JP6021195B2 - 半導電性ローラ - Google Patents
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Description
現像ローラとしてはトナーの微細化、均一化、球形化やあるいは重合トナーへの移行等の流れに対応してトナーに高い帯電性を付与するとともに、トナーの付着を生じることなく効率的に静電潜像をトナー像に現像するために、ローラ抵抗値が例えば温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下で108Ω以下に調整された半導電性ローラを用いるのが有効である。
例えば半導電性ローラをできるだけ生産性良く低コストで製造するとともにその耐久性や圧縮永久ひずみ特性等を向上するために、当該半導電性ローラは、非多孔質でかつ単層構造に形成されるのが一般的である。
しかし、かかる半導電性ローラを現像ローラとして使用すると形成画像の画像濃度が低下するという問題がある。これはエピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムがトナーに対する高い付着性を有することが原因である。
しかし高硬度の充填剤(フィラー)でもある酸化チタンを上記の機能が十分に得られる量含有させると半導電性ローラの硬度が上昇して別の新たな問題を生じる。すなわちトナーの劣化を生じやすくなって画像耐久性が低下したり、感光体の表面に半導電性ローラを圧接させた際のニップ幅が狭くなって形成画像の画質が低下したりするおそれがある。
1回の画像形成には画像形成装置の現像部に収容されたトナーのごく一部しか使用されず、残りの大部分のトナーは現像部内を繰り返し循環する。そのため現像部内に設けられてトナーと繰り返し接触する現像ローラがトナーにどれだけダメージを与えるか、あるいは与えないかが画像耐久性を向上する上での大きな鍵となる。画像耐久性が低下すると形成画像の黒ベタ部分に白縦筋を生じたり、余白部分にカブリを生じたりして画質が低下する。
イオン導電性の導電剤としては過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウム、長鎖アルキル4級アンモニウム過塩素酸塩等が例示されている。
しかしこの構成では、かかる低いローラ抵抗値を確保するためにゴム分の総量に対して多量のイオン導電剤を含有させなければならない。
特許文献3では、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、NBR、およびSBRの混合物からなり、電子導電性の導電剤としての導電性カーボンブラックを含有させた弾性層の外周面に、フッ素系材料からなる表面層を積層した2層構造の半導電性ローラが提案されている。
そしてかかる構成によれば、
・ SBRを併用する分、トナーの付着の原因となるエピクロルヒドリンゴムの量を少なくして、当該トナーの付着による画像濃度の低下等を生じにくくできる、
・ そのため酸化チタン等の配合を省略したり、従来に比べて配合割合を少なくしたりできる分、半導電性ローラを柔軟化してトナーの画像耐久性を向上できる、
といった効果が得られるとされている。
しかし、かかる半導電性ローラを現像ローラとして、例えば画像形成の速度が25枚/分以上といった中高速の画像形成装置(中高速機)に組み込んで使用した場合には、装置の電源を切ってしばらくの間、例えば3日間以上静置したのち再び電源を投入して画像形成を再開すると、再開直後の特に1枚目の形成画像の黒ベタ部の画像濃度が大きく低下するという問題を生じる場合がある。
ところが半導電性ローラが組み込まれた画像形成装置内の環境は常に一定ではなく、例えば先に説明したようにしばらくの間静置したのち電源を投入すると、静置されていた環境から装置のウォームアップを経て温度、湿度が徐々に上昇し、それに伴って半導電性ローラのローラ抵抗値が徐々に低下する。
そのため特に冬場などの低温で低湿の環境で画像形成装置を静置後には、電源投入後、装置内の温度、湿度が十分に上昇する前の、半導電性ローラのローラ抵抗値が通常運転時よりも高い値を示す状態で画像形成が再開されてしまい、先述したように特に1枚目の形成画像の黒ベタ部の画像濃度が大きく低下するといった問題を生じやすくなる。
しかしその場合には、トナーの帯電に寄与するゴム組成物自体の組成が異なったものになるため、例えば現像ローラとして使用した際のトナー帯電量や搬送量が変動するという問題がある。またSBRを併用する効果が不十分になって、トナーの付着とそれにともなう画像濃度の低下とを生じやすくなるおそれもある。
そのため本発明によれば、かかるイオン塩とエピクロルヒドリンゴムとを併用することで導電性カーボンブラックの配合を省略したり、従来に比べて配合割合を少なくしたりできることと相まって、非多孔質でかつ単層構造に形成された半導電性ローラの硬さなどの機械的特性が大きく変動するのを防止できる。
その上本発明によれば、ゴム組成物のその他の組成はほぼ一定に維持してイオン塩の配合割合のみを上述の範囲で調整することにより、トナー帯電量、搬送量といった電気的特性を大きく変化させることなく、またトナー付着による画像濃度の低下等を生じることなしに、特に低温、低湿での半導電性ローラのローラ抵抗値を、現像ローラ等として組み込む画像形成装置に最適な値に調整できるとともに、環境による上記ローラ抵抗値の変動を抑制できる。
《ゴム組成物》
〈ゴム分〉
ゴム分としては、上記のように少なくともSBRとエピクロルヒドリンゴムを併用する。
このうちSBRとしては、スチレンと1,3−ブタジエンとを乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成される種々のSBRがいずれも使用可能である。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
これらSBRの1種または2種以上を使用できる。
SBRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の10質量部以上、特に30質量部以上であるのが好ましく、80質量部以下、特に70質量部以下であるのが好ましい。
一方、SBRの配合割合が上記の範囲を超える場合には、相対的にエピクロルヒドリンゴムの量が少なくなるためローラ抵抗値が上昇して、現像ローラとして使用した際にトナー帯電量や搬送量が低下するおそれがある。
(エピクロルヒドリンゴム)
エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、およびエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
かかる両共重合体において、エチレンオキサイド含量はいずれも30モル%以上、特に50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは半導電性ローラのローラ抵抗値を下げる働きをする。しかしエチレンオキサイド含量がこの範囲未満ではかかる働きが十分に得られないため、半導電性ローラのローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
ECOにおいて、エピクロルヒドリン含量はエチレンオキサイド含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は20モル%以上であるのが好ましく、70モル%以下、特に50モル%以下であるのが好ましい。
アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して半導電性ローラのローラ抵抗値を低下させる働きをする。しかしアリルグリシジルエーテル含量が上記の範囲未満ではかかる働きが得られないため、半導電性ローラのローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
またGECOとしては、上で説明した3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体のほかに、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではかかる変性物もGECOとして使用可能である。
エピクロルヒドリンゴムの配合割合がこの範囲以上では現像ローラとして使用した際にトナーが付着しやすくなって、形成画像の画像濃度が低下する。
なおエピクロルヒドリンゴムの配合割合は、上記の範囲でもゴム分の総量100質量部中の5質量部以上、特に10質量部以上であるのが好ましい。
〈他のゴム分〉
ゴム分としては、さらにNBR、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリルゴム(ACM)、およびEPDMからなる群より選ばれた少なくとも1種を併用してもよい。
このうちNBRとしては、アクリロニトリル含量によって分類される低ニトリルNBR、中ニトリルNBR、中高ニトリルNBR、高ニトリルNBR、および極高ニトリルNBRがいずれも使用可能である。
またNBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
(CR)
CRは、例えばクロロプレンを乳化重合させて合成され、その際に用いる分子量調整剤の種類によって硫黄変性タイプと非硫黄変性タイプに分類されるが、本発明ではこのいずれのCRも使用可能である。
また非硫黄変性タイプのCRはメルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ等に分類される。
このうちメルカプタン変性タイプのCRは、例えばn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調整剤として使用して、硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。またキサントゲン変性タイプのCRは、アルキルキサントゲン化合物を分子量調整剤として使用して、硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。
本発明ではいずれのタイプのCRを用いてもよいが、中でも非硫黄変性タイプでかつ結晶化速度が遅いタイプのCRの1種または2種以上が好ましい。
さらにCRとしては、クロロプレンと他の共重合成分との共重合ゴムを用いてもよい。
(BR)
BRとしては、架橋性を有する種々のBRがいずれも使用可能である。
またBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
これらBRの1種または2種以上を使用できる。
ACMとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステルを主成分とし、さらにアクリロニトリル、2−クロロエチルビニルエーテル等の含ハロゲン系モノマーやグリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチリデンノルボルネン等を共重合させて合成される種々のACMが使用可能である。
(EPDM)
EPDMとしては、エチレンとプロピレンに少量の第3成分(ジエン分)を加えることで主鎖中に二重結合を導入した種々のEPDMが、いずれも使用可能である。EPDMとしては、第3成分の種類や量の違いによる様々な製品が提供されている。代表的な第3成分としては、例えばエチリデンノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン(1,4−HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられる。重合触媒としてはチーグラー触媒を使用するのが一般的である。
これらEPDMの1種または2種以上を使用できる。
(配合割合)
上記他のゴム分としては特にCRが好ましい。CRは、先述した半導電性ローラのローラ抵抗値、および現像ローラとして使用した際のトナー帯電量や搬送量を微調整する機能を有する上、半導電性ローラの柔軟性を高めてトナーの画像耐久性を向上する機能をも有している。
CRの配合割合がこの範囲未満では、上述したCRを配合することによる効果が十分に得られないおそれがある。
一方、CRの配合割合が上記の範囲を超える場合には、相対的にエピクロルヒドリンゴムの量が少なくなるためローラ抵抗値が上昇して、現像ローラとして使用した際にトナー帯電量や搬送量が低下するおそれがある。
イオン塩のもとになる、分子中にフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンとしては、例えばフルオロアルキルスルホン酸イオン、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン等の1種または2種以上が挙げられる。
またビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオンとしては、例えば(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、(C4F9SO2)(CF3SO2)N−、(FSO2C6F4)(CF3SO2)N−、(C8F17SO2)(CF3SO2)N−、(CF3CH2OSO2)2N−、(CF3CF2CH2OSO2)2N−、(HCF2CF2CH2OSO2)2N−、[(CF3)2CHOSO2]2N−等の1種または2種以上が挙げられる。
また、上記陰イオンとともにイオン塩を構成する陽イオンとしては、例えばナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属の陽イオン、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の第2族元素の陽イオン、遷移元素の陽イオン、両性元素の陽イオン、下記式(1)で表される第4級アンモニウム陽イオン、および下記式(2)で表される陽イオン等の1種または2種以上が挙げられる。
特にR1〜R4のうちの3つがメチル基、その他の1つが炭素数4〜20、好ましくは6〜20のアルキル基またはその誘導体からなるトリメチルタイプの第4級アンモニウム陽イオンが好ましい。
中でもR5、R6としては、電子供与性を有するため窒素原子上の正電荷を安定化しやすいメチル基あるいはエチル基が好ましい。これにより陽イオンとしての安定度を高め、解離度を高くして導電性付与性能に優れたイオン塩を形成できる。
中でも半導電性ローラのイオン導電性を向上して、特に低温、低湿でのローラ抵抗値を、現像ローラ等として組み込む画像形成装置に最適な値に調整するとともに、環境による上記ローラ抵抗値の変動を抑制する効果の点で、(CF3SO2)2NLi〔リチウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〕、(CF3SO2)2NK〔カリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〕が好ましい。
イオン塩の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.05質量部以上、5質量部以下である必要がある。
一方、イオン塩の配合割合が上記の範囲を超える場合には、過剰のイオン塩が半導電性ローラの外周面にブリードし、感光体等を汚染して形成画像の画質を低下させるという問題を生じる。また過剰のイオン塩を配合することで半導電性ローラの製造コストが高くつくという問題もある。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、イオン塩の配合割合は、上記の範囲でもゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
ゴム組成物には、ゴム分を架橋させるための架橋成分を含有させる。架橋成分としては架橋剤、促進剤、促進助剤等が挙げられる。
このうち架橋剤としては、例えば硫黄系架橋剤、チオウレア系架橋剤、トリアジン誘導体系架橋剤、過酸化物系架橋剤、各種モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。
チオウレア系架橋剤としては、例えばテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレア、(CnH2n+1NH)2C=S〔式中、nは1〜10の数を示す。〕で表されるチオウレア等の1種または2種以上が挙げられる。
なお架橋剤としては、硫黄とチオウレア類とを併用するのが好ましい。
かかる併用系において硫黄の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
また硫黄の配合割合が上記の範囲を超える場合には架橋後の圧縮永久ひずみが大きくなったり、過剰の硫黄が半導電性ローラの外周面にブルームして感光体等を汚染したりするおそれがある。
チオウレア類を上記の割合で硫黄と併用することにより、相対的に硫黄の割合を先述した範囲でも少なくして半導電性ローラの圧縮永久ひずみを小さくできる。
しかしチオウレア類の配合割合が上記の範囲未満では、当該チオウレア類を硫黄と併用することによるこれらの効果が十分に得られないおそれがある。
促進剤としては、例えば消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、下記の有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
個々の促進剤の配合割合は種類によって任意に設定できるが、通常は個別に、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.2質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
促進助剤の配合割合は、個別に、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば受酸剤、可塑剤、加工助剤、劣化防止剤、充填剤、スコーチ防止剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等が挙げられる。
このうち受酸剤は、ゴム分の架橋時にエピクロルヒドリンゴムやCRから発生する塩素系ガスが半導電性ローラ内に残留したり、それによって架橋阻害や感光体の汚染等を生じたりするのを防止するために機能する。
また、ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用するとより高い受酸効果を得ることができ、感光体の汚染をより一層確実に防止できる。
配合割合がこの範囲未満では、受酸剤を配合することによる効果が十分に得られないおそれがある。また範囲を超える場合には、架橋後の半導電性ローラの硬さが上昇するおそれがある。
可塑剤および/または加工助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以下であるのが好ましい。例えば画像形成装置への装着時や運転時に感光体の汚染を生じたりするのを防止するためである。かかる目的に鑑みると、可塑剤のうち極性ワックスを使用するのが特に好ましい。
このうち酸化防止剤は、半導電性ローラのローラ抵抗値の環境依存性を低減するとともに、連続通電時のローラ抵抗値の上昇を抑制する働きをする。酸化防止剤としては、例えばジエチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)NEC−P〕、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラックNBC〕等が挙げられる。
充填剤を配合することにより、半導電性ローラの機械的強度等を向上できる。
充填剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、25質量部以下、特に20質量部以下であるのが好ましい。
導電性カーボンブラックとしてはHAFが好ましい。HAFはゴム組成物中に均一に分散できるため、半導電性ローラにできるだけ均一な電子導電性を付与できる。
導電性カーボンブラックの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり1質量部以上、特に3質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましい。
スコーチ防止剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
共架橋剤としては、例えばメタクリル酸エステルや、あるいはメタクリル酸またはアクリル酸の金属塩等に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマ類、あるいはジオキシム等の1種または2種以上が挙げられる。
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、
(c) (a)(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、
(d) (a)〜(c)の金属塩、
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、
(g) トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの、複素環を有するビニル化合物、
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルステロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン
等の1種または2種以上が挙げられる。
モノカルボン酸類のエステルとしては、例えば
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ぺンチル(メタ)アクリレート、i−ぺンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル;
べンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの、芳香族環を有する(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの、各種官能基を有する(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;
等の1種または2種以上が挙げられる。
《半導電性ローラ》
図1は、本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
シャフト3は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成されている。
半導電性ローラ1の外周面4には、図中に拡大して示すように酸化膜5を設けてもよい。
しかも酸化膜5は、例えば酸化性雰囲気中で紫外線の照射等をするだけで簡単に形成できるため、半導電性ローラ1の生産性が低下したり製造コストが高くついたりするのを抑制できる。ただし酸化膜5は形成しなくてもよい。
次いで架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させ、冷却したのち所定の外径となるように研磨する。
シャフト3は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で通孔2に挿通して固定できる。
シャフト3は、先に説明したように通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入するか、あるいは導電性を有する熱硬化性接着剤を介して、二次架橋前の筒状体の通孔2に挿通すればよい。
また前者の場合は、圧入と同時に電気的な接合と機械的な固定が完了する。
酸化膜5は、先に説明したように半導電性ローラ1の外周面4に紫外線を照射して形成するのが、簡単で効率よく形成できるため好ましい。すなわち半導電性ローラ1の外周面4を構成するゴム組成物それ自体を、所定波長の紫外線を所定時間照射して酸化させることで酸化膜5が形成される。
照射する紫外線の波長は、ゴム組成物を効率よく酸化させて、先に説明した機能に優れた酸化膜5を形成することを考慮すると100nm以上であるのが好ましく、400nm以下、特に300nm以下であるのが好ましい。また照射の時間は30秒間以上、特に1分間以上であるのが好ましく、30分間以下、特に15分間以下であるのが好ましい。
非多孔質でかつ単層構造の半導電性ローラ1のショアA硬さは60以下、特に50以下であるのが好ましい。
ショアA硬さがこの範囲を超える半導電性ローラ1は柔軟性が不足し、広いニップ幅を確保してトナーの現像効率を向上する効果や、トナーへのダメージを低減して画像耐久性を向上する効果が十分に得られないおそれがある。
また半導電性ローラ1は、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿条件下で測定される、印加電圧1000Vでのローラ抵抗値RNNが104Ω以上、特に106.5Ω以上であるのが好ましく、108Ω以下であるのが好ましい。
またローラ抵抗値RNNが上記の範囲を超える高抵抗の半導電性ローラ1では、十分な画像濃度を有する画像を形成できないという問題を生じる。
《ローラ抵抗値の測定方法》
図2は、半導電性ローラ1のローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
図1、図2を参照して、本発明では半導電性ローラ1のローラ抵抗値を上記3種の環境下、印加電圧1000Vの条件で、下記の方法によって測定した値でもって表すこととする。
また半導電性ローラ1のシャフト3とアルミニウムドラム6との間に直流電源8、および抵抗9を直列に接続して計測回路10を構成する。直流電源8は(−)側をシャフト3、(+)側を抵抗9と接続する。抵抗9の抵抗値rは100Ωとする。
検出電圧Vと印加電圧E(=1000V)とから、半導電性ローラ1のローラ抵抗値Rは、基本的に式(1′):
R=r×E/(V−r) (1′)
によって求められる。ただし式(1′)中の分母中の−rの項は微小とみなすことができるため、本発明では式(1):
R=r×E/V (1)
によって求めた値でもって半導電性ローラ1のローラ抵抗値とすることとする。測定の条件は、先に説明したように温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、温度10℃、相対湿度20%の低温低湿環境下、ならびに温度30度、相対湿度80%の高温高湿環境下である。
(ゴム組成物の調製)
ゴム分として、SBR〔JSR(株)製のJSR1502、非油展、スチレン含量:23.5%〕50質量部、GECO〔ダイソー(株)製のエピオン(登録商標)301、EO/EP/AGE=73/23/4(モル比)〕20質量部、およびCR〔昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT〕30質量部を配合した。ゴム分の総量100質量部あたりの、SBRの配合割合は50質量部、GECOの配合割合は20質量部であった。
イオン塩I:カリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
粉末硫黄:硫黄系架橋剤
チオウレア類:エチレンチオウレア〔2−メルカプトイミダゾリン、川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)22−S〕
促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド〔チアゾール系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)DM〕
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔チウラム系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラーTS〕
促進剤DT:1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔グアニジン系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラーDT〕
導電性充填剤:導電性カーボンブラック〔電気化学工業(株)製のデンカブラック(登録商標)〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT−4A(登録商標)−2〕
(半導電性ローラの製造)
調製したゴム組成物を押出成形機に供給して外径φ17.0mm、内径φ6.2mmの筒状に押出成形した後、この筒状体を外径φ7.5mmの架橋用の仮のシャフトに装着して加硫缶内で160℃×1時間架橋させた。
イオン塩Iを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
〈実施例2〜6、比較例2〉
イオン塩Iの配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり0.10質量部(実施例2)、0.20質量部(実施例3)、1.00質量部(実施例4)、2.00質量部(実施例5)、5.00質量部(実施例6)、および6.00質量部(比較例2)としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
イオン塩Iに代えて、リチウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(イオン塩II)をゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部配合したこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、半導電性ローラを製造した。
〈ローラ抵抗値〉
実施例、比較例で製造した半導電性ローラの低温低湿環境下(LL、温度10℃、相対湿度20%)、常温常湿環境下(NN、温度23℃、相対湿度55%)、および高温高湿環境下(HH、温度30°、相対湿度80%)でのローラ抵抗値を、それぞれ先に説明した測定方法によって測定した。なお表2、3では、各ローラ抵抗値をlogR値で示している。
◎:log R値の差は1.2以下であった。
○:log R値の差は1.2を超え、1.3以下であった。
×:log R値は1.4を超えていた。
〈実機試験〉
実施例、比較例で製造した半導電性ローラを、市販のレーザープリンタ用の、新品のカートリッジ(トナーを収容したトナー容器、感光体、および感光体と接触させた現像ローラが一体になったもの)の既設の現像ローラと交換して下記の試験を実施した。なおレーザープリンタは、プラス帯電の粉砕タイプの非磁性1成分トナーを使用するもので、印字速度は毎分26枚(26ppm)、5%濃度の画像を連続的に形成可能な設定枚数(プリンタライフ)は2600枚である。
上記新品のカートリッジを初期状態のレーザープリンタに装着し、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、ウォーミングアップとして5%濃度の画像を50枚連続して画像形成した直後に黒ベタ画像を1枚画像形成した。
形成した黒ベタ画像上の任意の5点で、反射濃度計〔TECHKON社製のテシコンRT120とライトテーブルLP20の組み合わせ〕を用いて画像濃度を測定し、その平均値を求めて、下記の基準で定常状態での画像濃度を評価した。
△:画像濃度は1.7以上、1.9未満であった。
×:画像濃度は1.7未満であった。
(再開時の画像濃度)
上記画像濃度を測定後のレーザープリンタの電源を切って温度10℃、相対湿度20%の低温低湿環境下で3日間以上静置したのち再び電源を投入し、その直後に黒ベタ画像を1枚画像形成した。
○:画像濃度は1.9以上であった。
△:画像濃度は1.7以上、1.9未満であった。
×:画像濃度は1.7未満であった。
実施例、比較例で製造した半導電性ローラを上記と同じ新品のカートリッジの既設の現像ローラと交換してアルミ袋に密封し、ギヤオーブンを用いて50℃で5日間養生させた後、アルミ袋から取り出して温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下で8時間養生させた。
○:1枚目から20枚目までニップ跡は全く見られなかった。
△:1枚目から20枚目までの間、薄いニップ跡が連続して見られた。あるいは1枚目に濃いニップ跡が見られたが、20枚目までの間に解消された。
(製造コスト)
各実施例、比較例の半導電性ローラを製造するのに要した製造コストを、下記の基準で評価した。
◎:実施例1の半導電性ローラを製造するのに要した製造コスト(「基準コスト」とする)の10%増以内のコストで製造できた。
△:基準コストの20%増を超え、かつ50%増以内のコストで製造できた。
×:基準コストの50%増を超える製造コストを要した。
以上の結果を表2、表3に示す。
さらに実施例3、7の結果より、イオン塩としては、カリウム塩だけでなくリチウム塩も使用可能であることが判った。
2 通孔
3 シャフト
4 外周面
5 酸化膜
6 アルミニウムドラム
7 外周面
8 直流電源
9 抵抗
10 計測回路
F 荷重
V 検出電圧
Claims (6)
- スチレンブタジエンゴムおよびエピクロルヒドリンゴムを含むゴム分、ならびに前記ゴム分の総量100質量部あたり0.05質量部以上、5質量部以下の、分子中にフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンの塩を含み、かつ前記エピクロルヒドリンゴムの配合割合が、前記ゴム分の総量100質量部中の50質量部未満であるゴム組成物によって非多孔質でかつ単層構造に形成された半導電性ローラ。
- 前記ゴム分はさらにアクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、およびエチレンプロピレンジエンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種を含んでいる請求項1に記載の半導電性ローラ。
- 前記塩の配合割合は、前記ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、2質量部以下である請求項1または2に記載の半導電性ローラ。
- 前記スチレンブタジエンゴムの配合割合は、前記ゴム分の総量100質量部中の10質量部以上、80質量部以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
- 外周面に酸化膜を備えている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
- 電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで、感光体の表面に形成される静電潜像を、帯電させたトナーによってトナー像に現像する現像ローラとして用いる請求項1ないし5のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
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