以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1及び図2には、本発明に従う構造を有するスパッタリング装置を用いて作製された加飾製品の一例たる自動車用内装部品が、その正面形態と縦断面形態とにおいて、それぞれ示されている。それらの図から明らかなように、自動車用内装部品2は、所定の厚さを有する長手矩形の平板からなる基材3を有している。
より詳細には、この基材3は、例えば、ポリプロピレンやABS樹脂等の樹脂材料を用いて形成された樹脂成形体にて構成されている。かかる基材3にあっては、厚さ方向の一方の面が、被膜形成面としての意匠面4とされている。この意匠面4には、その全面に対して、金属膜からなる被膜6が、後述するスパッタリング装置(10)を用いて、形成されている。これによって、基材3の意匠面4に対して、金属表面を擬似的に表現する加飾が施され、以て、自動車用内装部品2が構成されているのである。
そして、ここでは、特に、そのような意匠面4に形成された被膜6の厚さが、全体として、十分に薄い厚さとされた中で、基材3(自動車用内装部品2)の幅方向の一端側から他端側に向かって徐々に増大する厚さとされている。これにより、自動車用内装部品2において、意匠面4のエッジ部8が、シャープに角張った形状とされると共に、良好な金属調グラデーションが具備せしめられている。なお、図2には、漸増する膜厚を有する被膜6の形態の理解を容易とするために、被膜6が、実際の厚さよりも極端に大きな厚さをもって示されていることが、理解されるべきである。
次に、図3及び図4には、上記の如き構造を有する自動車用内装部品2の作製に際して、基材3の意匠面4に、漸増する膜厚を有する被膜6を形成するのに用いられる、本発明に従う構造を備えたスパッタリング装置の一実施形態が、その縦断面形態と横断面形態とにおいて、それぞれ、概略的に示されている。
それら図3及び図4から明らかなように、スパッタリング装置10は、真空チャンバ11を有している。この真空チャンバ11は、全体として、有底の円筒形状を呈する筐体からなり、鉛直方向に延びる半割円筒形状の固定筒壁部12及び可動筒壁部14と、それら固定筒壁部12と可動筒壁部14の上端及び下端にそれぞれ一体形成された、水平方向に広がるそれぞれ半円板状の、上側底壁部16,16及び下側底壁部18,18とを、更に有している。そして、固定筒壁部12と可動筒壁部14とがヒンジ部20を介して互いに連結されており、図4に二点鎖線と実線で示されるように、可動筒壁部14が、ヒンジ部20を回動中心として回動せしめられるのに伴って、真空チャンバ11が開放及び密閉され得るようになっている。
真空チャンバ11の固定筒壁部12における周方向中央部の内周面上には、ターゲット22が、固定的に取り付けられている。このターゲット22は、長手の矩形平板形状を有しており、厚さ方向の一方の面が、後述する如きスパッタリング操作に際して、高エネルギー粒子が照射されることにより、スパッタ粒子を放出する放出面24とされている。かかるターゲット22は、放出面24を、真空チャンバ11の中心軸:Pに向け、且つ鉛直方向に延出せしめた状態で、配置されている。
ここでは、ターゲット22は、基材3(自動車用内装部品2)の意匠面4に形成されるべき金属薄膜からなる被膜6の成膜材料にて構成されている。即ち、例えば、アルミニウムや銅、ニッケル、クロム等の金属材料が、単独で、又は2種類以上組み合わされた合金材料として用いられて、或いは各種のステンレス鋼等が用いられて、ターゲット22が形成されている。そして、図示されてはいないものの、このターゲット22には、それに所定の電圧を印加するための電源装置が、接続されている。
固定筒壁部12の周方向一方側の端部側部分には、ガス排出孔25が、また、周方向他方側の端部側部分には、ガス導入孔26が、それぞれ、穿設されている。そして、ガス排出孔25には、一端部において真空ポンプ(図示せず)に接続されたガス排出パイプ28が、他端部において接続され、また、ガス供給孔26には、一端部において、不活性ガス等の反応ガスを供給するガス供給装置(図示せず)に接続されたガス導入パイプ30が、他端部において接続されている。
一方、可動筒壁部14の下端部には、基台32が、位置固定に設けられている。また、かかる基台32上には、回転ステージ34が設けられている。この回転ステージ34は、円形形状を呈し、基台32の内部に設置された、第二の回転機構としての公知のギヤ機構と電動モータ(図示せず)の協働作動によって、鉛直方向(上下方向)に延びる回転ステージ34の回転軸:Q(真空チャンバ11の中心軸:Pと同一の軸)回りに回転させられるようになっている。この回転ステージ34を回転させる図示しない電動モータは、固定筒壁部12の外周面に設置されたコントローラ36により、一方向に所定の回転角度だけ、間欠的に回転駆動させられるように制御されている。これによって、回転ステージ34が、所定の時間間隔をおいて、60°ずつ間欠的に回転せしめられるようになっている。
そのような回転ステージ34上の外周部には、支持手段としての6個の支持装置38が、回転ステージ34の周方向に互いに等間隔を隔てて設置されている。それら各支持装置38は、図3乃至図5に示されるように、長手の丸棒材からなる棒状回転軸40を有している。そして、そのような6個の支持装置38の各棒状回転軸40が、回転ステージ34に対して、それぞれ回転可能に支持されて、その回転軸:Qと外周縁との間の略中央部分に、互いに周方向に等間隔を隔てて鉛直方向に延びるように位置せしめられている。
なお、本実施形態では、前記せる本発明の実施の態様<4>に記載される回転体が、回転ステージ34にて、具体的に実現されている。また、前記せる本発明の実施の態様<1>に記載される支持手段の回転軸が、棒状回転軸40にて、具体的に実現されている。
図5に示されるように、それら各支持装置38の棒状回転軸40が回転可能に設置される回転ステージ34の六箇所には、上方に向かって開口する凹所42がそれぞれ一つずつ、設けられている。この凹所42の底部には、電動モータ44が設置されている。この電動モータ44の駆動軸に取り付けられた駆動ギヤ46は、棒状回転軸40の下端部に固定された従動ギヤ48に噛合されている。これにより、電動モータ44の駆動に伴って、棒状回転軸40が回転せしめられるようになっている。
ここでは、回転ステージ34が60°だけ回転せしめられる毎に、6個の支持装置38のうちの何れか1個が、回転ステージ34の回転軸:Q(真空チャンバ11の中心軸:P)とターゲット22の放出面24との間において、それらを結ぶ直線上に、棒状回転軸40を位置させた状態で、配置されるようになっている。つまり、後述するスパッタリングによる基材3の意匠面4への被膜6の形成操作が実施される操作実施位置に、1個の支持装置38が配置されるようになっている。そして、かかる1個の支持装置38が、そのような操作実施位置に位置せしめられた状態で、回転ステージ34の回転が停止している間に、電動モータ44が360°回転駆動せしめられて、棒状回転軸40が、十分に遅い速度で1回転せしめられるように、電動モータ44の回転駆動が、前記コントローラ36にて、制御されている。
各支持装置38の棒状回転軸40の高さ方向(長手方向)の中間部には、二つの支持部材50a,50bが、上下方向において互いに所定間隔を隔てて位置するように固定されている。それら上側及び下側の各支持部材50a,50bは、何れも、棒状回転軸40に外挿、固定される円筒状の固定部52と、かかる固定部52の外周面から径方向外方に、放射状形態をもって、互いに同一の長さで水平に延びる12個のアーム部54と、それら12個のアーム部54の先端にそれぞれ設けられた、支持部としてのクランプ部56とを、一体的に有している。クランプ部56は、基材3の長さ方向に延びる外周部の一部を両側から挟み得る二股形状とされている。そして、不図示のクランプボルトの締付けにより、かかる基材3を取り外し可能に挟持し得るようになっている。
これにより、基材3が、6個の支持装置38のそれぞれの上側支持部材50aと下側支持部材50bとにて、各々12個ずつ、取り外し可能に且つ各アーム部54の延出方向に沿って延出せしめられた状態で、支持されるようになっている。
図6に示されるように、各支持装置38の上側及び下側支持部材50a,50bにそれぞれ支持された基材3A〜3Lの全てが、意匠面4を、棒状回転軸40から放射状に延び出させた状態で、位置せしめられている。それと共に、それら全ての基材3A〜3Lが、各支持装置38の棒状回転軸40の回転に伴って、かかる棒状回転軸40回りに、それと共に一体回転せしめられるようになっている。
図6から明らかなように、6個の支持装置38のうちの1個が、前記操作実施位置(被膜6の形成操作が実施可能となる回転軸:Qとターゲット22との間の位置)に配置されたときに、かかる1個の支持装置38の上側及び下側支持部材50a,50bにそれぞれ支持された基材3A〜3Lのうちの何れか(図6では、基材3B)が、意匠面4を、ターゲット22の放出面24に対して、傾斜して、対向、位置させた状態で、配置されるようになっている。換言すれば、基材3A〜3Lのうちの何れかが、意匠面4の延長面をターゲット22の放出面24の延長面に対して、0°を超え且つ90°未満の角度で交差させた状態で、配置されるようになっているのである。
そのような状態下において、操作実施位置に配置された支持装置38の棒状回転軸40が、例えば、図6中に矢印で示される方向(時計回りの方向)に回転せしめられることにより、上側及び下側支持部材50a,50bにそれぞれ12個ずつ支持された基材3の全てが、周方向の並び順で、それぞれの意匠面4を、次々と、ターゲット22の放出面24に対して、傾斜して、対向、位置させ得るようになっている。その一方で、回転ステージ34の回転に伴って、残りの5個の支持装置38が、1個ずつ、順次、交替で、操作実施位置に配置され、そして、操作実施位置に配置された支持装置38の棒状回転軸40が回転せしめられることにより、それら残りの5個の支持装置38に支持される全ての基材3も、順番に、それぞれの意匠面4を、ターゲット22の放出面24に対して、傾斜して、対向、位置させ得るようになっている。
そして、ここでは、特に、操作実施位置に配置された支持装置38の上側及び下側支持部材50a,50bにそれぞれ支持される複数の基材3A〜3Lのうち、意匠面4が、ターゲット22の放出面24に傾斜して、対向、位置せしめられた基材3の意匠面4とターゲット22の放出面24との間に、別の基材3の一部が入り込んで位置せしめられるようになっている。
すなわち、図6において、意匠面4が、ターゲット22の放出面24に傾斜して、対向、位置せしめられた状態で示された基材3Bを例にとると、棒状回転軸40の回転に伴う全ての基材3の回転方向(図6中に矢印で示される時計回りの方向)の後方側(図6中の矢印の方向とは反対側)に、基材3Bと隣り合って位置する基材3Aが、支持部材50a,50bへの支持側とは反対側の先端部において、かかる基材3Bの意匠面4とターゲット22の放出面24との間に挟まれた空間:αの内部、つまり、それら意匠面4と放出面24の互いに対応する外周縁部同士を連結するように延びる複数の仮想面にて囲まれた空間:αの内部に、支持部材50aのクランプ部56側に位置する基材3Bの幅方向一端側から侵入せしめられて、配置されている。また、それにより、かかる空間:α内において、基材3Bの意匠面4とターゲット22の放出面24との間が、基材3Aの先端部にて、部分的に遮られるようになっている。
そして、操作実施位置に配置された支持装置38に支持される全ての基材3が棒状回転軸40と一体回転せしめられて、意匠面4がターゲット22の放出面24と傾斜して対向位置せしめられる基材3が順番に交替する毎に、前記空間:α内に侵入せしめられる基材3も、意匠面4が放出面24と対向する基材3の回転方向の後方側に隣り合って位置するものに、順次入れ替わることとなる。
かくして、後述するスパッタリングにより、ターゲット22の放出面24と傾斜して対向する基材3の意匠面4に被膜6を形成するに際して、ターゲット22の放出面24から放出されて、直線的に飛行するスパッタ粒子の一部が、それら意匠面4と放出面24との間に挟まれた空間:α内に侵入した、被膜6が形成されるべき基材3の回転方向後方側に隣り合って位置する基材3の意匠面4の先端部に先に付着せしめられて、被膜6が形成されるべき基材3の意匠面4に到達することが阻止されるようになっている。なお、上側支持部材50aに支持される基材3だけでなく、下側支持部材50bに支持される基材3についても、同様である。
このことから明らかなように、本実施形態では、意匠面4に被膜6が形成されるべき基材3の棒状回転軸40との一体回転方向の後方側に隣り合って位置する基材3にて、遮蔽部材が構成されている。そのような遮蔽部材として機能する基材3の意匠面4にて、遮蔽部材の対向面が構成されている。それによって、遮蔽部材たる基材3が、意匠面4からなる対向面を、支持手段たる支持装置38の棒状回転軸40から放射状に延びるように位置せしめた状態で、支持装置38に支持されている。支持装置38に支持された、遮蔽部材たる基材3が、支持装置38に支持された複数の基材3に対応して、それら複数の基材3のうちの棒状回転軸40の周方向に隣り合うもの同士の間に、それぞれ位置せしめられている。また、棒状回転軸40とそれを回転駆動させる電動モータ44にて、移動機構や第一の回転機構が構成されている。
かくの如き構造とされた本実施形態のスパッタリング装置10を用いて、基材3の意匠面4に、金属薄膜からなる被膜6を形成する際には、例えば、以下の如き手順に従って作業が進められることとなる。
すなわち、先ず、図4に二点鎖線で示されるように、真空チャンバ11が開放されて、各支持装置38の上側及び下側支持部材50a,50bに、基材3が、それぞれ12個ずつ、クランプ部56にてクランプされて、支持される。このとき、全ての基材3の意匠面4が、支持装置38の棒状回転軸40から放射状に延び、且つ棒状回転軸40の回転方向の前方側に向けられた状態で配置される。また、各基材3の意匠面4を除く他の面に、必要に応じて、例えば公知のマスキングテープ所定のマスキングが施される。
次に、図3及び図4に実線で示されるように、真空チャンバ11が密閉される。このとき、必要に応じて、回転ステージ34が回転せしめられて、6個の支持装置38のうちの1個が、前記せる操作実施位置に配置される。
その後、操作実施位置に配置された支持装置38の棒状回転軸40が、必要に応じて、必要な量だけ回転せしめられて、図7の(a)に示されるように、かかる支持装置38の上側及び下側支持部材50a,50bに支持された基材3A〜3Lのうち、最初に、被膜6が意匠面4に形成されるべき任意の一つのもの(ここでは、基材3B)が、その意匠面4を、ターゲット22の放出面24に対して傾斜して、対向させる位置に配置される。このとき、最初に、被膜6が意匠面4に形成されるべき基材3B以外の全ての基材3が、基材3Bの意匠面4とターゲット22の放出面24との間に挟まれた空間:α内に、何等侵入しないように配置される。それによって、かかる基材3Bの意匠面4の全面が、他の部材にて遮られることなく、ターゲット22の放出面24に対して傾斜して、対向位置せしめられる。
そして、各基材3が上記の如き放出面24と斜めに対向する位置に配置されて、棒状回転軸40の回転が停止せしめられた状態下において、図示しない真空ポンプが作動せしめられる。これにより、真空チャンバ11内の空気が、ガス排出孔25とガス排出パイプ28とを通じて外部に排出されて、真空チャンバ11内が所定の真空度を有する真空状態とされる。その後、図示しないガス供給装置が作動せしめられて、ガス導入孔26とガス導入パイプ30とを通じて、真空チャンバ11内に、例えばアルゴンガス等の不活性ガスからなる反応ガスが導入される。
引き続き、反応ガスが真空チャンバ11内に充満したら、真空チャンバ11内に設置されたターゲット22と各支持装置38とに接続された電源装置が作動せしめられて、それらターゲット22と各支持装置38との間に、直流電圧が印加される。これにより、ターゲット22と各支持装置38との間でグロー放電が生じて、真空チャンバ11内、特にターゲット22の放出面24の前方にプラズマが発生し、イオン化した真空チャンバ11内の不活性ガスがターゲット22の放出面24に衝突して、スパッタリング現象が惹起される。かくして、ターゲット22の放出面24から無数のスパッタ粒子が放出される(叩き出される)。そして、このターゲット22の放出面24から放出されたスパッタ粒子が、直線的に飛行し、各支持装置38に支持された全ての基材3のうち、操作実施位置に配置された支持装置38に支持されて、ターゲット22の放出面24と傾斜して対向する基材3Bの意匠面4に大量に到達せしめられ、堆積される。そうして、基材3Bの意匠面4に対する被膜6の形成操作が、徐々に進行されるようになる。なお、図7の(a)〜(c)と以下の説明では、上側支持部材50aに支持された基材3Bの意匠面4へのスパッタリングによる被膜6の形成操作についてのみを詳述するが、上側支持部材50aと下側支持部材50bとにそれぞれ支持された、その他の基材3A〜3Lにあっても、基材3Bに対する操作と同様な手順により被膜6の形成操作が実施されることが、理解されるべきである。
本操作では、電源装置の作動と同時、つまりスパッタリング操作の開始と同時に、操作実施位置に配置された支持装置38の棒状回転軸40を回転させる電動モータ44の回転駆動が開始されて、棒状回転軸40と支持装置38に支持された全ての基材3が、十分に遅い一定の速度で一体回転せしめられる。このとき、かかる回転の進行に伴って、ターゲット22の放出面24に対して傾斜して、対向する基材3Bの意匠面4とターゲット22の放出面24との間に挟まれた空間:α内に、基材3Bの回転方向後方側に隣り合って位置する、遮蔽部材として機能する基材3Aの先端部分が、基材3Bの支持部材50にて支持される側の幅方向の一端部側から、徐々に侵入せしめられて、基材3Bの意匠面4とターゲット22の放出面24との間が部分的に遮られるようになる。換言すれば、基材3Aが、基材3Bの意匠面4とターゲット22の放出面24との間において、基材3Bの支持部材50にて支持される側の幅方向の一端部側に位置せしめられる。
すなわち、図7の(a)に示されるように、スパッタリング操作の開始と同時に、棒状回転軸40の回転駆動が開始された直後には、基材3Bの意匠面4とターゲット22の放出面24との間に挟まれた空間:α内に、他の基材3が、何等侵入されてはいない。それ故、この時点では、ターゲット22の放出面24から放出されたスパッタ粒子が、基材3Bの意匠面4の全面に、均一な量において到達せしめられる。
具体的には、図7の(a)に細線と太線と中太線で示されるように、基材3Bの意匠面4のうち、支持部材50のクランプ部56側に位置する幅方向の一端側部分58と、クランプ部56側とは反対側に位置する幅方向の他端側部分60と、幅方向の中間部分62とに対して、ターゲット22の放出面24の幅方向の全幅に亘る面から放出されたスパッタ粒子が、略同一の量において、それぞれ到達せしめられるようになる。換言すれば、基材3Bの意匠面4における幅方向の一端側部分58と他端側部分60と中間部分62とにそれぞれ到達するスパッタ粒子を放出する放出面24の領域が、何れも、幅方向の全幅に亘る領域:W1 とされる。
そして、全ての基材3A〜3Lが、図7の(a)に示される位置から矢印で示される方向(時計回りの方向)に、所定角度だけ、棒状回転軸40と一体回転せしめられて、図7の(b)に示される位置に達すると、最初に被膜6が形成される基材3Bの意匠面4とターゲット22の放出面24との間に挟まれた空間:α内に、かかる基材3Bの回転方向後方側に隣り合って位置する基材3Aのクランプ56側とは反対側の先端部が、侵入せしめられる。
このとき、図7の(b)に太線と中太線で示されるように、ターゲット22の放出面24の幅方向の全幅に亘る面から放出されたスパッタ粒子のうち、基材3Bの意匠面4の幅方向の他端側部分60と中間部分62に向かって直線的に飛行するスパッタ粒子は、前記空間:α内に侵入した基材3Aの先端部にて、何等邪魔されることもなく、全量が、基材3Bの意匠面4の他端側部分60と中間部分62とに、それぞれ到達せしめられる。
これに対して、図7の(b)に細線で示されるように、ターゲット22の放出面24の幅方向の全幅に亘る面から放出されたスパッタ粒子のうち、基材3Bの意匠面4の幅方向の一端側部分58(前記の空間:α内に侵入した基材3Aの配置側の部分)に向かって直線的に飛行するスパッタ粒子は、その一部が、前記空間:α内に侵入した基材3Aの先端部に先に付着せしめられ、それにより、かかる意匠面4の一端側部分58に到達するのが阻止される。
つまり、基材3Bの意匠面4の幅方向の他端側部分60と中間部分62とにそれぞれ到達するスパッタ粒子を放出する放出面24の領域が、何れも、放出面24の幅方向の全幅に亘る領域:W1 とされる。これに対して、基材3Bの意匠面4の幅方向の一端側部分58に到達するスパッタ粒子を放出する放出面24の領域は、放出面24の幅方向の一方側端部を除く領域:W2 とされる。そして、かかる領域:W2 の大きさは、意匠面4の他端側部分60や中間部分62へのスパッタ粒子の放出領域:W1 よりも小さな大きさとされるのである。
これによって、基材3Bの意匠面4の他端側部分60と中間部分62とにそれぞれ到達せしめられるスパッタ粒子の量が、かかる意匠面4の一端側部分58に到達せしめられるスパッタ粒子の量よりも、所定量だけ多くされる。
また、全ての基材3A〜3Lが、図7の(b)に示される位置から矢印で示される方向に、更に所定角度だけ、棒状回転軸40と一体回転せしめられて、図7の(c)に示される位置に達すると、前記空間:α内に、基材3Aのクランプ56の先端部が、更に大きな侵入量をもって侵入せしめられる。
このとき、図7の(c)に太線で示されるように、ターゲット22の放出面24の幅方向の全幅に亘る面から放出されたスパッタ粒子のうち、基材3Bの意匠面4の幅方向の他端側部分60に向かって直線的に飛行するスパッタ粒子は、前記空間:α内に侵入した基材3Aの先端部にて、何等邪魔されることもなく、全量が、かかる他端側部分60に到達せしめられる。
これに対して、図7の(c)に中太線で示されるように、ターゲット22の放出面24の幅方向の全幅に亘る面から放出されたスパッタ粒子のうち、基材3Bの意匠面4の幅方向の中間部分62に向かって直線的に飛行するスパッタ粒子は、その一部が、前記空間:α内に侵入した基材3Aの先端部にて、かかる意匠面4の中間部分62に到達するのを阻止される。
図7の(c)に細線で示されるように、ターゲット22の放出面24の幅方向の全幅に亘る面から放出されたスパッタ粒子のうち、基材3Bの意匠面4の幅方向の一端側部分58に向かって直線的に飛行するスパッタ粒子も、その一部が、前記空間:α内に侵入した基材3Aの先端部にて、かかる意匠面4の一端側部分58に到達するのを阻止される。そして、上記の如く、各基材3の回転量の増大に伴って、基材3Aのクランプ56の先端部の空間:α内への侵入量が大きくされているため、そのような基材3Aの空間:αへの侵入部分にて、意匠面4の一端側部分58への到達が阻止されるスパッタ粒子の量は、基材3Bが図7の(b)に示される回転位置に位置せしめられているときに比べて多くされており、また、意匠面4の中間部分62への到達が阻止されるスパッタ粒子の量よりも多くされている。
換言すれば、基材3Bの意匠面4の他端側部分60に到達するスパッタ粒子を放出する放出面24の領域が、幅方向の全幅に亘る領域:W1 とされる。その一方で、かかる意匠面4の中間部分62に到達するスパッタ粒子を放出する放出面24の領域は、放出面24の幅方向の一方側端部を除く、上記W1 の領域よりも小さな領域:W3 とされる。更に、意匠面4の一端側部分58に到達するスパッタ粒子を放出する放出面24の領域は、放出面24の幅方向の一方側端部と中間部とを除く、上記W3 の領域よりも更に小さな領域:W4 とされる。
これによって、基材3Bの意匠面4の幅方向の一端側部分58と中間部分62と他端側部分60とに到達せしめられるスパッタ粒子の量が、他端側部分60において最大となり、次いで中間部分60が大きく、一端側部分58において最小となる。
それに引き続いて、各基材3が棒状回転軸40回りに更に回転せしめられると、基材3Aの先端側部分が、前記空間:α内に、更に大きく侵入せしめられる。それに伴って、基材3Bの意匠面4へのスパッタ粒子の到達が、かかる意匠面4の他端側部分60から一端側部分58に向かうに従って、より多くの量において阻止されるようになる。そして、やがて、基材3Bの意匠面4とターゲット22の放出面24の間が、基材3Aにて完全に遮断されると、基材3Bの意匠面4の全面へのスパッタ粒子の到達が、完全に阻止される。
かくして、ここでは、基材3Bの意匠面4に被膜6を形成するに際して、各基材3が棒状回転軸40回りにそれと一体回転せしめられつつ、スパッタリング操作が実施されることにより、ターゲット22の放出面24から放出されて、基材3Bの意匠面4に到達するスパッタ粒子の量が、意匠面4の幅方向の一端側部分58から他端側部分60に向かって漸増するようになる。そして、それによって、基材3Bの意匠面4へのスパッタ粒子の堆積量も、意匠面4の幅方向の一端側部分58から他端側部分60に向かって漸増するようになる。その結果、基材3Bの意匠面4に、ターゲット22と同一材質の金属膜からなる被膜6が、全体として、十分に薄く、且つ意匠面4の幅方向の一端側部分58から他端側部分60に向かって漸増する膜厚をもって、形成される。以て、図1及び図2に示される如き構造を有する、意匠面4に金属調加飾が施された自動車用内装部品2が得られることとなる。
なお、本実施形態においては、基材3Bが、その意匠面4をターゲット22の放射面24に対して傾斜して、対向させた、図7の(a)に示される位置に配置されたときから、基材3Bの回転とスパッタリング操作とが同時に開始されるようになっていたが、基材3Bが、その意匠面4をターゲット22の放射面24に対向させない位置、例えば、図7の(a)に示される基材3Lの位置と同じ位置に配置されたときから、基材3Bの回転とスパッタリング操作とが開始される場合には、基材3Bは、その回転開始位置[図7の(a)に示される基材3Lの位置と同じ位置]から図7の(a)に示される位置に達するまでの間に、意匠面4の全面に、ターゲット22の放出面24の幅方向の全幅に亘る面から放出されたスパッタ粒子が、他の基材3等に邪魔されることなく、略均一に到達せしめられる。そのため、かかる回転範囲内での回転時には、基材3Bの意匠面4に、被膜6が略一定の厚さで形成されることとなる。
そして、基材3Bが図7の(a)に示される位置に配置されたときから、基材3Bの回転とスパッタリング操作とが同時に開始される本操作では、基材3Bの遮蔽部材として機能する基材3Aが、基材3Bとの一体回転において、図7の(a)に示される位置から図7の(c)に示される位置を経て、図7の(a)に示される基材3Bの位置と同じ位置に達するまでの間に、かかる基材3Aの意匠面4には、ターゲット22の放出面24の幅方向の全幅に亘る面から放出されたスパッタ粒子が、他の基材3等に邪魔されることなく到達せしめられる。そのため、かかる回転範囲内での回転時に、基材3Aの意匠面4には、被膜6が略一定の厚さで形成されるようになる。
その後、スパッタリング操作を続行しつつ、各基材3A〜3Lの棒状回転軸40との一体回転が更に継続して行われる。その際には、先ず、基材3Aが、図7の(a)に示される基材3Bの位置と同じ位置から、基材3Aの回転方向後方側に基材3Aと隣り合って位置する基材3Lにて、基材3Aの意匠面4とターゲット22の放出面24の間が完全に遮断される位置に達するまでの間に、基材3Lが遮蔽部材として機能しつつ、基材3Aの意匠面4に、支持部材50aのクランプ部56側の幅方向一端部から他端部に向かって厚さが漸増する被膜6が形成されるようになる。その後、それと同様にして、各基材3A〜3Lの棒状回転軸40との一体回転により、基材3Aと基材3B以外の基材3C〜3Lの意匠面4にも、支持部材50aのクランプ部56側の幅方向一端部から他端部に向かって厚さが漸増する被膜6が形成されるようになる。そうして、意匠面4に金属調加飾が施された自動車用内装部品2が、次々と得られることとなる。このときには、回転方向において互いに隣り合って位置する二つの基材3のうちの回転方向後方側の基材3が、それよりも回転方向前方側の基材3の意匠面4へのスパッタ粒子の到達を阻止する遮蔽部材として機能せしめられるのである。
そして、操作実施位置に配置された1個の支持装置38に支持される全ての基材3A〜3Lの各意匠面4への被膜6の形成が終了したら(かかる支持装置38の棒状回転軸40回りに1回転せしめられたら)、回転ステージ34が60°だけ回転せしめられて、別の1個の支持装置38が、操作実施位置に配置される。その後、上記と同様にして、操作実施位置に配置された支持装置38が棒状回転軸40回りに1回転せしめられることによって、かかる支持装置38に支持される全ての基材3A〜3Lの各意匠面4に、被膜6が形成される。そのようにして、全ての支持装置38が、1個ずつ、交替で、操作実施位置に配置され、そこで、棒状回転軸40回りに1回転せしめられる。その結果、全ての支持装置38に支持される全ての基材3の意匠面4に被膜6が、上記と同様な膜厚にて形成されて、それら全ての基材3が、自動車用内装部品2に加工され得ることとなるのである。
なお、かくして、全ての基材3の意匠面4に被膜6を形成する際には、各基材3の意匠面4とは反対側の裏面や側面にも、スパッタ粒子が到達せしめられる。しかしながら、前記せるように、各基材3の意匠面4を除く裏面や側面には、全てマスキングが施されている。そのため、各基材3の意匠面4への被膜6の形成中に、被膜6が、意匠面4以外の面に直接に形成されることはない。このマスキングは、各基材3が、支持装置38(支持部材50)から取り外された後、除去されることとなる。
また、操作実施位置に配置された支持装置38の回転によって、かかる支持装置38に支持される全ての基材3A〜3Lの意匠面4に、被膜6が、上記のようにして形成されている間には、操作実施位置とは異なる位置に配置された全ての支持装置38にそれぞれ支持される各基材3の幾つかのものの意匠面4に対しても、スパッタ粒子が到達するようになる。しかしながら、その量は極めて少ない。そのため、支持装置38が操作実施位置に配置される前に、各基材3の意匠面4に堆積されるスパッタ粒子によって、支持装置38が操作実施位置に配置されたときに形成される各基材3の意匠面4の被膜6の膜厚に、大きな影響を受けることはない。
このように、本実施形態のスパッタリング装置10を用いれば、各支持装置38に支持される全ての基材3の意匠面4に、ターゲット22と同一材質の金属膜からなる被膜6が、全体として、十分に薄く、しかも意匠面4の幅方向の一端側部分58から他端側部分60に向かって漸増する膜厚を有するように形成された自動車用内装部品2が、有利に得られる。その結果、かくして得られた自動車用内装部品2において、単に、十分な輝きとシャープに角張ったエッジ部8を備えた金属表面がよりリアルに表現され得るだけでなく、漸増する膜厚を有する被膜6によるグラデーション効果によって、外観の向上や徐々に変化する金属光沢が、効果的に実現され得ることとなるのである。
かかる本実施形態では、支持装置38に支持された複数の基材3(意匠面4)が、鉛直方向に延びる棒状回転軸0から放射状形態をもって水平に延びる複数のアーム部54のそれぞれの先端に設けられたクランプ部56に取り付けられていることにより、それら各基材3が、その配置位置とは異なる別の位置において鉛直方向に延びる棒状回転軸40回りに、支持装置38と共に一体回転せしめられつつ、意匠面4へのスパッタリングによる被膜6の形成操作が進行されるようになっている。それ故、そのような被膜6の形成過程で、棒状回転軸40回りの回転に伴う意匠面4の周方向の変位量が、棒状回転軸40の軸心との間の距離が短い、幅方向の一端側部分58側から、棒状回転軸40の軸心との間の距離が長い他端側部分60側に向かうに従って徐々に大きくされる。
その結果、回転せしめられる基材3の意匠面4の周囲に浮遊するスパッタ粒子が、意匠面4の幅方向の一端側部分58側から他端側部分60側に向かうに従って、より多くの量において付着乃至堆積される。これによっても、基材3の意匠面4に形成される被膜6の膜厚が、幅方向の一端側部分58から他端側部分60に向かって漸増する厚さとされ得るのである。
本実施形態では、支持装置38に支持された複数の基材3が、それぞれの意匠面4を棒状回転軸40から放射状に延びるように配置された状態で、棒状回転軸40回りにそれと一体回転せしめられつつ、それら各基材3の意匠面4に、次々と被膜6が形成されるようになっている。それによって、表面に金属調の加飾が施された自動車用内装部品2の複数個が、次々と効率的に作製され得る。
本実施形態においては、被膜6が形成されるべき基材3(図7中の基材3Bに相当する)の意匠面4とターゲット22の放出面24との間を部分的に遮蔽して、かかる意匠面4へのスパッタ粒子の到達を阻止する機能を発揮する遮蔽部材が、被膜6が形成されるべき基材3に隣り合う、それとは別の基材3(図7中の基材3Aに相当する)にて構成されている。つまり、支持装置38に支持されて、棒状回転軸40の周方向に隣り合う三つの基材3のうち、両サイドの二つの基材3の間に位置する基材3が、遮蔽部材として機能せしめられるようになっている。そうして、支持装置38に対して、複数の基材3だけが支持されて、被膜6が形成されるべき基材3の意匠面4へのスパッタ粒子の到達を阻止するためだけの、基材3とは異なる特別な遮蔽部材が、支持装置38に、何等支持されていない。これによっても、目的とする自動車用内装部品2が、無駄なく効率的に作製され得ることとなる。
また、本実施形態では、前記遮蔽部材が、被膜6が形成されるべき基材3に隣り合う、それとは別の基材3にて構成されて、かかる遮蔽部材としての基材3が、被膜6が形成されるべき基材3と共に、棒状回転軸40回りに一体回転せしめられるようになっている。それ故、例えば、遮蔽部材としての基材3が回転不能とされる場合とは異なって、例えば、遮蔽部材としての基材3と被膜6が形成されるべき基材3との間の間隔を変更すること等により、それら各基材3の回転に伴って、被膜6が形成されるべき基材3の意匠面4へのスパッタ粒子の到達量が、かかる意匠面4の部位別に、より柔軟にコントロールされ得る。その結果、被膜6の形成によって得られる自動車用内装部品2において、よりバラエティに富んだグラデーション効果が得られることとなる。
本実施形態では、支持装置38に支持された複数の基材3が、それぞれの意匠面4を棒状回転軸40から放射状に延びるように配置されている。これによって、複数の基材3が、支持装置38に対して、より小さな配置スペース内で整然と並べられた状態で、支持され、以て、1個の支持装置38に対して、より多くの基材3が支持され得るようになる。そして、そのように支持された複数の基材のそれぞれの意匠面4に、次々と被膜6が形成されるようになっている。かくして、表面に金属調の加飾が施された自動車用内装部品2の複数個が、次々と効率的に作製され得る。しかも、基材3毎に、被膜6の膜厚にバラツキが生ずることも、有利に防止され得る。
本実施形態においては、複数の支持装置38が、回転ステージ34に設置されている。そして、この回転ステージ34の回転に伴って、それら複数の支持装置38の1個ずつが、前記せる操作実施位置に、順次、1個ずつ位置せしめられて、この操作実施位置に配置された支持装置38に支持された全ての基材3の各意匠面4に、被膜6が形成されるようになっている。これによって、更に多くの自動車用内装部品2が、効率的且つ自動的に作製され得る。
なお、ここにおいて、本発明に従う構造を有するスパッタリング装置が、上記せる如き優れた特徴を確実に発揮され得るものであることを確認するために、本発明者等によって実施された試験について、詳述する。
すなわち、先ず、図3及び図4に示される如き構造を有するスパッタリング装置を準備した。そして、図5及び図6に示されるように、支持装置38の上側及び下側の2個の支持部材50a,50bに対して、基材3をそれぞれ12個ずつ支持させた。その後、図7の(a)に示されるように、上側及び下側支持部材50a,50bにそれぞれ1個ずつ支持された基材3Bを、各意匠面4が、ターゲット22の放出面24に対して傾斜して、対向するように位置せしめた。
次いで、図7の(b)や(c)に示されるように、基材3Bを棒状回転軸40回りに回転させる一方、ターゲット22に対して、それに接続された電源装置(図示せず)から所定の電圧を印加することにより、スパッタリング操作を実施して、基材3Bの意匠面4に被膜6を形成した。なお、このスパッタリング操作は、ターゲット22としてステンレス製の金属板を用いると共に、反応ガスとしてアルゴンガスを用いて、公知のグロー放電スパッタリング法に従って実施した。
その後、基材3Bの意匠面4のうちで棒状回転軸40に近位の幅方向の一端側部分58の端縁と、棒状回転軸40に遠位の幅方向の他端側部分60の端縁と、かかる他端側部分60の端縁から一端側部分58側に39.5mmだけ近づいた幅方向の中間部分62とにそれぞれ形成された被膜6の膜厚を公知の手法に従って、測定した。なお、基材3Bの意匠面4の幅は、52mmであった。
その結果、基材3Bの意匠面4の一端側部分58での被膜6の膜厚は60Åであった。中間部分62での被膜6の膜厚は75Åであった。他端側部分60での被膜6の膜厚は110Åであった。これらの測定値から被膜6の膜厚勾配を算出したところ、その値は、約1Å/mmであった。
これによって、本発明に従う構造を有するスパッタリング装置10を用いれば、基材3Bの意匠面4に、被膜6が、全体として、十分に薄く、しかも意匠面4の幅方向の一端側部分58から他端側部分60に向かって漸増する膜厚を有するように形成され得ることが、明確に認識され得るのである。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、前記実施形態では、支持装置38に支持された複数の基材3が、それぞれの被膜形成面たる意匠面4を、棒状回転軸40から放射状に延出させた状態で、位置せしめられて、全ての基材3の意匠面4が、同一の回転位置に位置せしめられたときに、ターゲット22の放出面24と同一の傾斜角度で傾斜して、対向せしめられるようになっていた。然るに、少なくとも一つの基材3の意匠面4の放出面24に対する傾斜角度を、別の基材3の意匠面4の放出面24に対する傾斜角度と異なる大きさとすることも出来る。これによって、意匠面4の放出面24に対する傾斜角度に応じて、各基材3の意匠面4に形成される被膜6の膜厚の勾配を種々変化させることが出来る。そして、その結果として、最終的に得られる加飾製品において、よりバラエティに富んだグラデーション効果が発揮され得ることとなる。
前記実施形態では、1個の基材3の意匠面4に対する被膜6の形成操作の開始から終了までの間、基材3が、一定の速度で、棒状回転軸40回りに回転せしめられるようになっていた。しかしながら、1個の基材3の意匠面4に対する被膜6の形成操作の開始から終了までの間、基材3の回転速度を変化させたり、基材3を間欠的に回転させたり、或いは、例えば、図7の(c)の回転位置等において、回転を停止させたりして、被膜6の形成操作を行っても良い。
前記実施形態では、6個の支持装置38のうちの何れか1個が、前記せる操作実施位置に位置せしめられる毎に、回転ステージ34の回転が停止せしめられるようになっていた。然るに、回転ステージ34の回転速度を遅い速度とした場合には、各支持装置38の位置に拘わらず、回転ステージ34の回転を停止させることなく、連続的に回転させるようにしても良い。勿論、そのときにも、各支持装置38の棒状回転軸40が同時に回転せしめられるようになる。これによって、回転ステージ34の回転機構の構造が簡略化され得ると共に、基材3に対する被膜6の形成操作が、より効率化され得る。
基材3の意匠面4が、厚さ方向の一方の面だけでなく、その両面、或いは全表面が意匠面4とされる場合には、基材3の表面に対するマスキングが省略される。そして、例えば、基材3の厚さ方向の両側の面が意匠面4とされて、それら二つの意匠面4,4のそれぞれに対して、被膜6を、各意匠面4の幅方向の一端側部分58から他端側部分60に向かって膜厚が漸増するように形成する場合には、基材3が、棒状回転軸40回りの時計回りの方向に回転せしめられつつ、被膜6の形成操作が実施されるときに、かかる基材3の回転方向の後方側に隣り合って位置する基材3が、基材3の回転方向の後方側に向かって位置する意匠面4への被膜6形成時の遮蔽部材として、機能せしめられる。また、被膜6が形成されるべき基材3の回転方向の前方側に隣り合って位置する基材3が、被膜6が形成されるべき基材3の回転方向の前方側に向かって位置する意匠面4への被膜6形成時の遮蔽部材として、機能せしめられる。
支持装置38に支持された複数の基材3の隣り合うもの同士の間に、基材3とは異なって、被膜6を形成する必要のない特別な遮蔽部材を配置しても良い。
回転ステージ34や棒状回転軸40をそれぞれ回転させるための機構を省略し、その代わりに、例えば、基材3と遮蔽部材(被膜6が形成されるべき基材3とは別の基材3からなるものや、基材3とは別個の部材であって、被膜6を形成する必要のないものを含む)のうちの少なくとも何れか一方をスライド移動させる移動機構を設けて、被膜6が形成されるべき基材3の被膜形成面(意匠面4)とターゲット22の放出面24との間に挟まれた空間内に、遮蔽部材を侵入させるように、基材3や遮蔽部材をスライド移動させつつ、基材3の被膜形成面への形成操作を実施することも出来る。
前記実施形態では、基材3の意匠面4が、ターゲット22の放出面24との正対状態から、水平方向に所定角度傾いた状態とされて、かかる放出面24に対して傾斜して、対向位置せしめられていた。然るに、例えば、基材3の意匠面4が、ターゲット22の放出面24との正対状態から、鉛直方向に所定角度傾いた状態とされて、かかる放出面24に対して傾斜して、対向位置せしめられるようになっていても、何等差し支えない。
棒状回転軸40が水平方向に延びる形態とされていても良い。
基材3の意匠面4とターゲット22の放出面24との間に挟まれた空間:α内への遮蔽部材の侵入量は、必要とされる被膜6の膜厚の勾配等に応じて、適宜に決定されるところである。
基材3を、棒状回転軸40回りに、それと一体回転させるための構造や、回転ステージ34を回転させる構造も、例示のものに、何等限定されるものでないことは、勿論である。
棒状回転軸40と回転ステージ34とを、同一の回転駆動手段にて、回転させることも出来る。それによって、部品の削減に伴う低コスト化の実現が期待され得る。
支持装置38に設けられる支持部材50の個数や、そのような支持部材50に支持される基材3の個数、或いは基材3の支持部材50への支持構造等も、適宜に変更され得るところである。
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車用内装部品を与える基材に被膜を形成するのに用いられるスパッタリング装置と、スパッタリングにより基材に被膜が形成されてなる自動車用内装部品と、そのような自動車用内装部品を得るために採用されるスパッタリングによる被膜の形成方法に適用したものの具体例を示したが、本発明は、各種の基材に被膜を形成するのに用いられるスパッタリング装置と、スパッタリングにより基材に被膜が形成されてなる加飾製品と、そのような加飾製品を得るために採用されるスパッタリングによる被膜の形成方法の何れに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。また、本発明装置を用いて実施されるスパッタリング法も、グロー放電スパッタリング法やイオンビームスパッタリング法等の公知の手法が、何れも採用され得る。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。