以下に、本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
図1は、第1実施形態に係るワイプユニットを適用したインクジェットプリンタの概略構成を示した斜視図であり、図2は、インクジェットプリンタのインク供給系及びヘッドメンテナンス系の模式図である。
図1に示す通り、インクジェットプリンタ1には、記録媒体Pを下方から支持するプラテン2が水平となるように配置されている。このプラテン2の上方には、水平に延在するガイドレール(図示せず)に沿って、記録媒体Pの搬送方向である副走査方向Aに直交する主走査方向Bに複数のヘッド4を走査させるキャリッジ5が設けられている。
このキャリッジ5は、図示しない駆動プーリと遊転プーリとの間に掛け渡されたタイミングベルトに接続されている。そして、駆動プーリは、走査用モータの回転軸に接合されている。このため、キャリッジ5は、走査用モータが駆動すると主走査方向Bに移動する。
複数のヘッド4は、インクジェットプリンタ1で使用される各色毎のインクをそれぞれ記録媒体Pに向けて吐出するものであり、各ヘッド4の内部には、インクを吐出する複数のノズル42(図2参照)が副走査方向Aに沿って列状に設けられており、ヘッド4の記録媒体Pと対向する面は、これらノズル42が形成されたノズル面41(図2参照)となっている。ノズル面41は、インクが付着し難いように、FEP(フッ化エチレンプロピレン樹詣)等のフッ素加工処理を施す等、撥インク処理が施されていることが好ましい。
これらのヘッド4には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクを貯留する複数のインクタンク6が、インクを導くインク流路7を介して接続されている。インクの詳細は後述するが、本実施形態では、水性顔料インクを用いている。
更に、図示はしないが、これらのヘッド4には、例えば、それぞれのヘッド4に対応したインク吐出動作をノズルから行わせるための圧電素子等の吐出エネルギー発生手段及びその駆動回路等が一体的に組み込まれている。
インクジェットプリンタのインク供給系及びヘッドメンテナンス系の詳細を図2を用いて説明する。なお、図1に示すインク供給系及びヘッドメンテナンス系には、ヘッド4の個数分である4組のインク供給系、メンテナンス系が設けられているが、各組のインク供給系、メンテナンス系は同一構成であるため、そのうちの1組について説明する。
インク流路7の途中には、インクを一旦貯留するサブタンク8が設けられている。このサブタンク8には、サブタンク8が満タンであるか否かを検出する満タン検出センサが設けられている。そして、サブタンク8の上流側には、サブタンク8内に流入するインクを調整するためのインク供給弁V4が設けられている。一方、サブタンク8の下流側には、インクがヘッド4に流入する以前に、インクを一旦貯留することでインクの圧力変動を吸収するダンパー9が設けられている。このダンパー9はキャリッジ5に搭載されていて、キャリッジ5の走査等が基で吐出時のインクに生じる圧力変動を吸収して、インクの吐出が不安定になることを防止するようになっている。
インク供給弁V4は、開閉状態が電気的に制御可能な弁、例えば、電磁弁によって構成される。
そして、プラテン2の側方には、ヘッド4のメンテナンスを行うワイプユニット13と吸引ユニット14が設けられている。このワイプユニット13と吸引ユニット14は、各々独立して上下方向及び水平方向に移動することができるようになっている。
また、ワイプユニット13には、詳細は後述するが、上方に向かって凸状に延出するインク吸収部材50(以下、ワイプ布とも称する。)とこれを支持するシート状可撓性部材51が箱形の筐体52内に設けられていて、ワイプユニット13自体を図示しないモーター等の駆動源により上方向に移動させた後、ヘッド4をB方向に移動させれば、このインク吸収部材50とヘッド4のノズル面41とが接触した状態で、インク吸収部材50がヘッド4のノズル面41を摺擦し、ノズル面41全体に付着したインクやクリーニング液等を除去するようになっている。そして、ワイピング動作が終了したならば、ワイプユニット13を下降させ、インク吸収部材50とノズル面41との接触状態を解除する。
ワイプユニット13を上下方向に駆動する駆動源は、本発明の当接量変更手段として機能する。ワイプユニット13のインク吸収部材50の凸部の頂点(ノズル面41に最近接する部分)の高さをノズル面41の高さに設定した位置を当接量ゼロとし、この高さを基準として頂点の高さをL(mm)上昇させることで当接量L(mm)に設定できる。Lの数値を大きくすることで当接量を大きくできる。
また、ヘッド4のノズル内のインクを吸引する吸引ユニット14には、図2に示すように、吸引ユニット14の昇降に応じて、ヘッド4のノズル面41に接離されるキャップ15が設けられている。このキャップ15は、ノズル内のインクを吸引する際には吸引ユニット14の上昇に伴ってノズル面41に密着するまで近接されて、ノズル面41に備わる全てのノズルを覆い、吸引が完了すると吸引ユニット14の下降に伴ってノズル面41から離間されるようになっている。そして、キャップ15には、ノズル面41に密着した際に、キャップ15の凹部とノズル面41との間に形成される空間を吸引するためのポンプP1が、廃液流路17を介して接続されている。また、廃液流路17の最下流には、排出された廃液を貯留する廃液タンク19が設けられている。廃液流路17は、例えば、樹脂製チューブによって形成されている。ポンプP1は廃液流路17を構成する樹脂製チューブをローラーで挟み、このローラーをチューブに沿って移動させることでチューブ内の空気等をチューブの端部から排気する所謂チューブポンプが好適に用いられる。
さらに、プラテン2の側方には、クリーニング液Cを貯留可能なクリーニング液タンク3と、このクリーニング液タンク3とキャップ15の凹部との間を連通する送液路11と、この送液路11の途中に配設されたクリーニング液供給弁V1と、送液路11におけるキャップ15とクリーニング液供給弁V1との間に配設されキャップ15の凹部内を大気を連通させる空気リーク弁V2とが設けられている。
また、クリーニング液タンク3とワイプユニット13の間には、インク吸収部材50にクリーニング液を供給する送液路11と、この送液路11の途中に配設されたクリーニング液供給弁V3が設けられている。
クリーニング液供給弁V1、V3及び空気リーク弁V2は、開閉状態が電気的に制御可能なバルブ、例えば、電磁バルブによって構成される。
送液路11は、クリーニング液供給弁の作動によってクリーニング液が流れる通路であり、例えば、樹脂製チューブによって構成されている。
クリーニング液タンク3は、ワイプユニット13の位置(インク吸収部材50の位置)及びキャップ15の位置よりも高い位置に配設されているため、水頭差により容易にインク吸収部材50及びキャップ15の凹部にクリーニング液を供給することができる。
クリーニング液供給弁は送液路11の連通状態を制御する。即ち、クリーニング液供給弁の開放状態では、クリーニング液タンク3内とワイプユニット13のインク吸収部材50やキャップ15の凹部とは送液路11を通じて連通する。従って、クリーニング液供給弁を適宜開放させると、クリーニング液はインク吸収部材50や凹部内に供給される。一方、クリーニング液供給弁の閉状態では、送液路11はクリーニング液供給弁の位置で遮断される。このため、クリーニング液タンク3内とインク吸収部材50や凹部との間も遮断される。
本実施形態では、このクリーニング液タンク3と送液路11とクリーニング液供給弁V3が、本発明のクリーニング液供給手段として機能する。
具体的には、図3に示すように、送液路11のインク吸収部材50側の先端には、クリーニング液噴射口53が設けられており、クリーニング液噴射口53近傍の送液路11は、図示しない駆動源により矢印方向(副走査方向A)に往復移動可能に構成される。
インク吸収部材50の上方から退避した領域を退避領域とされ、クリーニング液をインク吸収部材50に供給しないときは、送液路11が退避領域に位置している。
クリーニング液を供給するときは、送液路11が、退避領域から、インク吸収部材50の上方の一端部まで移動した後、クリーニング液供給弁V3を開放にしながら、他端部まで移動することで、ノズル面41に当接するインク吸収部材50の表面に副走査方向A全体に亘って、クリーニング液噴射口53から滴下したクリーニング液を供給する。
クリーニング液をインク吸収部材50に供給する動作が終了すると、送液路11をこの退避領域まで移動させることにより、キャリッジ5を移動させてきた際にヘッド4の先端が送液路11に当たらないようになっている。
本実施形態では、このクリーニング液タンク3に貯留されるクリーニング液として、塩基性化合物を含有するクリーニング液を用いている。クリーニング液タンク3に貯留されるクリーニング液は、クリーニング作用を有する液体であれば特に限定されないが、塩基性化合物を含有するクリーニング液が好ましく用いられる。塩基性化合物を含有するクリーニング液は、塩基性化合物を含有しないクリーニング液に比べて増粘,固着したインクに対するクリーニング作用を強くすることができる。
ワイプユニット13について図1及び図4〜図6を用いてさらに詳細に説明する。
前述のように、本実施形態においてワイプユニット13は、箱型の筐体52を有しており、筐体52の上面中央には、開口部が形成されている。
筐体52の内部であって主走査方向Bの両端には、インク吸収部材50を送り出す送り出し軸54及びインク吸収部材50を巻き取る巻き取り軸55がそれぞれ配設されている。巻き取り軸55の下方には巻き取り軸55を回転駆動させる駆動源としてのモータ(図示せず)が設けられている。
送り出し軸54には、長尺なシート状のインク吸収部材50がロール状に巻回されている。インク吸収部材50は、一定の張力を保った状態で送り出し軸54と巻き取り軸55との間に張設されるとともに一部が開口部から露出するようになっている。図1に示すように、開口部から露出したインク吸収部材50は、ワイピング動作時にヘッド4のノズル面41と対向するようになっている。インク吸収部材50は、巻き取り軸55が回転駆動するに伴って送り出し軸54から送り出され、ノズル面41に接する側とは反対の側からインク吸収部材50を支持するシート状可撓性部材51に案内されて巻き取り軸55に巻き取られるようになっている。
インク吸収部材50は、ワイピング動作を行うことによりインクが付着すると、適宜巻き取り軸55に巻き取られて、開口部から未使用部分が露出するようになっている。インク吸収部材50を巻き取るタイミングは、1つのヘッド4のワイピング動作を行うごとにインク吸収部材50を巻き取り軸55に巻き取るようにしてもよいし、複数のヘッド4のワイピング動作を行うごと、又はすべてのヘッド4についてワイピング動作を終了したときにインク吸収部材50の巻き取りを行うようにしてもよい。このように、インク吸収部材50を巻き取る回数を減らすことにより、インク吸収部材50の消費量を抑えることができる。
また、インク吸収部材50は、筐体52内部から取り外し可能となっており、インク吸収部材50をすべて使い切ったとき(未使用部分がなくなったとき)等には、筐体52内部から取り外して新たなインク吸収部材50に交換可能となっている。
インク吸収部材50は、例えば布を用いることが好ましい。布は、その表面に接触するものを吸収しやすく、ヘッド4のノズル面41に付着したインクを吸収除去する作用を強くすることができる。
なお、インク吸収部材50は、少なくともインクを吸収する部材であればよく、その材料はここに例示したものに限定されない。
インク吸収部材50の大きさは特に限定されないが、ノズル面41の拭き取り等のメンテナンス動作をむらなく行うために、少なくともメンテナンス動作の対象となるノズル面41の全体を覆うことが可能な大きさ、すなわち、本実施形態においてはノズル面41の幅寸法(副走査方向Aの長さ)よりも大きな幅寸法となるように形成されている。
筐体52の内部であって、送り出し軸54と巻き取り軸55との間には、送り出し軸54と巻き取り軸55との間に張設されているインク吸収部材50を支持するシート状可撓性部材51がインク吸収部材50の下方においてノズル面41に対向するように位置されている。
シート状可撓性部材51の両端部は、シート状可撓性部材51をノズル面41側に凸となるように撓ませた状態で支持する略円筒状の第1支持部材56及び第2支持部材57に取り付けられている。
第1支持部材56及び第2支持部材57は、シート状可撓性部材の凸部の延在方向(副走査方向A)に直交する方向の両端部に配置され、図示しないモータ等の駆動源により、凸部の延在方向(副走査方向A)に沿った軸を中心に回転可能な状態で筐体52に取り付けられている。
第1支持部材56及び第2支持部材57は、その外周面の一部の平坦な領域にシート状可撓性部材51の端部を固定する固定部(支持位置)を備えている。固定部には固定用孔が形成されており、図5に示すように、この固定用孔にねじ58,59を挿入してシート状可撓性部材51の端部をねじ止めすることによってシート状可撓性部材51の両端部が第1支持部材56及び第2支持部材57の固定部上に固定されるようになっている。
なお、支持部材の形状、配置、数は特に限定されない。また、シート状可撓性部材51を支持部材に固定する構成等は、ここに例示したものに限定されず、他の構成を適用することも可能である。
シート状可撓性部材51は、ワイピング動作時にノズル面41に接する側とは反対の側からインク吸収部材50を押圧してノズル面41に接触させるものであり、ワイピング動作の対象となる領域であるヘッド4のノズル面41の幅寸法(副走査方向Aの寸法)よりも大きい幅寸法に形成されている。
シート状可撓性部材51のインク吸収部材50との接触面は、曲面に形成されている。シート状可撓性部材51の形状等はノズル面側に凸であれば特に限定されないが、インク吸収部材50との接触面上にほぼ曲面になるように固定されていることが好ましい。
シート状可撓性部材51は、可撓性を有するゴムシート、金属シート又は樹脂シートによって形成することができる。
図5は、厚みが0.075mmのポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されたシート状可撓性部材51を固定角度θを変更して固定した場合のシート状可撓性部材51の断面形状(凸部の延在方向に直交する断面の形状)を示している。図5に示すように第1支持部材56及び第2支持部材57を回転させることでシート状可撓性部材51の断面形状を変化させることができる。尚、ここに示す押圧機構は、押圧力を2段階に調節できる。
具体的には、インク吸収部材50をノズル面41に押圧する押圧力を低く設定する場合は、図5(a)に示すように第1支持部材56及び第2支持部材57に固定されている両端部のシート状可撓性部材51の角度がノズル面に対して直交する方向に配置された状態を第1支持部材56及び第2支持部材57の回転位置(第1回転位置)とする。
一方、押圧力を高く設定する場合は、第1支持部材56及び第2支持部材57を図5(a)の状態から矢印方向(第1支持部材56を反時計方向及び第2支持部材57を時計方向)に角度θ(本実施形態では約10度)だけ回転した回転位置(第2回転位置)に切り換える。これにより、両端部のシート状可撓性部材51が内側に傾くように配置することでシート状可撓性部材51にコシが出来たようになり剛性が高まることでノズル面方向の押圧力を高くすることが可能となる。
角度θは、換言すれば、ノズル面41に対して直交する方向とシート状可撓性部材51の端部とがなす角度であり、第1回転位置においてはθ=0、第2回転位置においては0<θ<90度の範囲内に設定することが好ましい。
図6(a)は、図5(a)の低圧設定時のワイピング時の様子を示し、図6(b)は、図5(b)の高圧設定時のワイピング時の様子を示している。
なお、角度設定は一例であり、シート状可撓性部材51の断面形状の変化により押圧力が変化するように軸の回転量を調整すればよい。また、支持部材に設定される回転位置の数を増やすことで、押圧力を2段階に限らず、3段階以上に変更することもできる。
図7に、シート状可撓性部材51の固定角度θを変化させた場合のワイプユニット13のノズル面41に対する当接量と押圧力の関係の一例を示す。図中の▲はθ=0度であり、図6(a)の押圧力が低い状態に、図中の■はθ=10度であり、図6(b)の押圧力が高い状態に対応している。
実験では、厚みが0.075mmのPETで形成されたシート状可撓性部材51を、各固定角度で固定し、それぞれワイプユニット13に組み込んで、ヘッド4のノズル面41に当接量(mm)を0〜2mmまで0.5mm間隔で変化させながら当接させて、押圧力(gf)を測定した。
なお、当接量とは、ノズル面41がシート状可撓性部材51を押し下げる量であり、前述のようにワイプユニット13の高さを調節することにより変化させることができる。押圧力とはノズル面41全体がシート状可撓性部材51から受ける力である。
図7に示すように、実験の結果、固定角度θが0度及び10度の何れの場合も、当接量の増加と共に押圧力が高くなる傾向が見られた。また、固定角度が0度の場合は、押圧力の増加率はそれほど大きくなく、当接量が2mmでも押圧力は約40gfであった。
これに対して、固定角度θが10度の場合は、押圧力の増加率が大きく、当接量を同じにして比較した場合においても固定角度θが0度の場合よりも押圧力が大きくなっており、当接量が2mmでは押圧力は約70gfであった。
このように、支持部材の回転によりシート状可撓性部材51の断面形状を変化させてワイプユニットのノズル面への押圧力を多段階に変更することが可能になる。
例えば、プリント中のワイピング等、通常の使用状態でノズル面に弱く付着したインクをワイピングするときは、押圧力を低く設定することにより、ノズル面への不要なダメージを防止できる。
一方、例えば、ノズル面にインクが多量に付着した場合あるいはノズル面に付着したインクが乾燥により増粘あるいは固着した場合等では、押圧力を低く設定したワイピングでは十分にクリーニングすることができないが、押圧力を高く設定することにより、十分なクリーニングを行うことが可能になる。
また、押圧力を低く設定する第1回転位置においては、シート状可撓性部材の両端部がノズル面41に直交する方向に配置され、押圧力を高く設定する第2回転位置においては、シート状可撓性部材の両端部がノズル面41に直交する方向に対して内側に傾くように配置されることで、より適度な押圧力の差を付与することができ好ましい。
また、このような支持部材の回転によりノズル面への押圧力を多段階に変更する構成に加えて、当接量を変化させるようにしてもよい。支持部材の回転位置を所定位置に設定した状態で、当接量を変更することにより押圧力を変更できるので、押圧力の可変範囲をさらに広げることができ好ましい。
また、以上の実施形態では、支持部材は回転自在に構成され、回転により支持位置を移動させてシート状可撓性部材の形状を変化させる構成としたが、支持部材は、シート状可撓性部材をノズル面側に凸となるように撓ませた状態で支持するとともに、シート状可撓性部材の形状が可変となるように支持位置を移動可能に構成されていればよい。
例えば、図5において、支持部材56,57を、互いに近接、離間する方向(主走査方向B)に移動自在に構成してもよい。例えば、図5(a)の状態から支持部材56,57を、互いに近接する方向(主走査方向B)に移動させることで支持位置を移動させればよい。これにより、支持位置の両端部のシート状可撓性部材51が近接するように配置することでシート状可撓性部材51にコシが出来たようになり剛性が高まることでノズル面方向の押圧力を高くすることが可能となる。
また、インクジェットプリンタ1には、各駆動部を制御する制御部(図示せず)及び制御部と接続され各駆動部に給電を行う電源(図示せず)が設けられている。制御部には、記録媒体Pを副走査方向Aに沿って搬送させるための搬送部と、キャリッジ5を走査させる走査用モータと、ワイプユニット13を水平方向及び上下方向に移動させるワイプユニット用モータと、ワイプユニット13の支持部材56,57を回転させる支持部材用モータと、吸引ユニット14を水平方向及び上下方向に移動させる吸引ユニット用モータと、プリント開始指示などの各種指示が入力される入力部と、インク供給弁V4と、空気リーク弁V2と、吸引ポンプP1と、記録ヘッド4と、クリーニング液供給弁V1,V3と、記憶部が電気的に接続されている。なお、制御部には、これら以外にもインクジェットプリンタ1の各駆動部などが接続されている。そして、制御部は、記憶部中に書き込まれている制御プログラムや制御データに従い各種機器を制御するようになっている。また、制御部は、計時タイマを備えており、プリンタの非使用期間やメンテナンスプロセスでの各工程の所定時間等を計時できるようになっている。
次に、制御部の制御下にて実行されるインクジェットプリンタのメンテナンス動作について説明する。
なお、以下に示す時間や回数等のパラメーターは、用いるインクやヘッドの種類等に応じた最適値が予め実験等により設定され制御部の記憶部に記憶されているが、設定を変更することも可能である。
(メンテナンス動作)
以下、メンテナンス全体の動作手順を図10に従って説明する。
開始時(通常時)は、インク供給弁V4、クリーニング液供給弁V1、V3と空気リーク弁V2はすべて閉状態である。
ステップS1では、プリンタの電源がONされる。電源からインクジェットプリンタの各部に対して給電が行われる。
ステップS2では、クリーニングを実施するかを判断する。実施する(ステップS2:YES)場合はステップS3へ進み、実施しない(ステップS2:NO)場合は、ステップS4へ進む。
ステップS3では、通常クリーニングのサブルーチンが実行される。通常クリーニングのサブルーチンの具体的な内容は図12を用いて後に詳述する。
ステップS4では、ノズル欠(不吐出)検出チャートを印刷し、ノズル欠がないかを判断する。ノズル欠がない(ステップS4:YES)場合はステップS6へ進み、ノズル欠がある(ステップS4:NO)場合は、ステップS5へ進む。
ステップS5では、強力クリーニングのサブルーチンが実行される。強力クリーニングのサブルーチンの具体的な内容は図13を用いて後に詳述する。
ステップS6では、そのまま待機する。
ステップS7では、ユーザーからのメンテナンス実施の命令があるかを判断する。命令がある(ステップS7:YES)場合はステップS8へ進み、命令がない(ステップS7:NO)場合は、ステップS9へ進む。
ステップS8では、ユーザーからのメンテナンス実施の命令に従って、ワイプクリーニング、通常クリーニング、強力クリーニング、固化インク除去クリーニング、ノズル欠チャート印刷等の各種のメンテナンスが実行される。なお、固化インク除去クリーニングの具体的な内容は図14を用いて後に詳述する。
ステップS9では、プリントジョブを受信する。
ステップS10では、プリント前メンテナンスのサブルーチンが実行される。プリント前メンテナンスのサブルーチンの具体的な内容は図15を用いて後に詳述する。
ステップS11では、プリントを開始する。
制御部は、プリント開始指示の入力に伴って、搬送部を制御して、記録媒体Pを副走査方向Aに間欠に搬送させる。搬送中に記録媒体Pが停止されると、制御部は、走査用モータを制御して、キャリッジ5を主走査方向Bに走査させる。この走査に対応して、制御部は画像データに基づいてヘッド4を制御し、記録媒体P上にインクを吐出して画像をプリントする。
ステップS12では、キャリッジのスキャン(走査)回数が所定回数N2に達したかを判断する。所定回数N2に達した(ステップS12:YES)場合はステップS13へ進み、所定回数N2に達していない(ステップS12:NO)場合は、そのままプリントを継続する。なお所定回数N2は、プリント中にワイプクリーニングを行うまでスキャン回数である。
ステップS13では、ワイプクリーニングのサブルーチンが実行される。
ここでは、ヘッド4のノズル42から記録媒体Pにインクを吐出するプリント動作中に所定量のプリント毎に吸引を行わずにワイプユニット13によるワイピングを実行させる第2クリーニングモードを実行する。所定量は、本実施形態では、キャリッジのスキャン回数を採用しているが、これに限らず、プリント時間などを適用してもよく、一定量としてもよいし可変量としてもよい。ワイプクリーニングのサブルーチンの具体的な内容は図11を用いて後に詳述する。
ステップS14では、プリントが終了したかを判断する。終了した(ステップS14:YES)場合はステップS15へ進み、終了していない(ステップS14:NO)場合は、ステップS12へ進む。
ステップS15では、プリントが終了する。
ステップS16では、ワイプクリーニングのサブルーチンが実行される。
ステップS17では、ヘッドをキャッピングするとともに、待機時揺らしを中止する。
待機時揺らしとは、ヘッド4に設けられた圧電素子等の吐出エネルギー発生手段を駆動してノズルからインク滴が吐出しない程度にノズル内のインクメニスカスを揺らすことを指す。
ステップS18では、作業が終了したかを判断する。終了した(ステップS18:YES)場合はステップS19へ進み、終了していない(ステップS18:NO)場合は、ステップS6へ進む。
ステップS19では、電源OFF時メンテナンスのサブルーチンが実行される。電源OFF時メンテナンスのサブルーチンの具体的な内容は図16を用いて後に詳述する。
ステップS20では、プリンタ停止中メンテナンスのサブルーチンが実行される。プリンタ停止中メンテナンスのサブルーチンの具体的な内容は図17を用いて後に詳述する。
以上に説明した一連の動作が終了すると、メンテナンス全体の動作のメインルーチンの処理が終了する。
<ワイプクリーニングの動作>
次に、上述したワイプクリーニングのサブルーチンを図11及び図8、図9の模式図を用いて説明する。
ワイプクリーニングでは、クリーニング液Cを供給したワイプユニット13でヘッド4のノズル面41をワイピングし、その後にヘッドの吐出エネルギー発生手段を駆動してフラッシングを行い、ノズル内に侵入したクリーニング液をインクと共に液滴Dとして排出する(図8参照)。
ワイプクリーニングは、吸引後にワイプユニット13によるワイピングを実行させる第1クリーニングモードと、プリント中に所定量のプリント毎に吸引を行わずにワイプユニット13によるワイピングを実行させる第2クリーニングモードとを有している。また、第1クリーニングモードと第2クリーニングモードとでワイピング条件を変更してワイピングを行う。
ステップS101では、クリーニング液噴射口53をインク吸収部材50(ワイプ布)の上方に移動させ、クリーニング液供給弁V3を開放してインク吸収部材50へのクリーニング液Cの供給を開始する。
ステップS102では、所定時間T1を計時し、T1に達したらステップS103に進む。所定時間T1は、インク吸収部材50へのクリーニング液供給時間である。
ステップS103では、クリーニング液供給弁V3を閉鎖しクリーニング液噴射口53をインク吸収部材50の上方から退避させる。
ステップS104では、ヘッド4をインク吸収部材50の近傍に移動させる。
ステップS105では、待機時揺らしを行っているか否かを判断し、待機時揺らしを行っている場合はこれを中止する。
ステップS106では、吸引メンテナンス後のワイピングであるかを判断する。吸引メンテナンス後である(ステップS106:YES)場合はステップS107へ進み、吸引メンテナンス後でなければ(ステップS106:NO)場合は、ステップS115へ進む。
ステップS107では、ワイプユニット13の押圧条件を設定する。吸引メンテナンスによりノズル面に多くのインク滴が付着していることが予想されるため、押圧力Fbとして押圧力が高い条件に設定する(図9(b)参照)。具体的には、例えば、ワイプユニット13の支持部材を図5(b)に示すような回転位置に設定する。
図19には、インクジェットプリンタ1において、ワイプユニット13の押圧力に対する拭取性能の測定結果の一例を示す概略図である。
なお、図19では、拭取性能は、ノズル面41を拭取後のノズル面41の残留インクの目視評価から判定している。即ち、拭取後のノズル面41の残留インクが少ないほど拭取性能は良くなることになる。
図19より、押圧力が増加することにより拭取性能が向上することが判る。
したがって、予め実験等により押圧力に対するこのような拭取性能を測定することにより、必要な押圧力の設定値を設定する際の目安とすることができる。
ステップS108では、ワイプユニット13を上昇させる。
ステップS109では、制御部は、走査用モータを制御して、キャリッジ5を主走査方向Bに走査させて、ヘッド4をノズル列と垂直な方向に移動させ、クリーニング液が供給されたインク吸収部材50によりノズル面42を拭き取る。前述のように吸引メンテナンスによりノズル面に多くのインク滴が付着していることが予想されるため、移動速度Vb(ヘッド4とワイプユニット13の相対移動速度)として移動速度が遅い条件に設定する(図9(b)参照)。
図20には、インクジェットプリンタ1において、ワイプユニット13の拭取速度(ヘッド4とワイプユニット13の相対移動速度)に対する拭取性能の測定結果の一例を示す概略図である。
なお、拭取性能の評価方法は前述の図19と同様である。
図20より、拭取速度が遅いほど拭取性能が向上することが判る。
したがって、予め実験等により拭取速度に対するこのような拭取性能を測定することにより、必要な拭取速度の設定値を設定する際の目安とすることができる。
ステップS110では、ワイプユニット13を下降させる。
ステップS111では、フラッシングを開始し、ノズル内のクリーニング液を排出させる。
ステップS112では、所定時間Tbを計時し、Tbに達したらステップS113に進む。所定時間Tbは、吸引メンテナンス後のワイプにおけるフラッシング時間であり、長い条件に設定される(図9(b)参照)。
ステップS113では、フラッシングを停止する。
ステップS114では、待機時揺らしを開始する。
ステップS115では、ワイプユニット13の押圧条件を設定する。例えばプリント中のワイプクリーニングのように吸引メンテナンスを行っていないワイプ条件なので、ノズル面へのインク滴付着は少ないことが予想されるため、押圧力Faとして押圧力が低い条件(Fa<Fb)に設定する(図9(a)参照)。具体的には、例えば、ワイプユニット13の支持部材を図5(a)に示すような回転位置に設定する。
ステップS116では、ワイプユニット13を上昇させる。
ステップS117では、ヘッド4をノズル列と垂直な方向に移動させ、クリーニング液が供給されたインク吸収部材50によりノズル面42を拭き取る。前述のようにノズル面へのインク滴付着は少ないことが予想されるため、移動速度Vaとして移動速度が速い条件(Va>Vb)に設定する(図9(a)参照)。
ステップS118では、ワイプユニット13を下降させる。
ステップS119では、フラッシングを開始し、ノズル内のクリーニング液を排出させる。
ステップS120では、所定時間Taを計時し、Taに達したらステップS121に進む。所定時間Taは、プリント中のワイプ後のフラッシング時間であり、短い時間(Ta<Tb)に設定される(図9(a)参照)。
ステップS121では、フラッシングを停止する。
ステップS122では、待機時揺らしを開始する。
以上に説明した一連の動作が終了すると、ワイプクリーニングの動作のサブルーチンの処理が終了する。
以上のように、本実施形態のワイプクリーニングによれば、クリーニング液が付着したインク吸収部材によるワイピングにおいて、吸引後にワイピングを実行させる第1クリーニングモードと、プリント中に所定量のプリント量毎に吸引を行わずにワイピングを実行させる第2クリーニングモードとでワイピング条件を最適化でき、ノズル面への不要なダメージを与えることなく、また、十分なクリーニング性能を発揮できる。
プリント中のワイピング等、通常の使用状態でノズル面に付着したインクをワイピングするときは、押圧力を低くしたり、ヘッドとワイプユニットの相対移動速度を速く設定することにより、ノズル面への不要なダメージを防止でき、また、ノズル内への不要なクリーニング液の侵入を防止できる。一方、吸引によりノズル面にインクが多量に付着した場合では、押圧力を高く設定したり、ヘッドとワイプユニットの相対移動速度を遅く設定することにより、クリーニング能力を高めることで十分なクリーニングを行うことが可能になる。
また、ヘッドのノズル面をクリーニング液が付着したインク吸収部材でワイピングする場合、押圧力や相対移動速度によりノズル内へのクリーニング液の侵入量が異なる。押圧力が高く、また、相対移動速度が遅い第1クリーニングモードでは、クリーニング液の侵入量が多くなり、押圧力が低く、また、相対移動速度が速い第2クリーニングモードでは、クリーニング液の侵入量が少なくなる。従って、第1クリーニングモードにおけるフラッシング量が第2クリーニングモードにおけるフラッシング量よりも多くなるように設定されていることにより、フラッシングによる過剰量排出を防ぎ、また、作業効率を向上させることができる。
<通常クリーニングの動作>
次に、上述した通常クリーニングのサブルーチンを図12に従って説明する。
通常クリーニングは、電源ON後のメンテナンスとして実施される。また、ノズル欠が発生した場合にノズル欠の回復のために実施される。
ステップS201では、ヘッド4をキャッピングする。
ステップS202では、ポンプP1を作動させヘッド4内のインクを排出する。
ステップS203では、所定時間T4を計時し、T4に達したらステップS204に進む。所定時間T4は、通常クリーニングにおけるヘッド内吸引時間である。
ステップS204では、空気リーク弁V2を開放し、キャップ15内の吸引を開始する。
ステップS205では、所定時間T5を計時し、T5に達したらステップS206に進む。所定時間T5は、吸引クリーニングにおけるキャップ内空吸引時間であり、T5>T4に設定されている。
ステップS206では、ポンプP1を停止させる。
ステップS207では、空気リーク弁V2を閉鎖する。
ステップS208では、ヘッド4とキャップ15を離間させる。
ステップS209では、ワイプクリーニングのサブルーチンが実行される。
ステップS210では、ヘッドをキャッピングするとともに、待機時揺らしを中止する。
以上に説明した一連の動作が終了すると、通常クリーニングの動作のサブルーチンの処理が終了する。
<強力クリーニングの動作>
次に、上述した強力クリーニングのサブルーチンを図13に従って説明する。
強力クリーニングは、通常クリーニングでノズル欠が回復しない場合に実施される。ヘッド内インクの吸引を通常クリーニングに比べて長時間実施してノズル欠を回復させる。
ステップS301では、ヘッド4をキャッピングする。
ステップS302では、ポンプP1を作動させヘッド4内のインクを排出する。
ステップS303では、所定時間T6を計時し、T6に達したらステップS304に進む。所定時間T6は、強力クリーニングにおけるヘッド内吸引時間であり、T6>T4に設定されている。
ステップS304では、空気リーク弁V2を開放し、キャップ15内の吸引を開始する。
ステップS305では、所定時間T5を計時し、T5に達したらステップS306に進む。所定時間T5は、吸引クリーニングにおけるキャップ内空吸引時間であり、T5>T6に設定されている。
ステップS306では、ポンプP1を停止させる。
ステップS307では、空気リーク弁V2を閉鎖する。
ステップS308では、ヘッド4とキャップ15を離間させる。
ステップS309では、ワイプクリーニングのサブルーチンが実行される。
ステップS310では、ヘッド4をキャッピングするとともに、待機時揺らしを中止する。
以上に説明した一連の動作が終了すると、強力クリーニングの動作のサブルーチンの処理が終了する。
<固化インク除去クリーニングの動作>
次に、上述した固化インク除去クリーニングのサブルーチンを図14に従って説明する。
固化インク除去クリーニングは、ノズル面に付着したインクの除去を目的として行う。例えば、プリンタを数日使用しなかった場合や強力クリーニングでノズル欠が回復しなかった場合に、インクが固化しノズルを塞いでいる可能性があるため、ノズル面を洗浄して固化インクを除去する。
ステップS401では、クリーニング液供給弁V1を開放してキャップ15内へのクリーニング液Cの供給を開始する。
ステップS402では、所定時間T7を計時し、T7に達したらステップS403に進む。所定時間T7は、キャップ15内へのクリーニング液供給時間である。
ステップS403では、クリーニング液供給弁V1を閉鎖する。
ステップS404では、待機時揺らしを行っている場合はこれを中止する。
ステップS405では、キャップ15でヘッド4をキャッピングし、ノズル面を洗浄する。
ステップS406では、所定時間T8を計時し、T8に達したらステップS407に進む。所定時間T8は、ノズル面のクリーニング液浸漬時間である。
ステップS407では、ポンプP1を作動させヘッド4内のインク及びクリーニング液を排出する。
ステップS408では、所定時間T9を計時し、T9に達したらステップS409に進む。所定時間T9は、ヘッド内インク及びクリーニング液排出時間である。
ステップS409では、空気リーク弁V2を開放し、キャップ15内の吸引を開始する。
ステップS410では、所定時間T10を計時し、T10に達したらステップS411に進む。所定時間T10は、固化インク除去クリーニングにおけるキャップ内空吸引時間である。
ステップS411では、ポンプP1を停止させる。
ステップS412では、空気リーク弁V2を閉鎖する。
ステップS413では、ヘッド4とキャップ15を離間させる。
ステップS414では、ワイプクリーニングのサブルーチンが実行される。ワイプクリーニングのワイプ条件は、吸引メンテナンス後の条件(図9(b))に設定される。
ステップS415では、ヘッド4をキャッピングするとともに、待機時揺らしを中止する。
以上に説明した一連の動作が終了すると、固化インク除去クリーニングの動作のサブルーチンの処理が終了する。
<プリント前メンテナンスの動作>
次に、上述したプリント前メンテナンスのサブルーチンを図15に従って説明する。
プリント前メンテナンスは、プリントジョブ受信後、プリント開始するまでのインターバルに実施される。キャッピングの経過時間により、プリント前の回復シーケンスが変更され、通常クリーニングあるいはワイプクリーニングが実施される。
ステップS501では、ヘッド4をキャッピングする。
ステップS502では、プリントが開始されるかを判断する。プリントが開始される(ステップS502:YES)場合はステップS507へ進み、プリントが開始されなければ(ステップS502:NO)場合は、ステップS503へ進む。
ステップS503では、所定時間T12が経過したかを判断する。T12に達した(ステップS503:YES)場合はステップS504へ進み、T12に達していない(ステップS503:NO)場合は、ステップS502へ進む。なお所定時間T12は、待機状態での経過時間である。
ステップS504では、フラッシングを開始し、ノズル内のインクを排出させる。
ステップS505では、所定時間T13を計時し、T13に達したらステップS506に進む。所定時間T13は、キャップ内でのフラッシング時間である。
ステップS506では、フラッシングを停止し、ステップS502へ進む。
ステップS507では、キャッピング時間がT11以上経過したかを判断する。T11以上経過した(ステップS507:YES)場合はステップS508へ進み、T11以上経過していない(ステップS507:NO)場合は、ステップS511へ進む。なお所定時間T11は、前回のプリントからの経過時間である。
ステップS508では、通常クリーニングのサブルーチンが実行される。
ステップS509では、待機時揺らしを開始する。
ステップS510では、ヘッド4とキャップ15を離間させる。
ステップS511では、ヘッド4とキャップ15を離間させる。
ステップS512では、ワイプクリーニングのサブルーチンが実行される。
以上に説明した一連の動作が終了すると、プリント前メンテナンスの動作のサブルーチンの処理が終了する。
<電源OFF時メンテナンスの動作>
次に、上述した電源OFF時メンテナンスのサブルーチンを図16に従って説明する。
電源OFF時メンテナンスは、作業終了時に実施される。ワイプクリーニング実施後にヘッドをキャッピングして電源OFFされる。
ステップS601では、作業終了となる。
ステップS602では、ヘッド4をキャップ位置へ移動させる。
ステップS603では、ワイプクリーニングのサブルーチンが実行される。
ステップS604では、ヘッド4をキャッピングするとともに、待機時揺らしを中止する。
ステップS605では、プリンタの電源がOFFされる。
以上に説明した一連の動作が終了すると、電源OFF時メンテナンスの動作のサブルーチンの処理が終了する。
<プリンタ停止中メンテナンスの動作>
次に、上述したプリンタ停止中メンテナンスのサブルーチンを図17に従って説明する。
プリンタ停止中メンテナンスは、電源OFFで、作業していない間の吐出性維持のためのメンテナンスであり、バックアップ電源から給電される電力によりキャップ内での定期的なフラッシング及びキャップ内の吸引が実施される。フラッシング時にノズル周りに残ったインクは、電源ON後に行われる通常クリーニング(図10のS3)で除去される。
ステップS701では、プリンタの電源がOFFされている。
ステップS702では、プリンタの電源がONされたかを判断する。電源がONされた(ステップS702:YES)場合はプリンタ停止中メンテナンスのサブルーチンが終了し、図10に示すメンテナンス動作のメインルーチンが開始される。電源がONされていない(ステップS702:NO)場合は、ステップS703へ進む。
ステップS703では、所定時間T14経過したかを判断する。所定時間T14経過した(ステップS703:YES)場合はステップS704へ進み、経過していない(ステップS703:NO)場合は、ステップS702へ進む。なお所定時間T14は、プリンタ停止中の経過時間である。
ステップS704では、フラッシングを開始し、ノズル内のインクを排出させる。
ステップS705では、フラッシング回数がN1に達したかを判断する。N1に達した(ステップS705:YES)場合はフラッシングを終了しステップS706へ進み、達していない(ステップS705:NO)場合は、フラッシングを継続する。なおN1は、プリンタ停止中のフラッシング回数である。
ステップS706では、空気リーク弁V2を開放する。
ステップS707では、ポンプP1を作動させキャップ15内にフラッシングされたインクを排出する。
ステップS708では、所定時間T15を計時し、T15に達したらステップS709に進む。所定時間T15は、キャップ内にフラッシングされたインクの排出時間である。
ステップS709では、ポンプP1を停止させる。
ステップS710では、空気リーク弁V2を閉鎖して、ステップS702へ進む。
以上に説明した一連の動作が終了すると、プリンタ停止中メンテナンスの動作のサブルーチンの処理が終了する。
(クリーニング液)
次いで、本発明に係るインクジェットプリンタに適用するクリーニング液について説明する。
本発明に係るクリーニング液は、塩基性化合物を含有していることが好ましく、インクの固着物や増粘化物の溶解、剥離除去に有効であり、特に、水性顔料インク中に使用される酸成分含有樹脂の再溶解もしくは再分散に効果的である。
インクジェットプリンタに適用するクリーニング液に求められる機能としては、長期間にわたり安定してクリーニング能力を維持し、かつクリーニング後のヘッドの吐出特性に影響を与えないことが重要である。
本発明に係るクリーニング液においては、表面張力が35mN/m未満の溶剤を含有することが好ましく、表面張力が35mN/m未満の溶剤としては、アルキレングリコールモノエーテル類あるいはアルカンジオール類が好ましい。
本発明に係るクリーニング液に好適に用いることができるアルキレングリコールモノエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル(28.2)、エチレングリコールモノブチルエーテル(27.4)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(31.8)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(33.6)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(32.1)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(25.9)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(28.8)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(30.0)等が挙げられる。なお、括弧内の数値は表面張力値(mN/m)を表す。
また、本発明に係るクリーニング液に好適に用いることができるアルカンジオール類としては、1,2−アルカンジオール類が好ましく、例えば、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール(28.1)、1,2−ヘプタンジオール等が挙げられる。
上記各溶剤の中でも、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類が好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが、特に好ましい。
本発明において、溶剤の表面張力の測定方法としては、一般的な界面化学、コロイド化学の参考書等において述べられているが、例えば、新実験化学講座第18巻(界面とコロイド)、日本化学会編、丸善株式会社発行:P.68〜117を参照することができ、具体的には、輪環法(デュヌーイ法)、垂直板法(ウィルヘルミー法)を用いて求めることができる。本発明では、具体的には、表面張力は、表面張力計CBVP式A−3型(協和科学株式会社)を用いて測定した。
本発明に適用可能な塩基性化合物としては、無機塩基化合物でも有機塩基化合物でもよいが、有機塩基化合物を用いることがより好ましい。
無機塩基化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、炭酸水素カリウムや、炭酸水素ナトリウムなどの重炭酸塩を用いることができる。
有機塩基化合物としては、アンモニア、アルカノールアミン類、アルキルアミン類等を用いることができる。
有機塩基化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジブチルアミノエタノール、N−メチル−ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノールなどを用いることができる。
中でも、アンモニア、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジブチルアミノエタノール、N−メチル−ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、N,N−ジエチルアミノエタノールを好ましく用いることができる。
本発明に係るクリーニング液には、必要に応じて、その他の添加剤、例えば、界面活性剤、保湿剤、防培剤などを添加しても良い。
(水性顔料インク)
次いで、本発明のインクジェットプリンタに適用するインクの構成について説明する。
本発明のインクジェットプリンタに適用するインクとしては、特に制限はないが、本発明に係るワイプユニット及び該ワイプユニットを備えるインクジェットプリンタによる効果を十分に発揮できる観点から、水性顔料インクが好ましく、少なくともイエロー顔料インク、マゼンタ顔料インク、シアン顔料インク及びブラック顔料インクの4色顔料インクから構成されるインクセットを用い、少なくとも1色の水性顔料インクが、インク全質量に対する顔料固形分量が6.0質量%以上で、かつ総樹脂固形分量が6.0質量%以上であることが好ましい。その中でも、特に、ブラック顔料インクの顔料固形分が6.0%以上であることが好ましい。
水性顔料インクは、染料を用いた通常の染料系インクよりも固着しやすい上、固着した場合における回復性が非常に悪く、特に一般的にはいわゆる分散剤としてのポリマーを含む場合には、その回復性が一層悪くなるが、本発明に係るワイプユニット及び該ワイプユニットを備えるインクジェットプリンタによればヘッドのノズル面に付着した固化物又は増粘化物の除去を効果的に行うことができる。
本発明に用いることができる顔料としては、水系で安定に分散できるものであれば特に制限はなく、例えば、顔料単体の他、高分子樹脂により分散した顔料分散体、水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料、顔料表面を修飾し、分散樹脂を用いなくても分散可能な自己分散顔料等を挙げることができる。特に、インクの保存性を重視する場合は、水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料を選択することが好ましい。
高分子樹脂により分散した顔料分散体を用いる場合、高分子樹脂としては水溶性のものを用いることができる。水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、例えば、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等のような水溶性樹脂等を挙げることができる。
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
本発明に係る顔料分散体の粗粒分を除去する目的で遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましく用いられる。
また、水不溶性樹脂で被覆されたカプセル顔料を用いる場合、水不溶性樹脂とは弱酸性乃至弱塩基性の範囲の水に対して不溶な樹脂であり、好ましくはpH4乃至10の水溶液に対する溶解度が2%未満の樹脂である。
このような樹脂としては、アクリル系、スチレン−アクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル系、酢酸ビニル−アクリル系、酢酸ビニル−塩化ビニル系、ポリウレタン系、シリコン−アクリル系、アクリルシリコン系、ポリエステル系、エポキシ系の各樹脂を挙げることができる。
また、樹脂として疎水性モノマーと親水性モノマーとを共重合した樹脂を用いることができる。
疎水性モノマーとしては、アクリル酸エステル(アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等)、スチレン等が挙げられる。
親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等が挙げられ、アクリル酸のような酸性基を有するものは、重合後に塩基で中和したものを好ましく用いることができる。
樹脂の分子量としては、平均分子量で3000から500000のものを用いることができる。好ましくは7000から200000のものを用いることができる。樹脂のTgは、−30℃から100℃程度のものを用いることができる。好ましくは−10℃から80℃程度のものを用いることができる。
重合方法としては、溶液重合、乳化重合を用いることができる。重合は予め顔料と別途合成してもよいし、顔料を分散した系内にモノマーを供給して、重合してもよい。
顔料を樹脂で被覆する方法としては公知の種々の方法を用いることができるが、好ましくは展相乳化法や酸析法の他に顔料を重合性界面活性剤を用いて分散し、そこへモノマーを供給し、重合しながら被覆する方法から選択することがよい。より好ましい方法としては、水不溶性樹脂をメチルエチルケトン等の有機溶剤に溶解し、更に塩基にて樹脂中の酸性基を部分的、もしくは完全に中和後、顔料及びイオン交換水を添加し、分散した後、有機溶剤を除去、必要に応じて加水し、調製する製造方法が好ましい。
顔料と樹脂の質量比率は、顔料/樹脂比で100/40から100/150の範囲で選択することができる。特に画像耐久性と射出安定性やインク保存性が良好なのは100/60から100/110の範囲である。
水不溶性樹脂で被覆された顔料粒子の平均粒子径は、80乃至150nm程度がインク保存安定性、発色性の観点から好ましい。
また、自己分散顔料としては表面処理済みの市販品を用いることもでき、例えば、CABO−JET200、CABO−JET300(キャボット社製)、ボンジェットCW1(オリエント化学工業(株)製)等を挙げることができる。
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
本発明に係る水性顔料インクにおいては、記録媒体への定着性を高め、耐擦性、接着性、耐水性などを高めるため、樹脂成分を含有することが好ましい。
樹脂成分としては、従来から用いられている顔料分散用樹脂として用いても良いし、インク調製時に追加添加したものでもよい。
本発明においては、少なくとも1色の水性顔料インクが、樹脂成分固形分としてインク中に6.0質量%以上含有することが、定着性を高める上で好ましい。
本発明でいう樹脂成分とは、水溶性樹脂であっても水分散性樹脂であってもよく、両者を併用しても良い。
水溶性樹脂としては、樹脂中に疎水性成分と親水性成分をあるバランスで有するものを設計して用いる。この際、親水性成分としてはイオン性のもの、ノニオン性のものどちらを用いてもよいが、より好ましくはイオン性のものであり、更に好ましくはアニオン性のものである。特に、アニオン性のものを揮発可能な塩基成分で中和することで水溶性を付与したものが好ましい。特に、インク溶解性樹脂の少なくとも1種は酸性基としてカルボキシル基またはスルホン酸基を有しており、且つ酸価が80mgKOH/g以上、300mgKOH/g未満である樹脂が好ましい。酸価としては、90mgKOH/g乃至200mgKOH/g程度のものを用いる。
酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数である。
このような樹脂としては、例えば、アクリル系、スチレン−アクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニル−アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系の各樹脂を挙げることができ、特に、アクリル共重合体及びスチレン−アクリルが好ましい。
疎水性モノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等)、スチレン等が挙げられる。
親水性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等が挙げられ、アクリル酸のような酸性基を有するものは、重合後に塩基で中和したものを好ましく用いることができる。
樹脂の分子量としては、平均分子量で3000から30000のものを用いることができる。好ましくは7000から20000のものを用いることができる。
樹脂のTgは−30℃から100℃程度のものを用いることができる。好ましくは−10℃から80℃程度のものを用いることができる。
重合方法としては、溶液重合を用いることが好ましい。
樹脂の酸性モノマー由来の酸性基は部分的、あるいは完全に塩基成分で中和することが好ましい。この場合の中和塩基としては、アルカリ金属含有塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等や、アミン類(アンモニア、アルカノールアミン、アルキルアミン等を用いることができる)を用いることができる。特に、沸点が200℃未満のアミン類で中和することは、画像耐久性向上の観点から特に好ましい。
本発明のインクは水溶性樹脂の他に水分散性樹脂を併用してもよい。特に、Tgが20−80℃の水分散性樹脂を、水溶性樹脂より少ない量添加することは、いっそうの耐擦性向上する上で好ましい。
水性顔料インクは、普通紙やインク吸収層を具備したインクジェット専用紙はもとよりインク吸収性層のない、コート紙やフィルムなどの樹脂素材や布帛、皮革素材などにもプリントできるものが好ましい。このような機能を持つためにも、樹脂成分固形分としてインク中に6.0質量%以上含有することがこのましい。
本発明に係るインクにおいては、表面張力が35mN/m未満の有機溶剤を10質量%から30質量%含有することが好ましい。印刷用コート紙、フィルム基材、樹脂材料、布帛などさまざまな媒体にプリントした場合、十分にインク混じりが防止でき、布帛では繊維にそったにじみをいっそう抑えることが出来好ましい。
本発明に係るインクの表面張力は、23〜30mN/mの範囲に調整することが好ましい。インクの表面張力を上記の範囲に調整する手段としては、表面張力35mN/m未満の有機溶剤を10%から30%含有させ、さらに、シリコン系もしくはフッ素系の界面活性剤を添加することで調整することができる。この様な表面張力値とすることにより、プラスチックフィルムなどの記録媒体に対しても、インク混じりを抑制してプリントすることができる。シリコン系の界面活性剤としては、好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン化合物があり、例えば、信越化学工業製のKF−351A、KF−642やビッグケミー製のBYK347、BYK348などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤は、通常の界面活性剤の疎水性基の炭素に結合した水素の代わりに、その一部または全部をフッ素で置換したものを意味する。この内、分子内にパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
フッ素系の界面活性剤の内、ある種のものはDIC(株)からメガファック(Megafac)Fなる商品名で、旭硝子社からサーフロン(Surflon)なる商品名で、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング・カンパニー社からフルオラッド(Fluorad)FCなる商品名で、インペリアル・ケミカル・インダストリー社からモンフロール(Monflor)なる商品名で、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社からゾニルス(Zonyls)なる商品名で、またファルベベルケ・ヘキスト社からリコベット(Licowet)VPFなる商品名で、それぞれ市販されている。
本発明に係る水性顔料インクには、必要に応じて、吐出安定性、ヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができる。
(記録媒体)
本発明に係る水性顔料インクは、ポリ塩化ビニルシート等の非吸収性記録媒体、普通紙、コート紙、インクジェット専用紙等に印字するのに適している。
非吸収性記録媒体としては、高分子シート、ボード(軟質塩ビ、硬質塩ビ、アクリル板、ポリオレフィン系等)、ガラス、タイル、ゴム、合成紙等が挙げられる。
低吸収もしくは吸収性記録媒体としては、種々の布帛(綿、絹、毛、ポリエステル等)、普通紙(コピー紙、印刷用普通紙)、コート紙、アート紙、インクジェット専用紙、インクジェット光沢紙、ダンボール、木材等が挙げられる。
なお、本発明は上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、本実施形態においては、ヘッド4をノズル列に直交する方向に沿って移動させ、ワイプユニット13でノズル面を拭き取るようにしたが、ワイプユニット13を移動させる方向はここに例示したものに限定されない。例えば、ノズル列方向にヘッド4を移動させてノズル面41を拭き取るようにしてもよい。また、ワイプユニット13を移動させてノズル面を拭き取るようにしてもよい。
また、本実施形態においては、シリアル方式のヘッドを用いたシリアル方式のインクジェットプリンタを例として説明したが、ライン方式のヘッドを備える方式のインクジェットプリンタにおいても適用可能である。
また、本実施形態においては、シート状可撓性部材51を1つのワイプユニット13について1つ備える場合を例として説明したが、1つのワイプユニット13に複数のシート状可撓性部材51を備える構成としてもよい。
(第2実施形態)
次に本発明に係る第2実施形態について図18を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の箇所は同一の符号を付して説明を省略する。
図18に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1Bは、ワイプユニット13において、1つのインク吸収部材50に対してシート状可撓性部材51を複数設けている。例えば、1つのヘッドから吐出される1つの色に対し、1つのシート状可撓性部材51を設けたユニット構成とすることができる。すなわち、シート状可撓性部材51をインクの色毎に個別に設ける構成であり、この場合には、ワイプ動作に要する時間を減らすことができる。また、装置内の部品数を少なく構成でき、かつ、コストを抑えて生産することができる。