JP4156131B2 - トナー担持体及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トナー担持体及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、複写機やプリンター等の画像形成装置において、静電潜像を保持した感光体や紙等の画像形成体にトナーを供給して、該画像形成体表面に可視像を形成させるためのトナー担持体であって、濃度むらのない高品質の画像を与え、かつ長期使用における特性変化が小さく耐久性に優れたトナー担持体、及びそれを装着した画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複写機やプリンター等の電子写真方式の画像形成装置などにおいて、静電潜像を保持した感光体等の画像形成体に一成分トナーを供給し、該トナーを潜像に付着させて可視化する画像形成方法として、加圧現像法が知られている(米国特許第3152012号明細書、同第3731146号明細書等)。
この加圧現像法は、トナーを担持したトナー担持体を、静電潜像を保持した画像形成体(感光体)に接触させて、トナーを該画像形成体の潜像に付着させることにより画像形成を行うもので、このため上記トナー担持体を導電性と弾性を有する導電性弾性体で形成することが必要である。
すなわち、この加圧現像法では、例えば図2に示すように、トナーを供給するためのトナー塗布用ローラ5と静電潜像を保持した画像形成体(感光体)6との間に、トナー担持体(現像ローラ)1が配設され、これらトナー担持体1、画像形成体6及びトナー塗布用ローラ5がそれぞれ図中矢印方向に回転することにより、トナー7がトナー塗布用ローラ5によりトナー担持体1の表面に供給され、このトナーが成層ブレード8により均一な薄膜に整えられる。そして、この状態でトナー担持体1が画像形成体6と接触しながら回転することにより、薄層に形成されたトナーがトナー担持体1から画像形成体6の潜像に付着して、該潜像が可視化するようになっている。図中9は転写部であり、ここで紙等の記録媒体にトナー画像を転写するようになっている。また、10はクリーニング部であり、そのクリーニングブレード11により転写後に画像形成体6表面に残存するトナーを除去するようになっている。
【0003】
このような加圧現像法による画像形成装置においては、トナー担持体1は、画像形成体6に密着した状態を保持しながら回転しなければならず、このため、図1の概略断面図に示すように、金属等の良導電性材料からなるシャフト2の外周に、シリコーンゴム,NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム),EPR(エチレン−プロピレンゴム),EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム),ポリウレタンゴム等の弾性ゴムやフォームなどに導電剤を配合して導電性を付与した導電性弾性体からなる導電性弾性層3を形成した構造となっている。さらに、トナー7に対する帯電性や付着性の制御のために、画像形成体6及び成層ブレード8との摩擦力制御のために、あるいは弾性体による画像形成体の汚染防止などのために、樹脂等からなる被覆層4が導電性弾性層3の表面に設けられている。
一方、紙やOHP用紙などの紙葉類からなる画像形成体に、トナー担持体上に担持させたトナーを孔状の制御電極を介して直線飛翔せしめて、画像を形成させる画像形成法も提案されている。また、画像形成体(感光体)に近接して非接触状態に配設されたスリーブ状のトナー担持体の表面に、薄層に成層した非磁性トナーを担持し、これを画像形成体上に飛翔させて現像を行い、画像を形成させる方法も提案されている(特開昭58−116559号公報)。
【0004】
いずれの場合も、トナー担持体上には、トナーに対する帯電性や付着性の制御のために、あるいは画像形成体,成層ブレード,制御電極等の他の部材との摩擦力低減などのために、樹脂等からなる被覆層が導電性弾性層の表面に設けられている。
本発明者らは、これまでに、メラミン樹脂,フェノール樹脂,アルキッド樹脂,フッ素樹脂,ポリアミド樹脂等の樹脂を被覆層に用いたトナー担持体を、摩擦や画像を改良しうるトナー担持体として提案してきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近に至って、プリンターなどが高速化されたり、微細画像が要求されたり、あるいはカラー画像化されたりすることにより、画像形成に対する要求が厳しくなり、従来のトナー担持体では対応できない種々の問題が顕在化してきた。すなわち、トナー担持体をプリンターなどに組み込み、長期間に渡って非使用状態に保った後に画像出しを行う場合、
1)白地画像において、用紙の進行方向に対し垂直方向に黒線(黒横線)が入る、
2)ハーフトーン画像において、「ざらつき」紋様や濃淡むらが生じる、
などの画像不良が発生するという問題が顕在化してきた。
また、トナー担持体を長期間使用するに伴い、
3)トナー帯電量あるいはトナー搬送量が低下する、
という現象も発生し、これも大きな問題となっている。
本発明者らは、上記問題について検討を重ねた結果、画像不良が次のような原因によるものであるという知見を得た。
【0006】
すなわち、例えば、図2に示すような画像形成装置においてトナー担持体1を長期間使用した場合、トナー7、トナー塗布用ローラ5あるいは成層ブレード8との摩擦により、トナー担持体表面の被覆層が摩耗すること、トナーフィルミングの発生によって、トナー担持体の表面性状が変化するため、トナー帯電量やトナー搬送量が変わり、画像不良が発生することである。従って、画像不良の問題を解決するには表面を形成する被覆層の耐久性を上げればよいことになる。
表面を形成する被覆層の耐久性を上げるには、これまで、該被覆層を厚膜化することが試みられてきた。しかしながら、このような厚膜化は、初期の使用条件におけるトナー帯電量の制御不能による高帯電量化あるいはトナー担持体の高硬度化によるトナーの損傷やトナーの融着,画像形成体のキズの発生など、好ましくない事態を招来するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、画像むらがない高品質の画像が得られるように初期条件を最適化した上で、長期使用時における画像不良の発生を防止し、良好な画像が確実に得られるような、帯電性能と耐久性とが両立したトナー担持体及び及びそれを装着した画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、トナー、トナー塗布用ローラあるいは成層ブレードとの摩擦に対して、優れた耐久性を発揮し、長期使用による表面性変化が小さく、しかも画像形成体の汚染防止、トナー付着防止、トナー帯電量の制御、抵抗調整、摩擦係数の制御等、被覆層の設計において求められる諸機能を有する構成材料を念頭において鋭意研究検討を重ねた結果、アルキッド変性シリコーン化合物とメラミン樹脂の混合物を硬化させてなる樹脂を含有する材料が、これらの諸要求を満足させうることを見出した。
シリコーン化合物は、その骨格を形成するシロキサン結合が、C−C単結合と対比してより大きな結合エネルギーを示すこと、約50%のイオン結合性を有することなどから、結合が安定したものである。また、シロキサン結合は、その結合間距離がC−C単結合より長く、電子密度も低いことから結合の回転が容易であり、C−C鎖と比べてより柔軟な性状を示すものである。以上のような特性を有することから、シリコーン化合物は、柔軟性と耐熱・耐候性を両立する材料としての利用を可能としている。しかしながら、シリコーン化合物は、密着性に劣ること、レジン状乃至エラストマー状にすると機械的強度が低下することから、種々有機樹脂と組み合わせ、変性体として用いられることが多い。このような変性シリコーン樹脂で導電性弾性材料からなるローラの表面を被覆すれば、皮膜を厚膜化することなく耐久性の良好なローラを実現できると考え、鋭意検討の結果、ある種の変性シリコーン樹脂を用いると、強度と柔軟性とを兼ね備えた皮膜を生成し得ることを見出した。しかし、変性シリコーン化合物の加熱乾燥硬化には一般に150〜200℃の高温を要し、この温度は、ローラ基材である導電性弾性材料の耐熱限界を超える温度であるため、ローラの皮膜として使用することはできなかった。
本発明者らが着目したのは、上記変性シリコーン化合物が変性によって有機樹脂との相溶性が向上している点であり、変性シリコーン化合物を他の樹脂と混合し、硬化させることにより、シリコーン化合物が有する可撓性等の特性を該有機樹脂に付与し、耐久性が得られるものと推定した。そこで更に詳細な検討を行った結果、アルキッド変性シリコーン化合物とメラミン樹脂を組み合わせることにより、表面特性、耐久性、タック性等に優れた被覆層を、ローラ基材である導電性弾性材料の熱的耐久性の範囲内である中低温領域で生成しうることを見出した。
一方、本発明で硬化剤として用いられるメラミン樹脂は、その構造が電子供与性能に有利な形態を取っており、優れた電子放出能を発現する。このため、メラミン樹脂をアルキッド変性シリコーン化合物の硬化に用いことによって、トナーを電子供与により帯電させるのに有利に働くことも上記「トナー帯電量制御不能による高帯電量化」という問題解決に有利に働くものと推定され、これにより、アルキッド変性シリコーン化合物のもつ優れた物性とメラミン樹脂のもつ優れたトナー帯電性の両者を併有するトナー担持体被覆層用樹脂が得られることを見出した。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、表面にトナーを担持してその薄膜を形成し、この状態で画像形成体に接触又は近接して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、画像形成体表面に可視画像を形成させるトナー担持体において、トナー担持体が、導電性弾性層の表面に、アルキッド変性シリコーン化合物とメラミン樹脂との混合物を硬化させてなる樹脂を含有する材料からなる被覆層を有するものであることを特徴とするトナー担持体を提供するものである。
また本発明は、トナー担持体が装着されてなり、かつトナー担持体の表面にトナーを担持してその薄膜を形成し、このトナー担持体を画像形成体に接触又は近接させて、該画像形成体表面にトナーを供給することにより、画像形成体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、該トナー担持体として、上記本発明のトナー担持体を用いたことを特徴とする画像形成装置をも提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のトナー担持体は、図1に示すように、良導電性シャフト2の外周に導電性弾性層3が形成され、導電性弾性層3の表面に被覆層4を形成したものである。シャフト2としては、良好な導電性を有するものであればいずれのものも使用し得るが、通常は、金属製の中実体からなる芯金や内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフトが用いられる。
上記導電性弾性層3には、適当なゴム材料に導電剤を添加して導電性を付与した弾性材料が用いられる。ここで、ゴム材料としては、特に制限はなく、例えばニトリルゴム,エチレンプロピレンゴム,エチレンプロピレンジエンゴム,スチレンブタジエンゴム,ブタジエンゴム,イソプレンゴム,天然ゴム,シリコーンゴム,ウレタンゴム,アクリルゴム,クロロプレンゴム,ブチルゴム,エピクロルヒドリンゴム等が挙げられ、これらは一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中で、特にブタジエンゴム,エチレンプロピレンゴム,エチレンプロピレンジエンゴム及びウレタンゴムから選ばれる一種又は二種以上の混合物が好ましい。
【0011】
一方、これらのゴム材料に添加される導電剤は、イオン導電剤と電子導電剤とがあり、前者のイオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム,テトラブチルアンモニウム,ラウリルトリメチルアンモニウム等のドデシルトリメチルアンモニウム,ヘキサデシルトリメチルアンモニウム,ステアリルトリメチルアンミニウム等のオクタデシルトリメチルアンモニウム,ベンジルトリメチルアンモニウム,変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩,塩素酸塩,塩酸塩,臭素酸塩,ヨウ素酸塩,ホウフッ化水素酸塩,硫酸塩,アルキル硫酸塩,カルボン酸塩,スルホン酸塩などのアンモニウム塩;リチウム,ナトリウム,カルシウム,マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の過塩素酸塩,塩素酸塩,塩酸塩,臭素酸塩,ヨウ素酸塩,ホウフッ化水素酸塩,トリフルオロメチル硫酸塩,スルホン酸塩などが挙げられる。
また、電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック,アセチレンブラック等の導電性カーボンブラック;SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボンブラック;酸化処理を施したインク用カーボンブラック,熱分解カーボンブラック,グラファイト;酸化スズ,酸化チタン,酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル,銅等の金属などの粉末が挙げられる。
【0012】
これらの導電剤は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限されるものではないが、イオン導電剤の場合、上記ゴム材料100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部の範囲とすることができ、電子導電剤の場合、1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部の範囲とすることができる。
この導電剤添加量の調整により、導電性弾性層の固有抵抗値を、103 〜1010Ω・cm、特に104 〜108 Ω・cmの範囲に調整するのが好ましい。なお、この導電性弾性層には、上記導電剤以外に必要に応じ、従来公知の充填剤,架橋剤など、その他のゴム用添加剤を適宜添加することができる。
この導電性弾性層の硬度は、JIS−Aで60°以下、特に25〜55°の範囲とすることが好ましい。この硬度が60°を超えるとトナー担持体が硬くなり、感光体等との接触面積が小さくなって、良好な画像形成が行えなくなるおそれがある上、トナーに損傷を与えて画像形成体や成層ブレードへのトナー固着などが発生して、画像不良が生じる原因となる。逆に低硬度になりすぎると、画像形成体や成層ブレードとの摩擦が大きくなり、ジッター等の画像不良が発生するおそれがある。
【0013】
導電性弾性層は、画像形成体や成層ブレードなどと当接して使用されることから、圧縮永久歪みが小さいことが好ましく、具体的には20%以下、特に10%以下が好ましい。特にポリウレタンゴムは、この圧縮永久歪みを小さく設計できるので、特に好ましい。
また、この導電性弾性層の表面粗さは、JIS10点平均粗さで、15μmRz以下、特に3〜10μmRzとすることが好ましい。この平均粗さが15μmRzを超えるとトナー担持体の表面を形成する被覆層を厚く形成する必要があり、その結果、トナー担持体表面が硬くなり、トナーに損傷を与えて画像形成体や成層ブレードへのトナー固着などが発生して、画像不良となるので好ましくない。また、Rzが小さすぎると該被覆層を形成したときに、トナー担持体の表面のRzが小さくなりすぎ、トナー担持量が少なくなり画像濃度が低下するおそれが生じる。
なお、この表面粗さは、表面粗さ計「サーフコム590A」(東京精密社製)を用いて、円周方向に測定長さ2.4mm、測定速さ0.3mm/秒、カットオフ波長0.8mmでローラのシャフト方向及び円周方向で偏りがないように300箇所以上測定して求めた値である(以下においても同様)。
【0014】
本発明のトナー担持体においては、トナーに対する帯電性や付着性の制御のために、画像形成体や成層ブレードなどとの摩擦力低減のために、あるいは、弾性体による画像形成体の汚染防止などのために、上記導電性弾性層の表面に樹脂等からなる被覆層が設けられている。この被覆層は、アルキッド変性シリコーン化合物とメラミン樹脂との混合物を硬化させてなる樹脂を含有する材料で形成される。
アルキッド変性シリコーン化合物としては、オルガノポリシロキサンとアルキッドとを脱水縮合反応させて変性したもの、オルガノアルコキシポリシロキサンとアルキッドとを脱アルコール縮合反応させて変性したもの、オルガノポリシロキサン,多価アルコール,脂肪酸及び多塩基性酸を脱水縮合反応させて変性したものとに大別されるが、本発明においてはこれらのいずれのものも使用することができる。また、硬化特性により大別すると、常温硬化型のものと加熱乾燥型のものとがあるが、加熱乾燥型のものは混合溶液の常温ゲル化のおそれがなく、実際に使用する場合、ポットライフの面から有利であると考えられる。常温硬化型の例として信越化学工業社製のKR5206が挙げられ、加熱乾燥型の例として信越化学工業社製のKR206が挙げられる。
本発明者らの検討によると、加熱乾燥型の例として挙げたアルキッド変性シリコーン化合物を含有する材料で被覆層を構成した場合、トナー帯電性が良く、特に好ましい結果をもたらす。該アルキッド変性シリコーン化合物の構造としては多種多様なものがあるが、一例として下記式
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、R1 は任意の炭素数を有するアルキレン基を示し、R2 〜R6 は任意の炭素数を有するアルキル基又はフェニル基を示し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。n及びmは単位構造の構成比率を示す。)
で表されるアルキッド変性シリコーン化合物が挙げられる。
上記式において、アルキレン基としては炭素数1〜60のものが好ましく、特に1〜30のものが好ましい。また、アルキル基としては炭素数1〜60のものが好ましく、特に1〜30のものが好ましい。
これらのアルキッド変性シリコーン化合物は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
一方、メラミン樹脂としては、例えばトリメチロールメラミン樹脂,ヘキサメトキシメチルメラミン樹脂,n−ブチルエーテルメラミン樹脂,イソブチルエーテルメラミン樹脂などが挙げられる。これらの中で、特にトリメチロールメラミン樹脂,ヘキサメトキシメチルメラミン樹脂及びイソブチルエーテルメラミン樹脂が好適である。これらのメラミン樹脂は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、上記アルキッド変性シリコーン化合物とメラミン樹脂は、固形分重量比(アルキッド変性シリコーン化合物:メラミン樹脂)が、好ましくは20:80〜98:2、より好ましくは30:70〜95:5、特に好ましくは40:60〜70:30の範囲になるような割合で用いるのが有利である。
本発明に係る被覆層は、溶剤に対する不溶率が70重量%以上のものが好ましく、この不溶率が70重量%未満では、長期間の放置により、画像形成体や成層ブレードなど、トナー担持体と接触している部材の圧接痕ができ、その結果、画像に黒横線などの不具合が生じるおそれがある。特に、溶剤不溶率が80重量%以上のものが好適である。
【0018】
本発明に係る被覆層は、上記硬化樹脂を主成分とするものであるが、その他に、トナーへの帯電能のさらなる向上、他の部材との摩擦力低減や導電性付与等の目的で、荷電制御剤,滑材,導電剤、その他の樹脂等の種々の添加剤を含有させることができる。
本発明のトナー担持体においては、このような被覆層の抵抗を、導電性弾性層の抵抗より高くすることが、トナー担持体の抵抗を調整する上で好ましく、この被覆層の好ましい固有抵抗値は109 〜1015Ω・cmの範囲であり、特に1010〜1013Ω・cmの範囲が好ましい。また、トナー担持体の抵抗としては105 〜1012Ωが好ましく、107 〜1010Ωが特に好ましい。
また、被覆層を形成したトナー担持体の表面粗さは、JIS10点平均粗さで、10μmRz以下、特に1〜8μmRzとすることが好ましい。この平均粗さが10μmRzを超えると、トナーの帯電量が小さくなったり逆帯電トナーが生じて、画像かぶりを生じるので好ましくない。また、Rzが小さすぎるとトナー担持量が少なくなり、画像濃度が低下するおそれが生じる。
本発明のトナー担持体における被覆層の形成方法については特に制限はないが、アルキッド変性シリコーン化合物及びメラミン樹脂、必要に応じて各種添加剤を溶解又は分散させてなる塗工液をディッピング法,ロールコーター法,ドクターブレード法,スプレー法などにより、導電性弾性層上に塗布したのち、常温あるいは50〜170℃程度の温度で乾燥し、架橋硬化させて形成する。
【0019】
この被覆層の厚さは、3〜50μm程度とすることができるが、特に5〜30μmの範囲が好ましい。この被覆層の厚さが薄すぎると局所的な放電が起こり、画像に白横線が発生しやすくなる。また、厚すぎるとトナー担持体が硬くなり、トナーに損傷を与えて画像形成体や成層ブレードへのトナー固着などが発生して画像不良の原因となる。
前記塗工液の調製に用いられる溶媒としては、例えばメタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、イソプロピルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム,シクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等、及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。本発明においては、ケトン系溶媒及びケトン系溶媒と芳香族系炭化水素との混合溶媒が特に好ましく用いられる。
【0020】
本発明のトナー担持体は、電子写真装置における現像装置などの画像形成装置に現像ローラ等として組み込まれて用いられるものであり、例えば、図2に示したように、トナーを供給するためのトナー塗布用ローラ5と静電潜像を保持した感光ドラム(画像形成体)6との間に、本発明のトナー担持体を現像ローラ1として配置し、トナー塗布用ローラ5によりトナー7を担持し、これを成層ブレード8により均一な薄層に整え、さらにこの薄層からトナーを感光ドラム(画像形成体)6に供給し、感光ドラム(画像形成体)6の静電潜像にトナーを付着させて潜像を可視化するものである。図2に示した画像形成装置の詳細については、上述の従来技術において説明したので省略する。
なお、本発明のトナー担持体を装着する画像形成装置は、図2に示したものに限定されず、表面にトナーを担持して該トナーの薄層を形成し、この状態で画像形成体に接触又は近接して、該画像形成体表面にトナーを供給することにより、画像形成体表面に可視画像を形成するものであればいずれのものでもよい。例えば、紙やOHP用紙等の紙葉類を画像形成体とし、ごれらにトナー担持体上に担持させたトナーを制御電極に形成した孔を通して直接飛翔せしめ、紙やOHP用紙に直接画像を形成させるものであってもよい。
【0021】
また、本発明のトナー担持体に担持させるトナーとしては、非磁性の一成分現像剤が好適に用いられるが、磁性タイプの一成分現像剤を用いることもでき、例えば磁性一成分現像剤を用いて白黒画像印字を行う場合にも、本発明のトナー担持体及び画像形成装置を好適に用いることができる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で得られたローラ(トナー担持体)について、下記の要領で特性試験を行った。
(1)被覆層の層厚
被試験ローラの垂直切断面を走査型電子顕微鏡により観察して測定した。
(2)被覆層の溶剤不溶率
被試験ローラとは別に、ガラス板を用意して、各ローラの被覆層形成に用いた塗工液をガラス板に塗布し、各ローラの作製と同一の条件で塗膜を加熱し、硬化させて塗膜試料を作製した。このガラス板を、塗工液の調製に用いたものと同様の溶媒中に常温で24時間浸漬した後、乾燥させて、浸漬前後の塗膜の重量を測定し、下記の式により溶剤不溶率を算出し、ローラの被覆層の溶剤不溶率とし、この被覆層の溶剤不溶率が70重量%以上かどうかを確認した。
溶剤不溶率=〔(溶剤に浸漬、乾燥後の塗膜重量)/(溶剤に浸漬前の塗膜重量)〕×100(重量%)
【0023】
(3)屈曲試験
被試験ローラとは別に、ポリプロピレン製トレーを用意して、各ローラの被覆層形成に用いた塗工液をこのトレー中に広げ、該塗工液の溶媒を揮発させた後、各ローラの作製と同一の条件で加熱乾燥させ、硬化させて塗膜試料を作製した。塗工液の使用量は、最終的に膜厚15μm程度の試料が得られるように適宜調節した。得られた塗膜をトレーから丁寧に引き剥がし、30mm×30mmの大きさに切り出して試験片とした。この試験片の対角が重なるように屈曲させ、膨らんだ試験片の中央部を折り目が付く程度にまで潰していく、という作業を折り目が十分に塑性変形するまで繰り返し、この間に試験片に折り目が生じるかどうかを確認した。
(4)表面粗さ(Rz)
被試験ローラについて、表面粗さ計サーフコム590A(東京精密社製)を用い、軸方向に対して直行した向き(円周方向)に測定長さ2.4mm、測定速さ0.3mm/sec.、カットオフ波長0.8mmで、ローラのシャフト方向及び円周方向で偏りがないように、300箇所以上測定した値を平均してJIS10点平均粗さを求めた。
【0024】
(5)ローラの抵抗
被試験ローラの両端に各500gの荷重をかけて銅板上に押し付け、抵抗率計R8340A(アドバンテスト社製)を用い、100Vの電圧を印加して抵抗値を測定した。
(6)トナー帯電量
被試験ローラを現像ローラとして、図2に示した現像ユニット部に装着し、現像ローラを50mm/秒の周速で回転させ、この現像ローラ表面にトナー薄層を形成し、このトナー薄層を吸引してファラディゲージ内に導入し、電荷量を測定した。これと同時に、吸引されたトナー量も測定し、単位重量当たりのトナー帯電量〔q/m(μC/g)〕を求めた。
(7)画像評価
被試験ローラを現像ローラとして図2に示した現像ユニットに組み込み、現像バイアス−400V、ブレードバイアス600Vとし、平均粒径7μmの負帯電非磁性一成分トナーを用い、線速60mm/秒の周速で回転させながら反転現像で画像出しを行い、白地画像、ハーフトーン画像及び黒地画像における画像評価を行った。初期画像として10枚目、耐久画像として1万枚目の印刷画像の前後の計5枚について評価し、評価結果とした。
【0025】
実施例1
グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを付加し、分子量5000としたポリエーテルポリオール(OH価:33mgKOH/g)100重量部に1,4−ブタンジオール1.0重量部、ニッケルアセチルアセトネート0.5重量部、ジブチルチンジラウレート0.01重量部及びアセチレンブラック2.0重量部を添加し、混合機を用いて混合してポリオール組成物を調製した。
このポリオール組成物を減圧下に攪拌して脱泡した後、ウレタン変性MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)を17.5重量部加えて2分間攪拌し、これを、金属シャフトを配置し予め110℃に加熱した金型に注型し、110℃で2時間硬化させて金属シャフトの外周に導電性弾性層を形成してローラを得た。得られたローラの表面を研磨して、表面をJIS10点平均粗さ10.5μmRz に調整した。
なお、この表面粗さは、上述したように、表面粗さ計「サーフコム590A」(東京精密社製)を用いて測定した(以下の例においても同様)。
【0026】
次に、アルキッド変性シリコーン化合物としてシリコーンアルキッドワニスKR206(信越化学工業社製,固形分率50重量%)、メラミン樹脂としてスーパーベッカミンL−145−60(大日本インキ化学工業社製、固形分率60重量%)を用い、溶媒としてメチルエチルケトンとトルエンを重量比9/1で混合したものに、上記化合物を固形分重量比50/50となるように混合し、導電剤として予め溶媒に分散させたカーボンブラック#220(御國色素社製,固形分濃度40重量%)を、上記混合物の固形分100重量部に対して固形分で30重量部となるように添加し、分散させて全体固形分濃度25重量%の塗工液を調製した。当該塗工液中に、上記導電性弾性ローラを浸漬して引き上げ、これを110℃にて4時間加熱し、硬化した被覆層を有する図1と同様のローラ状トナー担持体を得た。
このトナー担持体の特性を第1表に示す。
実施例2
実施例1における被覆層の形成において、アルキッド変性シリコーン化合物とメラミン樹脂とを固形分重量比90/10となるように混合した以外は、実施例1と同様にしてローラ状トナー担持体を作製した。このトナー担持体の特性を第1表に示す。
【0027】
比較例1
実施例1における被覆層の形成において、アルキッド変性シリコーン化合物とメラミン樹脂とを固形分重量比100/0、すなわちアルキッド変性シリコーン化合物のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてローラ状トナー担持体を作製した。このトナー担持体の特性を第1表に示す。
比較例2
実施例1における被覆層の形成において、アルキッド変性シリコーン化合物の代わりにオイルフリーアルキッド樹脂(大日本インキ化学工業社製、商品名:M6402)を用いた以外は、実施例1と同様にしてローラ状トナー担持体を作製した。このトナー担持体の特性を第1表に示す。
比較例3
実施例1における被覆層の形成において、アルキッド変性シリコーン化合物及びメラミン樹脂との混合物の変わりに、ポリエステルポリオール100重量部にウレタン変性MDIを10重量部加えたものを用いた以外は、実施例1と同様にしてローラ状トナー担持体を作製した。このトナー担持体の特性を第1表に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
第1表から、実施例のトナー担持体は、良好なトナー帯電性を示し、被覆層において屈曲による亀裂が発生することのない柔軟性を有し、かつ良好に耐久画像を再現しうるものであることが確認できた。
【0030】
【発明の効果】
本発明のトナー担持体は、メラミン樹脂により硬化させたアルキッド変性シリコーン化合物を用いて、導電性弾性層の表面に設けられる被覆層を構成することにより、長期間連続使用しても、該被覆層に割れや削れが生じることがなく、各種画像不良の発生を防止することができ、良好な画像を長期に渡って再現することができるものであって、各種画像形成装置のトナー担持体として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のトナー担持体の一例を示す概略断面図である。
【図2】 本発明の画像形成装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1:トナー担持体(現像ローラ)
2:シャフト
3:導電性弾性層
4:被覆層
5:トナー塗布用ローラ
6:画像形成体(感光体)
7:トナー
8:成層ブレード
9:転写部
10:クリーニング部
11:クリーニングブレード
Claims (11)
- 表面にトナーを担持してその薄膜を形成し、この状態で画像形成体に接触又は近接して、該画像形成体表面に該トナーを供給することにより、画像形成体表面に可視画像を形成させるトナー担持体において、トナー担持体が、導電性弾性層の表面に、アルキッド変性シリコーン化合物とメラミン樹脂との混合物を硬化させてなる樹脂を含有する材料からなる被覆層を有するものであることを特徴とするトナー担持体。
- アルキッド変性シリコーン化合物とメラミン樹脂との混合割合(アルキッド変性シリコーン化合物:メラミン樹脂)が、固形分重量比20:80〜98:2である請求項1記載のトナー担持体。
- アルキッド変性シリコーン化合物が、オルガノポリシロキサンとアルキッドとを脱水縮合反応させて変性したもの、オルガノアルコキシポリシロキサンとアルキッドとを脱アルコール縮合反応させて変性したもの、並びにオルガノポリシロキサン,多価アルコール,脂肪酸及び多塩基性酸を脱水縮合反応させて変性したものの中から選ばれた少なくとも一種である請求項1又は2記載のトナー担持体。
- メラミン樹脂が、トリメチロールメラミン樹脂,ヘキサメトキシメチルメラミン樹脂,n−ブチルエーテルメラミン樹脂及びイソブチルエーテルメラミン樹脂の中から選ばれた少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載のトナー担持体。
- 導電性弾性層を構成するゴム弾性体が、ブタジエンゴム,エチレンプロピレンゴム,エチレンプロピレンジエンゴム及びウレタンゴムの中かれ選ばれた少なくとも一種である請求項1〜4のいずれかに記載のトナー担持体。
- 導電性弾性層の固有抵抗値が103 〜1010Ω・cm、硬度がJIS−Aで60゜以下、圧縮永久歪が20%以下及び表面粗さがJIS10点平均粗さで15μmRz以下である請求項1〜5のいずれかに記載のトナー担持体。
- 被覆層の厚さが、3〜50μmである請求項1〜6のいずれかに記載のトナー担持体。
- 被覆層の溶剤に対する不溶率が、70重量%以上である請求項1〜7のいずれかに記載のトナー担持体。
- 被覆層の固有抵抗値が、109 〜1015Ω・cmである請求項1〜8のいずれかに記載のトナー担持体。
- トナー担持体の抵抗が105 〜1012Ω及び表面粗さがJIS10点平均粗さで10μmRz以下である請求項1〜9のいずれかに記載のトナー担持体。
- トナー担持体が装着されてなり、かつトナー担持体の表面にトナーを担持してその薄膜を形成し、このトナー担持体を画像形成体に接触又は近接させて、該画像形成体表面にトナーを供給することにより、画像形成体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、上記トナー担持体として、請求項1〜10のいずれかに記載のトナー担持体を用いたことを特徴とする画像形成装置。
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