JP2008140623A - 電子線源装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電子線源である陰極1と、この陰極1から電子線を引き出すために、陰極1に印加される電圧に対して正の電圧が印加される引き出し電極2と、電子線を集束する電子線レンズとを少なくとも備え、引き出し電極2が、電流を流して、抵抗加熱により引き出し電極2自体を加熱することが可能であり、加熱により引き出し電極2に吸着したガスを除去する自己加熱洗浄機能を有する電子線源装置を構成する。
【選択図】図1
Description
例えば、図9Aの平面図及び図9Bの断面図に示すように、引き出し電極52は、筒状であり、細い金属ワイヤー53に溶接した針状の電子線源(電界放出電子源)51の上を被せるようにして、電子線源装置の内部に配置されている。このような形状の引き出し電極52は、例えば、ステンレス板を板金加工して筒状に成形することによって、作製することができる。
引き出し電極52の上面の中央には、電子線源51から放出された電子線を通過させるために、開口が形成されている。
電子線源51の表面に水分子等の吸着分子が残っていると、電子線の電流量が不安定になり、電子線源51自身も壊れやすくなって、使用寿命が短くなる。
このガス出しは、電子線源51が溶接されている細い金属ワイヤー53に通電して加熱する方法で行っている。
そこで、電流量の揺らぎの増加を観察すれば、電子線源の表面の清浄度がわかるので、電流量の揺らぎを測定して、電子線源の状態を把握することができる(例えば、非特許文献2参照)。
そして、この引き出し電極に、電子線源から放出された電子線が当たると、吸着分子が脱離される。
引き出し電極と電子線源の先端との距離は、数mm以下であるため、脱離された分子の一部が電子線源に吸着して、電子線源及び電子線源装置にトラブルを起こす。
しかし、電子線源を搭載している従来の電子線源装置では、引き出し電極のガス出し機構を備えていなかった。
従って、電流量の揺らぎの測定には、真空外から真空内の電子線源までの配線を、一本の同軸線にする必要がある。
この本発明の他の電子線源装置において、自己加熱洗浄機能を有する電極は、引き出し電極及びサプレッサ電極、引き出し電極のみ、サプレッサ電極のみ、のいずれの構成も可能である。
また、自己加熱洗浄機能を有する電極(引き出し電極又はサプレッサ電極)を、幅1mm以下であり、厚さ0.02mm以下である構成とすることが可能である。
また、自己加熱洗浄機能を有する電極(引き出し電極又はサプレッサ電極)を、中央部分に略円形のリング状の部分を有する構成とすることが可能である。
また、自己加熱洗浄機能を有する電極(引き出し電極又はサプレッサ電極)を、抵抗加熱により1500℃以上に加熱して、熱電子を放出することが可能であり、この熱電子の衝突によって、陰極と電子線レンズと他の部品とのうち少なくともいずれかに吸着したガスを除去することが可能である構成としてもよい。
また、上述の本発明の他の電子線源装置によれば、引き出し電極及びサプレッサ電極の少なくとも一方が、電流を流して、抵抗加熱により引き出し電極自体を加熱することが可能であり、加熱により引き出し電極に吸着したガスを除去する自己加熱洗浄機能を有することにより、抵抗加熱によって自己加熱洗浄機能を有する電極に吸着したガスを除去して、この電極の表面を清浄化することができる。
これにより、電流量が安定した、信頼性の高い電子線源装置を実現することができる。
これにより、自己加熱洗浄機能の効果を高めることができると共に、電極から熱電子を発生させてこの熱電子の衝突によって、陰極や電子線レンズや他の部品(電極その他)に対しても吸着ガスの除去を行うことも可能になる。
図1Aは、電子線源装置の要部、即ち引き出し電極付近の平面図を示す。図1Bは、引き出し電極付近の断面図を示す。
本実施の形態は、電子線源、引き出し電極、そして電子線が当たる部品のガス吸着問題、そして電流の揺らぎ測定問題を解決するために、新型の引き出し電極を構成した場合である。
そして、この引き出し電極2は、そのリング状の部分2Aの開口の中心に、電子線源(陰極)1が対向するように、かつ、電子線源(陰極)1の先端の少し上方の高さで水平に配置されている。
電子線レンズは、通常、静電場を印加する構成であるが、静電場と静磁場とを印加する構成としてもよい。
(1)引き出し電極2に残留している吸着ガス量を減らすために、引き出し電極2の面積を小さくする。
そのため、リング状の部分2A及び棒状の部分2Bの幅を小さく、かつ電極2の厚さを薄くしている。特にリング状の部分2Aは、棒状の部分2Bよりも幅を細くして表面積を小さくしている。
(2)真空中で引き出し電極2を1500℃以上に加熱することが可能な構成とする。引き出し電極2を1500℃以上に加熱すると、吸着ガスの殆どが脱離するため、引き出し電極2の表面が清浄になる。
加えて、引き出し電極2から熱電子が放出され、その熱電子を電子線源1と電子線源1の周辺の電子線レンズや電極等に衝突させて、それらに吸着した分子をも除去することが可能な構成とする。
これにより、ガスを脱離させた後に、電子線源1から電子線を取り出す際の、電子線によるガス分子の放出を防ぐこともできる。
(3)引き出し電極2の加熱により、上述のように引き出し電極2から放出された熱電子を、さらに加速して電子線源1に衝突させることにより、電子線源1を1000℃以上に加熱する構成とする。
これにより、電子線源1を通電加熱しなくても、電子線源1を加熱して吸着ガスの除去を行うことが可能になるため、電子線源1への通電加熱手段が不要となり、1本の同軸ケーブル3だけで電子線源1を配線することが可能になる。また、1本の同軸ケーブル3だけで電子線源1を配線することにより、電子線源1の電流量の測定を、外来ノイズの影響を抑制して、安定して行うことが可能になる。
(4)上述した(1)〜(3)の3つの条件を満たしながら、従来の引き出し電極で形成される電界と同じ形態の電界が、電子線源1周辺に形成されるように構成する。
楕円形や他の形状も可能であるが、電子線源1の周辺に形成される電界の歪みをなくすためには、略円形にする必要がある。
これに対して、本実施の形態の引き出し電極2では、両側の棒状の部分2Bにそれぞれ異なる電位を与えれば、電位差により引き出し電極2内を電流が流れ、リング状の部分2Aを抵抗加熱することができる。
これにより、引き出し電極2から熱を発生させて、引き出し電極2に吸着しているガス分子を容易に脱離させることができる。
より好ましくは、例えば、2000℃以上の加熱温度が可能となるように、タングステン(融点3422℃)やタンタル(融点3290℃)等の高融点金属を、引き出し電極2に用いる。
本例では、図2に示すように、引き出し電極2の長さを18mm、棒状の部分2Bの幅を1mm、リング状の部分2Aの内部の開口の直径を5mm、外部の直径を6mmとしている。リング状の部分2Aの開口の形状は、略円形の八角形状となっている。
そして、例えば、厚さ0.015mmのタングステン箔をレーザ加工して、図2に示す引き出し電極2を作製することができる。
このような設計寸法とすると、電子が主に当たる中心部分のリング状の部分2Aは、9mm2以下の狭い面積となるため、ガス分子の吸着量は、従来の板状の引き出し電極(図9の52)よりも、極めて少ない量となると考えられる。
ここで、実際に引き出し電極2を作製して、その加熱テストを行った。
図2に示した設計例の引き出し電極2を作製した。
また、電子線源1は、<111>タングステン単結晶ワイヤーにより作製した。
これら作製した引き出し電極2及び電子線源1を、図1A及び図1Bに示す位置関係として、1×10−6Pa程度の高真空の雰囲気内に設置した。
そして、引き出し電極2に電流を流して、引き出し電極2及び電子線源1の温度をパイロメータで測定した。
引き出し電極2に流す電流量を変えて、それぞれ、温度の測定を行った。
また、温度の測定結果を、図4Aに示す。図4Aは、通電電流と引き出し電極2の温度との関係を示している。
そして、4.5Aの通電電流で、引き出し電極2は1500℃以上になる。このとき、引き出し電極2に−50V以上の負の電位をかけると、引き出し電極2から10mA以上の多量の熱電子が電極から放出される。
測定結果として、引き出し電極2の温度と熱放出電流の量との関係を、図4Bに示す。
熱電子の衝突により温度が上昇した、電子線源1の温度を測定した。通電電流の変化によって引き出し電極2の温度と熱放出電流の量とを変化させて、同様に電子線源1の温度を、パイロメータで測定した。
測定結果として、熱放出電流の量と電子線源1の温度との関係を、図4Cに示す。
本発明による新型の引き出し電極によって、電子線源(陰極)の加熱と、歪みのない電子線の引き出しとを、実現できる効果を実際に確認するため、以下の実験を行った。
これらの電子線源1及び引き出し電極2を用いて、図5Aに示す電界電子顕微鏡(FEM)を構成した。また、図5Aの要部(電子線源1付近)の拡大図を、図5Bに示す。
図5A中、21はターボ分子ポンプ、22はイオンポンプ及びNEG(非蒸発型ゲッターポンプ)、23は液体窒素タンク、24はチタン昇華ポンプを、それぞれ示している。
また、図5Bに示すように、電子線源1から放出され、引き出し電極2の開口を通過した電子線11が、前方に配置した蛍光板12に当たるように、配置した。引き出し電極2と蛍光板12との距離は、約3cmとした。
電子線源1は、図1Bに示したように、1本の同軸ケーブル3で配線して装着した。
この状態で、以下のように、実験を行った。
まず、引き出し電極2を通電加熱して、引き出し電極2を熱電子線を放出する温度まで上昇させた。そして、引き出し電極2から、電子線源1と蛍光板12とを含むFEMの部品に、20mAの熱電子線を衝突させて、各部品の吸着ガス分子を洗浄した。
その後、引き出し電極2に+1.5kV程度の電位をかけて、電子線源1から電子線11を引き出すと共に、蛍光板12に+3kV程度の電位をかけて、電子線11のパターンを蛍光板12で観察した。
蛍光板12で観察されたパターンを、図6に示す。
図6に示す清浄なパターンが得られることから、電子線源1に20mAの熱電子線を衝突させると、電子線源1の先端温度が2000℃以上に上がり、図1〜図2に示した引き出し電極2が、電子線源1の加熱洗浄の機能を充分に果たしていることがわかる。
この電子線11の電流量の変化を観察して、電流量が減って安定するまでの時間を測定することにより、電子線源1に吸着するガス分子の吸着量を見積もることができる。
そこで、タングステン<111>単結晶電子線源1を加熱洗浄した後に、印加電圧一定のもとで電子線11を放出させ続けて、放出電流の量の時間変化を測定した。
測定結果として、電子線11の放出時間と電子線11の電流量との関係を、図7に示す。
これに対して、図7に示すように、本発明の引き出し電極2を用いて洗浄した電子線源1からの電流量は、1000分以上の時間で安定するので、電子線源1に付着するガス分子の吸着量が極めて少ないことがわかる。
以上のことから、本発明の引き出し電極は、引き出し電極自身はもちろん、電子線源や周辺部品の吸着分子洗浄機能も果たしていることがわかる。
電子線源装置においては、電子線源から放出された電子線を広がりすぎないように、集束させる等の目的で、引き出し電極とは別にサプレッサ電極を設けた構成とすることもある。このサプレッサ電極には、陰極に印加される電圧に対して負の電圧が印加される。
本発明は、このように、引き出し電極にさらにサプレッサ電極を備えた電子線源装置にも適用することが可能であり、引き出し電極及びサプレッサ電極の少なくとも一方(一方のみ又は両方)に、加熱により電極に吸着したガスを除去する自己加熱洗浄機能を持たせることが可能である。
これに対して、本実施の形態では、サプレッサ電極4を、先の実施の形態の引き出し電極2と同様に、中央の略円形のリング状(ドーナツ状)の部分4Aと、その左右の棒状の部分4Bとからなる構成とする。
なお、電子線源1、引き出し電極2、同軸ケーブル3の各部品は、先の実施の形態と同様の構成となっている。
また、サプレッサ電極2のリング状の部分4Aは、引き出し電極2のリング状の部分2Aよりも、少し小さい径となっている。
自己加熱洗浄機能を持たせる電極には、電流を流すことができるように、棒状の部分2B,4Bの両端に電位差を与えることが可能な電源の接続状態とする。
例えば、サプレッサ電極4のみに自己加熱洗浄機能を持たせる場合には、サプレッサ電極4の棒状の部分4Bの両端に電位差を与えることができるように接続し、引き出し電極2の棒状の部分2Bの両端には同じ電位を与えるように接続する。
より好ましくは、例えば、2000℃以上の加熱温度が可能となるように、タングステン(融点3422℃)やタンタル(融点3290℃)等の高融点金属を、サプレッサ電極4に用いる。
なお、サプレッサ電極4に自己加熱洗浄機能を持たせないで、引き出し電極2のみに自己加熱洗浄機能を持たせる場合には、サプレッサ電極4の材質に、高融点金属以外の金属を使用することが可能である。
これにより、電子線源1を通電加熱しなくても、電子線源1を加熱して吸着ガスの除去を行うことが可能になるため、電子線源1への通電加熱手段が不要となり、1本の同軸ケーブル3だけで電子線源1を配線することが可能になる。また、1本の同軸ケーブル3だけで電子線源1を配線することにより、電子線源1の電流量の測定を、外来ノイズの影響を抑制して、安定して行うことが可能になる。
特に、電子顕微鏡に適用した場合には、高性能の電子顕微鏡を構成することができる。
Claims (10)
- 電子線源である陰極と、
前記陰極から電子線を引き出すために、前記陰極に印加される電圧に対して正の電圧が印加される引き出し電極と、
前記電子線を集束する電子線レンズとを少なくとも備え、
前記引き出し電極が、電流を流して、抵抗加熱により前記引き出し電極自体を加熱することが可能であり、加熱により前記引き出し電極に吸着したガスを除去する自己加熱洗浄機能を有する
ことを特徴とする電子線源装置。 - 前記引き出し電極が、タングステン又はタンタルから成ることを特徴とする請求項1に記載の電子線源装置。
- 前記引き出し電極が、幅1mm以下であり、厚さ0.02mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子線源装置。
- 前記引き出し電極が、中央部分に、前記電子線を通過させる略円形のリング状の部分を有することを特徴とする請求項1に記載の電子線源装置。
- 前記引き出し電極が、前記抵抗加熱により1500℃以上に加熱して、熱電子を放出することが可能であり、前記熱電子の衝突によって、前記陰極と前記電子線レンズと他の部品とのうち少なくともいずれかに吸着したガスを除去することが可能な構成であることを特徴とする請求項1に記載の電子線源装置。
- 電子線源である陰極と、
前記陰極から電子線を引き出すために、前記陰極に印加される電圧に対して正の電圧が印加される引き出し電極と、
前記陰極から引き出された前記電子線を集束させるために、前記陰極に印加される電圧に対して負の電圧が印加されるサプレッサ電極と、
前記電子線を集束する電子線レンズとを少なくとも備え、
前記引き出し電極及び前記サプレッサ電極の内の少なくとも一方の電極が、電流を流して、抵抗加熱により電極自体を加熱することが可能であり、加熱により電極に吸着したガスを除去する自己加熱洗浄機能を有する
ことを特徴とする電子線源装置。 - 前記自己加熱洗浄機能を有する電極が、タングステン又はタンタルから成ることを特徴とする請求項6に記載の電子線源装置。
- 前記自己加熱洗浄機能を有する電極が、幅1mm以下であり、厚さ0.02mm以下であることを特徴とする請求項6に記載の電子線源装置。
- 前記自己加熱洗浄機能を有する電極が、中央部分に略円形のリング状の部分を有することを特徴とする請求項6に記載の電子線源装置。
- 前記自己加熱洗浄機能を有する電極が、前記抵抗加熱により1500℃以上に加熱して、熱電子を放出することが可能であり、前記熱電子の衝突によって、前記陰極と前記電子線レンズと他の部品とのうち少なくともいずれかに吸着したガスを除去することが可能な構成であることを特徴とする請求項6に記載の電子線源装置。
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