JP4269271B2 - 赤外光反射部材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、赤外光を選択的に反射することが可能な部材、並びにそのような赤外光反射部材の製造方法に関する。
無塗装で錆のない金属材料表面は、一般に赤外光を高効率に反射する。しかしながら、このような金属材料であっても下地保護や美観付与のために塗装が施されると、表面の塗膜が赤外光を吸収するため、日射等の赤外光を含む光によって温度が上昇しやすくなる。また、無機ガラスや有機ガラスを用いた窓材は、これらの材料に本来的に赤外光を吸収する性質があるため、塗装物と同様に日射等の赤外光を含む光によって温度が上昇しやすい。因みに、日本工業規格(JIS R3106)収載のデータによれば、日射エネルギーのうち赤外光は49%を占める。
そこで、赤外光の吸収による建築物の室内温度上昇を抑制するため、建築物の壁面、屋根、窓ガラス等の表面に加工を施して赤外光を多く反射させることが従来から行われており、このような加工方法として主に塗装、フィルムの貼付が知られている(例えば、特開平11−323197号公報、特開平7−100996号公報を参照)。
しかしながら、このような従来の赤外光反射塗装においては、色の選択肢が少なく、高光沢性にしにくいという問題があった。また、従来から使用されているガラス板用フィルムの場合は、可視光の一部を吸収又は反射して着色し、無色透明にできないという問題があった。そのため、上記従来の塗装、フィルムの貼付といった赤外光反射のための加工方法は適用できる範囲が非常に限定されてしまい、色及び光沢性が共に高意匠性であることが要求される部材(例えば、自動車ボデー塗膜)や透明性が要求される部材(例えば、自動車用窓ガラス)等には適用できないという問題があった。
特開平11−323197号公報 特開平7−100996号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、被処理部材の可視光に対する性質(色や透明性)を損なうことなく赤外光を選択的に反射することが可能な赤外光反射部材、並びにそのような赤外光反射部材を効率良くかつ確実に製造することが可能な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、金属からなるターゲットにレーザー光を照射して所定の粒径及び抵抗率を有する導電性微粒子を発生せしめ、非導電性材料からなる被処理部材上に離散的に付着させることにより上記目的が達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の赤外光反射部材の製造方法は、金、銀、銅及びニッケルからなる群から選択される少なくとも一種の金属からなるターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10 W/cm 〜10 12 W/cm であるレーザー光を照射して粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子を発生させ、少なくとも表面が抵抗率10Ωcm以上の非導電性材料からなる被処理部材の表面に前記導電性微粒子を離散的に付着せしめることを特徴とする方法である。
また、本発明の赤外光反射部材は、
少なくとも表面が抵抗率10Ωcm以上の非導電性材料からなる被処理部材と、
金、銀、銅及びニッケルからなる群から選択される少なくとも一種の金属からなるターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10 W/cm 〜10 12 W/cm であるレーザー光を照射して発生せしめた粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子であって、前記被処理部材の表面に離散的に付着している前記導電性微粒子と、
からなることを特徴とするものである。
さらに、本発明の赤外光反射部材及びその製造方法においては、前記被処理部材の表面に付着した前記導電性微粒子の間隔の平均値が200〜1000nmであることが好ましい。
なお、上記本発明の赤外光反射部材及びその製造方法において、被処理部材の可視光に対する性質(色や透明性)が損なわれることなく赤外光が選択的に反射されるようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の赤外光反射部材においては、金属からなるターゲットにレーザー光が照射されることによって発生した各種飛散粒子が飛散する過程において互いに衝突して合体することによって形成された粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子が被処理部材の表面に離散的に配置して強固に付着している。それに対して、被処理部材の表面は抵抗率が10Ωcm以上の非導電性材料であるため、離散的に配置された導電性微粒子は電磁気的にコントラストの強いパターンを形成し、電磁波である可視光や赤外光と相互作用する。すなわち、これらの光は、その波長が上記導電性微粒子の配置間隔の2倍以上である場合に強く反射される傾向にあり、一方、その波長が上記導電性微粒子の配置間隔の2倍より短い場合には相互作用が小さく透過する傾向にある。本発明の赤外光反射部材においては、前記被処理部材の表面に付着する導電性微粒子の粒径が2〜250nmであり、ターゲットにレーザー光を照射して発生せしめた導電性微粒子を離散的に付着せしめた際に導電性微粒子の間隔はある程度統計的分布を持つものの、可視光と赤外光の境界波長(780nm)の2分の1である390nm付近を多く含む分布(好ましくは粒子間隔の平均値が200〜1000nm)とすることができ、それによって赤外光を選択的に効率良く反射すると共に可視光を透過させる特性が得られるようになると本発明者らは推察する。
また、本発明の赤外光反射部材及びその製造方法においては、前記レーザー光がパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光であることが好ましく、その場合、前記金属からなるターゲットに前記パルスレーザー光を照射して波長50nm〜100nmの真空紫外光及び前記導電性微粒子を発生させ、前記被処理部材の表面に前記真空紫外光を照射しつつ前記導電性微粒子を離散的にかつ強固に付着せしめることが可能となり、前述の赤外光を選択的に反射する効果が長期にわたって達成されることとなる。
さらに、本発明の赤外光反射部材及びその製造方法においては、前記ターゲットがレーザー光照射面に溝が形成されているものであることが好ましく、このようなターゲットに前記レーザー光を照射することによって粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子が効率良く発生して前記被処理部材の表面に離散的に付着する傾向にある。
なお、前記パルスレーザー光の使用により前記導電性微粒子が前記被処理部材の表面に強固に付着して前述の赤外光を選択的に反射する効果が長期にわたって達成されるようになり、また、前記ターゲットの使用により粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子が効率良く発生するようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、金属からなるターゲットにパルス幅100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光が照射されると、ターゲット表面に高温のプラズマが形成され、そのプラズマから波長50nm〜100nmの真空紫外光が発生する。このような真空紫外光は特に炭素(炭素原子)に対する吸収率が高いので、前記被処理部材の表面が炭素原子を含有する材料である場合は、そこに真空紫外光が照射されるとその表面近傍では炭素原子の外殻電子であるp電子が励起もしくは電離することにより炭素原子とその炭素原子に結合する原子との間の結合が破壊され、表面近傍が非常に活性化される。一方、上記レーザー光が照射されたターゲット表面からはターゲットを構成する材料に応じて金属を含む原子又はクラスターが高いエネルギーをもって飛散するほか、上記プラズマ内部もしくはプラズマにより加熱されたターゲット表面では、ターゲットを構成する材料が蒸発することにより形成された中性原子、イオン、並びに前記の中性原子およびイオンのうちのいくつかが結合して形成されたクラスタが高いエネルギーをもって数百m/secという高速で飛散する。そして、このような飛散粒子は飛散する過程で衝突を繰り返して粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子となり、被処理部材の表面に到達する。その際、前記被処理部材の表面が炭素原子を含有する材料であり、前記真空紫外光により活性化されている場合は、導電性微粒子は高いエネルギーをもっているため被処理部材の表面との間に化学結合が形成されて強固に付着する。また、前記被処理部材の表面が炭素原子を含有しない材料である場合も、前記導電性微粒子は非常に高速でその表面に衝突するため、やはり強固に付着することとなる。そして、このように導電性微粒子は強固に被処理部材の表面に付着することから、長期にわたって安定的に保持され、前述の赤外光を選択的に反射する効果が長期にわたって得られることとなると本発明者らは推察する。
また、レーザー光照射面が平面であるターゲットを用いると前述のプラズマから飛散する粒子はその発生源から種々の方向に直線運動するため飛散する過程における衝突が起こりにくいのに対して、レーザー光照射面に溝が形成されているターゲットを用いるとプラズマから飛散する粒子の運動方向が様々に変化するため、飛散する過程において互いに衝突して合体する確率が向上し、粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子が効率良く発生することとなると本発明者らは推察する。
なお、ここでいう波長50nm〜100nmの真空紫外光とは、50nm〜100nmの波長領域における少なくとも一部の波長を有する真空紫外光のことをいうが、以下の条件のうちの少なくとも一つの条件を満たしていることが好ましい。
(i)50nm〜100nmの波長領域に少なくとも一つの光強度のピークを有すること、
(ii)50nm〜100nmの波長領域の光の全エネルギーが100nm〜150nmの波長領域の光の全エネルギーより高いこと、
(iii)50nm〜100nmの波長領域の光の全エネルギーが50nm以下の波長領域の光の全エネルギーより高いこと
(iv)50nm〜100nmの波長領域の光のエネルギー密度が被処理部材上で0.1μJ/cm〜10mJ/cm(より好ましくは1μJ/cm〜100μJ/cm)であること。なお、被処理部材上における前記エネルギー密度が0.1μJ/cmより低くなると処理に要する時間が過度に長くなってしまう傾向にあり、他方、10mJ/cmより高くなると被処理部材が分解されてしまう傾向にある。
前記本発明の赤外光反射部材の製造方法においては、容器内での減圧状態下、及び/又は、容器内若しくは容器外のいずれかでの水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス及びアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種のガスを含有するシールドガス雰囲気下において前記被処理部材の表面に前記導電性微粒子を離散的に付着せしめることが好ましい。このように内部が減圧状態となっている容器を用いると、前記真空紫外光が空気中の酸素等の真空紫外光吸収物質に吸収されることなく被処理部材表面に照射されるため被処理部材表面がより効率良く活性化されると共に、導電性微粒子の酸化が十分に防止される傾向にある。また、シールドガス雰囲気下で処理をすると、減圧状態とせずとも前記真空紫外光が真空紫外光吸収物質に吸収されることなく被処理部材表面に照射されるため被処理部材表面がより効率良く活性化されると共に、導電性微粒子の酸化が十分に防止される傾向にある。さらに、後者の場合、前者の場合に比べて真空ポンプや耐圧容器を用いる必要がなくなるため、装置の簡便性及び低コストという点でより好ましい傾向にある。
本発明の赤外光反射部材によれば、被処理部材の可視光に対する性質(色や透明性)を損なうことなく赤外光を選択的に反射することが可能となる。また、本発明の赤外光反射部材の製造方法によれば、このように優れた赤外光反射特性を有する部材を効率良くかつ確実に製造することが可能となる。したがって、本発明によれば、色及び光沢性が共に高意匠性であることが要求される部材(例えば、自動車ボデー塗膜)や透明性が要求される部材(例えば、自動車用窓ガラス)等に対して、それらの色や透明性等の意匠性を維持したままで赤外光を選択的に反射する機能を付与することが可能となる。
以下、本発明の赤外光反射部材並びにその製造方法について、それらの好適な実施形態に即して詳細に説明する。
図1は、本発明に好適な赤外光反射部材の製造装置の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図であり、図1に示す赤外光反射部材の製造装置はいわゆるレーザーアブレーション装置1として構成されている。すなわち、図1に示すレーザーアブレーション装置1は、レーザー光源2と、レーザー光源2から発せられたレーザー光Lが導入される処理容器3とを備えており、処理容器3の内部にはレーザー光Lが照射されるターゲット4と、導電性微粒子aが離散的に付着される表面近傍領域5を有する被処理部材6とが配置されている。
レーザー光源2は、レーザー光(好ましくは波長が150nm〜10.7μm、パルス幅が10フェムト秒〜100ナノ秒、1パルスあたりのエネルギーが0.01J〜100Jであるパルスレーザー光)を照射することができるレーザー光発生装置であればよく、特に制限されないが、例えばフェムト秒レーザー装置、エキシマレーザー装置、YAGレーザー装置によって構成され、中でもパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒であるパルスレーザー光を照射することができるYAGレーザー装置によって構成されることが好ましい。そして、レーザー光源2は、処理容器3の内部に配置されているターゲット4に向かってレーザー光Lを照射する位置に配置されている。また、図示はしていないが、レーザー光Lをターゲット4に照射した際にターゲット4の表面から導電性微粒子aが効率的に発生するように、レーザー光Lの光路の途中にレンズ、鏡等を適宜配置してレーザー光のエネルギー密度や照射角度を調整してもよい。特に、集光レンズ(図示せず)を処理容器3の内部又は外部に配置して、ターゲット4に照射されるレーザー光Lの照射強度が10W/cm〜1012W/cmとなるようにすることが好ましく、10W/cm〜1011W/cmとなるようにすることがより好ましい。
処理容器3は、少なくともターゲット4と被処理部材6とを内部に収容するための容器(例えばステンレス製の容器)であり、レーザー光Lを容器3内に配置されたターゲット4の表面に導入するための窓9(例えば石英製の窓)を備えている。また、処理容器3には真空ポンプ(図示せず)が接続されており、容器3の内部を所定圧力の減圧状態に維持することが可能となっている。このように内部が減圧状態となる容器3を用いると、真空紫外光Lが空気中の酸素等の真空紫外光吸収物質に吸収されることなく被処理部材6の表面に照射されるため被処理部材6の表面がより効率良く活性化されると共に、導電性微粒子aの酸化が十分に防止される。なお、容器3の内部を減圧状態に維持する際の圧力としては、1Torr以下の圧力が好ましく、1×10−3Torr以下の圧力がより好ましい。また、酸素分圧及び/又は窒素分圧が1Torr以下の圧力となるようにすることが好ましい。
ターゲット4は、ターゲット4から飛散して被処理部材6の表面近傍領域5に付着する導電性微粒子aの抵抗率が10−3Ωcm以下となる金属であればよく、特に制限されない。なお、導電性微粒子aの抵抗率が10−3Ωcmを超えてしまうと、後述する非導電性材料との電磁気的なコントラストが小さくなってしまい、赤外光の反射率が十分に向上しない。このような金属材料としては、各種の遷移元素金属、典型元素金属、半金属(メタロイド)、又はそれらの合金を用いることができ、例えば、Cu、Al、Ti、Si、Cr、Pt、Au、Ag、Pd、Zr、Mg、Ni、Fe、Co、Zn、Sn、W、Be、Ge、Mn、Mo、Nb、Ta、Hfそれらを主成分とする合金等が挙げられ、中でもAu、Ag、Cu、Fe、Cr、Ni、Al、Ti、Si、Zn、Geが好ましい。なお、ここでいう金属材料は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化珪素、砒化ガリウム、InP、ZnTe等の半導体であってもよい。また、2種類以上の金属材料をターゲット4上に並置して用いてもよく、それによって高濃度の電荷キャリアを含む不定比化合物を形成することができる。このように2種類以上の金属材料を含むターゲット4を用いる場合は、いずれの組成部分にも1回以上レーザー光が照射されるようにターゲット4を回転させる機構等を備えることが好ましく、各金属材料の面積比等は所望の組成に応じて適宜選択される。
ターゲット4の形状等は特に制限されず、板状、ロッド状等に成形された前記ターゲット材料からなるバルク材や、前記ターゲット材料をテープ上に塗布、蒸着等によって形成したテープ状ターゲット等を用いることができる。但し、ターゲット4のレーザー光照射面には、例えば図1及び図2に示すような溝41が形成されていることが好ましい。このような溝41の底面及び/又は側面を含む領域にレーザー光Lが照射されると、プラズマPから飛散する粒子の運動方向が様々に変化するため飛散する過程において飛散粒子が互いに衝突して合体する確率が向上し、粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子が効率良く発生する傾向にある。このような溝41の大きさとしては、幅が0.1〜10mm程度、深さが0.01〜5mm程度であることが好ましい。溝41の幅が上記下限未満では適切な大きさのプラズマが形成されず、所望の粒子が得られない傾向にあり、他方、上記上限を超えると飛散粒子の衝突が少なくなって十分な大きさの粒子が得られない傾向にある。また、溝41の深さが上記下限未満では飛散粒子の衝突が少なくなって十分な大きさの粒子が得られない傾向にあり、他方、上記上限を超えると飛散粒子の衝突が多くなり過ぎて粒子が大きくなり過ぎる傾向にある。なお、溝41の断面形状はU字形でもV字形でもよく、複数の溝が略平行に設けられていても、或いは複数の溝が交差するように設けられていてもよい。
被処理部材6は、その少なくとも表面近傍領域5が抵抗率10Ωcm以上の非導電性材料からなるものであればよく、具体的には得られる赤外光反射部材の用途等によって適宜決定される。このような非導電性材料としては、各種の塗膜、樹脂成形体、無機ガラス、有機ガラス、或いはこれらの複合物等が挙げられ、中でも炭素原子を含有する材料である塗膜、樹脂成形体、有機ガラス等が好ましい。なお、非導電性材料の抵抗率が10Ωcm未満では、その表面に離散的に付着する導電性微粒子との電磁気的なコントラストが小さくなってしまい、赤外光の反射率が十分に向上しない。
このような塗膜を構成する塗料は特に制限されず、合成樹脂塗料(合成樹脂ワニス、合成樹脂エナメル、乳化重合塗料等)、油性塗料(ボイル油、油ペイント、油ワニス、エナメルペイント等)、酒精塗料(天然樹脂ワニス、合成樹脂ワニス等)、セルロース塗料(クリヤーラッカー、ラッカーエナメル等)、漆系塗料(漆、カシューワニス等)、ゴム系塗料(塩化ゴム塗料、環化ゴム塗料、合成ゴム塗料等)等が挙げられ、中でもいわゆる上塗塗料である合成樹脂塗料が好ましい。
また、このような樹脂成形体を構成する樹脂も特に制限されず、オレフィン系樹脂{ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリメチルペンテン等}、ブチルゴム、ポリエステル、ポリカーボーネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、アクリル樹脂{ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等}、アクリルゴム、フッ素樹脂{ポリ4フッ素化エチレン等}、フッ素ゴム、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、ポリシラン、シリコーン樹脂(ポリシロキサン等)、シリコーンゴム、ウレタン樹脂、スチレン樹脂{ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−水添ブタジエン共重合体等}、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の重合体(単独重合体又は共重合体)、並びにそれらの積層体等が挙げられる。
被処理部材6は、上述の通りその少なくとも表面近傍領域5が前記非導電性材料からなるものであればよく、表面近傍領域5以外の部分は、前記非導電性材料と同じ材料からなるものであっても、或いは前記非導電性材料と異なる材料(例えば、金属)からなるものであってもよい。また、被処理部材6の形状や厚さは特に制限されず、得られる赤外光反射部材の用途等によってフィルム状、板状、チューブ状、ボトル状、タンク状、その他各種形状の成形体、積層体、複合部材等が適宜選択される。
上述の被処理部材6とターゲット4との位置的関係は特に限定されず、被処理部材6の表面近傍領域5にターゲット4の表面から発生した粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子aが効率良くかつ離散的に付着するようにターゲット4に対して被処理部材6が適宜配置され、図1においてはターゲット4の法線に対する角度Θが45°となる位置に被処理部材6が配置されている。また、ターゲット4にはターゲット駆動装置(例えばターゲット回転台、図示せず)が接続され、レーザー光Lの照射位置にターゲットの新鮮な面(レーザー光未照射面)が順次繰り出されるようになっている。さらに、被処理部材6にも被処理部材駆動装置(例えば被処理部材回転台、図示せず)が接続され、被処理部材6の表面により均一に導電性微粒子aが付着するようになっていてもよい。
以上、本発明に好適な赤外光反射部材の製造装置の一実施形態について説明したが、本発明に好適な装置は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、例えば、上記実施形態では処理容器3が真空ポンプ(図示せず)に接続されているが、水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス及びアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種のシールドガスを導入するためのガスボンベ(図示せず)に接続されていてもよく、その場合は容器3の内部を所定のシールドガス雰囲気に維持することが可能となる。このように内部がシールドガス雰囲気となっている容器3を用いると、容器3内を減圧状態とせずとも真空紫外光Lが真空紫外光吸収物質に吸収されることなく被処理部材6の表面に照射されるため被処理部材6の表面がより効率良く活性化されると共に、導電性微粒子aの酸化が十分に防止される。また、処理容器3に真空ポンプ(図示せず)及びガスボンベ(図示せず)の双方を接続し、容器3の内部を所定のシールドガス雰囲気にすると共に所定の圧力条件に維持することが好適である。このような条件としては、例えばヘリウムガス雰囲気で大気圧以下の圧力が好ましく、500Torr以下の圧力がより好ましい。また、酸素分圧及び/又は窒素分圧が1Torr以下の圧力となるようにすることが好ましい。
また、上記実施形態ではレーザー光源2が処理容器3の外部に配置されているが、処理容器3の内部に配置されていてもよく、その場合はレーザー光Lを容器3内に導入するための窓9は不要となる。
更に、上記実施形態ではターゲット4の法線に対する角度Θが45°となる位置に被処理部材6が配置されているが、このような位置関係に限定されるものではなく、ターゲット4の法線に対する角度Θが10°〜60°程度の範囲となる位置に被処理部材6が配置されていてもよい。また、例えば被処理部材6としてレーザー光Lを透過可能なものを用い、被処理部材6をレーザー光源2とターゲット4との間にターゲット4に対して対向配置せしめ、被処理部材6を透過したレーザー光Lがターゲット4に照射されるようにしてもよい。
また、ターゲット4としてレーザー光Lを透過可能なものを用い、ターゲット4をレーザー光源2と被処理部材6との間に配置せしめ、ターゲット4の裏面(透明フィルム側)から表面(ターゲット材料側)に透過したレーザー光Lによってターゲット4の表面(ターゲット材料側)から導電性微粒子a(或いは導電性微粒子a及び真空紫外光L)が発生し、それらが被処理部材6の表面に供給されるようにしてもよい。このような構成にすると、比較的大型の被処理部材に対して導電性微粒子aと付着せしめることがより容易になる傾向にある。また、このような構成に用いるターゲットとしては、レーザー光に対して透明なフィルム(例えばPETフィルム)上に前述のターゲット材料を蒸着、貼着等により積層したテープ状ターゲットが好ましい。
次に、本発明の赤外光反射部材の製造方法の好適な一実施形態、並びにそれによって得られる本発明の赤外光反射部材の好適な一実施形態について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の赤外光反射部材の製造方法においては、前述の金属からなるターゲット4にレーザー光L(好ましくは波長が150nm〜10.7μm、パルス幅が10フェムト秒〜100ナノ秒、1パルスあたりのエネルギーが0.01J〜100Jであるパルスレーザー光)がレーザー光源2から照射される。すると、ターゲット4の表面に高温のプラズマPが形成され、レーザー光Lが照射されたターゲット4の表面からは金属を含む原子又はクラスターが高いエネルギーをもって飛散するほか、上記プラズマP内部もしくはプラズマPにより加熱されたターゲット4の表面からは、ターゲットを構成する材料が蒸発することにより形成された中性原子、イオン、並びに前記の中性原子及びイオンのうちのいくつかが結合して担持されたクラスタが高いエネルギーをもって飛散する。そして、このようにレーザー光Lの照射によりターゲット4の表面から発生した各種飛散粒子(アブレータ)aは、飛散する過程において互いに衝突して合体し、粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子が発生する。
また、ターゲット4としてそのレーザー光照射面に溝41が形成されているものを用いると、プラズマPから飛散する粒子の運動方向が様々に変化するため、各種飛散粒子aが飛散する過程において互いに衝突して合体する確率が向上し、粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子が効率良く発生する。そして、このようにして発生した導電性微粒子aは高いエネルギーをもって分散した状態で被処理部材6上に到達するため、被処理部材6の表面に離散的に配置して強固に付着することとなる。
なお、レーザー光Lの波長が前記下限未満では光路中の気体に吸収されてターゲットに十分なエネルギーを供給できない傾向にあり、他方、上記上限を超えるとターゲットの吸収するエネルギーが不足してプラズマが形成されない傾向にある。また、レーザー光Lのパルス幅が前記下限ではごく短時間にレーザーのエネルギーが集中するため導電性微粒子aの運動エネルギーが過大となり、導電性微粒子aが被処理部材6上に到達したときに被処理部材6が破壊されてしまう傾向にあり、他方、上記上限を超えるとエネルギーが時間的に集中しないために十分大きなエネルギーをもった導電性微粒子aが発生しなくなる傾向にある。また、レーザー光Lの1パルスあたりのエネルギーが前記下限未満では飛散粒子数が不十分となる傾向にあり、他方、上記上限を超えると飛散粒子の大きさが大きくなり過ぎる傾向にある。
更に、ターゲット4に照射されるレーザー光Lを、パルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光Lとすることが特に好ましい。このような条件を満たすパルスレーザー光Lがターゲット4に照射されると、ターゲット4の表面に形成された高温のプラズマPから波長50nm〜100nmの真空紫外光Lが発生すると共に前記飛散粒子がより高いエネルギーをもって飛散し、飛散する過程において互いに衝突して合体して前記導電性微粒子aが発生する。そして、被処理部材6上にこの真空紫外光Lが照射されると、被処理部材6の表面近傍領域5が炭素原子を含有する材料である場合は真空紫外光Lにより活性化され、そこに高いエネルギーをもって到達した導電性微粒子aは被処理部材6の表面との間に化学結合が形成されて強固に付着する。また、被処理部材6の表面近傍領域5が炭素原子を含有しない材料である場合も、導電性微粒子aは非常に高速でその表面に衝突するため、やはり強固に付着することとなる。そして、このように導電性微粒子aは強固に被処理部材6の表面に付着することから、長期にわたって安定的に保持され、赤外光を選択的に反射する効果がより長期にわたって得られることとなる。
なお、パルスレーザー光Lのパルス幅が100ピコ秒未満では短時間にレーザーのエネルギーが集中してターゲットに照射されるため波長50nm未満の光が発生するようになり、他方、100ナノ秒を超えるとレーザーのエネルギーが時間的に十分集中して照射されないため発生する光の波長が100nmを超えてしまう。また、発生する光Lの波長が50nm未満の場合並びに100nm超の場合はいずれも、被処理部材の表面の活性化の度合いや導電性微粒子aの運動エネルギーが低下して被処理部材6に対する導電性微粒子aの密着性が低下し易くなる傾向にある。さらに、パルスレーザー光Lの照射強度が10W/cm未満では波長50nm〜100nmの真空紫外光Lが十分に発生しない傾向にあり、他方、1012W/cmを超えるとターゲットに照射されたときに発生する電磁波の主たる波長域が50nm以下の波長域になるため、波長50nm〜100nmの真空紫外光Lの光量が減少してしまう傾向にある。
このようにして被処理部材6の表面に離散的に付着して担持される導電性微粒子aは、粒径が2〜250nmのものであり、10〜50nmのものであることがより好ましい。導電性微粒子aの粒径が前記下限未満では、赤外光の反射率が低下して本発明の効果が十分に奏されず、他方、前記上限を超えると、導電性微粒子aが個々に可視光を散乱して外観に影響を及ぼしてしまう。なお、被処理部材6の表面に付着している全ての導電性微粒子aの粒径が前記粒径範囲に入っている必要はなく、前記粒径範囲に含まれない導電性微粒子aが存在してもその量が少なければ得られる赤外光反射部材の外観や赤外光反射機能に大きな問題は生じないので実用上特に問題はない。したがって、被処理部材6の表面に付着している全導電性微粒子aのうちの70%以上が前記粒径範囲に含まれていることが好ましい。
また、被処理部材6の表面に離散的に付着して担持された導電性微粒子aの間隔(隣接する導電性微粒子a同士の間の距離)の平均値が200〜1000nmであることが好ましく、300〜500nmであることがより好ましい。導電性微粒子aの間隔の平均値が前記下限未満では、可視光に対する反射率が上昇してしまい赤外光反射部材の外観に影響がでやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、赤外光の反射率が低下して本発明の効果が十分に奏されなくなる傾向にある。
さらに、被処理部材6の表面に離散的に付着して担持された導電性微粒子aの材質は基本的に前述のターゲット4に用いた金属と同様の金属であるが、一旦飛散粒子となった原子又はクラスターにより再構成されたものであるためターゲット4に用いた材料と全く同一の組成である必要はない。但し、導電性微粒子aの抵抗率は10−3Ωcm以下であることが必要である。導電性微粒子aの抵抗率が10−3Ωcmを超えてしまうと、被処理部材6の少なくとも表面近傍領域5を構成する非導電性材料との電磁気的なコントラストが小さくなってしまい、赤外光の反射率が十分に向上しない。
なお、上述の本発明の赤外光反射部材の製造方法においては、被処理部材6の表面に導電性微粒子aを離散的に付着させる際に被処理部材6を高温に加熱する必要はなく、その温度は特に制限されないが、一般的には室温〜50℃程度であればよい。また、被処理部材6の表面に導電性微粒子aを離散的に付着させるのに要する時間(レーザー光照射時間)も特に制限されず、担持された導電性微粒子aの量や間隔が所望の範囲となるように適宜決定される。
また、本発明の赤外光反射部材においては、前述の処理(導電性微粒子の付着)を施した表面に更に赤外光を透過させる材料(例えば、透明塗料)を更に被覆せしめてもよい。このようにしても赤外光を選択的に反射させる機能は保持され、同時に処理面が保護されてより長期にわたって赤外光反射機能や外観が維持されることとなる。また、いわゆる仕上げ塗装の前工程として前述の本発明の処理(導電性微粒子の付着)を施し、塗膜の内部に赤外光反射機能を持たせることも可能である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
レーザー光源2としてYAGレーザー装置(スペクトラフィジックス社製、商品名:PRO−290)、処理容器3として石英窓付の真空容器(ステンレス鋼製、容量30リットル)、ターゲット4として図2に示すように直径40mm、厚さ10mmの金属銅製円盤4の片面に直径30mm、幅1mm、深さ1mmの溝41を形成したもの、被処理部材6として下記塗装板、をそれぞれ用いて図1に示す赤外光反射部材の製造装置を作製した。なお、被処理部材6はターゲット4の法線に対する角度Θが30°となる位置に配置し、被処理部材6とターゲット4との間の距離(中心間の距離)は60mmとした。また、被処理部材6として用いた塗装板は、自動車ボデーと同じ塗装工程、すなわち鋼板に通常の電着塗装及び中塗り塗装を施した後に黒ソリッド色上塗り塗装(関西ペイント社製、TM13)を塗膜の厚さが35μmとなるように施した塗装板を用いた。
次に、作製された装置を用い、容器3の内部を圧力が10−2Torrの真空度とし、ターゲット4を3rpm、被処理部材6を200rpmで回転させた状態で、レーザー光源2から波長532nm、パルス幅7ナノ秒、エネルギー1J/パルス、周波数10Hz、照射強度4×10W/cm(4GW/cm)のパルスレーザー光Lをターゲット4の溝41の底部に10分間照射した。容器3内部が真空状態のためパルスレーザー光Lは減衰することなくターゲット4に到達し、ターゲット4の表面には高温のプラズマPが形成され、波長が50nm〜100nmの範囲にある真空紫外光Lが発生し、同時に、ターゲット4の表面から銅の中性原子、イオン、及びこれら中性原子、イオンのうちのいくつかが結合して形成されたクラスタ等の粒径が発生し、飛散する過程で粒子同士が衝突して導電性微粒子aが形成された。さらに、被処理部材6の表面にはプラズマPから発生した真空紫外光Lが照射されて十分に活性化され、そこに導電性微粒子aが高いエネルギーをもって高速で到達して離散的にかつ強固に付着した。なお、被処理部材6の温度は約25℃であった。
(比較例1)
ターゲット4として、溝41を設けていないレーザー照射面が平らな金属銅製円盤(直径40mm、厚さ10mm)を用いた以外は実施例1と同様にして導電性微粒子aが付着した被処理部材6を得た。
(比較例2)
被処理部材6として用いた塗装板をそのまま用いた。
[被処理部材の表面の観察]
実施例1及び比較例1において得られた導電性微粒子aが付着した被処理部材6の表面を走査型電子顕微鏡で観察した。得られた写真を図3(実施例1)及び図4(比較例1)にそれぞれに示す。
図3から明らかな通り、実施例1において得られた被処理部材6の表面には粒径が5〜100nmの銅微粒子が付着しており、平均粒径は約30nmであった。また、被処理部材6の表面に付着した銅微粒子の間隔は200〜1000nmであり、またその粒子間隔の平均値は約400nmであって、前述の可視光と赤外光の境界波長(780nm)の2分の1波長に相当する390nm付近の粒子間隔を含む分布であることが確認された。
なお、図3の視野内には粒径が約400nmの比較的大きな粒子が認められるが、このような大きな粒子は数が少ない(約0.1%)ため、処理後の被処理部材6の外観には影響がなかった。また、画像の全体にわたって約100〜200nmの黒い斑点状の模様が認められるが、これは塗膜中のカーボンブラック顔料であって、前記の処理によって被処理部材6の表面に付着した物が微粒子に限られており、均一な膜を構成していないことが確認された。
一方、比較例1において得られた被処理部材6の表面には、図4に示すように粒径が10nm以上の粒子がほとんど認められず、また均一な膜を構成してしまっているため、図3で認められたようなカーボンブラック顔料が観察されなかった。
[可視光及び赤外光の反射率の測定]
実施例1及び比較例1において得られた導電性微粒子aが付着した被処理部材6、並びに比較例2の塗装板の表面における可視光と赤外光の反射率(分光反射率)を日立社製分光光度計330型を用いて測定した。なお、210〜2500nmの各波長における5度正反射率及び拡散反射率(積分球による)を測定し、これらを合計して評価した。また、各波長の反射率に基づいて、日本工業規格(JIS R3106)に記載の方法に準拠して可視光(波長400〜780nm)及び赤外光(波長780〜2500nm)の日射反射率を算出した。得られた結果を図5及び表1に示す。
実施例1及び比較例1において得られた被処理部材6の塗膜はいずれも、目視では処理前と同様に光沢のある黒色の外観を示していたが、実施例1において得られた被処理部材6の塗膜の反射率は、可視光領域ではいずれの波長に対しても約40%以下であり、赤外光領域ではいずれの波長に対しても約40〜80%であった。したがって、実施例1において得られた被処理部材6においては赤外光が選択的に反射されることが確認された。一方、比較例1において得られた被処理部材6の塗膜の反射率は、可視光、赤外光のいずれの波長に対しても約15〜20%であり、赤外光は選択的に反射されないことが確認された。
また、実施例1において得られた被処理部材6の塗膜の日射反射率は、可視光に対しては28%であるのに対し、赤外光に対しては57%と可視光に対する値の2倍以上となった。一方、比較例1において得られた被処理部材6の日射反射率は、可視光に対しては16%、赤外光に対しては18%であって同程度であった。
以上説明したように、本発明の赤外光反射部材によれば、被処理部材の可視光に対する性質(色や透明性)を損なうことなく赤外光を選択的に反射することが可能となる。また、本発明の赤外光反射部材の製造方法によれば、このように優れた赤外光反射特性を有する部材を効率良くかつ確実に製造することが可能となる。したがって、本発明によれば、色及び光沢性が共に高意匠性であることが要求される部材(例えば、自動車ボデー塗膜)や透明性が要求される部材(例えば、自動車用窓ガラス)等に対して、それらの色や透明性等の意匠性を維持したままで赤外光を選択的に反射する機能を付与することが可能となる。
さらに、本発明の赤外光反射部材の製造方法を例えば自動車のボデー塗膜に適用すると、外観にはなんら変化なしに日射中の赤外光を反射し、熱として吸収するエネルギーを減少させることが可能となるので、日射下に放置した場合の車室内温度の上昇や、運転中のエアコン動力を低減することができ、ひいては自動車の燃料消費を低減させることが可能となる。このように自動車の燃料消費を低減することは経済的な利点のみでなく、地球環境を温暖化させる原因とされる二酸化炭素の排出量を低減する点においても重要な利点である。また、本発明の赤外光反射部材の製造方法を屋外建築物の外壁や窓などに適用すると、日射吸収による室内温度の上昇を緩和することが可能となる。また、本発明の赤外光反射部材の製造方法を適用することによって放射冷却が妨げられるので、車両や建築物における暖房の効率を高めること、ひいては二酸化炭素排出量の低減に寄与する点においても本発明は有用である。
本発明に好適な赤外光反射部材の製造装置の好適な一実施形態の基本構成を示す模式図である。 本発明に好適なターゲットの斜視図である。 実施例1において得られた被処理部材(赤外光反射部材)の表面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1において得られた被処理部材の表面の走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1及び比較例1において得られた被処理部材、並びに比較例2の塗装板の表面における可視光と赤外光の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1…赤外光反射部材の製造装置、2…レーザー光源、3…処理容器、4…ターゲット、5…表面近傍領域、6…被処理部材、7…窓、41…溝、L…パルスレーザー光、L…真空紫外光、a…導電性微粒子、P…プラズマ。

Claims (7)

  1. 金、銀、銅及びニッケルからなる群から選択される少なくとも一種の金属からなるターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10 W/cm 〜10 12 W/cm であるレーザー光を照射して粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子を発生させ、少なくとも表面が抵抗率10Ωcm以上の非導電性材料からなる被処理部材の表面に前記導電性微粒子を離散的に付着せしめることを特徴とする赤外光反射部材の製造方法。
  2. 前記金属からなりかつレーザー光照射面に溝が形成されているターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光を照射して波長50nm〜100nmの真空紫外光及び前記導電性微粒子を発生させ、前記被処理部材の表面に前記真空紫外光を照射しつつ前記導電性微粒子を離散的に付着せしめることを特徴とする請求項1記載の赤外光反射部材の製造方法。
  3. 前記被処理部材の表面に付着した前記導電性微粒子の間隔の平均値が200〜1000nmであることを特徴とする請求項1又は2記載の赤外光反射部材の製造方法。
  4. 減圧状態、及び/又は、水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス及びアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種のガスを含有するシールドガス雰囲気下において前記被処理部材の表面に前記導電性微粒子を離散的に付着させることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の赤外光反射部材の製造方法。
  5. 少なくとも表面が抵抗率10Ωcm以上の非導電性材料からなる被処理部材と、
    金、銀、銅及びニッケルからなる群から選択される少なくとも一種の金属からなるターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10 W/cm 〜10 12 W/cm であるレーザー光を照射して発生せしめた粒径が2〜250nmでかつ抵抗率が10−3Ωcm以下である導電性微粒子であって、前記被処理部材の表面に離散的に付着している前記導電性微粒子と、
    からなることを特徴とする赤外光反射部材。
  6. 前記導電性微粒子が、前記金属からなりかつレーザー光照射面に溝が形成されているターゲットにパルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒でかつ照射強度が10W/cm〜1012W/cmであるパルスレーザー光を照射して発生せしめたものであることを特徴とする請求項5記載の赤外光反射部材。
  7. 前記被処理部材の表面に付着した前記導電性微粒子の間隔の平均値が200〜1000nmであることを特徴とする請求項5又は6記載の赤外光反射部材。
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