JP6300413B2 - 現像ローラおよび画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで使用される現像ローラとそれを用いた画像形成装置に関するものである。
例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機などの電子写真法を利用した画像形成装置においては、概略下記の工程を経て紙やプラスチックフィルムなどの用紙の表面に画像が形成される。
まず光導電性を有する感光体の表面を一様に帯電させた状態で露光して、当該表面に形成画像に対応する静電潜像を形成する(帯電工程→露光工程)。
次いで、微小な着色粒子であるトナーをあらかじめ所定の電位に帯電させた状態で感光体の表面に接触させる。そうするとトナーが静電潜像の電位パターンに応じて感光体の表面に選択的に付着されて当該静電潜像がトナー像に現像される(現像工程)。
次いでトナー像を用紙の表面に転写し(転写工程)、さらに定着させる(定着工程)ことにより当該用紙の表面に画像が形成される。
またトナー像を転写後の感光体は、その表面に残留したトナー等を例えばクリーニングブレード等によって除去して次の画像形成に使用する準備とされる(クリーニング工程)。
上記のうち現像工程では、感光体の表面に形成された静電潜像をトナー像に現像するために現像ローラが用いられる。
現像ローラとしては、例えばゴム分としてスチレンブタジエンゴム(SBR)やクロロプレンゴム(CR)等のジエン系ゴムに、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムを配合してイオン導電性を付与したゴム組成物を筒状に成形するとともに上記ゴム分を架橋させ、さらに筒の外周面にUVの照射によって酸化膜を形成したものが知られている(特許文献1等)。
特開2014−80456号公報 特許第5188681号公報
画像形成装置の画像評価の基準として、黒ベタと呼ばれる紙面一面が黒の画像の濃度(黒ベタ濃度)と、ドットと呼ばれる格子長約80μmの正方格子上に円が並んだ画像の濃度(ドット濃度)が知られている。
黒ベタ濃度は形成画像の全体のコントラストを向上するために重要であり、ドット濃度は細線画像の再現性を向上するために重要である。
しかしこの2つの画像濃度はローラ抵抗値に対して相反関係にある。つまりローラ抵抗値が低いほど黒ベタ濃度は上昇しドット濃度は低下する傾向にあり、逆にローラ抵抗値が高いほど黒ベタ濃度は低下しドット濃度は上昇する傾向にある。
そのため黒ベタ濃度とドット濃度をともに良好な範囲にすることは、従来の現像ローラでは実現困難であり、通常はどちらもベストではなくベターのレベルで両濃度のバランスをとっているのが現状である。
本発明の目的は、黒ベタ濃度とドット濃度の両方を現状よりも高いレベルで両立させることが可能な現像ローラとそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
本発明は、弾性材料からなる筒状の基層、および当該基層の外周面に積層された弾性材料からなる表層を備え、前記基層にシャフトが挿通されて固定された現像ローラであって、
前記表層の厚みd(mm)、
温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、回転するアルミニウムドラムに、前記表層を形成する前の基層の外周面を、前記シャフトの両端部にそれぞれ500gの荷重をかけて圧接させた状態で測定される、前記基層のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)、および
温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、回転するアルミニウムドラムに、前記現像ローラの外周面を、前記シャフトの両端部にそれぞれ500gの荷重をかけて圧接させた状態で測定される、前記基層と表層の積層体の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)は式(1)〜式(3):
1.0≦R−R′ (1)
0.1≦d≦2 (2)
7.5≦R≦8.5 (3)
を全て満足している現像ローラである。
また本発明は、上記本発明の現像ローラを組み込んだ画像形成装置である。
本発明によれば、弾性材料からなる基層の外周面に、弾性材料からなる表層を積層した構造とし、なおかつ表層の厚みd(mm)を上記式(2)を満足する範囲、基層のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)と現像ローラの全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)を上記式(1)(3)を満足する範囲に設定することにより、黒ベタ濃度とドット濃度の両方を現状よりも高いレベルで両立させることが可能な現像ローラとそれを用いた画像形成装置を提供できる。
図(a)は、本発明の現像ローラの実施の形態の一例を示す斜視図、図(b)は上記例の現像ローラの端面図である。 現像ローラのローラ抵抗値を測定する方法を説明する図である。
図1(a)(b)を参照して、この例の現像ローラ1は、弾性材料によって筒状に形成されるとともに中心の通孔2にシャフト3が挿通されて固定された基層4の外周面5に、弾性材料からなる表層6を積層したものである。
シャフト3は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成されている。
かかるシャフト3は、例えば導電性を有する接着剤を介して基層4と電気的に接合されるとともに機械的に固定されるか、あるいは通孔2の内径よりも外径の大きいものを通孔2に圧入することで基層4と電気的に接合されるとともに機械的に固定されて一体に回転される。
本発明では、上記のうち表層6の厚みd(mm)、基層のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)、および基層4と表層6の積層体、すなわち現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)が式(1)〜式(3):
1.0≦R−R′ (1)
0.1≦d≦2 (2)
7.5≦R≦8.5 (3)
を全て満足している必要がある。
発明者は、電場解析によって現像ローラから感光体に移行するトナーの量を計算した結果、当該現像ローラの外周面に表層として誘電体層を設けると黒ベタ濃度およびドット濃度の両方を向上できることを確認した。しかし一般的な誘電体は絶縁体で極めて抵抗が高いため、現像ローラの表層として用いるには全体のローラ抵抗が高すぎるという問題があった(特許文献2等)。
そこで発明者は、表層がどの程度の電気抵抗値までの範囲であれば誘電体として機能しうるかを検討した結果、比誘電率が例えば10〜20程度の通常の弾性材料からなる表層6の場合、当該表層6のローラ抵抗値に相当する、現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)と基層4のみのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)との差を上記式(1)を満足する範囲とし、なおかつ厚みd(mm)を上記式(2)を満足する範囲とすればよいことを見出した。
すなわち上記差R−R′が式(1)の範囲未満であるか、あるいは厚みd(mm)が式(2)の範囲未満では、このいずれの場合にも現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)が式(3)の範囲未満となってドット濃度が低下してしまう。
一方、厚みd(mm)が式(2)の範囲を超える場合には現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)が式(3)の範囲を超えて黒ベタ濃度が低下してしまう。
これに対し上記差R−R′を上記式(1)を満足する範囲とし、なおかつ厚みd(mm)を上記式(2)を満足する範囲とすると、現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)を上記式(3)の範囲として当該現像ローラ1としての適度な導電性を維持しながら、上記表層6を誘電体として機能させて黒ベタ濃度およびドット濃度の両方を向上して現状よりも高いレベルで両立することが可能となる。
なおR−R′の上限は特に限定されない。ただし、例えば汎用のカーボンや黒鉛を実用的な硬度を維持しうる範囲で添加しただけではローラ抵抗値R′(log Ω、100V印加時)が3未満といった高い導電性を有する基層4を形成できないため、現実的にはR−R′は5.5以下程度であるのが好ましい。
《基層4》
基層4は、上記表層6と組み合わせた際に現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)を式(3)の範囲内に維持しうる導電性が付与された種々の弾性材料によって形成性できる。
特にジエン系ゴム等のゴム分に、高価なイオン導電性ゴムではなく安価なカーボンや黒鉛等の電子導電性の導電剤(導電性充填剤)を配合して電子導電性を付与したゴム組成物によって基層4を形成するのが好ましい。
かかる基層4は、上記のように現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)を式(3)の範囲内に維持するため、当該基層4のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)を上記ローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)より低く設定するのが好ましく、特に式(4):
R′≦7.0 (4)
を満足する範囲とするのが好ましい。これにより、先に説明した表層6と組み合わせた際に現像ローラの全体でのローラ抵抗値R(Ω)を式(3)の範囲に調整できる。
電子導電性の導電剤は分散のばらつき等に基づいて抵抗値のばらつきを大きくするおそれがあるが、本発明では上記のように基層4のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)を現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)より低く設定できるため基層4の抵抗値のばらつきは現像ローラ1のローラ抵抗値R(Ω)にはほとんど影響を与えない。そのため基層4には安価な電子導電性の導電剤を使用することで現像ローラ1をよりコスト安価に製造できるという利点がある。
なお基層4のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)の下限は特に限定されないものの4.0以上であるのが好ましい。この範囲より基層4を低抵抗化するためにはカーボンや黒鉛の配合割合を多くしなければならず、当該基層4の弾性や柔軟性、あるいは強度等が低下するおそれがある。
また基層4は表層6で覆われて感光体やトナー等と直接に接触しないため、上記ゴム組成物にはオイルや可塑剤、あるいは脂肪酸等の加工助剤を多量に配合して基層4の、ひいては現像ローラ1の全体の柔軟性を向上させることも可能である。
現像ローラ1に柔軟性を付与すると形成画像の品質を向上できるとともに、現像時にトナーに加わるストレスを低減してトナーの長寿命化を図ることもできる。
〈ジエン系ゴム〉
ジエン系ゴムとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)およびブタジエンゴム(BR)からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
(SBR)
このうちSBRとしては、スチレンと1,3−ブタジエンとを乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成される種々のSBRがいずれも使用可能である。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
さらにSBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRがいずれも使用可能である。
これらSBRの1種または2種以上を使用できる。
(CR)
CRは、例えばクロロプレンを乳化重合させて合成され、その際に用いる分子量調整剤の種類によって硫黄変性タイプと非硫黄変性タイプに分類されるが、本発明ではこのいずれのCRも使用可能である。
硫黄変性タイプのCRは、クロロプレンと分子量調整剤としての硫黄とを共重合させたポリマをチウラムジスルフィド等で可塑化し、所定の粘度に調整して得られる。
また非硫黄変性タイプのCRはメルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ等に分類される。
このうちメルカプタン変性タイプのCRは、例えばn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調整剤として使用して、硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。またキサントゲン変性タイプのCRは、アルキルキサントゲン化合物を分子量調整剤として使用して、硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。
またCRは、その結晶化速度に基づいて当該結晶化速度が遅いタイプ、中程度であるタイプ、および速いタイプに分類される。
本発明ではいずれのタイプのCRを用いてもよいが、中でも非硫黄変性タイプでかつ結晶化速度が遅いタイプのCRの1種または2種以上が好ましい。
さらにCRとしては、クロロプレンと他の共重合成分との共重合ゴムを用いてもよい。
かかる他の共重合成分としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、およびメタクリル酸エステル等の1種または2種以上が挙げられる。
(NBR)
NBRとしては、アクリロニトリル含量によって分類される低ニトリルNBR、中ニトリルNBR、中高ニトリルNBR、高ニトリルNBR、および極高ニトリルNBRがいずれも使用可能である。
またNBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
これらNBRの1種または2種以上を使用できる。
(BR)
BRとしては、架橋性を有する種々のBRがいずれも使用可能である。
特に低温特性に優れ、低温、低湿での硬度が低く良好な柔軟性を発現しうる、シス−1,4結合の含量が95%以上の高シスBRが好ましい。
またBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
これらBRの1種または2種以上を使用できる。
〈電子導電性の導電剤〉
電子導電性の導電剤としては、特にヨウ素吸着量80mg/g以上、吸油量60ml/100g以上のカーボンまたは黒鉛等の電子導電性の導電剤が好ましい。
カーボンまたは黒鉛のヨウ素吸着量、および吸油量がそれぞれ上記の範囲に限定されるのは下記の理由による。
すなわちヨウ素吸着量が80mg/g未満のカーボンや黒鉛、あるいは吸油量が60ml/100g未満のカーボンや黒鉛は、このいずれも基層4のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)を低下させる効果が不十分であり、当該ローラ抵抗値R'を先述した式(4)の範囲まで低抵抗化できないおそれがある。また上記範囲まで低抵抗化するためにはカーボンや黒鉛の配合割合を多くしなければならず、当該基層4の弾性や柔軟性、あるいは強度等が低下するおそれもある。
カーボンまたは黒鉛の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり30質量部以上であるのが好ましい。
カーボンまたは黒鉛の配合割合がこの範囲未満では基層4の抵抗値が高くなりすぎて、現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値Rが先述した式(3)の範囲の上限を超え、それにともなって黒ベタ濃度が低下するおそれがある。
ただしカーボンまたは黒鉛の配合割合が多すぎる場合には、たとえ多量のオイルを配合したとしても基層4、ひいては現像ローラ1が硬くなって形成画像の品質が低下したり、現像時にトナーに加わるストレスが増加してトナーの寿命が短くなったりするおそれがある。
そのためカーボンまたは黒鉛の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり60質量部以下であるのが好ましい。
〈加工助剤〉
加工助剤としては、例えばプロセスオイル等のオイル、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、トリクレジルホスフェート等の各種可塑剤、極性ワックス等の各種ワックス、あるいはステアリン酸等の脂肪酸などの1種または2種以上が挙げられる。
加工助剤の配合割合は、基層4に良好な柔軟性を付与することを考慮すると、ゴム分の総量100質量部あたり40質量部以上であるのが好ましく、60質量部以下であるのが好ましい。
〈架橋成分〉
ゴム分を架橋させるため、ゴム組成物には架橋成分を配合する。架橋成分としては架橋剤、促進剤、促進助剤等が挙げられる。
このうち架橋剤としては、例えば硫黄系架橋剤、チオウレア系架橋剤、トリアジン誘導体系架橋剤、過酸化物系架橋剤、各種モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。
また硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄等の硫黄や有機含硫黄化合物等が挙げられる。また有機含硫黄化合物等としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリン等が挙げられる。
チオウレア系架橋剤としては、例えばテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレア、(C2n+1NH)C=S〔式中、nは1〜10の数を示す。〕で表されるチオウレア等の1種または2種以上が挙げられる。
さらに過酸化物架橋剤としては、例えばベンゾイルペルオキシド等が挙げられる。
架橋剤としては硫黄が好ましい。
硫黄の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
促進剤としては、例えば消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、下記の有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
また有機促進剤としては、例えば1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系促進剤;N−シクロへキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤;チオウレア系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
促進剤は種類によって機能が異なっているため、2種以上の促進剤を併用するのが好ましい。
個々の促進剤の配合割合は種類によって任意に設定できるが、通常は個別に、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.2質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
促進助剤としては、亜鉛華等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸、その他従来公知の促進助剤の1種または2種以上が挙げられる。
促進助剤の配合割合は、個別にゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
〈その他〉
ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば受酸剤、劣化防止剤、充填剤、スコーチ防止剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等が挙げられる。
このうち受酸剤は、ゴム分の架橋時にCRから発生する塩素系ガスが基層4内に残留したり、それによって架橋阻害や感光体の汚染等を生じたりするのを防止するために機能する。
受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、中でも分散性に優れたハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、特にハイドロタルサイト類が好ましい。
また、ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用するとより高い受酸効果を得ることができ、感光体の汚染をより一層確実に防止できる。
受酸剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.5質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、6質量部以下、特に4質量部以下であるのが好ましい。
劣化防止剤としては、各種の老化防止剤や酸化防止剤等が挙げられる。
このうち酸化防止剤は、現像ローラ1のローラ抵抗値の環境依存性を低減するとともに、連続通電時のローラ抵抗値の上昇を抑制する働きをする。酸化防止剤としては、例えばジエチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)NEC−P〕、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラックNBC〕等が挙げられる。
充填剤としては、例えば酸化亜鉛、シリカ、補強用のカーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
充填剤を配合することにより、基層4の機械的強度等を向上できる。
充填剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以上であるのが好ましく、25質量部以下、特に20質量部以下であるのが好ましい。
スコーチ防止剤としては、例えばN−シクロへキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフエニルアミン、2,4−ジフエニル−4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上が挙げられる。特にN−シクロへキシルチオフタルイミドが好ましい。
スコーチ防止剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
共架橋剤とは、それ自体が架橋するとともにゴム分とも架橋反応して全体を高分子化する働きを有する成分を指す。
共架橋剤としては、例えばメタクリル酸エステルや、あるいはメタクリル酸またはアクリル酸の金属塩等に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマ類、あるいはジオキシム等の1種または2種以上が挙げられる。
このうちエチレン性不飽和単量体としては、例えば
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、
(c) (a)(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、
(d) (a)〜(c)の金属塩、
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、
(g) トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの、複素環を有するビニル化合物、
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルステロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン
等の1種または2種以上が挙げられる。
また(c)の不飽和カルボン酸類のエステルとしては、モノカルボン酸類のエステルが好ましい。
モノカルボン酸類のエステルとしては、例えば
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ぺンチル(メタ)アクリレート、i−ぺンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル;
べンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの、芳香族環を有する(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの、各種官能基を有する(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;
等の1種または2種以上が挙げられる。
〈ゴム組成物〉
以上で説明した各成分を含むゴム組成物は従来同様に調製できる。まずゴム分を素練りし、次いで架橋成分以外の各種添加剤を加えて混練した後、最後に架橋成分を加えて混練することでゴム組成物が得られる。混練には、例えばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
〈基層4の作製〉
基層4を作製するには、まず上記ゴム組成物を押出成形機を用いて筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして加硫缶内で加圧、加熱して架橋させる。
次いで架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させ、冷却したのち所定の外径となるように研磨することで基層4が作製される。
かかる基層4のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)を式(4)で規定した範囲とするには、前述したようにカーボンまたは黒鉛の種類や配合割合を変更すればよい。
また基層4は任意の硬さや圧縮永久ひずみ等を有するように調整できる。かかる硬さや圧縮永久ひずみ等を調整するためには、例えば先述したカーボンや黒鉛、あるいは加工助剤の種類や配合割合を調整すればよい他、ゴム分の種類や量を調整したり、架橋成分の種類や量を調整したり、充填剤その他の成分の種類や量を調整したりしてもよい。
さらに基層4の厚みは、組み込む画像形成装置の構造や寸法等に応じて任意に設定できる。
基層4は、構造を簡略化するとともにその耐久性等を向上するため、非多孔質で単層に形成するのが好ましい。
《表層6》
表層6は、先に説明した式(1)〜(3)を全て満足しうる任意の弾性材料によって形成できる。
ただし表層は、コーティングや熱可塑性素材チューブの被覆ではなく、ゴム分としてジエン系ゴムを含むゴム組成物によって形成するのが好ましい。
ゴム組成物からなる表層は上記コーティングやチューブからなるものに比べて低硬度でしかも圧縮永久ひずみが小さいため、たとえその厚みdを先述した範囲でも厚めに設定したとしても現像ローラ1の全体での柔軟性の低下を抑制できる上、例えば現像ローラ1を一箇所で感光体と当接させた状態で長期間保管しても圧接痕を生じにくいという利点がある。
特に上記ゴム組成物としては、現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)を安定させるためにイオン導電性のゴム組成物、特にゴム分としてエピクロルヒドリンゴムとジエン系ゴムを含むイオン導電性のゴム組成物によって形成するのが好ましい。
〈エピクロルヒドリンゴム〉
ゴム分のうちエピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、およびエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
中でもエチレンオキサイドを含む共重合体、特にECOおよび/またはGECOが好ましい。
両共重合体においてエチレンオキサイド含量は、いずれも30モル%以上、特に50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは、表層6の抵抗値を下げる働きをする。
しかしエチレンオキサイド含量がこの範囲未満ではかかる働きが十分に得られないため、抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
一方、エチレンオキサイド含量が範囲を超える場合には、エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に抵抗値が上昇する傾向がある。また架橋後の表層6が硬くなりすぎたり、架橋前のゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇したりするおそれもある。
ECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は20モル%以上であるのが好ましく、70モル%以下、特に50モル%以下であるのが好ましい。
またGECOにおけるアリルグリシジルエーテル含量は0.5モル%以上、特に2モル%以上であるのが好ましく、10モル%以下、特に5モル%以下であるのが好ましい。
アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して表層6の抵抗値を低下させる働きをする。
しかしアリルグリシジルエーテル含量がこの範囲未満ではかかる働きが得られないため、当該抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
一方、アリルグリシジルエーテルは、GECOの架橋時に架橋点として機能するため、アリルグリシジルエーテル含量が範囲を超える場合には、GECOの架橋密度が高くなりすぎて分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、却って抵抗値が上昇する傾向がある。
GECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は10モル%以上、特に19.5モル%以上であるのが好ましく、69.5モル%以下、特に60モル%以下であるのが好ましい。
なおGECOとしては、上記3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体のほかに、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではいずれのGECOも使用可能である。
エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴム分の総量100質量部中の10質量部以上であるのが好ましく、80質量部以下、特に70質量部以下であるのが好ましい。
〈ジエン系ゴム〉
ジエン系ゴムとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)およびブタジエンゴム(BR)からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
特にジエン系ゴムとしては、耐油性に優れたNBRおよび/またはCRを併用するのが好ましい。
先述したように基層4には当該基層4の、ひいては現像ローラ1の全体の柔軟性を向上させるべくオイル等の加工助剤を多量に配合させるのが好ましく、当該基層4からブリードした加工助剤が例えば現像ローラ1を一箇所で感光体と当接させた状態で長期間保管した際に当該感光体を汚染するおそれがある。
これに対し表層4を上記のように耐油性に優れたNBRおよび/またはCRを含むゴム組成物によって形成すれば、当該表層4をバリアとして機能させて加工助剤のブリードとそれに伴う感光体の汚染とを抑制できる。
これらジエン系ゴムの詳細は先に説明したとおりである。
〈架橋成分〉
上記ゴム分を架橋させるため、ゴム組成物には架橋成分を配合する。架橋成分としては架橋剤、促進剤、促進助剤等が挙げられる。これら架橋成分の詳細も先に説明したとおりである。
このうち架橋剤としては硫黄とチオウレア系架橋剤とを併用するのが好ましい。
かかる併用系において硫黄の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
またチオウレア系架橋剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
また促進剤、促進助剤の配合割合は先に説明した範囲とするのが好ましい。
〈その他〉
ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば受酸剤、可塑剤、加工助剤、劣化防止剤、充填剤、スコーチ防止剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等が挙げられる。これら添加剤の詳細や配合割合も先に説明したとおりである。
また充填剤として導電性カーボンブラック等の電子導電性の導電剤(導電性充填剤)を配合して、表層6に電子導電性を付与してもよい。
導電性カーボンブラックとしては、例えば電気化学工業(株)製のデンカブラック(登録商標)、ライオン(株)製のケッチェンブラック(登録商標)EC300J等の1種または2種以上が挙げられる。
導電性カーボンブラックの配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下であるのが好ましい。
〈ゴム組成物〉
以上で説明した各成分を含むゴム組成物は従来同様に調製できる。まずゴム分を所定の割合で配合して素練りし、次いで架橋成分以外の各種添加剤を加えて混練した後、最後に架橋成分を加えて混練することでゴム組成物が得られる。混練には、例えばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
〈表層6の形成〉
基層4の外周面5に表層6を積層するには、まず上記ゴム組成物をシート状に成形する。
それを上記外周面5に巻き付けた状態で、例えばプレス金型内に仕込んでプレスして成形し、架橋させるとともに基層4と一体化させ、さらに冷却したのち所定の厚みd1(mm)となるように研磨することで表層6が形成される。
像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)と基層4のみのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)との差に相当する、表層6のローラ抵抗値を式(1)で規定した範囲とするには、先述したエピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムの種類や配合割合を変更したり、さらに導電性カーボンブラックを配合する場合はその種類や配合割合を変更したりすればよい。
また表層6は任意の硬さや圧縮永久ひずみ等を有するように調整できる。かかる硬さや圧縮永久ひずみ等を調整するためには、例えばゴム分の種類や量を調整したり、架橋成分の種類や量を調整したり、充填剤その他の成分の種類や量を調整したりすればよい。
表層6は、構造を簡略化するとともにその耐久性等を向上するため、やはり非多孔質で単層に形成するのが好ましい。
《ローラ抵抗値の測定方法》
図2は、現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値R、および基層4のみの状態でのローラ抵抗値R′を測定する方法を説明する図である。
図1、図2を参照して、本発明では上記ローラ抵抗値R、R′を、前述したように温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値Rは印加電圧100V、基層4のみの状態でのローラ抵抗値R′は印加電圧10Vの条件で、下記の方法によって測定した値でもって表すこととする。
すなわち一定の回転速度で回転させることができるアルミニウムドラム8を用意し、かかるアルミニウムドラム8の外周面9に上方から、あらかじめシャフト3を挿通して固定した現像ローラ1の外周面7、または表層6を形成せず基層4のみの状態のサンプルを作製して当該基層4の外周面5を接触させる。
またシャフト3とアルミニウムドラム8との間に直流電源10および抵抗11を直列に接続して計測回路12を構成する。直流電源10は(−)側をシャフト3、(+)側を抵抗11と接続する。抵抗11の抵抗値r11は100Ωとする。
次いでシャフト3の両端部にそれぞれ500gの荷重Fをかけて現像ローラ1の外周面7、または基層4の外周面5をアルミニウムドラム8に圧接させた状態で、当該アルミニウムドラム8を回転(回転数:30rpm)させながら、両者間に直流電源10から直流100V、または10Vの印加電圧Eを印加した際に抵抗11にかかる検出電圧Vを4秒間で100回計測してその平均値を求める。
検出電圧Vの平均値と印加電圧E(=100V、または10V)とから、現像ローラ1のローラ抵抗値r(Ω)、または基層4のみの状態でのローラ抵抗値r′(Ω)は、基本的に式(1)′:
rまたはr′= 11 ×E/V−r 11 (1)′
によって求められる。ただし式(1)′中の−r11の項は微小とみなすことができるため、本発明では式(1):
rまたはr′= 11 ×E/V (1)
によって求めた値r(Ω)またはr′(Ω)のlog値でもって現像ローラ1のローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)、または基層4のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)とすることとする。
《画像形成装置》
本発明の画像形成装置は、上記本発明の現像ローラを組み込んだことを特徴とするものである。
かかる本発明の画像形成装置としては、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した種々の画像形成装置が挙げられる。
《基層i》
(ゴム組成物)
ゴム分としてはSBR〔JSR(株)製のJSR1502、非油展、スチレン含量:23.5%〕を用意した。
上記SBR100質量部をバンバリミキサを用いて素練りしながら、ヨウ素吸着量113mg/g、吸油量78ml/100gのカーボンブラック〔キャボットジャパン(株)製のショウブラックN219〕50質量部、およびアロマ系プロセスオイル〔H&R社製のVivaTec 400、T−DAE〕50質量部と、下記表1に示す各成分のうち架橋成分以外を加えて混練した後、架橋成分を加えてさらに混練して基層i用のゴム組成物を調製した。
Figure 0006300413
表1中の各成分は下記のとおり。なお表中の質量部は、ゴム分の総量100質量部あたりの質量部である。
5%オイル入り硫黄:架橋剤、鶴見化学工業(株)製
促進剤MBTS:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、チアゾール系促進剤、大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)DM−P
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド、チウラム系促進剤、三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)TS
酸化亜鉛2種:促進助剤、堺化学工業(株)製
(基層iの作製)
上記ゴム組成物を押出成形機に供給して外径φ20.0mm、内径φ7.0mmの筒状に押出成形し、架橋用の仮のシャフトに装着して加硫缶内で160℃×1時間架橋させた。
次いで架橋させた筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ7.5mmのシャフトに装着し直してオーブン中で160℃に加熱して当該シャフトに接着させたのち両端をカットし、円筒研磨機を用いて外周面をトラバース研磨、次いで鏡面研磨して外径:φ15.00mm(公差0.05)になるように仕上げ、さらに水洗いしてシャフトと一体化された基層iを作製した。
作製した基層iのみの状態のローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)を先に説明した測定方法によって測定したところ6.1であった。
《基層ii》
カーボンブラック〔キャボットジャパン(株)製のショウブラックN219〕の配合割合を、SBR100質量部あたり40質量部としたこと以外は基層iと同様にして基層ii用のゴム組成物を調製し、シャフトと一体化された基層iiを作製した。
作製した基層iiのみの状態のローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)を先に説明した測定方法によって測定したところ7.0であった。
《基層iii》
カーボンブラックとして、ヨウ素吸着量119mg/g、吸油量115ml/100gのカーボンブラック〔キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220〕を、SBR100質量部あたり50質量部配合したこと以外は基層iと同様にして基層iii用のゴム組成物を調製し、シャフトと一体化された基層iiiを作製した。
作製した基層iiiのみの状態のローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)を先に説明した測定方法によって測定したところ5.5であった。
《基層iv》
カーボンブラック〔キャボットジャパン(株)製のショウブラックN219〕の配合割合を、SBR100質量部あたり37質量部としたこと以外は基層iと同様にして基層iv用のゴム組成物を調製し、シャフトと一体化された基層ivを作製した。
作製した基層ivのみの状態のローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)を先に説明した測定方法によって測定したところ7.2であった。
《表層I》
(ゴム組成物)
ゴム分としてGECO〔ダイソー(株)製のエピオン(登録商標)301L、EO/EP/AGE=73/23/4(モル比)〕5質量部、CR〔昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT〕10質量部、およびNBR〔JSR(株)製のJSR N250 SL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量:20%〕85質量部を配合した。
上記ゴム分の総量100質量部をバンバリミキサを用いて素練りしながら下記表2に示す各成分のうち架橋成分以外を加えて混練した後、架橋成分を加えてさらに混練して表層I用のゴム組成物を調製した。
Figure 0006300413
表2中の5%オイル入り硫黄、促進剤MBTS、促進剤TS、および酸化亜鉛2種は表1と同じ。他の各成分は下記のとおり。なお表中の質量部は、ゴム分の総量100質量部あたりの質量部である。
チオウレア系架橋剤:エチレンチオウレア(2−メルカプトイミダゾリン)、川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)22−S
促進剤DT:1,3−ジ−o−トリルグアニジン、グアニジン系促進剤、三新化学工業(株)製のサンセラーDT
カーボンブラック:補強用カーボンブラック、旭カーボン(株)製の#15(FT)
受酸剤:ハイドロタルサイト類、協和化学工業(株)製のDHT−4A(登録商標)−2
(表層Iの形成)
上記ゴム組成物をシート状に成形し、先に作製した基層の外周面に巻き付けた状態でφ20のプレス金型内に仕込んで160℃×1時間プレスして成形し、架橋させるとともに基層と一体化させ、さらに冷却したのち表3、表4に示す厚みd(mm)になるように研磨して表層Iを形成し、現像ローラを製造した。
《表層II》
ゴム分のうちGECOの配合割合を10質量部、NBRの配合割合を80質量部としたこと以外は表層Iと同様にして表層II用のゴム組成物を調製するとともに基層と一体化された表層IIを形成し、現像ローラを製造した。
《表層III》
ゴム分のうちGECOの配合割合を15質量部、NBRの配合割合を75質量部としたこと以外は表層Iと同様にして表層III用のゴム組成物を調製するとともに基層と一体化された表層IIIを形成し、現像ローラを製造した。
《表層IV》
ゴム分のうちGECOの配合割合を30質量部、NBRの配合割合を60質量部としたこと以外は表層Iと同様にして表層IV用のゴム組成物を調製するとともに基層と一体化された表層IVを形成し、現像ローラを製造した。
《実施例1〜8、比較例1〜3》
上記基層i〜ivと表層I〜IVを表3、表4に示すように組み合わせて実施例1〜8、比較例1〜3の現像ローラを製造した。
《比較例4〜6》
先述した表層II(比較例4)、表層III(比較例5)、および表層IV(比較例6)用のゴム組成物を用いて全体の外径:φ16.00mm(公差0.05)の単層の現像ローラを製造した。
《ローラ抵抗値Rの測定》
製造した現像ローラ1の全体のローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)を先に説明した測定方法によって測定した。また測定したローラ抵抗値Rと、各基層のみのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)との差R−R′を求めた。
《実機試験》
〈黒ベタ濃度〉
上記実施例、比較例で製造した現像ローラを、正帯電性の非磁性1成分トナーを使用し、印刷可能枚数が約4000枚(A4サイズ、日本工業規格JIS X6932:2008公表値)程度であるレーザープリンタに組み込んで温度23.5℃、相対湿度55%の環境下、普通紙に1%濃度の画像を連続的に4000枚連続して画像形成した直後に、黒ベタ画像を1枚画像形成した。
形成した黒ベタ画像上の任意の5点で、反射濃度計〔TECHKON社製のテシコンRT120とライトテーブルLP20の組み合わせ〕を用いて画像濃度を測定し、その平均値を求めて黒ベタ濃度とした。黒ベタ濃度は1.30以上を合格とした。
〈ドット濃度〉
上記黒ベタ濃度と同様に普通紙に1%濃度の画像を連続的に4000枚連続して画像形成した直後に、ドット画像を1枚画像形成した。
形成したドット画像上の任意の5点で、上記と同じ反射濃度計を用いて画像濃度を測定し、その平均値を求めてドット濃度とした。ドット濃度は0.030以上を合格とした。
以上の結果を表3、表4に示す。
Figure 0006300413
Figure 0006300413
表3、表4の実施例1〜8、比較例1〜6の結果より、現像ローラ1を基層4と表層6の積層構造とし、かつローラ抵抗値の差R−R′を式(1)、厚みd(mm)を式(2)で規定した範囲として、現像ローラ1の全体でのローラ抵抗値Rを式(3)で規定した範囲とすることにより、黒ベタ濃度とドット濃度の両方を現状よりも高いレベルで両立できることが判った。
1 現像ローラ
2 通孔
3 シャフト
4 基層
5 外周面
6 表層
7 外周面
11 アルミニウムドラム
12 外周面
13 直流電源
14 抵抗
15 計測回路
F 荷重
V 検出電圧

Claims (5)

  1. 弾性材料からなる筒状の基層、および当該基層の外周面に積層された弾性材料からなる表層を備え、前記基層にシャフトが挿通されて固定された現像ローラであって、
    前記表層の厚みd(mm)、
    温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、回転するアルミニウムドラムに、前記表層を形成する前の基層の外周面を、前記シャフトの両端部にそれぞれ500gの荷重をかけて圧接させた状態で測定される、前記基層のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)、および
    温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、回転するアルミニウムドラムに、前記現像ローラの外周面を、前記シャフトの両端部にそれぞれ500gの荷重をかけて圧接させた状態で測定される、前記基層と表層の積層体の全体でのローラ抵抗値R(log Ω、100V印加時)は式(1)〜式(3):
    1.0≦R−R′ (1)
    0.1≦d≦2 (2)
    7.5≦R≦8.5 (3)
    を全て満足している現像ローラ。
  2. 前記表層はゴム分としてジエン系ゴムを含むゴム組成物からなる請求項1に記載の現像ローラ。
  3. 前記表層はゴム分としてアクリルニトリルブタジエンゴムおよびクロロプレンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のジエン系ゴムと、エピクロルヒドリンゴムとを含んでいる請求項2に記載の現像ローラ。
  4. 前記基層はゴム分と、当該ゴム分の総量100質量部あたり30質量部以上の、ヨウ素吸着量80mg/g以上、吸油量60ml/100g以上のカーボンまたは黒鉛とを含むゴム組成物からなり、かつ前記基層のみの状態でのローラ抵抗値R′(log Ω、10V印加時)が式(4):
    R′≦7.0 (4)
    を満足している請求項1ないし3のいずれか1項に記載の現像ローラ。
  5. 前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の現像ローラを組み込んだ画像形成装置。
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