる。
更に、上記実施形態では、個別循環路86側に弁94を設けたが、個別供給路85側にも同様に弁を設け、吐出時や予備吐出のときに供給路側及び循環路側の弁を閉じる態様も好ましい。かかる態様により、吐出安定性の一層の向上を図ることができるとともに、予備吐出力もアップする。
〔圧力室の形状の具体例〕
図16乃至図19に圧力室70の形状例を示す。
図16(a)は圧力室の形状の一例を示する平面図、(b)は側面図である。これらの図面に示したように、圧力室70は、ノズルの並び面(ノズル面)と平行な平面における形状が略三角形状を有し、圧力室70の流出入路181、182、183が三角形の頂点に設けられている。同図における流出入路181、182、183は、図4乃至図8で説明したノズル流路81、個別供給路85、個別循環路86の何れかに対応するものである。図16(a)に示したように、三角形の頂点は円弧状に面取りしてある。好ましくは、面取りの半径Rは、流出入路181〜183の半径rとの関係で次式(2)
〔式2〕 r/2≦R≦2×r …(2)
である。
また、圧力室70に連通する3本の流出入路181、182、183の流路口の配置が対称的な位置関係の状態になっている態様が好ましい。すなわち、ノズル面と平行な平面における圧力室70の重心を中心に120×n度回転させたときに、元の圧力室70と回転した圧力室70が一致するような形状(120度回転に対して対称構造)とする態様が好ましい(ただし、nは整数)。
また、圧力室70における供給流路口(個別供給路85が接続される連通口)に対してノズル流路口(ノズル流路81が接続される連通口)と循環流路口(個別循環路86が接続される連通口)とが対称位置に配置される構成も好ましい。かかる形態によれば、吐出時及び循環時ともに同じ流れになり、どちらか一方の流れについて淀み点が発生しやすいということがない。
図16(a)に示した例では、略三角形状の辺の部分が外側に向かって凸状の曲線となっているが、圧力室の平面形状はこの例に限定されない。
例えば、図17(a)に示したように、略三角形状の辺の部分を直線で構成した形態も可能であるし、図17(b)に示したように、略三角形状の辺の部分を内側に向かって湾曲させた曲線で構成した形態も可能である。
図18(a)及び(b)に示した例では、圧力室の平面形状が略二等辺三角形状となっており、かつ頂角が60度よりも大きい角度を有している。この場合、ノズル流路81が頂角の位置に設けられ、個別供給路85と個別循環路86はそれぞれ底角の位置の設けられる。当該略二等辺三角形の頂点が円弧状に面取りされている点は図16の例と同様である。
図19に示した例では、圧力室の平面形状が略二等辺三角形状となっており、かつ頂角が60度未満の角度を有している。かかる形状においてノズル流路81は底角の位置に設けられている。当該略二等辺三角形の頂点が円弧状に面取りされている点は図16の例と同様である。
上述の説明では、いわゆるピエゾ方式のインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲は上述したインクジェット記録装置に限定されず、処理液その他の液体を媒体に塗布する塗布装置など各種の液体吐出装置について本発明の液滴吐出ヘッドを適用することができる。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図 図1に示したインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図 本実施形態に係るインクジェット記録装置におけるインク供給系の構成を示した概要図 印字ヘッドの構造例を示す平面透視図 図4の要部拡大図 図5中の6−6線に沿う断面図 図5中の7−7線に沿う断面図 図6中の囲み円Aで示した部分に設けた弁の構造を示す断面図 キャップ動作と連動して弁の動作を行う例を示した概略側面図 キャップ動作と連動して弁の動作を行う他の例を示した概略側面図 本例のインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図 印字開始時のシーケンスを示すフローチャート 印字終了時の気泡除去シーケンスを示すフローチャート 圧力室と流路の配置関係を示す図4の要部拡大図 圧力室と流路の他の配置関係を例示する図 圧力室の形状例を示す図 圧力室の他の形状例を示す平面図 圧力室の他の形状例を示す平面図 圧力室の他の形状例を示す平面図
符号の説明
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12K,12C,12M,12Y…印字ヘッド、14…インク貯蔵/装填部、16…記録紙、50…印字ヘッド、60…インク供給タンク、64…キャップ、70…圧力室、71…ノズル、73…吐出素子、75…共通流路、76…循環流路、77…空気流路、81…ノズル流路、85…個別供給路、86…個別循環路、90…振動板、92…アクチュエータ、94…弁、95…メンブレン、100…弁動作用ポンプ、112…システムコントローラ、200…供給系管路、202…供給路ポンプ、210…循環系管路、212…循環路ポンプ、214…インク循環タンク、220…ポンプ、222…送液用の流路、224…吸入側管路、226…吐出側管路、228,230…制御弁

Claims (8)

  1. 液滴を吐出するノズルと、前記ノズルに連通し該ノズルから吐出させる液体が充填される圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変化を生じさせて前記ノズルから液滴を吐出させる圧力発生手段と、を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記圧力室は、その平面形状が略三角形状に形成され、前記圧力室から前記ノズルに液体を導く第1の液管路と、前記圧力室に液体を流入させる第2の液管路と、前記圧力室内の液体を該圧力室の外へ排出させる第3の液管路とがそれぞれ前記略三角形状の異なる頂点近傍位置に連通された構造を有し、前記第2の液管路及び第3の液管路のうち少なくとも一方の液管路に当該流路を開閉する開閉手段を備えていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記開閉手段は、前記第3の液管路に設けられていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記液滴吐出ヘッドには、前記圧力室が複数個設けられ、各圧力室の前記第2の液管路に連通する共通流路と、各圧力室の前記第3の液管路に連通する循環流路とを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記各圧力室に対応して設けられている複数の前記開閉手段を同時に開閉制御する開閉制御手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の液滴吐出ヘッド。
  5. 前記第2の液管路側を加圧する供給路側圧力調整手段と、前記第3の液管路側を減圧する循環路側圧力調整手段の、少なくとも一方を有し、前記供給路側圧力調整手段による加圧及び前記循環路側圧力調整手段による減圧により前記第2の液管路から前記圧力室へ液体を流入させるとともに前記圧力室から前記第3の液管路へ液体を流出させる液体の流れ発生させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の液滴吐出ヘッド。
  6. 前記第2の液管路側の圧力Ps 、前記第3の液管路側の圧力Pc 、大気圧Pa とすると、前記圧力室内の液体を前記第3の液管路へ流出させる場合に、Pa >Ps >Pc を満たすように設定されることを特徴とする請求項5記載の液滴吐出ヘッド。
  7. 請求項1乃至6の何れか1項記載の液滴吐出ヘッドをインクジェット記録ヘッドとして用い、該インクジェット記録ヘッドに対して被記録媒体を相対移動させながら、前記ノズルからインク滴を吐出することにより前記被記録媒体上に画像を記録することを特徴とするインクジェット記録装置。
  8. 前記画像の記録中には前記開閉手段を閉じ、非記録時に前記開閉手段を開けて前記圧力室内の液体を前記第3の液管路へ流出させるように制御する循環制御手段を備えていることを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録装置。
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