JP6112232B2 - X線管 - Google Patents

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Description

この発明は、真空中で用いられるX線管に関する。
電子銃やX線管などでは、真空内の電極間(例えば、フィラメントを囲むフォーカスカップと陽極との間)に電圧差を与えて動作させている。通常、電極表面の電界が10kV/mm以下となるように設計し、表面を研磨した電極を用い、ゴミなどが付着しないように洗浄している。これらは、電極表面を均一になめらかにして、局所的な電界集中が発生しないようにして電極の放電を防止していると言える。ゴミ以外にも、研磨面に微小なピンホールなどがあると、微小な角部分で高電界となり放電する原因となる。研磨には、機械的な研磨や電気化学的な研磨など多種類ある。
しかし、電極表面の電界が10kV/mmを超える高電圧を連続印加しなければならない場合が多い。このため、電極には高い耐電圧特性(すなわち放電しない電極)が必要とされる。高い耐電圧特性を得るために、以下のような方法が知られている。
A.研磨した電極を用い徹底した洗浄を実施する手法が知られている。最近では、電極表面を粗さ1nm(Ra)程度の高精度に研磨する超精密鏡面加工が行われている場合もある。この研磨した金属表面には、酸化膜が自然に形成される(自然酸化膜)。例えば、鉄に約10.5%以上のクロムを含有した合金である「ステンレス鋼」の場合、ステンレス鋼の表面には、「不動態皮膜」あるいは「不動態膜」と呼ばれる厚さが1nm〜3数nmで厚くても6nmとされる自然酸化膜が生成される。この膜は、主にクロムに酸素と水酸基とが結合した緻密で密着性の高い膜で、金属表面を覆う。この皮膜は引っかき疵等で一部除去されても酸素があればすぐに再生される性質を持っており、この皮膜が腐食環境からステンレス鋼を保護している。ステンレス鋼は上記の不動態皮膜により、優れた耐食性を有しているが、置かれた環境によってこれが破壊されて腐食が発生する。つまり、通常の不動態皮膜は極めて薄いので、不均一で、微小なピットやピンホールが残存している。腐食のしやすさは、孔食試験(JIS GO578)で判定される(http://www.jssa.gr.jp/contents/faq-article/q8/を参照)。一般的にはメッキ厚が増加するとピンホールは減少するといわれている。
B.電極に絶縁膜(例えばエポキシフィルム)を成膜する手法が知られている。
C.ウェネルト電極(X線管に使用される場合にはフォーカスカップ電極)に、プラズマ・イオン注入によりDLC(diamond like carbon)膜を成膜する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2012−164427号公報
しかしながら、このようなA〜Cの手法の場合には、次のような問題がある。
すなわち、Aの手法では、高額な精密加工機が必要で、またそのための微細均一砥粒が必要である。また、電極形状は平坦でない場合がほとんどで、多くの電極を1回にまとめて加工することができない。その結果、高コストとなる。さらに、Aの手法では、表面の不動態膜は薄く不均一であるので、数nmオーダで見ると局所的な電界集中が起こっており、高電界になると放電する。
また、Bの手法では、製造ムラなどにより、絶縁膜の電極への密着性が不十分となりやすく、絶縁膜が金属から剥離する。さらに、耐熱温度が低く、高温ベーキング(脱ガス処理)などができないので、真空度が低下しやすい。
また、Cの手法では、成膜装置が高価であり、真空中成膜を行わなければならないのでスループットが低い(真空チャンバサイズによるが1回に数個のみしか処理することができない、成膜時間が長い)という問題がある。その結果、高コストとなる。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、表面が均一で密着性に優れ、耐電圧性能を向上させることができるX線管を提供することを目的とする。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係るX線管は、真空容器と、前記真空容器内に収容され、電子ビームを発生するエミッタ電極と、前記真空容器内に収容され、前記エミッタ電極を取り囲むように形成されたフォーカスカップ電極と、前記真空容器内に収容され、前記フォーカスカップ電極と対向するように配置され、前記エミッタ電極からの電子ビームを加速させる陽極と、前記真空容器内に収容され、前記陽極からの電子ビームの衝突によりX線を発生するターゲットとを備え、前記フォーカスカップ電極の前記陽極に対向する面に厚みが10nm以上である不動態膜が形成されているものである。
[作用・効果]この発明に係るX線管によれば、厚みが10nm以上である不動態膜(すなわち、自然酸化膜より厚い不動態膜)が陽極に対向する面に形成されたフォーカスカップ電極をX線管に組み込んで用いる。不動態膜の厚みが10nm以上であるので、自然酸化膜より表面が均一で密着性に優れ、微細なピンホールも少ないので、耐電圧性能を向上させることができる。
この発明に係るX線管によれば、厚みが10nm以上である不動態膜が陽極に対向する面に形成されたフォーカスカップ電極をX線管に組み込んで用い、耐電圧性能を向上させることができる。
(a)は実施例に係るX線管の構成を示す概略断面図、(b)は(a)のフォーカスカップ電極33を拡大した概略断面図である。 (a)はフォーカスカップ電極33付近の電位分布、(b)はフォーカスカップ電極33付近の電位分布および電子ビーム軌道例である。 (a)は(厚みが300nm以上600nm以下である)不動態膜を有したときの耐電圧実験(電界および真空度)の結果、(b)は比較のための自然酸化による不動態膜を有するときの耐電圧実験(電界および真空度)の結果である。
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1(a)は、実施例に係るX線管の構成を示す概略断面図。
図1(b)は、図1(a)のフォーカスカップ電極33を拡大した本発明の概略断面図である。
図1(a)に示すX線管1は、真空容器2と陰極3と陽極4とターゲット5とを備えている。陰極3,陽極4およびターゲット5は真空容器2内に収容されている。
陰極3は、電子ビームBを発生する。陰極3は、エミッタ電極31とエミッタ部32とフォーカスカップ電極33とホルダー部34とを備えている。真空容器2の底部は絶縁体7で封止されているが、絶縁体7は、エミッタ電極31およびホルダー部34が貫通しており、電気的な接続が可能に構成されている。
エミッタ電極31は通常の2端子のフィラメントを簡略化して図示したもので、2端子間に電流を流して加熱することで、先端エミッタ部32から熱電子(電子ビームB)を放出する。その電位は、ほぼフォーカスカップ電極33の電位に近い。
フォーカスカップ電極33は、エミッタ電極31およびエミッタ部32を囲む形状となっており、エミッタ部32からの電子ビームBの引き出しを制御する働きを持つ。フォーカスカップ電極33は、所望の性能が得られる電界分布を発生する形状にステンレス鋼(SUS)から削り出して形成されている。フォーカスカップ電極33の具体的な構成(ステンレス鋼の不動態膜33a)については後述する。
ホルダー部34は、フォーカスカップ電極33を保持するのが目的で、容器2に対して表面が低電界となるように設計されており、フォーカスカップ電極33と同様にステンレス鋼で形成されている。ただし、後述するようにフォーカスカップ電極33におけるステンレス鋼の不動態膜33aの厚みが10nmよりも厚いのに対して、ホルダー部34におけるステンレス鋼の不動態膜34aの厚みは1nm〜3数nmで厚くても6nm程度である。
陽極4は、陰極3に比べ+の電位にあり、エミッタ電極31のエミッタ部32から放射される電子ビームBを引き出す。この時、フォーカスカップ電極33・陽極4間に電圧差を与えて、電子ビームBを制御する。電子ビームBは陽極4に向かって加速し陽極4の中央の穴から取り出される。高エネルギーのX線を発生させるために、加速電圧が高くなってくると、陰極3の表面の最高電界は10kV/mm以上になる。電極の形状と電位によって電子ビームBの形状は設計されるが、細く絞ったりするためには電極間距離を短くする必要があるので、陰極表面の最高電界を10kV/mmより低くすることが出来ないのが通例である。
陽極4は、フォーカスカップ電極33と同じステンレス鋼,もしくはタングステンあるいはモリブデンで形成されている。ステンレス鋼で陽極4を形成する場合には、ホルダー部34と同様に、陽極4におけるステンレス鋼の不動態膜4aの厚みは1nm〜3数nmで厚くても6nm程度である。
ターゲット5は、電子ビームBの衝突によりX線(図1(a)では「Xray」で表記)を発生する。発生したX線は、真空容器2のX線出射窓21を通して外部に出射する。電子ビームBに対してX線をほぼ直交に出射するため、ターゲット5の表面は電子ビームBに対して傾斜面となっている。ターゲット5は、タングステンあるいはモリブデンなどで形成されている。
X線(Xray)を外部に出射するために、真空容器2にはX線出射窓21が設けられている。本実施例では、陽極4は真空容器2の一部として図示されており、真空容器2と一体化されている。もちろん、真空容器2と陽極4とを別体でそれぞれ構成してもよい。なお、陰極3および陽極4で電子銃6を構成する。電子銃6は、この発明における電子銃の一例である。
次に、フォーカスカップ電極33におけるステンレス鋼の不動態膜33aの成膜について、上述した図1と併せて図2を参照して説明する。図2(a)は、フォーカスカップ電極付近の電位分布であり、図2(b)は、フォーカスカップ電極付近の電位分布および電子ビーム軌道例である。図2では、不動態膜については図示を省略している。図2の符号Lは等電位線であり、等電位線Lの間隔が狭いところが、電界が強くなる箇所を示す。
図2に示すように、フォーカスカップ電極33と陽極4との間は狭く、等電位線Lの間隔が狭くなり、電界が集中して高電界となるので、電極の放電が起こりやすい。そこで、図1(a)および図1(b)に示すように、陽極4に対向したフォーカスカップ電極33の少なくとも外側の不動態膜33aの厚みを10nmよりも厚く形成したのが、本発明である。
好ましくは、不動態膜33aの厚みは自然酸化膜より厚い、すなわち不動態膜33aの厚みが10nm以上である。好ましくは、不動態膜33aの厚みは、10nm以上600nm以下である。より好ましくは、不動態膜33aの厚みは、300nm以上600nm以下である。不動態膜33aの厚みが大きい方が耐電圧特性の向上に有利であるが、600nmよりも大きいと成膜が困難となるからである。このような厚さの時、酸化被膜自体は無色透明であるが、光の干渉により着色したように見える特徴があり、不動態膜33aの厚みを色で判断することができる。また、不動態膜33aの厚みが増すほど、フォーカスカップ電極33の表面がより均一で、(フォーカスカップ電極33と不動態膜33aとの)密着性がより一層増し、微細なピンホールも減少するので、耐電圧性能をより一層向上させることができる。
「背景技術」の欄でも述べたように、ステンレス鋼はクロムを含有しており、ステンレス鋼の表面には、クロム酸化物からなる不動態膜が自然に形成されている。その不動態膜の厚さは1nm〜3数nmで厚くても6nmである。ホルダー部34や陽極4をステンレス鋼で形成する場合には、ホルダー部34の表面に形成される不動態膜34aや陽極4の表面に形成される不動態膜4aは自然に形成されており、それらの厚さは1nm〜3数nmで厚くても6nmである。
前記のような自然酸化膜に対して、陽極4に対向したフォーカスカップ電極33の外側での不動態膜33aの厚さを、10nm以上に形成している。不動態膜を厚みが10nm以上となるように形成するには、ステンレス鋼を処理液中に浸漬して皮膜処理(不動態化処理)を行う。ステンレス鋼を処理液中に浸漬して処理するので、低コストであるという効果をも奏する。また、好ましくは、フォーカスカップ電極33の外側の表面に対して電解研磨を行った後に、不動態膜33aを形成する皮膜処理を行う。電解研磨を行った後に皮膜処理を行うので、フォーカスカップ電極33の表面がより一層均一で、(フォーカスカップ電極33と不動態膜33aとの)密着性がより増し、耐電圧性能をより向上させることができる。
従来、ステンレス鋼を処理液中に浸漬する皮膜処理(不動態化処理)は、塩害防止やステンレス鋼の色付けの目的で行われていた。本発明では、真空中で用いられる金属電極(本実施例ではフォーカスカップ電極33)の耐電圧性能を向上させるために、上述した皮膜処理に着目した。その結果、耐電圧性能が向上し、さらに金属電極(フォーカスカップ電極33)の表面が均一になり、金属電極(フォーカスカップ電極33)・不動態膜との密着性が向上したことが、耐電圧実験から確認された。耐電圧実験については後述する。
ステンレス鋼を処理液中に浸漬する皮膜処理(不動態化処理)には、化学的方法および電気化学的方法がある。化学的方法では硝酸などの酸化性の酸にステンレス鋼を浸漬して不動態膜を形成する。電気化学的方法ではステンレス鋼に処理液中に電流を流して不動態膜を形成する。近年、フッ素系不動態膜なども開発されている(http://www.chemical-y.co.jp/pickup/2009/08/post-6.htmlを参照)。
このように形成された不動態膜33aの上に、フォーカスカップ電極33の不動態膜33aとは異なる他種の絶縁膜を形成するのも好ましい。この絶縁膜が保護膜として機能し、不動態膜33aの保護性をより向上させることができる。
なお、上述したようにフォーカスカップ電極33・陽極4間が、電界が集中して高電界となるので、陽極4に対向したフォーカスカップ電極33の少なくとも外側での不動態膜33aの厚みを厚く形成するだけでよい。したがって、フォーカスカップ電極33の他の面での不動態膜33cの厚さは、ホルダー部34の不動態膜34aや陽極4の不動態膜4aと同様に、1nm〜3数nmで厚くても6nmでもよい。このように、フォーカスカップ電極33の他の面については皮膜処理を行わなくてもよいので、皮膜処理に用いられる処理液の使用量を抑えることができるという利点がある。もちろん、フォーカスカップ電極33の他の面での不動態膜33cの厚さも、フォーカスカップ電極33の外側での不動態膜33aの厚みと同様に形成してもよい。この場合は、内面のマスク処理が不要となるので工程を省略することができる。
なお、フォーカスカップ電極33の外側での不動態膜33aの厚みを、フォーカスカップ電極33の他の面での不動態膜33cよりも厚く形成するには、フォーカスカップ電極33の他の面をマスキングした状態で処理液中に浸漬して皮膜処理を行えばよい。浸漬中においてはマスキングした面のみ不動態膜が形成されず、浸漬の前後でフォーカスカップ電極33の他の面(すなわちマスキングした面)において不動態膜が自然に形成される。
以上のように構成された金属電極(本実施例ではフォーカスカップ電極33)によれば、厚みが10nm以上である不動態膜、すなわち自然酸化膜より厚い不動態膜(本実施例では不動態膜33a)を備えた金属を、真空中で電界を発生するための金属電極としてフォーカスカップ電極33に使用する。不動態膜33aの厚みが10nm以上であるので、表面が均一で密着性に優れ、耐電圧性能を向上させることができる。
本実施例では、ステンレス鋼を処理液中に浸漬する皮膜処理(不動態化処理)を採用することにより、ステンレス鋼を処理液中に浸漬して処理するだけで済み、低コストであるという効果をも奏する。
また、本実施例の場合には、処理液中に浸漬して処理するので、電極(本実施例ではフォーカスカップ電極33)形状が平坦でなくとも、10nmよりも厚い不動態膜33aを形成することができる。したがって、従来のAの手法と比較しても高価な精密加工機や微細均一砥粒が不要である。また、Aの手法と相違して電極(フォーカスカップ電極33)を平坦にする必要がない。さらに、Aの手法と比較しても、本実施例の場合には表面が均一になるので、局所的な電界集中が起こらず、高電界でも放電しないことが耐電圧実験(図3(a)を参照)からも確認されている。
また、本実施例の場合には、不動態膜33aの厚みが10nm以上であるので従来のBの手法と比較して絶縁膜(ここでは不動態膜)の電極(フォーカスカップ電極33)への密着性が十分高く、耐熱性もある。その結果、絶縁膜(不動態膜)が電極(フォーカスカップ電極33)から剥離することもない。
また、本実施例の場合には、ステンレス鋼を処理液中に浸漬する処理することにより不動態膜33aが形成される。したがって、従来のCの手法と比較しても真空中成膜装置が不要になる。また、Cの手法と相違してステンレス鋼を処理液中にまとめて浸漬することができ、スループットが向上する。
また、本実施例の場合には、厚みが10nm以上の不動態膜を備えた金属電極(フォーカスカップ電極33)をX線管1に組み込んで用いることで、電極表面の電界が10kV/mmを超える高電圧を連続印加したとしても、高電界でも放電しないことが耐電圧実験(図3(a)を参照)からも確認されている。
[耐電圧実験]
次に、耐電圧実験の結果について、図3を参照して説明する。図3(a)は、(厚みが300nm以上600nm以下である)不動態膜を有したときの耐電圧実験(電界および真空度)の結果であり、図3(b)は、比較のための自然酸化による不動態膜を有するときの耐電圧実験(電界および真空度)の結果である。大きな放電が起こると電子衝突により真空度(圧力)が上昇するので、真空度で放電の様子を観察している。
図3(b)に示すように、自然酸化による不動態膜を有する(厚さは1nm〜3数nmで厚くても6nm程度)ときには電界が10kV/mmでは放電しない(真空度が変化しない)が、11kV/mmを超えると大きな放電が発生したことがわかる。つまり、放電すると、放出された電子が容器壁などに衝突し、吸着分子を離脱するので、真空度が上昇する。これに対して、図3(a)に示すように、(厚さが300nm以上600nm以下である)不動態膜を有したときには、電界が10kV/mmの2倍以上である23kV/mmであるにもかかわらず、ほとんど放電していない(真空度がほとんど変化していない)ことがわかる。
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した実施例では、厚みが10nm以上の不動態膜を備えた金属電極(実施例ではフォーカスカップ電極33)をX線管1に組み込んで用いたが、X線管1に限定されない。真空中で用いられる金属電極であって、10nmよりも厚い不動態膜を備えた構造であれば、金属電極単体であってもよいし、当該金属電極を用いた電子銃であってもよいし、当該金属電極を用いた電子管であってもよい。図1に示すように電子銃6は、電子ビームBを発生する陰極3と、当該陰極2からの電子ビームBを加速させる陽極4とを備えており、厚みが10nm以上の不動態膜を備えた金属電極としては、陰極3のみ、陽極4のみ、あるいは陰極3および陽極4の両方に適用してもよい。また、電子管は、図1のX線管1におけるターゲット5以外の構造(真空容器2,陰極3および陽極4)を備えているので、その説明を省略する。
(2)上述した実施例では、厚みが10nm以上の不動態膜を備えた金属電極(実施例ではフォーカスカップ電極33)はステンレス鋼で形成され、不動態膜はクロム酸化物であったが、金属電極の材料はステンレス鋼に限定されないし、不動態膜もクロム酸化物に限定されない。イオン化傾向の大きい金属であれば、非酸化性の酸(例えば塩酸)には金属自体が溶けるが、酸化性の酸(例えば硝酸)により厚みが10nm以上の不動態膜が形成されるので、イオン化傾向の大きい金属で金属電極を形成すればよい。特に、耐電圧性能を有する金属として、クロム単体やニッケルなどが例示される。ニッケルで金属電極を形成する場合には、不動態膜はニッケル酸化物(酸化ニッケル)となる。
(3)上述した実施例では、厚みが10nm以上の不動態膜を備えた金属電極(実施例ではフォーカスカップ電極33)に対して電解研磨を行った後に、クロム酸化物からなる不動態膜(図1では不動態膜33a)を形成する皮膜処理を行ったが、必ずしも電解研磨を行う必要はない。
(4)上述した実施例では、図1に示すように、不動態膜33aの上に、金属電極(実施例ではフォーカスカップ電極33)の不動態膜33aとは異なる他種の絶縁膜を備えたが、必ずしも絶縁膜を備える必要はない。
(5)上述した実施例では、厚みが10nm以上の不動態膜を備えた金属電極を陰極3(特に陰極3のフォーカスカップ電極33)として用いたが、陰極以外の電極において電界集中が起こる可能性がある、あるいは高電界中で使用する可能性がある電極であれば、陰極以外の電極に適用してもよい。例えば陽極に適用する場合には、陽極に厚みが10nm以上の不動態膜を形成する。
(6)上述した実施例では、陽極とターゲットとが別体でそれぞれ構成されていたが、陽極とターゲットとが一体化された構造であってもよい。
以上のように、この発明は、真空中で用いられるX線管に適している。
1 … X線管
2 … 真空容器
3 … 陰極
33 … フォーカスカップ電極
33a … (自然酸化膜よりも厚い)不動態膜
4 … 陽極
5 … ターゲット
6 … 電子銃
B … 電子ビーム

Claims (6)

  1. 真空容器と、
    前記真空容器内に収容され、電子ビームを発生するエミッタ電極と、
    前記真空容器内に収容され、前記エミッタ電極を取り囲むように形成されたフォーカスカップ電極と、
    前記真空容器内に収容され、前記フォーカスカップ電極と対向するように配置され、前記エミッタ電極からの電子ビームを加速させる陽極と、
    前記真空容器内に収容され、前記陽極からの電子ビームの衝突によりX線を発生するターゲットとを備え、
    前記フォーカスカップ電極の前記陽極に対向する面に厚みが10nm以上である不動態膜が形成されている、X線管
  2. 請求項1に記載のX線管において、
    前記フォーカスカップ電極と前記陽極との間には電界が集中し、前記不動態膜は耐電圧の機能を果たす、X線管。
  3. 請求項1または請求項2に記載のX線管において、
    前記フォーカスカップ電極は、ステンレス鋼、クロムまたはニッケルで形成され、前記不動態膜はクロム酸化物である、あるいは前記不動態膜はニッケル酸化物である、X線管
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線管において、
    前記不動態膜の厚みが、10nm以上600nm以下である、X線管
  5. 請求項4に記載のX線管において、
    前記不動態膜の厚みが、300nm以上600nm以下である、X線管
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載のX線管において、
    前記不動態膜の上に、前記フォーカスカップ電極の不動態膜とは異なる絶縁膜を備えた、X線管
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