JP4000819B2 - 蒸着方法、液晶装置の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被蒸着材表面に液晶配向膜等の蒸着膜を形成するのに好適な蒸着装置を用いる蒸着方法、ならびに液晶装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板等の被蒸着材表面に対して蒸着膜を形成する方法として斜方蒸着法が知られている。この斜方蒸着法は、蒸着物質を斜めの角度から被蒸着材に導き入れ、被蒸着材表面に対して所定方向に配向した蒸着物質の柱状構造物(以下、カラムとも言う)を形成することが可能な蒸着方法である。具体的には所定の蒸着装置を用いて行われ、真空下、蒸着源を加熱して蒸着物質の蒸気流を生じさせ、予め蒸着源と傾き角θ1(蒸着源と基板面重心位置とを結ぶ基準線と、基板面法線とのなす角)でセットされた被蒸着材に対し蒸着を行うものとされている。この場合、上記傾き角θ1に基づいて蒸着物質のカラム配向方向が決定される。
【0003】
一方、このような斜方蒸着法は、例えば液晶配向膜を形成する際に用いられる場合がある。この場合、基板上に液晶配向膜として形成した蒸着膜により、具体的にはカラムの配向方向に基づいて液晶分子を所定角度θ2(プレティルト角とも言う)だけ傾斜させることが可能となる。例えば、蒸着物質としてSiOを用い、SiOの蒸気流を傾き角θ1に伴う蒸着角度で基板に導き入れることで、SiOの蒸着膜(液晶配向膜)を基板面に形成しており、例えば蒸着角度が45°〜72°程度の場合、プレティルト角θ2は0°となり、蒸着角度が75°〜85°程度ではθ2は11°〜35°程度となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような斜方蒸着法においては、被蒸着材面上の場所によって蒸着の膜厚が異なってくる場合がある。これは、蒸着源が点源あるいは線源であって、被蒸着材が蒸着源と傾き角θ1でセットされているためで、被蒸着材面において蒸着源との距離が異なってくるためである。このように蒸着膜厚が被蒸着面の場所によって異なると、蒸着分子の配向方向も場所によって異なるものとなる場合がある。さらに蒸着膜を液晶配向膜として用いた場合には、蒸着膜厚が基板面上の場所によって異なると、液晶分子のプレティルト角θ2も基板面上の場所によって異なってくる場合がある。
【0005】
具体的には、基板面内で蒸着源に近い部分では膜厚が大きくなり、遠い部分では膜厚が小さくなるとともに、膜厚が大きいとプレティルト角が大きくなり、小さい場合にはプレティルト角が小さくなる場合がある。その結果、液晶層の電気光学的特性が場所によって変化し、これを表示画面等に用いた場合には、表示画面全体にわたって一様なコントラストが得られなくなる場合がある。
【0006】
本発明の課題は、被蒸着材たる基板面全体に亙って、膜厚の均一な蒸着膜を形成することが可能な蒸着方法、ならびに液晶装置の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る蒸着装置は、蒸着物質の蒸気を生じさせる蒸着源と、被蒸着材を前記蒸着源に対し所定の角度だけ傾斜させて配設させる被蒸着材配設部と、前記蒸着源と前記被蒸着材配設部との間に配設され前記蒸気が流通可能な蒸気流通部とを備え、前記蒸気流通部は開口部と、該開口部に対して相対移動可能に形成され前記蒸気の流通を遮ることが可能な遮蔽部材とを含み、前記開口部に対する前記遮蔽部材の相対移動を制御する遮蔽部材移動制御手段を備え、前記被蒸着材配設部に配設される被蒸着材の被蒸着面を、前記開口部の、前記遮蔽部材によって遮られることが可能な開口面に対して非平行状態に配置するものである。
【0008】
このような蒸着装置によると、遮蔽部材移動制御手段により遮蔽部材の開口部に対する相対移動を制御することが可能となるため、例えば蒸着量を多くしたい位置には遮蔽部材が開口部を遮らないように遮蔽部材を移動させ、蒸着量を少なくしたい位置には遮蔽部材が開口部を遮るように遮蔽部材を移動させることが可能となる。したがって、遮蔽部材の移動制御により開口部の位置毎に実際の開口時間を異ならせることが可能となり、ひいては被蒸着材の被蒸着面において蒸着量を位置毎に異ならせることが可能となる。これにより、蒸着装置を用いて蒸着される蒸着膜の膜厚は被蒸着材表面において均一なものとなり得る。
【0009】
具体的に、前記遮蔽部材移動制御手段は、前記遮蔽部材を前記開口部の開口面と略平行な方向に相対移動させる制御を行うものとすることができる。これにより、遮蔽部材が蒸着流を遮る量を開口部の位置毎に制御し易くなり、被蒸着材に対する蒸着量も制御し易くなる。さらに被蒸着材配設部に配設した被蒸着材の傾斜方向の余弦方向と略同方向に遮蔽部材を相対移動させることで、一層蒸着流の遮蔽量を開口部の位置毎に制御し易くなる。このように、本発明の蒸着装置における遮蔽部材移動制御手段は、開口部に対する遮蔽部材の相対移動を制御することにより、開口部の開口量を制御する開口量制御手段として機能している。この開口量制御手段により、開口部における位置毎の蒸着流の遮蔽量を制御することが可能となり、被蒸着材への蒸着量も制御可能となるため、被蒸着面の位置毎の蒸着膜厚を均一化することが可能となり得る。
【0010】
また、前記遮蔽部材移動制御手段は、前記遮蔽部材を、前記開口部の全部を開口させる非遮蔽位置から、前記開口部の一部を閉口させる一部遮蔽位置を経て、前記開口部の全部を閉口させる遮蔽位置まで移動させる制御を行うものとすることができる。このように遮蔽部材を移動させることで、上記被蒸着材配設部に被蒸着材を配設した場合、非遮蔽位置にある遮蔽部材を、開口部の被蒸着材と相対的に近い位置側から閉口させる一部遮蔽位置を経て、近い位置側から遠い位置側へ経時的に閉口面積を広げ、最終的に遮蔽部材を遮蔽位置に移動させて、開口部の全部を閉口させることが可能となる。したがって、開口部の被蒸着材と相対的に近い位置側から相対的に遠い位置側に通過する総蒸気量を増やすことが可能となった。例えば従来の蒸着装置では、被蒸着材において開口部と遠い位置では蒸着量が少なくなり、蒸着膜厚が近い位置に比して相対的に薄くなる傾向にあったが、本発明の採用により遠い位置側でも蒸着量を増やすことが可能となり、蒸着膜厚が相対的に薄くなる等の問題を防止ないし抑制することが可能となった。
【0011】
一方、前記遮蔽部材移動制御手段は、前記遮蔽部材を、前記開口部の全部を閉口させる遮蔽位置から、前記開口部の一部を開口させる一部遮蔽位置を経て、前記開口部の全部を開口させる非遮蔽位置まで移動させる制御を行うものとすることができる。このように遮蔽部材を移動させることで、上記被蒸着材配設部に被蒸着材を配設した場合、遮蔽位置にある遮蔽部材を、開口部の被蒸着材と相対的に遠い位置側から開口させる一部遮蔽位置(一部非遮蔽位置)を経て、遠い位置側から近い位置側へ経時的に開口面積を広げ、最終的に遮蔽部材を非遮蔽位置に移動させて、開口部の全部を開口させることが可能となる。したがって、開口部の被蒸着材と相対的に遠い位置側から相対的に近い位置側に通過する総蒸気量を減らすことが可能となった。例えば従来の蒸着装置では、被蒸着材において開口部と遠い位置では蒸着量が少なくなり、蒸着膜厚が近い位置に比して相対的に薄くなる傾向にあったが、本発明の採用により遠い位置側でも蒸着量を増やすことが可能となり、蒸着膜厚が相対的に薄くなる等の問題を防止ないし抑制することが可能となった。
【0012】
次に本発明の蒸着方法は上記記載の蒸着装置を用いたことを特徴とし、前記被蒸着材を前記被蒸着材配設部に配設し、前記遮蔽部材を移動させつつ、前記蒸着源から前記蒸気流通部を介して被蒸着面に対して蒸着物質を蒸着させることを特徴とする。この場合、遮蔽部材の移動に伴って、開口部の被蒸着材と相対的に近い位置側から遠い位置側へ開口部を経時的に閉口させつつ、蒸着源から蒸気流通部を介して被蒸着面に対して蒸着物質を蒸着させることが可能となる。若しくは、遮蔽部材の移動に伴って、開口部の被蒸着材と相対的に遠い位置側から近い位置側へ開口部を経時的に開口させつつ、蒸着源から蒸気流通部を介して被蒸着面に対して蒸着物質を蒸着させることが可能となる。したがって、被蒸着材に対し、その被蒸着面において均一な量で蒸着材を蒸着させることが可能となり、蒸着膜厚の不均一化を防止ないし抑制することが可能となる。
【0013】
さらに本発明の液晶装置の製造方法は、互いに対向する一対の基板間に液晶層が挟持され、一対の基板の液晶層側の表面に無機配向膜がそれぞれ形成された構成を具備する液晶装置の製造方法であって、上記蒸着装置及び蒸着方法を用いて基板の表面に無機配向膜を蒸着形成することを特徴とする。この場合、基板表面には蒸着物質たる無機配向膜が形成されることとなり、上記蒸着装置を用いているため、無機配向膜は膜厚が従来の蒸着方法に比して均一となり、挟持される液晶層において液晶分子をより均一に所定角度(プレティルト角)だけ傾斜させることが可能となる。したがって、本発明の方法により製造された液晶装置を表示装置に用いた場合、液晶層の電気光学的特性が場所によらずより均一になるため、表示画面全体にわたって一様なコントラストで表示することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
[蒸着装置の一実施形態及び蒸着方法の一実施例]
以下、本発明の蒸着装置についてその一実施形態を図面を参照しつつ説明する。 なお、各図においては、各構成部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、その縮尺を異ならしめてある。
図1は、蒸着装置の外観を模式的に示す説明図である。この蒸着装置1は、蒸着物質の蒸気を生じさせる蒸着源2と、蒸着物質の蒸気が流通可能な例えばスリット状の開口部3aを備える蒸気流通部3と、被蒸着材としての基板5を蒸着源2に対して所定角度傾斜させて配設する基板配設部7とを具備する蒸着室8、蒸着室8を真空にするための真空ポンプ10を備えている。なお、基板配設部7は基板5を蒸着室8から吊り下げ状態で把持する吊下把持部材として構成されているが、基板5を傾斜させた状態で配設することが可能な載置式の設置部材を用いることも可能である。
【0015】
また、蒸気流通部3は、蒸着源2と基板配設部7との間に配置されるとともに、蒸着室8に対して位置固定された固定遮蔽板3bを備えている。さらに、固定遮蔽板3bに板面方向への位置移動が許容された状態で設けられ、且つ開口部3aに対して相対移動可能に形成されるとともに、開口部3aへの相対移動に基づき蒸気の流通を遮ることが可能な稼動遮蔽板3cが備えられている。このような移動遮蔽板3cは、例えば蒸着室8の外部に設けられた遮蔽板移動制御部(遮蔽部材移動制御手段)6により、開口部3aへの相対移動が制御されている。
【0016】
遮蔽板移動制御部6は、蒸気流通部3における移動遮蔽板3cの移動開始ないし移動停止タイミング、移動方向、移動速度等を制御するものとされており、例えばCPU,ROM,RAMを含み、移動制御は、例えばROMに格納された制御プログラムをCPUが読み込み、その制御プログラムに基づいてRAMをワークエリアとしてCPUが実行するものとされている。なお、遮蔽板移動制御部6にスイッチを設け、そのスイッチを人為的に操作することでハード的に移動遮蔽板3cの移動制御を実行することも可能である。
【0017】
移動遮蔽板3cは、上記遮蔽板移動制御部6により開口部3aの開口面と略平行な方向に相対移動可能にされており、このような開口面と略平行な方向への相対移動に基づき、開口部3aの開口量を制御することが可能とされている。したがって、本実施形態では、遮蔽板移動制御部6は開口部3aの開口量を制御する開口量制御手段として機能している。また、開口部3aの開口量を制御することで蒸着源2から基板5への蒸気の流通量を制御することが可能となり、つまり遮蔽板移動制御部6は蒸気流通量制御手段としての機能も具備している。
【0018】
この場合の蒸着方法は以下の通りである。まず、真空ポンプ10を作動させると、蒸着室8が真空化し、さらに加熱装置(図示略)により蒸着源2を加熱すると蒸着源2から蒸着物質の蒸気が発生する。蒸着源2から発生した蒸着物質の蒸気流は、蒸気流通部3の開口部3aを通過し、所定の角度(蒸着角)で基板5の表面に蒸着されるものとされている。ここで、開口部3aは移動遮蔽板3cによりその開口量が制御されるものとされており、その開口量制御に基づき基板5への蒸着量が基板面上の位置毎に制御されるものとされている(詳細は後述)。
【0019】
次に、図2は蒸着源2と、蒸気流通部3と、移動遮蔽板3cと、基板5との位置関係を模式的に示す説明図である。基板5は、点源で構成される蒸着源2と基板5の重心位置とを結ぶ基準線l1と、基板5の基板面法線l2とのなす角で定義される傾き角θ1を、80°として配設されている。また、基板5と蒸着源2との略中間付近には蒸気流通部3が配設され、本実施形態の場合、基板5(重心位置)と蒸着源2との距離L1が100cm、蒸気流通部3と蒸着源2との距離L2が50cmとされている。
【0020】
移動遮蔽板3cは、固定遮蔽板3bの内部に設けられた移動遮蔽板収容孔38に対し、開口部3aの開口面と平行な方向への位置移動が許容された状態で挿脱自在に組み付けられている。すなわち移動遮蔽板3cは、収容孔38に自身の全てが挿入され開口部3aを全開口させる状態と、自身の一部が挿出され開口部3aを部分的に開口させる状態と、自身の一部若しくは全てが挿出され開口部3aを閉口させる状態との間で移動可能に制御されている。したがって、開口部3aは移動遮蔽板3cによりその開口量が制御されるものとされており、すなわち移動遮蔽板3cの開口部3aに対する移動に基づき開口量が変化するものとされている。言い換えると、開口部3aの位置毎において開口時間を変化させることが可能となり、その開口部3aの位置毎に蒸気の流通量が変化するものとされている。
【0021】
具体的に移動遮蔽板3cの移動に伴う開口部3aの開口状態について、図3〜図5を参照しつつ説明する。図3においては、移動遮蔽板3cは収容部38に全てが収容され、開口部3aが全開口状態とされている。この場合、所定角度で傾斜した基板5の被蒸着面全面において蒸着がなされるものとされている。なお、収容部38は傾斜した基板5の近い側に形成されており、その近い側から移動遮蔽板3cが開口部3aを閉じるべく移動するものとされている。
【0022】
次に、図4においては、移動遮蔽板3cは収容部38に自身の一部が収容され、言い換えると自身の一部が収容部から挿出した状態とされている。この場合、挿出した部分は開口部3aの一部を閉口し、したがって開口部3aは一部閉口状態となっている。この一部閉口部は上述した通り基板5に近い側であって、基板5においては蒸気流通部3(開口部3a)と近い位置、言い換えると蒸着源2と近い位置が蒸着されない、若しくは蒸着され難い状態となっている。
【0023】
さらに、図5においては、移動遮蔽板3cは自身の全部が収容部38から挿出した状態とされている。この場合、挿出した部分は開口部3aの全てを閉口し、したがって開口部3aは全閉口状態となっており、したがって基板5に対して蒸着が行われない状態である。
【0024】
以上のように、移動遮蔽板3cに対して、開口部3aにおいて基板5と相対的に近い位置側から相対的に遠い位置側へ、経時的に開口部3aを閉じるべく、すなわち開口面積を小さくするべく移動する制御が行われるものとされている。これにより、基板5において開口部3a(蒸着源2)と近い位置の被蒸着面においては、蒸着時間が相対的に短くなる一方、開口部3a(蒸着源2)と遠い位置の被蒸着面においては、蒸着時間が相対的に長くなる。したがって、元来基板に近い位置の被蒸着面は蒸着量は遠い位置に比して多くなるものの、移動遮蔽板3cの作用に基づき蒸着時間が遠い位置に比して短くなるため、その遠い位置と蒸着量を略同量とすることが可能となり、蒸着膜厚を基板面において均一なものとすることが可能となる。
【0025】
なお、移動遮蔽板3cを開口部3aの全部を閉口させる全閉口状態(図5の状態)から、開口部3aの一部を開口させる一部閉口状態(図4の状態)を経て、開口部3aの全部を開口させる全開口状態(図3の状態)まで移動させる制御を行うものとすることもできる。この場合、開口部3aの基板5と相対的に遠い位置側から近い位置側へ経時的に開口部3aを開けるべく、すなわち開口面積を大きくするべく移動遮蔽板3cを移動する制御が行われる。
【0026】
[実施例]
上述した実施形態の蒸着装置1を用いて以下の実験を行った。まず、直径30cmの基板5を傾き角度θ1=80°で基板配設部7に取り付けた後、蒸着室8を真空として蒸着源2から蒸着物質としてSiOの蒸気を生じさせた。その蒸気は、蒸気流通部3の開口部3aを介して基板5の表面に蒸着された。なお、基板5は直径30cmの円状基板を採用し、移動遮蔽板3cは図3〜図5に示す移動制御が行われるものとする。ここで、移動遮蔽板3cは、蒸着源2の作動を開始して25秒を経過した後、移動が開始されるものとされており、具体的には1.05cm/secの速度で移動制御が行われるものとされている。なお、比較例として移動遮蔽板3cを備えていないもの、すなわち開口部3aにおいて開口量制御が行われない蒸着装置を用いて蒸着を行った。
【0027】
次に、このように基板5に蒸着された蒸着膜について蒸着膜厚を検討した。具体的には図6に示すように、基板面に座標をとり、各x座標位置毎に蒸着膜厚を求めた。なお、図6においてθで示した矢方向に蒸着流が広がるものとされており、基板5はx軸を支軸としてy軸方向が蒸着源2に対して傾いているものとされている。すなわちy軸が傾斜線方向、x軸が傾斜支軸線方向となり、基板5を基板配設部7に取り付けた状態でy=0が蒸着源2に近い側、y=30が蒸着源2に遠い側とされている。
【0028】
結果を図7に示す。移動遮蔽板3cの不使用時(黒丸)にはyの増加に伴って、すなわち蒸着源2から遠くなるにつれて蒸着膜厚が大きくなることが分かる。一方、移動遮蔽板3cを使用し開口制御を行った場合には、yの値に関わらず蒸着膜厚は略一定で、不使用時に比して相対的に均一な蒸着膜厚となっていることが分かる。
【0029】
[液晶装置の一実施形態]
上記蒸着装置1により製造した蒸着膜付基板を用いた液晶装置の構成について、その一実施形態を図面を参照して以下説明する。図8は、液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図9は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。図10は、図9のA−A'線断面図である。なお、図10においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0030】
図8に示すように、本実施形態の液晶装置において、画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素は、画素電極9aと、当該画素電極9aを制御するための画素スイッチング用TFT30とがマトリクス状に複数形成されており、画像信号を供給するデータ線6aが当該TFT30のソース領域に電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。また、TFT30のゲートに走査線30aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線30aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、画素スイッチング用TFT30のドレイン領域に電気的に接続されており、スイッチング素子である画素スイッチング用TFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0031】
画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板20(図10参照)に形成された対向電極21(図10参照)との間で一定期間保持される。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極21(図10参照)との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。例えば画素電極9aの電圧は、蓄積容量70によりソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ保持される。蓄積容量70を形成する方法として、半導体層との間で容量を形成するための配線である容量線30bを設けている。
【0032】
次に、図9を参照しつつ、本実施形態の液晶装置のTFTアレイ基板の画素部(画像表示領域)内の平面構造について説明する。液晶装置のTFTアレイ基板上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a'により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線30a及び容量線30bが設けられている。データ線6aは、コンタクトホール50を介してポリシリコン膜からなる半導体層11aのうちソース領域に電気的に接続されており、画素電極9aは、コンタクトホール80を介して半導体層11aのうちドレイン領域に電気的に接続されている。画素電極ピッチは、20μm程度以下、好ましくは15μm程度以下とされている。また、半導体層11aのうちチャネル領域に対向するように走査線30aが配置されており、走査線30aはゲート電極として機能している。
【0033】
次に、断面構造を見ると、図10に示すように、本実施形態の液晶装置は、一対の透明基板を有しており、その一方の基板をなすTFTアレイ基板100と、これに対向配置される他方の基板をなす対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板100は、例えば石英基板やハードガラスからなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなるものである。TFTアレイ基板100には、例えばITO膜等の透明導電性膜からなる画素電極9aが設けられ、TFTアレイ基板100上の各画素電極9aに隣接する位置に、各画素電極9aをスイッチング制御する画素スイッチング用TFT30が設けられている。画素スイッチング用TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線30a、当該走査線30aからの電界によりチャネルが形成される半導体層11aのチャネル領域1a'、走査線30aと半導体層11aとを絶縁する絶縁薄膜12、データ線6a、半導体層11aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層11aの高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0034】
また、上記走査線30a上、絶縁薄膜12上を含むTFTアレイ基板100上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール50及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール80が各々形成された第2層間絶縁膜14が形成されている。つまり、データ線6aは、第2層間絶縁膜14を貫通するコンタクトホール50を介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。さらに、データ線6a上及び第2層間絶縁膜14上には、高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール80が形成された第3層間絶縁膜17が形成されている。つまり、高濃度ドレイン領域1eは、第2層間絶縁膜14及び第3層間絶縁膜17を貫通するコンタクトホール80を介して画素電極9aに電気的に接続されている。これら第3層間絶縁膜17や画素電極9aは無機配向膜36の下地層となっている。
【0035】
また、ゲート絶縁膜となる絶縁薄膜12を走査線30aの一部からなるゲート電極に対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体層11aを延設して第1蓄積容量電極1fとし、さらにこれらに対向する容量線30bの一部を第2蓄積容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されている。
【0036】
また、図10に示すようにTFTアレイ基板100表面の各画素スイッチング用TFT30に対応する位置には、第1遮光膜111が設けられている。第1遮光膜111は、TFTアレイ基板100上に設けられたメタル層M1と、メタル層M1の上に設けられたバリア層B1とからなるものである。
【0037】
また、第1遮光膜111と複数の画素スイッチング用TFT30との間には、第1層間絶縁膜(絶縁体層)112が設けられている。第1層間絶縁膜112は、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体層11aを第1遮光膜111から電気的に絶縁するために設けられるものである。さらに、第1層間絶縁膜112は、TFTアレイ基板100の全面に形成されており、第1遮光膜111パターンの段差を解消するために表面を研磨し、平坦化処理を施してある。
【0038】
上記第1遮光膜111(及びこれに電気的に接続された容量線30b)は、定電位源に電気的に接続されており、第1遮光膜111及び容量線30bは、定電位とされる。したがって、第1遮光膜111に対向配置される画素スイッチング用TFT30に対して、第1遮光膜111の電位変動が悪影響を及ぼすことはない。
【0039】
他方、対向基板20には、TFTアレイ基板10上のデータ線6a、走査線30a、画素スイッチング用TFT30の形成領域に対向する領域、すなわち各画素部の開口領域以外の領域に第2遮光膜23が設けられている。さらに、第2遮光膜23上を含む対向基板20上には、その全面にわたって対向電極(共通電極)21が設けられている。対向電極21もTFTアレイ基板100の画素電極9aと同様、ITO膜等の透明導電性膜から形成されている。第2遮光膜23の存在により、対向基板20の側からの入射光が画素スイッチング用TFT30の半導体層11aのチャネル領域1a'や低濃度ソース領域領域1b、低濃度ドレイン領域1cに侵入することはない。さらに、第2遮光膜23は、コントラスト比の向上、色材の混色防止などの機能、いわゆるブラックマトリクスとしての機能を有している。
【0040】
次に、TFTアレイ基板100の画素スイッチング用TFT30、データ線6a及び走査線30aの形成領域にあたる第3層間絶縁膜17上及び画素電極9a上に無機斜方蒸着膜からなる無機配向膜36が形成されている。この無機配向膜36は、第1遮光膜111、第1層間絶縁膜112、TFT30、第2層間絶縁膜14、第3層間絶縁膜17、画素電極9a等を形成したTFTアレイ基板100に上述の蒸着装置1(図1参照)を用いて酸化シリコン等の無機材料を蒸着させ、基板100に対して所定の角度で配列されたカラムを成長させる斜方蒸着工程により形成されたものである。
【0041】
図11は無機斜方蒸着膜36が形成されている部分及びその近傍部分の斜方蒸着方向に沿った断面構造を模式的に示す図である。無機斜方蒸着膜36は、基板100の表面に対し所定角度θ3だけ配向した無機材料のカラム36aを有し、そのカラム36aが疎に形成されており、隣接する柱状構造物36a,36a間に隙間37が空いている。また、上記実施形態の蒸着装置を用いているため、無機斜方蒸着膜36は均一な膜厚を有している。
【0042】
図10に戻り、TFTアレイ基板100側の無機配向膜36と対向する位置にあたる対向基板20の対向電極21上にも、同様の材料からなる無機配向膜142が設けられている。この無機配向膜142も、無機配向膜36と同様、第2遮光膜23や対向電極21等を形成した対向基板20に上述の蒸着装置1(図1参照)を用いて酸化シリコン等の無機材料を蒸着させ、基板20に対して所定の角度で配列されたカラムを成長させる斜方蒸着により形成されたものである。
【0043】
TFTアレイ基板100と対向基板20は、画素電極9aと対向電極21とが対向するように配置されている。そして、これら基板100、20と図示しない基板側方に設けられたシール材とにより囲まれた空間に液晶が封入され、液晶層150が形成される。液晶層150は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態(電圧無印加時)で無機配向膜36、142の作用により所定の配向状態をとっている。なお、「電圧無印加時」、「電圧印加時」は、それぞれ「液晶層への印加電圧が液晶のしきい値電圧未満であるとき」、「液晶層への印加電圧が液晶のしきい値電圧以上であるとき」を意味している。
【0044】
なお、図11に示すように、無機斜方蒸着膜36が形成されている部分の近傍の液晶分子は、電界が印加されていない状態(電圧無印加時)では分子の長軸は斜方蒸着方向に沿った方向を含む面に配向し、プレティルト角θpが25度から45度の範囲内となる。このように液晶分子が配向するのは、無機斜方蒸着膜36,142が、先に述べたように傾斜したカラム間に隙間37を有する構造であり、この無機斜方蒸着膜36,142の液晶層150側の表面形状効果によるものである。
【0045】
[液晶装置の製造プロセス]
次に、上記構成を有する液晶装置の製造プロセスについて、その一実施例を図12から図14を参照して説明する。なお、図12と図13は各工程におけるTFTアレイ基板100側の各層を、図14(a),(b)は各工程における対向基板20側の各層を、図10と同様に図9のA−A'断面に対応させて示した工程図である。
【0046】
図12に示すように、石英基板、ハードガラスなどからなるTFTアレイ基板100上にメタル層M1とバリア層B1とからなる第1遮光膜111、第1層間絶縁膜112、半導体層11a、チャネル領域1a'、低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1c、高濃度ソース領域1d、高濃度ドレイン領域1e、第1蓄積容量電極1f、絶縁薄膜12、走査線30a、容量線30b、第2層間絶縁膜14、データ線6a、第3層間絶縁膜17、コンタクトホール80、画素電極9aを従来と同様の方法(例えばフォトリソグラフィ法)などにより形成したものを用意する。このように画素電極9a等が形成されたTFTアレイ基板100の表面に対して図1に示した蒸着装置1を用いて所定方向から無機材料(蒸着物質)を斜方蒸着する。そして、図13に示すように、所定方向に配向したカラムを有する無機斜方蒸着膜36(図11参照)が表層部に形成される。
【0047】
他方、対向基板20については、ガラス基板等が先ず用意され、図14(a)に示すように、第2遮光膜23を、例えば金属クロムをスパッタリングした後、フォトリソグラフィー工程、エッチング工程を経て形成する。なお、遮光膜は、Cr、Ni(ニッケル)、Alなどの金属材料の他、カーボンやTiをフォトレジストに分散した樹脂ブラックなどの材料から形成してもよい。その後、第2遮光膜23が形成された対向基板20の全面にスパッタリング等により、ITO等の透明導電性膜を、約50〜200nmの厚さに堆積することにより、対向電極21を形成する。次に、第2遮光膜23や対向電極21等を形成した対向基板20に対して、図1に示した蒸着装置1を用いて酸化シリコン等の無機材料を蒸着させ、基板に対して所定の角度で配列された柱状構造物を成長させる斜方蒸着を行い、図14(b)に示すように対向電極21の表層に無機配向膜142を形成する。
【0048】
最後に、上述のように各層が形成されたTFTアレイ基板100(図13参照)と対向基板20(図14参照)とを斜方蒸着方向が反対(180°ずらす)になるように配置(TFTアレイ基板100と対向基板20とを、所定角度で配列した柱状構造物の配列方向が反対になるように配置)し、セル厚が4μmになるようにシール材51(図15参照)により貼り合わせ、空パネルを作製する。液晶としてはフッ素系のポジ型の液晶を使用し、この液晶をパネル内に封入し、本実施形態の液晶装置が得られる。
【0049】
なお、上記実施形態の液晶装置及びこの液晶装置用基板の製造方法においては、本発明をTFT素子に代表される3端子型素子を用いるアクティブマトリクス型の液晶装置とこの液晶装置用基板の製造方法に適用した場合について説明したが、TFD素子に代表される2端子型素子を用いるアクティブマトリクス型の液晶装置及びこの液晶装置用基板の製造方法や、パッシブマトリクス型の液晶装置及びこの液晶装置用基板の製造方法にも適用できる。また、本発明は透過型の液晶装置だけでなく、反射型の液晶装置にも適用可能である。
【0050】
[液晶装置の全体構成]
次に、上記液晶装置の全体構成を図15及び図16を参照して説明する。なお、図15は、TFTアレイ基板100をその上に形成された各構成要素とともに対向基板20の側から見た平面図であり、図16は、対向基板20を含めて示す図15のH−H'断面図である。
【0051】
図15において、TFTアレイ基板100の上には、シール材51がその縁に沿って設けられており、その内側に並行して、例えば第2遮光膜23と同じかあるいは異なる材料からなる額縁としての第3遮光膜53が設けられている。シール材51の外側の領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板100の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104がこの一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。
【0052】
さらに、TFTアレイ基板100の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板100と対向基板20との間で電気的導通をとるための導通材106が設けられている。そして、図16に示すように、図15に示したシール材51とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が当該シール材51によりTFTアレイ基板100に固着されている。
【0053】
[電子機器]
上記の本発明の実施形態の液晶装置を用いた電子機器の一例として、投射型表示装置の構成について、図17を参照して説明する。図17において、投射型表示装置1100は、上述した実施形態の液晶装置を3個用意し、夫々RGB用の液晶装置962R、962G及び962Bとして用いた投射型液晶装置の光学系の概略構成図を示す。本例の投射型表示装置の光学系には、光源装置920と、均一照明光学系923が採用されている。そして、投射型表示装置は、この均一照明光学系923から出射される光束Wを赤(R)、緑(G)、青(B)に分離する色分離手段としての色分離光学系924と、各色光束R、G、Bを変調する変調手段としての3つのライトバルブ925R、925G、925Bと、変調された後の色光束を再合成する色合成手段としての色合成プリズム910と、合成された光束を投射面1001の表面に拡大投射する投射手段としての投射レンズユニット906を備えている。また、青色光束Bを対応するライトバルブ925Bに導く導光系927をも備えている。
【0054】
均一照明光学系923は、2つのレンズ板921、922と反射ミラー931を備えており、反射ミラー931を挟んで2つのレンズ板921、922が直交する状態に配置されている。均一照明光学系923の2つのレンズ板921、922は、それぞれマトリクス状に配置された複数の矩形レンズを備えている。光源装置920から出射された光束は、第1のレンズ板921の矩形レンズによって複数の部分光束に分割される。そして、これらの部分光束は、第2のレンズ板922の矩形レンズによって3つのライトバルブ925R、925G、925B付近で重畳される。したがって、均一照明光学系923を用いることにより、光源装置920が出射光束の断面内で不均一な照度分布を有している場合でも、3つのライトバルブ925R、925G、925Bを均一な照明光で照明することが可能となる。
【0055】
各色分離光学系924は、青緑反射ダイクロイックミラー941と、緑反射ダイクロイックミラー942と、反射ミラー943から構成される。まず、青緑反射ダイクロイックミラー941において、光束Wに含まれている青色光束B及び緑色光束Gが直角に反射され、緑反射ダイクロイックミラー942の側に向かう。赤色光束Rはこのミラー941を通過して、後方の反射ミラー943で直角に反射されて、赤色光束Rの出射部944から色合成プリズム910の側に出射される。次に、緑反射ダイクロイックミラー942において、青緑反射ダイクロイックミラー941において反射された青色、緑色光束B、Gのうち、緑色光束Gのみが直角に反射されて、緑色光束Gの出射部945から色合成光学系の側に出射される。緑反射ダイクロイックミラー942を通過した青色光束Bは、青色光束Bの出射部946から導光系927の側に出射される。本例では、均一照明光学素子の光束Wの出射部から、色分離光学系924における各色光束の出射部944、945、946までの距離がほぼ等しくなるように設定されている。
【0056】
色分離光学系924の赤色、緑色光束R、Gの出射部944、945の出射側には、それぞれ集光レンズ951、952が配置されている。したがって、各出射部から出射した赤色、緑色光束R、Gは、これらの集光レンズ951、952に入射して平行化される。このように平行化された赤色、緑色光束R、Gは、ライトバルブ925R、925Gに入射して変調され、各色光に対応した画像情報が付加される。すなわち、これらの液晶装置は、図示しない駆動手段によって画像情報に応じてスイッチング制御されて、これにより、ここを通過する各色光の変調が行われる。一方、青色光束Bは、導光系927を介して対応するライトバルブ925Bに導かれ、ここにおいて、同様に画像情報に応じて変調が施される。なお、本例のライトバルブ925R、925G、925Bは、それぞれさらに入射側偏光手段960R、960G、960Bと、出射側偏光手段961R、961G、961Bと、これらの間に配置された液晶装置962R、962G、962Bとからなる液晶ライトバルブである。
【0057】
導光系927は、青色光束Bの出射部946の出射側に配置した集光レンズ954と、入射側反射ミラー971と、出射側反射ミラー972と、これらの反射ミラーの間に配置した中間レンズ973と、ライトバルブ925Bの手前側に配置した集光レンズ953とから構成されている。集光レンズ954から出射された青色光束Bは、導光系927を介して液晶装置962Bに導かれて変調される。各色光束の光路長、すなわち、光束Wの出射部から各液晶装置962R、962G、962Bまでの距離は青色光束Bが最も長くなり、したがって、青色光束の光量損失が最も多くなる。しかし、導光系927を介在させることにより、光量損失を抑制することができる。各ライトバルブ925R、925G、925Bを通って変調された各色光束R、G、Bは、色合成プリズム910に入射され、ここで合成される。そして、この色合成プリズム910によって合成された光が投射レンズユニット906を介して所定の位置にある投射面1001の表面に拡大投射されるようになっている。
【0058】
本例において、液晶装置962R、962G、962Bは、図8ないし図16を用いて説明した液晶装置である。例えば、液晶装置を投射型表示装置のライトバルブに用いる場合、直視型液晶表示装置として用いる場合に比べて入射光の強度が高く、配向膜がポリイミド等の有機配向膜から構成されていると配向膜の劣化が顕著に起こりやすいが、本実施形態のように配向膜を酸化シリコン等の無機斜方蒸着膜から構成することによって、長時間の使用によっても表示品位の高い投射型表示装置を実現することができる。また、図8ないし図16を用いて説明した液晶装置では、図1に示した本発明に属する蒸着装置を用いて無機配向膜を形成しているため、基板面上において配向膜(蒸着膜)の膜厚が不均一になり難く、したがって、このような液晶装置962R、962G、962Bが設けられた投射型表示装置によれば、配向膜の異常(劣化、配向膜厚等の不均一)に起因する液晶の配向不良によるコントラスト比の低下等がなく、表示品位の高い表示装置を実現することができる。
【0059】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の蒸着装置によれば、基板面において膜厚の均一な蒸着膜を形成することが可能となる。このような蒸着装置を用いて、液晶装置の基板に対して無機配向膜を蒸着させることで、蒸着膜厚の不均一性に基づく液晶の配向不良等が生じ難く、さらに液晶装置を表示装置として用いた場合、その液晶の配向不良によるコントラスト比の低下等が生じ難く、表示品位の高い表示装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態としての蒸着装置を示す概略模式図。
【図2】 図1の蒸着装置の構成部材について位置関係を示す説明図。
【図3】 図1の蒸着装置における移動遮蔽板の作用を模式的に示す平面図。
【図4】 図3に続く移動遮蔽板の作用を模式的に示す平面図。
【図5】 図4に続く移動遮蔽板の作用を模式的に示す平面図。
【図6】 実施例における蒸着結果を示す為の説明図。
【図7】 実施例における蒸着結果を示す説明図。
【図8】 本発明の蒸着装置を用いて製造した液晶装置の等価回路を示す図。
【図9】 図8の液晶装置のTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群を示す平面図。
【図10】 図9のA−A'線断面図。
【図11】 図8の液晶装置の斜方蒸着膜が形成された部分の断面構造を模式的に示す図。
【図12】 本発明の液晶装置の製造方法を説明するための一工程図。
【図13】 図12に続く、製造方法を説明するための一工程図。
【図14】 図13に続く、製造方法を説明するための一工程図。
【図15】 本発明の製造方法により製造された液晶装置のTFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素とともに示す平面図。
【図16】 図15のH−H'断面図である。
【図17】 本発明の製造方法により製造された液晶装置を用いた電子機器の一例を示す投射型表示装置の概略構成図。
【符号の説明】
1 蒸着装置
2 蒸着源
3 蒸気流通部
3a 開口部
3c 移動遮蔽板
5 基板
6 遮蔽板移動制御部
7 基板配設部
8 蒸着室

Claims (8)

  1. 蒸着物質の蒸気を生じさせる蒸着源と、被蒸着材を前記蒸着源に対し所定の角度だけ傾斜させて配設させる被蒸着材配設部と、前記蒸着源と前記被蒸着材配設部との間に配設され前記蒸気が流通可能な蒸気流通部とを備え、前記蒸気流通部は開口部と、該開口部に対して相対移動可能に形成され前記蒸気の流通を遮ることが可能な遮蔽部材とを含み、前記開口部に対する前記遮蔽部材の相対移動を制御する遮蔽部材移動制御手段を備え、前記被蒸着材配設部に配設される被蒸着材の被蒸着面を、前記開口部の、前記遮蔽部材によって遮られることが可能な開口面に対して非平行状態に配置する蒸着装置を用いた蒸着方法であって、
    前記被蒸着材を前記被蒸着材配設部に配設し、前記遮蔽部材を移動させつつ、前記蒸着源から前記蒸気流通部を介して被蒸着面に対して蒸着物質を蒸着させることを特徴とする蒸着方法。
  2. 前記遮蔽部材移動制御手段は、前記遮蔽部材を前記開口部の開口面と略平行な方向に相対移動させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の蒸着方法
  3. 前記遮蔽部材移動制御手段は、前記開口部に対する前記遮蔽部材の相対移動を制御することにより、前記開口部の開口量を制御する開口量制御手段として機能していることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸着方法
  4. 前記遮蔽部材の移動に伴って、前記開口部の前記被蒸着材と相対的に近い位置側から遠い位置側へ経時的に該開口部の閉口面積を広げつつ、前記蒸着源から前記蒸気流通部を介して被蒸着面に対して蒸着物質を蒸着させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の蒸着方法。
  5. 前記遮蔽部材移動制御手段は、前記遮蔽部材を、前記開口部の全部を開口させる非遮蔽位置から、前記開口部の一部を閉口させる一部遮蔽位置を経て、前記開口部の全部を閉口させる遮蔽位置まで移動させる制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の蒸着方法
  6. 前記遮蔽部材の移動に伴って、前記開口部の前記被蒸着材と相対的に遠い位置側から近い位置側へ経時的に該開口部の開口面積を広げつつ、前記蒸着源から前記蒸気流通部を介して被蒸着面に対して蒸着物質を蒸着させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の蒸着方法。
  7. 前記遮蔽部材移動制御手段は、前記遮蔽部材を、前記開口部の全部を閉口させる遮蔽位置から、前記開口部の一部を開口させる一部遮蔽位置を経て、前記開口部の全部を開口させる非遮蔽位置まで移動させる制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の蒸着方法
  8. 互いに対向する一対の基板間に液晶層が挟持され、該一対の基板の液晶層側の表面に無機配向膜がそれぞれ形成された構成を具備する液晶装置の製造方法であって、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の蒸着方法を用いて前記基板の表面に前記無機配向膜を蒸着形成することを特徴とする液晶装置の製造方法。
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