JP6507943B2 - 潤滑剤溶液、潤滑剤塗膜付き物品の製造方法、および潤滑剤塗膜付き物品。 - Google Patents

潤滑剤溶液、潤滑剤塗膜付き物品の製造方法、および潤滑剤塗膜付き物品。 Download PDF

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Description

本発明は、潤滑剤溶液、潤滑剤塗膜付き物品の製造方法、および潤滑剤塗膜付き物品に関する。
潤滑剤を含む塗膜(以下、潤滑剤塗膜とも記す。)を有する物品は、たとえば、潤滑剤を溶剤に溶解した潤滑剤溶液を物品の表面に塗布した後、溶剤を蒸発させて物品の表面に潤滑剤塗膜を形成することによって製造される。
潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤およびシリコーン系潤滑剤が知られている。物品が金属(注射針等)の場合、潤滑剤としては、金属との密着性に優れる点から、変性シリコーンオイル、特にジアミン変性シリコーンオイルが用いられる。
従来、上記潤滑剤の溶剤として、不燃性であり、かつ化学的および熱的安定性に優れる点から、クロロフルオロカーボン類(以下、CFC類と記す。)、ハイドロクロロフルオロカーボン類(以下、HCFC類と記す。)が用いられてきた。
しかし、CFC類およびHCFC類は、オゾン層に悪影響を及ぼすことから、先進国においては2020年に生産が全廃される予定である。
オゾン層に悪影響を及ぼさない溶剤としては、ペルフルオロカーボン類(以下、PFC類と記す。)、ハイドロフルオロカーボン類(以下、HFC類と記す。)、ハイドロフルオロエーテル類(以下、HFE類と記す。)等が知られている。
しかし、HFC類およびPFC類は、地球温暖化係数が大きいため、京都議定書の規制対象物質となっている。また、HFC類、HFE類およびPFC類は、潤滑剤の溶解性が低いことから、潤滑剤の溶剤としては適用範囲が狭い。
地球環境に悪影響を及ぼさず、かつ上記潤滑剤の溶解性に優れる溶剤として、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(以下、HCFO−1233zdとも記す。)が提案されている。特許文献1には、HCFO−1233zdを含むシリコーン化合物用溶剤が開示されている。
HCFO−1233zdは、構造異性体が存在することが知られており、通常はHCFO−1233zdのE体(以下、HCFO−1233zd(E)ともいう。)およびHCFO−1233zdのZ体(以下、HCFO−1233zd(Z)ともいう。)との混合物として存在する。しかしながら、HCFO−1233zdのE体の沸点は19℃であるため、潤滑剤溶液中のHCFO−1233zd(E)が容易に揮発し、潤滑剤溶液のシリコーンオイルが経時変化とともに濃縮されるため潤滑剤を均一な膜厚で物品の表面に塗布することが困難であった。
特許第5648345号
本発明は、地球環境に悪影響を及ぼさず、物品への塗布性に優れた潤滑剤溶液、潤滑剤塗膜付き物品の製造方法、および潤滑剤塗膜付き物品を提供することを目的とする。
本発明は、下記の構成を有する潤滑剤溶液および該潤滑剤溶液を用いた潤滑剤塗膜付き物品を提供する。
[1]ジアミン変性シリコーンオイルを含む潤滑剤と、溶剤とを含み、前記溶剤が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体であることを特徴とする潤滑剤溶液。
[2]前記潤滑剤の割合が、前記潤滑剤溶液の100質量%のうち、0.01〜50質量%であり、前記溶剤の割合が、前記潤滑剤溶液の100質量%のうち、50〜99.99質量%である、[1]に記載の潤滑剤溶液。
[3]前記潤滑剤溶液が、架橋剤をさらに含み、前記架橋剤がアミン基含有アルコキシ
シランまたはその多量体である、[1]または[2]に記載の潤滑剤溶液。
[4]前記ジアミン変性シリコーンオイルが、分子中にアルコキシ基を有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の潤滑剤溶液。
[5]前記溶剤が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体と、ハ
イドロフルオロエーテル類とを含み、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン
のZ異性体と、ハイドロフルオロエーテル類の合計100質量%のうち、1−クロロ−
3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体が55〜99%、ハイドロフルオロエー
テル類が1〜45%である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の潤滑剤溶液。
[6]前記ハイドロフルオロエーテル類が、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、パーフルオロブトキシメタン、パーフルオロブトキシエタンからなる群から選ばれる少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルである、[5]に記載の潤滑剤溶液。
[7]前記溶剤が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体と、アルコール類とを含み、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体と、アルコール類の合計100質量%のうち、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体が50〜99%、アルコール類が1〜50%である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の潤滑剤溶液。
[8]前記アルコール類が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルである、[7]に記載の潤滑剤溶液。
[9]下記の工程(a)および工程(b)を有する、潤滑剤塗膜付き物品の製造方法。
(a)[1]〜[8]のいずれかの潤滑剤溶液を物品表面に塗布する工程。
(b)前記物品の表面に塗布された前記潤滑剤溶液から前記溶剤を蒸発させ、前記物品の表面に前記潤滑剤を含む塗膜を形成する工程。
[10]前記潤滑剤塗膜が0.01μm〜500μmの膜厚である、[9]に記載の潤滑剤塗膜付き物品の製造方法で製造した潤滑剤塗膜付き物品。
[11]前記潤滑剤塗膜中の潤滑剤の量が0.01μg/cm〜500μg/cmである、[10]に記載の潤滑剤塗膜付き物品。
[12]前記物品が、注射針またはカテーテルである、[10]または[11]に記載の潤滑剤塗膜付き物品。
本発明の潤滑剤溶液は、地球環境に悪影響を及ぼさず、物品への塗布性に優れる。
本発明の潤滑剤塗膜付き物品の製造方法によれば、地球環境に悪影響を及ぼさず、均一な潤滑剤塗膜を有する潤滑剤塗膜付き物品を製造できる。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「潤滑剤」とは、2つの部材が互いの面を接触させた状態で運動するときに、接触面における摩擦を軽減し、熱の発生や摩耗損傷を防ぐために用いるものを意味する。
「フッ素系潤滑剤」とは、分子内にフッ素原子を有する潤滑剤を意味する。
「シリコーン系潤滑剤」とは、分子内にシリコーンを含む潤滑剤を意味する。
「シリコーンオイル」とは、シロキサン結合(Si−O−Si)を主骨格とし、ケイ素原子に有機基(メチル基等)が結合した有機ケイ素化合物の重合体、いわゆるシリコーンのうち、比較的重合度が低く、常温(25℃)で油状であるのものを意味する。
「ジアミン変性シリコーンオイル」とは、シリコーンオイルの有機基の一部としてジアミン基(−RNHR’NH。ただし、RおよびR’は、それぞれ2価の有機基である。)を有するものを意味する。
「溶剤」とは、それ単独で、またはそれ以外の溶剤と組み合わせることによってジアミン変性シリコーンオイルを溶解でき、潤滑剤塗膜を形成する際の温度で蒸発でき、かつ潤滑剤や添加剤と反応しない、常温(25℃)で液状の化合物を意味する。
「HCFO−1233zd(Z)に可溶である有機溶剤」とは、溶剤を所望の濃度となるようにHCFO−1233zd(Z)に混合して、常温(25℃)で撹拌することによって二層分離や濁りを起こさずに均一に溶解できる有機溶剤を意味する。
「アミン基含有アルコキシシラン」とは、アミン基と、ケイ素原子に結合したアルコキシ基とを有する化合物を意味する。
「塗布性に優れる」とは、潤滑剤が均一な膜厚で物品表面に塗布できることを意味する。
「保存安定性に優れる」とは、数日間保存した後の潤滑剤溶液が透明である、あるいは潤滑剤溶液が白濁しているが、実用上問題のない程度であることを意味する。
<潤滑剤溶液>
本発明の潤滑剤溶液は、ジアミン変性シリコーンオイルを含む潤滑剤(以下、潤滑剤(A)ともいう。)と、HCFO−1233zd(Z)を含む溶剤(以下、溶剤(B)ともいう。)を含有する。本発明の潤滑剤溶液は、必要に応じて、潤滑剤(A)および溶剤(B)以外の添加剤(C)を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
(潤滑剤(A))
潤滑剤(A)は、ジアミン変性シリコーンオイルを含む。潤滑剤(A)は、必要に応じて、ジアミン変性シリコーンオイル以外の他の潤滑剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。
ジアミン変性シリコーンオイル:
ジアミン変性シリコーンオイルまたはこれを含む潤滑剤(A)の具体例としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
・特公昭46−3627号公報に記載されたジアミン基含有アルキルシロキサンとジメチルシロキサンとの共重合体を主成分とするもの。
・特公昭61−35870号公報または特公昭62−52796号公報に記載されたジアミン基含有シランとエポキシ基含有シランとの反応生成物と、シラノール基含有ジオルガノポリシロキサンとの反応生成物を主成分とするもの。
・特開平7−178159号公報に記載された側鎖および/または末端にジアミン基を有するシリコーンとジオルガノポリシロキサンとの混合物。
・特開平10−309316号公報に記載されたジアミン基含有アルコキシシラン、エポキシ基含有アルコキシシランおよび両末端にシラノール基を有するシリコーンを反応させて得られたシリコーンと、非反応性シリコーンとの混合物。
ジアミン変性シリコーンオイルとしては、入手しやすさ、金属表面への吸着性、および潤滑性に優れている点から、ジメチルポリシロキサンの側鎖または末端のメチル基の一部がジアミン基に置換された式(1)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006507943
式(1)において、Aは、それぞれ独立してメチル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アルコキシ基(−OR”)、ジアミン基(−RNHR’NH)である。ただし、Aのうち少なくとも1つはジアミン基である。また、Aのうち、少なくとも1つはアルコキシ基であると、潤滑剤分子間で架橋することができ、強い潤滑剤塗膜が形成できる点から好ましい。
RおよびR’は、それぞれ2価の有機基であり、R”は1価の有機基である。mおよびnは、それぞれ1以上の整数であり、m+nが20以上であることが好ましい。
Rとしては、アルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、炭素数3のアルキレン基が特に好ましい。
R’としては、アルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基が特に好ましい。
R”としては、アルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
ジアミン変性シリコーンオイルまたはこれを含む潤滑剤(A)の市販品としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
・モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の「TSF4702」、「TSF4703」、「TSF4704」、「TSF4705」、「TSF4706」、「TSF4707」、「TSF4708」。
・東レ・ダウコーニング社製の「SF8417」、「BY16−849」、「BY16−205」、「FZ−3760」、「BY16−892」、「FZ−3785」、「BY−16−872」、「BY16−893」、「FZ−3789」、「MDX4−4159」。
・旭化成ワッカーシリコーン社製の「L653」、「L655」、「L656」、「L662」、「WR210」、「WR301」、「WR1100」、「WR1200」、「WR1300」、「WR1250」、「WT1650」、「65000VP」。
・信越化学工業社製の「KF−859」、「KF−393」、「KF−860」、「KF−880」、「KF−8004」、「KF−8002」、「KF−8005」、「KF−867」、「KF−8021」、「KF−896」、「KF−861」。
ジアミン変性シリコーンオイルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、潤滑剤分子間で架橋することができ、強い潤滑剤塗膜が形成できる点から、分子中にアルコキシ基を有する「MDX4−4159」が好ましい。
他の潤滑剤:
他の潤滑剤としては、HCFO−1233zd(Z)への溶解性が優れる点から、ジアミン変性シリコーンオイル以外のシリコーン潤滑剤またはフッ素系潤滑剤が好ましい。求められる潤滑性能に応じて、他の潤滑剤は適宜選択される。
他の潤滑剤は、液体(オイル)、半固体(グリース)、固体のいずれの形態であってもよい。
ジアミン変性シリコーンオイル以外のシリコーン潤滑剤としては、シリコーンオイル、シリコーングリースが挙げられる。
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状ジメチルシリコーン、変性シリコーンオイル(ただし、ジアミン変性シリコーンオイルを除く。)が好ましい。
シリコーンオイルの市販品としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
・信越化学工業社製の「KF−96」、「KF−965」、「KF−968」、「KF−99」、「KF−50」、「KF−54」、「HIVAC F−4」、「HIVAC F−5」、「KF−56A」、「KF−995」。
・東レ・ダウコーニング社製の「SH200」。
シリコーングリースとしては、シリコーンオイルを基油として、金属石けん等の増ちょう剤、各種添加剤を配合したものが好ましい。
シリコーングリースの市販品としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
・信越化学工業社製の「G−30シリーズ」、「G−40シリーズ」、「FG−720シリーズ」、「G−411」、「G−501」、「G−6500」、「G−330」、「G−340」、「G−350」、「G−630」。
・東レ・ダウコーニング社製の「モリコート(登録商標)SH33L」、「モリコート(登録商標)41」、「モリコート(登録商標)44」、「モリコート(登録商標)822M」、「モリコート(登録商標)111」、「モリコート(登録商標)高真空用グリース」、「モリコート(登録商標)熱拡散コンパウンド」。
フッ素系潤滑剤としては、フッ素オイル、フッ素グリース、フッ素系固体潤滑剤(ポリテトラフルオロエチレンの粉末等)が挙げられる。
フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテル、クロロトリフルオロエチレンの低重合物が好ましい。
フッ素オイルの市販品としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
・デュポン社製の「クライトックス(登録商標)GPL102」。
・ダイキン工業社製の「ダイフロイル(登録商標)#1」、「ダイフロイル(登録商標)#3」、「ダイフロイル(登録商標)#10」、「ダイフロイル(登録商標)#20」、「ダイフロイル(登録商標)#50」、「ダイフロイル(登録商標)#100」、「デムナム(登録商標)S−65」。
フッ素グリースとしては、フッ素オイルを基油として、ポリテトラフルオロエチレンの粉末やその他の増ちょう剤を配合したものが好ましい。
フッ素グリースの市販品としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
・デュポン社製の「クライトックス(登録商標)グリース240AC」。
・ダイキン工業社製の「ダイフロイル(登録商標)グリースDG−203」、「デムナム(登録商標)L65」、「デムナム(登録商標)L100」、「デムナム(登録商標)L200」。
・住鉱潤滑剤社製の「スミテックF936」。
・東レ・ダウコーニング社製の「モリコート(登録商標)HP−300」、「モリコート(登録商標)HP−500」、「モリコート(登録商標)HP−870」、「モリコート(登録商標)6169」。
フロロシリコーンオイルの市販品としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
・ダイキン工業社製の「ユニダイン(登録商標)TG−5601」。
・東レ・ダウコーニング社製の「モリコート(登録商標)3451」、「モリコート(登録商標)3452」。
・信越化学工業社製の「FL−5」、「X−22−821」、「X−22−822」、「FL−100」。
フッ素系潤滑剤であり、かつシリコーン系潤滑剤であるものとしては、末端または側鎖をフルオロアルキル基で置換した変性シリコーンオイルであるフロロシリコーンオイルが挙げられる。
潤滑剤(A)に含まれる他の潤滑剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。シリコーン系潤滑剤とフッ素系潤滑剤は、それぞれを単独で用いてもよく、それらを併用してもよい。
(溶剤(B))
溶剤(B)は、HCFO−1233zd(Z)を含む。溶剤(B)は、必要に応じて、HCFO−1233zd(Z)に可溶な有機溶剤(以下、有機溶剤(B1)ともいう。)を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでもよい。また、溶剤(B)は本発明の効果を損なわない範囲でHCFO−1233zd(E)を微量に含んでもよい。なお、溶剤(B)には、HCFO−1233zd(Z)および有機溶剤(B1)、HCFO−1233zd(E)以外の他の溶剤は含まれないことが好ましい。
HCFO−1233zd(Z):
HCFO−1233zd(Z)は、炭素原子−炭素原子間に二重結合を有するオレフィンであるため、大気中での寿命が短く、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さい。
HCFO−1233zd(Z)は、沸点が約40℃であるため、乾燥性に優れている。また、沸騰させて蒸気となっても約40℃であるため、熱による影響を受けやすい部品に対して悪影響を及ぼしにくい。
HCFO−1233zd(Z)は、引火点を持たない。
HCFO−1233zd(Z)は、表面張力や粘度が低く、室温でも容易に蒸発する。
HCFO−1233zd(Z)は、潤滑剤の溶解性に優れる。
以上のように、HCFO−1233zd(Z)は、潤滑剤溶液における溶剤としての充分な性能を有している。また、HCFO−1233zd(Z)は、潤滑剤溶液に適した沸点を有するため、HCFO−1233zd(Z)は物品表面への塗布性に優れる。
HCFO−1233zd(Z)は、公知の方法により、製造できる。
例えば、特開2009−263365号公報に記載されるように、触媒の存在下、3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(R−244fa)を脱フッ化水素化する方法等が挙げられる。前記の方法により得られたHCFO−1233zdを蒸留精製することにより、HCFO−1233zd(Z)を得ることができる。
前記方法で得られたHCFO−1233zd(Z)には、原料のHCFC−244fa等の不純物が存在する。HCFO−1233zd(Z)中の不純物の含有量は、潤滑剤の溶解性に優れる点、地球環境への影響を小さくする観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。すなわち、HCFO−1233zd(Z)の純度は、99質量%以上が好ましく、99.5質量%以上がより好ましい。HCFO−1233zd(Z)の純度は、蒸留精製等によって高めることができる。
HCFO−1233zd(Z)の水分含有量は、50質量ppm以下が好ましく、10質量ppm以下がより好ましい。HCFO−1233zd(Z)の水分含有量が前記上限値以下であれば、保管時等にHCFO−1233zd(Z)が分解などにより変質することを抑制できる。
HCFO−1233zd(Z)中の水分を除去する方法としては、たとえば、脱水剤としてゼオライトを用いる方法が挙げられる。ゼオライトは、天然品であってもよく、合成品であってもよく、安定した品質および入手容易性の点から、合成ゼオライトが好ましい。
ゼオライトの市販品としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
・ユニオンカーバイド社製の「モレキュラーシーブス3A」、「モレキュラーシーブス4A」、「モレキュラーシーブス5A」、「モレキュラーシーブス13X」。
・東ソー社製の「ゼオラムA−3」、「ゼオラムA−4」、「ゼオラムA−5」、「ゼオラムF−9」。
ゼオライトとしては、「モレキュラーシーブス3A」、「モレキュラーシーブス4A」、「ゼオラムA−3」、「ゼオラムA−4」等の3A型または4A型が好ましい。
有機溶剤(B1):
有機溶剤(B1)は、HCFO−1233zdに可溶な有機溶剤である。
有機溶剤(B1)は、溶解性を高める、揮発速度を調節する等の各種の目的に応じて、適宜選択される。
有機溶剤(B1)としては、HCFO−1233zdに可溶な炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類(ただし、HFE、および他の溶剤または他の添加剤に挙げられている化合物を除く。)、エステル類、クロロカーボン類、HFC類、HFE類等が挙げられる。
HCFO−1233zd(Z)に可溶な炭化水素類としては、炭素数が5以上の炭化水素類が好ましい。炭化水素類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和炭化水素類であってもよく、不飽和炭化水素類であってもよい。
炭化水素類としては、n−ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2−メチルヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、2−メチル−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビシクロヘキサン、シクロヘキセン、α−ピネン、ジペンテン、デカリン、テトラリン、アミルナフタレン等が挙げられ、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンが好ましい。
HCFO−1233zd(Z)に可溶なアルコール類としては、炭素数1〜16のアルコール類が好ましい。アルコール類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和アルコール類であってもよく、不飽和アルコール類であってもよい。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、α−テルピネオール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、ノニルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
HCFO−1233zd(Z)に可溶なケトン類としては、炭素数3〜9のケトン類が好ましい。ケトン類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和ケトン類であってもよく、不飽和ケトン類であってもよい。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、メシチルオキシド、ホロン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、2,4−ペンタンジオン、2,5−ヘキサンジオン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等が挙げられ、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。
HCFO−1233zd(Z)に可溶なエーテル類(ただし、HFEを除く。)としては、炭素数2〜8のエーテル類が好ましい。エーテル類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エーテル類であってもよく、不飽和エーテル類であってもよい。
エーテル類としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、メチルアニソール、フラン、メチルフラン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランが好ましい。
HCFO−1233zd(Z)に可溶なエステル類としては、炭素数2〜19のエステル類が好ましい。エステル類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和エステル類であってもよく、不飽和エステル類であってもよい。
エステル類としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、イソ酪酸イソブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸ベンジル、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、酒石酸ジブチル、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等が挙げられ、酢酸メチル、酢酸エチルが好ましい。
HCFO−1233zd(Z)に可溶なクロロカーボン類としては、炭素数1〜3のクロロカーボン類が好ましい。クロロカーボン類は、鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、飽和クロロカーボン類であってもよく、不飽和クロロカーボン類であってもよい。
クロロカーボン類としては、塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、cis−1,2−ジクロロエチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロプロパン等が挙げられ、塩化メチレン、trans−1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレンがより好ましい。
HCFO−1233zd(Z)に可溶なHFC類としては、炭素数4〜8の鎖状または環状のHFC類が好ましく、1分子中のフッ素原子数が水素原子数以上であるHFC類がより好ましい。
HFC類としては、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン等が挙げられ、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサンが好ましい。
HCFO−1233zd(Z)に可溶なHFE類としては、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン(以下、HFE−347pc−fともいう。)、パーフルオロブトキシメタン、パーフルオロブトキシエタンが挙げられ、HFE−347pc−fがより好ましい。
溶剤(B)に含まれる有機溶剤(B1)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。また、2種以上の有機溶剤(B1)が含まれる場合、それらの組合せは同じ範疇の溶剤の組合せであってもよく、異なる範疇の溶剤の組合せであってもよい。たとえば、炭化水素類から選ばれる2種の組合せであってもよく、炭化水素類から選ばれる1種とアルコール類から選ばれる1種との組合せであってもよい。
有機溶剤(B1)は引火点を持たない溶剤であることがさらに好ましい。引火点を持たない有機溶剤(B1)としては、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン等のHFC類や、(ペルフルオロブトキシ)メタン等のHFE類等が挙げられる。
有機溶剤(B1)として引火点を有する溶剤を用いる場合には、溶剤(B)として引火点を持たない範囲で用いることが好ましい。
(添加剤(C))
添加剤(C)は、潤滑剤(A)および溶剤(B)以外の成分である。
添加剤(C)としては、架橋剤、HCFO−1233zd(Z)、有機溶剤(B1)以外の他の溶剤、これら以外の他の添加剤が挙げられる。
架橋剤としては、アルコキシシラン類またはその多量体(オリゴマー)が挙げられる。
アルコキシシラン類としては、テトラアルコキシシラン、アルキル基またはアリール基を有するモノ、ジまたはトリアルコキシシラン、反応性官能基を有するモノ、ジまたはトリアルコキシシラン(いわゆるシランカップリング剤)が挙げられる。
アルコキシシラン類としては、金属との吸着性に優れる点から、アミン基含有アルコキシシランが好ましい。
アミン基含有アルコキシシランは、反応性官能基としてアミン基を含むアルキル基を有することが好ましい。アミン基を含むアルキル基は、具体的にはNH−R−NH−R’−または、NH−R’’’−基等が挙げられる。
Rとしては、アルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、炭素数3のアルキレン基が特に好ましい。
R’としては、アルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基が特に好ましい。
R’’’基としては、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、炭素数3のアルキレン基が特に好ましい。
アミン基含有アルコキシシランの好ましい具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
アミン基含有アルコキシシランの市販品としては、たとえば、下記のものが挙げられる。
・信越化学工業社製の「KBM−602」、「KBM−603」、「KBM−903」、「KBE−903」。
・モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の「A−1100」、「A−1110」、「A−1120」、「TSL8331」、「TSL8340」、「TSL8345」。
・東レ・ダウシリコーン社製の「Z−6610」、「Z−6011」、「Z−6020」、「Z−6094」。
他の溶剤または他の添加剤としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、α−ピコリン、N−メチルベンジルアミン、ジアリルアミン、N−メチルモルホリン、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[(N,N−ビス−2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1,2−プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ジオキサン、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
(各成分の割合)
潤滑剤(A)の割合は、潤滑剤溶液の100質量%のうち、0.01〜50質量%が好ましく、0.05〜30質量%がより好ましく、0.1〜20質量%がさらに好ましい。潤滑剤(A)の割合が前記範囲内であれば、潤滑剤溶液を塗布したときの塗布膜の厚さ、および乾燥後の潤滑剤塗膜の厚さを適正範囲に調整しやすい。
潤滑剤(A)がジアミン変性シリコーンオイル以外の他の潤滑剤を含む場合、ジアミン変性シリコーンオイルの割合は、潤滑剤(A)の100質量%のうち、99〜1質量%が好ましく、95〜10質量%がより好ましく、90〜20質量%がさらに好ましい。他の潤滑剤の割合は、潤滑剤(A)の100質量%のうち、1〜99質量%が好ましく、5〜90質量%がより好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。
溶剤(B)の割合は、潤滑剤溶液の100質量%のうち、50〜99.99質量%が好ましく、70〜99.95質量%がより好ましく、80〜99.9質量%がさらに好ましい。溶剤(B)の割合が前記範囲内であれば、潤滑剤溶液を塗布したときの塗布膜の厚さ、および乾燥後の潤滑剤塗膜の厚さを適正範囲に調整しやすい。
溶剤(B)が有機溶剤(B1)を含む場合、HCFO−1233zd(Z)の割合は、溶剤(B)の100質量%のうち、50〜99.9質量%であり、50%より大きく99.9質量%以下であることが好ましく、52〜99.9質量%がより好ましく、75〜99.9質量%がさらに好ましく、80〜99.9質量%が最も好ましい。有機溶剤(B1)の割合は、溶剤(B)の100質量%のうち、50〜0.1質量%であり、0.1質量%以上50質量%未満が好ましく、48〜0.1質量%がより好ましく、25〜0.1質量%がさらに好ましく、20〜0.1質量%が最も好ましい。HCFO−1233zd(Z)および有機溶剤(B1)の割合が前記範囲内であれば、本発明の効果が充分に発揮される。また、HCFO−1233zd(Z)と有機溶剤(B1)が共沸組成を形成する場合は、共沸組成での使用することが、使用中の組成変化がない点、および溶剤の再利用の容易性の点から、好ましい。
溶剤(B)が1233zd(E)を含む場合、1233zd(E)の割合は、溶剤(B)の100質量%のうち、1ppm〜0.1質量%であることが好ましい。上記範囲であれば、潤滑剤溶液の物品への塗布性に優れる。
添加剤(C)の割合は、潤滑剤溶液の100質量%のうち、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。添加剤(C)の割合が前記範囲内であれば、本発明の効果が充分に発揮される。
本発明の潤滑剤溶液が、添加剤(C)としてアミン基含有アルコキシシランを含む場
合、潤滑剤(A)の割合は潤滑剤溶液の100質量%のうち0.01〜45質量%が好ましく、0.01〜29質量%がより好ましい。溶剤(B)の割合は、前記潤滑剤溶液の100質量%のうち、50〜99.89質量が好ましく、55〜99.89質量%がより好ましい。アミン基含有アルコキシシランの割合は、潤滑剤溶液の100質量%のうち、0.001〜5質量%であることが好ましく、0.001〜1質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、アミン基含有アルコキシシランの架橋剤としての効果および本発明の効果を充分に発揮できる。
また、本発明の潤滑剤溶液が、潤滑剤として分子中にアルコキシ基を有するジアミン変性シリコーンオイルを使用する場合、あるいは架橋剤としてアミン基含有アルコキシシランを含む場合には、溶剤(B)が有機溶剤(B1)を含むことにより、潤滑剤溶液の保存安定性がさらに向上する。このような目的で使用できる有機溶剤(B1)としては、HCFO−1233zd(Z)に可溶なアルコール類またはHFE類が挙げられる。アルコール類としては、炭素数が1〜5の低級アルコールが好ましい。好ましいアルコールの例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。HFE類としては、HFE−347pc−f、パーフルオロブトキシメタン、パーフルオロブトキシエタンが好ましく、潤滑剤溶液の保存安定性の点で、HFE−347pc−fがさらに好ましい。
有機溶剤(B1)としてアルコール類を用いる場合、HCFO−1233zd(Z)と、アルコール類の合計100質量%のうち、HCFO−1233zd(Z)が50〜99%、アルコール類が1〜50%であることが好ましい。上記範囲内であれば、潤滑剤溶液が引火点を持たず、潤滑剤溶液の保存安定性に優れる。
有機溶剤(B1)としてHFE類を用いる場合、HCFO−1233zd(Z)と、HFE類の合計100質量%のうち、HCFO−1233zd(Z)が55〜99%、HFE類が1〜45%であることが好ましい。上記範囲内であれば、潤滑剤溶液の保存安定性に優れる。
本発明の潤滑剤溶液は、溶剤として、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さいHCFO−1233zd(Z)を用いるため、地球環境に悪影響を及ぼさず、ジアミン変性シリコーンオイルの溶解性および塗布性に優れる。
<潤滑剤塗膜付き物品の製造方法>
本発明の潤滑剤溶液は、物品表面に潤滑性、撥水性を付与する目的で使用することができる。また、物品が金属製品や、樹脂製品成形用の金属金型である場合には、離型性を付与する目的で使用することができる。
本発明の潤滑剤塗膜付き物品の製造方法は、下記の工程(a)および工程(b)を有する。
(a)本発明の潤滑剤溶液を物品の表面に塗布する工程。
(b)物品の表面に塗布された潤滑剤溶液から溶剤(B)を蒸発させ、物品の表面に潤滑剤塗膜を形成する工程。
(工程(a))
物品としては、ステンレス、銅、真鍮、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケル、ジュラルミン等の金属およびその複合金属材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリスルホン、PTFE、ポリフッ化ビニリデン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ABS、アクリル、フェノール樹脂、メラミン、エポキシ樹脂、ポリウレタンといった樹脂材料およびその複合材料、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、天然ゴムといったエラストマーおよびその複合材料、ガラス、セラミックス等、様々な材質からなる物品が挙げられる。なかでも金属からなる物品が特に好ましい。
物品の具体例としては、注射器の注射針やシリンダ、医療用チューブ部品、金属刃(鋏、カッター等)、縫合用針、カテーテル等の医療用機器類、や、食品や化粧品用のガラス製容器、樹脂製容器等の容器類、自動車等のボディー、石材、コンクリート、木材等の建築材料が挙げられる。物品としては、注射針およびカテーテルが特に好ましい。
潤滑剤溶液の塗布方法としては、たとえば、刷毛による塗布、スプレーによる塗布、物品を潤滑剤溶液に浸漬することによる塗布、潤滑剤溶液を吸い上げることによりチューブや注射針の内壁に潤滑剤溶液を接触させる塗布方法等が挙げられる。
潤滑剤溶液を物品に塗布する際には、潤滑剤溶液を物品に均一に塗布する目的から、周囲の温度が潤滑剤溶液中の溶剤の沸点以下であること、および潤滑剤溶液中の溶剤が揮発する際に、溶剤の蒸発熱により物品の表面温度が周囲環境の露点以上であることが好ましい。前記観点から、塗布時の周囲の温度は、10〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。上記範囲内であれば、潤滑剤溶液を物品に均一に塗布でき、溶剤の蒸発熱による物品表面の結露を防ぐことが出来る。また、潤滑剤溶液の温度は、潤滑剤溶液中の溶剤の沸点以下であることが好ましい。
(工程(b))
潤滑剤溶液から溶剤(B)を蒸発させる方法としては、公知の乾燥方法が挙げられる。乾燥方法としては、たとえば、風乾、加熱、減圧による乾燥等が挙げられる。乾燥温度は、20〜100℃が好ましい。
本発明の潤滑剤溶液を、物品の一態様である注射針への塗布する方法について、以下に説明する。
(注射針の種類)
本発明の潤滑剤溶液を塗布する注射針としては、注射針(単回使用皮下注射用針、単回使用動脈注射用針、単回使用注射用針、汎用針付注射筒)、採血用針(単回使用採血用針)、翼付針(単回使用一般静脈用翼付針、単回使用頭皮静脈用翼付針)、血液透析用留置針(単回使用透析用針,血液透析用シングルニードル付カテーテル,透析用留置針)、末梢血管用留置針(プラスチックカニューレ型滅菌済み穿刺針)、気道用吸引カテーテル(吸引キット、気管支吸引用カテーテル、吸引用滅菌済みチューブ及びカテーテル、気管吸引カテーテル)が挙げられる。
(注射針への潤滑剤溶液の塗布方法)
潤滑剤溶液を注射針に塗布する方法としては、注射針の針管部分を潤滑剤溶液に浸漬する方法が一般的であるが、潤滑剤溶液を注射針表面へのスプレーによる塗布、浸漬時に潤滑剤溶液を吸い上げて注射針の内壁に塗布する方法、潤滑剤溶液を染み込ませた布やスポンジ等を注射針外表面に接触させる方法も可能である。
(潤滑剤溶液を塗布した注射針の乾燥方法)
潤滑剤溶液を塗布した注射針は、風乾、加熱、減圧により溶剤を除去乾燥される。乾燥温度は溶剤が除去できれば良いが、乾燥効率および潤滑剤の変質を防ぐ点から20〜100℃の範囲が好ましい。また、注射針の内壁にも送風することにより潤滑剤全体を効率的に乾燥することができる。また、注射針に溶剤が残存すると、注射針の錆の原因となるため、充分に乾燥する必要がある。
(潤滑剤を塗布した注射針の滅菌方法)
前記の方法で得られた潤滑剤塗膜付きの注射針は、滅菌を行う必要がある。滅菌方法としては以下の方法が知られている。
・高圧蒸気滅菌:115℃〜126℃の温度範囲で、処理時間を15分間〜30分間として飽和水蒸気中で加熱することで微生物を殺滅する方法である。主として高温高圧水に耐えられる物品が用いられる。
・酸化エチレンガス滅菌:酸化エチレンガスを物品に数時間から十数時間接触させることで微生物を殺滅する方法である。熱による方法に比べて低温で作用するため、耐熱温度の低い物品に適用することが可能であるが、包装時には酸化エチレンガスが残留しないよう注意する必要がある。
・ガンマ線照射滅菌:放射性同位元素を含む物質からのガンマ線を数時間照射することにより微生物を殺滅する方法である。潤滑剤塗膜付きの注射針を包装後に滅菌処理を行うことができる。
・電子線照射滅菌:電子銃から放出された電子線を数秒間から数分間照射することで微生物を殺滅する方法である。ガンマ線照射滅菌と同様に、包装後に滅菌処理を行うことができる。
滅菌方法としては、酸化エチレンガス滅菌、ガンマ線照射滅菌、電子線照射滅菌法が好ましい。
本発明の潤滑剤溶液により物品に接触し、溶剤を乾燥する場合に揮発する溶剤は、回収して再利用することが可能である。溶剤を回収し再利用する場合には、物品の上部または周囲、および塗布工程全体の揮発した溶剤を含む空気を吸引することが有効である。回収した溶剤を含む空気は、活性炭による吸脱着方式、または圧縮深冷方式、これらの1種類以上の組合せにより、溶剤を液化回収することができる。また、回収した溶剤は、蒸留精製等により再生できる。
<潤滑剤塗膜付き物品>
本発明の潤滑剤塗膜付き物品は、均一な潤滑剤塗膜を有しており、物品表面の潤滑性、撥水性に優れる。また、金属製品や樹脂製品成形用金属金型の離型性に優れる。
物品が注射針の場合、注射針表面および内壁の潤滑剤の膜厚は、0.01μm〜500μmであることが好ましい。また、潤滑剤の塗布量は0.01μg/cm〜500μg/cmであることが好ましい。上記範囲内であれば、注射針の刺通時の抵抗が低減され、かつ繰り返し刺通によっても抵抗が上昇しない。
(作用機序)
以上説明した本発明の潤滑剤塗膜付き物品の製造方法にあっては、溶剤としてオゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さいHCFO−1233zd(Z)を含む本発明の潤滑剤溶液を用いているため、地球環境に悪影響を及ぼさない。また、ジアミン変性シリコーンオイルの溶解性に優れ、均一な潤滑剤塗膜を形成できる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(例1〜2)
溶剤に、ジアミン変性シリコーンオイル(信越化学工業社製、KF−859)を15g溶解した潤滑剤溶液300gを、基材表面(鉄製の板にアルミニウムを蒸着したもの)に塗布した。塗布後の基材表面の状態を目視で観察し、下記基準にて塗布性を評価した。結果を表1に示す。
○:均一に塗布できる。
×:塗りムラが生じた。
例1:溶剤として純度99.5%のHCFO−1233zd(Z)を用いた。
例2:溶剤として純度99.5%のHCFO−1233zd(E)を用いた。
Figure 0006507943
表1の例1に示すように、溶剤としてHCFO−1233zd(Z)を用いた場合、塗布性に優れることがわかる。また、例2に示すように、溶剤としてHCFO−1233zd(E)を用いた場合、塗りムラが生じることがわかる。
(シリコーンオイルの溶解性および溶液の保存安定性評価)
耐熱ガラス瓶に溶剤の100gを入れ、溶剤に試験対象物(シリコーンオイルの5g、またはシリコーンオイルの10g、またはアルコキシシラン類の0.1g、またはシリコーンオイルの5gおよびアルコキシシラン類の0.05g)を添加した。試験対象物を添加した直後の溶液の状態および室温で3日間保存した溶液または室温℃で5日間保存した溶液の状態を観察し、下記基準にて溶解性を評価した。
◎(優):白濁は見られない。
○(良):薄い白濁が見られる。
△(可):白濁がみられるが、析出物および分離はなく実用上問題ない。
×(不良):白濁が見られ、析出物および分離がある、または試験対象物が溶剤に溶解しない。
(例3〜7)
HCFO−1233zd(Z)への下記シリコーンオイルの溶解性および溶液の保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
例3:未変性シリコーンオイル、信越化学工業社製、KF−96。
例4:エポキシ変性シリコーンオイル、信越化学工業社製、KF−101。
例5:モノアミン変性シリコーンオイル、信越化学工業社製、KF−868。
例6:ハイドロジェン変性シリコーンオイル、信越化学工業社製、KF−99。
例7:ジアミン変性シリコーンオイル、信越化学工業社製、KF−859。
Figure 0006507943
表2の例1〜5に示すように、HCFO−1233zd(Z)は、シリコーンオイルの溶解性および溶液の保存安定性に優れることが分かる。
(例8〜14)
HCFO−1233zd(Z)またはHFE−347pc−fのアルコキシシラン類の溶解性を評価した。結果を表3に示す。
例8:テトラエトキシシラン(以下、TEOSと記す。)、関東化学社試薬。
例9:トリエトキシメチルシラン(以下、TEOMSと記す。)、関東化学社試薬。
例10:トリメトキシメチルシラン、信越化学工業社製、LS−530。
例11、13:3−アミノプロピルアルコキシシラン(信越化学工業社製、KBM−903)
例12、14:3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、TSL8340。
Figure 0006507943
表3の例8〜12に示すように、1233zd(Z)はアルコキシシラン類の溶解性および保存安定性に優れることが分かる。また例13、14に示すように、HFE−347pc−fのアミン基含有アルコキシシランの溶解性および溶液の保存安定性は、1233zd(Z)を使用した場合と比べて、より優れていることが分かる。
(例15〜38)
溶剤を、表4〜6に示す量で合計100gになるように調製し、下記の試験対象物(ジアミン変性シリコーンオイルとアミン基含有アルコキシシランの混合物、または末端にアルコキシ基を有するジアミン変性シリコーンオイル)の溶解性と、溶液の保存安定性評価を行った。結果を表4〜6に示す。
例15〜例21の試験対象物:ジアミン変性シリコーンオイルであるKF−859およびアミン基含有アルコキシシランであるTSL8340
例22〜例28の試験対象物:KF−859およびアミン基含有アルコキシシランであるKBM−903
例29〜例35の試験対象物:末端にアルコキシ基を有するジアミン変性シリコーンであるMDX4−4159(東レ・ダウシリコーン社製)
Figure 0006507943
Figure 0006507943
Figure 0006507943
表4〜6の例15、例22、例29に示すように、溶剤(B)としてHCFO−1233zd(Z)を単独で用いた場合には、ジアミン変性シリコーンオイルとアミン基含有アルコキシシランの混合物、または末端にアルコキシ基を有するジアミン変性シリコーンオイルの溶解性および3日後の溶液の保存安定性に優れることがわかる。
また、例16〜20、23〜27、30〜34に示すように、溶剤(B)としてHCFO−1233zd(Z)とHFE−347pc−fの量を特定の範囲で用いた場合には、溶液の保存安定性がさらに向上することがわかる。
(例36〜43)
溶剤を、表7に示す量で合計100gになるように調製し、表7に示す試験対象物の溶解性および保存安定性評価を行った。また、溶剤(B)の引火点をクリーブランド開放式引火点測定装置により測定した。クリーブランド開放式引火点測定装置(吉田製作所社製、形式828)に80mlの本発明の溶剤組成物を入れ、火種が溶剤上部を通過した際に、溶剤上部にある蒸気への引火を判定した。引火点測定は室温から開始し、溶剤が沸騰するまで5℃刻みで温度を上昇させながら同様の操作を繰り返して引火点の有無を判定した。結果を表7に示す。
Figure 0006507943
表7の例36に示すように、溶剤(B)としてHCFO−1233zd(Z)を単独で用いた場合には、末端にアルコキシ基を有するジアミン変性シリコーンオイルの溶解性および3日後の溶液の保存安定性に優れることがわかる。
また、例37〜43に示すように、溶剤(B)としてHCFO−1233zd(Z)とアルコール類の量を特定の範囲で用いた場合には、溶剤(B)が引火点を有することなく溶液の保存安定性がさらに向上することがわかる。
(例44)
潤滑剤溶液の塗布試験:
HCFO−1233zd(Z)に、ジアミン変性シリコーンオイル(東レ・ダウシリコーン社製品、MDX4−4159)の濃度が10質量%となるように添加し、潤滑剤溶液を調製した。
鉄製の板にアルミニウムを蒸着させたアルミニウム蒸着板の表面に、20℃の潤滑剤溶液を刷毛により塗布し、19〜21℃の条件下で風乾した。
塗布後のアルミニウム蒸着板表面から、溶剤が速やかに蒸発し、均一な潤滑剤塗膜が形成された。潤滑剤塗膜の平均厚さは、約0.4mmであった。
(例45)
潤滑剤溶液の塗布試験:
HCFO−1233zd(Z)に、ジアミン変性シリコーンオイル(東レ・ダウシリコーン社製品、MDX4−4159)の濃度が10質量%となるように添加し、潤滑剤溶液を調製した。
鉄製の板にアルミニウムを蒸着させたアルミニウム蒸着板の表面に、20℃の潤滑剤溶液をスプレーでの吹き付けた後、19〜21℃の条件下で風乾した。
塗布後のアルミニウム蒸着板表面から、溶剤が速やかに蒸発し、均一な潤滑剤塗膜が形成された。潤滑剤塗膜の平均厚さは、約0.4mmであった。
(例46)
潤滑剤溶液の塗布試験:
HCFO−1233zd(Z)に、ジアミン変性シリコーンオイル(東レ・ダウシリコーン社製品、MDX4−4159)の濃度が10質量%となるように添加し、潤滑剤溶液を調製した。
鉄製の板にアルミニウムを蒸着させたアルミニウム蒸着板を、20℃の潤滑剤溶液中に浸漬させ、19〜21℃の条件下で風乾した。
塗布後のアルミニウム蒸着板表面から、溶剤が速やかに蒸発し、均一な潤滑剤塗膜が形成された。潤滑剤塗膜の平均厚さは、約0.4mmであった。
(例47)
潤滑剤溶液の塗布試験
HCFO−1233zd(Z)の60質量%、HFE−347pc−fの40質量%からなる溶剤(B)を調製した。ジアミン変性シリコーンオイルとしてMDX4−4159を10質量%となるように添加して潤滑剤溶液を調製し、例46と同様の方法で潤滑油の塗布試験を行った。塗布後のアルミニウム蒸着板表面から、溶剤が速やかに蒸発し、均一な潤滑剤塗膜が形成された。
本発明の潤滑剤溶液は、金属(注射針等)の表面に潤滑剤塗膜を形成するための潤滑剤溶液として有用である。

Claims (12)

  1. ジアミン変性シリコーンオイルを含む潤滑剤と、溶剤とを含み、
    前記溶剤が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体であることを特徴とする潤滑剤溶液。
  2. 前記潤滑剤の割合が、前記潤滑剤溶液の100質量%のうち、0.01〜50質量%であり、前記溶剤の割合が、前記潤滑剤溶液の100質量%のうち、50〜99.99質量%である、請求項1に記載の潤滑剤溶液。
  3. 前記潤滑剤溶液が、架橋剤をさらに含み、前記架橋剤がアミン基含有アルコキシシランまたはその多量体である、請求項1または2に記載の潤滑剤溶液。
  4. 前記ジアミン変性シリコーンオイルが、分子中にアルコキシ基を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑剤溶液。
  5. 前記溶剤が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体と、ハイドロフルオロエーテル類とを含み、
    1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体と、ハイドロフルオロエーテル類の合計100質量%のうち、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体が55〜99%、ハイドロフルオロエーテル類が1〜45%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の潤滑剤溶液。
  6. 前記ハイドロフルオロエーテル類が、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、パーフルオロブトキシメタン、パーフルオロブトキシエタンからなる群から選ばれる少なくとも1種のハイドロフルオロエーテルである、請求項5に記載の潤滑剤溶液。
  7. 前記溶剤が、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体と、アルコール類とを含み、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体と、アルコール類の合計100質量%のうち、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのZ異性体が50〜99%、アルコール類が1〜50%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の潤滑剤溶液。
  8. 前記アルコール類が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコール類である、請求項7に記載の潤滑剤溶液。
  9. 下記の工程(a)および工程(b)を有する、潤滑剤塗膜付き物品の製造方法。
    (a)請求項1〜8のいずれかの潤滑剤溶液を物品表面に塗布する工程。
    (b)前記物品の表面に塗布された前記潤滑剤溶液から前記溶剤を蒸発させ、前記物品の表面に前記潤滑剤を含む塗膜を形成する工程。
  10. 前記潤滑剤塗膜が0.01μm〜500μmの膜厚である、請求項9に記載の潤滑剤塗膜付き物品の製造方法。
  11. 前記潤滑剤塗膜中の潤滑剤の量が0.01μg/cm〜500μg/cmである、請求項10に記載の潤滑剤塗膜付き物品の製造方法
  12. 前記物品が、注射針またはカテーテルである、請求項10または11に記載の潤滑剤塗膜付き物品の製造方法
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