JP6006702B2 - 静電潜像現像用トナー、静電潜像現像用トナーの製造方法、及び静電潜像現像用トナーを用いた定着方法 - Google Patents

静電潜像現像用トナー、静電潜像現像用トナーの製造方法、及び静電潜像現像用トナーを用いた定着方法 Download PDF

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Description

本発明は、静電潜像現像用トナー、静電潜像現像用トナーの製造方法、及び静電潜像現像用トナーを用いた定着方法に関する。
複写機のような画像形成に関する技術領域においては、定着ローラー等を用いた加熱及び加圧により、紙のような記録媒体に静電潜像現像用トナーを定着させる。加熱及び加圧によりトナー中のトナー成分が溶融又は軟化し、記録媒体に定着する。この定着について、定着時の省エネルギー化及び定着装置の小型化が求められている。そのため、定着ローラーの加熱及び加圧をなるべく抑えつつ、記録媒体に対して良好に定着し得るトナーが望まれている。
これらの画像形成に用いられるトナーとして、表面が尿素樹脂で被覆されたトナーが知られている(例えば、特許文献1)。尿素樹脂は高い硬度を有するため、特許文献1のトナーは、耐ブロッキング性、搬送性、及び保存性等に優れる。
さらに、トナーコアの表面に無機微粒子が外添され、トナーコア表面がシラン化合物で被覆されたトナーが知られている(例えば、特許文献2)。特許文献2のトナーは長期間使用されても、帯電性を良好に維持できる。
特開2004−294468号公報 特開2010−181439号公報
しかし、特許文献1のトナーは、表面に被覆された尿素樹脂の硬度に起因して、定着時に高温であることが必要とされる。その結果、コストアップ等に繋がる場合があった。さらに、帯電性を適切に維持できず、長期の使用に際しては、現像ゴースト又は画像劣化が発生する場合があった。なお、現像ゴーストとは、画像形成時に、トナーが過帯電することで静電潜像が存在しない部分も現像され、画像上のムラが発生する画像欠陥である。また、特許文献2のトナーは、定着性及び保存性に劣るものであった。つまり、従来のトナーにおいては、優れた定着性と、適切な帯電性の維持とを達成することは困難である。
本発明は上記のような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、硬い熱硬化性樹脂で表面が被覆されていても十分に低い定着温度及び定着荷重(定着圧力)での定着を達成でき、長期に亘って適切な帯電性を維持し得る静電潜像現像用トナーを提供することである。さらに、本発明の目的は、上記の静電潜像現像用トナーの製造方法、及び上記の静電潜像現像用トナーを用いた定着方法を提供することである。
上記のような課題を解決するため、本発明は以下を要旨とする。
すなわち、本発明の静電潜像現像用トナーは、結着樹脂を含むトナーコアと、上記トナーコアの表面を被覆するシェル層と、針状の無機微粒子とを含む。上記シェル層は、熱硬化性樹脂を含み、上記無機微粒子を内包する。上記無機微粒子は、アスペクト比が1.25以上2.5以下であり、平均長軸径及び平均短軸径がいずれも300nm以下である。
また、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法は、結着樹脂を含むトナーコアを準備する準備工程と、上記トナーコアの表面を被覆するように、シェル層を形成する形成工程とを包含する。上記シェル層は、熱硬化性樹脂を含み、針状の無機微粒子を内包する。上記無機微粒子は、アスペクト比が1.25以上2.5以下であり、平均長軸径及び平均短軸径がいずれも300nm以下である。
また、本発明の静電潜像現像用トナーの定着方法は、上記静電潜像現像用トナーを上記記録媒体の表面へ供給するトナー供給工程と、上記静電潜像現像用トナーが供給された上記記録媒体に5N/cm2以上10N/cm2以下の荷重を付与する荷重付与工程とを含む。
本発明によれば、硬度の高い熱硬化性樹脂を含むシェル層により表面が被覆されているにも関わらず、十分に低い定着温度及び定着荷重(定着圧力)での定着を達成でき、加えて長期に亘って帯電性を適切に維持し得る静電潜像現像用トナーを提供することができる。
本実施形態の静電潜像現像用トナーを示す図である。 高架式フローテスターを用いる軟化点の測定に際し、測定結果のS字カーブから軟化点を読み取る方法を説明する図である。 本実施形態の別の態様の静電潜像現像用トナーを示す図である。 本実施形態の定着方法に用いられる定着器の概略図である。 実施例1にて得られた静電潜像現像用トナーの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 定着後の実施例1にて得られた静電潜像現像用トナーの表面のSEM写真である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
本実施形態の静電潜像現像用トナー(以下、単にトナーともいう)は結着樹脂を含むトナーコアと、上記トナーコアの表面を被覆するシェル層と、針状の無機微粒子とを含む。シェル層は、熱硬化性樹脂を含み、上記無機微粒子を内包する。針状の無機微粒子は、アスペクト比が1.25以上2.5以下であり、平均長軸径及び平均短軸径がいずれも300nm以下である。なお、本実施形態において、トナーコアはアニオン性(負帯電性)を示し、シェル層はカチオン性(正帯電性)示す。
本実施形態の静電潜像現像用トナーについて、図1を参照して説明する。
図1に示すように、静電潜像現像用トナー1は、トナーコア2と、シェル層3と、無機微粒子4とを含む。そして、トナーコア2の表面を被覆するように、熱硬化性樹脂を含有するシェル層3が形成されている。無機微粒子4の形状は針状である。
硬度の高い熱硬化性樹脂を含むシェル層3が形成されていることにより、静電潜像現像用トナー1は耐ブロッキング性、搬送性、及び保存性等に優れるものとなる。本実施形態の静静電潜像現像用トナー1が紙のような記録媒体に供給され、熱及び荷重が付与されると、シェル層3が破壊される。そして、シェル層3の破壊により、露出したトナーコア2が溶融又は軟化して記録媒体に定着される。
静電潜像現像用トナー1においては、無機微粒子4が破壊の基点となるため、硬度の高い熱硬化型樹脂を含有するシェル層3でその表面が被覆されているにも関わらず、シェル層3を容易に破壊できる。その結果、記録媒体に定着する際の温度及び荷重を十分に下げつつ、トナーコア2を良好に記録媒体に定着することができる。また、無機微粒子4は針状であり、球状の無機微粒子と比較すると過剰な帯電電荷を逃がす機能に優れるため、本実施形態のトナー1は長期に亘って適切な帯電性を維持できる。
トナーコア2について以下に説明する。
トナーコア2は、必須成分として結着樹脂を含有する。結着樹脂はアニオン性を有する。結着樹脂は、例えば、官能基としてエステル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する。結着樹脂の中でも、分子中に水酸基、カルボキシル基、又はアミノ基のような官能基を持つ樹脂が好ましく、分子中に水酸基及び/又はカルボキシル基を持つ樹脂がより好ましい。なぜなら、このような官能基は、シェル層に含まれる熱硬化性樹脂のモノマーに由来する単位(例えば、メチロールメラミン)と反応して化学的に結合するからである。その結果、静電潜像現像用トナー1においては、シェル層3とトナーコア2とが強固に結合する。
結着樹脂がカルボキシル基を有する場合、この結着樹脂の酸価は、十分なアニオン性を有するために、3mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下がより好ましい。
結着樹脂が水酸基を有する場合、この結着樹脂の水酸基価は、十分なアニオン性を有するために、10mgKOH/g以上70mgKOH/g以下が好ましく、15mgKOH/g以上50mgKOH/g以下がより好ましい。
結着樹脂の具体例としては、熱可塑性樹脂(スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、及びスチレン−ブタジエン系樹脂)が挙げられる。中でも、結着樹脂としては、トナー中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び記録媒体に対する定着性を向上させるために、スチレンアクリル系樹脂及び/又はポリエステル樹脂が好ましい。
スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体である。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、及びp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)メタアクリル酸メチル、(メタ)メタアクリル酸エチル、(メタ)メタアクリル酸n−ブチル、及び(メタ)メタアクリル酸iso−ブチル);(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル((メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシプロピル)が挙げられる。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、水酸基を有する単量体(p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル)を用いることで、スチレンアクリル系樹脂に水酸基を導入できる。水酸基を有する単量体の使用量を適宜調整することで、スチレンアクリル系樹脂の水酸基価を調整できる。
スチレンアクリル系樹脂を調製する際に、(メタ)アクリル酸を単量体として用いることで、スチレンアクリル系樹脂にカルボキシル基を導入できる。(メタ)アクリル酸の使用量を適宜調整することで、スチレンアクリル系樹脂の酸価を調整できる。
ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコール成分と2価又は3価以上のカルボン酸成分とを縮重合や共縮重合することで得られる。
2価又は3価以上のアルコール成分としては、例えば、ジオール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール);ビスフェノール類(ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、及びポリオキシプロピレン化ビスフェノールA);3価以上のアルコール類(ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン)が挙げられる。
2価又は3価以上のカルボン酸成分としては、例えば、2価カルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、及びアルキル又はアルケニルコハク酸(例えば、n−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、及びイソドデセニルコハク酸))、3価以上のカルボン酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸)が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、エステル形成性の誘導体(酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル等)として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価の調整は、ポリエステル樹脂を製造する際に、2価又は3価以上のアルコール成分の使用量と2価又は3価以上のカルボン酸成分の使用量とを、それぞれ適宜変更して行うことができる。また、ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂の数平均分子量Mnは、トナーコア2の強度及びトナー1の定着性の向上のために、1200以上2000以下が好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量Mnと質量平均分子量Mwとの比の値(質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn))は、上記と同様の理由から、9以上20以下が好ましい。
結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂である場合、スチレンアクリル系樹脂の数平均分子量Mnは、トナーコア2の強度及び静電潜像現像用トナー1の定着性の向上のために、2000以上3000以下が好ましい。スチレンアクリル系樹脂の分子量分布(質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、上記と同様の理由から、10以上20以下が好ましい。なお、結着樹脂の数平均分子量Mnと質量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定できる。
結着樹脂のガラス転移点Tgは、低温定着性を向上させるために、シェル層3に含まれる熱硬化性樹脂の硬化開始温度以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移点Tgが上記範囲であることで、高速定着時においても十分な低温定着性が得られる。特に、結着樹脂のガラス転移点Tgは20℃以上であることが好ましく、30℃以上55℃以下がより好ましく、30℃以上50℃以下がさらに好ましい。結着樹脂のガラス転移点Tgが20℃以上である場合は、シェル層3の形成時にトナーコア2が凝集することを抑制できる。一般に、熱硬化性樹脂の硬化開始温度は55℃程度である。
結着樹脂のガラス転移点Tgは、示差走査熱量計(DSC)を用い、結着樹脂の比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置として示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツルメンツ社製「DSC−6200」)を用い、結着樹脂の吸熱曲線を測定することで結着樹脂のガラス転移点Tgを求めることができる。結着樹脂のガラス転移点Tgの別の求め方として、測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25℃以上200℃以下かつ昇温速度10℃/分の条件で結着樹脂の吸熱曲線を得、この吸熱曲線に基づいて結着樹脂のガラス転移点Tgを求める方法が挙げられる。
結着樹脂の軟化点Tmは100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。軟化点Tmが100℃以下であることで、高速定着時においても十分な低温定着性を達成できる。結着樹脂の軟化点Tmを調整するには、例えば、異なる軟化点Tmを有する複数の結着樹脂を組み合わせて用いればよい。
結着樹脂の軟化点Tmの測定には、高架式フローテスター(例えば、島津製作所社製「CFT−500D」)を用いることができる。具体的には、測定試料を高化式フローテスターにセットし、所定の条件(ダイス細孔経1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分)で、1cm3の試料を溶融流出させてS字カーブ(つまり、温度(℃)/ストローク(mm)に関するS字カーブ)を得、このS字カーブから結着樹脂の軟化点Tmを読み取る。
図2を参照して、結着樹脂の軟化点Tmの読み取り方を説明する。図2において、ストロークの最大値をS1とし、S1の温度より低温側のベースラインのストローク値をS2とする。S字カーブ中のストロークの値が、(S1+S2)/2となる温度を測定試料(結着樹脂)の軟化点Tmとする。
引き続き図1を参照して、静電潜像現像用トナー1について説明する。
トナーコア2は、静電潜像現像用トナー1の色に合わせて、着色剤としての公知の顔料や染料を含有することができる。黒色着色剤としては、カーボンブラックが挙げられる。また、後述のイエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤のような着色剤を用いて黒色に調色された着色剤も、黒色着色剤として利用できる。
静電潜像現像用トナー1がカラートナーである場合、トナーコア2に含有される着色剤としては、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤等が挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリルアミド化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、194)、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、及びC.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、及び254)が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物、銅フタロシアニン誘導体、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、及びC.I.アシッドブルーが挙げられる。
トナーコア2中の着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下が好ましく、3質量部以上7質量部以下がより好ましい。
トナーコア2は、静電潜像現像用トナー1の低温定着性を向上させ、オフセットや像スミアリング(画像をこすったときの画像周囲の汚れ)を抑制する目的で、離型剤を含有してもよい。離型剤の例としては、脂肪族炭化水素系ワックス(低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックス)、脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物(酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体)、植物系ワックス(キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックス)、動物系ワックス(みつろう、ラノリン、及び鯨ろう)、鉱物系ワックス(オゾケライト、セレシン、及びベトロラクタム)、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類(モンタン酸エステルワックス及びカスターワックス)、及び脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したワックス(脱酸カルナバワックス)が挙げられる。
トナーコア2が離型剤を含有する場合、離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上5質量部以下が好ましい。
トナーコア2は、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤を含有することにより、帯電レベル及び帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得ることができる。帯電立ち上がり特性とは、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標である。トナーコア2はアニオン性(負帯電性)であるので、負帯電性の帯電制御剤が使用される。
トナーコア2は、必要に応じて磁性粉を含有してもよい。静電潜像現像用トナー1が磁性粉を含有するトナーコア2を含む場合、静電潜像現像用トナー1は磁性1成分現像剤として使用される。好適な磁性粉としては、鉄(フェライト及びマグネタイト)、強磁性金属(コバルト及びニッケル)、鉄及び/又は強磁性金属を含む合金、鉄及び/又は強磁性金属を含む化合物、熱処理ようなの強磁性化処理が施された強磁性合金、及び二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。磁性粉の粒子径が上記の範囲である場合は、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
磁性粉の含有量は、静電潜像現像用トナー1を1成分現像剤として使用する場合、トナー1の全量100質量部に対して35質量部以上60質量部以下が好ましく、40質量部以上60質量部以下がより好ましい。また、静電潜像現像用トナー1を2成分現像剤として使用する場合、磁性粉の含有量は、静電潜像現像用トナー1の全量100質量部に対して20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
シェル層3について以下に説明する。
シェル層3は必須成分として熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂は、十分な強度、硬度、及びカチオン性を有する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、熱硬化性樹脂は、例えば、メラミンのようなモノマーにホルムアルデヒドに由来するメチレン基(−CH2−)が導入された単位を含む。
熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂(尿素レゾルシン系樹脂)、グアナミン樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂、及びゼラチン・アラビアゴム樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の中でも、定着温度を大きく上昇させる必要がないため、メラミン樹脂又は尿素樹脂が好ましい。
メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドとの重縮合物であり、メラミン系樹脂の形成に使用されるモノマーはメラミンである。尿素樹脂は尿素とホルムアルデヒドとの重縮合物であり、尿素樹脂の形成に使用されるモノマーは尿素である。メラミン及び尿素は、周知の変性を受けていてもよい。
シェル層3は、本実施形態の効果を損なわない範囲で必要に応じて、熱硬化樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。シェル層3中の熱硬化性樹脂の含有量は、シェル層3の全量に対して90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が90質量%以上である場合は、シェル層3は十分な硬さを有するものとなる。
窒素原子を含む材質は所望の帯電量に正帯電されやすいため、シェル層3は、メラミン又は尿素等に由来する窒素原子を含むことが好ましい。シェル層3を十分に正帯電させるためには、シェル層3中の窒素原子の含有量は10質量%以上が好ましい。
シェル層3の厚みtは、例えば、7nm以上80nm以下とすることができる。シェル層3の厚みtは、例えば、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事社製「WinROOF」)を用い、静電潜像現像用トナー1の断面のTEM撮影像を解析することによって計測できる。
無機微粒子4について、以下に説明する。
まず、無機微粒子4の形状について、以下に説明する。
無機微粒子4は針状であり、そのアスペクト比(平均長軸径/平均短軸径)は1.25以上2.5以下である。無機微粒子4のアスペクト比は、特に1.3以上2.0以下であることが好ましい。アスペクト比が1.25以上である場合は、無機微粒子4の形状が球状に近くならず電荷リーク性が低下しないため、静電潜像現像用トナー1に電荷が蓄積しにくい。その結果、静電潜像現像用トナー1の帯電量が過度に増加することがなく過帯電とならず、画像形成を適切に行うことができる。さらに、無機微粒子4の形状が球状に近くならないため局所的に応力が強くなる。その結果、無機微粒子4が存在する部分からシェル層3を破壊させやすくなり、低温定着性を顕著に向上させることができる。
一方、無機微粒子4のアスペクト比が2.5以下である場合は、電荷リーク性が必要以上に促進されることがなく、静電潜像現像用トナー1の帯電量が低下することを抑制できる。その結果、現像スリーブ上の静電潜像現像用トナー1の残留量が増えることがなく、静電潜像現像用トナー1を適切に回収できるため、現像ゴーストを抑制できる。
無機微粒子4の平均長軸径及び平均短軸径は、上記のアスペクト比を満足したうえで、いずれも300nm以下である。平均長軸径又は平均短軸径の一方が300nm以下である場合は、例えば現像器内で圧力を受けた場合であっても、無機微粒子4のシェル層3からの脱離を抑制でき、電荷リーク性を安定に維持できる。その結果、長期に亘って適切な帯電性を維持できる。また、シェル層3から無機微粒子4が脱離しないため、トナーコア2の露出を抑制でき、静電潜像現像用トナー1の現像スリーブへ付着、又は静電潜像現像用トナー1の保存性悪化を抑制できる。また、無機微粒子4がシェル層3から飛び出ることを抑制でき、無機微粒子4が折れずにシェル層3に内包される。なお、無機微粒子4の脱離や折れが発生するとシェル層3に加わる応力は小さくなり、シェル層3が容易に破壊されなくなるため低温定着性が低下してしまう。
特に、無機微粒子4の平均長軸径は50nm以上290nm以下であることが好ましい。無機微粒子4の平均長軸径が50nm以上である場合は、シェル層3を容易に破壊できる。一方、無機微粒子4の平均長軸径が290nm以下である場合は、電荷リーク性を安定に維持でき、低温定着性の低下を抑制できる。また、無機微粒子4の平均短軸径は、20nm以上130nm以下が好ましい。無機微粒子4の平均長軸径が20nm以上である場合は、シェル層3を容易に破壊できる。一方、無機微粒子4の平均長軸径が130nm以下である場合は、電荷リーク性を安定に維持でき、低温定着性の低下を抑制できる。
無機微粒子4の平均長軸径及び平均短軸径の測定方法の一例について以下に説明する。まず、無機微粒子4の集合体から、無機微粒子4をランダムに50個選択する。そして、これら50個の無機微粒子4について、走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子社製「JSM−880」)を用いて、5万倍の拡大写真を撮影する。そして、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事社製「WinROOF」)を用いて、これらの拡大写真から無機微粒子4の長軸径及び短軸径を測定し、それらの平均値を平均長軸径及び平均短軸径とする。また、平均短軸径で平均長軸径を除することにより、無機微粒子4のアスペクト比を求めることができる。
シェル層3中の無機微粒子4の内包量は、静電潜像現像用トナー1の全量に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上4.5質量%以下であることがより好ましい。シェル層3中の無機微粒子4の内包量が0.1質量%以上である場合は、容易にシェル層3を破壊でき、その結果、定着時の温度及び荷重を十分に低くすることができる。一方、シェル層3中の無機微粒子4の内包量が5.0質量%以下である場合は、静電潜像現像用トナー1の過度のチャージアップ、及び画像形成時の濃度低下を抑制できる。
無機微粒子4はシェル層3よりも高い硬度を有することが好ましい。シェル層3と無機微粒子4との硬度差としては、JIS K5600(鉛筆硬度測定)に従って測定された硬度において1段階以上の差があれば好ましく、2段階以上の差があることがより好ましい。
無機微粒子4の種類としては、例えば、金属酸化物(アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム)、及びシリカのような無機微粒子が挙げられる。
中でも、無機微粒子4としては、汎用性が良好で、形状の制御が容易であるために、針状の酸化チタン微粒子であることが好ましい。以下に針状の酸化チタン微粒子の調製方法の一例について説明する。
まず、硫酸法などの公知の方法でメタチタン酸を得る。これに、水酸化ナトリウム水溶液を添加して加熱し、加熱後のメタチタン酸を純水で十分に洗浄する。その後、塩酸を添加して、さらに加熱する。これを冷却し、水酸化ナトリウム水溶液でpHが7になるまで中和した後、洗浄及び加熱し、ルチル型酸化チタンを調製する。次いで、塩化ナトリウムとピロリン酸4ナトリウム・10水和物とを添加し、混合する。得られた混合物を焼成した後、焼成物を純水中に投入し、再度加熱する。そして、純水で洗浄して可溶塩を除去することにより、針状の酸化チタン微粒子を調製する。
なお、焼成温度を高くすることで、針状の酸化チタン微粒子の長軸径及び短軸径を大きくすることができる。また、焼成温度を低くすることで、針状の酸化チタン微粒子の長軸径及び短軸径を小さくすることができる。
なお、シェル層3に内包される無機微粒子4の個数は、無機微粒子4の嵩密度等を用いて算出され得る。シェル層3に内包される無機微粒子4の個数は、静電潜像現像用トナー1の粒子1個に対して5万個以上55万個以下である。
シェル層3は帯電制御剤を含有していてもよい。シェル層3はアニオン性(正帯電性)であるので、正帯電性の帯電制御剤を含有することができる。
図3は、他の実施形態に係る静電潜像現像用トナー5を示す。図3に示すように、本実施形態における静電潜像現像用トナー5は、トナーコア2と、シェル層3と、無機微粒子4と、外添剤6とを含む。具体的には、シェル層3の表面は、流動性及び取扱性を向上させるために、外添剤6により外添処理されている。外添剤6による静電潜像現像用トナー5の外添処理方法は、特に限定されず、従来知られている方法が用いられる。具体的には、外添剤6がシェル層3中に埋没しないように外添条件を調整し、混合機(例えば、ヘンシェルミキサー又はナウターミキサー)を用いて、外添処理が行われる。
外添剤6としては、シリカ及び金属酸化物(アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、及びチタン酸バリウム)の粒子が挙げられる。外添剤6の粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。
外添剤6により処理される前の静電潜像現像用トナー1(トナーコア2、シェル層3、及び無機微粒子4を含むトナー)を「トナー母粒子」と記載する場合がある。外添剤6の使用量は、トナー母粒子100質量部に対して1質量部以上10質量部以下が好ましく、2質量部以上5質量部以下がより好ましい。
以上、図1〜3を参照して、本実施形態に係る静電潜像現像用トナー1及び静電潜像現像用トナー5を説明した。なお、静電潜像現像用トナー1及び静電潜像現像用トナー5は、フェライト又はマグネタイトようなの磁性粉をさらに含有する、いわゆる1成分現像剤として用いられてもよい。又は、所望のキャリアと混合されて、いわゆる2成分現像剤として用いられてもよい。
キャリアは磁性キャリアが好ましい。具体的には、キャリア芯材が樹脂で被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材としては、例えば、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、及びコバルトのような粒子、並びにこれらの材料とマンガン、亜鉛、及びアルミニウムの金属との合金の粒子;鉄−ニッケル合金、及び鉄−コバルト合金のような粒子;酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、及びニオブ酸リチウムのようなセラミックスの粒子;リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、及びロッシェル塩の高誘電率物質の粒子が挙げられる。さらにキャリア芯材として、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が用いられてもよい。
キャリア芯材を被覆する樹脂の例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、及びポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、及びアミノ樹脂が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、シリコーン樹脂が好ましい。
特に、キャリア芯材を被覆する樹脂の割合は、芯材100質量部に対して1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
キャリアの粒子径は、20μm以上120μm以下が好ましく、25μm以上80μm以下がより好ましい。キャリアの粒子径は電子顕微鏡で測定できる。
本実施形態の静電潜像現像用トナーを2成分現像剤として用いる場合、静電潜像現像用トナーの使用量は、2成分現像剤の全量に対して5質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上12質量%以下が好ましい。
本実施形態の静電潜像現像用トナーは、例えば、電子写真法のような画像形成方法において好ましく用いられる。中でも、その特性から、本実施形態の静電潜像現像用トナーは、タッチダウン現像方式の現像手段を具備する画像形成装置の使用に特に適している。
タッチダウン現像方式とは、以下のような現像方式である。つまり、2成分現像剤(トナー及びキャリアを含有する現像剤)を担持する磁気ローラーから、トナーのみを移行させることにより、現像スリーブ上にトナーの薄層を形成すし、静電潜像が形成された感光体の表面に、上記トナーの薄層からトナーを飛翔させて静電潜像をトナー像として現像する方式である。タッチダウン現像方式を採用した場合、トナーの帯電量が上昇すると、現像スリーブ上に残留するトナーの量が増加する。そのため、トナーが現像スリーブから十分に回収されず、現像ゴーストが発生しやすかった。しかし、本実施形態の静電潜像現像用トナーを用いた場合は過帯電を抑制できるため、タッチダウン現像方式を用いて現像したとしても、長期に亘って現像ゴーストの発生を抑制できる。
本実施形態の静電潜像現像用トナー1の製造方法について、図1を参照して以下に説明する。
本実施形態の静電潜像現像用トナー1の製造方法は、準備工程と形成工程とを包含する。準備工程は、結着樹脂を含むトナーコア2を準備する工程である。形成工程は、トナーコア2の表面を被覆するように、シェル層3を形成する工程である。本実施形態の製造方法で得られた静電潜像現像用トナー1において、シェル層3は、熱硬化性樹脂を含み、針状の無機微粒子4を内包する。針状の無機微粒子4とは、アスペクト比が1.25以上2.5以下であり、平均長軸径及び平均短軸径が300nm以下の無機微粒子である。
準備工程を実行するには、結着樹脂中に、必要に応じて結着樹脂以外の成分(例えば、着色剤、帯電制御剤、離型剤、又は磁性粉)を良好に分散させればよい。準備工程を実行する方法としては、例えば、溶融混練法及び重合法が挙げられる。
溶融混練法は、以下のようにして行われる。まず、結着樹脂と必要に応じて結着樹脂以外の成分とを混合し混合物を得る。そして、得られた混合物を溶融混練し、得られた溶融混練物を公知の手法で粉砕して粉砕物を得る。得られた粉砕物を公知の手法で分級し、所望の粒子径のトナーコア2を得る。
重合法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。すなわち、溶融混練法と同様にして得られた溶融混練物を、例えばディスク又は多流体ノズルを用いて空気中に霧化しトナーコアを得る方法; 懸濁重合法を用いて直接トナーコアを生成する方法;単量体は可溶であるが得られる重合体が不溶であるような水系有機溶剤を用い、直接トナーコアを生成する分散重合法;水溶性極性重合開始剤の存在下で直接重合しトナーコアを生成する、いわゆるソープフリー重合法のような乳化重合法;一次極性乳化重合粒子を調製した後、反対電荷を有する極性粒子を加え会合させるヘテロ凝集法が挙げられる。
形成工程の態様を、以下に説明する。
形成工程の一態様は、付着工程と、供給工程と、樹脂化工程とを包含する(第一の形成工程)。付着工程は、トナーコア2の表面に無機微粒子4を付着させる工程である。供給工程は、トナーコア2の表面に熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーを含有するシェル層形成用液を供給する工程である(第一の供給工程)。樹脂化工程は、シェル層形成用液に含まれる熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーを樹脂化する工程である(第一の樹脂化工程)。
付着工程と、供給工程と、樹脂化工程とを包含する形成工程によりシェル層を形成する場合は、シェル層3中に無機微粒子4が均一に分散された静電潜像現像用トナー1を製造できる。また、製造直後のトナーコア2に付着工程を実行すれば、トナーコア2の保存中の取扱性及び流動性を向上させることができる。
付着工程においては、準備工程にて得られたトナーコア2の表面に無機微粒子4を付着させる。トナーコア2の表面に無機微粒子4を付着させる方法としては、例えば、無機微粒子4がトナーコア2中に完全に埋没しないように付着条件を調整し、混合器(ヘンシェルミキサー又はナウターミキサー)を用いて、トナーコア2と無機微粒子4とを混合する方法が挙げられる。
第一の供給工程においては、トナーコア2の表面にシェル層形成用液を供給する。シェル層形成用液は、熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーを含有する。シェル層形成用液をトナーコア2に供給する方法としては、例えば、トナーコア2の表面にシェル層成形用液を噴霧する方法、又はシェル層形成用液中にトナーコア2を浸漬する方法が挙げられる。
シェル層形成用液を調製するためには、例えば、溶剤、熱硬化性樹脂モノマー及び/又はプレポリマー、並びに必要に応じてその他の添加剤(後述の分散剤等)を、撹拌等により混合すればよい。溶剤の種類は、特に限定されず、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、及び水が挙げられる。
上記の熱硬化性樹脂のモノマーは適宜に選択される。また、上記の熱硬化性樹脂のプレポリマーは、熱硬化性樹脂のモノマーの重合度をある程度まで上げたポリマーの前段階の状態のものであり、初期重合体又は初期縮合体とも称される。
シェル層形成用液には、溶剤に対する熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーの分散性を向上させるために、公知の分散剤が含有されていてもよい。シェル層形成用液中の分散剤の含有量は、例えば0.1質量%以上15質量%以下である。シェル層形成用液中の分散剤の含有量が0.1質量%以上であることにより分散性を良好に発現させることができる。一方、シェル層形成用液中の分散剤の含有量が15質量%以下であることにより、分散剤に起因する環境負荷を低減させることができる。なお、分散剤は、本実施形態の静電潜像現像用トナー1又は5が製造された後、洗浄等の処理により除去できる。
第一の供給工程を経た後、第一の樹脂化工程においては、シェル層形成用液に含有される熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーを、任意の重合又は縮合等により樹脂化し熱硬化性樹脂とする。これにより、トナーコア2の表面にシェル層3が形成される。なお、樹脂化には、重合度が十分に高い完全な樹脂化のみならず、重合度が中程度の部分的な樹脂化も含まれる。
第一の樹脂化工程の反応温度(樹脂化温度)は、40℃以上90℃以下の範囲に維持されることが好ましく、50℃以上80℃以下に維持されることがより好ましい。反応温度を40℃以上とすることで、シェル層3の硬度を十分に高くすることができる。一方、反応温度を90℃以下に維持することで、シェル層3の硬度が過度に高くなることを抑制でき、定着時の加熱及び加圧によりシェル層3を容易に破壊できる。
形成工程の別の態様は、第二の供給工程と第二の樹脂化工程とを包含する(第二の形成工程)。第二の供給工程は、熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーと無機微粒子4とを含有するシェル層形成用液を供給する工程である。第二の樹脂化工程は、トナーコア2の表面に供給されたシェル層形成用液に含まれる熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーを樹脂化する工程である。第二の形成工程によりシェル層を形成する場合は、製造工程が繁雑とならずに本実施形態の静電潜像現像用トナー1を製造できる。
第二の供給工程において、シェル層形成用液を調製する方法は、特に限定されず、例えば、任意の溶剤に対して熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマー、無機微粒子4、並びに必要に応じて各種の添加剤(例えば、正極帯電剤又は分散剤)を混合し、適宜に撹拌混合すればよい。溶剤、熱硬化性樹脂モノマー及び/又はプレポリマー、並びに分散剤等としては、第一の供給工程のシェル層形成用液の調製に用いられるものと同様のものが用いられる。
第二の供給工程において、シェル層形成用液をトナーコア2に供給する方法としては、トナーコア2の表面にシェル層成形用液を噴霧する方法、又はシェル層形成用液中にトナーコア2を浸漬する方法が挙げられる。
第二の樹脂化工程においては、熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーを樹脂化してシェル層を形成し、静電潜像現像用トナー1を得ることができる。第二の樹脂化工程の樹脂化条件及び手法としては、第一の樹脂化工程の樹脂化条件及び手法と同様のものを採用できる。つまり、第二の樹脂化工程の反応温度(樹脂化温度)は、40℃以上90℃以下の範囲に維持されることが好ましく、50℃以上80℃以下に維持されることがより好ましい。反応温度を40℃以上とすることで、シェル層3の硬度を十分に高くすることができる。一方、反応温度を90℃以下に維持することで、シェル層3の硬度が過度に高くなることを抑制でき、定着時の加熱及び加圧によりシェル層3を容易に破壊できる。
以上、本実施形態の製造方法を説明した。なお、本実施形態の製造方法において、形成工程を経た後の静電潜像現像用トナーは、必要に応じて、洗浄工程、乾燥工程、及び外添工程から選択される1以上の工程を経てもよい。
洗浄工程では、形成工程を実行することによって得られた静電潜像現像用トナー1を、例えば、水で洗浄する。
乾燥工程においては、例えば、乾燥機(スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥器、及び減圧乾燥機)で、洗浄後の静電潜像現像用トナー1を乾燥する。中でも、乾燥中の電潜像現像用トナー1の凝集を抑制しやすいため、スプレードライヤーを用いることが好ましい。スプレードライヤーを用いる場合は、例えば、乾燥とともに外添剤6(例えば、シリカ微粒子)が分散された分散液を噴霧できるため、後述の外添工程を同時に行うことができる。
図1及び3を参照して、外添工程について説明する。外添工程においては、静電潜像現像用トナー1の表面に外添剤6を付着させる。外添剤6を付着させる好適な方法としては、外添剤6がシェル層3の表面に埋没しないように外添条件を調整して、混合機(例えば、ヘンシェルミキサー又はナウターミキサー)を用いて、電潜像現像用トナー1と外添剤6とを混合し、静電潜像現像用トナー5を製造する方法が挙げられる。
本実施形態の静電潜像現像用トナー1を記録媒体に定着する方法を説明する。本実施形態の定着方法は、トナー供給工程と荷重付与工程とを包含する。トナー供給工程は、静電潜像現像用トナー1を記録媒体表面へ供給する工程である。荷重付与工程は、表面に静電潜像現像用トナー1が供給された記録媒体に5N/cm2以上10N/cm2以下の荷重を付与する工程である。
トナー供給工程において、静電潜像現像用トナー1を記録媒体表面へ供給するに先立って、以下のようにしてトナー像を現像する。トナー像を現像するには、例えば、画像形成装置において、コロナ放電のような手法により像担持体の表面を帯電させる。その後、帯電された像担持体の表面をビーム等により露光して電気的に中性とし、像担持体の表面に静電潜像を形成する。そして、静電潜像が形成された像担持体の表面に対して静電潜像現像用トナー1を付与する。露光された露光部が静電潜像現像用トナー1を吸引し、静電潜像をトナー像として現像する。次いで、転写ローラー等によりトナー像を像担持体から記録媒体へ転写することで、静電潜像現像用トナー1を記録媒体へ供給する。
荷重付与工程においては、表面に静電潜像現像用トナー1が供給された記録媒体に5N/cm2以上10N/cm2以下の荷重を付与する。これにより、静電潜像現像用トナー1が記録媒体に定着する。
図1及び図4を参照し、荷重付与工程を詳細に説明する。図4は、荷重付与工程を実行するための定着器7の一例を示す。定着器7は、加熱ローラー9、加圧ローラー10、熱源11、温度検知部材12、及び分離部材13を備える。加熱ローラー9は熱源11(例えば、ハロゲンヒーター)を備えており、この熱源11により、記録媒体8を加熱する。温度検知部材12は、加熱ローラー9の加熱温度を制御する。加圧ローラー10は加熱ローラー9に対向して配されており、記録媒体8に荷重を付与する。分離部材13は、荷重付与工程を経た記録媒体8を加熱ローラー9から分離する。
具体的には、静電潜像現像用トナー1が供給された記録媒体8を、加熱ローラー9及び加圧ローラー10との間に通過させ、記録媒体10と静電潜像現像用トナー1とに熱及び荷重が付与される。そして、静電潜像現像用トナー1のシェル層3が破壊され、トナーコア2が溶融又は軟化して記録媒体8に定着する。なお、定着時の荷重は、ローラー荷重及びニップ幅を適宜変更することにより調節できる。ニップ幅とは、加圧ローラーと加熱ローラーとの間の接触幅を意味する。その後、記録媒体8は分離部材13により加熱ローラー9から剥がされて分離される。
本実施形態の定着方法においては、加熱ローラー及び加圧ローラー等によるいわゆる加熱加圧定着法等が用いられる。シェル層3に内包される無機微粒子4が破壊の基点となり、加熱及び加圧によりシェル層3が容易に破壊する。その結果、静電潜像現像用トナー1を記録媒体に定着させる際の定着温度及び定着荷重を十分に下げることができる。
本実施形態の静電潜像現像用トナーを用いた定着方法によれば、定着荷重を5N/cm2以上10N/cm2以下の範囲まで下げることができる。定着荷重が10N/cm2以下である場合は、定着時の被転写に過度な圧力が負荷されないため、記録媒体が耐久性及び搬送性等に優れるものとなり、さらに過圧に由来する記録媒体のしわのような欠陥の発生も抑制できる。加えて、定着部品を構成する部材(特に、ゴム部材)の劣化及びコストアップを抑制できる。一方、定着荷重が5N/cm2以上である場合は、低温定着性が良好となる。なお、一般的な静電潜像現像用トナーの定着荷重は20N/cm2以上100N/cm2以下である。
本実施形態の定着方法によれば、無機微粒子4を内包していないシェル層が形成された静電潜像現像用トナーを用いた場合、又は球状に近い無機微粒子を内包させたシェル層が形成された静電潜像現像用トナーを用いた場合と比較すると、その定着温度を十分に下げることができる。その結果、熱による負荷が低減するため記録媒体の耐久性を向上させることができ、さらに定着器を構成する部材の劣化及びコストアップを抑制できる。
なお、本実施形態の定着方法においては、定着時間は、20msec以上70msec以下とすることが好ましく、20msec以上50msec以下とすることがより好ましい。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により限定されない。
(針状の酸化チタン微粒子の調製)
酸化チタン微粒子A
硫酸法で得られたメタチタン酸に、水酸化ナトリウム水溶液(濃度50質量%)を、水酸化ナトリウムが酸化チタンに対し4倍モル等量となるように添加し、95℃で2時間加熱した。これを純水で十分に洗浄した後、塩化水素と酸化チタンとの割合(塩化水素/酸化チタン)が0.26になるように塩酸(濃度31質量%)を添加し、塩酸が沸騰した温度を保って1時間加熱した。その後冷却し、1Nの水酸化ナトリウム水溶液でpHが7になるまで中和した後、洗浄及び乾燥して、ルチル型酸化チタンを作製した。得られたルチル型酸化チタン100質量部に対し、塩化ナトリウム100質量部及びピロリン酸4ナトリウム・10水和物25質量部を添加した。これを振動ボールミルで1時間混合し、得られた混合物を、電気炉にて850℃で1時間焼成した。得られた焼成物を純水中に投入し、80℃で6時間加熱した。その後、純水で洗浄して可溶塩を除去し、酸化チタン微粒子Aを調製した。酸化チタン微粒子Aの形状は、アスペクト比が1.75、平均長軸径が140nm、平均短軸径が80nmであった。
酸化チタン微粒子B〜I
表1に示すような形状の酸化チタン微粒子B〜Iを準備した。
実施例1
(準備工程)
ポリエステル樹脂(花王社製、酸価16mgKOH/g、水酸基価22mgKOH/g、軟化点Tm100℃、ガラス転移点Tg48℃)100質量部に対し、着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3タイプ(銅フタロシアニン))5質量部、及び離型剤(エステルワックス、日油社製「WEP−3」)5質量部を配合し、ヘンシェルミキサーで混合した。得られた混合物を二軸押出機(池貝社製「PCM−30」)で溶融混練した。得られた混練物を機械式粉砕機(フロイント・ターボ社製「ターボミル」)で粉砕し、次いで分級機(日鉄鉱業社製「エルボージェット」)で分級し、6μmの体積平均粒径を有するトナーコアを得た。
(付着工程)
トナーコアに対し、酸化チタン微粒子Aの付着量がトナーコアの全量に対して1質量%となるように酸化チタン微粒子Aを添加し、これらをヘンシェルミキサーで混合して、トナーコアの表面に酸化チタン微粒子Aを付着させた。
(供給工程)
1L容の三口フラスコを30℃のウォーターバス中にセットし、フラスコ内で、塩酸を用いてイオン交換水(300ml)のpHを4に調整した。このイオン交換水に2mlのメチロールメラミンの初期重合体水溶液(昭和電工社製「ミルベン607」、固形分濃度80質量%)を溶解し、シェル層形成用液を得た。付着工程を経たトナーコア300gをシェル層形成用液に添加した。
(樹脂化工程)
シェル層形成用液とトナーコアとを200rpmの速度で1時間撹拌した。500mlのイオン交換水を追加し、フラスコの内容物を100rpmで撹拌しながら、1℃/分の昇温速度でフラスコ内部の温度を70℃にまで昇温した。昇温後、70℃かつ100rpmで、フラスコの内容物を2時間撹拌し続けた。次いで、水酸化ナトリウムを加えて、フラスコの内容物のpHを7に調整した。そして、フラスコ内容物を常温まで冷却し、静電潜像現像用トナーを含む液を得た。
(洗浄工程)
次いで、静電潜像現像用トナーを含む液から、ブフナーロートを用いて、このトナーのウエットケーキをろ取した。トナーのウエットケーキを再度イオン交換水に分散させてトナーを洗浄した。そして、トナーのイオン交換水による同様の洗浄を5回繰り返した。
(乾燥工程)
回収した静電潜像現像用トナー2gを水20gに分散させたときの分散液の導電度が10μS/cm以下となった時点で、回収したトナーを40℃雰囲気中に48時間放置して乾燥させた。
(外添工程)
乾燥後のトナーの表面に、乾式シリカ(粒径:0.1μm)の外添量がトナーの全量に対して0.5質量%となるように、乾式シリカを外添処理し、実施例1の静電潜像現像用トナーを得た。この静電潜像現像用トナーに後述の評価を実施した。その評価結果を表2に示す。また、この静電潜像現像用トナーのSEM写真(倍率:30000倍)を図5に示す。図5から明らかなように、実施例1の静電潜像現像用トナーの表面には、乾式シリカが均一に外添されていた。定着処理後の静電潜像現像用トナーのSEM写真(倍率:3000倍)を図6に示す。図6から明らかなように、実施例1の静電潜像現像用トナーにおいては、定着後に酸化チタン微粒子によりシェル層が破壊され、溶融したトナーコアがシェル層の破壊箇所から細長く流出している。
実施例2
用いる酸化チタン微粒子を、酸化チタン微粒子Bに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2の静電潜像現像用トナーを得た。
実施例3
用いる酸化チタン微粒子を、酸化チタン微粒子Cに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3の静電潜像現像用トナーを得た。
実施例4
用いる酸化チタン微粒子を、酸化チタン微粒子Dに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例4の静電潜像現像用トナーを得た。
実施例5
用いる酸化チタン微粒子を、酸化チタン微粒子Eに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例5の静電潜像現像用トナーを得た。
実施例6
用いる酸化チタン微粒子を、酸化チタン微粒子Fに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例6の静電潜像現像用トナーを得た。
比較例1
用いる酸化チタン微粒子を、酸化チタン微粒子Gに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1〜3の静電潜像現像用トナーを得た。
比較例2
用いる酸化チタン微粒子を、酸化チタン微粒子Hに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例2の静電潜像現像用トナーを得た。
比較例3
用いる酸化チタン微粒子を、酸化チタン微粒子Iに代えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例3の静電潜像現像用トナーを得た。
比較例4
酸化チタン微粒子を含有させなかった以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例4の静電潜像用トナーを得た。
実施例2〜6、及び比較例1〜4にて得られた静電洗浄現像用トナーの評価結果を表2に示す。
実施例及び比較例にて得られた静電潜像現像用トナーの評価方法又は測定方法を以下に示す。
(1)現像ゴースト評価
実施例及び比較例にて得られたトナー10質量部とキャリア(FS−C5300DN用キャリア)90質量部をボールミルで30分混合し、2成分現像剤を作製した。そして、評価機として、定着温度を調節できるように改造したプリンター(京セラドキュメントソリューションズ社製「FSC−5250DN」)を用いた。上述のようにして得られた2成分現像剤を現像装置に投入し、実施例及び比較例にて得られたトナー粒子を評価機のトナーコンテナに投入した。評価機の電源を入れ、評価機が安定して動作可能となった後に画像を出力し、これを初期画像とした。ついで常温常湿環境(温度:20℃以上23℃以下、相対湿度:50%以上65%以下)において、4%以上5%以下の印字率で、連続で10万枚印刷を行った後にベタ画像を得た。
初期画像とベタ画像(10万枚印刷後の画像)について、マクベス反射濃度計(グレタグマクベス社製「SPM−50」)を用い、画像濃度(ID)、明度(L*)、色相(a*)、及び色相(b*)を測定した。そして、下記式により、ΔEを求め、以下の基準で評価した。
ΔE={(a*)2+(b*)2+(L*)2}×1/2
◎:ΔEが3以下である。
○:ΔEが3を超え、5未満である。
×:ΔEが5以上である。
(2)画像劣化の評価
上記(1)の評価と同様の操作を行って、初期画像及び連続で10万枚印刷を行った後のベタ画像を得た。この初期画像及びベタ画像について、マクベス反射濃度計(グレタグマクベス社製「SPM−50」)を用い、画像濃度(ID)及びかぶり値(FD)を測定した。さらに、得られた初期画像及びベタ画像を目視で観察した。以下の基準で評価した。
◎:IDが1.30以上、FDが0.005未満であり、かつ画像にムラが発生していない。
○:IDが1.10以上1.30未満であり、FDが0.005以上0.015未満であり、かつ画像にムラがない。
×:IDが1.10未満、FDが0.015以上であり、かつ画像にムラが発生している。
(3)定着温度(低温定着性)
実施例及び比較例にて得られた静電潜像現像用トナーを、図4に示したような加熱加圧型定着器を用いて定着処理に付し、定着温度を測定した。具体的には、定着温度を100℃から200℃まで5℃刻みで変更して、90g/m2の用紙に1.0mg/cm2の静電潜像現像用トナーを定着した場合の定着状況を目視で確認し、トナーが良好に定着された状態となる最低の温度を定着温度として採用した。なお、最低温度の測定条件は、速度230mm/sec、ニップ幅8mm、ニップ通過時間35msecとした。以下の基準で評価した。
◎:定着温度が150℃以下である。
○:定着温度が155℃である。
×:定着温度が160℃以上である。
この定着器の構成は、以下の通りであった。加熱ローラーの芯金(φ26mm)は長さ1mmのアルミニウムであり、厚さ300μmのシリコンゴム層がその上に被覆されていた。さらにシリコンゴム層は、離型層として厚さ30μmのパラホルムアルデヒド樹脂チューブで被覆されていた。加熱ローラー内部にはハロゲンヒーターが設けられており、このヒーターの輻射熱によって加熱ローラーを加熱した。そして、加熱ローラーに備えられている温度検知部材により、加熱ローラーの温度が検知され、その検知結果に基づいてヒーター電源入力を制御した。加圧ローラーには芯金(φ12mm)が厚さ8mmのシリコンゴムによって被覆されており、さらにシリコンゴムがパラホルムアルデヒド樹脂チューブによって被覆されていた。
表2から明らかなように、シェル層に無機微粒子を内包させた本実施形態の静電潜像現像用トナーは、長期に亘って適切な帯電性を維持することができたため、10万枚の印刷を行った後でも画像ゴーストや画像劣化を抑制でき、良好な画像品質を達成できた。加えて、無機微粒子がシェル層の破壊の基点となったため、低温定着性を大きく改善できた。
比較例1の静電潜像現像用トナーは、アスペクト比が2.5を超える無機微粒子がシェル層に内包されていたため、帯電量が著しく低下し、電荷リーク性が必要以上に促進された。その結果、連続で10万枚の印刷を行うと、現像スリーブ上のトナー量が増えたことに起因して、現像スリーブ上に残留するトナーを十分に回収することができず、現像ゴーストが発生した。さらに、帯電性が過度に低下したため、画像劣化が発現していた。
比較例2にて得られた静電潜像現像用トナーは、アスペクト比が1.25未満である無機微粒子がシェル層に内包されていたため、無機微粒子の形状が球状に近づき、電荷リーク性が低下してしまい、トナーに多くの電荷が蓄積したと考えられる。その結果、トナーの帯電量が上昇し過帯電になったため、連続で10万枚の印刷を行うと、現像スリーブに対してトナーの静電的な付着力が強くなり、トナーを十分に回収できず、現像ゴーストが発生した。また、無機微粒子が球形に近いものであったため、この無機微粒子に加わる局所的な応力が弱くなり、シェル層に破壊の基点を付与できず、低温定着性は向上しなかった。
比較例3にて得られた静電潜像現像用トナーは、平均長軸径が300nmを超える無機微粒子がシェル層に内包されていたため、トナー表面から無機微粒子が脱離してしまい、ワックスなどのトナーコアを構成する成分が表面に露出した。そのため、連続で10万枚の印刷を行うと、現像ローラー上へのトナーの付着力が強まり、現像スリーブへの付着や現像ゴーストが発生した。さらに、無機微粒子の脱離や折れが発生し、シェル層を破壊する基点が少なくなったため、低温定着性は向上しなかった。
比較例4にて得られた静電潜像現像用トナーはシェル層に無機微粒子を内包しなかったため、電荷リーク性が発現せず、トナーに多くの電荷が蓄積したと考えられる。その結果、トナーの帯電量が上昇し過帯電になったため、連続で10万枚の印刷を行うと、現像スリーブに対してトナーの静電的な付着力が強くなり、トナーを十分に回収できず、現像ゴーストが発生した。さらに、シェル層を破壊する基点が存在しなかったため、低温定着性は向上しなかった。
本実施形態の静電潜像現像用トナーは、低温定着性に優れ、長期に亘って適切な帯電性を維持でき、良好な画像品質を得ることができるため、画像形成に好適に用いられる。
1 静電潜像現像用トナー
2 トナーコア
3 シェル層
4 無機微粒子
t シェル層3の厚み
5 静電潜像現像用トナー
6 外添剤
7 定着器
8 記録媒体
9 加熱ローラー
10 加圧ローラー
11 熱源
12 温度検知部材
13 分離部材

Claims (1)

  1. 結着樹脂を含むトナーコアを準備する準備工程と、
    前記トナーコアの表面を被覆するように、シェル層を形成する形成工程と
    を包含し、
    前記形成工程は、
    前記トナーコアの表面に無機微粒子を付着させる付着工程と、
    前記無機粒子が付着した前記トナーコアの前記表面に熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーを含有するシェル層形成用液を供給する供給工程と、
    前記シェル層形成用液に含まれる前記熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーを樹脂化する樹脂化工程と
    を包含し、
    前記シェル層は、前記熱硬化性樹脂を含み、
    前記無機微粒子はアスペクト比が1.25以上2.5以下であり、平均長軸径及び平均短軸径が300nm以下であり、前記無機微粒子は前記トナーコアの表面に直接付着しており且つ前記シェル層に内包されており、
    前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂であり、
    前記熱硬化性樹脂のモノマー及び/又はプレポリマーは、メチロールメラミン及び/又はメチロールメラミンのプレポリマーであり、
    前記シェル層形成用液は、分散剤を含有しない、静電潜像現像用トナーの製造方法。
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