JP3997366B2 - 塗膜、それを使用した事務機器用部材および事務機器 - Google Patents

塗膜、それを使用した事務機器用部材および事務機器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター等の事務機器に用いられるローラ等の部材の表面コート層として好適な塗膜、及び該塗膜を表面に被覆した事務機器用部材、更には該事務機器用部材を具備した事務機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複写機、プリンター等の事務機器には、帯電、現像、転写、中間転写、トナー層形成、トナー搬送、トナー撹拌、クリーニング、定着、紙搬送等を行うベルト、ローラ、ドラム、ブレード等の部材が使用されている。これらの部材は、多くの場合、軟らかさが要求され、ゴム状弾性体やフォーム体を金属、繊維状物或いは樹脂成型体と積層或いは複合して用いられている。
【0003】
更にこれらのゴム状弾性体やフォーム体表面に、感光体の汚染防止、トナー付着防止、トナーの帯電制御、抵抗調整、摩擦係数の制御等の種々の目的で樹脂の塗膜が施される場合が多い。
【0004】
それら樹脂の塗膜としては、種々の要求性能を満たすために種々の樹脂を混合して使用する場合が多く、なかでも、シリコーン樹脂を添加した塗膜を表面層として各部材表面に設けることがよく行われる。例えば、帯電性の制御が難しい現像プロセスにおいては、現像部材の機械的特性と帯電性能の両立を図るため、ゴム、ウレタン等で形成された弾性基材にシリコーン樹脂を混合した樹脂からなる表面層を設けることが提案されている。
【0005】
シリコーン樹脂はその材料の性質から、相手に対して高い帯電性の付与が可能であり、また、適度な硬度を持つため表面層としては好適であるが、それ単体では強度を含めた性能を満たす製膜が困難であり、通常主材となる他の樹脂に5〜50%程度のシリコーン樹脂を混合することでその特性を最適化することが行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シリコーン樹脂は表面自由エネルギーが極めて小さいため、他の樹脂との相溶性が悪く、単に混合するだけでは相分離してしまい、そのときの分離構造も大きくかつ不安定である。このため、特にこの混合樹脂を基材表面にコートした場合などは、コートムラが発生しやすく、それに伴って摩擦帯電性等の表面特性に不安定さが発現してしまう。
【0007】
更に、これらの混合樹脂にカーボン等の導電性粉体を添加して導電樹脂とした場合に、通常カーボンはシリコーン樹脂に親和性がないため、他の樹脂部に偏在することとなり、得られた部材はカーボンの偏在、すなわち導電性のばらつきが大きくなってしまう。従って、均一な現像等のプロセス性能発現に劣るものとなってしまっていた。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、シリコーン樹脂をオイルフリーアルキッド樹脂とメラミン樹脂との混合樹脂に分散させる際に、カップリング剤、特にシランカップリング剤を全樹脂量100重量部に対して0.1〜5重量部の割合で混合樹脂に添加することにより、混合樹脂同士の相溶性が高くなり、均一な混合樹脂が得られることを見いだした。即ち、シランカップリング剤は、片側末端基がシリコーン樹脂と、またそれと異なる片側末端基が他の樹脂と親和性が高いため、これをシリコーン樹脂とオイルフリーアルキッド樹脂及びメラミン樹脂と共に上記割合で混合したとき、相分離構造の不安定性が解消されて上記シリコーン樹脂の分散相の平均径が10μm以下となり、ミクロに均一な混合樹脂が得られ、またこの混合樹脂にカーボンを添加した場合、均一で長期間安定した導電塗料が得られ、ミクロに均一な導電塗膜が得られることを見いだし、本発明を完成したものである。
【0009】
従って、本発明は、シリコーン樹脂をオイルフリーアルキッド樹脂とメラミン樹脂との混合樹脂に均一に分散させてなる塗膜において、分散助剤としてカップリング剤を全樹脂量100重量部に対して0.1〜5重量部添加し、上記シリコーン樹脂の分散相の平均径を10μm以下としたことを特徴とする塗膜を提供するものである。
【0010】
以下に本発明について更に詳しく説明する。
本発明の塗膜は、上述のように、シリコーン樹脂を他の樹脂に均一に分散させる際に、分散助剤としてカップリング剤を使用したものである。
【0011】
上記シリコーン樹脂としては、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンゴムおよびそれらの変性体等が挙げられる。これらの中ても、カップリング剤との反応基を持つシリコーン樹脂が分散の安定化に好ましく、反応基としては、SiH、SiOH、SiOR、SiOCOR、SiNRR’(R、R’はメチル、エチル等のアルキル基)SiNH2、SiX(Xはハロゲン基)、SiCHCH2等が例示される。
【0012】
このシリコーン樹脂を分散させる他の樹脂としては、本発明ではオイルフリーアルキッド樹脂とメラミン樹脂との混合樹脂が用いられ、この混合樹脂により強度や耐電性能等が良好な塗膜が得られる。
【0013】
上記カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジリコニウム系、ジリコアルミネート系等のカップリング剤が挙げられる。特に、シラン系カップリング剤が、シリコーン樹脂との親和性が良く好ましい。シラン系カップリング剤を例示すれば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0014】
ここで、カップリング剤が、シリコーン樹脂を上記他の樹脂に良好に分散せしめる機構は、必ずしも明かではないが、次の様に推察できる。
【0015】
シラン系カップリング剤を代表的な一段式で示すと、YRSiX3となる(Yは、他の樹脂との親和性基ないしは反応性基、Rは有機残基、Xは加水分解性アルコキシ基、加水分解性ハロゲン基を表わす)。この場合、Xはシリコーン樹脂と親和性及び/又は反応性を持っており、一方Yは他の樹脂と親和性及び/又は反応性を持つ。このようにして、カップリング剤が、シリコーン樹脂と他の樹脂の相溶性あるいは分散性を改良するものであると推察される。
【0016】
カップリング剤の添加量は、全樹脂量100重量部に対して、0.1〜5重量部とするものであり、0.5〜3重量部が好ましい。これらの量より少ないと分散効果が小さく樹脂混合物の分散安定性が充分でなく、これらの量より多いと樹脂混合物の本来の性能、性状を変えてしまい好ましくない。
【0017】
本発明の塗膜の形成は、通常、シリコーン樹脂、オイルフリーアルキッド樹脂、メラミン樹脂、カップリング剤およびその他の添加剤に溶剤を加えて塗料とし、これを所定の基材にディップ法、ロールコーター法、ドクターブレード法、あるいはスプレー法等により塗布、乾燥、硬化させることで行われる。
【0018】
上記溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、へキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、クロロフォルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等、及びこれらの混合溶媒等が好ましく用いられる。
【0019】
上記塗料には、その他の添加剤として、他の部材との摩擦力低減や導電性付与等の目的で、荷電制御剤、滑材、導電剤等の種々の添加剤を加えることができる。
【0020】
ここで、上記塗料の作製においては、シリコーン樹脂、他の樹脂およびカップリング剤に溶剤を加えて混合し、均一分散を得た後に、その他の添加剤を添加することが好ましい。この場合、上記その他の添加剤を同時に加えるとカップリング剤がその他の添加剤と反応してしまい、シリコーン樹脂と他の樹脂の分散安定剤として作用し難くなる場合がある。
【0021】
本発明の塗膜は、シリコーン樹脂が他の樹脂のマトリックスに均一に分散しており、その分散相の平均径は10μm以下、多くの場合、5μm以下になる。それに対して、カップリング剤を用いない場合は、数十μm以上で、かつ、安定性、再現性が悪いものである。
【0022】
以下に本発明の塗膜を表面に被覆した事務機器用部材の例として、電子写真方式やトナー飛翔画像形成方式で用いられるトナー担持ローラについて説明する。
本発明のトナー担持ローラは、図1に例示するように、良導電性シャフトs等の外側に導電性を有する導電性弾性層3、更にその表面に本発明の塗膜からなる表面層2を形成したものである。
【0023】
上記導電性弾性層3としては、適宜なゴム材料に導電剤を添加して導電性を付与した弾性体が用いられる。ゴム材料としては特に限定されないが、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エビクロルヒドリンゴム等が例示され、これらの1種又は2種以上の混合ゴムを用いることができ、特に、ニトリルゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびエチレンプロピレンゴムが好ましく用いられる。
【0024】
また、この導電性弾性層3に添加される導電剤としては、イオン導電剤および電子導電剤がある。イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、へキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素数塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルフォン酸塩等のアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルフォン酸塩等が挙げられる。
【0025】
電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅等の金属等を例示することができる。
【0026】
これらの導電剤の添加量は、特に制限されるものではないが、上記イオン導電剤の場合、上記ゴム成分100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部程度とすることができ、電子導電剤は、1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部程度とすることができ、これにより導電性ゴム層の抵抗値を103〜1010Ω・cm、特に104〜108Ω・cmに調整することが好ましい。なお、この導電性弾性層には、上記導電剤以外にも必要に応じて公知の充填剤、架橋剤等、その他のゴム用添加剤を適宜添加することができる。
【0027】
この導電性弾性層3の硬度は、特に制限されるものではないが、JIS−Aで60°以下、特に25〜55゜とすることが好ましい。この場合、硬度が60゜を超えるとトナー担持ローラが硬くなり、感光体等との接触面積が小さくなって、良好な画像形成が行えなくなる場合がある。更には、トナーにダメッジを与えて感光体や成層ブレードへのトナー固着等が発生して画像不良となる。逆にあまり低硬度になると、感光体や成層ブレードとの摩擦が大きくなり、ジッター等の画像不良が発生する。
【0028】
この導電性弾性層3は、感光体や成層ブレード等と当接して使用されることから、圧縮永久歪みが小さいことが好ましく、具体的には、20%以下、特に10%以下とすることが好ましい。この場合、上記ポリウレタンゴムは、圧縮永久歪みを小さく設計でき、特に好ましい。
【0029】
また、導電性弾性層3の表面粗さは、特に制限されるものではないが、JIS10点平均粗さで、15μmRz以下、特に3〜10μmRzとすることが好ましい。JIS10点平均粗さが15μmRzを超えると、トナー担持ローラの表面層を厚く形成する必要があり、その結果、トナー担持ローラ表面が硬くなって、トナーにダメッジを与え、感光体や成層ブレードへのトナー固着等が発生して画像不良となる場合がある。一方、JIS10点平均粗さが小さ過ぎると表面層を形成した時に、トナー担持ローラ表面のRzが小さくなりすぎ、トナー担持量が少なくなって、画像濃度が低下する場合がある。
【0030】
この導電性弾性層3上に上記本発明塗膜からなる表面層2を上述した方法で形成することにより、本発明のトナー担持ローラ1を得ることができる。
【0031】
この表面層2の好ましい抵抗植の範囲は、103〜1016Ω・cmである。更に好ましくは、105〜1010Ω・cmである。表面層の抵抗の調整は、上記導電性弾性基材で述べた導電剤を本発明塗膜中に添加することにより行うことができる。トナー担持ローラの抵抗としては、103〜1010Ω・cm、特に104〜109Ω・cm程度とすることが好ましい。
【0032】
また、表面層2を形成したトナー担持ローラ1の表面粗さは、特に制限されるものではないが、JIS10点平均粗さで、10μmRz以下、特に1〜8μmRzとすることが好ましい。10μmRzを超えると、トナーの帯電量が小さくなったり逆帯電トナーが生じて、画像カブリを生じる場合があり、一方表面粗さが小さすぎるとトナー担持量が少なくなり、画像濃度が低下する場合がある。
【0033】
この表面層2の厚みは、特に制限されるものではないが、通常は3〜50μm程度、特に5〜30μmとすることが好ましい。表面層の厚さが薄いと、局所的な放電が起こり、画像に白横線が発生しやすくなり、逆に厚過ぎると、トナー担持ローラの表面が硬くなり、トナーにダメッジを与えて感光体や成層ブレードへのトナー固着等が発生して画像不良となる場合がある。
【0034】
本発明の塗膜は、上記トナー担持ローラ1のように、各種事務機器用部材の表面層用塗膜として好適に用いられるものである。本発明の塗膜を表面に被覆した事務機器用部材を具備した事務機器の種類については、特に制限はなく、例えば(1)トナーを担持したトナー担持ローラを静電潜像を保持した画像形成体(感光体等)に接触させて、トナーを該画像形成体の潜像に付着させることにより画像形成を行う加圧現像方式、(2)紙葉類からなる画像形成体に、トナー担持ローラに担持させたトナーを孔状の制御電極を介して直接飛翔せしめて、画像を形成する方式、(3)画像形成体(感光体等)に近接して非接触状態に配設されたトナー担持体の表面に、薄層に成層したトナーを担持し、これを感光体上に飛翔させて現像を行い、画像を形成する方式、など画像形成装置等が挙げられる。
【0035】
本発明のトナー担持体を具備した画像形成装置の一例としては、図2に示す加圧現像方式の装置を挙げることができる。即ち、トナーを供給するためのトナー塗布用ローラ4と静電潜像を保持した画像形成体(感光体)5との間に、トナー担持ローラ(現像ローラ)1が配設され、これらトナー担持ローラ1、画像形成体5及びトナー塗布用ローラ4がそれぞれ因中矢印方向に回転することにより、トナー6がトナー塗布用ローラ4によりトナー担持ローラ1の表面に供給され、このトナーが成層ブレード7により均一な薄層に整えられ、この状態でトナー担持ローラ1が画像形成体5と接触しながら回転することにより、薄層に形成されたトナーがトナー担持ローラ1から画像形成体5の潜像に付着して、該潜像が可視化するようになっている。なお、図中8は転写部であり、ここで紙等の記録媒体にトナー画像を転写するようになっており、9はクリーニング部であり、そのクリーニングブレード10により転写後に画像形成体5表面に残存するトナーを除去するようになっている。
【0036】
【実施例】
以下に実施例、比較例及び参考例を示して、本発明を具体的に説明するが本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[実施例1](塗料の作製1)
表面コート層用樹脂として、オイルフリーアルキッド樹脂およびメラミン樹脂(ともに大日本インキ化学工業社製)、シリコーン樹脂としてKR211(信越シリコーン社製)を用い、これらをMEK(メチルエチルケトン)溶媒中に樹脂濃度がアルキッド樹脂/メラミン樹脂/シリコーン樹脂=56/20/24となるように全体の樹脂濃度を30%として塗料を作製した。
【0037】
この塗料にアミノシランカップリング剤(N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)を樹脂対比2phrとなるよう添加し、よく撹拌した。
【0038】
得られた塗料をバーコーターにて銅板上に塗布、乾燥させ、表面をノマルスキー顕微鏡にて観察したところ、図3の電子顕微鏡写真に示されているように、大きな相分離のない均一な混合樹脂が得られていることが確認された。なお、シリコーン樹脂の分散相の平均径は10μm以下であった。
【0039】
[比較例1](塗料の作製2)
アミノシランカップリング剤を添加しないこと以外はすべて実施例1と同様にして塗膜を作製し、同様にノマルスキー顕微鏡にて表面を観察したところ、図4の電子顕微鏡写真に示されているように、樹脂は大きな相分離構造をとっており、約20μm程度のシリコーン樹脂の島部とアルキドメラミン樹脂の海の部分からなる海島構造となっていた。
【0040】
[参考例](塗料の作製3)
シリコーン樹脂を除いた以外はすべて比較例1と同様にして塗膜を作製し、同様にノマルスキー顕微鏡にて表面を観察したところ、図5の電子顕微鏡写真に示されているように、樹脂の相分離構造は解消されていた。このことから、比較例1でみられた島部はシリコーン樹脂であることが確認された。
【0041】
[実施例2](塗料の作製4)
実施例1で得られた塗料に、導電性粉体としてカーボンを樹脂対比20phr添加し、ガラスビーズを混入させてペイントシェイカーにて5時間振とうさせて導電塗料を得た。実施例1と同様にして塗膜を作製し、表面をノマルスキー顕微鏡にて観察したところ、図6の電子顕微鏡写真に示されているように、大きな相分離のない均一な混合樹脂にカーボンが均一に分離されている様子が確認された。シリコーン樹脂の分散相の平均径は10μm以下であった。
【0042】
[比較例2](塗料の作製5)
比較例1で得られた塗料に導電性粉体としてカーボンを樹脂対比20phr添加し、ガラスビーズを混入させてペイントシェイカーにて5時間振とうさせて導電塗料を得た。この導電塗料を用いて実施例1と同様にして塗膜を作製し、表面をノマルスキー顕微鏡にて観察したところ、図7の電子顕微鏡写真に示されているように、シリコーン樹脂であるところの島部にはほとんどカーボンは存在せず、アルキドメラミン樹脂の海部にカーボンが遍在しており、不均一な分散状態をとっていることが確認された。
【0043】
(導電性塗料の安定性評価)
上記実施例1及び比較例2で得られた塗料2種に対し、導電性安定状態を評価する促進試験として、得られた塗料を遠心分離器にかけ、所定の時間ごとにサンプリングして塗膜を作製し、抵抗率を測定し、導電安定性を評価した。ここでは、各サンプリング時における抵抗変動が少ないほど導電性が安定しているとした。結果を図8,図9に示す。その結果、シランカップリング剤を添加した導電塗料は抵抗変動が少なく、安定した導電性が発現できることが示された。
【0044】
(ローラ性能評価1)
分子量2500のポリイソプレンポリオール(OH価=47.1)100重量部に、アセチレンブラック2.85重量部を配合し、混合機で混合してポリオール組成物を調製した。このポリオール組成物を減圧下に撹拌して脱泡した後に、クルードジフェニルメタンジイソシアナート(NCO=31.5%)13.33重量部を加えて撹拌し、更にジブチルチンジラウレート0.001重量部を加えて撹拌した。次いで、これをシャフトを配置してなる90℃に加熱した金型に注型し、90℃で12時間硬化させて、金属シャフトの外周に導電性弾性層を形成したローラを得た。得られたローラの表面を研磨して、表面をJIS10点平均粗さ7μmRzに調整した。
【0045】
得られたローラ基材を、図12に示す回転抵抗測定器にて、電極間に10V印加したときの電流値を計測し、ローラ周方向の抵抗値変化を計測したところ、図10の実線のようになり、抵抗ばらつきは0.92桁であった。
【0046】
表面層用樹脂として、実施例2で得られた塗料を用い、ディッピング法により上記ローラ基材表面にコート層を設けた。これを風乾30分の後、110℃3時間加熱架橋させてコート済みローラを得た。このローラの破断面を観察したところ、コート層の膜厚は15μmであった。また、このローラにつき図12の回転抵抗側定器にて対極電極間に100V印加したときの抵抗値を測定したところ、図11の実線のようになり、抵抗ばらつきは0.48桁で抵抗安定性に優れたローラが得られた.
【0047】
(ローラ性能評価2)
ローラ性能評価1と同様に基材を作製し、抵抗測定を行ったところ図10の点線のようになり、抵抗ばらつきは0.89桁であった。
【0048】
表面層用樹脂として、比較例2で得られた塗料を用い、ディッピング法によりこのローラ基材表面にコート層を設けた。これを風乾30分の後、110℃3時間加熱架橋させてコート済みローラを得た。このローラの破断面を観察したところ、コート層の膜厚は15μmであった。
【0049】
このローラにつき図12の回転抵抗側定器にて対極電極間に100V印加したときの抵抗値を測定したところ、図11の点線のようになり、抵抗ばらつきは1.21桁で、ローラ性能評価1のローラに比べて抵抗安定性に劣るローラであった。また、ローラ表面には微妙なコートムラが目視で観察され、微細に不均一な表面状態になっていることが確認された。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、本発明の塗膜によれば、シリコーン樹脂が他の樹脂中にミクロに均一分散した塗膜が得られ、またこの塗膜にカーボン等の導電剤を添加した場合、均一で長期間安定した導電塗膜が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるトナー担持ローラの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明にかかる画像形成装置(事務機器)を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる塗膜を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】従来の塗膜の一例を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】シリコーン樹脂を含まない塗膜を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の他の実施例にかかる塗膜を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】従来の塗膜の他の例を示す電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例2の塗膜の導電安定性を示すグラフである。
【図9】比較例2の塗膜の導電安定性を示すグラフである。
【図10】ローラを構成する導電性弾性層の周方向に沿った電気抵抗の変動を示すグラフである。
【図11】実施例2の塗膜を形成したローラ及び比較例2の塗膜を形成したローラの周方向に沿った電気抵抗の変動を示すグラフである。
【図12】抵抗値の変動を測定する際に用いた回転抵抗側定器を示す概略図である。
【符号の説明】
1 トナー担時ローラ
2 塗膜(表面層)
3 導電性弾性層
4 トナー塗布用ローラ
5 感光体(画像形成体)
6 トナー
7 成層ブレード
8 転写部
9 クリーニング部
10 クリーニングブレード

Claims (8)

  1. シリコーン樹脂をオイルフリーアルキッド樹脂とメラミン樹脂との混合樹脂に均一に分散させてなる塗膜において、分散助剤としてカップリング剤を全樹脂量100重量部に対して0.1〜5重量部添加し、上記シリコーン樹脂の分散相の平均径を10μm以下としたことを特徴とする塗膜。
  2. 抵抗値調整用塗膜である請求項1記載の塗膜。
  3. 上記カップリング剤がシラン系カップリング剤であることを特徴とする上記請求項1又は2記載の塗膜。
  4. 導電剤を添加して抵抗を調整したものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗膜。
  5. 導電剤がカーボンである請求項4記載の塗膜。
  6. 上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗膜を表面に被覆してなることを特徴とする事務機器用部材。
  7. 上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗膜を表面に被覆したトナー担持ローラである請求項6記載の事務機器用部材。
  8. 上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗膜を表面に被覆してなる事務機器用部材を具備していることを特徴とする事務機器。
JP31447497A 1997-10-30 1997-10-30 塗膜、それを使用した事務機器用部材および事務機器 Expired - Fee Related JP3997366B2 (ja)

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