JP6562263B2 - 導電性ゴム組成物および現像ローラ - Google Patents
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Description
なお以下では、画像形成の基礎となる静電潜像を担持する静電潜像担持体として、光導電性を有する感光体を用いた場合を例にとって説明するが、静電潜像担持体は上記感光体に限定されるものではない。
次いで、微小な着色粒子であるトナーをあらかじめ所定の電位に帯電させた状態で、上記感光体の表面に接触させる。そうするとトナーが、静電潜像の電位パターンに応じて感光体の表面に選択的に付着されて、上記静電潜像がトナー像に現像される(現像工程)。
またトナー像を転写後の感光体は、その表面に残留したトナー等を除去して次の画像形成に使用する準備とされる(クリーニング工程)。
上記のうち現像工程では、感光体の表面に形成された静電潜像をトナー像に現像するために現像ローラが用いられる。
上記現像ローラには、柔軟で変形しやすい上、感光体を汚染しないことも求められる。また、よりコスト安価に製造できることも求められる。
例えば特許文献1には、ゴム分にカーボンブラックを配合して導電性を付与するとともに、可塑剤等の軟化剤を配合して柔軟性を付与した導電性ゴム組成物によって上記現像ローラを形成することが記載されている。
しかし特許文献2に記載の遮蔽層は、任意の樹脂やゴム等を含む液状の塗剤を、現像ローラの外周に塗布したのち乾燥させ、さらに架橋性の樹脂やゴムの場合は架橋させて形成されるため、下記のような種々の問題を有している。
また特許文献2においては、主にシリコーンゴム等からなる現像ローラに対する遮蔽層の密着性を向上するために、上記遮蔽層の形成に先立って、現像ローラの表面を下処理したりプライマ層を形成したりしており、かかる構成では工程数が増加して現像ローラの生産性が低下したり、全体の層数が増加して現像ローラの柔軟性がさらに低下したりしやすいといった問題もある。
例えば特許文献3には、ゴム分として、エピクロルヒドリンゴムとクロロプレンゴムの2種、またはこの2種にさらにアクリロニトリルブタジエンゴムを加えた3種を併用するとともに、上記ゴム分を架橋させるための架橋成分の種類と配合割合を選択して導電性ゴム組成物を調製し、それを用いて現像ローラを形成することが記載されている。
現像ローラの耐セット性を良好なレベルに維持して圧縮永久ひずみの増加を抑制しようとすると、上記従来の構成では現像ローラの柔軟性が不十分になり、画像耐久性が低下して、画像形成を繰り返した際に形成画像の余白部分にトナーが付着する、いわゆるカブリの不良を生じやすくなる。
そのため、現像部内に設けられた現像ローラの柔軟性が低い場合には、画像形成を繰り返した際に、上記現像ローラと繰り返し接触することでトナーがダメージを受けやすくなる。
一方、現像ローラの柔軟性を向上してカブリの不良が生じるのを抑制しようとすると、上記従来の構成では現像ローラの耐セット性が低下して圧縮永久ひずみが大きくなる。
その上、上記従来の現像ローラは、例えば形成画像のベタの部分やハーフトーンの部分に、現像ローラの駆動機構の回転ムラ等に基づく濃淡ムラ、いわゆるバンディングの不良を生じやすいという問題もある。
本発明の目的は、軟化剤を含まずに良好な柔軟性を付与して遮蔽層を省略した現像ローラを形成できる上、当該現像ローラを用いて形成した画像に、ヘタリによる画像ムラやカブリ、そしてバンディング等の不良が生じるのを良好に抑制できる導電性ゴム組成物と、それを用いた現像ローラを提供することにある。
本発明の導電性ゴム組成物は、上述したようにゴム分、当該ゴム分を架橋させるための架橋成分、および受酸剤を含み、上記ゴム分は、エピクロルヒドリンゴム、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、およびアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)であり、架橋成分は、上記ゴム分の総量100質量部あたり、0.75質量部以上、2.25質量部以下の硫黄、0.25質量部以上、1質量部以下のチウラム系促進剤、および0.75質量部以上、2質量部以下のチアゾール系促進剤を含んでいるとともに、受酸剤は、上記ゴム分の総量100質量部あたり2.5質量部以上、4.5質量部以下のハイドロタルサイト類であることを特徴とするものである。
ゴム分としては、前述したようにエピクロルヒドリンゴム、BR、CR、およびNBRの4種のみを併用する。ただし各ゴムは、それぞれ2種以上を併用してもよい。
(エピクロルヒドリンゴム)
エピクロルヒドリンゴムとしては、繰り返し単位としてエピクロルヒドリンを含み、現像ローラに良好な導電性を付与するためのイオン導電性を有する種々の重合体が使用可能である。
上記両共重合体におけるエチレンオキサイド含量は、いずれも30モル%以上、特に50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは、現像ローラの導電性の指標であるローラ抵抗値を低下させて、当該現像ローラの導電性を向上させる働きをする。しかし、エチレンオキサイド含量がこの範囲未満ではかかる働きが十分に得られないため、ローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
ECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は20モル%以上であるのが好ましく、70モル%以下、特に50モル%以下であるのが好ましい。
アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して、現像ローラのローラ抵抗値を低下させる働きをする。しかし、アリルグリシジルエーテル含量がこの範囲未満ではかかる働きが十分に得られないため、ローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
GECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は10モル%以上、特に19.5モル%以上であるのが好ましく、69.5モル%以下、特に60モル%以下であるのが好ましい。
これらエピクロルヒドリンゴムの1種または2種以上を使用できる。
(BR)
BRは、特に現像ローラにゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟でしかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性を付与するために機能する。
さらにBRは、後述するように酸化性雰囲気中での紫外線照射によって酸化されて、現像ローラの外周面に酸化膜を形成する材料としても機能する。
BRとしては、分子中にポリブタジエン構造を備え、架橋性を有する種々のBRがいずれも使用可能である。
またBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では感光体の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない非油展タイプのBRを用いるのが好ましい。
(CR)
CRは、特に現像ローラの柔軟性を向上するために機能する。
またCRは、特にプラス帯電性のトナーの帯電特性を向上したり、極性ゴムであるため現像ローラのローラ抵抗値を微調整したりするためにも機能する。
CRは、例えばクロロプレンを乳化重合させて合成されるもので、その際に用いる分子量調整剤の種類によって硫黄変性タイプと非硫黄変性タイプに分類される。
このうち硫黄変性タイプのCRは、クロロプレンと、分子量調整剤としての硫黄とを共重合させたポリマを、チウラムジスルフィド等で可塑化して所定の粘度に調整することで合成される。
このうちメルカプタン変性タイプのCRは、例えばn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調整剤として使用すること以外は硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。またキサントゲン変性タイプのCRは、アルキルキサントゲン化合物を分子量調整剤として使用すること以外は、やはり硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。
本発明においてはいずれのタイプのCRを用いてもよいが、中でも非硫黄変性タイプで、かつ結晶化速度が遅いタイプのCRが好ましい。
またCRとしては、クロロプレンと他の共重合成分との共重合ゴムを用いてもよい。かかる他の共重合成分としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、およびメタクリル酸エステル等の1種または2種以上が挙げられる。
これらCRの1種または2種以上を使用できる。
(NBR)
NBRは、その溶解パラメータ(SP値)がエピクロルヒドリンゴム、BR、およびCRのいずれとも近いため、これらゴムのいわば相溶化剤として機能して各ゴム間の微分散化を補助し、導電性ゴム組成物の加熱時の流動性を高めて、軟化剤を含まない配合でも良好な加工性を確保したり、現像ローラの柔軟性をさらに向上したりするために機能する。
さらにNBRは、やはり酸化性雰囲気中での紫外線照射によって酸化されて、現像ローラの外周面に酸化膜を形成する材料としても機能する。
NBRとしては、アクリロニトリル含量が24%以下である低ニトリルNBR、25〜30%である中ニトリルNBR、31〜35%である中高ニトリルNBR、36〜42%である高ニトリルNBR、43%以上である極高ニトリルNBRのいずれを用いてもよい。
ただしムーニー粘度の下限は特に限定されず、入手可能な最小のムーニー粘度のNBRまで、種々の固形のNBRが使用可能である。あるいは固形のNBRに代えて、常温で液状を呈する液状NBRを用いることもできる。
これらNBRの1種または2種以上を使用できる。
(配合割合)
上記4種のゴム分の配合割合は、現像ローラに求められる各種の特性、特に導電性や柔軟性、耐セット性等に応じて任意に設定できる。
エピクロルヒドリンゴムの配合割合がこの範囲未満では、現像ローラに良好な導電性を付与できないおそれがある。
BRの配合割合は、基本的に他の3種のゴムの残量である。すなわちエピクロルヒドリンゴム、CR、およびNBRを所定の割合で配合し、さらにBRを加えてゴム分の総量を100質量部とすればよい。
BRの配合割合がこの範囲未満では、現像ローラにゴムとしての良好な特性を付与できないおそれがある。
これに対しBRの配合割合を上記の範囲とすることにより、他の3種のゴムを併用することによる効果を維持しながら、現像ローラにゴムとしての良好な特性を付与できる。
CRの配合割合がこの範囲未満では、現像ローラに良好な柔軟性を付与できないおそれがある。
一方、CRの配合割合が上記の範囲を超える場合には、相対的にエピクロルヒドリンゴムの割合が少なくなって、現像ローラに良好な導電性を付与できないおそれがある。またBRの割合が少なくなって、現像ローラにゴムとしての良好な特性を付与できないおそれもある。さらにNBRの割合が少なくなって、導電性ゴム組成物に良好な加工性を付与したり、現像ローラに良好な柔軟性を付与したりできないおそれもある。
さらにNBRの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、15質量部以下であるのが好ましい。
NBRの配合割合がこの範囲未満では、導電性ゴム組成物に良好な加工性を付与したり、現像ローラに良好な柔軟性を付与したりできないおそれがある。
〈架橋成分および受酸剤〉
前述したように架橋成分としては、少なくとも硫黄、チウラム系促進剤、およびチアゾール系促進剤を併用する。
またチウラム系促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)等の1種または2種以上が挙げられる。
(配合割合)
前述したように硫黄の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.75質量部以上、2.25質量部以下に限定される。
さらにハイドロタルサイト類の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり2.5質量部以上、4.5質量部以下に限定される。
一方、硫黄、チウラム系促進剤、チアゾール系促進剤、およびハイドロタルサイト類のうちいずれか1種でも、配合割合が上記の範囲を超える場合には架橋密度が高すぎて、現像ローラの柔軟性が不十分になり、画像耐久性が低下して、当該現像ローラを画像形成装置に組み込んで画像形成を繰り返した際に、形成画像の余白部分にカブリの不良を生じやすくなる。
架橋成分としては、上記硫黄、チウラム系促進剤、およびチアゾール系促進剤とともに、さらに他の促進剤を併用することもできる。
かかる他の促進剤としては、例えばチオウレア系促進剤、グアニジン系促進剤等の少なくとも1種が挙げられる。ただし促進剤は、種類によって架橋促進のメカニズムが異なるため、特にこの2種を併用するのが好ましい。
チオウレア系促進剤の配合割合は、硫黄、チウラム系促進剤、チアゾール系促進剤、グアニジン系促進剤、およびハイドロタルサイト類と併用して、前述した本発明の効果をより一層向上することを考慮すると、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、0.5質量部未満、特に0.3質量部以下であるのが好ましい。
グアニジン系促進剤の配合割合は、硫黄、チウラム系促進剤、チアゾール系促進剤、チオウレア系促進剤、およびハイドロタルサイト類と併用して、前述した本発明の効果をより一層向上することを考慮すると、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下、特に0.55質量部未満であるのが好ましい。
本発明の導電性ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、例えば促進助剤、加工助剤、劣化防止剤、充填剤、スコーチ防止剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等が挙げられる。
ただし、前述したように可塑剤やオイル等の軟化剤は含まない(除く)ことが、遮蔽層を省略してなおかつ感光体の汚染を防止する上で好ましい。
促進助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。上記範囲内で、ゴム分や架橋剤、促進剤の種類と組み合わせに応じて適宜、配合割合を設定できる。
加工助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下、特に0.5質量部以下であるのが好ましい。
劣化防止剤としては、各種の老化防止剤や酸化防止剤等が挙げられる。
このうち酸化防止剤は、現像ローラのローラ抵抗値の環境依存性を低減するとともに、連続通電時のローラ抵抗値の上昇を抑制する働きをする。酸化防止剤としては、例えばジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。
充填剤を配合することにより、現像ローラの機械的強度等を向上できる。
充填剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり2質量部以上であるのが好ましく、20質量部以下であるのが好ましい。
導電性カーボンブラックとしては、特に粒状のアセチレンブラックが好ましい。粒状のアセチレンブラックは取り扱いが容易で、しかも導電性ゴム組成物中に均一に分散できるため、現像ローラにできるだけ均一な電子導電性を付与できる。
スコーチ防止剤としては、例えばN−シクロへキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフエニルアミン、2,4−ジフエニル−4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上が挙げられる。特にN−シクロへキシルチオフタルイミドが好ましい。
共架橋剤とは、それ自体が架橋するとともにゴム分とも架橋反応して全体を高分子化する働きを有する成分を指す。
共架橋剤としては、例えばメタクリル酸エステルや、あるいはメタクリル酸またはアクリル酸の金属塩等に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマ類、あるいはジオキシム等の1種または2種以上が挙げられる。
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類。
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類。
(c) (a)(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物。
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン。
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物。
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルステロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン。
モノカルボン酸類のエステルとしては、例えば下記の各種化合物等の1種または2種以上が挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ぺンチル(メタ)アクリレート、i−ぺンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル。
べンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの、芳香族環を有する(メタ)アクリレート。
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの、各種官能基を有する(メタ)アクリレート。
以上で説明した各成分を含む本発明の導電性ゴム組成物は、従来同様に調製できる。
まず4種のゴム分を所定の割合で配合して素練りし、次いで架橋成分以外の各成分を加えて混練した後、最後に架橋成分を加えて混練することで導電性ゴム組成物が得られる。
《現像ローラ》
図1は、本発明の現像ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の現像ローラ1は、上記本発明の導電性ゴム組成物によって非多孔質でかつ単層構造の筒状に形成されるとともに、中心の通孔2にシャフト3が挿通されて固定されたものである。
シャフト3は、例えば導電性を有する接着剤を介して現像ローラ1と電気的に接合されるとともに機械的に固定されるか、あるいは通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入することで、現像ローラ1と電気的に接合されるとともに機械的に固定されて、上記現像ローラ1と一体に回転される。
酸化膜5を形成すると、当該酸化膜5が誘電層として機能して現像ローラ1の誘電正接を低減できる。また酸化膜5が低摩擦層として機能して、トナーの付着を良好に抑制できる。
しかも酸化膜5は、例えば酸化性雰囲気中で外周面4に紫外線を照射する等して、前述したように、当該外周面4の近傍の導電性ゴム組成物中に含まれるBR、CR、NBRを酸化させるだけで簡単に形成できるため、現像ローラ1の生産性が低下したり製造コストが高くついたりするのを抑制できる。
現像ローラ1を製造するには、まず調製した導電性ゴム組成物を、押出成形機を用いて筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして加硫缶内で加圧、加熱して架橋させる。
研磨方法としては、例えば乾式トラバース研削等の種々の研磨方法が採用可能であるが、研磨工程の最後に鏡面研磨をして仕上げると、外周面4の離型性を向上して、酸化膜5を形成しない場合でもトナーの付着を抑制できる。また感光体等の汚染を有効に防止できる。
シャフト3は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で通孔2に挿通して固定できる。
シャフト3は、先に説明したように通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入するか、あるいは導電性を有する熱硬化性接着剤を介して、二次架橋前の筒状体の通孔2に挿通すればよい。
また後者の場合は、オーブン中での加熱によって筒状体が二次架橋されるのと同時に熱硬化性接着剤が硬化して、当該シャフト3が筒状体→現像ローラ1に電気的に接合されるとともに機械的に固定される。
酸化膜5は、先に説明したように現像ローラ1の外周面4に紫外線を照射して形成するのが好ましい。すなわち、現像ローラ1の外周面4に所定波長の紫外線を所定時間照射して、当該外周面4の近傍を構成する導電性ゴム組成物中のBR、CR、NBRを酸化させるだけで酸化膜5を形成できるため、簡単で効率的である。
照射する紫外線の波長は、ゴム組成物中のBR、CR、NBRを効率よく酸化させて、先に説明した機能に優れた酸化膜5を形成することを考慮すると100nm以上であるのが好ましく、400nm以下、特に300nm以下であるのが好ましい。また照射の時間は30秒間以上、特に1分間以上であるのが好ましく、30分間以下、特に15分間以下であるのが好ましい。
非多孔質でかつ単層構造の現像ローラ1は、前述したように硫黄、チウラム系促進剤、チアゾール系促進剤、およびハイドロタルサイト類の配合割合を前述した範囲で変更することで調整される、耐セット性の指標としての、試験温度70±1℃、試験時間24時間、圧縮率25%での圧縮永久ひずみが10%以下であるのが好ましい。
これに対し、圧縮永久ひずみを上記の範囲とすることにより、現像ローラ1に良好な耐セット性を付与して、ヘタリとそれに伴う画像ムラの発生を良好に抑制できる。
なお、現像ローラ1の圧縮永久ひずみの下限は0%である。すなわち、圧縮永久ひずみを生じないのが理想的である。
タイプAデュロメータ硬さがこの範囲を超える現像ローラ1は、柔軟性が不十分で硬いため画像耐久性が低下し、画像形成を繰り返した際にトナーがダメージを受ける割合が増加して、形成画像の余白部分にカブリを生じやすくなるおそれがある。
なお現像ローラ1のタイプAデュロメータ硬さは、当該現像ローラ1に上述した良好な耐セット性を満足する圧縮永久ひずみと、十分な耐久性とを付与すること等を考慮すると、上記の範囲でも45以上、特に48以上であるのが好ましい。
損失正接tanδがこの範囲を超える現像ローラ1は、弾性が小さくかつ粘性が大きいため、現像ローラの駆動機構の回転ムラ等に基づくバンディングを生じやすくなるおそれがある。
なお現像ローラ1の損失正接tanδは、当該現像ローラ1の良好な柔軟性を維持すること等を考慮すると、上記の範囲でも0.35以上、特に0.4以上であるのが好ましい。
(導電性ゴム組成物の調製)
ゴム分としては、下記の4種を用いた。
GECO〔(株)大阪ソーダ製のエピオン(登録商標)−301L、EO/EP/AGE=73/23/4(モル比)〕:40質量部
BR〔JSR(株)製のJSR BR01、シス−1,4結合の含量:95質量%、ムーニー粘度ML1+4(100℃):45〕:40質量部
CR〔昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT〕:10質量部
NBR〔日本ゼオン(株)製のNipol(登録商標)DN401LL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量:18%、ムーニー粘度ML1+4(100℃):32〕:10質量部
上記4種のゴム分の合計100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、下記表1に示す各成分のうち架橋成分以外を加えて混練し、最後に架橋成分を加えてさらに混練して導電性ゴム組成物を調製した。
硫黄:分散性硫黄〔鶴見化学工業(株)製の商品名サルファックスPS、硫黄分:99.5%〕
チウラム系促進剤:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔TMTM、三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)TS〕
チアゾール系促進剤:ジ−2−ベンゾチアジルジスルフィド〔MBTS、Shandong Shanxian Chemical Co. Ltd.製の商品名SUNSINE MBTS〕
チオウレア系架橋剤:エチレンチオウレア〔2−メルカプトイミダゾリン、EU、川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)22−S〕
グアニジン系促進剤:1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔DOTG、三新化学工業(株)製のサンセラーDT〕
促進助剤:酸化亜鉛2種〔三井金属鉱業(株)製〕
導電性充填剤:導電性カーボンブラック〔アセチレンブラック、電気化学工業(株)製のデンカ ブラック(登録商標)粒状〕
加工助剤:ステアリン酸亜鉛〔堺化学工業(株)製のSZ−2000〕
ハイドロタルサイト類:受酸剤〔協和化学工業(株)製のDHT-4A(登録商標)−2〕
(現像ローラの製造)
上記ゴム組成物を押出機に供給して外径φ20mm、内径φ7.0mmの筒状に押出成形し、架橋用の仮のシャフトに装着して加硫缶内で160℃×1時間架橋させた。
次いで筒状体の両端をカットして整形するとともに、外周面を、円筒研磨機を用いてトラバース研磨したのち仕上げとして鏡面研磨して、外径φ20.00mm(公差0.05)になるように仕上げた。鏡面研磨には、#2000のラッピングフィルム〔三共理化学(株)製のミラーフィルム(登録商標)〕を用いた。
ハイドロタルサイト類の配合割合を2.75質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈実施例3〉
チウラム系促進剤の配合割合を0.6質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を2.75質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
硫黄の配合割合を1質量部、チウラム系促進剤の配合割合を0.5質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を2.75質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈実施例5〉
硫黄の配合割合を1質量部、チウラム系促進剤の配合割合を0.75質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を2.75質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
硫黄の配合割合を1.5質量部、チウラム系促進剤の配合割合を0.75質量部、チアゾール系促進剤の配合割合を1質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を3質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈実施例7〉
硫黄の配合割合を1.25質量部、チウラム系促進剤の配合割合を0.25質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を4.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
硫黄の配合割合を1.5質量部、チウラム系促進剤の配合割合を1質量部、チアゾール系促進剤の配合割合を2質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を4.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈実施例9〉
硫黄の配合割合を1.5質量部、チウラム系促進剤の配合割合を0.75質量部、チアゾール系促進剤の配合割合を1.5質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を4.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
硫黄の配合割合を1.75質量部、チウラム系促進剤の配合割合を0.75質量部、チアゾール系促進剤の配合割合を1.5質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を4.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
硫黄の配合割合を2質量部、チウラム系促進剤の配合割合を0.25質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を4.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈実施例12〉
硫黄の配合割合を2.25質量部、チウラム系促進剤の配合割合を0.25質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を4.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
チウラム系促進剤の配合割合を0.25質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を1.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈比較例2〉
硫黄の配合割合を2.25質量部、チウラム系促進剤の配合割合を0.25質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を2質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
硫黄の配合割合を2.25質量部、チウラム系促進剤の配合割合を1.25質量部、チアゾール系促進剤の配合割合を1.5質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を4.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
硫黄の配合割合を3.5質量部、チウラム系促進剤の配合割合を0.25質量部、ハイドロタルサイト類の配合割合を4.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈圧縮永久ひずみ測定〉
各実施例、比較例で調製した導電性ゴム組成物を成形し、160℃×1時間架橋させて、日本工業規格JIS K6262:2013「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−常温,高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方」に規定された小形試験片を作製した。
圧縮永久ひずみは、10%以下を良好(○)、10%を超えるものを不良(×)と評価した。
〈タイプAデュロメータ硬さ測定〉
各実施例、比較例で製造した現像ローラのタイプAデュロメータ硬さを、測定温度23±2℃で、下記の測定方法に則って測定した。
〈粘弾性測定〉
各実施例、比較例で調製した導電性ゴム組成物をシート状に成形し、160℃×1時間架橋させたのち打ち抜いて、幅5mm×長さ20mm×厚み2mmの短冊状のサンプルを作製した。
測定温度:−150〜50℃
昇温速度:4℃/min
測定温度間隔:4℃
測定周波数:2Hz
初期ひずみ:一定
振幅:50μm
変形モード:引っ張り
チャック間距離:20mm
波形:正弦波
損失正接tanδは、0.07以下を良好(○)、0.07を超えるものを不良(×)と評価した。
各実施例、比較例で製造した現像ローラを、市販のレーザープリンタ用の新品のカートリッジ(トナーを収容したトナー容器、感光体、および感光体と接触させた現像ローラが一体になったもの)の既設の現像ローラと交換した。
なおレーザープリンタは、プラス帯電型の粉砕タイプの非磁性1成分トナーを使用するもので、画像形成の速度は毎分40枚、5%濃度の画像を連続的に画像形成可能な設定枚数(プリンタライフ)は6500枚である。
上記カートリッジを初期状態のレーザープリンタに装着し、温度23±2℃、相対湿度55±2%の環境下で1%濃度の画像を連続的に画像形成して、画像形成500枚ごとに、形成画像の余白部分にカブリが発生したか否かをプリンタライフまで確認して、下記の基準で画像耐久性を評価した。
×:プリンタライフまでにカブリが見られた。画像耐久性不良。
(バンディング評価)
上記カートリッジを初期状態のレーザープリンタに装着し、温度23±2℃、相対湿度55±2%の環境下で全面ベタ画像、および全面ハーフトーン画像を画像形成した。
○:全面ベタ画像、全面ハーフトーン画像のいずれにもバンディングは見られなかった。良好。
×:全面ベタ画像、全面ハーフトーン画像のいずれにもバンディングが見られた。不良。
以上の結果を表2〜表5に示す。
2 通孔
3 シャフト
4 外周面
5 酸化膜
Claims (5)
- ゴム分、前記ゴム分を架橋させるための架橋成分、および受酸剤を含み、前記ゴム分は、エピクロルヒドリンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、およびアクリロニトリルブタジエンゴムであり、前記架橋成分は、前記ゴム分の総量100質量部あたり、0.75質量部以上、2.25質量部以下の硫黄、0.25質量部以上、1質量部以下のチウラム系促進剤、および0.75質量部以上、2質量部以下のチアゾール系促進剤を含んでいるとともに、前記受酸剤は、前記ゴム分の総量100質量部あたり2.5質量部以上、4.5質量部以下のハイドロタルサイト類である導電性ゴム組成物。
- さらに、ゴム分の総量100質量部あたり、0.1質量部以上、0.5質量部未満のチオウレア系促進剤、および0.1質量部以上、1質量部以下のグアニジン系促進剤からなる群より選ばれた少なくとも1種の架橋成分をも含んでいる請求項1に記載の導電性ゴム組成物。
- 前記請求項1または2に記載の導電性ゴムの架橋物からなる現像ローラ。
- 試験温度70±1℃、試験時間24時間、圧縮率25%での圧縮永久ひずみが10%以下、タイプAデュロメータ硬さが55以下で、かつ動的粘弾性特性(温度分散)から求められる23℃での損失正接tanδが0.07以下である請求項3に記載の現像ローラ。
- 外周面に酸化膜を備えている請求項3または4に記載の現像ローラ。
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