JP6027857B2 - フッ素樹脂製部品の製造方法およびフッ素樹脂製部品 - Google Patents

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Description

本発明は、フッ素樹脂製部品の製造方法およびフッ素樹脂製部品に関する。
従来、フッ素樹脂製部品にマーキング塗料などを塗布する際には、薬液による前処理、例えば金属ナトリウム溶液による前処理が一般的に行われていた。このような前処理では、処理後に薬液を除去する洗浄工程が必要となり、薬液や薬液の洗浄に使用するアルコールの廃液処理も必要となり、工程が複雑になっていた。
このため、薬液による前処理を代替する表面処理が研究されてきた。
このような表面処理に関連する技術として、例えば、特許文献1には、フッ素樹脂製基材に接着剤を塗布する場合において、フッ素樹脂を主成分とする成型物に、1.5Pa〜25Paの圧力下で高周波電源出力200W〜500W、処理時間15分間〜30分間のプラズマ照射処理を行う表面改質技術が提案されている。
特開2003−261698号公報
しかしながら、このような従来のフッ素樹脂製部品の製造方法には以下のような問題があった。
本発明者が、特許文献1に提案された技術に基づいて塗料の塗布性能を調べる実験を行ったところ、特許文献1に記載の条件では表面状態の化学的変化が見られず、充分な塗料密着力を得ることができなかった。
また、万一、特許文献1に記載の条件で良好な塗料密着力が得られたとしても、特許文献1では、プラズマ照射処理を最低でも15分間行う必要があるため、製造時間が長くなってしまうという問題がある。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、薬液処理を用いることなく塗布剤層を良好に密着させることができるとともに、製造時間を短縮することができるフッ素樹脂製部品の製造方法およびフッ素樹脂製部品を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様のフッ素樹脂製部品の製造方法は、フッ素樹脂製の基材の表面に、不活性ガスによるプラズマ処理を施しつつ、1種類以上の金属元素を含む改質材料を粒子化し前記基材の表面に向けて飛散させることにより、前記基材の表面に、前記金属元素を含む金属もしくは合金、前記金属元素の酸化物、または前記金属元素の窒化物を含む粒子が分散された改質表面を形成する表面改質工程と、
合成樹脂を含む塗布剤を前記改質表面の少なくとも一部に塗布して硬化させて塗布剤層を形成する塗布剤層形成工程と、を備え、前記表面改質工程では、前記粒子を前記改質表面に0.5at%〜50at%含有させる方法とする。
上記フッ素樹製部品の製造方法においては、前記表面改質工程では、前記改質材料を配した第1電極部と、該第1電極部から離間して配置された第2電極部との間に前記基材を配置し、前記第1電極部および前記第2電極部の間に不活性ガスを供給するとともに前記第1電極部および前記第2電極部に直流電源、交流電源、または高周波電源からなるプラズマ発生電源から電力を供給して前記第1電極部と前記第2電極部との間にプラズマを発生させて、前記第2電極部の方から前記第1電極部に向かうイオンの流れを形成することにより、前記改質材料を粒子化し、前記基材の表面のうち前記第1電極部の前記改質材料の方に向いている部位を被処理面として、前記改質材料の粒子を飛散させることが好ましい。
前記第1電極部等を用いる上記フッ素樹製部品の製造方法においては、前記表面改質工程では、前記基材を挟んで前記第1電極部と反対側に、前記基材の表面を覆う遮蔽部材を配置した状態で前記改質表面を形成することが好ましい。
上記フッ素樹製部品の製造方法においては、前記1種類以上の金属元素が、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)のうち少なくとも1種類を含むことが好ましい。
本発明の第2の態様のフッ素樹脂製部品は、フッ素樹脂製の基材と、該基材の少なくとも一部の表面を覆う合成樹脂を含む塗布剤層とを有するフッ素樹脂製部品であって、
前記塗布剤層と接する前記基材の表面の一部に、1種類以上の金属元素を含む金属もしくは合金、前記金属元素の酸化物、または前記金属元素の窒化物の粒子が分散されており、前記塗布剤層と接する前記基材の表面に前記粒子が0.5at%〜50at%含有されている構成とする。
上記フッ素樹脂製部品では、前記1種類以上の金属元素が、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)のうち少なくとも1種類を含む構成とすることが好ましい。
本発明のフッ素樹脂製部品の製造方法およびフッ素樹脂製部品によれば、表面をプラズマ処理するとともに改質材料に由来する粒子を分散させて表面改質してから、塗布剤を塗布するため、薬液処理を用いることなく塗布剤層を良好に密着させることができるとともに、製造時間を短縮することができるという効果を奏する。
本発明の実施形態のフッ素樹脂製部品の製造方法で製造されたフッ素樹脂製部品の構成を示す模式的な正面図、そのA−A断面図、およびB−B断面図である。 本発明の実施形態のフッ素樹脂製部品の製造方法に用いる表面処理装置の概略構成を示す縦断面図、およびそのC−C断面図である。 本発明の実施形態のフッ素樹脂製部品の製造方法の工程説明図である。 本発明の実施形態の第1変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法で製造されたフッ素樹脂製部品の構成を示す模式的な正面図、そのD−D断面図、E−E断面図、およびF−F断面図である。 本発明の実施形態の第1変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法に用いる表面処理装置の概略構成を示す縦断面図、およびそのH−H断面図である。 本発明の実施形態の第2変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法で製造されたフッ素樹脂製部品の構成を示す模式的な正面図、そのM−M断面図、およびN−N断面図である。 本発明の実施形態の第2変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法に用いる表面処理装置の概略構成を示す縦断面図、およびそのQ−Q断面図である。 本発明の実施形態の第3変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法に用いる表面処理装置の概略構成を示す縦断面図、およびそのU−U断面図である。 図8におけるR−R断面図である。 比較例のフッ素樹脂製部品の製造方法に用いた表面処理装置の概略構成を示す模式的な斜視図、および模式的なK−K断面図である。
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施形態のフッ素樹脂製部品について説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態のフッ素樹脂製部品の製造方法で製造されたフッ素樹脂製部品の構成を示す模式的な正面図である。図1(b)、(c)は、図1(a)におけるA−A断面図、およびB−B断面図である。
本実施形態の医療用チューブ1(フッ素樹脂製部品)は、図1(a)に示すように、フッ素樹脂で成形された細長い管状のチューブ本体2(基材)の外表面に、マーキング塗料(塗布剤)による塗料層3(塗布剤層)が形成されたものである。
このような医療用チューブ1は、フッ素樹脂製であるため、生体組織に接触して用いることができ、生体組織に対するすべり性が良好となる。このため、例えば、造影チューブや高周波ナイフの管状部など、患者の体腔に挿入して用いる用途に使用することができる。
チューブ本体2は、フッ素樹脂製であって、医療用の各種用途に応じてそれぞれ好適な物理的、電気的、化学的特性を有するものであれば、形状やフッ素樹脂の種類は限定されない。
好適なフッ素樹脂の種類としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)などの例を挙げることができる。
また、例えば、造影チューブに好適な形状の一例としては、内径2.5mm、外径3.5mm、長さ300mmのようなチューブ形状を挙げることができる。
また、チューブ本体2の外表面は、少なくとも、塗料層3が形成された部位を含む領域において、図1(b)、(c)に示すように改質表面Sが形成されている。
改質表面Sは、後述する表面改質工程を行うことにより、チューブ本体2の外表面を表面改質した部位であり、具体的には、不活性ガスによるプラズマ処理を施しつつ、1種類以上の金属元素を含む改質材料を粒子化し、チューブ本体2の外表面に向けて飛散させる処理を施して、チューブ本体2の表面を改質して得られた表面である。このため、改質表面Sには、前記1種類以上の金属元素を含む金属もしくは合金、前記金属元素の酸化物、または前記金属元素の窒化物を含む粒子が分散されている。
ここで、金属の粒子は、金属原子でもよいし、複数の金属原子が金属結合した金属微粒子であってもよい。
また、粒子が分散されているという意味は、例えば、直径1mmの円状領域において、表面におけるスパッタ粒子の比率が100%未満であり、チューブ本体2の表面の一部が露出されている状態を意味する。このような状態は、例えば、電子顕微鏡による観察や、X線光電子分光法(XPS)の測定などによって、検証することができる。
改質表面Sにおける粒子の比率は、0.5at%〜50at%であることが好ましい。粒子の材質が複数にわたる場合には、各材質の合計の比率が、この範囲であることが好ましい。
粒子に含まれる金属元素としては、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)のうち少なくとも1種類を含むことが好ましい。これらの金属元素は、比較的スパッタ率が高いため、改質材料をスパッタして粒子を飛散させる場合に、後述する表面改質工程の処理効率を向上することができる。
また、他にも、例えば、マグネシウム(Mg)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)なども好適に用いることができる。
上記のように、本明細書では、「金属元素」を単体として金属の性質を示す元素の総称という広義の意味に用いている。例えば、半金属に分類される場合もあるSiは、金属元素に含める。
粒子が合金からなる場合、以上に例示した金属元素を含む適宜の合金が利用可能である。特に医療用途に好適となる合金としては、ステンレス、Ti合金、Co−Cr合金などを挙げることができる。
また、粒子が、酸化物や窒化物の場合、粒子が改質表面Sに分散された時点で酸化物や窒化物になっていればよく、例えば、改質材料に金属もしくは合金を用いて、チューブ本体2の表面に到着する間またはチューブ本体2の表面に到着した時点で、粒子が化学反応を起こして、酸化物や窒化物になったものでもよい。改質材料自体は、金属もしくは合金で構成されていると、スパッタ効率がよいため、改質材料をスパッタして粒子を飛散させる場合に、後述する表面改質工程の処理効率上、好ましい。
特に医療用途に好適となる酸化物、窒化物としては、Ti、Alの酸化物、窒化物などなどを挙げることができる。
塗料層3は、本実施形態では、図1(a)に示すように、チューブ本体2の軸方向に沿って一定幅の塗布部分が、軸方向に一定の距離をあけて複数形成されるとともに、図1(c)に示すように、各一定幅の塗布部分はチューブ本体2の外表面の全周にわたって形成されている。このような構成により、塗料層3は簡易的なスケールもしくは目盛として使用することが可能になっている。このため、例えば、医療用チューブ1の体腔への挿入量や、体腔内での軸方向の長さを術者が容易に参照できるようになっている。
塗料層3の材質としては、周知のマーキング塗料を適宜採用することができるが、本実施形態では、一例として、青色のフェノール樹脂を主成分とする塗料を採用している。
次に、このような構成の医療用チューブ1を製造する本実施形態のフッ素樹脂製部品の製造方法について説明する。
図2(a)は、本発明の実施形態のフッ素樹脂製部品の製造方法に用いる表面処理装置の概略構成を示す縦断面図である。図2(b)は、図2(a)におけるC−C断面図である。図3(a)、(b)、(c)、(d)は、本発明の実施形態のフッ素樹脂製部品の製造方法の工程説明図である。
本実施形態のフッ素樹脂製部品の製造方法は、表面改質工程と、表面改質工程を行った後に行う塗布剤層形成工程とを備える。
なお、以下の本実施形態の説明では、具体例を挙げて説明する場合、特に断わらない限り、一例として、チューブ本体2が、内径2.5mm、外径3.5mm、長さ300mmの形状を有するPTFE製のチューブであり、改質表面Sに含まれるスパッタ粒子が、Alの場合の例で説明する。この具体例に対応する実施例を、以下、実施例1と称する。
表面改質工程は、フッ素樹脂製のチューブ本体2の表面に、不活性ガスによるプラズマ処理を施しつつ、1種類以上の金属元素を含む改質材料を粒子化し前記基材の表面に向けて飛散させることにより、前記基材の表面に、前記金属元素を含む金属もしくは合金、前記金属元素の酸化物、または前記金属元素の窒化物を含む粒子が分散された改質表面Sを形成する工程である。
なお、本実施形態の実施例1では、改質材料を粒子化し飛散させる処理は、改質材料を物理的にスパッタすることにより行うため、以下の説明では、簡単のため、「スパッタ処理」と称する。ただし、後述するように、本実施形態の「スパッタ処理」は、基材の表面に粒子を集積させて粒子による層膜の形成を行う処理とは異なる。
また、この「スパッタ処理」により、改質材料から飛散する粒子をスパッタ粒子と称する。また、本実施形態の実施例1では、改質表面Sに到達した粒子は、酸化も窒化もされないため、改質表面Sに含まれる粒子もスパッタ粒子と称する。
本工程は、例えば、図2(a)、(b)に示すように、スパッタ処理およびプラズマ処理が可能な表面処理装置10を用いて行うことができる。
表面処理装置10の概略構成は、真空チャンバー11、高周波電源15(プラズマ発生電源)、ガス供給部16、および排気部17を備える。
真空チャンバー11は、処理対象のチューブ本体2を内部に保持して、内部に低圧の不活性ガス雰囲気を形成するものである。
真空チャンバー11の内部には、下方側に改質材料電極12(改質材料、第1電極部)、上方側に上部電極14(第2電極部)が互いに対向して配置され、改質材料電極12の外周側で改質材料電極12を跨ぐように固定治具13が配置されている。
本実施形態では、改質材料電極12は、高周波電圧を印加することで、上部電極14とともに真空チャンバー11に充填された不活性ガスによるプラズマを形成する電極であるとともに、電極間に形成されたプラズマによりスパッタされる改質材料を兼ねている。
このため、改質材料電極12は、改質表面Sを形成するためのスパッタ粒子が発生しうる材質で構成される。例えば、実施例1では、Al板を採用している。
固定治具13は、改質材料電極12の上方で、複数のチューブ本体2の両端を下方から支持して水平に並列して配置する枠体である。固定治具13の側板には、特に図示しないが、各チューブ本体2を水平方向に離間して配置するためのU字溝が設けられている。
固定治具13におけるチューブ本体2の保持高さは、改質材料電極12からのスパッタ粒子が効率的にチューブ本体2に到達する高さに設定する。実施例1では、改質材料電極12に対するチューブ本体2の保持高さは10mmとしている。
固定治具13の材質は、プラズマと反応せず、プラズマによってスパッタされない絶縁体で構成されている。
高周波電源15は、スパッタ処理およびプラズマ処理を行う電力を供給するためのもので、改質材料電極12および上部電極14に電気的に接続されている。
高周波電源15の周波数、出力は、改質表面Sにおけるスパッタ粒子の目標分布量に応じて適宜設定すればよいが、実施例1に用いる場合、周波数が13.56MHz、出力が100W〜1000W程度の高周波電力を供給できればよい。
ガス供給部16は、真空状態の真空チャンバー11内に、プラズマを形成するための不活性ガスを供給するもので、例えば、ガスボンベ、マスフローコントローラ、バルブ等を備える。ガス供給部16は、真空チャンバー11内に不活性ガスを導入する供給口16aを介して真空チャンバー11に連結されている。
不活性ガスの種類としては、例えば、Arガス、Neガス、Xeガスなどが好適である。実施例1では、比較的安価なArガスを採用している。
また、本発明における不活性ガスとは必ずしも単独ガスである必要はなく、混合ガス等でも良い。さらに、必ずしも不活性ガス100%の雰囲気である必要はなく、50%以下の酸素ガス、窒素ガス等の反応性ガスを混入し、改質材料粒子の酸化、窒化を積極的に図ることも可能である。反応性ガスの割合が50%を超えると改質材料自体の酸化や窒化が促進されすぎてスパッタ率が極端に遅くなるため望ましくない。反応性ガスの割合は、スパッタ率と改質効果のバランスを考慮すると30%以下とすることがより望ましい。
排気部17は、真空チャンバー11から排気を行って、真空チャンバー11内に真空もしくは低圧雰囲気を形成するものであり、バルブ、真空ポンプ等を備え、排気口17aを介して、真空チャンバー11と接続されている。
このような表面処理装置10を用いた表面改質工程について実施例1に基づいて説明する。
まず、図2(a)、(b)に示すように、真空チャンバー11内に配置された固定治具13上に、チューブ本体2をセットする。このとき、図3(a)に示すように、チューブ本体2の外周面である基材表面2aは、PTFEの成形面からなり、化学的には不活性である。このため、塗料を塗布しても、基材表面2aの化学変化が生じないため、良好な密着性が得られない状態である。
次に、排気部17により排気を行って、真空チャンバー11内の圧力を10Pa以下にする。その後、ガス供給部16からArガスを導入し、真空チャンバー11内の圧力を10Pa〜100Paの範囲で安定させる。例えば、Arガス流量を10sccmとし、圧力を25Paとする。
真空チャンバー11内の圧力が安定した後、高周波電源15によりチャンバー内に高電圧を印加し、主として上部電極14と改質材料電極12との間の空間にArガスプラズマを発生させ、一定時間かけてプラズマ処理を行う。実施例1では、13.56MHz、出力200Wで30秒間処理した。
これにより、基材表面2aは、Arガスプラズマにより表面改質されるため、基材表面2aはその一部が活性化して活性表面2A(図3(b)参照)が形成されていく。
一方、本実施形態のブラズマ処理では、Arガスプラズマによって、改質材料電極12がスパッタされる。このため、図3(b)に示すように、改質材料電極12に向けられたチューブ本体2の下半領域の活性表面2Aには、改質材料電極12からスパッタされたスパッタ粒子T(粒子)が付着していき、改質表面Sが形成されていく。
ただし、活性表面2Aの下半領域におけるスパッタ粒子Tは、時間経過とともに増大するため、長時間プラズマ処理を継続すると、下半領域の活性表面2A全体が、スパッタ粒子Tによって完全に覆われ、スパッタ粒子Tの薄膜層が形成されてしまう。本実施形態では、高周波電源15の出力および出力時間を調整して、処理電力と処理時間を規制することにより、活性表面2A上にスパッタ粒子Tが分散する状態を形成する。
好適な分散状態は、チューブ本体2およびスパッタ粒子Tの材質や、塗料層3を形成する塗料の材質によっても異なるため、塗料層3に必要な密着強度に応じて、予め実験を行うなどして決めることができる。
実施例1におけるチューブ本体2およびスパッタ粒子Tの材質や、塗料層3を形成する塗料の材質の条件では、改質表面Sにおけるスパッタ粒子Tの比率は、0.5at%〜50at%が好ましい範囲であった。より好ましい範囲としては、1at%〜40at%であった。
例えば、実施例1の上記の処理電力および処理時間で形成された改質表面Sでは、Alの比率が、7.7at%となり、スパッタ粒子TであるAlが分散されていた。
上記のようなスパッタ粒子Tの好ましい比率を実現するプラズマ処理条件としては、Arガス導入後のチャンバー内圧力10Pa〜100Pa、高周波電力100W〜1000W、1処理面あたり処理時間3秒以上〜120秒以下であることが望ましい。
また、処理対象の形状によっては処理にバラツキが生じることも考えられるため、複雑な形状を処理する場合には、フッ素樹脂表面上のスパッタ粒子Tは1at%以上であることが望ましく、処理条件としては圧力20Pa〜50Pa、高周波電力200W以上、1処理面あたり処理時間5秒以上であることが望ましい。
また、フッ素樹脂製部品を形成するための基材が、例えば、チューブやフィルムなど、熱変形を起こしやすい形態である場合には、熱の影響を少なくするために処理電力を600W以下にするか、処理時間を60秒以内のいずれか、もしくは両方の範囲内にすることが望ましい。
次に、真空チャンバー11内を大気開放し、各チューブ本体2を裏返して固定治具13に再びセットした後、上記と同様の処理を行う。これにより、図3(c)に示すように、チューブ本体2の全周にわたって、改質表面Sが形成される。
以上で、表面改質工程が終了する。
そこで、真空チャンバー11を大気開放して、処理が終了したチューブ本体2を真空チャンバー11から取り出す。
このように本実施形態では、チューブ本体2の基材表面2aを半周分ずつ表面改質することにより、全周に改質表面Sを形成する。以下、初めに形成される半周分の表面を先行処理表面、次に形成される残りの半周分の表面を後行処理表面と称する。
次に、塗布剤層形成工程を行う。本工程は、合成樹脂を含む塗布剤を改質表面Sの少なくとも一部に塗布して硬化させて塗料層3を形成する工程である。
本実施形態では、図3(d)に示すように、フェノール樹脂を主成分とする塗料(塗布剤)を、チューブ本体2の軸方向に沿って一定幅で全周に塗布して、未硬化の塗料層3を形成する。また、同様な未硬化の塗料層3を軸方向に一定の距離をあけて複数形成する。
次に、このようなチューブ本体2を、80℃のオーブン中に配置して、30分間乾燥させて、塗料層3を硬化させる。
以上で、塗布剤層形成工程が終了する。
このようにして、医療用チューブ1が製造される。
次に、本実施形態における、改質表面Sにおけるスパッタ粒子Tの比率の好ましい範囲について調べた実験例I、IIの結果について説明する。
[実験例I]
実験例Iでは、上記実施例1において、高周波電源15による処理電力を100W〜1000Wの範囲で変え、処理時間を3秒〜600秒の範囲で変えて、上記表面改質工程と同様にして改質表面Sを有するチューブ本体2のサンプルを形成した。そして、各サンプルの改質表面SのAlの比率をXPSで測定した。また、各サンプルに上記塗布剤層形成工程と同様にして、塗料層3を形成した後、塗料層3の剥離強度を評価した。
実験例Iにおける処理時間と処理電力との具体的な組合せは、処理時間3秒では処理電力を100W、200W、600W、1000Wとし、処理時間30秒では処理電力を100W、200W、600Wとし、処理時間60秒では処理電力を200W、600W、1000とし、処理時間180秒では処理電力を200W、600Wとし、処理時間600秒では処理電力を600Wとした。
なお、本実験例の処理時間は、先行処理表面、後行処理表面で同一であり、上記の処理時間は、片面あたりの処理時間を示す(後掲の表1、2も同じ)。このため、表面改質工程の全体としては、上記の2倍の処理時間がかかっている。
剥離強度の評価としては、塗料層3の表面を、アルコールを浸したクリーニングペーパーで10往復拭き取り、塗料が剥がれるかどうかを確認することにより実施した。ここで、クリーニングペーパーとしては、キムワイプ(登録商標)(日本製紙クレシア(株)製)を使用した。
これらの評価結果を下記表1、2に示す。ここで、表1は、Alの比率のXPSによる測定結果であり、表2は、剥離強度の評価結果である。いずれも「−」は、実験を行っていないことを示す。また、表2において、「○」は塗料の剥離が生じなかったことを表し、「×」は塗料の剥離が生じたことを表す。また、「△」は、剥離が発生せず、チューブ本体2に変形が見られたことを表す。
Figure 0006027857
Figure 0006027857
[実験例II]
実験例IIは、上記実施形態の製造方法の表面改質工程において、スパッタ処理が行われないようにして、比較例のチューブ本体を形成し、このチューブ本体に、上記実施形態と同様にして塗布剤層形成工程を行った。
図10は、比較例のフッ素樹脂製部品の製造方法に用いた表面処理装置の概略構成を示す模式的な斜視図、および模式的なK−K断面図である。
本実験例では、図10に示す表面処理装置100を用いてプラズマ処理を行った。
表面処理装置100は、表面処理装置10の真空チャンバー11、改質材料電極12、上部電極14、固定治具13に代えて、合成石英製真空チャンバー101、合成石英製真空チャンバー101の外側に密着して上下方向に互いに対向する電極102、103、チューブ本体2を合成石英製真空チャンバー101の内部に保持する固定治具13と同様の材質からなる固定治具104を備える。
表面処理装置100は、表面処理装置10と同様、高周波電源15、ガス供給部16、排気部17を備えるため、表面処理装置10と同様のプラズマ処理を行うことができる。ただし、チューブ本体2の近傍には、改質材料となる金属部材等が配置されていないため、プラズマ処理とともにスパッタが起こることはない。
実験条件としては、処理電力は600Wに固定し、処理時間を3秒、30秒、60秒、600秒に変化させた。評価としては、実験例Iと同様の評価を行った。この評価結果を下記の表3、4に示す。
Figure 0006027857
Figure 0006027857
表1によれば、実験例Iでは、サンプル表面には、いずれもスパッタ粒子TであるAlが分散されており、表面におけるAlの比率の大きさは、処理電力が大きいほど大きく、また処理時間が長いほど大きくなっている。したがって、処理電力、処理時間を組み合わせることで、チューブ本体2の表面におけるAlの比率の調整が可能であることが分かる。
ただし、処理時間180秒、600秒のサンプルでは、最初に表面改質処理した先行処理表面と、チューブ本体2を裏返して後から表面改質処理した後行処理表面とでは、スパッタ粒子Tの分布がまったく異なっていた。すなわち、後行処理表面には、表1に示すようなAlの比率が測定されたが、先行処理表面では、Alがほとんど認められず、0.5at%未満になっていた。
このような先行処理表面において走査型電子顕微鏡(SEM)による観察(以下、SEM観察と称する)を行ったところ、サンプル表面が荒れており、スパッタ粒子Tが存在しない部位では、表面層の剥離が観察された。
そこで、処理時間10秒で処理電力を代えてチューブ本体2の片面のみにプラズマ処理を行って、サンプル表面を比較観察したところ、処理電力400Wからサンプル表面の荒れが発生し、処理電力、処理時間の増大とともに、サンプル表面の荒れや剥離が増大することが分かった。
先行処理表面は、後行処理表面の表面改質が行われる間、Arガスプラズマに暴露される。真空チャンバー11内では、チューブ本体2よりも上部電極14寄りの位置に形成されるプラズマ発生空間から改質材料電極12に向かうArイオンの流れが常に形成される。このため、プラズマに長時間曝されていると、表面に一旦付着したAlに、プラズマ中のArイオンが繰り返し衝突する結果、Alが表面から離脱したり、サンプル表面の表面層が剥離するのと一緒に剥落したりしていると考えられる。
なお、このようなArイオンの衝突は、主として上部電極14の方から改質材料電極12に向かう方向において発生する。このため、改質材料電極12に対向する表面におけるイオン衝突の影響は、対向しない表面に比べると小さい。
したがって、先行処理表面のスパッタ粒子Tの比率を好適な範囲に維持するためには、先行処理表面が改質材料電極12に対向しない間のプラズマ処理の影響を低減できる処理時間、処理電力を設定することが必要である。
また、表1と表2の結果を比較すると、塗料の剥離に関しては、Alの比率が0.5at%〜50at%の範囲において、剥がれることはなかったため、塗料層3の剥離強度は良好であることが分かる。
また、剥離したサンプルを観察すると、Alの比率が50at%を越えている部位と、Alの比率が0.5at%未満の部位との両方で、剥離が起こっていた。
また、1000W、60秒の条件では、チューブ本体2の変形が発生していた。これは、処理中の温度上昇の影響によると熱変形と思われる。
処理電力600Wでは、600秒処理を行っても熱変形は生じていないため、変形を防止するには、処理電力を600Wと1000Wとの間に設定するとともに、処理時間を60秒と600秒との間に設定すればよいことが分かる。
表3によれば、実験例IIでは、サンプル表面にAlが存在していないことが分かる。これは、スパッタ粒子Tが発生しないため、基材表面2aの表面には活性表面2Aが形成されるのみで、改質表面Sは形成されないことを意味している。
また、表4によれば、実験例IIでは、処理時間3秒から600秒の範囲でいずれも塗料が剥離しており、良好な剥離強度が得られていないことが分かる。
したがって、Arガスプラズマによるプラズマ処理のみでは、良好な剥離強度を得ることができないのに対して、本実施形態のスパッタ粒子Tが分散された改質表面Sでは、短時間の処理であっても良好な剥離強度が得られることが分かる。
本実施形態における塗料密着性向上メカニズムは完全には解明されていないが、以下のようなメカニズムであると考えられる。
プラズマにさらされた基材表面2aは、プラズマ中のイオンの衝突などにより、脱フッ素や官能基の置換などが発生し、一部が活性化して活性表面2Aが形成される。同時にAl電極である改質材料電極12の表面がスパッタされ、Al原子が飛散、Al原子のまま、もしくはその酸化物、窒化物となって基材表面2aに付着する。
このうち、活性表面2Aに到達したAl原子、もしくはその酸化物あるいは窒化物は、活性表面2Aが活性化されているため、強固に密着する。さらに、塗料中の樹脂成分は、このような改質表面Sにおいて、Al原子と密着する結合と、樹脂成分とフッ素が脱離した樹脂表面との直接結合とによって、改質表面Sと結合される。このため、これらの2種類の結合が相俟って塗料とフッ素樹脂とが強固に密着する。
このとき、上記実験例Iに示されたように、改質表面SにおけるAlの比率が、0.5at%〜50at%のときに、塗料の密着強度が良好となる。これは、Alの割合が0.5at%未満では改質効果が乏しく、50at%を超えると、活性化していない基材表面2aへの付着量が多くなるからと考えられる。活性化していない基材表面2aに付着したAl原子は、フッ素樹脂に対する付着力が強くないため、表面が汚れた状態に近いと考えられる。
このようなAl原子の作用は、活性表面2Aに分散した状態で発揮されるため、活性化したフッ素樹脂表面および塗料の樹脂成分と結合可能な微粒子であれば、同様な作用を備える。このため、スパッタ粒子Tとしては、上述したような種々の微粒子が複数種類混在した構成も可能である。
実施例1のように、チューブ本体2を裏返して先行処理表面と後行処理表面とを改質材料電極12に順次向けることによりチューブ本体2の全周を表面改質する場合には、処理時間は短い方が好ましい。処理時間が短いと、後行処理表面の表面改質処理時に、改質済みの先行処理表面にプラズマが作用する時間も短くなるため、Arイオンの衝突が低減される。これにより、改質表面Sが劣化しにくくなり、塗料層3の密着強度をより向上することができる。
例えば、実施例1のより好適な処理条件としては、処理時間としては片面あたり60秒以下が好ましい。処理電力は400W以下が好ましい。
本実施形態のフッ素樹脂製部品の製造方法およびフッ素樹脂製部品によれば、基材表面2aをプラズマ処理するとともにスパッタ粒子を分散させて表面改質してから、塗料を塗布して、塗料層3を形成するため、基材表面2aの化学組成を変化させて塗料の密着性を向上させることができる。このため、薬液処理を用いることなく塗料を良好に密着させることができるとともに、製造時間を短縮することができる。
また、本実施形態では、プラズマ処理と同時にスパッタ処理を行うことにより、プラズマ処理のみではなしえない表面改質を格段に短時間で実現することができる。
また、本実施形態では、改質表面Sをチューブ本体2の周方向の全周にわたって形成しているため、チューブ本体2の軸方向の略全体において全周にわたって、チューブ本体2に対する密着性が高い塗料層3を形成することができる。
ただし、塗料層3は、改質表面S上であれば、どの位置に形成してもよく、形状も全周にわたる帯状の形状には限定されない。例えば、周方向において途切れた帯状の形状や、帯状以外の適宜の模様、図柄、記号、文字などであってもよい。
また、本実施形態では、改質表面Sを全周にわたって形成しているため、塗料層3の塗布領域に合わせて、改質表面Sを部分的に形成する場合に比べると、塗布剤層形成工程において塗布手段に対するチューブ本体2の位置決めが容易となり、作業効率を向上することができる。
[第1変形例]
次に、本実施形態の第1変形例について説明する。
図4(a)は、本発明の実施形態の第1変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法で製造されたフッ素樹脂製部品の構成を示す模式的な正面図である。図4(b)、(c)、(d)は、図4(a)におけるD−D断面図、E−E断面図、およびF−F断面図である。図5(a)は、本発明の実施形態の第1変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法に用いる表面処理装置の概略構成を示す縦断面図である。図5(b)は、図5(a)におけるH−H断面図である。
図4(a)に示すように、本変形例の医療用チューブ20(フッ素樹脂製部品)は、上記実施形態の改質表面Sに代えて、改質表面Sを備え、塗料層3の形成位置が異なる。以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
改質表面Sは、上記実施形態において改質表面Sが改質材料電極12よりもやや広い範囲に形成され、両端部の一部を除いて略チューブ本体2の全体に形成されていたのに対して、より狭い範囲に選択的に形成されている。
本変形例では、改質表面Sは、一例として、チューブ本体2を軸方向に3等分したうちの中央の領域Gに形成されている。
また、図4(a)、(c)に示すように、塗料層3は、この改質表面S上において、軸方向に離間した2箇所に、上記実施形態と同様にして形成されている。
このため、図4(a)、(b)に示すように、領域Gにおいて各塗料層3の間の領域では、医療用チューブ20の最外面が改質表面Sになっている。
また、チューブ本体2において領域G外には、図4(d)に示すように、改質表面Sは形成されていない。
以下の本変形例の説明では、具体例を挙げて説明する場合、特に断わらない限り、一例として、チューブ本体2が、内径3.0mm、外径4.0mm、長さ300mmの形状を有するPTFE製のチューブであり、改質表面Sに含まれるスパッタ粒子Tが、Auの場合の例で説明する。この具体例に対応する実施例を、以下、実施例2と称する。
実施例2では、領域Gは、チューブ本体2の軸方向の中央部に幅100mmにわたって形成されている。
次に、本変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法について説明する。
本変形例の製造方法は、上記実施形態と同様に、表面改質工程と、塗布剤層形成工程とを備える。本変形例の表面改質工程は、上記実施形態の表面処理装置10に代えて、表面処理装置30を用いて行うことができる。以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
表面処理装置30は、図5(a)、(b)に示すように、表面処理装置10の改質材料電極12に代えて、下部電極32(改質材料、第1電極部)を備え、改質材料部材31(改質材料)を追加したものである。
下部電極32は、高周波電圧を印加することで、上部電極14とともに真空チャンバー11に充填された不活性ガスによるプラズマを形成する電極であり、固定治具13上に保持された各チューブ本体2の領域Gを含む矩形状の処理エリアJを下方側から覆う大きさを有している。
下部電極32の材質としては、例えば、上記実施形態の改質材料電極12と同様の材質を採用することができるが、本変形例では、改質表面Sのスパッタ粒子Tの主成分は、改質材料部材31から発生させるため、下部電極32の材質としては、改質材料部材31の材質に比べてスパッタレートが小さい材質を採用することが可能である。
本変形例では、一例として、Ti製の電極を採用している。
改質材料部材31は、下部電極32と上部電極14との間で形成されたプラズマにより容易にスパッタされる部材であり、下部電極32上に載置可能な矩形板を採用している。
改質材料部材31の大きさおよび配置位置は、改質材料部材31からスパッタされるスパッタ粒子Tが到達する処理範囲が、処理エリアJに重なるように大きさおよび配置位置を設定する。
また、改質材料部材31の材質は、上記実施形態と同様のArガスプラズマによって、改質表面Sを形成するための主成分のスパッタ粒子Tが発生する材質で構成される。
具体的には、実施例2の場合、改質材料部材31は、幅10mm×長さ30mm×厚さ1mmのAu板を採用している。
本変形例の表面改質工程では、まず、図5(a)、(b)に示すように、下部電極32上に改質材料部材31を載置してから、真空チャンバー11内に配置された固定治具13上にチューブ本体2をセットする。
このとき、改質材料部材31の配置位置と、改質材料部材31とチューブ本体2との間の距離は、スパッタ粒子Tが処理エリアJ内のチューブ本体2の表面に到達する位置に配置する。
例えば、改質材料部材31は、チューブ本体2の下方であって、平面視(図5(b)参照)の位置が、チューブ本体2の軸方向に沿う方向では処理エリアJの中央部、かつチューブ本体2と直交する方向では処理エリアJを横断する位置となるように配置する。
改質材料部材31とチューブ本体2との間の距離は、処理エリアJの大きさなどにもよるため特に制限はない。ただし、改質材料部材31からのスパッタ粒子Tが効率良くチューブ本体2に到達するためには、改質材料部材31とチューブ本体2との間の距離は、200mm以下であることが好ましく、さらに材料の効率的な使用や処理時間の短縮といった観点からは50mm以下とすることが望ましい。
実施例2の処理エリアJ、改質材料部材31の条件では、チューブ本体2の高さは改質材料部材31から10mmの高さに配置している。
次に、上記実施形態と同様にして、真空チャンバー11内に圧力が安定したArガスによる不活性ガス雰囲気を形成した後、Arガスプラズマを発生させ、一定時間かけてプラズマ処理を行う。実施例2では、13.56MHz、出力200Wで5秒間処理した。
このプラズマ処理では、上記実施形態とスパッタ粒子Tの金属元素が異なるのみで、同様にして、基材表面2aが活性化されるとともに、チューブ本体2の下半領域の活性表面にスパッタ粒子Tが分散して付着し、改質表面Sが形成されていく。
このとき、下部電極32および改質材料部材31は、いずれもスパッタされるため、スパッタ粒子Tには、Ti原子と、Au原子とが含まれることになる。ただし、TiとAuとでは、Auの方が2倍以上のスパッタレートを有するため、改質表面Sに含まれるスパッタ粒子Tの比率は、Tiに比べてAuの方が大きくなる。
このようにして、プラズマ処理およびスパッタ処理が終了すると、上記実施形態と同様にして、各チューブ本体2を裏返して固定治具13に再びセットした後、上記と同様の処理を行う。
以上で、本変形例の表面改質工程が終了する。
次に、真空チャンバー11を大気開放して、処理が終了したチューブ本体2を真空チャンバー11から取り出し、上記実施形態と同様にして、塗布剤層形成工程を行う。
このようにして、医療用チューブ20が製造される。
実施例2の条件で医療用チューブ20を製造した際、塗布剤層形成工程の前後で、上記実施形態の実験例Iと同様な評価を行った。
すなわち、表面改質工程が終了したチューブ本体2の表面を、XPSによって測定したところ、スパッタ粒子Tの比率は、Tiが0.9at%、Auが3.6at%であった。このため、上記実施形態で説明した好適な範囲の比率のスパッタ粒子Tが分散して付着しており、改質表面Sが形成されていることが確かめられた。
また、塗布剤層形成工程後、医療用チューブ20の塗料層3に対して、上述の剥離強度評価を行ったところ、塗料の剥離は見られなかった。
このように、本変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法によれば、スパッタ粒子Tとして、複数種類の金属元素を含む改質表面Sを形成することで、良好な剥離強度を得ることができる。
また、実施例2に用いた、TiやAuは生体適合性に優れた材料であるため、医療用材料に特に適している。その他医療用途に適した材料としては、Au、Ti以外にもPt、あるいは合金では、ステンレス組成であるもの、Ti合金組成であるもの、Co−Cr合金組成であるものが好適である。また、酸化物、窒化物では、Tiの酸化物、窒化物、Alの酸化物、窒化物が好適である。
本変形例によれば、下部電極32のスパッタレートが小さい場合にも、よりスパッタレートが大きい材質の改質材料部材31を、プラズマが作用するチューブ本体2の近傍に配置することで、改質材料部材31からのスパッタ粒子Tが、下部電極32からのスパッタ粒子Tの不足量を補って、合計の付着量を増加させることができる。このため、好適な付着量を得るための処理時間が短縮されるため、医療用チューブ20を迅速に製造することができる。
また、本変形例では、医療用チューブとして種々の形状、数量を製造する場合、処理エリアJの大きさや、製造量に応じて、改質材料部材31の大きさや形状を変えることで、迅速に対応できる。
また、本変形例では、改質材料部材31に比べて、下部電極32の消耗が少ないため、電極交換作業等、メンテナンスに要する時間も低減することができる。
[第2変形例]
次に、本実施形態の第2変形例について説明する。
図6(a)は、本発明の実施形態の第2変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法で製造されたフッ素樹脂製部品の構成を示す模式的な正面図である。図6(b)、(c)は、図6(a)におけるM−M断面図、およびN−N断面図である。図7(a)は、本発明の実施形態の第2変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法に用いる表面処理装置の概略構成を示す縦断面図である。図7(b)は、図7(a)におけるQ−Q断面図である。
図6(a)、(b)、(c)に示すように、本変形例の医療用チューブ40(フッ素樹脂製部品)は、上記実施形態の医療用チューブ1の改質表面S、塗料層3に代えて、改質表面S、塗料層43(塗布剤層)を備える。以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
改質表面Sは、上記実施形態の改質表面Sと略同様にしてチューブ本体2の表面を改質して形成されたもので、周方向の形成領域が異なる。上記実施形態の改質表面Sが改質材料電極12よりもやや広い範囲において周方向の全周にわたって形成されていたのに対して、改質表面Sは、周方向の半周分のみの領域Pに形成されている。
このため、領域Pを除くチューブ本体2の最外面におけるスパッタ粒子Tの比率は、0at%以上0.5at%未満である。
塗料層43は、上記実施形態の塗料層3と同様な材質からなり、周方向の塗布領域のみが異なる。すなわち、上記実施形態では、チューブ本体2の軸方向に沿って一定幅の塗布部分が、軸方向に一定の距離をあけて複数形成され、チューブ本体2の外周部の全周に形成されていたのに対して、本変形例の塗料層43は、周方向の形成位置が改質表面S上の半周分のみである点が異なる。
例えば、図6(a)に示すように、塗料層43は、改質表面S上において、軸方向に離間した2箇所に、上記実施形態と同様にして形成されている。
以下の本変形例の説明では、具体例を挙げて説明する場合、特に断わらない限り、一例として、上記実施例1と同様に、チューブ本体2が、内径2.5mm、外径3.5mm、長さ300mmの形状を有するPTFE製のチューブであり、改質表面Sに含まれるスパッタ粒子TがAlの場合の例で説明する。この具体例に対応する実施例を、以下、実施例3と称する。
次に、本変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法について説明する。
本変形例の製造方法は、上記実施形態と略同様の、表面改質工程と、塗布剤層形成工程とを備える。本変形例の表面改質工程は、上記実施形態の表面処理装置10を用いて行うことも可能であるが、実施例3では、一例として、図7(a)、(b)に示す表面処理装置50を用いて行っている。以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
表面処理装置50は、上記実施形態の表面処理装置10の上部電極14を削除し、真空チャンバー11の内面部11aを接地して第2電極部を構成した点のみが異なる。このような構成は、プラズマ電源として高周波電源15を用いる場合に特に好適である。
本変形例の表面改質工程では、まず、図7(a)、(b)に示すように、真空チャンバー11内に配置された固定治具13上にチューブ本体2をセットする。
このとき、被処理面である領域Pの全体が改質材料電極12の方に向くようにチューブ本体2を配置する。チューブ本体2の配置高さは、上記実施例1と同様、改質材料電極12から10mmの高さとしている。
次に、上記実施形態と同様にして、真空チャンバー11内に圧力が安定したArガスによる不活性ガス雰囲気を形成した後、Arガスプラズマを発生させ、一定時間かけてプラズマ処理を行う。実施例3では、実施例1と同様に、13.56MHz、出力200Wで30秒間処理した。
これにより、実施例1と同様に基材表面2aがプラズマ処理されて活性化されるとともに、チューブ本体2の下半領域である領域Pの活性表面にスパッタ粒子Tが分散して付着し、改質表面Sが形成されていく。
本変形例では、上部電極14に代えて真空チャンバー11の内面部11aが第2電極部になっているため、プラズマ発生空間の分布が、上記第1の実施形態とは多少異なる。ただし、第2電極部とチューブ本体2との間に形成されるプラズマ発生空間からArイオンが改質材料電極12に向かうことは同じであるため、チューブ本体2のうち改質材料電極12の方に向いた表面にはArイオンが直接的に照射されることはない。
以上で、本変形例の表面改質工程が終了する。
次に、真空チャンバー11を大気開放して、処理が終了したチューブ本体2を真空チャンバー11から取り出し、上記実施形態と略同様にして、塗布剤層形成工程を行う。
本変形例の塗布材層形成工程では、塗料層43の形状に合わせて、領域P上のみに、塗料層43を形成する点のみが上記実施形態と異なる。
このようにして、医療用チューブ40が製造される。
次に、本変形例における、改質表面Sにおけるスパッタ粒子Tの比率の好ましい範囲について調べた実験例IIIの結果について説明する。
[実験例III]
実験例IIIでは、上記実施例3において、高周波電源15による処理電力を100W〜1000Wの範囲で変え、処理時間を3秒〜1200秒の範囲で変えて、本変形例の表面改質工程と同様にして改質表面Sを有するチューブ本体2のサンプルを形成した。そして、各サンプルの改質表面SのAlの比率をXPSで測定した。また、各サンプルに本変形例の塗布剤層形成工程と同様にして、塗料層43を形成した後、塗料層43の剥離強度を、上記実施形態の実験例Iと同様にして評価した。
実験例IIIにおける処理時間と処理電力との具体的な組合せは、処理時間3秒では処理電力を100W、1000Wとし、処理時間60秒では処理電力を600W、1000Wとし、処理時間180秒では処理電力を100W、600Wとし、処理時間600秒では処理電力を100W、200W、600Wとし、処理時間1200秒では処理電力を200W、600Wとした。
これらの評価結果を下記表5、6に示す。ここで、表5は、領域PにおけるAlの比率のXPSによる測定結果であり、表6は、剥離強度の評価結果である。いずれも「−」は、実験を行っていないことを示す。また、表6において、「○」は塗料の剥離が生じなかったことを表し、「×」は塗料の剥離が生じたことを表す。また、「△」は、剥離が発生せず、チューブ本体2に変形が見られたことを表す。
Figure 0006027857
Figure 0006027857
表5によれば、実験例IIIでは、サンプル表面の領域Pには、いずれもスパッタ粒子TであるAlが分散されていた。ここで、処理時間180秒以上の場合でも、サンプル表面のAlの比率は略均一であり、実験例Iのように一部のAlの比率が0.5at%未満になるようなムラは発生していなかった。ただし、領域Pを除くサンプル表面におけるAlの比率は表面改質されていないため、0.5at%未満であった。
表5から分かるように、領域Pのサンプル表面におけるAlの比率の大きさは、処理電力が大きいほど大きく、また処理時間が長いほど大きくなっている。したがって、処理電力、処理時間を組み合わせることで、チューブ本体2の領域PにおけるAlの比率の調整が可能であることが分かる。
なお、領域Pのサンプル表面においてSEM観察を行ったところ、サンプル表面の剥離は観察されなかった。
表5と表6の結果を比較すると、実験例Iと同様に、塗料の剥離に関しては、Alの比率が0.5at%〜50at%の範囲において、剥がれることはなかったため、塗料層43の剥離強度は良好であることが分かる。
また、処理時間1200秒では熱変形は見られたものの、処理時間180秒から1200秒の条件でも、塗料層43の剥離は発生しなかった。
これは、実験例IIIでは、チューブ本体2を裏返して表面改質を行うことがないため、改質表面Sの形成後にさらにArイオンが照射されることがなく、改質表面Sの劣化が進行しなかったためと考えられる。
本変形例によれば、基材表面2aの半周分の領域Pのみにスパッタ粒子Tを分散させて表面改質してから、塗料を塗布して塗料層43を形成する。このため、改質表面Sの劣化を起こらず、基材表面2aの化学組成を変化させて塗料の密着性を向上させることができる。
これにより、塗料層43を領域Pのみに形成すればよい場合に、薬液処理を用いることなく塗料を良好に密着させることができるとともに、スパッタ粒子Tを用いた表面改質を行わない従来技術に比べて製造時間を短縮することができる。
また、本変形例では、領域P以外の領域を表面改質しなくてよいため、上記実施形態における片面あたりの処理時間で表面改質を行うことが可能である。ただし、本変形例では、表6と表2を対比すれば分かるように、処理時間が長くなっても、形成された改質表面Sが劣化しにくい。このため、処理時間自体は、上記実施形態の片面あたりの処理時間よりも長くすることが可能である。したがって、処理時間にバラツキの許容範囲が広がり、処理時間の管理が容易となる。
[第3変形例]
次に、本実施形態の第3変形例について説明する。
図8(a)は、本発明の実施形態の第3変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法に用いる表面処理装置の概略構成を示す縦断面図である。図8(b)は、図8(a)におけるU−U断面図である。図9(a)、(b)は、図8(a)におけるR−R断面図である。
本変形例は、上記実施形態の医療用チューブ1の製造方法の変形例であり、図8(a)、(b)に示す表面処理装置60を用いて行うことができる。ただし、図8(a)、(b)は、見易さのため、固定治具13に保持するチューブ本体2の本数を削減している。
以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
表面処理装置60は、上記実施形態の表面処理装置10に遮蔽部材61を追加したものである。
遮蔽部材61は、Arガスプラズマにおいてプラズマ発生空間から改質材料電極12に向かうArイオンI(イオン)を部分的に遮蔽するために設けられた部材であり、固定治具13に支持されたチューブ本体2における改質材料電極12と反対側の表面を覆うように配置されている。
本変形例の遮蔽部材61は、固定治具13の上端部に係止される一対の取付部61bの間に、チューブ本体2の長手方向に沿って延びる複数の遮蔽部61aが、チューブ本体2の配列方向に間を開けて配置された、平面視平行格子状の部材である。
各遮蔽部61aは、チューブ本体2の短手幅以上の短手幅を有する矩形板状に設けられ、図9(a)に示すように、チューブ本体2の上方において改質材料電極12に平行に配置されている。
このため、隣り合う遮蔽部61aの間には開口部61cが形成されている。改質材料電極12は、チューブ本体2の短手幅よりも広幅であるため、開口部61cの下方には、改質材料電極12が位置している。
本変形例の表面改質工程では、まず、図8(a)、(b)に示すように、真空チャンバー11内に配置された固定治具13上にチューブ本体2をセットする。
このとき、各チューブ本体2は、固定治具13の内側では、遮蔽部材61の遮蔽部61aの下方に隠れる位置に配置される。
遮蔽部61aの配置高さは、チューブ本体2に向かうArイオンIがチューブ本体2の上半領域W(図9(a)参照)に照射されにくいような適宜高さに設定する。
ただし、開口部61cが狭くなると、ArイオンIが改質材料電極12に到達しにくくなり、スパッタ粒子Tが減ったり、発生したスパッタ粒子Tがチューブ本体2の下半領域V(図9(a)参照)に到達しにくくなったりする。
このため、遮蔽部61aは、なるべくチューブ本体2の上端部に近づけて配置し、遮蔽部61aの短手幅をチューブ本体2の短手幅と同程度とすることが好ましい。
また、チューブ本体2の基材表面2aと改質材料電極12との距離を縮めることにより、遮蔽部材61と基材表面2aの上半領域Wとの間に、ArイオンIが侵入しにくくなって好ましい。
このため、遮蔽部材61の短手方向の端部における基材表面2aとの隙間は、2mm以下とすることが好ましい。
遮蔽部材61の材質は、導電性材料でも、絶縁性材料でもよく、例えば、金属、合成樹脂などで製作することが可能である。
図9(a)に示すように、表面改質処理が開始されると、ArガスプラズマによるArイオンIは、一部が開口部61cを通過し、遮蔽部材61と改質材料電極12の間に侵入する。
侵入したArイオンIは、チューブ本体2の基材表面2aに到達した場合には、基材表面2aを活性化して活性表面2Aを形成する。また、改質材料電極12に到達したArイオンIは、上記実施形態と同様にスパッタ粒子Tを発生させる。スパッタ粒子Tは、チューブ本体2の下半領域Vに到達して、領域Vに改質表面Sを形成する。
ただし、本変形例では、チューブ本体2の直上は、遮蔽部61aに覆われているため、が、チューブ本体2の直上に照射されたArイオンIは、直接的には、チューブ本体2の上半領域Wには到達しない。
このため、上半領域Wに到達するArイオンIは、改質材料電極12に反射するなどして、運動エネルギーが低下しているため、ArイオンIが到達しても、表面が劣化するほど高速に衝突することはない。
上記実施形態と同様の処理時間が経過したら、先行処理表面の処理を終了し、後行処理表面の処理を開始する。すなわち、真空チャンバー11内を大気開放し、各チューブ本体2を裏返して、上記と同様にして固定治具13に再びセットした後、上記と同様の処理を行う。これにより、初めの処理で下半領域Vに位置していた改質表面Sが上半領域Wに移動する。
このため、下半領域Vに配置された後行処理表面には改質表面Sが形成される。
一方、改質表面Sを形成済みの先行処理表面は、遮蔽部61aによって運動エネルギーの大きなArイオンIの直接的な照射を受けることないため、ArイオンIによる改質表面Sの劣化が抑制される。
以上で、本変形例の表面改質工程が終了する。
次に、上記実施形態と全く同様にして塗布剤層形成工程を行うことにより、医療用チューブ1を製造することができる。
本変形例の製造方法によれば、処理時間が、上記実施形態より長くなっても、チューブ本体2の全周にわたって良好な改質表面Sを形成することができる。
また、ArイオンIによる上半領域Wの表面の荒れや、改質済みの改質表面Sの劣化がほとんど発生しないため、スパッタ粒子Tを効率よく付着させることができる。
例えば、上記実施形態では、運動エネルギーが高いArイオンIに起因する劣化が考えられるため、予め部分的な劣化を見越して、先行処理表面に目標の比率よりも多めにスパッタ粒子Tを分散させることが考えられる。
しかし、本変形例では、このような劣化を想定しなくてもよいため、先行処理表面にはスパッタ粒子Tの本来の目標の比率になるように、表面改質処理を行えばよい。このため、劣化を見越した処理を行う場合に比べて処理時間を短縮できる。
本変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法では、上記実施形態と同様、表面改質工程は、第1電極部に向けられた基材の表面の一部を被処理面として、改質表面を形成する第1改質工程と、前記基材を前記第1電極部に対して裏返された位置関係に配置位置を変更する移動工程と、前記基材の表面の一部と反対側の表面を前記被処理面として、前記改質表面を形成する第2改質工程と、を備え、前記第1改質工程、前記移動工程、および前記第2改質工程をこの順に行うことにより、前記基材の表面を周回する連続領域に前記改質表面を形成する工程になっている。
ただし、第1改質工程および第2改質工程において、前記基材を挟んで前記第1電極部と反対側に、前記基材の表面を覆う遮蔽部材を配置した状態で前記改質表面を形成する点が上記実施形態と異なる。
本変形例では、遮蔽部材61が、改質材料電極12と平行な板状の遮蔽部61aを有する場合の例で説明したが、遮蔽部材はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、図8(a)、(b)に示すように、遮蔽部材61に代えて、遮蔽部材62を採用することが可能である。
遮蔽部材62は、図9(b)に示すように、遮蔽部61aに代えて、チューブ本体2と略同心円(同心円を含む)をなす円弧状に湾曲された板状の遮蔽部62aを備えたものである。
遮蔽部材62によれば、遮蔽部62aとチューブ本体2との間の隙間を略一定保つことができるため、遮蔽部材61に比べて、遮蔽部62aの短手方向の端部とチューブ本体2の基材表面2aとの間の隙間を低減することができる。この場合、遮蔽部材61の場合に比べて、遮蔽部62aと基材表面2aとの間にArイオンIがより侵入しにくくなる。
また、遮蔽部62aの短手幅をチューブ本体2の短手幅に略一致させても、ArイオンIの侵入を防止できるため、改質表面Sを劣化させることなく開口部61をより広くとることができる。
なお、上記の実施形態、各変形例の説明では、フッ素樹脂製部品が、医療用チューブである場合の例で説明したが、フッ素樹脂製の部品であれば、医療用以外に用いるフッ素樹脂製部品であってもよい。
また、フッ素樹脂製部品の形状は、チューブには限定されない。例えば、中実の線状部材、棒状部材でもよく、平板状、湾曲板状の板部材やシート部材でもよい。また、適宜の立体形状に形成された成形品でもよい。
また、上記の実施形態、各変形例の説明では、塗布剤層が、マーキング塗料で形成されたマークキング部を構成する場合の例で説明したが、塗布剤層は、マーキング用途には限定されない。例えば、表面保護用途や、装飾用途で形成された塗布剤層でもよい。
また、塗布剤層は、フッ素樹脂表面に密着させる合成樹脂を含む層であればよく、着色の有無は問わず、塗料にも限定されない。例えば、塗布剤層は、接着剤や、接着剤を含む樹脂材料でもよい。
また、上記の実施形態の各変形例の説明では、改質材料部材31を下部電極32上であって、チューブ本体2と下部電極32との間に配置した場合の例で説明したが、改質材料部材31の配置場所は、真空チャンバー11内でスパッタされ、スパッタ粒子Tがチューブ本体2の表面に到達すれば、このような配置には限定されない。したがって、改質材料部材31は、チューブ本体2の近傍の適宜位置、例えば、チューブ本体2の側方などに配置することもできる。
また、上記の実施形態および各変形例の説明では、改質材料を粒子化し飛散させる処理は、改質材料を物理的にスパッタする処理によって行った場合の例で説明したが、改質材料を粒子化し飛散させることができれば、これに限定されない。例えば、改質材料を加熱して粒子化し飛散させてもよいし、改質材料にレーザ光等のビーム照射を行って粒子化し飛散させてもよい。
また、上記の実施形態および各変形例の説明では、表面改質工程を行うためのプラズマ発生電源として、高周波電源15を用いた場合の例で説明したが、ブラズマ発生電源は、改質材料をスパッタ可能なプラズマを発生させることができれば、高周波電源には限定されない。例えば、直流電源、交流電源を用いることが可能である。
また、上記の第3変形例の説明では、遮蔽部材61が、チューブ本体2から離間して設けられた場合の例で説明したが、基材表面2aに沿う形状の半円状の断面を有する遮蔽部材を、チューブ本体2の基材表面2aに密着して配置することも可能である。
このような遮蔽部材は、例えば、金属や合成樹脂によって形成することができる。
合成樹脂によって形成する場合には、遮蔽部材を形成する樹脂材料を基材表面2aに塗布後に硬化させることにより形成してもよい。
このような合成樹脂塗布による遮蔽部材は、先行処理表面の表面改質が終了したら除去することができる。このため、合成樹脂塗布による遮蔽部材の材料は、表面改質工程を行う間のみ基材表面2aに密着するような密着強度が低い合成樹脂を採用することが可能である。
また、合成樹脂塗布による遮蔽部材は、初めの表面改質処理によるArイオンIの照射によってエッチングされるように、合成樹脂の層厚を調整しておけば、遮蔽部材を除去する工程は省略できるため、より好ましい。
また、上記の実施形態、各変形例で説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり、削除したりして実施することができる。
例えば、第2変形例に用いた表面処理装置50は、上記実施形態や他の変形例のフッ素樹脂製部品の製造方法にも同様に用いることができる。
1、20、40 医療用チューブ(フッ素樹脂製部品)
2 チューブ本体(基材)
2A 活性表面
2a 基材表面
3、43 塗料層(塗布剤層)
10、30、50、60 表面処理装置
11a 内面部(第2電極部)
12 改質材料電極(改質材料、第1電極部)
15 高周波電源
16 ガス供給部
17 排気部
31 改質材料部材(改質材料、第1電極部)
32 下部電極(改質材料)
61、62 遮蔽部材
I Arイオン(イオン)
P 領域(被処理面)
、S、S 改質表面
T スパッタ粒子(粒子)

Claims (6)

  1. フッ素樹脂製の基材の表面に、不活性ガスによるプラズマ処理を施しつつ、1種類以上の金属元素を含む改質材料を粒子化し前記基材の表面に向けて飛散させることにより、前記基材の表面に、前記金属元素を含む金属もしくは合金、前記金属元素の酸化物、または前記金属元素の窒化物を含む粒子が分散された改質表面を形成する表面改質工程と、
    合成樹脂を含む塗布剤を前記改質表面の少なくとも一部に塗布して硬化させて塗布剤層を形成する塗布剤層形成工程と、
    を備え
    前記表面改質工程では、前記粒子を前記改質表面に0.5at%〜50at%含有させる
    ことを特徴とするフッ素樹脂製部品の製造方法。
  2. 前記表面改質工程では、
    前記改質材料を配した第1電極部と、該第1電極部から離間して配置された第2電極部との間に前記基材を配置し、前記第1電極部および前記第2電極部の間に不活性ガスを供給するとともに前記第1電極部および前記第2電極部に直流電源、交流電源、または高周波電源からなるプラズマ発生電源から電力を供給して前記第1電極部と前記第2電極部との間にプラズマを発生させて、前記第2電極部の方から前記第1電極部に向かうイオンの流れを形成することにより、前記改質材料を粒子化し、
    前記基材の表面のうち前記第1電極部の前記改質材料の方に向いている部位を被処理面として、前記改質材料の粒子を飛散させる
    ことを特徴とする請求項1に記載のフッ素樹脂製部品の製造方法。
  3. 前記表面改質工程では、
    前記基材を挟んで前記第1電極部と反対側に、前記基材の表面を覆う遮蔽部材を配置した状態で前記改質表面を形成する
    ことを特徴とする請求項2に記載のフッ素樹脂製部品の製造方法。
  4. 前記1種類以上の金属元素が、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)のうち少なくとも1種類を含む
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂製部品の製造方法。
  5. フッ素樹脂製の基材と、該基材の少なくとも一部の表面を覆う合成樹脂を含む塗布剤層とを有するフッ素樹脂製部品であって、
    前記塗布剤層と接する前記基材の表面の一部に、1種類以上の金属元素を含む金属もしくは合金、前記金属元素の酸化物、または前記金属元素の窒化物の粒子が分散されており、
    前記塗布剤層と接する前記基材の表面に前記粒子が0.5at%〜50at%含有されている
    ことを特徴とするフッ素樹脂製部品。
  6. 前記1種類以上の金属元素が、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)のうち少なくとも1種類を含む
    ことを特徴とする請求項に記載のフッ素樹脂製部品。
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