JP2007038081A - 電気絶縁性基材の静電塗装方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気絶縁性基材の静電塗装方法でありながら、静電塗装前に電気絶縁性基材に対して予め導電性処理を施すことなく、静電塗装の際の火災原因となるといった問題を十分に解決することができるとともに、塗料の付着性を十分に向上させることができ、しかも塗装廃棄物の量を低減させて環境負荷の低減を図りながら電気絶縁性基材に対して効率よく確実に塗装を施すことが可能な電気絶縁性基材の静電塗装方法を提供すること。
【解決手段】表面固有抵抗値が109Ω以上の電気絶縁性基材1の被塗装面の一部を接地する工程と、該被塗装面に対して導電性塗料20を静電塗装する工程とを含むことを特徴とする電気絶縁性基材の静電塗装方法。
【選択図】図1
【解決手段】表面固有抵抗値が109Ω以上の電気絶縁性基材1の被塗装面の一部を接地する工程と、該被塗装面に対して導電性塗料20を静電塗装する工程とを含むことを特徴とする電気絶縁性基材の静電塗装方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、電気絶縁性基材の静電塗装方法に関する。
従来から、表面固有抵抗値が109Ω以上となるような樹脂部品等の電気絶縁性基材に対して静電塗装を施すために、種々の方法が研究、開示されてきている。例えば、特開2002−326051号公報(特許文献1)においては、脱脂処理を施したABS素材上に通電処理を施した後、特定の塗料組成物を特定の静電塗装条件で塗装するABS素材の塗装方法が開示されている。また、特開平1−231967号公報(特許文献2)においては、導電性テープで非塗装域をマスキングする工程と、前記導電性テープをアースする工程と、合成樹脂部品表面の全面に導電性プライマを塗装する工程と、該導電性プライマ上にトップコートを静電塗装する工程と、導電性テープを剥がす工程とを含む合成樹脂部品の静電塗装方法が開示されている。更に、特開2002−45734号公報(特許文献3)においては、導電処理された樹脂部品の導電部と接地部との間を、抵抗体を介して電気的に接続し、かかる状態で該導電処理された樹脂部品に対して静電塗装を行うことを特徴とする樹脂部品の静電塗装方法が開示されている。
しかしながら、このような特許文献1〜3に記載されているような従来の電気絶縁性基材の静電塗装方法においては、静電塗装の際に火災に対する安全性を確保し、しかも静電塗装する塗料の付着性を向上させるために、被塗装物である電気絶縁性基材を接地する前に、電気絶縁性基材に対して導電性処理(例えば導電性プライマを塗布する処理)を施す必要があった。すなわち、従来の電気絶縁性基材の静電塗装方法において前記導電性処理を施こさない場合には、先ず、静電塗装機によって微粒化、荷電した塗料粒子と、静電塗装機の荷電電極近傍のイオン化された空気とによって電気絶縁性基材の被塗装面の表面が帯電する。そして、前記被塗装面の表面に帯電した電荷は、電気絶縁性基材の表面固有抵抗値が高いことから、その表面からほとんど散逸することができずに蓄積するため、静電塗装を施すことによって電気絶縁性基材の被塗装面の表面電位は上昇し続ける。更に、電気絶縁性基材の被塗装面の表面電位が上昇すると、被塗装面の表面電位と、静電塗装機の荷電電極との電位差が減少するため、塗料粒子と電気絶縁性基材との間に作用する静電引力が弱まってしまい、静電塗装の際において塗料に十分な付着性を付与することができなくなる。また、電気絶縁性基材の表面電位が上昇すると、電気絶縁性基材の表面と周辺のアースされた物との間でスパークが起こり、火災の原因となる。このような理由から、従来の電気絶縁性基材の静電塗装方法においては、前述のような導電性処理を施す必要があった。一方で、このような導電性処理を施す場合には、塗装工程が増えてしまい、コストと環境負荷とが増加してしまうという問題があった。特に電気絶縁性基材がポリプロピレン系基材である場合においては、環境に対する負荷が大きく且つ高コストの塩素元素含有樹脂が含まれた導電性プライマを導電性処理に用いていたため、静電塗装の際のコストと環境負荷とがより増加する傾向にあった。
また、特開2005−125188号公報(特許文献4)においては、炭素原子含有材料からなる基材の表面に波長50nm〜100nmの真空紫外光を照射しつつ金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を付着させる塗装前処理工程と、前記飛散粒子が付着した前記基材の表面上に塗料を塗布して塗膜を形成せしめる塗装工程とを含む塗装方法が開示されている。しかしながら、このような特許文献4に記載の方法を電気絶縁性基材に静電塗装を施す方法として採用した場合には、火災の原因を排除するという点では必ずしも十分なものではなかった。
特開2002−326051号公報
特開平1−231967号公報
特開2002−45734号公報
特開2005−125188号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、電気絶縁性基材の静電塗装方法でありながら、静電塗装前に電気絶縁性基材に対して予め導電性処理を施すことなく、静電塗装の際の火災原因となるといった問題を十分に解決することができるとともに、塗料の付着性を十分に向上させることができ、しかも塗装廃棄物の量を低減させて環境負荷の低減を図りながら電気絶縁性基材に対して効率よく確実に塗装を施すことが可能な電気絶縁性基材の静電塗装方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、電気絶縁性基材の静電塗装の際に電気絶縁性基材の被塗装面の一部を接地し、塗料として導電性塗料を用いることとによって、静電塗装を施して前記被塗装面に形成された塗膜が導電性を有するため、前記塗膜と前記接地部分とを通して塗装により帯電した前記被塗装面上の電荷を流すことができ、これによって予め導電性処理を施さなくても静電塗装の際の前記被塗装面の表面電位を下げることができ、上記目的を達成することが可能であるということを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法は、表面固有抵抗値が109Ω以上の電気絶縁性基材の被塗装面の一部を接地する工程と、該被塗装面に対して導電性塗料を静電塗装する工程とを含むことを特徴とする方法である。
また、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法においては、前記電気絶縁性基材の被塗装面に、波長50nm〜100nmの真空紫外光を照射しつつ金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を付着させる前処理工程を更に含むことが好ましい。
さらに、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法においては、前記真空紫外光及び前記飛散粒子が、金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるターゲットに、パルス幅が100フェムト秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が106W/cm2〜1012W/cm2であるパルスレーザー光を照射して発生せしめたものであることが好ましい。
また、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法においては、減圧状態、及び/又は、水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス及びアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種のガスを含有するシールドガス雰囲気下において前記電気絶縁性基材の被塗装面に前記飛散粒子を付着せしめることが好ましい。
なお、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、静電塗装を施す対象である電気絶縁性基材の被塗装面を接地し、電気絶縁性基材に導電性塗料を塗布することで、電気絶縁性基材の被塗装面に導電性塗料からなる塗膜が形成される。そして、かかる塗膜が導電性を有することから、静電塗装機によって形成された塗料粒子と、静電塗装機の荷電電極近傍のイオン化された空気とによって電気絶縁性基材の被塗装面に運ばれた電荷は、電気絶縁性基材の表面に塗布された導電性塗料の塗膜と接地部分とを通って散逸するため蓄積されることはない。従って、本発明においては、静電塗装の際に予め導電性プライマを塗装することがなくても、電気絶縁性基材の被塗装面の一部を接地することで、電気絶縁性基材の被塗装面の表面電位が上昇することがなく、静電塗装機の荷電電極と前記被塗装面との電位差が減少することがないため、前記塗料粒子と前記被塗装面との間に強い静電引力が作用し続け、高い塗着効率が得られるものと本発明者らは推察する。また、前述のごとく電気絶縁性基材の表面電位が上昇することがないので、電気絶縁性基材の表面と周辺にある接地されている物との間でスパークが起こることがなく、火災原因を十分に解決することができるものと本発明者らは推察する。更に、本発明においては、静電塗装の際に予め導電性プライマを塗装する必要がないため、導電性プライマが不要になることによって廃棄物として排出される塩素元素含有樹脂等がなくなって環境改善ができ、同時にコストの低減が図れるものと本発明者らは推察する。
すなわち、本発明によれば、電気絶縁性基材の静電塗装方法でありながら、静電塗装前に電気絶縁性基材に対して予め導電性処理を施すことなく、静電塗装の際の火災原因となるといった問題を十分に解決することができるとともに、塗料の付着性を十分に向上させることができ、しかも塗装廃棄物の量を低減させて環境負荷の低減を図りながら電気絶縁性基材に対して効率よく確実に塗装を施すことが可能な電気絶縁性基材の静電塗装方法を提供することが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法を実施するのに好適な静電塗装装置の一実施形態を示す摸式図である。
図1においては、電気絶縁性基材1の被塗装面2の一部にアース電極3が接続され、電気絶縁性基材1が接地されている。また、図1に示す静電塗装装置10は、塗装機11と、高電圧電源12と、高圧エア供給装置13と、塗料供給ポンプ14とを備える。そして、塗装機11は高電圧電源12と電気的に接続されており、高電圧電源12はその一部がアース線を介して接地されている。また、高圧エア供給装置13は塗装機11と接続されており、塗装機11と高圧エア供給装置13との間にはエア流量調節弁15が設けられている。更に、図1においては、塗装機11によって、帯電した導電性塗料の粒子20と、イオン化された空気21とが電気絶縁性基材1の被塗装面2に向かって吹き付けられている。
本発明にかかる電気絶縁性基材1は表面固有抵抗値が109Ω以上のものであれば特に制限されず、例えば、オレフィン系樹脂、ポリアミド、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレートを挙げることができる。また、このような電気絶縁性基材1の形状や厚さも特に制限されず、得られる塗装製品の用途等によってフィルム状、板状、各種形状の成形体等が適宜選択される。
また、電気絶縁性基材1の被塗装面2の一部を接地するために用いることができるアース電極3及びアース線は特に制限されず、適宜公知のアース電極及びアース線を用いることができる。
本実施形態においては、塗装機11として間接帯電式のエア霧化式静電スプレーハンドガン(ランズバーグ社製REA 70/L)を備え、高電圧電源12としてランズバーグ社製RPI−200GIIDを備え、高圧エア供給装置13としてアネスト岩田製コンプレッサーTFP110−10を備え、塗料供給ポンプとしてはランズバーグ社製フラッシャブルポンプを備えている静電塗装装置10を用いる。
また、このような静電塗装に用いる導電性塗料としては特に制限されず、公知の導電性塗料を適宜用いることができる。また、このような導電性塗料としては、塗装工程から排出されるVOC(揮発性有機物質)の量を減らし、環境負荷をより一層低減するという観点からは、水系塗料を使用することが好ましい。本実施形態においては、このような導電性塗料として水性塗料(日本ビーケミカル製WB1110CD、塗膜の表面固有抵抗値(トレック社製502で厚さ20μmの膜で測定):105Ω)を用いている。
以下において、図1を参照しながら、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法の好適な一実施形態について説明する。
先ず、電気絶縁性基材1の被塗装面2の一部にアース電極3を接続し、電気絶縁性基材1を接地する。
次に、高電圧電源12によって直流高電圧(−60kv)を静電スプレーハンドガン11の先端の電極に印加すると、その周囲の空気が負にイオン化される。そして、塗料供給ポンプ14から静電スプレーハンドガン11に供給される導電性塗料は、エアノズルで微粒化され、電気絶縁性基材1の被塗装面2に向かって粒子の状態で飛行する。また、飛行中の導電性塗料の粒子20は、イオン化された空気21によって負に帯電する。このようにして帯電した導電性塗料の粒子20は、電気絶縁性基材1の被塗装面2との間に働く静電引力によって引きつけられて電気絶縁性基材1の被塗装面2に付着する。
このようにして導電性塗料の粒子20が電気絶縁性基材1の被塗装面2にある程度付着すると、被塗装面2上に塗膜が形成される。そして、帯電した導電性塗料の粒子20とイオン化された空気21によって電気絶縁性基材1の被塗装面2上に蓄積された電荷は、前述のようにして形成された塗膜を経由してアース電極3に流れ、静電塗装中の電気絶縁性基材1の被塗装面2上の表面電位を下げることができる。そのため、本実施形態においては、静電塗装を安全に継続することができ、所望の膜厚となるように導電性塗料を塗装することが可能である。
以上、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法の好適な実施形態について説明したが、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、図1に示す静電塗装装置10を用いているが、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法に用いることができる静電塗装装置10は特に制限されず、適宜公知の静電塗装装置を用いることができる。
また、上記実施形態においては、電気絶縁性基材1をそのまま用いていたが、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法においては、電気絶縁性基材1の被塗装面2に1質量%ジメチルエタノールアミン(DMEA)水溶液又は水を塗布して用いてもよい。上記実施形態においては、導電性塗料の静電塗装を開始してから電気絶縁性基材1の被塗装面2上に導電性塗料の連続した塗膜が形成されるまでの間、被塗装面2上の電荷はアース電極3に流れない。そのため、連続した塗膜が形成されるまでは被塗装面2上の表面電位が上昇する。したがって、より安全で、且つ、より高い塗着効率で電気絶縁性基材1に静電塗装を施すために、電気絶縁性基材1の被塗装面2に1質量%ジメチルエタノールアミン(DMEA)水溶液を塗布することが好ましい。このようにして1質量%ジメチルエタノールアミン(DMEA)水溶液を塗布することで、被塗装面2上の電荷がアース電極3に流すことが可能となる。
また、上記実施形態においては、電気絶縁性基材1に対して前処理を施すことなく用いているが、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法においては、電気絶縁性基材1の被塗装面2に、波長50nm〜100nmの真空紫外光を照射しつつ金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を付着させる前処理工程を施すことができる。このような前処理を施すことで、静電塗装において電気絶縁性基材に対してより優れた付着性を有する塗膜を形成せしめることが可能となる。本発明においては、予め前記前処理を施すことによって電気絶縁性基材1の被塗装面2の表面上を活性化することができ、これによって活性化した被塗装面2の表面上に塗料を塗布することが可能となるため、電気絶縁性基材1の被塗装面2に塗料分子がより強固に結合するようになり、より高度な付着性を有する塗膜を形成せしめることが可能となる。そのため、本発明においては、前述の前処理工程を更に含むことが好ましい。
以下において、本発明に好適な前述の電気絶縁性基材1の被塗装面2に、波長50nm〜100nmの真空紫外光を照射しつつ金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を付着させる前処理工程について説明する。
図2は、前記前処理工程を実施するのに好適な塗装前処理装置の一実施形態の基本構成を示す模式図であり、図2に示す塗装前処理装置はいわゆるレーザーアブレーション装置31として構成されている。すなわち、図2に示すレーザーアブレーション装置31は、レーザー光源32と、レーザー光源32から発せられたレーザー光L1が導入される処理容器33とを備えており、処理容器33の内部にはレーザー光L1が照射されるターゲット34と、表面に活性化された表面層35が形成されるべき電気絶縁性基材1とが配置されている。
レーザー光源32は、パルス幅が100フェムト秒〜100ナノ秒のパルスレーザー光を照射することができるレーザー光発生装置であればよく、特に制限されないが、例えばYAGレーザー装置、エキシマレーザー装置によって構成され、中でもYAGレーザー装置によって構成されることが好ましい。そして、レーザー光源32は、処理容器33の内部に配置されているターゲット34に向かってレーザー光L1を照射する位置に配置されている。また、図示はしていないが、レーザー光L1をターゲット34に照射した際にターゲット34の表面から金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子aおよび真空紫外光L2が効率的に発生するように、レーザー光L1の光路の途中にレンズ、鏡等を適宜配置してレーザー光のエネルギー密度や照射角度を調整してもよい。特に、集光レンズ(図示せず)を処理容器33の内部または外部に配置して、ターゲット34に照射されるパルスレーザー光L1の照射強度が106W/cm2〜1012W/cm2となるようにすることが好ましく、108W/cm2〜1011W/cm2となるようにすることが特に好ましい。
処理容器33は、少なくともターゲット34と電気絶縁性基材1とを内部に収容するための容器(例えばステンレス鋼製の容器)であり、レーザー光L1を容器33内に配置されたターゲット34の表面に導入するための窓37(例えば石英製の窓)を備えている。また、処理容器33には真空ポンプ(図示せず)が接続されており、容器33の内部を所定圧力の減圧状態に維持することが可能となっている。このように内部が減圧状態となる容器33を用いると、真空紫外光L2が空気中の酸素等の真空紫外光吸収物質に吸収されることなく電気絶縁性基材1の表面に照射され、電気絶縁性基材1の表面がより効率良く活性化される。なお、容器33の内部を減圧状態に維持する際の圧力としては、1Torr以下の圧力が好ましく、1×10−3Torr以下の圧力がより好ましい。また、酸素分圧及び/又は窒素分圧が1Torr以下の圧力となるようにすることが好ましい。
ターゲット34は、前述のレーザー光L1の照射により金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を発生する材料からなるものであればよく、金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるものが好ましい。このような金属材料としては、各種の遷移元素金属、典型元素金属、半金属(メタロイド)、又はそれらの合金を用いることができ、例えば、Cu、Al、Ti、Si、Cr、Pt、Au、Ag、Pd、Zr、Mg、Ni、Fe、Co、Zn、Sn、W、Be、Ge、Mn、Mo、Nb、Ta、Hfそれらを主成分とする合金等が挙げられ、中でもCu、Al、Ti、Si、Znが好ましい。なお、ここでいう金属材料は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪素、砒化ガリウム、InP、ZnTe等の半導体であってもよい。また、金属化合物材料としては、各種の遷移元素金属、典型元素金属又は半金属の酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられ、中でもAl2O3、AlN、Si3N4、SiO2、SiO、TiO2、TiN、ZnO2が好ましい。なお、ここでいう金属化合物材料は複数の金属元素を含有していてもよく、更に非金属元素を含んでいてもよい。また、炭素材料としては、各種の無定形炭素、グラファイト等が挙げられ、中でもグラファイトが好ましい。さらに、ターゲット34は、このような金属材料、金属化合物材料、炭素材料の複合材料であってもよい。なお、ターゲット34の形状等は特に制限されず、板状、ロッド状等に成形された前記ターゲット材料からなるバルク材や、前記ターゲット材料をテープ上に塗布、蒸着等によって形成したテープ状ターゲット等を用いることができる。
また、電気絶縁性基材1の表面に形成されるべき活性化された表面層35の厚さは特に制限されず、後述する塗装工程において形成される塗膜と基材との付着性が最適となるように適宜決定されるが、一般的には0.5〜3nm程度が好ましい。
上述の電気絶縁性基材1とターゲット34との位置的関係は特に限定されず、電気絶縁性基材1の表面にターゲット34の表面から発生した真空紫外光L2が確実に照射されかつ飛散粒子aが効率良く付着するようにターゲット34に対して電気絶縁性基材1が適宜配置され、図2においてはターゲット34の法線に対する角度Θが45°となる位置に電気絶縁性基材1が配置されている。また、ターゲット34にはターゲット駆動装置(例えばターゲット回転台、図示せず)が接続され、レーザー光L1の照射位置にターゲットの新鮮な面(レーザー光未照射面)が順次繰り出されるようになっている。さらに、電気絶縁性基材1にも基材駆動装置(例えば基材回転台、図示せず)が接続され、電気絶縁性基材1の表面がより均一に活性化されるようになっていてもよい。
以上、前記前処理工程を実施するのに好適な塗装前処理装置の一実施形態について説明したが、塗装前処理装置は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、例えば、上記実施形態では処理容器33が真空ポンプ(図示せず)に接続されているが、水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガスおよびアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種のシールドガスを導入するためのガスボンベ(図示せず)に接続されていてもよく、その場合は容器33の内部を所定のシールドガス雰囲気に維持することが可能となる。このように内部がシールドガス雰囲気となっている容器33を用いると、容器33内を減圧状態とせずとも真空紫外光L2が真空紫外光吸収物質に吸収されることなく電気絶縁性基材1の表面に照射され、電気絶縁性基材1の表面がより効率良く活性化される。また、処理容器33に真空ポンプ(図示せず)およびガスボンベ(図示せず)の双方を接続し、容器33の内部を所定のシールドガス雰囲気にすると共に所定の圧力条件に維持することが好適である。このような条件としては、例えばヘリウムガス雰囲気で大気圧以下の圧力が好ましく、500Torr以下の圧力がより好ましい。また、酸素分圧及び/又は窒素分圧が1Torr以下の圧力となるようにすることが好ましい。
また、上記実施形態ではレーザー光源32が処理容器33の外部に配置されているが、処理容器33の内部に配置されていてもよく、その場合はレーザー光L1を容器33内に導入するための窓37は不要となる。
更に、上記実施形態ではターゲット34の法線に対する角度Θが45°となる位置に電気絶縁性基材1が配置されているが、このような位置関係に特に限定されるものではなく、ターゲット34の法線に対する角度Θが10°〜60°程度の範囲となる位置に電気絶縁性基材1が配置されていてもよい。また、例えば炭素原子含有材料からなる電気絶縁性基材1としてレーザー光L1を透過可能なものを用い、電気絶縁性基材1をレーザー光源32とターゲット34との間にターゲット34に対して対向配置せしめ、電気絶縁性基材1を透過したレーザー光L1がターゲット34に照射されるようにしてもよい。
また、ターゲット34としてレーザー光L1を透過可能なものを用い、ターゲット34をレーザー光源32と電気絶縁性基材1との間に配置せしめ、ターゲット34の裏面(透明フィルム側)から表面(ターゲット材料側)に透過したレーザー光L1によってターゲット34の表面(ターゲット材料側)から真空紫外光L2および飛散粒子aが発生し、それらが電気絶縁性基材1の表面に供給されるようにしてもよい。このような構成にすると、比較的大型の電気絶縁性基材1に対する塗装前処理がより容易になる傾向にある。また、このような構成に用いるターゲットとしては、レーザー光に対して透明なフィルム(例えばPETフィルム)上に前述のターゲット材料を蒸着、貼着等により積層したテープ状ターゲットが好ましい。
次に、前記前処理工程の好適な一実施形態について、図2を参照しつつ説明する。
前記前処理方法においては、前述のターゲット34にパルス幅100フェムト秒〜100ナノ秒のパルスレーザー光L1がレーザー光源32から照射される。すると、ターゲット34の表面に高温のプラズマPが形成され、そのプラズマPから波長50nm〜100nmの真空紫外光L2が発生する。また、それと同時に、レーザー光L1が照射されたターゲット34の表面からはターゲットを構成する材料に応じて金属原子や炭素原子を含む分子が高いエネルギーをもって飛散するほか、プラズマP内部もしくはプラズマPにより加熱されたターゲット34の表面からは、ターゲットを構成する分子が分解することにより形成された中性原子、イオン、並びに前記の分子、中性原子およびイオンのうちのいくつかが結合して形成されたクラスタが高いエネルギーをもって飛散する。なお、パルスレーザー光L1のパルス幅が100フェムト秒未満では短時間にレーザーのエネルギーが集中してターゲットに照射されるため波長50nm未満の光が発生するようになり、他方、100ナノ秒を超えるとレーザーのエネルギーが時間的に十分集中して照射されないため発生する光の波長が100nmを超えてしまう。また、発生する光L2の波長が50nm未満の場合並びに100nm超の場合はいずれも、炭素原子含有材料に対する光L2の吸収率が低くなり、炭素原子含有基材の表面が十分に活性化されず、後述する塗装工程において形成される塗膜と基材との付着強度が不十分となる。さらに、ターゲット34に照射されるパルスレーザー光L1の照射強度が106W/cm2〜1012W/cm2であることが好ましい。パルスレーザー光L1の照射強度が106W/cm2未満では波長50nm〜100nmの真空紫外光L2が十分に発生しない傾向にあり、他方、1012W/cm2を超えるとターゲットに照射されたときに発生する電磁波の主たる波長域が50nm以下の波長域になるため、波長50nm〜100nmの真空紫外光L2の光量が減少してしまう傾向にある。
そして、このようにパルスレーザー光L1の照射によりターゲット34の表面から発生した各種飛散粒子(アブレータ)aは、真空紫外光L2と共に炭素原子含有電気絶縁性基材1の表面に供給される。このようにして電気絶縁性基材1の表面に照射された真空紫外光L2は炭素原子含有材料に対する吸収率が高いので、真空紫外光L2が照射された炭素原子含有電気絶縁性基材1の表面は十分に活性化される。そこに、飛散粒子aが高いエネルギーをもって到達するため、飛散粒子aは電気絶縁性基材1上に強固に付着し、基材表面が活性な状態に維持される。このようにして炭素原子含有電気絶縁性基材1の表面がムラなく活性な状態に長時間にわたって維持されるようになり、このように活性化されている基材表面上に後述する塗装工程において塗料を塗布すると塗料分子と基材表面とが強固に結合して付着性の高い塗膜が形成される。
なお、前記前処理工程においては、電気絶縁性基材1の表面を活性化させる際に基材を高温に加熱する必要はなく、基材温度は特に制限されないが、一般的には室温〜50℃程度であればよい。また、電気絶縁性基材1の表面を活性化させるのに要する時間(レーザー光照射時間)も特に制限されず、後述する塗装工程において形成される塗膜と基材との付着性が最適となるように適宜決定されるが、一般的には1秒〜10分程度が好ましく、5秒〜1分程度が特に好ましい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す静電塗装装置10を用いて電気絶縁性基材を静電塗装した。すなわち、先ず、厚さ3mm、縦150mm、横70mmのTSOP(日本ポリプロ製PC−6、表面固有抵抗値:1012Ω)の平板試験片をイソプロピルアルコール(IPA)で脱脂したものを電気絶縁性基材1として用い、電気絶縁性基材1の被塗装面2にアース電極3を取り付け、電気絶縁性基材1の被塗装面2の一部を接地した。
図1に示す静電塗装装置10を用いて電気絶縁性基材を静電塗装した。すなわち、先ず、厚さ3mm、縦150mm、横70mmのTSOP(日本ポリプロ製PC−6、表面固有抵抗値:1012Ω)の平板試験片をイソプロピルアルコール(IPA)で脱脂したものを電気絶縁性基材1として用い、電気絶縁性基材1の被塗装面2にアース電極3を取り付け、電気絶縁性基材1の被塗装面2の一部を接地した。
次に、導電性塗料として水性塗料(日本ビーケミカル製WB1110CD、塗膜の表面固有抵抗値(トレック社製502を用い、厚さ20μmの膜で測定):105Ω)を用い、乾燥膜厚が15μmとなるように電気絶縁性基材1の被塗装面2に静電塗装した。なお、安全に静電塗装ができるか判断するため、電気絶縁性基材1に上記水性塗料をバーコート塗装した後に表面固有抵抗値を測定した。測定の結果、電気絶縁性基材1の被塗装面2上の水性塗料の膜の表面固有抵抗値は、静電塗装が可能とされる表面固有抵抗値の上限値109Ωを大幅に下回る105Ωであった。従って、安全に静電塗装ができることが確認できた。なお、実施例1においては、上述本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法の好適な一実施形態で説明した方法と同様の方法で乾燥膜厚が15μmとなるように電気絶縁性基材1の被塗装面2に静電塗装し、静電塗装終了後、室温で約5分間放置した後、90℃の温度条件下において20分間乾燥して、塗装板を得た。
このような結果から、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法によれば、予め導電性処理を施すことなく火災の原因となる問題を十分に解決して、安全に電気絶縁性基材を静電塗装することができることが確認された。
(実施例2)
先ず、図2に示す塗装前処理装置を用いて、電気絶縁性基材1に前処理を行った。すなわち、厚さ3mm、縦150mm、横70mmのTSOP(日本ポリプロ製PC−6、表面固有抵抗値:1012Ω)の平板試験片をイソプロピルアルコール(IPA)で脱脂したものを電気絶縁性基材1として用い、この電気絶縁性基材1に波長50nm〜100nmの真空紫外光を照射しつつ炭素原子を含む飛散粒子を付着させる前処理を施した。なお、このような前処理の方法としては、図2に示す塗装前処理装置(いわゆるレーザーアブレーション装置31)を用いた前述の前処理方法と同様の方法を採用した。この際、レーザー照射条件としては、照射強度を4GW/cm2とし、処理時間は10秒とした。また、ターゲット34は炭素とした。ターゲット34と被塗装物間距離は50mmとし、ターゲット34と電気絶縁性基材1のなす角度Θは30°とした。また、雰囲気としては、ヘリウムガスを流して大気圧下と同様の760Torrとした。
先ず、図2に示す塗装前処理装置を用いて、電気絶縁性基材1に前処理を行った。すなわち、厚さ3mm、縦150mm、横70mmのTSOP(日本ポリプロ製PC−6、表面固有抵抗値:1012Ω)の平板試験片をイソプロピルアルコール(IPA)で脱脂したものを電気絶縁性基材1として用い、この電気絶縁性基材1に波長50nm〜100nmの真空紫外光を照射しつつ炭素原子を含む飛散粒子を付着させる前処理を施した。なお、このような前処理の方法としては、図2に示す塗装前処理装置(いわゆるレーザーアブレーション装置31)を用いた前述の前処理方法と同様の方法を採用した。この際、レーザー照射条件としては、照射強度を4GW/cm2とし、処理時間は10秒とした。また、ターゲット34は炭素とした。ターゲット34と被塗装物間距離は50mmとし、ターゲット34と電気絶縁性基材1のなす角度Θは30°とした。また、雰囲気としては、ヘリウムガスを流して大気圧下と同様の760Torrとした。
次に、図3に示す本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法を実施するのに好適な静電塗装装置10を用いて、このような前処理を施した電気絶縁性基材1に対して静電塗装を施した。すなわち、先ず、前述の前処理を施した後の電気絶縁性基材1の被塗装面2にアース電極3を取り付け、電気絶縁性基材1の被塗装面2の一部を接地した。その後、導電性塗料として水性上塗塗料(日本ビーケミカル製AR2000黒、塗膜の表面固有抵抗値(トレック社製502を用い、厚さ20μmの膜で測定):105Ω)を用い、図3に示す静電塗装装置10を用いて乾燥膜厚が25μmとなるようにして電気絶縁性基材1の被塗装面に静電塗装した。
図3に示す静電塗装装置10は、基本的には、塗装機11と、高電圧電源12と、高圧エア供給装置13と、塗料供給タンク16とを備える。また、高電圧電源12は塗装機11と接続されており、高圧エア供給装置13は、塗装機11と塗料供給タンク16とにそれぞれ接続されており、高圧エア供給装置13と塗装機11との間、及び高圧エア供給装置13と塗料供給タンク16との間にそれぞれエア流量調節弁15が設置されている。また、塗料供給タンク16は塗装機11に接続されている。実施例2においては、塗装機11として直接帯電式の回転霧化式塗装機(ランズバーグ社製、マイクロベル マークII)を備え、高電圧電源12としてランズバーグ社製RPI−200GIIDを備え、高圧エア供給装置13としてアネスト岩田製コンプレッサーTFP110−10を備え、塗料供給タンク16としてアネスト岩田製水系塗料用加圧タンクPT−202CMを備える静電塗装装置10を用いた。
そして、静電塗装装置10においては、前述の回転霧化式塗装機に高圧エア供給装置13からエアモータ用エア、シェービングエア用エア、制御用エアが供給される。また、回転霧化式塗装機の先端の回転霧化頭には、高電圧電源12によって直流高電圧(−90kv)が印加される。次いで、アースから絶縁された塗料供給タンク16に高圧エア供給装置からの高圧エアが供給され、導電性塗料が回転霧化式塗装機に圧送される。その後、回転霧化式塗装機に圧送された導電性塗料は、先端の回転霧化頭で微粒化されると同時に負に荷電される。このようにして荷電された導電性塗料の粒子20は、電気絶縁性基材1との間に働く静電引力によって電気絶縁性基材1の被塗装面2に引きつけられて被塗装面2に付着する。このようにして乾燥膜厚が25μmとなるようにして電気絶縁性基材1の被塗装面に静電塗装を行い、室温にて約5分間放置した後、120℃の温度条件で20分間焼付けを行い、塗装板を得た。
このようにして得られた塗装板を室温で1日放置した後、碁盤目テープ剥離試験を行ない、初期付着性を評価した。このような初期付着性の評価はJIS K5400に準拠して行った。また、前述のようにして得られた塗装板を室温で1日放置した後、40℃の温水に10日間浸漬し、その後に、碁盤目テープ剥離試験を行なって耐水付着性を評価した。このような耐水付着性の評価もJIS K5400に準拠して行った。その結果、初期付着性、耐水付着性に関するいずれの試験においても塗膜が剥がれることはなかった。
このような結果から、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法によれば、予め導電性処理を施していなくても、火災の原因となる問題を十分に解決して、安全に電気絶縁性基材を静電塗装することができることが確認され、更に、塗膜に高い付着性を発揮させることが可能となることが確認された。
(比較例1)
導電性塗料として水性上塗塗料(日本ビーケミカル製AR2000黒、塗膜の表面固有抵抗値(トレック社製502を用い、厚さ20μmの膜で測定):105Ω)を用いる代わりに溶剤型上塗塗料(関西ペイント製SFX420Tシルバー、表面固有抵抗値:1011Ω)を用いた以外は実施例2と同様にして静電塗装を試みようとした。ここで、静電塗装を実施する前に安全に静電塗装ができるか判断するため、電気絶縁性基材1に前記溶剤型上塗塗料をバーコート塗装して表面固有抵抗値を測定した。測定の結果、電気絶縁性基材1の被塗装面2上の前記溶剤型上塗塗料の膜の表面固有抵抗値は、静電塗装が可能とされる表面固有抵抗値の上限値109Ωを大幅に超える1011Ωであった。そのため、火災の危険性が高く、安全に静電塗装ができないことがわかったので静電塗装は中止した。
導電性塗料として水性上塗塗料(日本ビーケミカル製AR2000黒、塗膜の表面固有抵抗値(トレック社製502を用い、厚さ20μmの膜で測定):105Ω)を用いる代わりに溶剤型上塗塗料(関西ペイント製SFX420Tシルバー、表面固有抵抗値:1011Ω)を用いた以外は実施例2と同様にして静電塗装を試みようとした。ここで、静電塗装を実施する前に安全に静電塗装ができるか判断するため、電気絶縁性基材1に前記溶剤型上塗塗料をバーコート塗装して表面固有抵抗値を測定した。測定の結果、電気絶縁性基材1の被塗装面2上の前記溶剤型上塗塗料の膜の表面固有抵抗値は、静電塗装が可能とされる表面固有抵抗値の上限値109Ωを大幅に超える1011Ωであった。そのため、火災の危険性が高く、安全に静電塗装ができないことがわかったので静電塗装は中止した。
(比較例2)
電気絶縁性基材1を接地しない以外は実施例2と同様にして静電塗装を試みようとしたが、危険極まりないので、このような静電塗装を中止した。理由は下記の通りである。静電塗装を施すと、静電塗装機の荷電電極近傍の空気がイオン化されることによって形成するイオン化空気と静電塗装機によって微粒化、荷電した塗料粒子とによって電気絶縁性基材の被塗装面が帯電する。そして、電気絶縁性基材の被塗装面の電荷は、被塗装物がたとえ導電性の基材であっても、いずれかの部位を接地しないと表面からほとんど散逸せずに蓄積され、電気絶縁性基材の表面電位は上昇する。電気絶縁性基材の表面電位が上昇すると、静電塗装機の荷電電極との電位差が減少し、塗料粒子と電気絶縁性基材との間に作用する静電引力が弱まり、静電塗装化による塗着効率が低下する。また、電気絶縁性基材の表面電位が上昇すると、被塗装物の表面と周辺のアースされたものとの間でスパークが起こり、火災の原因になって大変危険である。
電気絶縁性基材1を接地しない以外は実施例2と同様にして静電塗装を試みようとしたが、危険極まりないので、このような静電塗装を中止した。理由は下記の通りである。静電塗装を施すと、静電塗装機の荷電電極近傍の空気がイオン化されることによって形成するイオン化空気と静電塗装機によって微粒化、荷電した塗料粒子とによって電気絶縁性基材の被塗装面が帯電する。そして、電気絶縁性基材の被塗装面の電荷は、被塗装物がたとえ導電性の基材であっても、いずれかの部位を接地しないと表面からほとんど散逸せずに蓄積され、電気絶縁性基材の表面電位は上昇する。電気絶縁性基材の表面電位が上昇すると、静電塗装機の荷電電極との電位差が減少し、塗料粒子と電気絶縁性基材との間に作用する静電引力が弱まり、静電塗装化による塗着効率が低下する。また、電気絶縁性基材の表面電位が上昇すると、被塗装物の表面と周辺のアースされたものとの間でスパークが起こり、火災の原因になって大変危険である。
以上説明したように、本発明によれば、電気絶縁性基材の静電塗装方法でありながら、静電塗装前に電気絶縁性基材に対して予め導電性処理を施すことなく、静電塗装の際の火災原因となるといった問題を十分に解決することができるとともに、塗料の付着性を十分に向上させることができ、しかも塗装廃棄物の量を低減させて環境負荷の低減を図りながら電気絶縁性基材に対して効率よく確実に塗装を施すことが可能な電気絶縁性基材の静電塗装方法を提供することが可能となる。
したがって、本発明の電気絶縁性基材の静電塗装方法は、バンパー、ルーバー、ホイールキャップ、マッドガード等の部品に用いるような電気絶縁性基材の静電塗装方法として有用である。
1…電気絶縁性基材、2…電気絶縁性基材の被塗装面、3…アース電極、10…静電塗装装置、11…塗装機、12…高電圧電源、13…高圧エア供給装置、14…塗料供給ポンプ、15…エア流量調節弁、16…塗料供給タンク、20…導電性塗料の粒子、21…イオン化された空気、31…レーザーアブレーション装置、32…レーザー光源、33…処理容器、34…ターゲット、35…表面層、37…窓、L1…レーザー光、L2…真空紫外光、a…飛散粒子、P…プラズマ。
Claims (4)
- 表面固有抵抗値が109Ω以上の電気絶縁性基材の被塗装面の一部を接地する工程と、該被塗装面に対して導電性塗料を静電塗装する工程とを含むことを特徴とする電気絶縁性基材の静電塗装方法。
- 前記電気絶縁性基材の被塗装面に、波長50nm〜100nmの真空紫外光を照射しつつ金属原子及び/又は炭素原子を含む飛散粒子を付着させる前処理工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の電気絶縁性基材の静電塗装方法。
- 前記真空紫外光及び前記飛散粒子が、金属、金属化合物及び炭素からなる群から選択される少なくとも一つの材料からなるターゲットに、パルス幅が100フェムト秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が106W/cm2〜1012W/cm2であるパルスレーザー光を照射して発生せしめたものであることを特徴とする請求項2に記載の電気絶縁性基材の静電塗装方法。
- 減圧状態、及び/又は、水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス及びアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種のガスを含有するシールドガス雰囲気下において電気絶縁性基材の被塗装面に前記飛散粒子を付着せしめることを特徴とする請求項2又は3に記載の塗装前処理方法。
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