JP5153495B2 - マーキング部付きフッ素樹脂チューブの製造方法 - Google Patents
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(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態であるマーキング部付きフッ素樹脂チューブの一例を示す斜視図である。図1に示すように、本発明の実施形態であるマーキング部付きフッ素樹脂チューブ1は、可撓性を有するチューブ体である。また、マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1の表面1aにおいて、一端部1cと他端部1dとの間に挟まれた胴体部1eの表面7aは、表面を粗くする表面処理がなされ、マーキング部7とされている。
逆に、マーキング部7の表面荒さRzが165nmを超える場合には、マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1のマーキング部7の表面7aの微小な凹部が深すぎることとなり、一般的なマーキング方法では、マーキング材により、この微小な凹部の十分な深さまで埋めることができない。
なお、レーザー光により変換される記録材料を用いる必要はないが、そのような記録材料を用いて、マーキングを行っても構わない。
なお、マーキングは、前記塗料などを用いて目盛り、文字、図形等を描くことである。
また、マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1の大きさは、制限されない。たとえば、外径3mm、内径2mmのフッ素樹脂チューブなどを用いることができる。
さらにまた、フッ素樹脂チューブとしては、たとえば、PTFEグレード:62−J(ニチアス(株)製)、PTFEグレード:6C−J(中興化成工業(株)製)、あるいはFEP((株)潤工社製)などを用いることができる。
マーキング部付きフッ素樹脂チューブの製造方法は、押出成形法により成形されたフッ素樹脂チューブの表面に、表面を粗くする表面処理を行ってマーキング部を形成する方法を含む。
押出成形法では、一般に、表面が滑らかなフッ素樹脂チューブが成形されるので、上記のマーキング部を形成することは、マーキングのために有効な方法となる。
マーキング部7の形成方法は、マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1の表面1aを粗くすることができる方法であれば特に制限されず、どのような方法を用いてもよい。たとえば、大気圧プラズマ法、サンドブラスト法などを挙げることができる。
実施形態2、3において、大気圧プラズマ法、サンドブラスト法によるマーキング部7の形成方法について説明する。なお、マーキング部7の形成方法の参考例として、真空プラズマ法についても併せて説明する。
図2は、真空プラズマ法によるマーキング部7の形成方法の一例を説明する図である。
平行平板型RF真空プラズマ処理装置23は、真空チャンバ6と、真空ポンプ5と、処理ガス供給ユニット4と、RF電源3とを備えている。また、真空チャンバ6の内部には、2枚の平板電極2が対向されて配置されており、その2枚の平板電極の間に、マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1が配置されている。
次に、真空チャンバ6を真空ポンプ5で減圧状態にした後、処理ガス供給ユニット4から処理ガスを供給する。処理ガスは、プラズマを発生させることのできるガスならばどのようなものを用いても良く、たとえば、Ar、Heなどの希ガス、あるいはCH4、N2、O2などを用いることができる。
次に、13.56MHzのRF電源3を用いて、2枚の平板電極2に電力を印加する。2枚の平板電極2の間にプラズマが発生し、マーキング部7を形成していないフッ素樹脂チューブ32の表面の露出された部分の表面を粗くする表面処理がされて、マーキング部7が形成される。このようにして、マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1が形成される。
図4は、大気圧プラズマ法によるマーキング部7の形成方法の一例を説明する図である。
平行平板型RF大気圧プラズマ処理装置24は、2枚の平板電極2が対向されて配置されており、処理ガス供給ユニット4と、RF電源3とを備えている。また、その2枚の平板電極の間に、マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1が配置されている。
なお、平板電極2の一部には孔部31が設けられ、処理ガス供給ユニット4のガスを供給するパイプ30の一端30aがこの孔部31に挿入されている。そのため、処理ガス供給ユニット4のガスが、2枚の平板電極2の間に供給される構成とされている。このような構成により、2枚の平板電極2の間に電力が供給されたときに、2枚の平板電極2の間に供給されたガスを用いてプラズマを発生させることができる仕組みとされている。
次に、大気中で、処理ガス供給ユニット4から処理ガスを供給する。処理ガスは、プラズマを発生させることのできるガスならばどのようなものを用いても良く、たとえば、Ar、He、CH4、N2、O2などのガスを用いることができる。
次に、13.56MHzのRF電源3を用いて、2枚の平板電極2に電力を印加する。2枚の平板電極2の間にプラズマが発生し、マーキング部7を形成していないフッ素樹脂チューブ32の表面の露出された部分の表面を粗くする表面処理がされて、マーキング部7が形成される。このようにして、マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1が形成される。
図5は、サンドブラスト法によるマーキング部7の形成方法の一例を説明する図である。
サンドブラスト処理装置25は、ガス加圧機構11と、粉体供給機構12と、粉体放出機構13とを備えている。ガス加圧機構11で加圧された空気に、粉体供給機構12で粉体が供給され、ガス放出機構13が外部に粉体を含有した空気が放出される仕組みとされている。
なお、ガス加圧機構11のガスとしては空気を用いたが、反応性でないガス、たとえば、Ar、He、N2などのガスを用いることもできる。
また、粉体としては、空気に含有させて出射することによりフッ素樹脂の表面を粗くできる材料であればよく、たとえば、シリカあるいはアルミナなどの無機物粒子からなる粉体を用いることができる。
マーキング材とマーキング部7との密着性を評価するためには、まず、一定の膜厚のマーキング材を一定の方法でマーキング部7に形成することが必要である。このようにして形成したマーキング材とマーキング部7との密着性を、次に、一定の方法で評価する。
まず、マーキング材の塗布方法について説明する。
図3は、マーキング材の塗布方法の一例を説明する図である。
マーキング塗布装置(図示略)には、その内部両側に4つの円柱型部品からなるチューブ保持回転機構8を備えられており、また、その内部中央にインク供給機構10を備えたインク転写ローラー9が配置されている。
4つの円柱型部品からなるチューブ保持回転機構8において、円柱型部品の少なくとも一つがモーターなどと連動されるようにされており、また、この円柱型部品の動きに対応して、他の円柱型部品も連動する仕組みとされてある。
次に、4つの円柱型部品を一定方向に回転させることにより、一端部1cと他端部1dを固定されたマーキング部付きフッ素樹脂チューブ1も、これらの円柱型部品の動きに連動して、一定方向に回転する。
マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1の回転速度が一定になった後、内部中央に配置されたインク転写ローラー9のローラー面9aをマーキング部付きフッ素樹脂チューブ1のマーキング部7に接触させる。接触させることにより、インク転写ローラー9も、マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1の回転速度と同じ回転速度で回転する。
このようにして、インク転写ローラー9により、マーキング部付きフッ素樹脂チューブ1のマーキング部7にマーキングを行う。なお、インク転写ローラー9には、インク供給機構10から常にマーキング材料が供給されるので、回転速度を一定に保持することにより、所定膜厚のマーキング材からなる層を形成することができる。
なお、マーキング材を塗布後、所定時間、常温で放置して硬化処理をすることが好ましい。たとえば、1時間程度、常温放置する。
まず、マーキング材の硬化後、工業用アルコールが浸み込んだダスパー(ワイパーの登録商標:小津産業(株)製)で、マーキングしたマーキング部付きフッ素樹脂チューブ1のマーキング部7を10Nの力で挟んで拭くことにより、マーキング材の剥離が発生するかどうかを観察する(以下、アルコール拭き試験)。このアルコール拭き試験を複数回繰り返し、何回目に、マーキング材の剥離が発生したかにより、密着性の評価を行う。
たとえば、マーキング材の剥離の発生が10回目未満である場合には不合格(Cランク品)とし、10回目以上50回目未満を条件付合格品(Bランク品)とし、50回目以上を合格品(Aランク品)とする。
まず、外径3mm、内径2mmのPTFEチューブ62−J(ニチアス(株)製)を用意した。
次に、前記PTFEチューブを、平行平板型RF真空プラズマ処理装置の2枚の平板電極の間に配置した。その後、真空チャンバを真空ポンプで減圧状態にして、処理ガス供給ユニットから処理ガス(Ar)を供給した。
最後に、13.56MHzのRF電源を用いて、2枚の平板電極に電力を印加することにより、真空プラズマ法による表面処理を行い、PTFEチューブの胴体部に幅5mmのマーキング部を形成した。
なお、マーキング材を塗布後、常温で1時間放置して硬化処理を行い、マーキング材をマーキング部に塗布したPTFEチューブからなるサンプルを形成した。
まず、工業用アルコールが浸み込んだダスパー(商品名:小津産業(株)製)でPTFEチューブを10Nの力で挟み、マーキング材の剥離が発生するかどうかを観察した(以下、アルコール拭き試験)。このアルコール拭き試験を複数回繰り返し、何回目に、マーキング材の剥離が発生したかにより、密着性の評価を行った。
なお、マーキング材の剥離の発生が10回目未満である場合には不合格(Cランク品)とし、10回目以上50回目未満を条件付合格品(Bランク品)とし、50回目以上を合格品(Aランク品)とした。
処理ガス、放電電力、処理ガス圧、処理時間を変えたほかは参考例1と同様にして、参考例サンプル2〜10を作製した。なお、参考例サンプルNo.10は、表面処理を行わなかったサンプルである。
表2に、それぞれのサンプルの表面粗さRzの値と、アルコール拭き試験で何回目に剥離が発生したかを示す回数名、および密着性のランクを示した。
プラズマ処理により、フッ素樹脂チューブの表面を粗くしたマーキング部を形成することができ、このマーキング部へのマーキング材の密着性を向上させることができた。その中でも、参考例サンプルNo.1〜3は、アルコール拭き試験を100回以上実施しても、マーキングの剥離は発生せず、密着性ランクAのサンプルを得ることができた。
逆に、表面粗さRzが45nm未満の参考例サンプルNo.4〜6、および表面粗さRzが165nmを超える参考例サンプルNo.7〜9の密着性ランクはBであった。
そのため、密着性ランクAを得るためには、表面粗さRzを45nm以上165nm以下とすることが好ましいことが分かった。
まず、外径3mm、内径2mmのPTFEチューブ6C−J(中興化成工業(株)製)を用意した。
次に、前記PTFEチューブを、平行平板型RF大気圧プラズマ処理装置の2枚の平板電極の間に配置した。その後、大気圧のまま、処理ガス供給ユニットから処理ガス(Ar)を供給した。
最後に、13.56MHzのRF電源を用いて、2枚の平板電極に電力を印加することにより、大気圧プラズマ法による表面処理を行い、PTFEチューブの胴体部に幅5mmのマーキング部を形成した。
なお、マーキング材を塗布後、常温で1時間放置して硬化処理を行い、マーキング材をマーキング部に塗布したPTFEチューブからなるサンプルを形成した。
まず、工業用アルコールが浸み込んだダスパー(商品名:小津産業(株)製)でPTFEチューブを10Nの力で挟み、マーキング材の剥離が発生するかどうかを観察した(以下、アルコール拭き試験)。このアルコール拭き試験を複数回繰り返し、何回目に、マーキング材の剥離が発生したかにより、密着性の評価を行った。
なお、マーキング材の剥離の発生が10回目未満である場合には不合格(Cランク品)とし、10回目以上50回目未満を条件付合格品(Bランク品)とし、50回目以上を合格品(Aランク品)とした。
処理ガス、放電電力、処理ガス圧、処理時間を変えたほかは実施例4と同様にして、実施例サンプル5〜7、比較例サンプル8〜11を作製した。なお、比較例サンプルNo.12は、表面処理を行わなかったサンプルである。
表4に、それぞれのサンプルの表面粗さRzの値と、アルコール拭き試験で何回目に剥離が発生したかを示す回数名、および密着性のランクを示した。
プラズマ処理により、フッ素樹脂チューブの表面を粗くしたマーキング部を形成することができ、このマーキング部へのマーキング材の密着性を向上させることができた。
その中でも、実施例サンプルNo.4〜7は、アルコール拭き試験を100回以上実施しても、マーキングの剥離は発生せず、密着性ランクAのサンプルを得ることができた。
逆に、表面粗さRzが45nm未満の比較例サンプルNo.8〜10、および表面粗さRzが165nmを超える比較例サンプルNo.11の密着性ランクはBであった。
そのため、密着性ランクAを得るためには、表面粗さRzを45nm以上165nm以下とすることが好ましいことが分かった。
まず、外径3mm、内径2mmのFEPチューブ((株)潤工社製)を用意した。
次に、前記FEPチューブを、粉体放出機構の所定の位置に設置した。なお、前記所定の位置は、粉体放出機構の粉体放出部から射出される粉体を含有した空気が、FEPチューブのマーキング部に均一に吹き付けられるような位置である。
この状態で、ガス加圧機構でガス圧0.75MPaに加圧した空気を、粉体供給機構で粒子径0.5〜2.0μmのシリカを粉体として供給した後、この粉体を含有させた空気を、処理時間180secの条件で、FEPチューブのマーキング部に射出して、サンドブラスト法による表面処理を行った。
このようにして、FEPチューブの胴体部に幅5mmのマーキング部を形成した。
なお、マーキング材を塗布後、常温で1時間放置して硬化処理を行い、マーキング材をマーキング部に塗布したFEPチューブからなるサンプルを形成した。
まず、工業用アルコールが浸み込んだダスパー(商品名:小津産業(株)製)でFEPチューブを10Nの力で挟み、マーキング材の剥離が発生するかどうかを観察した(以下、アルコール拭き試験)。このアルコール拭き試験を複数回繰り返し、何回目に、マーキング材の剥離が発生したかにより、密着性の評価を行った。
なお、マーキング材の剥離の発生が10回目未満である場合には不合格(Cランク品)とし、10回目以上50回目未満を条件付合格品(Bランク品)とし、50回目以上を合格品(Aランク品)とした。
処理ガス、放電電力、処理ガス圧、処理時間を変えたほかは実施例8と同様にして、実施例サンプル9〜11、比較例サンプル13〜15を作製した。なお、比較例サンプル16は、表面処理を行わなかったサンプルである。
表6に、それぞれのサンプルの表面粗さRzの値と、アルコール拭き試験で何回目に剥離が発生したかを示す回数名、および密着性のランクを示した。
このように、サンドブラスト処理により、フッ素樹脂チューブの表面を粗くしたマーキング部を形成することができ、このマーキング部へのマーキング材の密着性を向上させることができた。
その中でも、実施例サンプルNo.8〜11は、アルコール拭き試験を100回以上実施しても、マーキングの剥離は発生せず、密着性ランクAのサンプルを得ることができた。
逆に、表面粗さRzが45nm未満の比較例サンプルNo.13、14、および表面粗さRzが165nmを超える比較例サンプルNo.15の密着性ランクはBであった。
そのため、密着性ランクAを得るためには、表面粗さRzを45nm以上165nm以下とすることが好ましいことが分かった。
Claims (2)
- 押出成形法で成形されたフッ素樹脂チューブの表面を粗くする表面処理を大気圧プラズマ法によって行って、前記大気圧プラズマ法の条件を、Arの処理ガス、500〜1000Wの放電電力、120〜180secの処理時間として、表面粗さRzの値が45nm以上165nm以下であるマーキング部を形成する工程を有することを特徴とするマーキング部付きフッ素樹脂チューブの製造方法。
- 押出成形法で成形されたフッ素樹脂チューブの表面を粗くする表面処理をサンドブラスト法によって行い、前記サンドブラスト法で用いる粉体を粒子径が1〜1.75μmである無機物粒子からなるものとして、表面粗さRzの値が45nm以上165nm以下であるマーキング部を形成する工程を有することを特徴とするマーキング部付きフッ素樹脂チューブの製造方法。
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