JP4613430B2 - 液晶装置及び投射型表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶装置及び液晶装置用基板の製造方法に関し、特に、液晶プロジェクタの投射型ライトバルブ等に用いて好適な液晶装置及びこの液晶装置用基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶プロジェクタ等の投射型液晶表示装置には、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色に対応して液晶パネルを3枚使用する3板式のものと、1枚の液晶パネルと色生成手段とから構成される単板式のものがある。この投射型液晶表示装置の構成要素である液晶パネルは、例えば、アクティブマトリクス型液晶ライトバルブとその前後に配置される偏光板とから構成されている。図15は、この種の液晶ライトバルブの構成の一例を示す断面図である。
【0003】
液晶ライトバルブは、図15に示すように、ガラス基板、石英基板等の透明な2枚の基板間に液晶が封入されたものであり、一方の基板をなす薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、TFTと略記する)アレイ基板10と、これに対向配置された他方の基板をなす対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10全体は、液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素を有している。TFTアレイ基板10には、画素電極9aと当該画素電極9aを制御するための画素スイッチング用TFT30がマトリクス状に複数形成されており、画像信号を供給するデータ線6aがコンタクトホール5を通じて当該TFT30のソース領域1dに電気的に接続されている。また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号を順次印加するように構成されている。画素電極9aは、コンタクトホール8を通じて画素スイッチング用TFT30のドレイン領域1eに電気的に接続されており、スイッチング素子である画素スイッチング用TFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号を所定のタイミングで書き込むようになっている。
【0004】
画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号は、対向基板20に形成された対向電極21との間で一定期間保持されるが、通常、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極21との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加している。ここでは、蓄積容量70を形成する方法として、容量形成用の配線である容量線3bが設けられている。また、画素電極9a上には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜等の透明導電性膜から形成されている。配向膜16は、ポリイミド膜等の有機膜から形成されるのが一般的である。なお、図15中、符号4、7は第1と第2層間絶縁膜である。
【0005】
他方、対向基板20には、その全面にわたって対向電極(共通電極)21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21も画素電極9aと同様、例えばITO膜等の透明導電性膜から形成されている。また、配向膜22もTFTアレイ基板10側の配向膜16と同様、ポリイミド膜等の有機膜から形成されている。さらに対向基板20には、各画素の表示領域以外の領域に遮光膜23が設けられている。この遮光膜23は、対向基板20の側からの入射光が画素スイッチング用TFT30の半導体層1aのチャネル領域1a’、ソース領域1b、1d、ドレイン領域1c、1e等に侵入するのを防止するためのものである。さらに、遮光膜23は、コントラスト比の向上、色材の混色防止などの機能を有しており、いわゆるブラックマトリクスとも呼ばれている。
【0006】
各基板はこのような構成であり、画素電極9aと対向電極21とが対向するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20とがそれぞれ基板の周縁部においてシール材を介して所定間隔で貼着され、このTFTアレイ基板10と対向基板20間とシール材により囲まれた空間に液晶が封入され、液晶層50が形成されている。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態(電圧無印加状態)で配向膜の作用により所定の配向状態をとる。液晶プロジェクタでは、高いコントラスト比を実現するために垂直配向モードを採用することがあり、その場合は、配向膜16、22は垂直配向状態をとる有機膜をラビング処理し、電界無印加状態で液晶分子は数度のプレチルト角を持った垂直配向状態となっている。
【0007】
ところが、近年、液晶プロジェクタの高精細化、高輝度化、低価格化に伴う液晶ライトバルブの小型化に伴って、ライトバルブに入射させる光の強度が強くなってきている。そのためポリイミド膜等の有機配向膜を使用した液晶ライトバルブでは、光や熱によって配向膜が劣化し、その結果、配向膜による液晶分子の配向規制力が低下して、液晶分子の配向状態が乱れ、コントラスト比が低下する等の表示不良が生じることがある。このような問題が生じる原因は、ポリイミド等の有機膜は400nmから450nm付近の可視光領域で若干の吸収があるため、この吸収に起因して配向膜が劣化し、図15の符号59で示した箇所のように配向膜の劣化した付近で液晶の配向乱れが生じ、これが表示不良につながるからである。
【0008】
そこで、このような問題を解決するために、配向膜を、ポリイミド等の有機膜でなく、液晶分子を配向させることが可能な所定の表面形状を有する、酸化シリコン(SiO)などの無機材料からなる無機斜方蒸着膜により構成した液晶ライトバルブが提案されている。
この無機斜方蒸着膜からなる配向膜は、基板をある角度で固定して一方向から無機材料を蒸着、具体的には基板の法線方向から60度から80度程度(基板から30度から10度程度)傾けた方向Sから無機材料を蒸着させて、基板に対して所定の角度で配列された柱状結晶を成長させる斜方蒸着法により形成することができる。このようにして形成した配向膜は無機材料から構成されているため、ポリイミド等の有機材料から構成したものに比べて、耐光性や耐熱性に優れており、液晶ライトバルブの耐久性を向上することができるという利点を有している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらTFT素子30を用いるアクティブマトリクス型の液晶装置においては、基板(特にTFTアレイ基板10)上に複数の配線や複数の絶縁膜を積層しているために、図16に示すように無機斜方蒸着膜から構成した配向膜26の下地層としての配線や絶縁膜は凹凸40を有したものとなっている。ここでの凹凸40は具体的には容量線3b上に形成された画素電極9aの凸部41、コンタクトホール8に形成された画素電極9aの凹部42、第2層間絶縁膜7の凸部41等である。これらの凸部41の側面や、凹部42の内側面は、通常、傾斜を有しており、また、左右の斜面41a、41b(凸部41の無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面)の傾斜角度a、bもほぼ等しくなっており、具体的には斜面41a、41bの傾斜角度(斜面と基板とのなす角度)a、bは、30度〜45度程度である。
なお、図16中、符号Sは、無機斜方蒸着を行う際の無機材料の斜方蒸着方向である。上記傾斜角度a又はbは、斜方蒸着方向SとTFTアレイ基板10とのなす角度θより大きくされている。
【0010】
このような凹凸40がある下地層表面に上記のように一方向Sから無機材料を斜方蒸着すると、図16に示すように下地層の凸部41の斜面で、無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面41aおよびその近傍は無機材料を良好に蒸着できるが、無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面41b及びその近傍には図16の符号60で示した箇所のように無機材料の蒸着ムラや蒸着されない蒸着不良領域ができてしまい、この蒸着不良領域が配向膜の不良領域となってしまう。
また、下地層の凹部42の斜面で、無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面42b及びその近傍は無機材料を良好に蒸着できるが、無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面42aおよびその近傍は図16の符号60で示した箇所のように無機材料の蒸着ムラや蒸着されない蒸着不良領域ができてしまい、この蒸着不良領域が配向膜の異常領域となってしまう。
【0011】
なお、下地層の凹部42の斜面で、無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面42bは凸部41の無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面ということもでき、無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面42aは凸部41の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面ということもできる。
上記のような無機材料の蒸着不良領域がある無機配向膜を使用した液晶ライトバルブでは、この蒸着不良領域付近で図15の符号59で示した箇所と同様の液晶の配向乱れが生じ、コントラスト比の低下等の表示不良が生じるという問題があった。
【0012】
以上の問題は、TFT素子に代表される3端子型素子を用いるアクティブマトリクス型の液晶装置に限った問題ではなく、TFD(Thin-Film Diode)素子に代表される2端子型素子を用いるアクティブマトリクス型の液晶装置など、表面に凹凸がある下地層上に形成した無機斜方蒸着膜からなる配向膜を使用した液晶装置においても生じる問題である。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、配向膜の下地層の凸部又は凹部の斜面及びその近傍に生じた無機材料の蒸着不良領域による配向膜異常に起因して液晶の配向不良が起こることを防止し、表示不良の発生を抑制し得る液晶装置、およびこのような液晶装置用基板の製造方法を提供することを目的とする。
また、この液晶装置を用いた表示品位の高い投射型表示装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、無機斜方蒸着膜から形成した配向膜の下地層の凸部又は凹部の斜面やその近傍に生じた無機材料の蒸着不良領域による配向膜異常を防止すべく、種々の実験及び検討を重ねた結果、上記のような問題が起こる原因は、複数の配線や複数の絶縁膜を形成した素子基板をある角度で固定して一方向から無機材料を蒸着して無機斜方蒸着膜からなる配向膜を形成する際に、配向膜の下地層の表面に凹凸があると、凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面及びその近傍の領域は、上記凸部又は凹部の影となるために無機材料が蒸着されにくいことが分かった。
さらに、本発明者は、種々の実験及び検討を重ねた結果、互いに対向する一対の基板の液晶層側の表面にそれぞれ設けた無機斜方蒸着膜からなる無機配向膜の下地層が表面に凹凸を有するものである場合に、該下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度を異なるようにすること、好ましくは上記下地層の表面の凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度が無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度より小さい大きさとすること、さらに好ましくは上記凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度の大きさを無機材料の蒸着方向と基板とのなす角度以下の大きさにすることにより、上記の問題を解決できることを究明し、本発明を完成したのである。
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の液晶装置は、互いに対向する一対の基板間に液晶層が挟持されてなり、上記一対の基板の液晶層側の表面に一方向から無機材料を斜方蒸着することにより形成した無機配向膜がそれぞれ設けられ、これら無機配向膜のうち少なくとも一方の無機配向膜の下地層は表面に凹凸を有するものであり、該下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度は異なるものであることを特徴とする。
かかる構成の液晶装置においては、無機配向膜の下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度が異なるものであるので、この下地層に一方向から無機材料を斜方蒸着して無機配向膜を形成する際に上記凸部又は凹部の影となる領域を少なくすることが可能で、上記凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面及びその近傍の領域に無機材料の蒸着ムラや蒸着されない蒸着不良領域が生じるのを低減でき、従って、表面に凹凸を有する下地層上に形成した無機配向膜に異常がなく、配向膜異常に起因する液晶の配向不良を防止でき、コントラスト比の低下等の表示不良の発生を防止できる。
【0016】
また、本発明の液晶装置は、互いに対向する一対の基板間に液晶が挟持されてなり、該一対の基板のうちの一方の基板上に、マトリクス状に配置された複数の画素電極と、該複数の画素電極をそれぞれ駆動する複数のスイッチング手段と、該複数のスイッチング手段にそれぞれ接続された複数のデータ線および複数の走査線が備えられるとともに、該一対の基板のうちの他方の基板上には対向電極が備えられ、上記一対の基板の液晶層側の表面に一方向から無機材料を斜方蒸着することにより形成した無機配向膜がそれぞれ設けられ、これら無機配向膜のうち少なくともスイッチング手段が設けられた基板側の無機配向膜の下地層は表面に凹凸を有するものであり、該下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度が異なるものであってもよい。
かかる構成の液晶装置においても、少なくとも一方の無機配向膜の下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度が異なるものであるので、この下地層に一方向から無機材料を斜方蒸着して無機配向膜を形成する際に上記凸部又は凹部の影となる領域を少なくすることができるので、上記無機配向膜の下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面及びその近傍の領域に無機材料の蒸着ムラや蒸着されない蒸着不良領域が生じるのを低減でき、従って、表面に凹凸を有する下地層上に形成した無機配向膜に異常がなく、配向膜異常に起因する液晶の配向不良を防止でき、コントラスト比の低下等の表示不良の発生を防止できる。
【0017】
本発明の液晶装置において、上記凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度が無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度より小さいことが好ましい。
かかる構成の液晶装置においては、上記無機配向膜の下地層の凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度が無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度より小さくされたことにより、この下地層に一方向から無機材料を斜方蒸着して無機配向膜を形成する際に上記凸部又は凹部の影となる領域を低減できるので、上記無機配向膜の下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面及びその近傍の領域に無機材料の蒸着ムラや蒸着されない蒸着不良領域が生じるのを低減でき、従って、表面に凹凸を有する下地層上に形成した無機配向膜に異常がなく、配向膜異常に起因する液晶の配向不良を防止でき、コントラスト比の低下等の表示不良の発生を防止できる。
【0018】
また、本発明の液晶装置において、上記下地層の表面の凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度が無機材料の蒸着方向と基板とのなす角度以下の大きさとされることがより好ましく、さらに好ましくは上記凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度が無機材料の蒸着方向と基板とのなす角度より小さい大きさとされることである。
かかる構成の液晶装置においては、上記無機配向膜の下地層の凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度が無機材料の蒸着方向と基板とのなす角度以下の大きさとされたことにより、この下地層に一方向から無機材料を斜方蒸着して無機配向膜を形成する際に上記凸部又は凹部の影となる領域をなくすことができるので、上記無機配向膜の下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面及びその近傍の領域に無機材料の蒸着ムラや蒸着されない蒸着不良領域が生じることがなく、従って、表面に凹凸を有する下地層上に形成した無機配向膜に異常がなく、配向膜異常に起因する液晶の配向不良を防止でき、コントラスト比の低下等の表示不良の発生を防止できる。
【0019】
また、本発明の液晶装置において、上記無機配向膜としては、酸化シリコンからなる斜方蒸着膜を用いることができる。
【0020】
また、本発明の液晶装置用基板の製造方法は、基板上に形成した表面に凹凸を有する下地層に一方向から無機材料を斜方蒸着して無機配向膜を形成する液晶装置用基板の製造方法において、
上記下地層の凸部をフォトリソグラフィー工程で形成する際に、透過光量の勾配を有するグレイマスクを用いることを特徴とする。
かかる構成の液晶装置用基板の製造方法によれば、グレイマスクの透過光量の勾配を変更することにより、下地層の凸部又は凹部を所望の形状にすることができ、すなわち、上記凸部又は凹部が所望の形状を有するように形成でき、特に凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面が所望の傾斜角度を有するように形成することができるので、上記のいずれかの構成の本発明の液晶装置に備えることができる基板を製造できる。
【0021】
また、本発明の液晶装置用基板の製造方法において、上記下地層の凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度を無機材料の蒸着方向と基板とのなす角度以下の大きさとすることが好ましい。
かかる構成の液晶装置用基板の製造方法によれば、表面に凹凸を有する下地層に一方向から無機材料を斜方蒸着して無機配向膜を形成する際に上記凸部又は凹部の影となる領域を低減することができ、無機材料の蒸着不良領域が低減され、配向膜異常のない良好な無機配向膜を形成できる点で好ましい。
また、本発明の液晶装置用基板の製造方法において、表面に凹凸を有する下地層に一方向から無機材料を斜方蒸着して無機配向膜を形成する際に、無機材料の蒸着方向と基板とのなす角度を、前記下地層の凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度以上の大きさとすることが好ましく、さらに好ましくは無機材料の蒸着方向と基板とのなす角度を、前記下地層の凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度より大きい大きさとする。
かかる構成の液晶装置用基板の製造方法によれば、表面に凹凸を有する下地層に一方向から無機材料を斜方蒸着して無機配向膜を形成する際に上記凸部又は凹部の影となる領域をなくすことができ、無機材料の蒸着不良領域がない良好な無機配向膜を形成できる点で好ましい。
【0022】
また、本発明の投射型表示装置は、上記のいずれかの構成の本発明の液晶装置を備えた投射型表示装置であって、光源と、該光源から出射された光を変調する上記液晶装置と、該液晶装置により変調された光を投射面に拡大投影する拡大投影光学系とを有することを特徴とする。
かかる構成の本発明の投射型表示装置によれば、上記のいずれかの構成の本発明の液晶装置を用いたことにより、コントラスト比の低下等がなく、表示品位の高い表示装置を実現することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態の液晶装置の構成]
本発明の第1の実施形態の液晶装置の構成について、図1から図4を参照して以下説明する。図1は、液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図2は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。図3は、図2のA−A’断面図であり、図4は、図2のC−C’断面図である。
なお、図3と図4においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の液晶装置において、画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素は、画素電極9aと当該画素電極9aを制御するための画素スイッチング用TFT30がマトリクス状に複数形成されており、画像信号を供給するデータ線6aが当該TFT30のソース領域に電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、画素スイッチング用TFT30のドレイン領域に電気的に接続されており、スイッチング素子である画素スイッチング用TFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0025】
画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板(後述する)に形成された対向電極(後述する)との間で一定期間保持される。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。例えば画素電極9aの電圧は、蓄積容量70によりソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ保持される。蓄積容量70を形成する方法として、半導体層との間で容量を形成するための配線である容量線3bを設けている。また、容量線3bを設ける代わりに、画素電極9aと前段の走査線3aとの間で容量を形成しても良い。
【0026】
図2に示すように、本実施形態の液晶装置のTFTアレイ基板上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9aが設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3aおよび容量線3bが設けられている。データ線6aは、コンタクトホール5を介してポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち後述のソース領域に電気的に接続されており、画素電極9aは、コンタクトホール8を介して半導体層1aのうち後述のドレイン領域に電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち後述のチャネル領域(図中右下がりの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されている。
【0027】
次に、断面構造を見ると、図3に示すように、本実施形態の液晶装置は、一対の透明基板を有しており、その一方の基板をなすTFTアレイ基板10と、これに対向配置される他方の基板をなす対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなるものである。TFTアレイ基板10には、例えばITO膜等の透明導電性膜からなる画素電極9aが設けられ、TFTアレイ基板10上の各画素電極9aに隣接する位置に、各画素電極9aをスイッチング制御する画素スイッチング用TFT30が設けられている。画素スイッチング用TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁する絶縁薄膜2、データ線6a、半導体層1aの低濃度ソース領域1bおよび低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1dおよび高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0028】
また、走査線3a上、絶縁薄膜2上を含むTFTアレイ基板10上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール5および高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が各々形成された第1層間絶縁膜4が形成されている。つまり、データ線6aは、第1層間絶縁膜4を貫通するコンタクトホール5を介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。さらに、データ線6a上および第1層間絶縁膜4上には、高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が形成された第2層間絶縁膜7が形成されている。つまり、高濃度ドレイン領域1eは、第1層間絶縁膜4および第2層間絶縁膜7を貫通するコンタクトホール8を介して画素電極9aに電気的に接続されている。
これら第2層間絶縁膜7や画素電極9aは後述する無機配向膜36の下地層となっており、この下地層の表面は凹凸80を有している。ここでの凹凸80は具体的には容量線3b上に形成された画素電極9aの凸部81、この凸部81の近傍の凹部82、コンタクトホール8に形成された画素電極9aの凹部82、第2層間絶縁膜7の凸部81等である。
なお、画素電極9aと高濃度ドレイン領域1eとは、データ線6aと同一のAl膜や走査線3bと同一のポリシリコン膜を中継して電気的に接続する構成としてもよい。
【0029】
画素スイッチング用TFT30は、好ましくは上述のようにLDD構造を持つが、低濃度ソース領域1bおよび低濃度ドレイン領域1cに不純物イオンの打ち込みを行わないオフセット構造を採っても良いし、ゲート電極をマスクとして高濃度で不純物イオンを打ち込み、自己整合的に高濃度ソースおよびドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであっても良い。
また本実施の形態では、画素スイッチング用TFT30の走査線3aの一部からなるゲート電極をソース・ドレイン領域間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。この際、各々のゲート電極には同一の信号が印加されるようにする。このようにデュアルゲート(ダブルゲート)あるいはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース・ドレイン領域接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。これらのゲート電極の少なくとも1個をLDD構造あるいはオフセット構造にしてもよい。
【0030】
また、ゲート絶縁膜となる絶縁薄膜2を走査線3aの一部からなるゲート電極に対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体層1aを延設して第1蓄積容量電極1fとし、さらにこれらに対向する容量線3bの一部を第2蓄積容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されている。より詳細には、半導体層1aの高濃度ドレイン領域1eが、データ線6aおよび走査線3aの下に延設され、同じくデータ線6aおよび走査線3aに沿って延びる容量線3b部分に絶縁薄膜2を介して対向配置されて、第1蓄積容量電極1fとされている。特に、蓄積容量70の誘電体としての絶縁薄膜2は、高温酸化によりポリシリコン膜上に形成される画素スイッチング用TFT30のゲート絶縁膜の場合、薄くかつ高耐圧の絶縁膜とすることができ、蓄積容量70は比較的小面積で大容量の蓄積容量とすることができる。
【0031】
他方、対向基板20には、TFTアレイ基板10上のデータ線6a、走査線3a、画素スイッチング用TFT30の形成領域に対向する領域、すなわち各画素の非表示領域に第1遮光膜23が設けられている。さらに、第1遮光膜23上を含む対向基板20上には、その全面にわたって対向電極(共通電極)21が設けられている。対向電極21もTFTアレイ基板10の画素電極9aと同様、ITO膜等の透明導電性膜から形成されている。第1遮光膜23の存在により、対向基板20の側からの入射光が画素スイッチング用TFT30の半導体層1aのチャネル領域1a’や低濃度ソース領域領域1b、低濃度ドレイン領域1cに侵入することはない。さらに、第1遮光膜23は、コントラスト比の向上、色材の混色防止などの機能、いわゆるブラックマトリクスとしての機能を有している。
【0032】
そして、本実施の形態の場合、TFTアレイ基板10の画素スイッチング用TFT30、データ線6aおよび走査線3aの形成領域にあたる第2層間絶縁膜7上および画素電極9a上、すなわち表面に凹凸80を有する上記の下地層上に無機斜方蒸着膜からなる無機配向膜36が設けられている。
この無機配向膜36は、TFT30、第1と第2層間絶縁膜4、7、画素電極9等を形成したTFTアレイ基板10をある角度で固定して一方向から酸化シリコン等の無機材料を蒸着させ、基板に対して所定の角度で配列された柱状結晶を成長させる単純な斜方蒸着に形成されたものである。図2と図4中、符号SAはTFTアレイ基板10側の無機配向膜36を形成した際の無機材料の斜方蒸着方向である。この斜方蒸着方向SAは、走査線3aや容量線3bと直交する方向で、また、TFTアレイ基板10とのなす角度θ1が10度〜30度の範囲内のものである。この無機配向膜36の厚みは、10〜50nm程度である。
【0033】
図3及び図4に示すようにこの無機配向膜36の下地層の凸部81の無機材料の斜方蒸着方向SAに面する側の斜面81aの傾斜角度aと、無機材料の斜方蒸着方向SAに沿う側の斜面81bの傾斜角度bは異なっている。この斜面81bの傾斜角度bは斜面81aの傾斜角度aより小さくなっている。また、斜面81bの傾斜角度bは、無機材料の蒸着方向SAとTFTアレイ基板10とのなす角度θ1以下の大きさであることが好ましい。図4の凸部81の傾斜角度bの大きさの例としては、上記角度θ1が27度程度で、斜面81bの高さh1が0.25μmで、水平方向(基板面に沿った方向)の長さL1が0.6μmのとき、23度程度である。
なお、図3、図4において、下地層の凹部82の斜面で、無機材料の斜方蒸着方向SAに面する側の斜面82bは凸部の無機材料の斜方蒸着方向SAに面する側の斜面と考えることもでき、下地層の凹部82の斜面で無機材料の斜方蒸着方向SAに沿う側の斜面82aは凸部の無機材料の斜方蒸着方向SAに沿う側の斜面と考えることもできる。
【0034】
他方、TFTアレイ基板10側の無機配向膜36と対向する位置にあたる対向基板20の対向電極21上にも、同様の材料からなる無機配向膜42が設けられている。この無機配向膜42は、第1遮光膜23や対向電極21等を形成した対向基板20をある角度で固定して一方向から酸化シリコン等の無機材料を蒸着させ、基板に対して所定の角度で配列された柱状結晶を成長させる単純な斜方蒸着に形成されたものである。図2と図4中、符号SBは対向基板20側の無機配向膜42を形成した際の無機材料の斜方蒸着方向である。この斜方蒸着方向SBは、対向基板20とのなす角度が10度〜30度の範囲内のものである。この無機配向膜42の厚みは、10〜50nm程度である。この無機配向膜42の下地層は、表面の凹凸の大きさが小さいものであるので、無機材料を斜方蒸着する際に上記凸部や凹部が影となっておらず、蒸着不良領域が生じないため、凸部又は凹部の両側の斜面の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度はほぼ同じ大きさとされている。
なお、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、TFTアレイ基板10側に設けた無機配向膜36の斜方蒸着方向SAと、対向基板20側に設けた無機配向膜42の斜方蒸着方向が反対(180°ずらす)になるように配置されている。
【0035】
これらTFTアレイ基板10と対向基板20は、画素電極9aと対向電極21とが対向するように配置され、これら基板10、20と後述するシール材51(図11および図12参照)により囲まれた空間に液晶が封入され、液晶層50が形成される。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態(電圧無印加時)で無機配向膜36、42の作用により所定の配向状態をとる。一方、電圧印加時は、液晶分子の配向状態を変化させ、これを光学的に識別することにより表示することが可能な構造になっている。
なお、本明細書において、「電圧無印加時」、「電圧印加時」とは、それぞれ「液晶層への印加電圧が液晶のしきい値電圧未満であるとき」、「液晶層への印加電圧が液晶のしきい値電圧以上であるとき」を意味している。
【0036】
本実施形態の液晶装置は、無機配向膜36の下地層の凸部81の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向SAに沿う側の斜面81bの傾斜角度bが無機材料の蒸着方向SAと基板10とのなす角度θ1以下の大きさとされたことにより、この下地層に一方向から無機材料を斜方蒸着して無機配向膜を形成する際に上記凸部81の影となる領域をなくすことができるので、上記無機配向膜36の下地層の凸部81の無機材料の斜方蒸着方向SAに沿う側の斜面81b及びその近傍の領域に無機材料の蒸着ムラや蒸着されない蒸着不良領域が生じることがなく、従って、表面に凹凸80を有する下地層上に形成した無機配向膜36に異常がなく、配向膜異常に起因する液晶の配向不良を防止でき、コントラスト比の低下等の表示不良の発生を防止できる。
また、無機配向膜36、42は、無機斜方蒸着膜から構成されているので、ポリイミド等の有機膜から構成したものに比べて、耐光性や耐熱性が優れているので、耐久性が向上した液晶装置とすることができる。
なお、上記実施形態の液晶装置においては、TFTアレイ基板10側の無機配向膜36の下地層の凸部81の斜面81bの傾斜角度bを斜面81aの傾斜角度aより小さくし、斜面81bの傾斜角度bを無機材料の蒸着方向SAとTFTアレイ基板10とのなす角度θ1以下の大きさとした場合について説明したが、対向基板20側の無機配向膜42の下地層の表面の凹凸が大きい場合には、無機配向膜42の下地層の凸部又は凹部の斜方蒸着方向SBに沿う側の斜面の傾斜角度を斜方蒸着方向SBに面する側の斜面の傾斜角度より小さくし、さらに斜方蒸着方向SBに沿う側の斜面の傾斜角度を無機材料の蒸着方向SBと対向基板20とのなす角度以下の大きさとしてもよい。
【0037】
[第1実施形態の液晶装置の製造プロセス]
次に、上記構成を有する液晶装置の第1実施形態の製造プロセスについて、図5から図9を参照して説明する。なお、図5から図9は各工程におけるTFTアレイ基板10側の各層を、図3と同様に図2のA−A’断面に対応させて示す工程図である。
図5の工程(1)に示すように、石英基板、ハードガラス基板、シリコン基板等のTFTアレイ基板10を用意する。ここで、好ましくはN2(窒素)等の不活性ガス雰囲気下、約900〜1300℃の高温でアニール処理し、後に実施される高温プロセスにおけるTFTアレイ基板10に生じる歪みが少なくなるように前処理しておく。すなわち、製造プロセスにおける最高温で高温処理される温度に合わせて、事前にTFTアレイ基板10を同じ温度かそれ以上の温度で熱処理しておく。
【0038】
次に、TFTアレイ基板10上に、約450〜550℃、好ましくは約500℃の比較的低温環境中で、流量約400〜600cc/minのモノシランガス、ジシランガス等を用いた減圧CVD(例えば、圧力約20〜40PaのCVD)により、アモルファスシリコン膜を形成する。その後、このアモルファスシリコン膜に対して窒素雰囲気中で、約600〜700℃にて約1〜10時間、好ましくは、4〜6時間のアニール処理を施すことにより、ポリシリコン膜1を約50〜200nmの厚さ、好ましくは約100nmの厚さとなるまで固相成長させる。
【0039】
この際、図3に示した画素スイッチング用TFT30として、nチャネル型の画素スイッチング用TFT30を作成する場合には、当該チャネル領域にSb(アンチモン)、As(砒素)、P(リン)などのV族元素の不純物イオンをわずかにイオン注入等によりドープしても良い。また、画素スイッチング用TFT30をpチャネル型とする場合には、B(ボロン)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)などのIII族元素の不純物イオンをわずかにイオン注入等によりドープしても良い。なお、アモルファスシリコン膜を経ないで、減圧CVD法等によりポリシリコン膜1を直接形成しても良い。あるいは、減圧CVD法等により堆積したポリシリコン膜1にシリコンイオンを打ち込んで一旦非晶質化(アモルファス化)し、その後アニール処理等により再結晶化させてポリシリコン膜1を形成しても良い。
【0040】
次に工程(2)に示すように、図2に示したような所定パターンの半導体層1aを形成する。すなわち、特にデータ線6a下で容量線3bが形成される領域および走査線3aに沿って容量線3bが形成される領域には、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体層1aから延設された第1蓄積容量電極1fを形成する。
【0041】
次に工程(3)に示すように、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体層1aとともに第1蓄積容量電極1fを約900〜1300℃の温度、好ましくは約1000℃の温度により熱酸化することにより、約30nmの比較的薄い厚さの熱酸化シリコン膜を形成し、さらに減圧CVD法等により高温酸化シリコン膜(HTO膜)や窒化シリコン膜を約50nmの比較的薄い厚さに堆積し、多層構造を持つ画素スイッチング用TFT30のゲート絶縁膜となるとともに容量形成用の誘電体膜となる絶縁薄膜2を形成する(図3参照)。この結果、半導体層1aおよび第1蓄積容量電極1fの厚さは、約30〜150nmの厚さ、好ましくは約35〜50nmの厚さとなり、絶縁薄膜2の厚さは、約20〜150nmの厚さ、好ましくは約30〜100nmの厚さとなる。このように高温熱酸化時間を短くすることにより、特に8インチ程度の大型基板を使用する場合に熱による反りを防止することができる。ただし、ポリシリコン膜1を熱酸化することのみにより、単一層構造を持つ絶縁薄膜2を形成してもよい。
なお、工程(3)において特に限定されないが、第1蓄積容量電極1fとなる半導体層部分に、例えば、Pイオンをドーズ量約3×1012/cm2でドープして、低抵抗化させてもよい。
【0042】
次に工程(4)に示すように、減圧CVD法等によりポリシリコン膜3を堆積した後、Pを熱拡散し、ポリシリコン膜3を導電化する。または、Pイオンをポリシリコン膜3の成膜と同時に導入したドープトシリコン膜を用いてもよい。
次に、工程(5)に示すように、ポリシリコン膜3をパターニングし、図2に示したような所定パターンの走査線3aと容量線3bを形成する。これらの走査線3aおよび容量線3bの膜厚は、例えば約350nmとする。
【0043】
次に、図6の工程(6)に示すように、図3に示した画素スイッチング用TFT30をLDD構造を持つnチャネル型のTFTとする場合、半導体層1aに、先ず低濃度ソース領域1bおよび低濃度ドレイン領域1cを形成するために、走査線3aの一部となるゲート電極を拡散マスクとして、PなどのV族元素の不純物イオン60を低濃度で(例えば、Pイオンを1×1013〜3×1013/cm2のドーズ量にて)ドープする。これにより、走査線3a下の半導体層1aはチャネル領域1a’となる。この不純物イオンのドープにより容量線3bおよび走査線3aも低抵抗化される。
【0044】
続いて、工程(7)に示すように、画素スイッチング用TFT30を構成する高濃度ソース領域1dおよび高濃度ドレイン領域1eを形成するために、走査線3aよりも幅の広いマスクでレジスト層62を走査線3a上に形成した後、同じくPなどのV族元素の不純物イオン61を高濃度で(例えば、Pイオンを1×1015〜3×1015/cm2のドーズ量にて)ドープする。また、画素スイッチング用TFT30をpチャネル型とする場合、半導体層1aに、低濃度ソース領域1bおよび低濃度ドレイン領域1c並びに高濃度ソース領域1dおよび高濃度ドレイン領域1eを形成するために、B(ボロン)などのIII族元素の不純物イオンを用いてドープする。なお、例えば、低濃度の不純物イオンのドープを行わずに、オフセット構造のTFTとしてもよく、走査線3aの一部であるゲート電極をマスクとして、Pイオン、Bイオン等を用いたイオン注入技術によりセルフアライン型のTFTとしてもよい。この不純物のドープにより容量線3bおよび走査線3aもさらに低抵抗化される。
【0045】
また、工程(6)および工程(7)を再度繰り返し、BイオンなどのIII族元素の不純物イオンを行うことにより、pチャネル型TFTを形成することができる。これにより、nチャネル型TFTおよびpチャネル型TFTから構成される相補型構造を持つ後述するデータ線駆動回路および走査線駆動回路をTFTアレイ基板10上の周辺部に形成することが可能となる。このように、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体層1aをポリシリコン膜で形成すれば、画素スイッチング用TFT30の形成時にほぼ同一工程で、データ線駆動回路および走査線駆動回路を形成することができ、製造上有利である。
【0046】
次に、工程(8)に示すように、画素スイッチング用TFT30における走査線3aと容量線3bを覆うように、例えば、常圧又は減圧CVD法等によりTEOS(テトラ・エチル・オルソ・シリケート)ガス、TEB(テトラ・エチル・ボートレート)ガス、TMOP(テトラ・メチル・オキシ・フォスレート)ガス等を用いて、NSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)などのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる単層あるいは積層してなる第1層間絶縁膜4を形成する。第1層間絶縁膜4の膜厚は、約500〜1500nmが好ましい。
【0047】
次に、工程(9)の段階で、高濃度ソース領域1dおよび高濃度ドレイン領域1eを活性化するために約1000℃のアニール処理を20分程度行った後、データ線6aに対するコンタクトホール5を、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより、あるいはウェットエッチングにより形成する。また、走査線3aや容量線3bを図示しない配線と接続するためのコンタクトホールも、コンタクトホール5と同一の工程により第1層間絶縁膜4に開孔する。
【0048】
次に、図7の工程(10)に示すように、第1層間絶縁膜4の上に、スパッタリング等により、遮光性のAl等の低抵抗金属や金属シリサイド等を金属膜6として、約100〜500nmの厚さ、好ましくは約300nmに堆積し、さらに工程(11)に示すように、フォトリソグラフィー工程、エッチング工程等により、金属膜6をパターニングしてデータ線6aを形成する。
次に、工程(12)に示すように、データ線6a上を覆うように、例えば常圧または減圧CVD法やTEOSガス等を用いて、NSG、PSG、BSG、BPSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる単層あるいは積層してなる第2層間絶縁膜7を形成する。第2層間絶縁膜7の膜厚は、約500〜1500nmが好ましい。
【0049】
次に、工程(13)の段階において、画素スイッチング用TFT30において、画素電極9aと高濃度ドレイン領域1eとを電気的に接続するためのコンタクトホール8を、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより形成する。
次に、図8の工程(14)に示すように、第2層間絶縁膜7の上に、スパッタリング等により、ITO膜等の透明導電性膜9を、約50〜200nmの厚さに堆積する。
次に、工程(15)に示すように、透明導電性膜9の上にポジ型のレジスト66を塗布し、プリベークした後、このレジスト66の上方にグレーマスク67を配置し、露光する。このグレーマスク67は、光の透過光量の勾配を有するもので、このレジスト66の下側の透明導電性膜9の凸部83の後工程で無機材料の斜方蒸着方向SAに沿う側の斜面81bとなる斜面83b上のマスク部分67aは透過光量が斜面83bの下部から上部にかけて徐々に多くなっており、また、凸部83の頂部83c上及びコンタクトホール8上のマスク部分67b及び斜面83bの下部の延長した部分上のマスク部分67cは透過光量がほぼ0と一定になっており、コンタクトホール8より走査線3a側のマスク部分67dは上記マスク部分67aの透過光量が最も多い状態と同じで、しかも透過光量は一定となっている。
【0050】
次に、工程(16)に示すように、レジスト66を現像後、ポストベークして、透明導電性膜9上に両側の斜面の傾斜が異なるレジストパターン68を形成する。このようにして形成されたレジストパターン68は、上記透明導電性膜9の凸部83の斜面83b上の斜面68bの傾斜角度が、上記透明導電性膜9の凸部83の斜面83a上の斜面68aの傾斜角度より小さくなっている。
【0051】
ついで、図9の工程(17)に示すように、エッチング後、レジストパターン68を除去して、画素電極9aを形成する。このようにして形成された画素電極9aの凸部81の後工程で無機材料の斜方蒸着方向SAに沿う側の斜面となる斜面81bの傾斜角度bは、後工程で無機材料の斜方蒸着方向SAに面する側となる斜面となる斜面81aの傾斜角度aより小さくなっている。
なお、当該液晶装置を反射型の液晶装置に用いる場合には、Al等の反射率の高い不透明な材料から画素電極9aを形成してもよい。
【0052】
次に、工程(18)に示すように、透明導電性膜9等が形成された基板10をある角度で固定して酸化シリコン等の無機材料を蒸着させ、基板10に対して所定の角度で配列された柱状結晶を成長させる単純な斜方蒸着法により図3に示すような膜厚10nmから50nm程度の無機配向膜36を形成する。ここでの無機材料を基板10に斜方蒸着させる際の斜方蒸着方向SA は、走査線3aや容量線3bと直交する方向で、また、TFTアレイ基板10とのなす角度θ1が10度〜30度の範囲内である。また、無機材料の蒸着方向SAとTFTアレイ基板10とのなす角度θ1 は、斜面81bの傾斜角度b以上の大きさとし、好ましくは斜面81bの傾斜角度bより大きくする。
【0053】
他方、図3に示した対向基板20については、ガラス基板等が先ず用意され、第1遮光膜23および後述の額縁としての第2遮光膜53(図11および図12参照)を、例えば金属クロムをスパッタリングした後、フォトリソグラフィー工程、エッチング工程を経て形成する。なお、これら遮光膜は、Cr、Ni(ニッケル)、Alなどの金属材料の他、カーボンやTiをフォトレジストに分散した樹脂ブラックなどの材料から形成してもよい。
【0054】
その後、対向基板20の全面にスパッタリング等により、ITO等の透明導電性膜を、約50〜200nmの厚さに堆積することにより、対向電極21を形成する。さらに、TFTアレイ基板10側と同様、膜厚30nmから50nm程度の無機配向膜42を斜方蒸着法により形成する。ここでの斜方蒸着方向は図2と図4で示したSB で示される方向であり、無機配向膜36を形成する際の斜方蒸着方向SAと180度異なる方向である。
【0055】
最後に、上述のように各層が形成されたTFTアレイ基板10と対向基板20とを斜方蒸着方向が反対(180°ずらす)になるように配置(TFTアレイ基板10と対向基板20とを所定の角度で配列された柱状結晶の配列方向が反対になるように配置)し、セル厚が4μmになるように後述のシール材51により貼り合わせ、空パネルを作製する。液晶としてはフッ素系のネガ型の液晶を使用し、この液晶をパネル内に封入し、本実施形態の液晶装置が得られる。
なお、本実施形態では、対向基板20上に基板側から第1遮光膜23、対向電極21、配向膜42の順に設けたため、液晶駆動電圧を高くしなくて済むという利点がある。この構成に代えて、対向電極21、第1遮光膜23、配向膜42の順に設けても良い。その場合、第1遮光膜23と配向膜42のパターニングを一括して行うことができ、製造工程の簡略化が図れる、という利点が得られる。
【0056】
本実施形態の液晶装置用基板の製造方法によれば、グレイマスクの透過光量の勾配を変更することにより、無機配向膜の下地層の凸部を所望の形状にすることができ、すなわち、上記凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面が所望の傾斜角度を有するように形成することができるので、本実施形態の液晶装置に備えることができる基板を製造できる。
なお、上記実施形態の液晶装置およびこの液晶装置用基板の製造方法においては、本発明をTFT素子に代表される3端子型素子を用いるアクティブマトリクス型の液晶装置とこの液晶装置用基板の製造方法に適用した場合について説明したが、TFD素子に代表される2端子型素子を用いるアクティブマトリクス型の液晶装置およびこの液晶装置用基板の製造方法や、パッシブマトリクス型の液晶装置及びこの液晶装置用基板の製造方法にも適用できる。また、本発明は透過型の液晶装置だけでなく、反射型の液晶装置にも適用可能である。
【0057】
なお、上記実施形態の液晶装置においては、無機材料を下地層の表面に斜方蒸着するときの斜方蒸着方向SAが、走査線3aや容量線3bと直交する方向で、また、TFTアレイ基板10とのなす角度θ1が10度〜30度の範囲内のものである場合に、凸部81の斜面81bの傾斜角度bを斜面81aの傾斜角度aより小さくし、斜面81bの傾斜角度bを無機材料の蒸着方向SAとTFTアレイ基板10とのなす角度θ1以下の大きさとした例について説明したが、図2に示すように無機材料を下地層の表面に斜方蒸着するときの斜方蒸着方向SCが走査線3aや容量線3bに沿った方向で、TFTアレイ基板10とのなす角度θ2が10度〜30度の範囲内である場合、図10に示すように凸部81の無機材料の斜方蒸着方向SCに沿う側の斜面81bの傾斜角度bを斜面81aの斜方蒸着方向SCに面する側の傾斜角度aより小さくし、斜面81bの傾斜角度bを無機材料の蒸着方向SCとTFTアレイ基板10とのなす角度θ2以下の大きさとしてもよい。図10は、斜方蒸着方向を変更したときの図2のB−B’断面図である。なお、図10中、SD は対向基板20側の無機配向膜42を形成した際の無機材料の斜方蒸着方向である。この液晶装置においても各層が形成されたTFTアレイ基板10と対向基板20とは、斜方蒸着方向が反対(180°ずらす)になるように配置されている。
図10の凸部81の傾斜角度bの大きさの例としては、上記角度θ2が27度程度で、斜面81bの高さh2が0.93μmで、水平方向(基板面に沿った方向)の長さL2が2μmのとき、25度程度である。
本実施形態においてはITOのグレイマスクを用いたフォトリソグラフィーにより傾斜角度bの大きさを目的の値にしたが、基板の凹凸が大きい場合でこの方法で目的とする傾斜角度が得られない場合は、ITO膜の下に1〜2μ程度の有機あるいは無機の絶縁膜を付け、グレイマスクを用いたフォトリソグラフィーにより目的とする傾斜角度をつけ、その後にITO膜を付ける方法を取る。ただしこの場合は絶縁膜にコンタクトホールをあけ、ITO膜とドレイン領域をつなげる必要がある。
【0058】
また、本実施形態においてはTFTアレイ基板上に形成された表面に凹凸がある下地層上に無機配向膜を形成する場合に本発明を適用した場合について説明しが、素子側の基板が配線層等を埋め込んだものであり、無機配向膜の下地層が平滑な表面にコンタクトホール等の凹部を形成したものである場合にも本発明を適用することができる。
【0059】
[液晶装置の全体構成]
次に、上記構成の液晶装置の全体構成を図11および図12を参照して説明する。なお、図11は、TFTアレイ基板10をその上に形成された各構成要素とともに対向基板20の側から見た平面図であり、図12は、対向基板20を含めて示す図11のH−H’断面図である。なお、図11及び図12では、第1の垂直配向膜、第2の垂直配向膜の記載は省略されている。
図11において、TFTアレイ基板10の上には、シール材51がその縁に沿って設けられており、その内側に並行して、例えば第1遮光膜23と同じかあるいは異なる材料からなる額縁としての第2遮光膜53が設けられている。シール材51の外側の領域には、データ線駆動回路101および外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104がこの一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。走査線3aに供給される走査信号遅延が問題にならないのならば、走査線駆動回路104は片側だけでも良いことは言うまでもない。また、データ線駆動回路101を画像表示領域の辺に沿って両側に配列してもよい。例えば、奇数列のデータ線6aは画像表示領域の一方の辺に沿って配設されたデータ線駆動回路から画像信号を供給し、偶数列のデータ線は上記画像表示領域の反対側の辺に沿って配設されたデータ線駆動回路から画像信号を供給するようにしてもよい。このようにデータ線6aを櫛歯状に駆動するようにすれば、データ線駆動回路の占有面積を拡張することができるため、複雑な回路を構成することが可能となる。さらに、TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための導通材106が設けられている。そして、図12に示すように、図11に示したシール材51とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が当該シール材51によりTFTアレイ基板10に固着されている。
【0060】
以上、図1から図9を参照して説明した各実施形態における液晶装置のTFTアレイ基板10上には、さらに製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。また、データ線駆動回路101および走査線駆動回路104をTFTアレイ基板10の上に設ける代わりに、例えばTAB(Tape Automated Bonding)基板上に実装された駆動用LSIに、TFTアレイ基板10の周辺部に設けられた異方性導電フィルムを介して電気的および機械的に接続するようにしてもよい。また、対向基板20の投射光が入射する側およびTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dipersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光手段などが所定の方向で配置される。
【0061】
以上説明した各実施形態における液晶装置は、例えばカラー液晶プロジェクタ(投射型表示装置)に適用することができる。その場合、3枚の液晶装置がRGB用のライトバルブとして各々用いられ、各ライトバルブには各々RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになる。したがって、各実施形態では、対向基板20に、カラーフィルタは設けられていない。しかしながら、第1遮光膜23の形成されていない画素電極9aに対向する所定領域にRGBのカラーフィルタをその保護膜とともに、対向基板20上に形成してもよい。このようにすれば、ダイクロイックミラーを使用して色分解せずに、光源の光を直接ライトバルブに入射させてもカラー液晶プロジェクタを提供できる。また、液晶プロジェクタ以外の直視型や反射型のカラー液晶テレビなどのカラー液晶装置に各実施形態における液晶装置にも適用できる。さらに、対向基板20上に1画素に1個対応するようにマイクロレンズを形成してもよい。このようにすれば、入射光の集光効率を向上することで、明るい液晶装置が実現できる。さらにまた、対向基板20上に、何層もの屈折率の相違する干渉層を堆積することで、光の干渉を利用して、RGB色を作り出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付対向基板によれば、より明るいカラー液晶装置が実現できる。
また、各画素に設けられるスイッチング素子としては、正スタガ型又はコプラナー型のポリシリコンTFTであるとして説明したが、逆スタガ型のTFTやアモルファスシリコンTFT等の他の形式のTFTに対しても、各実施形態は有効である。
【0062】
[電子機器]
上記の本発明の実施形態の液晶装置を用いた電子機器の一例として、投射型表示装置の構成について、図13を参照して説明する。図13において、投射型表示装置1100は、上述した実施形態の液晶装置を3個用意し、夫々RGB用の液晶装置962R、962Gおよび962Bとして用いた投射型液晶装置の光学系の概略構成図を示す。本例の投射型表示装置の光学系には、光源装置920と、均一照明光学系923が採用されている。そして、投射型表示装置は、この均一照明光学系923から出射される光束Wを赤(R)、緑(G)、青(B)に分離する色分離手段としての色分離光学系924と、各色光束R、G、Bを変調する変調手段としての3つのライトバルブ925R、925G、925Bと、変調された後の色光束を再合成する色合成手段としての色合成プリズム910と、合成された光束を投射面100の表面に拡大投射する投射手段としての投射レンズユニット906を備えている。また、青色光束Bを対応するライトバルブ925Bに導く導光系927をも備えている。
【0063】
均一照明光学系923は、2つのレンズ板921、922と反射ミラー931を備えており、反射ミラー931を挟んで2つのレンズ板921、922が直交する状態に配置されている。均一照明光学系923の2つのレンズ板921、922は、それぞれマトリクス状に配置された複数の矩形レンズを備えている。光源装置920から出射された光束は、第1のレンズ板921の矩形レンズによって複数の部分光束に分割される。そして、これらの部分光束は、第2のレンズ板922の矩形レンズによって3つのライトバルブ925R、925G、925B付近で重畳される。したがって、均一照明光学系923を用いることにより、光源装置920が出射光束の断面内で不均一な照度分布を有している場合でも、3つのライトバルブ925R、925G、925Bを均一な照明光で照明することが可能となる。
【0064】
各色分離光学系924は、青緑反射ダイクロイックミラー941と、緑反射ダイクロイックミラー942と、反射ミラー943から構成される。まず、青緑反射ダイクロイックミラー941において、光束Wに含まれている青色光束Bおよび緑色光束Gが直角に反射され、緑反射ダイクロイックミラー942の側に向かう。赤色光束Rはこのミラー941を通過して、後方の反射ミラー943で直角に反射されて、赤色光束Rの出射部944から色合成プリズム910の側に出射される。
次に、緑反射ダイクロイックミラー942において、青緑反射ダイクロイックミラー941において反射された青色、緑色光束B、Gのうち、緑色光束Gのみが直角に反射されて、緑色光束Gの出射部945から色合成光学系の側に出射される。緑反射ダイクロイックミラー942を通過した青色光束Bは、青色光束Bの出射部946から導光系927の側に出射される。本例では、均一照明光学素子の光束Wの出射部から、色分離光学系924における各色光束の出射部944、945、946までの距離がほぼ等しくなるように設定されている。
【0065】
色分離光学系924の赤色、緑色光束R、Gの出射部944、945の出射側には、それぞれ集光レンズ951、952が配置されている。したがって、各出射部から出射した赤色、緑色光束R、Gは、これらの集光レンズ951、952に入射して平行化される。
このように平行化された赤色、緑色光束R、Gは、ライトバルブ925R、925Gに入射して変調され、各色光に対応した画像情報が付加される。すなわち、これらの液晶装置は、図示しない駆動手段によって画像情報に応じてスイッチング制御されて、これにより、ここを通過する各色光の変調が行われる。一方、青色光束Bは、導光系927を介して対応するライトバルブ925Bに導かれ、ここにおいて、同様に画像情報に応じて変調が施される。なお、本例のライトバルブ925R、925G、925Bは、それぞれさらに入射側偏光手段960R、960G、960Bと、出射側偏光手段961R、961G、961Bと、これらの間に配置された液晶装置962R、962G、962Bとからなる液晶ライトバルブである。
【0066】
導光系927は、青色光束Bの出射部946の出射側に配置した集光レンズ954と、入射側反射ミラー971と、出射側反射ミラー972と、これらの反射ミラーの間に配置した中間レンズ973と、ライトバルブ925Bの手前側に配置した集光レンズ953とから構成されている。集光レンズ954から出射された青色光束Bは、導光系927を介して液晶装置962Bに導かれて変調される。各色光束の光路長、すなわち、光束Wの出射部から各液晶装置962R、962G、962Bまでの距離は青色光束Bが最も長くなり、したがって、青色光束の光量損失が最も多くなる。しかし、導光系927を介在させることにより、光量損失を抑制することができる。
各ライトバルブ925R、925G、925Bを通って変調された各色光束R、G、Bは、色合成プリズム910に入射され、ここで合成される。そして、この色合成プリズム910によって合成された光が投射レンズユニット906を介して所定の位置にある投射面100の表面に拡大投射されるようになっている。
【0067】
本例において、液晶装置962R、962G、962Bは、図1乃至図12を用いて説明した本発明の実施形態の液晶装置である。さらに、液晶装置を投射型表示装置のライトバルブに用いる場合、直視型液晶表示装置として用いる場合に比べて入射光の強度が高く、配向膜がポリイミド等の有機配向膜から構成されていると配向膜の劣化が顕著に起こりやすいが、配向膜を酸化シリコン等の無機斜方蒸着膜から構成することによって、配向膜の劣化に起因する表示不良の発生を低減した本実施形態の液晶装置962R、962G、962Bが設けられているので、長時間の使用によっても表示品位の高い投射型表示装置を実現することができる。また、実施形態の液晶装置962R、962G、962Bは、上記したように無機配向膜36の下地層の凸部81の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面81bの傾斜角度bが無機材料の蒸着方向SAと基板10とのなす角度以下の大きさとされたものであるので、無機配向膜36の下地層の凸部81の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面81b及びその近傍の領域に無機材料の蒸着ムラや蒸着されない蒸着不良領域が生じることがない。従ってこのような液晶装置962R、962G、962Bが設けられた投射型表示装置によれば、配向膜異常に起因する液晶の配向不良によるコントラスト比の低下等がなく、表示品位の高い表示装置を実現することができる。
【0068】
【実施例】
本発明者は、本発明の液晶装置の効果を実証する実験を行った。以下、この実験結果について説明する。
実施例として、第1の実施形態で示したTFT素子と画素電極等が形成されたTFTアレイ基板と、ブラックマトリックス(遮光膜)と対向電極等が形成された対向基板の両方に、酸化シリコンを膜厚が20nmになるように斜方蒸着を行って無機配向膜を形成した。上記無機配向膜の下地層の画素電極は、グレーマスクを用いるフォトリソグラフィー工程で形成されたものであり、凸部の斜面のうち斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度を35度、斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度を25度とした。
ここでの酸化シリコンを基板に斜方蒸着させる際の斜方蒸着方向は、TFTアレイ基板に形成した走査線や容量線と直交する方向で、また、基板とのなす角度が27度程度とした。また酸化シリコンの蒸着方向と基板とのなす角度は、画素電極の表面の凸部の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度以上の大きさとした。
その後、一方の基板の液晶層側となる側の面にシール印刷により液晶注入口を残してシール部を形成し、TFTアレイ基板と対向基板を貼り合わせ液晶パネルを作製し、液晶注入口からフッ素系のネガ型の液晶をパネル内に注入し、注入口を封止材で塞ぐことにより、実施例の液晶装置を作製した。
比較のために、フォトリソグラフィー工程で画素電極を形成する際、グレーマスクに代えて通常のマスクを用いて画素電極を形成し、この上に酸化シリコンからなる斜方蒸着膜(無機配向膜)を形成したTFTアレイ基板を用いた以外は上記実施例と同様にして比較例1の液晶装置を作製した。この比較例1の液晶装置の酸化シリコンからなる斜方蒸着膜(無機配向膜)の下地層の画素電極の凸部の両側の斜面(無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面)の傾斜角度は、ほぼ同じ大きさの35度となった。
【0069】
このように作製した実施例の液晶装置、比較例1の液晶装置の表示特性について図14に示す装置を用いて調べた。図14の装置は、光源300、第1のフライアイレンズ301、第2のフライアイレンズ302、偏光変換光学系303、第1の偏光板304、第2の偏光板307、投射レンズ308、照度計309の順に配置されたものである。表示特性の測定は、第1と第2の偏光板304、307間に試料400として上記で作製した液晶装置を配置し、光源300から光を出射し、照度計309で明るさ(lx)と、コントラストを測定した。その結果、比較例1の液晶装置の明るさ(lx)は94.3、コントラストは157であるのに対して、実施例の液晶装置の明るさ(lx)は97.6、コントラストは326であり、実施例の液晶装置の方が明るい表示が得られ、比較例1のものに比べて2倍以上のコントラストが得られており、表示品質が優れていることがわかる。
【0070】
また、5 lm/mm2 の強度の光を照射し、照射時間と液晶表示の変化を調べたところ、実施例のライトバルブは、配向膜の劣化に起因する液晶分子の初期配向が乱れることがなく、酸化シリコンからなる斜方蒸着膜に代えてポリイミドからなる垂直配向膜を用いた比較例2の液晶装置より5倍の信頼性が得られた。
以上のことから本実施例の液晶装置をライトバルブに用いると、表示品質がよく、高信頼性のライトバルブが得られることがわかる。
【0071】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の液晶装置によれば、表面に凹凸がある下地層に一方向から無機材料を斜方蒸着して無機配向膜を形成する際に上記凸部又は凹部の影となる領域を低減できるので、上記無機配向膜の下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面及びその近傍の領域に無機材料の蒸着ムラや蒸着されない蒸着不良領域が生じるのを低減でき、従って、表面に凹凸を有する下地層上に形成した無機配向膜に異常がなく、配向膜異常に起因する液晶の配向不良を防止でき、コントラスト比の低下等の表示不良の発生を防止できる。
そして、本液晶装置の採用により、表示品位の高い投射型表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態の液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状の複数の画素に設けられた各種素子、配線等の等価回路を示す図である。
【図2】 同、液晶装置のTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群を示す平面図である。
【図3】 図2のA−A’断面図である。
【図4】 図2のC−C’断面図である。
【図5】 同、液晶装置の製造プロセスを順を追って示す工程断面図である。
【図6】 同、工程断面図の続きである。
【図7】 同、工程断面図の続きである。
【図8】 同、工程断面図の続きである。
【図9】 同、工程断面図の続きである。
【図10】 斜方蒸着方向を変更したときの図2のB−B’断面図である。
【図11】 各実施形態の液晶装置のTFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素とともに対向基板の側から見た平面図である。
【図12】 図11のH−H’断面図である。
【図13】 液晶装置を用いた電子機器の一例である投射型表示装置の概略構成図である。
【図14】 実験例で作製した液晶装置の表示特性の測定に用いた装置の概略構成図である。
【図15】 従来の液晶装置の一例を示す断面図である。
【図16】 無機斜方蒸着膜からなる垂直配向膜を形成した従来の液晶装置用基板を示す概略図である。
【符号の説明】
3a 走査線
6a データ線
9a 画素電極
10 TFTアレイ基板
20 対向基板
30 画素スイッチング用TFT
36,42 無機配向膜
50 液晶層
66 レジスト
67 グレーマスク
68 レジストパターン
80 凹凸
81 凸部
81a 斜面
81b 斜面
82 凹部
82a 斜面
82b 斜面
a 傾斜角度
b 傾斜角度
Claims (5)
- 互いに対向する一対の基板間に液晶が挟持されてなり、該一対の基板のうちの一方の基板上に、マトリクス状に配置された複数の画素電極と、該複数の画素電極をそれぞれ駆動する複数のスイッチング手段と、該複数のスイッチング手段にそれぞれ接続された複数のデータ線および複数の走査線が備えられるとともに、該一対の基板のうちの他方の基板上には対向電極が備えられ、
前記一対の基板の液晶層側の表面に一方向から無機材料を斜方蒸着することにより形成した無機配向膜がそれぞれ設けられ、これら無機配向膜のうち少なくともスイッチング手段が設けられた基板側の無機配向膜の下地層は表面に凹凸を有するものであり、該下地層の凸部又は凹部の無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面と無機材料の斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度は異なり、
前記無機配向膜の下層側に位置する画素電極が、前記斜方蒸着方向に沿う側の斜面の上部で膜厚が薄く、下部に向かって厚くなるように形成されたことにより、前記斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度が、前記斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度よりも小さくされたことを特徴とする液晶装置。 - 前記一方の基板上に、蓄積容量を構成する容量線が前記走査線と略平行に設けられ、
前記斜方蒸着方向に沿う側の斜面として、前記走査線と前記容量線との間に位置する斜面と、前記容量線の前記走査線が位置する側と反対側の縁に位置する斜面と、を有し、
前記斜方蒸着方向に沿う側の2つの斜面のうち、前記容量線の前記走査線が位置する側と反対側の縁に位置する斜面の傾斜角度が、前記斜方蒸着方向に面する側の斜面の傾斜角度よりも小さくされたことを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。 - 前記下地層の凸部又は凹部の両側の斜面のうち無機材料の斜方蒸着方向に沿う側の斜面の傾斜角度が無機材料の蒸着方向と基板とのなす角度以下の大きさであることを特徴とする請求項1または2記載の液晶装置。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶装置において、前記無機配向膜は、酸化シリコンからなる斜方蒸着膜であることを特徴とする液晶装置。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の液晶装置を備えた投射型表示装置であって、
光源と、該光源から出射された光を変調する前記液晶装置と、該液晶装置により変調された光を投射面に拡大投影する拡大投影光学系とを有することを特徴とする投射型表示装置。
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