JP6001702B2 - ポリプリントラクト改変レトロウイルスベクター - Google Patents
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Description
この発明は、組込み欠損レトロウイルスベクター並びに遺伝子治療及び基礎生物学などにおいてこれを使用する方法に関する。
宿主細胞への特定の外部遺伝子又は自己遺伝子の導入は、遺伝子配列を適切な核酸ベクターに導入することにより行うことができる。所望の宿主細胞にこのような組み換えベクターを導入する様々な方法が開発されてきた。ウイルスベクターを使用することにより、広汎な宿主細胞に組み換え分子を迅速に導入することができる。
レトロウイルスベクターの使用に基づく遺伝子導入の主な課題は、挿入による突然変異誘発や2重鎖DNAの存在によるDNA損傷応答の誘導を最小にしながら、安定した導入遺伝子の発現を達成することである。挿入による突然変異誘発を避ける1つの方法は、ゲノム上の特定の部位を標的に導入遺伝子組込みを行うことである。
。幾つかの態様において、この核酸は、2個のLTRの間にバクテリアの複製起点及びバクテリアの選択マーカーを有する。幾つかの態様において、このウイルスの複製起点は、Epstein-BarrウイルスOriP及びSV40複製起点からなる群から選択される。幾つかの態様において、宿主によるベクター核酸の複製を直接若しくは間接的に媒介できる配列は、(a)宿主細胞複製装置により認識される配列、(b)宿主細胞複製装置と結合及び/又は宿主細胞複製装置を調節できるタンパク質をコードする配列、及び(c)(b)のタンパク質と結合できる又は前記ベクターの配列を認識できるタンパク質をコードする配列、からなる群から選択される。
本発明はまた、標的細胞を本願発明の組み換えレトロウイルス粒子に感染させて産生されるレトロウイルスプロウイルスを提供する。
本発明はまた、本願発明のレトロウイルスプロウイルスのmRNA又は他のRNAを提供する。
本発明はまた、本願発明のレトロウイルスベクター及びこのレトロウイルスベクターをパッケージングにするために必要な1又は2以上のタンパク質をコードする少なくとも1以上の構築体を含む誘導レトロウイルスベクターパッケージング細胞株を提供する。
本発明はまた、組込み欠損ベクター粒子の製法を提供する。幾つかの態様において、この製法は、パッケージング細胞株に、機能性PPTを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットをトランスフェクトする段階から成り、該パッケージング細胞株がパッケージングされるレトロウイルスベクターのためのタンパク質を提供する。
本発明はまた、動物ゲノムへのヌクレオチド配列の組込み無しに、動物細胞内で所定のヌクレオチド配列を発現させる方法を提供する。幾つかの態様において、この方法は、1又は2以上の細胞を本願発明の組込み欠損レトロウイルス粒子に感染させることから成る。
幾つかの態様において、この組み換え配列における部位特異的組込みを媒介できるリコンビナーゼは、Cre又はFLPである。幾つかの態様において、この(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階は、(a)と同じ段階で行われ、かつこのヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列は、(a)の組み換え欠損ベクターである。幾つかの態様において、この(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階は、(a)と同じ段階で行われ、かつ前記ヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列は、(a)の換え欠損ベクターとは別のベクター、プラスミド又は核酸分子である。
また、上記で述べられた本発明の目的は、本発明により全体又は部分的に達成され、また本願発明の他の目的は、以下に最善を尽くして記載し添付した図との関連で記載が進むに従い明らかとなるであろう。
本明細書で用いられる用語は特定の態様を記載することだけを目的とするためであり、制限するためではないことを理解すべきである。他に定義しなければ、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本明細書に開示する対象事項が属する、当業者が通常理解する意味と同じである。本明細書に記載したものに類似した又は同等な如何なる方法及び材料も本明細書に開示した対象物の実施又は試験において用いることができるが、代表的な方法及び材料を本明細書において記載する。本明細書に記載された全ての出版物、特許申請、特許及び他の参照物は、その全体が参考文献として取り込まれている。
長年にわたる特許法の慣例に従い、用語"1つの"、"ある"及び"その"は、請求の範囲を含めて本申請において用いられたとき、"1又は2以上"を表す。
他の指示がなければ、この明細書及び請求の範囲に用いられる含有物、反応条件、その他の量を表す数字は全ての場合、用語"約"により修飾されていると理解すべきである。従って、逆に指示されなければ、本明細書及び添付の請求の範囲に述べられた数値的パラメータは、本明細書に開示した対象物によって得ようと追求された希望する特性によって変わりうる近似である。
本明細書で用いたように、用語"cis調節配列"又は"cis配列"は、当業者が通常理解するのと同じ意味を有し、即ち、DNA又はRNAの同一鎖上に位置する遺伝子の発現を調節するDNA又はRNAの領域である。
本明細書で用いるように、用語"適合しうる宿主細胞"は、そのゲノムの中に1又は2以上の部位特異的組み換え配列を有する宿主細胞を意味し、ゲノムの中の部位特異的組み換え配列は、本明細書において開示した組込み欠損ベクターの組み換え配列と互換性のある配列である。この適合しうる宿主細胞組み換え配列は、宿主ゲノムに所定のヌクレオチド配列を部位特異的に挿入するための本明細書に開示した方法において有用である。
本明細書で用いる用語"遺伝子治療"は、患者内の適切な細胞(複数)に外来性の核酸を挿入することにより、患者の病的状態を治療するための一般的方法を表す。この核酸を、その機能が維持できるように細胞に挿入する、例えば、特定のポリペプチドを発現する能力を維持すること。ある症例では、外来性核酸の挿入により、治療上有効量の特定のポリペプチドの発現がもたらされる。
本明細書で用いる"抽出した"は、自然に生ずる核酸配列、DNA断片、DNA分子、コードする配列又はオリゴヌクレオチドは、その自然の環境から取り除かれる又は合成分子又はクローン化した産物であることを意味する。
用語"核酸"は単鎖又は2重鎖型のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを表し、及び他に制限されなければ、自然に生成されたヌクレオチドと同様に核酸に対してハイブリッド形成を行う自然のヌクレオチドの既知の類縁体を包含する。用語"核酸"、"ヌクレオチド配列"及び"ポリヌクレオチド配列は、本明細書では互換的に用いられる。
用語"動作可能な連結"は、核酸発現制御配列(プロモーター又は一連の転写因子結合部位)及び第2の核酸配列の間の機能的な連結を表し、ここでこの発現制御配列は、第2の配列に対応した核酸の転写を命令する。
本明細書で用いるように、用語"ポリヌクレオチド"は、単鎖、2重鎖又は高次構造を持つことに関係なく全ての形のDNA及びRNAを表わす。あるポリヌクレオチドは、化学的に合成可能であり、又は宿主細胞又は有機体から抽出できる。特別のポリヌクレオチドは、天然に存在する残基及び合成残基の両者を含むことができる。
本明細書で用いるように、用語"ポリプリントラクト"は、レトロウイルスRNA中に(又はレトロウイルスをベースとしたベクター由来のRNA中に)存在する約15ヌクレオチドの配列を表し、これはプラス鎖DNA合成のためのプライマー結合部位として働くことができる。例えば、Rausch 及び Le Grice (2004) Int J Biochem Cell Biol 36:1752-1766を参照されたい。
本明細書において、親レトロウイルスポリプリントラクト(3'PPT)が欠失し又はそうでなければ機能性3'PPTを欠いた組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセット(図2に代表的態様(pTK1023、pTK1039及びpTK1046のみ)を示す;またMa 及び Kafri (2004) Mol Ther 10(1):139-149; Bayer 他 (2008) Mol Ther 16(12):1968-1976)を参照されたい)を記載する。従って、本明細書に開示した幾つかの態様において、図2に示すが、これらに限定されない、組込み欠損レトロウイルスベクターを含む方法及び組成物が提供される。本明細書に開示した発明はまた、図2に示されたような組込み欠損レトロウイルスベクターを含むだけではなく、更にウイルスの複製起点、又は宿主が直接又は間接的にベクター核酸の複製を媒介することができる配列を含むことができる。幾つかの態様において、ウイルスの複製起点はEBV-OriP及びSV40複製起点を含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、ウイルス複製起点は、CMVプロモーターの上流に位置する。本明細書に記載されているレトロウイルスベクター組成物において、逆転写の間の線型ベクターDNAの産生は劇的に減少する。実際、本明細書に記載されたベクターからのベクター導入の過程で、産生したレトロウイルスベクターDNAは、1-LTRのみを含む実質的に均一なエピソーム2重鎖環状DNAである(図4〜6参照)。
幾つかの態様において、レトロウイルスベクターをパーケージするためのタンパク質を提供する、パッケージングする細胞株に機能性PPTを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットを遺伝子導入する方法を、組込み欠損ベクター粒子を産生するために提供する。
幾つかの態様において、機能性PPTを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセット;及びレトロウイルスベクターをパッケージングするに必要なタンパク質をコードする少なくとも1つの構築体を含む、レトロウイルスベクターキットを提供する。
Claims (28)
- パッケージング細胞株に、組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットをトランスフェクトする段階から成り、
該組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットが、5'から3'方向に、
(i)長末端反復配列(LTR);
(ii)パッケージングシグナル;
(iii)rev応答性配列(RRE);
(iv)プロモーター;及び
(v)親のレトロウイルスに基づくポリプリントラクト(3'PPT)であって、変異、欠失又は修飾されたPPTから成り、親のレトロウイルスと比較して、同一の3'PPTが存在しない又は該3'PPTが非機能的であり、
該パッケージング細胞株がパッケージングされるレトロウイルスベクターのためのタンパク質を提供する、組込み欠損ベクター粒子の製法。 - 前記組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットが、更に、機能性中央ポリプリントラクト(cPPT)、前記変異、欠失又は修飾されたPPTの下流に位置する第2のLTR、及び/又は複製起点を有する、請求項1に記載の製法。
- 前記組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットが、更に、前記プロモーターに機能的に連結した異種のヌクレオチド配列を含む請求項1に記載の製法。
- 動物ゲノムへのヌクレオチド配列の組込み無しに、動物細胞内で所定のヌクレオチド配列を発現させる方法であって、1又は2以上の細胞をレトロウイルス粒子に感染させることから成る方法(ヒトの治療方法を除く。)であって、該レトロウイルス粒子が、核酸を含む、細胞に異種のヌクレオチド配列を導入するためのベクターを含み、該核酸は, 一つの長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル、rev応答配列、真核生物プロモーター、該真核生物プロモーターに機能的に連結した異種のヌクレオチド配列、及びレトロウイルスに基づくポリプリントラクト(3'PPT)であって、変異、欠失又は修飾された3'PPTから成る、方法。
- 前記核酸が、更に、機能性中央ポリプリントラクト(cPPT)、前記変異、欠失又は修飾されたPPTの下流に位置する第2のLTR、及び/又は複製起点を有する、請求項4に記載の製法。
- 前記核酸が、更に、ウイルスの複製起点又は宿主によるベクター核酸の複製を直接若しくは間接的に媒介できるヌクレオチド配列を含む請求項4に記載の方法。
- 前記核酸が、更に、前記真核生物プロモーターの下流に位置する第2のLTR、及び2個のLTRの間にバクテリアの複製起点及びバクテリアの選択マーカーを有する請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記宿主によるベクター核酸の複製を直接若しくは間接的に媒介できる配列が、下記(a)〜(c)からなる群から選択される請求項6に記載の方法。
(a)宿主細胞複製装置により認識される配列、
(b)宿主細胞複製装置と結合及び/又は宿主細胞複製装置を調節できるタンパク質をコードする配列、及び
(c)(b)のタンパク質と結合できる又は前記ベクターの配列を認識できるタンパク質をコードする配列 - 前記異種の配列が、1又は2以上のマーカー遺伝子、治療遺伝子、抗ウイルス遺伝子、抗腫瘍遺伝子、サイトカイン遺伝子、抗原をコードする遺伝子、宿主クロマチンと結合できる配列、宿主DNA及び宿主クロマチン及びベクターの核酸と結合できる蛋白質をコードする配列、DNAメチル化活性を有するタンパク質をコードする配列、並びにこれらの組合せからなる群から選択される請求項4に記載の方法。
- 前記核酸が、更に、前記異種のヌクレオチド配列の下流に転写後の調節エレメントを含む請求項4に記載の方法。
- 前記組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットが、細胞に異種のヌクレオチド配列を導入するためのベクターに含まれる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記ベクターが、LTRを一つだけ含む請求項4又は11に記載の方法。
- 前記ベクターが、前記LTRのU3領域に自己不活化欠失を有する請求項4又は11に記載の方法。
- 前記U3領域の欠失部分が誘導プロモーターに置換された請求項13に記載の方法。
- 前記ベクターが、部位特異的組み換え部位を含む請求項4又は11に記載の方法。
- 前記部位特異的組み換え部位が、loxP及びFRTからなる群から選択される請求項15に記載の方法。
- 前記ベクターが、少なくとも2種の異なるレトロウイルスからの配列を含む請求項4又は11に記載の方法。
- 前記少なくとも2種の異なるレトロウイルスが、レンチウイルスを含む請求項17に記載の方法。
- 前記LTRが、少なくとも2種の異なるレトロウイルスからの配列を含む請求項4又は11に記載の方法。
- 前記少なくとも2種の異なるレトロウイルスが、レンチウイルスを含む請求項19に記載の方法。
- 前記ベクターが、少なくとも2種の異なるレトロウイルスからの配列及びウイルス粒子内でベクターの交差パッキングを提供するcis配列をコードする少なくとも1種の配列を含む請求項4又は11に記載の方法。
- 前記cis配列が、RRE、該RREに隣接する領域からのEnv遺伝子断片及びcPPTからなる群から選択される請求項21に記載の方法。
- (a)適合しうる宿主細胞に、所定のヌクレオチド配列及び1又は2以上の部位特異的組み換え配列の機能的組合せを含む、核酸を含む、細胞に異種のヌクレオチド配列を導入するためのベクターを形質導入する段階であって、
該核酸は, 一つの長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル、rev応答配列、真核生物プロモーター、該真核生物プロモーターに機能的に連結した異種のヌクレオチド配列、及びレトロウイルスに基づくポリプリントラクト(3'PPT)であって、変異、欠失又は修飾された3'PPTから成る段階、及び
(b)該適合する宿主細胞へ、該組み換え配列における部位特異的組込みを媒介できるヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列から成る核酸を遺伝子導入又は形質導入する段階
から成り、該(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)とは別の段階又は(a)と同じ段階で行われてもよい、
該所定のヌクレオチド配列が、該宿主細胞のゲノムに部位特異的に挿入される、該所定のヌクレオチド配列を宿主細胞ゲノムに部位特異的に挿入する方法(ヒトの治療法を除く。)。 - 前記組み換え配列における部位特異的組込みを媒介できるリコンビナーゼが、Cre又はFLPである請求項23に記載の方法。
- 前記(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)と同じ段階で行われ、かつ前記ヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列が、前記(a)中のベクターである請求項23に記載の方法。
- (a)宿主細胞に、所定のヌクレオチド配列及び1又は2以上のトランスポゾン配列の機能的組合せを含むベクターを形質導入する段階であって、該ベクターが、部位特異的組み換え部位を含み、核酸を含む、細胞に異種のヌクレオチド配列を導入するためのベクターであり、
該核酸は, 一つの長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル、rev応答配列、真核生物プロモーター、該真核生物プロモーターに機能的に連結した異種のヌクレオチド配列、及びレトロウイルスに基づくポリプリントラクト(3'PPT)であって、変異、欠失又は修飾された3'PPTから成る段階、及び
(b)該宿主細胞へ、該宿主ゲノムへの組込みを媒介できるトランスポザーゼをコードする配列から成る核酸を遺伝子導入又は形質導入する段階から成り、
該(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)とは別の段階又は(a)と同じ段階で行われてもよく、また該所定のヌクレオチド配列が、該宿主細胞のゲノムに挿入される、該所定のヌクレオチド配列を宿主細胞ゲノムに非特異的に挿入する方法(ヒトの治療法を除く。)。 - 前記(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)と同じ段階で行われる請求項26に記載の方法。
- 前記トランスポゾンがSleeping Beauty(眠り姫)であるか、又は前記トランスポザーセがSleeping Beauty(眠り姫)であるトランスポゾンに作用する請求項26に記載の方法。
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