以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
《レーザダイシング装置の第1の実施の形態》
〈構成〉
図1は、レーザダイシング装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
同図に示すように、本実施の形態のレーザダイシング装置10は、主として、ウェーハWを保持するウェーハテーブル20と、レーザ反射防止板50とウェーハテーブル20に保持されたウェーハWにレーザ光を入射するレーザ照射装置60とで構成される。
まず、本実施の形態のレーザダイシング装置10で加工対象とするウェーハWについて説明する。
本実施の形態のレーザダイシング装置10で加工対象とするウェーハWは、表面にMEMS素子が形成されたウェーハWであり、ダイシング用フレームFにマウントされた状態で加工処理される。
図2は、ダイシング用フレームにマウントされた状態のウェーハを示す斜視図である。
同図に示すように、ウェーハWは、ダイシング用テープTを介してダイシング用フレームFにマウントされる。
ダイシング用フレームFは、枠状に形成され、その内部にダイシング用テープTが貼り付けられる。ウェーハWは、その裏面をダイシング用テープTに貼着されて、ダイシング用フレームFにマウントされる。
ここで、このダイシング用フレームFに貼り付けられるダイシング用テープTは、延性を有する素材で形成されるとともに、レーザ照射装置60から出射されるレーザ光を透過可能な素材で形成される。本例では、延性を有し、透明な素材で形成される。なお、通気性を有することが更に好ましい。
ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWは、たとえば、カセット等にストックされ、図示しない搬送装置(たとえば、ロボットアームなど)によって、ウェーハテーブル20に供給される。この際、ウェーハWは、ダイシング用テープTが貼着された面(裏面)をウェーハテーブル20の吸着面に向けてウェーハテーブル20に受け渡され、そのダイシング用テープTが貼着された面を吸着されてウェーハテーブル20に保持される。
ウェーハテーブル20は、図1に示すように、主として、テーブル板22と、そのテーブル板22を保持するテーブル板保持フレーム24とで構成される。
テーブル板22は、加工対象とするウェーハWに対応した円盤状に形成され(加工対象とするウェーハWの全面を支持できるように、加工対象とするウェーハWよりも大径の円盤状に形成される。)、その上下の面は共に平坦に形成される。すなわち、一様な厚みをもって形成される。このテーブル板22は、レーザ照射装置60から出射されるレーザ光を透過可能な素材で形成される。一例として、本実施の形態では、透明な石英ガラスで形成される。また、このテーブル板22は、加工対象とするウェーハWを撓みなく保持することができるように、必要十分な厚さをもって形成される。
テーブル板22は、下面側がウェーハWを保持するためのウェーハ吸着面22Aとされる。ウェーハ吸着面22Aには、図3に示すように、同心円上に複数のウェーハ吸着穴26が一定ピッチで形成される。このウェーハ吸着穴26は、加工対象とするウェーハWに対応して形成され、加工対象とするウェーハWの周縁部を吸引する位置に形成される。すなわち、図4に示すように、通常、ウェーハは、周縁部(図4において破線で記載された円よりも外周側の領域)が余白領域とされ、この余白領域には素子等を形成しないので、この余白領域でウェーハを吸引するように、ウェーハ吸着穴26が配置される。
各ウェーハ吸着穴26は、テーブル板22に垂直に形成され、テーブル板22の内部に形成された環状流路28に連通される。環状流路28は、ウェーハ吸着穴26の配置軌跡に対応して形成され、ウェーハ吸着面22Aと平行な円環状に形成される。すなわち、ウェーハ吸着穴26は、この環状流路28の上に一定ピッチで形成される。
環状流路28の一部には、接続流路30が連通される。接続流路30は、ウェーハ吸着面22Aと平行に形成され、テーブル板22の外周面上に形成された接続流路連通口32に連通される。この接続流路連通口32からエアを吸引することにより、各ウェーハ吸着穴26からエアが吸引される。
テーブル板保持フレーム24は、円環状に形成される。テーブル板22は、このテーブル板保持フレーム24の内周部に保持される。
テーブル板保持フレーム24は、図示しない回転駆動機構によってθ軸周りに回転するとともに、図示しない昇降駆動機構によって上下方向(Z方向)に昇降する。また、図示しない前後駆動機構によって水平面上を前後方向(Y方向)に移動するとともに、図示しない左右駆動機構によって水平面上を左右方向(X方向)に移動する。更に、図示しない表裏反転機構によって、表裏(上下)が反転する(たとえば、X軸周りに回転して表裏が反転する。)。
テーブル板22は、テーブル板保持フレーム24が回転することにより、θ軸周りに回転する。また、テーブル板保持フレーム24が昇降することにより、上下に昇降する。更に、テーブル板保持フレーム24が前後方向に移動することにより、前後に移動し、左右方向に移動することにより、左右に移動する。また、テーブル板保持フレーム24が表裏反転することにより、裏表(上下)が反転する。
テーブル板保持フレーム24には、テーブル板22に形成された接続流路30の接続流路連通口32に連通される連通流路34が形成される。連通流路34は、水平に形成され、テーブル板保持フレーム24の外周面部に形成された接続口36に連通される。
接続口36には、可撓性を有する吸引管38が接続される。吸引管38には、真空ポンプ40が接続される。この真空ポンプ40を駆動することにより、ウェーハ吸着穴26からエアが吸引され、ウェーハWがテーブル板22のウェーハ吸着面に吸着保持される。
レーザ反射防止板50は、ウェーハテーブル20の下部に設置される。このレーザ反射防止板50は、上面部にレーザ光の反射防止処理(たとえば、黒色処理)が施された平板状に形成され、ウェーハテーブル20のウェーハ吸着面22Aから所定距離離れた位置に水平に設置される。すなわち、ウェーハテーブル20のウェーハ吸着面22Aとレーザ反射防止板50との間には所定の空間が形成される。
レーザ照射装置60から出射されてウェーハWを透過したレーザ光は、このレーザ反射防止板50に入射する。これにより、不要な反射が防止でき、反射焼け等が生じるのを防止できる。
レーザ照射装置60は、ウェーハテーブル20の上方に設置され、ウェーハテーブル20に向けてレーザ光を垂直に出射する。
図5は、レーザ照射装置の概略構成図である。同図に示すように、レーザ照射装置60は、主として、レーザ発振装置62と、コリメータレンズ64と、コンデンサレンズ66と、アクチュエータ68とで構成される。
レーザ発振装置62は、ウェーハWの加工条件に従ったレーザ光を発振する。レーザ発振装置62から発振されたレーザ光は、コリメータレンズ64によって平行光とされた後、コンデンサレンズ66で焦点Pに集光される。
焦点PをウェーハWの内部に設定して、ウェーハWにレーザ光を入射すると、ウェーハWの内部に改質領域が形成される。この状態でウェーハWを水平に移動させると、焦点Pの移動軌跡に沿って改質領域が連続的に形成され、改質層Lが形成される。加工時は、この改質層をストリートSに沿って形成する。
アクチュエータ68は、コンデンサレンズ66を光軸方向(Z軸方向)に微小移動させる。すなわち、コンデンサレンズ66は、図示しないレンズ枠に保持されて、光軸方向に移動自在に支持されており、このアクチュエータ68に駆動されて、光軸方向に微小移動する。
アクチュエータ68を駆動して、コンデンサレンズ66を光軸方向に移動させることにより、レーザ光の焦点Pの位置がZ方向に変位する。これにより、改質層Lを形成する位置(Z方向の位置)を調整することができる。また、焦点PのZ方向の位置を変えて、ウェーハWに複数回レーザ光を入射することにより、ウェーハWの内部に複数の改質層Lを形成することができる。
本実施の形態のレーザダイシング装置10は、以上のように構成される。
なお、レーザダイシング装置10の動作は、図示しない制御装置で制御される。制御装置は、所定の制御プログラムを実行して、各部の動作を制御し、ウェーハWの加工処理を実行する。
〈作用〉
次に、レーザダイシング装置10を用いたダイシング方法について説明する。
上記のように、ウェーハWは、ダイシング用フレームFにマウントされた状態で加工処理される。ウェーハWは、裏面(MEMS素子が形成されていない面)をダイシング用テープTに貼着されて、ダイシング用フレームFにマウントされる。
ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWは、図示しない搬送装置(たとえば、ロボットのアーム)によって、ウェーハテーブル20の下部まで搬送される。この際、ウェーハWは、ダイシング用テープTが貼着された面を上向きにし、表面は非接触の状態でウェーハテーブル20の下部位置まで搬送される。
ウェーハテーブル20の下部位置まで搬送されたウェーハWは、搬送装置からウェーハテーブル20に受け渡される。受け渡しは、ウェーハWの裏面をウェーハテーブル20のウェーハ吸着面22Aで吸着保持することにより行われる。具体的には、次のように行われる。
まず、ウェーハWの位置決めが行われる。すなわち、ウェーハWの中心が、ウェーハテーブル20の中心と一致するように位置決めされる。その後、ウェーハWの裏面にウェーハテーブル20のウェーハ吸着面22Aが当接され、真空ポンプ40が駆動される。これにより、ウェーハWの裏面の周縁部がウェーハ吸着穴26に吸引され、ウェーハWがウェーハテーブル20に吸着保持される。
このようにしてウェーハテーブル20に吸着保持されたウェーハWは、平坦に形成されたウェーハテーブル20のウェーハ吸着面22Aにダイシング用テープTを介して密着して保持される。これにより、撓むことなくウェーハWを水平に保持することができる。また、ウェーハWは、ダイシング用テープTを介して裏面が吸着保持されるため、表面を非接触で保持することができる。
ウェーハWを受け渡した搬送装置は、ウェーハテーブル20の下部から退避する。この後、所定のアライメント処理が行われ、ダイシングが開始される。
ダイシングは、レーザ照射装置60から出射されるレーザ光をストリート(分割予定線)Sに沿ってウェーハWに入射することにより行われる。
制御装置(図示せず)は、ウェーハWの内部の所定位置に焦点Pが設定されるように、アクチュエータ68を駆動して、コンデンサレンズ66の位置を調整する。そして、出射されたレーザ光が、ストリートSに沿ってウェーハWに入射するように、ウェーハテーブル20を移動される。
ところで、本実施の形態のレーザダイシング装置10では、加工対象のウェーハWが、ウェーハテーブル20の下面に吸着保持される。これに対して、レーザ光はウェーハテーブル20の上面に入射される。
しかし、ウェーハテーブル20は、レーザ光を透過可能に形成されているため、上面にレーザ光を入射した場合であっても、ウェーハWに入射することができる。
また、ウェーハWは、ダイシング用テープTが貼着された面(裏面)をウェーハテーブル20に吸着保持されるが、ダイシング用テープTもレーザ光を透過可能に形成されているため、ウェーハWに入射することができる。
このように、本実施の形態のレーザダイシング装置10では、ウェーハテーブル20及びダイシング用テープTを透過させて、レーザ光がウェーハWに入射される。
ウェーハWは、ウェーハテーブル20のウェーハ吸着面22Aに密着し、撓むことなく保持されているため、所定位置に正確にレーザ光を入射することができる。これにより、ストリートSに沿って正確に変質層を形成することができる。
また、ウェーハWは、表面に触れることなくウェーハテーブル20に保持されるため、表面に形成されたMEMS素子を破壊することなく加工処理することができる。
また、ウェーハWの表面を吸着保持していると、ウェーハWを透過したレーザ光によってウェーハ吸着面が焼けたり、溶融物が付着したりして、ウェーハ吸着面の平滑性を保てないが、表面に触れることなくウェーハWを吸着保持することにより、このような不具合が発生することも防止することができる。これにより、継続して加工しても、常に平坦にウェーハWを吸着保持することができる。
更に、レーザ光は、ウェーハWの裏面に入射されるため、表面に形成された素子等に影響されることなく、正確かつ確実に所定の位置に変質層を形成することができる。
レーザ光をストリートSに沿ってウェーハWに入射し、加工処理が終了すると、ウェーハWはウェーハテーブル20から搬送装置に受け渡され、搬送装置によって次工程へと搬送される。
以上説明したように、本実施の形態のレーザダイシング装置10によれば、表面に触れることなくウェーハWを保持し、裏面にレーザ光を入射して加工処理する。これにより、表面に破損しやすい素子(たとえば、MEMS素子)等が形成されているウェーハであっても、その素子等を破損することなく加工処理することができる。また、ストリート付近に金属膜が形成されたウェーハであっても加工処理することができる。
また、ウェーハWはウェーハテーブル20のウェーハ吸着面22Aに全面が吸着されて保持されるため、ウェーハWを撓みなく固定することができる(完全に平坦な状態で固定することができる。)。これにより、レーザ照射装置60からウェーハWまでの距離(ワークディスタンス)を一定にすることができる。そして、このワークディスタンスを一定にすることができることにより、ウェーハWのうねりに沿って、レーザ照射装置60がオートフォーカスをかける必要がなくなり、加工時の処理効率を向上させることができる(スループットを向上させることができる。)。
《レーザダイシング装置の第2の実施の形態》
〈構成〉
図6は、レーザダイシング装置の第2の実施形態を示す概略構成図である。
同図に示すように、本実施の形態のレーザダイシング装置110は、主として、ウェーハWを保持するウェーハテーブル120と、レーザ反射防止板150とウェーハテーブル120に保持されたウェーハWにレーザ光を入射するレーザ照射装置160とで構成される。
本実施の形態のレーザダイシング装置110で加工対象とするウェーハWも、上述した第1の実施の形態のレーザダイシング装置10と同様に、表面にMEMS素子が形成されたウェーハWであり、ダイシング用フレームFにマウントされた状態で加工処理される(図2参照)。
ウェーハテーブル120は、図6に示すように、主として、テーブル板122と、そのテーブル板122を保持するテーブル板保持フレーム124とで構成され、ウェーハWとともにダイシング用フレームFを吸着保持する。
テーブル板122は、ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWを吸着保持する。このテーブル板122は、ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWのウェーハWの部分を吸着保持するウェーハ保持部122Wと、ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWのダイシング用フレームFの部分を吸着保持するフレーム保持部122Fとで構成される。
ウェーハWの部分を吸着保持するウェーハ保持部122Wは、加工対象とするウェーハWに対応した円盤状に形成され(加工対象とするウェーハWの全面を支持できるように、加工対象とするウェーハWよりも大径の円盤状に形成される。)、その上下の面は共に平坦に形成される。このウェーハ保持部122Wは、レーザ照射装置160から出射されるレーザ光を透過可能な素材で形成される。一例として、本実施の形態では、透明な石英ガラスで形成される。また、このテーブル板122は、加工対象とするウェーハWを撓みなく保持することができるように、必要十分な厚さをもって形成される。
ウェーハ保持部122Wは、下面側がウェーハWを保持するためのウェーハ吸着面122WAとされる。ウェーハ吸着面122WAには、図7に示すように、同心円上に複数のウェーハ吸着穴126Wが一定ピッチで形成される。このウェーハ吸着穴126Wは、加工対象とするウェーハWに対応して形成され、加工対象とするウェーハWの周縁部(余白領域(図4参照))を吸引する位置に形成される。
各ウェーハ吸着穴126Wは、ウェーハ保持部122Wに垂直に形成され、ウェーハ保持部122Wの内部に形成されたウェーハ吸着用環状流路128Wに連通される。ウェーハ吸着用環状流路128Wは、ウェーハ吸着穴126Wの配置軌跡に対応して形成され、ウェーハ吸着面122WAと平行な円環状に形成される。すなわち、ウェーハ吸着穴126Wは、このウェーハ吸着用環状流路128Wの上に一定ピッチで形成される。
ウェーハ吸着用環状流路128Wの一部には、ウェーハ保持部接続流路130Wが連通される。ウェーハ保持部接続流路130Wは、ウェーハ吸着面122WAと平行に形成され、ウェーハ保持部122Wの外周面上に形成されたウェーハ保持部接続流路連通口132Wに連通される。このウェーハ保持部接続流路連通口132Wからエアを吸引することにより、各ウェーハ吸着穴126Wからエアが吸引される。
ダイシング用フレームFの部分を吸着保持するフレーム保持部122Fは、ダイシング用フレームFに対応した円環状に形成され、その上下の面は共に平坦に形成される。フレーム保持部122Fは、剛体で形成され、ウェーハ保持部122Wの外周部を囲うように配置されて、ウェーハ保持部122Wに一体化される。
フレーム保持部122Fは、一方側の面(ウェーハ吸着面122WAと同じ側の面)がフレーム吸着面122FAとされる。フレーム吸着面122FAには、図7に示すように、同心円上に複数のフレーム吸着穴126Fが一定ピッチで形成される。
各フレーム吸着穴126Fは、フレーム保持部122Fに垂直に形成され、フレーム保持部122Fの内部に形成されたフレーム吸着用環状流路128Fに連通される。フレーム吸着用環状流路128Fは、フレーム吸着穴126Fの配置軌跡に対応して形成され、フレーム吸着面122FAと平行な円環状に形成される。すなわち、フレーム吸着穴126Fは、このフレーム吸着用環状流路128Fの上に一定ピッチで形成される。
フレーム吸着用環状流路128Fの一部には、フレーム保持部接続流路130Fが連通される。フレーム保持部接続流路130Fは、フレーム吸着面122FAと平行に形成され、フレーム保持部122Fの内周面上に形成されたフレーム保持部内周側接続流路連通口132FAに連通されるとともに、フレーム保持部122Fの外周面上に形成されたフレーム保持部外周側接続流路連通口132FBに連通される。フレーム保持部内周側接続流路連通口132FAは、ウェーハ保持部122Wの外周面上に形成されたウェーハ保持部接続流路連通口132Wに連通される。フレーム保持部外周側接続流路連通口132FBからエアを吸引することにより、フレーム吸着用環状流路128F内のエアが吸引されるとともに、ウェーハ吸着用環状流路128W内のエアが吸引される。これにより、フレーム保持部122Fの各フレーム吸着穴126Fからエアが吸引されるとともに、ウェーハ保持部122Wの各ウェーハ吸着穴126Wからエアが吸引される。
テーブル板保持フレーム124は、円環状に形成される。テーブル板122は、このテーブル板保持フレーム124の内周部に保持される。
テーブル板保持フレーム124は、図示しない回転駆動機構によってθ軸周りに回転するとともに、図示しない昇降駆動機構によって上下方向(Z方向)に昇降する。また、図示しない前後駆動機構によって水平面上を前後方向(Y方向)に移動するとともに、図示しない左右駆動機構によって水平面上を左右方向(X方向)に移動する。更に、図示しない表裏反転機構によって、表裏(上下)が反転する(たとえば、X軸周りに回転して表裏が反転する。)。
テーブル板122は、テーブル板保持フレーム124が回転することにより、θ軸周りに回転する。また、テーブル板保持フレーム124が昇降することにより、上下に昇降する。更に、テーブル板保持フレーム124が前後方向に移動することにより、前後に移動し、左右方向に移動することにより、左右に移動する。また、テーブル板保持フレーム124が表裏反転することにより、裏表(上下)が反転する。
テーブル板保持フレーム124には、テーブル板122のフレーム保持部122Fの外周面上に形成されたフレーム保持部外周側接続流路連通口132FBに連通される連通流路134が形成される。連通流路134は、水平に形成され、テーブル板保持フレーム124の外周面部に形成された接続口136に連通される。
接続口136には、可撓性を有する吸引管138が接続される。吸引管138には、真空ポンプ140が接続される。この真空ポンプ140を駆動することにより、ウェーハ保持部122Wの各ウェーハ吸着穴126Wからエアが吸引されるとともに、フレーム保持部122Fの各フレーム吸着穴126Fからエアが吸引される。これにより、ウェーハWがテーブル板122のウェーハ吸着面122WAに吸着保持されるとともに、ダイシング用フレームFがテーブル板122のフレーム吸着面122FAに吸着保持される。
レーザ反射防止板150は、ウェーハテーブル120の下部に設置される。このレーザ反射防止板150は、上面部にレーザ光の反射防止処理(たとえば、黒色処理)が施された平板状に形成され、ウェーハテーブル120のウェーハ吸着面122WAから所定距離離れた位置に水平に設置される。すなわち、ウェーハテーブル120のウェーハ吸着面122WAとレーザ反射防止板150との間には所定の空間が形成される。
レーザ照射装置160から出射されてウェーハWを透過したレーザ光は、このレーザ反射防止板150に入射する。これにより、不要な反射が防止でき、反射焼け等が生じるのを防止できる。
レーザ照射装置160は、ウェーハテーブル120の上方に設置され、ウェーハテーブル120に向けてレーザ光を垂直に出射する。このレーザ照射装置160の構成は、上述した第1の実施の形態のレーザ照射装置60と同じである。したがって、その説明については省略する。
焦点PをウェーハWの内部に設定して、レーザ照射装置160からウェーハWにレーザ光を入射すると、ウェーハWの内部に改質領域が形成される。この状態でウェーハWを水平に移動させると、焦点Pの移動軌跡に沿って改質領域が連続的に形成され、改質層Lが形成される。加工時は、この改質層をストリートSに沿って形成する。
本実施の形態のレーザダイシング装置110は、以上のように構成される。
なお、レーザダイシング装置110の動作は、図示しない制御装置で制御される。制御装置は、所定の制御プログラムを実行して、各部の動作を制御し、ウェーハWの加工処理を実行する。
〈作用〉
次に、本実施の形態のレーザダイシング装置110を用いたダイシング方法について説明する。
上記のように、ウェーハWは、ダイシング用フレームFにマウントされた状態で加工処理される。ウェーハWは、裏面(MEMS素子が形成されていない面)をダイシング用テープTに貼着されて、ダイシング用フレームFにマウントされる。
ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWは、図示しない搬送装置(たとえば、ロボットのアーム)によって、ウェーハテーブル120の下部まで搬送される。この際、ウェーハWは、ダイシング用テープTが貼着された面を上向きにし、表面は非接触の状態でウェーハテーブル120の下部位置まで搬送される。
ウェーハテーブル120の下部位置まで搬送されたウェーハWは、搬送装置からウェーハテーブル120に受け渡される。受け渡しは、ウェーハWの裏面をウェーハテーブル120のウェーハ吸着面122WAで吸着保持するとともに、ダイシング用フレームFをウェーハテーブル120のフレーム吸着面122FAで吸着保持することにより行われる。具体的には、次のように行われる。
まず、ウェーハWの位置決めが行われる。すなわち、ウェーハWの中心が、ウェーハテーブル120の中心と一致するように位置決めされる。その後、ウェーハWの裏面とダイシング用フレームFの裏面とにウェーハテーブル120のウェーハ吸着面122WAとフレーム吸着面122FAとが当接され、真空ポンプ140が駆動される。これにより、ウェーハWの裏面の周縁部がウェーハ吸着穴126Wに吸引され、ウェーハWがウェーハテーブル120に吸着保持されるとともに、ダイシング用フレームFの裏面がフレーム吸着穴126Fに吸引され、ダイシング用フレームFがウェーハテーブル120に吸着保持される。
このようにしてウェーハテーブル120に吸着保持されたウェーハWは、平坦に形成されたウェーハテーブル120のウェーハ吸着面122WAにダイシング用テープTを介して密着して保持される。また、ダイシング用フレームFがダイシング用テープTを介してフレーム吸着面122FAに密着して保持される。これにより、撓むことなくウェーハWを水平に保持することができる。また、ウェーハWは、ダイシング用テープTを介して裏面が吸着保持されるため、表面を非接触で保持することができる。
ウェーハWを受け渡した搬送装置は、ウェーハテーブル120の下部から退避する。この後、所定のアライメント処理が行われ、ダイシングが開始される。
ダイシングは、レーザ照射装置160から出射されるレーザ光をストリート(分割予定線)Sに沿ってウェーハWに入射することにより行われる。
制御装置(図示せず)は、ウェーハWの内部の所定位置に焦点Pが設定されるように、アクチュエータを駆動して、コンデンサレンズの位置を調整する。そして、出射されたレーザ光が、ストリートSに沿ってウェーハWに入射するように、ウェーハテーブル120を移動される。
ところで、本実施の形態のレーザダイシング装置110では、加工対象のウェーハWが、ウェーハテーブル120の下面に吸着保持される。これに対して、レーザ光はウェーハテーブル120の上面に入射される。
しかし、ウェーハテーブル120は、レーザ光を透過可能に形成されているため、上面にレーザ光を入射した場合であっても、ウェーハWに入射することができる。
また、ウェーハWは、ダイシング用テープTが貼着された面(裏面)をウェーハテーブル120に吸着保持されるが、ダイシング用テープTもレーザ光を透過可能に形成されているため、ウェーハWに入射することができる。
このように、本実施の形態のレーザダイシング装置110では、ウェーハテーブル120及びダイシング用テープTを透過させて、レーザ光がウェーハWに入射される。
ウェーハWは、ウェーハテーブル120のウェーハ吸着面122WAに密着し、撓むことなく保持されているため、所定位置に正確にレーザ光を入射することができる。これにより、ストリートSに沿って正確に変質層を形成することができる。
また、ウェーハWは、表面に触れることなくウェーハテーブル120に保持されるため、表面に形成されたMEMS素子を破壊することなく加工処理することができる。
また、ウェーハWの表面を吸着保持していると、ウェーハWを透過したレーザ光によってウェーハ吸着面が焼けたり、溶融物が付着したりして、ウェーハ吸着面の平滑性を保てないが、表面に触れることなくウェーハWを吸着保持することにより、このような不具合が発生することも防止することができる。これにより、継続して加工しても、常に平坦にウェーハWを吸着保持することができる。
更に、レーザ光は、ウェーハWの裏面に入射されるため、表面に形成された素子等に影響されることなく、正確かつ確実に所定の位置に変質層を形成することができる。
レーザ光をストリートSに沿ってウェーハWに入射し、加工処理が終了すると、ウェーハWはウェーハテーブル120から搬送装置に受け渡され、搬送装置によって次工程へと搬送される。
以上説明したように、本実施の形態のレーザダイシング装置110においても、表面に触れることなくウェーハWを保持し、裏面にレーザ光を入射して加工処理する。これにより、表面に破損しやすい素子(たとえば、MEMS素子)等が形成されているウェーハであっても、その素子等を破損することなく加工処理することができる。また、ストリート付近に金属膜が形成されたウェーハであっても加工処理することができる。
また、ウェーハWはウェーハテーブル20のウェーハ吸着面22Aに全面が吸着されて保持されるため、ウェーハWを撓みなく固定することができる(完全に平坦な状態で固定することができる。)。これにより、レーザ照射装置60からウェーハWまでの距離(ワークディスタンス)を一定にすることができる。そして、このワークディスタンスを一定にすることができることにより、ウェーハWのうねりに沿って、レーザ照射装置60がオートフォーカスをかける必要がなくなり、加工時の処理効率を向上させることができる(スループットを向上させることができる。)。
《レーザダイシング装置のその他の実施の形態》
〈その他の実施の形態1〉
上記第1の実施の形態のレーザダイシング装置10では、テーブル板22の周縁部にのみウェーハ吸着穴26を形成し、ウェーハWの周縁部のみを吸着保持する構成としているが、図8及び図9に示すように、テーブル板22の中央部にもウェーハ吸着穴42を形成し、ウェーハWの中央部も吸着保持する構成とすることもできる。これにより、より確実にウェーハWをウェーハ吸着面22Aに密着させることができる。
なお、同図に示す例では、テーブル板22の下面中央の3箇所にウェーハ吸着穴42を形成している。各ウェーハ吸着穴42は、ウェーハ吸着面22Aに垂直に形成され、テーブル板22の内部に形成された円盤状の中央空間44に連通される。中央空間44は、テーブル板22の内部に水平に形成された中央連通流路46を介して環状流路28に連通される。したがって、真空ポンプ40を駆動することにより、周縁部のウェーハ吸着穴26と同時に中央のウェーハ吸着穴42から吸引することができる。
なお、レーザ光が入射される位置に吸着穴等が形成されていると、その位置で焦点Pの位置がずれるおそれがあるので、吸着穴等はレーザ光が入射される位置を避けて配置することが好ましい。したがって、中央部に吸着穴を配置する場合は、必要最小限の数を設置することが好ましい。
また、レーザ光が入射される位置に吸着穴等が配置される場合は、その位置で焦点Pの位置を調整することが好ましい。すなわち、吸着穴等の位置は既知なので、制御装置は、必要に応じて焦点Pの位置を調整して、レーザ光の照射を行う。
第2の実施の形態のレーザダイシング装置110についても同様であり、図10、図11に示すように、ウェーハ保持部122Wの中央部にもウェーハ吸着穴142を形成し、ウェーハWの中央部も吸着保持する構成とすることもできる。
また、上記実施の形態では、ウェーハWの周縁部を吸着保持する際、所定径を有するウェーハ吸着穴42(142)を同心円上に一定ピッチで複数形成し、このウェーハ吸着穴42(142)から真空吸引することにより、ウェーハWの周縁部を吸着保持する構成としているが、ウェーハ吸着面22A(122WA)に周縁部に環状の溝(ウェーハ吸着溝)を形成し、このウェーハ吸着溝から真空吸引することにより、ウェーハWの周縁部を吸着保持する構成とすることもできる(図14参照)。
ダイシング用フレームFを吸着保持する場合(レーザダイシング装置の第2の実施の形態)についても同様に、フレーム保持部122Fのフレーム吸着面122FAに環状の溝(フレーム吸着溝)を形成し、このフレーム吸着溝から真空吸引することにより、ダイシング用フレームの部分を吸着保持する構成とすることもできる(図14参照)。
〈その他の実施の形態2〉
上記第1の実施の形態のレーザダイシング装置10では、水平に設置されたウェーハテーブル20の下面にウェーハWを吸着保持する構成としているが、図12に示すように、ウェーハテーブル20の上面にウェーハ吸着面22Aを形成し、ウェーハテーブル20の上面にウェーハWを載置して吸着保持する構成とすることもできる。この場合、同図に示すように、レーザ照射装置60は、ウェーハテーブル20の下方位置に設置され、下方から上方に向けてレーザ光を出射する構成とされる。なお、このように、ウェーハテーブル20の上面にウェーハ吸着面22Aを形成し、ウェーハテーブル20の上面にウェーハWを載置して吸着保持する構成とすることにより、大径のウェーハWであっても、確実にウェーハ吸着面22Aに密着させることができ、ウェーハWを平坦に保持することができる。
第2の実施の形態のレーザダイシング装置110も同様であり、図13に示すように、ウェーハテーブル120の上面にウェーハ吸着面122WAとフレーム吸着面122FAを形成し、ウェーハテーブル120の上面にウェーハWを載置して、ウェーハWとダイシング用フレームFとを吸着保持する構成とすることもできる。この場合、同図に示すように、レーザ照射装置160は、ウェーハテーブル120の下方位置に設置され、下方から上方に向けてレーザ光を出射する構成とされる。
〈その他の実施の形態3〉
上記実施の形態では、ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWをウェーハテーブル20で吸着保持して、レーザダイシングする構成としているが、ウェーハWをダイシング用フレームFにマウントせず、直接ウェーハテーブル20で保持して、レーザダイシングすることもできる。また、ダイシング用フレームFにはマウントせず、裏面にレーザ光を透過可能なテープ(ダイシング用テープ)のみ貼着してレーザダイシングする構成とすることもできる。
〈その他の実施の形態4〉
上記実施の形態では、ウェーハWの裏面を吸引(真空吸引)して、ウェーハテーブル20(120)のウェーハ吸着面22A(122WA)にウェーハWを密着させる構成としている。この場合、エアの吸引後のウェーハWとウェーハテーブル20(120)との間(ウェーハ吸着面22A(122WA)とダイシング用テープTとの間)に相互の表面粗さに伴う隙間が形成されていると、その隙間によってレーザ光が散乱される場合がある。ダイシング用テープを貼着せずにウェーハを直接ウェーハテーブル20(120)で吸着保持した場合も同様に、ウェーハ吸着面22A(122WA)とウェーハWの被吸着面との間に相互の表面の粗さに伴う隙間が形成されると、その隙間の部分によってレーザ光が散乱される場合がある。
このようなウェーハとウェーハテーブルと間の微小な隙間に基づくレーザ光の散乱は、ウェーハとウェーハテーブルとの間に屈折液を流し込むことで抑制することができる。
図14は、ウェーハとウェーハテーブルとの間に屈折液を流し込む機能を備えたウェーハテーブルの平面図であり、図15は、図14の15−15断面図である。
同図に示すように、このウェーハテーブル220は、ウェーハ吸着面222WAに屈折液供給溝250が形成され、この屈折液供給溝250に屈折液を供給して、ウェーハWとウェーハテーブル220との間に屈折液を供給する。
ウェーハテーブル220は、主として、テーブル板222と、そのテーブル板222を保持するテーブル板保持フレーム224とで構成され、ウェーハWとともにダイシング用フレームFを吸着保持する。
テーブル板222は、ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWを吸着保持する。このテーブル板222は、ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWのウェーハWの部分を吸着保持するウェーハ保持部222Wと、ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWのダイシング用フレームFの部分を吸着保持するフレーム保持部222Fとで構成される。
ウェーハWの部分を吸着保持するウェーハ保持部222Wは、加工対象とするウェーハWに対応した円盤状に形成され(加工対象とするウェーハWの全面を支持できるように、加工対象とするウェーハWよりも大径の円盤状に形成される。)、その上下の面は共に平坦に形成される。このウェーハ保持部222Wは、レーザ照射装置から出射されるレーザ光を透過可能な素材で形成される。一例として、本実施の形態では、透明な石英ガラスで形成される。また、このテーブル板222は、加工対象とするウェーハWを撓みなく保持することができるように、必要十分な厚さをもって形成される。
ウェーハ保持部222Wは、下面側がウェーハWを保持するためのウェーハ吸着面222WAとされる。ウェーハ吸着面222WAには、周縁部に環状のウェーハ吸着溝226Wが形成される。このウェーハ吸着溝226Wは、加工対象とするウェーハWの径に対応して形成され、加工対象とするウェーハWの周縁部(余白領域(図4参照))に当接する位置に形成される。
ウェーハ吸着溝226Wは、一定の幅、深さで形成され、ウェーハ保持部222Wの内部に形成されたウェーハ吸着用流路228Wに連通される。
ウェーハ吸着用流路228Wは、垂直に形成され、ウェーハ保持部接続流路230Wに連通される。ウェーハ保持部接続流路230Wは、ウェーハ吸着面222WAと平行に形成される。このウェーハ保持部接続流路230Wからエアを吸引することにより、ウェーハ吸着溝226Wからエアが吸引される。
ウェーハ吸着面222WAには、更に、屈折液供給溝250が形成される。屈折液供給溝250は、ウェーハ吸着溝226Wの内側に形成され、一定の幅、深さで螺旋状に形成される。
屈折液供給溝250の内周側の端部は、ウェーハ保持部222Wの内部に形成された屈折液供給溝用吸引流路252が連通される。屈折液供給溝用吸引流路252は、垂直に形成され、屈折液供給溝用連通流路254に連通される。屈折液供給溝用連通流路254は、ウェーハ吸着面222WAと平行に形成され、テーブル板保持フレーム224の外周面部に形成された屈折液供給溝用接続口(図示せず)に連通される。
一方、屈折液供給溝250の外周側の端部には、ウェーハ保持部222Wの内部に形成された屈折液供給流路256が連通される。屈折液供給流路256は、垂直に形成され、屈折液供給溝用連通流路258に連通される。屈折液供給溝用連通流路258は、ウェーハ吸着面222WAと平行に形成され、テーブル板保持フレーム224の外周面部に形成された屈折液供給口260に連通される。
ダイシング用フレームFの部分を吸着保持するフレーム保持部222Fは、ダイシング用フレームFに対応した円環状に形成され、その上下の面は共に平坦に形成される。フレーム保持部222Fは、剛体で形成され、ウェーハ保持部222Wの外周部を囲うように配置されて、ウェーハ保持部222Wに一体化される。
フレーム保持部222Fは、一方側の面(ウェーハ吸着面222WAと同じ側の面)がフレーム吸着面222FAとされる。フレーム吸着面222FAには、図14に示すように、環状のフレーム吸着溝226Fが形成される。
フレーム吸着溝226Fは、一定の幅、深さで形成され、フレーム保持部122Fの内部に形成されたフレーム吸着用流路228Fに連通される。フレーム吸着用流路228Fは、垂直に形成され、フレーム保持部接続流路230Fに連通される。フレーム保持部接続流路230Fは、フレーム吸着面222FAと平行に形成され、ウェーハ保持部接続流路230Wに連通される。フレーム保持部接続流路230Fからエアを吸引することにより、フレーム吸着用流路228F内のエアが吸引されるとともに、ウェーハ吸着用流路228W内のエアが吸引される。これにより、フレーム保持部222Fのフレーム吸着溝226Fからエアが吸引されるとともに、ウェーハ保持部122Wのウェーハ吸着溝226Wからエアが吸引される。
テーブル板保持フレーム224は、円環状に形成される。テーブル板222は、このテーブル板保持フレーム224の内周部に保持される。
テーブル板保持フレーム224は、図示しない回転駆動機構によってθ軸周りに回転するとともに、図示しない昇降駆動機構によって上下方向(Z方向)に昇降する。また、図示しない前後駆動機構によって水平面上を前後方向(Y方向)に移動するとともに、図示しない左右駆動機構によって水平面上を左右方向(X方向)に移動する。更に、図示しない表裏反転機構によって、表裏(上下)が反転する(たとえば、X軸周りに回転して表裏が反転する。)。
テーブル板222は、テーブル板保持フレーム224が回転することにより、θ軸周りに回転する。また、テーブル板保持フレーム224が昇降することにより、上下に昇降する。更に、テーブル板保持フレーム124が前後方向に移動することにより、前後に移動し、左右方向に移動することにより、左右に移動する。また、テーブル板保持フレーム224が表裏反転することにより、裏表(上下)が反転する。
テーブル板保持フレーム224には、フレーム保持部222Fに形成されたフレーム保持部接続流路230Fに連通される連通流路234が形成される。連通流路234は、水平に形成され、テーブル板保持フレーム224の外周面部に形成されたウェーハ吸引用接続口236に連通される。
ウェーハ吸着溝226W及びフレーム吸着溝226Fに連通されるウェーハ吸引用接続口236には、可撓性を有する第1の吸引管238が接続される。一方、屈折液供給溝250の内周側の端部に連通される屈折液供給溝用接続口(図示せず)には、第2の吸引管262が接続される。
第1の吸引管238と第2の吸引管262は、ともに分離タンク264に接続される。この第1の吸引管238と第2の吸引管262には、それぞれバルブ266、268が設けられる(第1の吸引管238に設けられるバルブ266をウェーハ吸着溝開閉用バルブ266とし、第2の吸引管262に設けられるバルブ268を屈折液供給溝開閉用バルブ268とする。)。
分離タンク264は、第1の吸引管238と第2の吸引管262に液体が吸引されたときに、その吸引された液体を回収する(気液を分離する)。分離タンク264は、第3の吸引管270を介して真空ポンプ240に接続される。
真空ポンプ240の駆動、及び、ウェーハ吸着溝開閉用バルブ266と屈折液供給溝開閉用バルブ268の開閉は、制御装置(図示せず)によって制御される。ウェーハ吸着溝開閉用バルブ266を開け、真空ポンプ240を駆動することにより、ウェーハ吸着溝226Wとフレーム吸着溝226Fからエアが吸引される。また、屈折液供給溝開閉用バルブ268を開け、真空ポンプ240を駆動することにより、屈折液供給溝250からエアが吸引される。この際、液体が吸引されると、その液体が分離タンク264で回収される。
分離タンク264には、廃液管272が接続される。廃液管272には、廃液管開閉バルブ274が設置され、この廃液管開閉バルブ274を開くことにより、分離タンク264で回収された液体が、分離タンク264から排出される。
屈折液供給溝250の外周側の端部に連通される屈折液供給口260には、可撓性を有する屈折液供給管276が接続される。
屈折液供給管276は、三方バルブ278の一つの接続口に接続される。三方バルブ278の残りの2つの接続口には、それぞれ大気開放管280と、タンク接続管282とが接続される。三方バルブ278は、各接続口を個別に開閉する。したがって、各接続口に接続された管を任意に組み合わせて連通させることができる。
大気開放管280は、他端が大気開放される。
タンク接続管282は、屈折液貯留タンク284に接続される(底部に接続)。屈折液貯留タンク284には、屈折液が貯留される。この屈折液貯留タンク284の天井部には、屈折液貯留タンク284に屈折液を入れるための屈折液供給口286と、屈折液貯留タンク284内の圧力を調整するための圧力調整管290とが接続される。
屈折液供給口286には、栓288が設けられ、屈折液貯留タンク284の内部を密封できるように構成される。
圧力調整管290は、他端が大気開放され、その途中にゲージ292と、圧力調整弁294とが設置される。ゲージ292で検出される圧力は、制御装置(図示せず)に出力される。制御装置は、このゲージ292によって検出される圧力に基づいて、圧力調整弁294を制御し、屈折液貯留タンク284内の圧力を制御する。
三方バルブ278の開閉は、制御装置(図示せず)によって制御される。三方バルブ278を制御して、屈折液供給管276と大気開放管280とを連通させることにより、屈折液供給溝250が大気開放される。また、屈折液供給管276とタンク接続管282とを連通させることにより、屈折液貯留タンク284に貯留された屈折液を屈折液供給溝250に供給することが可能になる。
本実施の形態のウェーハテーブル220は、以上のように構成される。
〈作用〉
本実施の形態のウェーハテーブル220によるウェーハWの保持は、次のように行われる。
ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWは、図示しない搬送装置(たとえば、ロボットのアーム)によって、ウェーハテーブル220の下部まで搬送される。この際、ウェーハWは、ダイシング用テープTが貼着された面を上向きにし、表面は非接触の状態でウェーハテーブル120の下部位置まで搬送される。
ウェーハテーブル120の下部位置まで搬送されたウェーハWは、搬送装置からウェーハテーブル120に受け渡される。受け渡しは、ウェーハWの裏面をウェーハテーブル220のウェーハ吸着面222WAで吸着保持するとともに、ダイシング用フレームFをウェーハテーブル120のフレーム吸着面222FAで吸着保持することにより行われる。具体的には、次のように行われる。
まず、ウェーハWの位置決めが行われる。すなわち、ウェーハWの中心が、ウェーハテーブル220の中心と一致するように位置決めされる。その後、ウェーハWの裏面とダイシング用フレームFの裏面とにウェーハテーブル220のウェーハ吸着面222WAとフレーム吸着面222FAとが当接される。
次に、ウェーハ吸着溝開閉用バルブ266と屈折液供給溝開閉用バルブ268とが開けられ、真空ポンプ240が駆動される。このとき、三方バルブ278は、すべて閉じられる(三方バルブ278に接続された管が全て非連通とされる。)。
三方バルブ278をすべて閉じた状態で真空ポンプ240を駆動することにより、ウェーハ吸着溝226W、フレーム吸着溝226F、及び、屈折液供給溝250が真空吸引される。これにより、ダイシング用フレームFにマウントされたウェーハWのウェーハWの部分の周縁部が、ウェーハ吸着溝226Wに吸引されるとともに、ダイシング用フレームFの部分がフレーム吸着溝226Fに吸引される。また、上記のように、屈折液供給溝250も吸引されるので、ウェーハWは、この屈折液供給溝250の部分も吸引される。
ウェーハ吸着溝226W、フレーム吸着溝226F、及び、屈折液供給溝250が真空吸引されると、ウェーハ吸着溝開閉用バルブ266と屈折液供給溝開閉用バルブ268とが閉じられ、真空ポンプ240の駆動が停止される。これにより、ウェーハWの周縁部がウェーハ吸着面222WAに吸着保持されるとともに、ダイシング用フレームFがフレーム吸着面222FAに吸着保持される。また、ウェーハWは、屈折液供給溝250に載置された部分がウェーハ吸着面222WAに吸着保持される(屈折液供給溝250の内部が減圧された状態になる。)。
次に、三方バルブ278が駆動され、屈折液供給管276とタンク接続管282とが連通される。これにより、屈折液供給溝250と屈折液貯留タンク284とが連通される。このとき、屈折液貯留タンク284内の圧力が、所定圧に制御される(少しだけ真空度が下げられる(増圧される)。)。たとえば、真空度50[Torr]以下、ないし、100[Torr]以下の圧力とされる。これにより、屈折液貯留タンク284に貯留された屈折液が、減圧された屈折液供給溝250の方へと吸引され、屈折液供給溝250の全体が屈折液で充填される(屈折液貯留タンク284の内部は、屈折液供給溝250よりも少し正圧に保たれ、屈折液供給溝250と屈折液貯留タンク284とを連通すると、屈折液貯留タンク284に貯留された屈折液が、減圧された屈折液供給溝250の方へと吸引されて、屈折液供給溝250の全体が屈折液で充填される。)。
ここで、上記のように、ウェーハWは、真空吸引によってウェーハ吸着面WAに吸着保持されているが、ウェーハ吸着面222WAとの間(ウェーハWに貼着されているダイシング用テープT1とウェーハ吸着面222WAとの間)に隙間が生じている場合は、屈折液供給溝250に供給された屈折液が、その隙間に流れ込む。これにより、隙間が屈折液で充填される。
以上のようにして屈折液供給溝250に屈折液が充填されると、三方バルブ278が駆動され、屈折液供給管276とタンク接続管282とが非連通とされる(屈折液供給溝250が閉じられる。)。
以上により、ウェーハWの吸着保持が完了する。この後、レーザダイシングの処理が施される。
このように、本例のウェーハテーブル220によれば、ウェーハWとウェーハ吸着面222WAとの間に隙間が生じている場合、その隙間に屈折液を流し込むことができる。
ここで、屈折液供給溝250に充填される屈折液の屈折率と、ウェーハ保持部222Wの屈折率とが、ほとんど同じ場合、界面は存在しなくなり、レーザ光は、そのまま散乱することもなく透過する。したがって、レーザ光を照射しても、きわめて高い透過率でウェーハWに照射することができる。
また、隙間に屈折液を流し込むことにより、ウェーハWは液体の界面張力によっても吸引されて、ウェーハテーブルに保持される。この際、介在させる液体も界面張力が働く程度に非常に薄くすることで、一様な厚みとなり、ウェーハWとレーザ照射装置との距離を一定に保つことができる。
液体は、固体の上に静置させた場合、表面張力によって玉になることがあるが、本実施の形態のように、固体間(ウェーハとウェーハテーブル)で挟んで液体を介在させることにより、より効果的に界面張力を利用することができる。また、気体を介在させることがないため、液体の表面張力による液滴形成によるバラツキを抑えることができる。
また、研削痕などによりウェーハの裏面(被吸着面(レーザが照射される面))が荒らされている場合や、ウェーハテーブルのウェーハ吸着面に粗さが存在する場合、ウェーハを直接吸着すると、ウェーハの裏面でレーザ光が散乱し、ウェーハWの内部に入り込む有効なレーザ光が微量になったり、散乱によってレーザ光を照射してはならない他の部分がレーザ焼けを起こしたりすることがある。しかし、ウェーハとウェーハテーブルの間に液体を介在させることにより、ウェーハの裏面に形成されている微小粗さの影響による散乱を大幅に減少させることができ、ウェーハの内部へのレーザ光の透過率を高めることができる。
また、水などの液体は、空気などの気体と比べて屈折率が一般的に高い。ここで、媒質の屈折率をn0とし、反射する面の屈折率をn1とすると、光が垂直に入射する時の反射率Rは、R=(n0−n1)2/(n0+n1)2で表される。
たとえば、シリコンウェーハの場合、表面に自然酸化膜が形成されるとすると、表面の屈折率は1.46程度である。空気の屈折率は1であるのに対し、水の屈折率は1.3程度になるため、屈折率の差としては、水などの液体を使用した方が屈折率差は小さくなる。その結果、上の反射率の式からも反射率を大幅に低減することができ、より効率的にウェーハWの内部にレーザ光を導入することが可能となる。
なお、屈折液を流し込みやすくするためには、ウェーハテーブルの表面(ウェーハ吸着面)を故意に荒らして曇らせておくことが好ましい。これにより、屈折液がよく馴染んで隙間に入り込みやすくなる。
ウェーハテーブルの表面を荒らす方法としては、たとえば、石英ガラスなどで形成されている場合、表面を#324−#500程度の番手のヤスリで故意に表面を荒し、1μm〜10μm程度の細かい粗さを形成させるとよい。
このように表面(ウェーハ吸着面)を荒らすことにより、ウェーハを真空に引いた後、吸着接合界面に屈折液を流し込みやすくすることができる。また、これにより、屈折液が界面張力によって一様厚みで流れ込み、透過性を更に増すことができる。
屈折液としては、たとえば、水などを使用することができるが、この他、エタノールやIPA等のアルコールを使用してもよい。テーブル板として石英ガラスを使用する場合、屈折率は1.46程度となる。また、レーザ光を照射するシリコン基板上に形成された自然酸化膜も屈折率が1.46程度である。また、ダイシング用テープTとして使用するポリエチレン系の透明フィルムも屈折率は約1.5前後である。よって、これに近い屈折率の液体を界面に介在させれば、理論上ほとんど反射することなくレーザ光を透過させることができる。
なお、上記の例では、屈折液供給溝250を利用して、隙間に屈折液を流し込む構成としているが、ウェーハとウェーハ吸着面との間に屈折液を介在させる方法は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、次の方法で、ウェーハとウェーハ吸着面との間に屈折液を介在させることができる。すなわち、ウェーハをウェーハテーブルで吸着保持する前に、ウェーハの被吸着面、及び/又は、ウェーハテーブルの吸着面に屈折液を滴下や噴霧、塗布等して供給する。そして、供給後、ウェーハを真空吸着し、ウェーハ吸着面とウェーハとの間に屈折液を介在させたまま保持する。これにより、ウェーハとウェーハ吸着面との間に屈折液を介在させることができる。この場合、ウェーハの被吸着面、及び/又は、ウェーハテーブルの吸着面に屈折液を滴下等して供給する手段(滴下手段や塗布手段、噴霧手段等)を設ける。
《レーザダイシング後の割断処理》
〈割断処理の第1の実施の形態〉
上記のレーザダイシング装置10(110)によってダイシング処理されたウェーハWは、その後、外的応力が印加されて、チップに分割(分断)される。この処理は、たとえば、割断装置によって行われる。
図16は、割断装置による割断処理の概略を示す工程図である。
レーザダイシングされたウェーハWは、同図(a)に示すように、表面を上にして割断用テーブル300の上に載置される。また、ダイシング用フレームFが、図示しないフレーム固定機構によって所定位置に固定される。
ウェーハWが割断用テーブル300の上に載置され、ダイシング用フレームFが固定されると、同図(b)に示すように、割断用テーブル300の周部を囲むように配置されたエキスパンド用リング302が、図示しない昇降機構により押し上げられて上昇する。これにより、ウェーハWの裏面側に貼着されたダイシング用テープTが放射状にエキスパンド(伸張)される。そして、このダイシング用テープTがエキスパンドされることにより、ウェーハWに外的応力が印加され、変質層を起点として、ウェーハWが割断され、分割される。変質層はストリートSに沿って形成されているので、ウェーハWはストリートSに沿って割断される。ストリートSは、個々のチップの間に設定されるので、ウェーハWは、個々のチップに分割される。
このように、レーザダイシングされたウェーハWは、外的応力を印加することにより、個々のチップに分割される。
〈割断処理の第2の実施の形態〉
上記実施の形態のレーザダイシング装置10(110)で使用されるダイシング用テープは、レーザ光に対する十分な透過性を有することが求められる。一方、レーザダイシング後の割断処理をも考慮すると、ダイシング用テープには伸張能力に優れるという特性を有することが求められる。このようなダイシング用テープが存在しないことはないが、屈折率の均質性を厳密に考慮すると、双方の両立は難しい。特に、レーザ光に対する異方性がなく、一様な屈折率を有する高透過率のシートであって、更に割断する際に弾性変形に対する異方性がなく、一様に伸縮するようなダイシング用テープは、現状なかなか見当たらない。テープ素材である場合、展延性が増せば増すほど、その分子は鎖状に絡まっており、そのような構成であれば、原理的に素材内で光が散乱される度合いが高く、また、屈折率のバラツキも大きくなる傾向にあるからである。
ダイシング用テープに伸縮性や展延性がなくても、レーザ光を非常に良く透過する特性を持つダイシング用テープであれば、次の方法でレーザダイシング後にウェーハを割断処理することができる。すなわち、レーザダイシング後、ウェーハを割断用の厚手のテープに貼り付け(ダイシング用テープの上から割断用テープを貼り付ける。)、ウェーハをエキスパンドして割断する。これにより、ダイシング用テープに伸縮性や展延性がなくても、レーザダイシング後のウェーハを分割することができる。
ここで使用する厚手の割断テープとしては、ゴム材料なども使用でき、たとえば、SBR(シリコンブタジエンラバー)や、NBR(二トリルブタジエンラバー)などが好適に使用できる。厚みとしては、1mmや2mm程度の厚手のラバーを使用してもかまわない。ラバー表面には、粘着材や両面テープなどがあらかじめ貼られ、ダイシング用テープを強固に保持するように構成される。
なお、このように割断用テープに貼り付けて割断する場合、ダイシング用テープは、伸縮性や展延性を問わないので、レーザ光を非常に良く透過する特性を備えたテープ、すなわち、薄くて屈折率の均質な透明なテープであればよい。屈折率が均質なテープは、たとえば、ポリエステル系やポリオレフィン系の薄いテープなどである。
また、可能であれば、ダイシング用テープは、レーザ光を非常に良く透過する特性を備える一方で、紫外線を照射することによって脆化するタイプ、加熱することで脆化するタイプ、冷却することで脆化するタイプなど、何らか物理的な特性変化によって脆化する特性を備えると、更に好ましい。このような特性を備えたダイシング用テープを用いてダイシング処理されたウェーハを分割する場合は、レーザダイシング後、ウェーハを割断用の厚手のテープに貼り付け、ダイシング用テープの物理的特性を変化させて脆化させる。たとえば、紫外線を照射することによって脆化するタイプのダイシング用テープの場合は、ダイシング用テープに紫外線を照射して脆化させ、加熱することで脆化するタイプのダイシング用テープの場合は、ダイシング用テープを加熱して脆化させる。また、冷却することで脆化するタイプのダイシング用テープの場合は、ダイシング用テープを冷却して脆化させる。このように、ダイシング用テープを脆化させた後、エキスパンドしてウェーハを破断する。これにより、効率よくダイシング用テープごとウェーハを破断させることができる。なお、この種のテープがない場合は、ウェーハを支持できる程度の薄い透明なテープ(20μm程度)であればよい。
また、ウェーハを割断用テープに貼り付ける際は、割断用テープにあらかじめ小さい通気孔を設けておき、真空引きしながらウェーハを割断用テープに貼り付けることが好ましい。これにより、ウェーハを効率よく割断用テープに貼り付けることができる。
〈割断処理の第3の実施の形態〉
上記のように、ウェーハは、レーザダイシング後、割断用の厚手のテープに貼り付けてエキスパンドすることにより、ダイシング用テープに伸縮性や展延性がなくても、割断処理することができる。この割断処理を行う際、ウェーハの裏面(テープ貼着面)を真空吸着しながら、ウェーハを撓ませることにより、効率よくウェーハを割断することができる。
図17は、ウェーハを真空吸着しながら割断する割断装置の概略構成図である。
同図に示すように、割断装置310は、ウェーハWを吸着保持するウェーハチャック312と、フレームを吸着保持するフレームチャック314と、ウェーハチャック312を押圧して撓ませる押圧装置316と、テープを延ばすエキスパンド用リング318を備えて構成される。
ウェーハチャック312は、ウェーハWを載置可能な円形の板状(円盤状)に形成され、載置されたウェーハを真空吸着可能に形成されるとともに、ウェーハWを保持した状態で撓み変形可能に形成される。ウェーハチャック312は、可撓性を有する板材で構成され(たとえば、2mm程度)、表面(ウェーハWの載置面(吸着保持面))に多数の吸着穴が形成されるとともに、内部に螺旋状の溝312Aが形成される。内部に形成された螺旋状の溝312Aには、吸引ライン320を介してウェーハ吸着用真空ポンプ322が接続される。このウェーハ吸着用真空ポンプ322を駆動することにより、表面に形成された吸着穴からエアが吸引され、表面に載置されたウェーハWが吸着保持される。
フレームチャック314は、環状に形成され、ウェーハチャック312の周囲を囲うように配置される。ウェーハチャック312に載置されたウェーハWは、フレームの部分が、フレームチャック314のウェーハ吸着面(上面)に載置される。ウェーハ吸着面には、吸着穴が一定ピッチで複数形成されている。図示しないフレーム吸着用真空ポンプを駆動すると、この吸着穴からエアが吸引されて、載置されたフレームを吸着保持する。
押圧装置316は、たとえば、シリンダで構成され、ロッドの先端に装着された押圧パッド324でウェーハチャック312の下面中央を垂直に押圧して、ウェーハチャック312を撓ませる。押圧パッド324は、先端部が半球状に形成され、ウェーハチャック312の下面に対して垂直に進退移動する。
エキスパンド用リング318は、ウェーハチャック312とフレームチャック314との間に配置され、ウェーハチャック312の周部を囲むように配置される。エキスパンド用リング318は、図示しない昇降機構により押し上げられて上昇する。このエキスパンド用リング318が上昇することにより、ウェーハWに貼着されたテープが放射状にエキスパンド(伸張)される。これにより、ウェーハWが分割される。
以上のように構成される割断装置310によるウェーハの割断処理は、次のように行われる。
まず、レーザダイシング後のウェーハWを割断用テープに貼り付ける。ここで、割断用テープは、ダイシング用テープと同様に、環状のフレームに貼り付けられているものとする。このフレームはダイシング用フレームと同じ構成である。以下においては、ダイシング用テープと割断用テープとを区別するため、ダイシング用テープをT1と記載し、割断用テープをT2と記載する。また、ダイシング用テープT1が貼着されるフレーム(ダイシング用フレーム)をF1と記載し、割断用テープT2が貼着されるフレーム(割断用フレーム)をF2と記載する。割断用フレームF2は、たとえば、割断用テープが貼付された状態でカセット等にストックされ、図示しない割断用フレーム供給装置により供給される。
割断用テープT2へのウェーハWの貼り付けは、次のように行われる。まず、図18(a)に示すように、貼着面(粘着材層が形成された面)を上にして割断用テープT2をウェーハチャック312の上に載置する。次に、割断用フレームF2をフレームチャック314で吸着保持する。次に、割断用テープT2の上にウェーハWを載置する(被貼着面(ウェーハWの裏面(ダイシング用テープT1が貼着された面)を下にして載置する。)。これにより、図18(b)に示すように、ウェーハWが割断用テープT2に貼り付けられる。
ここで、割断用テープT2に通気性を有するテープを用いた場合は、ウェーハWを吸引しながら貼り付ける。すなわち、ウェーハ吸着用真空ポンプ322を駆動しながら、ウェーハWを割断用テープT2に貼り付ける。これにより、効率よくウェーハWを割断用テープT2に貼り付けることができる。
割断用テープT2は、たとえば、小さい通気孔を多数形成することにより、通気性を持たせることができる。
次に、ウェーハ吸着用真空ポンプ322を駆動し、ウェーハWをウェーハチャック312で吸着保持する。そして、この状態で押圧装置316を駆動し、図18(c)に示すように、押圧パッド324をウェーハチャック312の裏面中央に当接させて、ウェーハチャック312を撓ませる。これにより、効率よくウェーハWを割断することができる。すなわち、ウェーハWを真空吸着し、ウェーハチャック312で平面矯正した後、ウェーハチャック312ごとウェーハWを撓ませることにより、ウェーハチャック312の撓みに対応してウェーハWを倣わせることができる。これにより、ウェーハ面内で一定の曲げ変位による一様の曲げ応力を作用させることができ、割れ残りを生じさせることなく、ウェーハを分割することができる。
この後、ウェーハチャック312によるウェーハWの吸着を解除し、図19に示すように、エキスパンド用リング318を上昇させる。これにより、割断用テープT2が延ばされ(ダイシング用テープT1も延ばされる)、ウェーハWが個々のチップに分割される。
なお、本例では、ウェーハのフレームの部分を真空吸着して保持する構成としているが、フレームの部分を保持する構成は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、フレームの部分を一対の挟持部材で挟んで保持(挟持)する構成とすることもできる。
〈割断装置の他の実施の形態〉
図20は、割断装置の他の実施の形態を示す概略構成図である。
同図に示すように、この割断装置310は、ウェーハチャック312を押圧する押圧パッド324が、いわゆる蒲鉾形状に形成される点、及び、押圧装置316が回転可能に形成される点で上述した割断装置と相違する。
押圧パッド324は、中高で、断面が半月形状(いわゆる蒲鉾形)に形成される。押圧装置316は、図示しない回転テーブル上に設置され、押圧パッド324の中心(中心軸)を回転中心として回転可能に設けられる。回転テーブルは、図示しないモータに駆動されて回転する。
モータが駆動されることにより、押圧パッド324は、90度ずつ回転する。この結果、押圧パッド324は、第1の姿勢(図21(a))と、その第1の姿勢から90度回転した第2の姿勢(図21(b))をとることができる。
本例の割断装置310によるウェーハの割断方法は、次のとおりである。
通常、分割予定ライン(ストリート)は、直交する2方向(X方向とY方向)に形成される。このため、本例の割断装置310では、X方向とY方向の2回に分けて、押圧パッド324をウェーハWに当接させ、ウェーハWを割断する。
すなわち、まず、第1の姿勢(図21(a))で押圧パッド324をウェーハWに押圧当接させ、その後、押圧パッド324を90度回転させて、第2の姿勢(図21(b))で押圧パッド324をウェーハWに押圧当接させる。
ここで、第1の姿勢(図21(a))で押圧パッド324をウェーハWに当接させる際は、押圧パッド324の円弧の方向(押圧面の断面が円弧となる方向)が、X方向の分割予定ラインと平行になるように設定する。そして、第2の姿勢(図21(b))で押圧パッド324をウェーハWに当接させる際は、押圧パッド324の円弧の方向が、Y方向の分割予定ラインと平行になるように設定する。これにより、1回目は、ウェーハWに形成されたX方向の割断予定ラインに沿ってウェーハWを撓ませることができ、2回目は、ウェーハWに形成されたY方向の割断予定ラインに沿ってウェーハWを撓ませることができる。
このように、分割予定ラインに沿ってウェーハWを2回に分けて撓ませることにより、更に効率よくウェーハWを分割することができる。
なお、本例の場合も、ウェーハWは、ウェーハチャック312で吸着保持しながら撓ませる。
真空吸着せずに、蒲鉾形状に形成された押圧パッド324の押圧面にウェーハWを倣わせた場合、ウェーハWは、ある一部が先に割れると、その割れた部分で急峻に曲がり、その割れた部分で押圧面の曲率が吸収されるため、部分的にチップが曲がらず、引っ付いたままで押圧面に倣うことがある。
しかし、ウェーハWを真空吸着させて平面矯正した後、ウェーハチャックごと撓ませることにより、ウェーハ内の各部分は、ウェーハチャック312の撓みに対応して吸着されつつ倣うため、ウェーハ面内で一様に一定の曲げ変位による曲げ応力を働かせることができる。これにより、割れ残りを生じさせることなく、ウェーハWを分割することができる。
なお、上記実施の形態では、割断用の厚手のテープをエキスパンドしてウェーハを割断させると述べたが、割断させる方法としては、エキスパンドしてウェーハを分割させる以外でも、たとえば、割断テープを撓ませ、ウェーハに曲げ応力を与えて、ウェーハを割ることも可能である。この場合、曲げ応力でウェーハを割って、その後、チップになった後に、チップ同士を離間させるために、エキスパンドするということも考えられる。こうした手段は、そのウェーハ厚みやウェーハ材料のヤング率によって、さまざまな方法をとることができる。
《レーザダイシングから分割までの一連の処理》
次に、図22及び図23に基づいて、レーザダイシング装置を用いたレーザダイシングから割断装置を用いた分割までの一連の処理の流れについて説明する。
ここでは、レーザダイシング装置として、上述した第2の実施の形態で説明したレーザダイシング装置110(図6)を使用し、割断装置として、上述した割断処理の第3の実施の形態で説明した割断装置310(図17)を使用する場合を例に説明する。また、割断処理時は、ウェーハを割断用テープT2に貼り付けて割断処理を行う場合を例に説明する。
まず、図22(a)に示すように、ウェーハWがダイシング用フレームF1にマウントされる。すなわち、ウェーハWがダイシング用フレームF1に貼付されたダイシング用テープT1に貼り付けられる。
なお、上記のように、割断処理時は、ウェーハWを割断用テープT2に貼り付けて割断処理するので、ここで使用するダイシング用テープT1は、ウェーハWを支持できる程度の薄い透明なテープ(20μm程度)であればよい。
次に、ダイシング用フレームF1にマウントされたウェーハWが、レーザダイシング装置110にセットされる。すなわち、図示しない搬送装置によってウェーハテーブル120にウェーハWが位置決めされて受け渡され、ウェーハテーブル120に吸着保持される。
この際、図22(b)に示すように、ウェーハテーブル120は、ウェーハ吸着面122WAを上向きにしてウェーハWを受け取る。ウェーハWがウェーハテーブル120に受け取られた後、真空ポンプ140が駆動され、ウェーハWが真空吸着されるとともに、ダイシング用フレームF1が真空吸着される。
なお、ウェーハテーブル120に屈折液の供給機能が備えられている場合には、吸着保持されたウェーハとウェーハテーブル120との隙間に屈折液が供給される。これにより、液体の界面張力により吸引されて、ウェーハWがウェーハテーブル120に保持される。
ウェーハWの吸着保持後、ウェーハテーブル120が表裏反転される。これにより、図22(c)に示すように、ウェーハWが鉛直下向きに保持される。また、これにより、ウェーハテーブル120を通してレーザ照射装置160からウェーハWの裏面にレーザ光を照射することが可能になる。
ウェーハテーブル120の反転後、所定のアライメント処理が行われ、ダイシングが開始される。ダイシングは、図22(d)に示すように、レーザ照射装置160から出射されるレーザ光をストリート(分割予定線)に沿ってウェーハWに入射することにより行われる。レーザ照射装置160から出射されるレーザ光は、ウェーハテーブル120及びダイシング用テープTを透過して、ウェーハWに入射され、変質層を形成する。ウェーハWは、ウェーハテーブル120に撓むことなく保持されているため、所定位置に正確にレーザ光を入射することができる。
すべてのストリートに沿ってレーザ光が照射されると、ダイシング処理は終了する。この後、ウェーハテーブル120からウェーハWが回収される。この際、まず、図22(e)に示すように、ウェーハテーブル120が表裏反転される。これにより、ウェーハWが上向きに保持される。この後、ウェーハW及びダイシング用フレームF1の吸引が解除され、図示しない搬送装置によってウェーハテーブル120からウェーハWが回収される。
次に、割断処理が実行される。
まず、レーザダイシングされたウェーハWが、割断用テープT2に貼り付けられる。割断用テープT2は、割断用フレームF2に貼付されており、ダイシング用テープT1の上から割断用テープT2が貼り付けられる。
ここで、割断用テープT2には、通気性を有する厚手のテープが使用される。
割断用テープT2へのウェーハWの貼り付けは、次のように行われる。まず、図23(a)に示すように、貼着面(粘着材層が形成された面)を上にして割断用テープT2をウェーハチャック312の上に載置する。次に、割断用フレームF2をフレームチャック314で吸着保持する。次に、割断用テープT2の上にウェーハWを載置する(被貼着面(ウェーハWの裏面(ダイシング用テープT1が貼着された面)を下にして載置する。)。次に、ウェーハ吸着用真空ポンプ322を駆動する。これにより、ウェーハWが吸引されながら、割断用テープT2に貼り付けられる。
このように、ウェーハWを吸引しながら、割断用テープT2に貼り付けることにより、効率よくウェーハWを割断用テープT2に貼り付けることができる。
次に、ウェーハWが吸着保持された状態で、押圧装置316が駆動され、押圧パッド324がウェーハチャック312の裏面中央に押圧当接される。これにより、図23(c)に示すように、ウェーハチャック312が撓む。そして、このウェーハチャック312が撓むことにより、ウェーハチャック312に倣ってウェーハWが撓み、ストリートに沿ってウェーハWが割断される。ウェーハWは、ウェーハチャック312に吸着保持された状態で撓ませられることにより、割れ残りを生じさせることなく割断される。
ウェーハWの割断処理が終了すると、押圧パッド324による押圧が解除される。この後、ウェーハチャック312によるウェーハWの吸着が解除される。
ウェーハWの吸着が解除されると、図23(d)に示すように、エキスパンド用リング318が上昇し、割断用テープT2が延ばされる(ダイシング用テープT1も延ばされる)。これにより、ウェーハWが個々のチップに分割される。
以上一連の工程でウェーハがチップに分割される。この後、エキスパンド用リング318が元の位置に退避し、フレームチャック314の吸着が解除されて、ウェーハWが回収される。
なお、ダイシング用テープT1として、何らか物理的な特性変化によって脆化する特性を備えたテープ(たとえば、紫外線を照射することによって脆化するタイプ、加熱することで脆化するタイプ、冷却することで脆化するタイプなどのテープ)を使用した場合などには、ウェーハWを割断用テープT2に貼り付けた後、ダイシング用テープT1を脆化させ、その後、ウェーハを割断する。これにより、ダイシング用テープごとウェーハを破断させることができ、より効率よくウェーハを割断することができる。
また、レーザダイシングから分割までの一連の処理を連続して行う場合(レーザダイシングから分割までの一連の処理を行うウェーハ処理システムとして構成する場合)は、たとえば、レーザダイシング装置と割断装置とを並列等して配置し、レーザダイシング装置でレーザダイシングされたウェーハを割断装置に自動的に搬送するように構成する(たとえば、ロボットアームなどの搬送手段でレーザダイシング後のウェーハをレーザダイシング装置から回収し、割断装置に搬送するように構成する。)。
[実施例]
《ウェーハテーブルについて》
ウェーハテーブルを構成する透明なテーブル板としては、石英ガラスが好適に使用される。たとえば、東ソー社製のESグレード石英ガラスや、特に赤外域での吸収を軽減させたED−Cグレード石英ガラスが好適に使用される。
また、テーブル板は、石英ガラスでなくても、特に赤外域のレーザを使用する場合においては、単結晶シリコンやゲルマニウム結晶なども透過率に優れ、好適に使用できる。
なお、石英ガラスの厚みとしては、レーザ照射装置で使用する対物レンズ等にもよるが、ワークディスタンスは1〜3mm程度であるため、石英ガラスであれば、1mm〜2mm程度の厚みであれば十分である。
《屈折液について》
ウェーハとテーブル板との間の隙間に屈折液を流し込む場合、屈折液としては、たとえば、水が好適に使用される。この他、エタノールやIPA等のアルコールを使用してもよい。
テーブル板として石英ガラスを使用する場合、テーブル板は屈折率が1.46程度となる。加工処理対象がシリコンウェーハの場合、ウェーハの表面に形成される自然酸化膜も屈折率が1.46程度である。また、ダイシング用テープとして使用されるポリエチレン系の透明フィルムも屈折率は約1.5前後のである。よって、これに近い屈折率の液体を界面に介在させれば、理論上ほとんど反射することなく透過させることが可能となる。こうした屈折液としては、屈折率が1.5程度あるものとして、モリテックス社製のカーギル標準屈折液のシリーズAや、シリーズAAなどが好適に使用される。
《レーザダイシングの加工条件について》
レーザダイシング実施例の加工条件としては、たとえば、以下の条件などが好適に使用される。
レーザ光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ(波長:1064nm)
レーザ光スポット径:2μm
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
試料台移動速度:1100mm/秒
パルス間隔:1μm
パルス幅:150ns
出力:6.5μJ/パルス
集光レンズ:倍率50倍、NA:0.55
《ダイシング用テープについて》
ダイシング用テープとしては、レーザ光に対する透過率が80%程度以上であることが望ましい。このようなテープの材質としては、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系のものなどが好適に使用できる。たとえば、フィルム厚みとして、200μm程度でも良いが、50μm以下とすれば、更に透過率を向上させることができる。
使用する波長域は、たとえば、シリコンウェーハに照射する場合、1064nm程度から1300nm程度の長波長領域が使用されるため、こうした波長域において、透過率が最低でも70%程度以上あれば好適に使用できる。
このようなダイシング用テープの基材としては、東洋紡績社製のPETフィルム「E5100−100」、日本ユニカー社製のポリエチレン「NUC−8122」、帝人化成社製のポリカーボネートフィルム「パンライト(登録商標)」などが透過性に優れ好適に使用できる。