JP5978380B1 - 半導体用封止材 - Google Patents

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Abstract

【課題】半導体チップと半導体用封止材との間に隙間が形成されることを抑制できる半導体用封止材を提供する。【解決手段】本発明による半導体用封止材は、半導体を酸化させ得る酸化剤を含んでなることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、半導体チップを保護する半導体用封止材に関し、とりわけ、外部接続用電極の配置領域が半導体の平面サイズよりも大きいファンアウト(Fan-out)型のウェハレベルパッケージに用いられる半導体用封止材に関する。
近年、半導体回路等の分野おいて小型化の要求が高まっており、その要求に応えるために半導体回路はそのチップサイズに近いパッケージ(Chip Size Package)に実装されることがある。チップサイズパッケージを実現する手段の一つとして、ウエハレベルで接合し断片化するウェハレベルパッケージ(Wafer Level Package、以下、WLPと略す場合がある。)と呼ばれるパッケージ方法が提案されている。WLPは、低コスト化、小型化に寄与し得るため、注目されている。WLPは、電極が形成された回路基板上にフェースダウンで実装される。
ところで、半導体チップの小型化、高集積化に伴って、半導体チップの外部接続用の電極(端子、バンプ)の数は多くなる傾向にあり、そのため半導体チップの外部接続用の電極のピッチは小さくなる傾向にある。しかしながら、微細なピッチでバンプが形成された半導体チップを回路基板上に直接実装するのは必ずしも容易ではない。
上記のような課題に対して、半導体チップの外周に半導体用封止材の領域を形成し、電極に接続された再配線層を半導体用封止材の領域にも設けて、バンプのピッチを大きくすることが提案されている。このようなWLPは、半導体チップのサイズに対してバンプの配置エリアのサイズが大きくなるため、ファンアウト型のウェハレベルパッケージ(以下、FO−WLPと略す場合がある。)と称される。
FO−WLPでは、半導体チップが半導体用封止材により埋め込まれる。半導体チップの回路面は外側にむき出しとなり、半導体チップと半導体用封止材との境界が形成される。半導体チップを埋め込む半導体用封止材の領域にも、半導体チップの電極に接続された再配線層が設けられ、バンプが再配線層を介して半導体チップの電極に電気的に接続される。かかるバンプのピッチは、半導体チップの電極のピッチに対して大きく設定できるようになる。
また、半導体チップのみならず、複数の電子部品を1つのパッケージ内に収めたり、複数の半導体チップを半導体用封止材に埋め込み1つの半導体部品とすることも考えられる。このようなパッケージでは、複数の電子部品が半導体用封止材により埋め込まれる。複数の電子部品を埋め込む半導体用封止材には、電子部品の電極に接続された再配線層が設けられ、バンプが再配線層を介して電子部品の電極に電気的に接続される。この場合にも、半導体チップのサイズに対してバンプの配置エリアのサイズが大きくなるため、FO−WLPといえる。
このようなパッケージでは、一般的に支持体上に一定の間隔を設けて半導体チップや電子部品を配置し、半導体用封止材を用いて埋め込み、封止材を加熱硬化させた後に、支持体から剥離して疑似ウエハが作製される。続いて、疑似ウエハの半導体チップ回路面から拡張された半導体用封止材料領域にかけて、再配線層が形成される。このようにしてバンプのピッチは、半導体チップの電極のピッチに対して大きく設定できるようになる。
再配線層の形成においては、一般的に、ポジ型の感応性樹脂を、疑似ウエハの半導体チップ回路面に塗布し、プリベークを行い、フォトマスク等を介して開口したい領域にUV光線等の活性光線を照射し、続いてTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)等の現像液を用いて現像を行い、加熱キュア、酸素プラズマ処理等を行い、メタル電極のスパッタリングを行い、さらにフォトレジスト層を形成し配線をパターニングして再配線層を形成していく(例えば、特許文献1等)。
特開2013−38270号公報
しかしながら、上記したような工程を経てFO−WLPを製造すると、半導体チップと半導体用封止材との境界に隙間が発生し、その後に形成される再配線層の信頼性を低下させているという問題があった。また、この隙間により、完成したFO−WLPの製品信頼性を低下させる問題があった。
したがって、本発明の目的は、半導体チップと半導体用封止材との間に隙間が形成されることを抑制できる半導体用封止材、とりわけFO−WLP用封止材を提供することにある。
本発明者らは、半導体チップと半導体用封止材との境界が生じるという現象を詳細に検討したところ、この隙間が、再配線層を形成する際に用いる現像工程において発生していることを突き止めた。そして、さらに検討を進めたところ、現像工程の際に、現像液が半導体用封止材に埋め込まれた半導体チップ側面の境界にも侵入し、場合によっては半導体用封止材にしみ込み、この浸入ないし染み込んだ現像液によって半導体チップ側面がエッチングされることにより、半導体チップ側面と半導体用封止材との境界に隙間が生じていることが判明した。
そして、本発明者らは、上記知見に基づいて鋭意検討した結果、半導体ウエハが現像液によってエッチングされないような成分を、半導体用封止材に添加しておくことにより、再配線層形成の再に現像液を用いても半導体チップ側面と半導体用封止材との境界に隙間が形成されることを抑制でき、その結果、再配線層の形成を容易とし、完成したFO−WLPの信頼性を高められることが分かった。
本発明による半導体用封止材は、半導体を酸化させ得る酸化剤を含んでなることを特徴とするものである。
本発明の態様においては、半導体用封止材が、硬化性成分、硬化剤成分、硬化促進剤成分、および無機フィラーを含んでいてもよい。
本発明の態様においては、半導体用封止材がシート状の形状を有していてもよい。
本発明の態様においては、ファンアウト型のウェハレベルパッケージに用いられてもよい。
本発明の半導体用封止材によれば、とりわけFO−WLPにおいて、半導体チップと半導体用封止材との間に隙間が形成されることを抑制できる。その結果、FO−WLPの製造の際の再配線層の形成を容易とし、完成したFO−WLPの信頼性を高めることができる。
半導体用封止材は、半導体ウエハを加工した半導体素子(例えば半導体チップ等)を熱や埃から保護して半導体パッケージとするものであり、半導体素子全体を被覆するよう封止して絶縁するものである。該半導体用封止材は、後記するような封止材としての各成分を含むものであるが、本発明による半導体用封止材は、半導体を酸化させ得る酸化剤を含むことに特徴を有している。上記したように、例えばFO−WLPを製造する際には、半導体用封止材により半導体チップ等を埋設して形成した疑似ウエハの半導体チップ回路面に再配線層が形成されるが、その再配線層をパターニングして形成する際に、TMAH等の現像液が用いられる。現像処理の際に、埋設した半導体チップと半導体用封止材との界面に現像液が浸入する。例えば、シリコン半導体チップである場合、シリコンがTMAH現像液によりエッチングされてしまい、埋設された半導体ウエハと半導体用封止材との間に隙間を生じさせてしまう。本発明においては、半導体用封止材に半導体ウエハを酸化させ得る酸化剤が含まれているため、半導体チップを半導体用封止材で封止する際に、半導体チップの表面が酸化される。例えば、シリコン(Si)半導体チップの場合は、半導体チップの表面にSiOの極薄い被膜が形成される。そのため、その後の現像処理の際に現像液が半導体チップと半導体用封止材との界面に浸入しても、酸化皮膜(SiO)によりシリコン半導体が現像液によりエッチングされてしまうことを抑制することができるものと考えられる。これはあくまでも本発明者らの推測であり、本発明が当該論理に拘束されるものではない。
半導体用封止材により封止される半導体チップとしては、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)、SiGe等が挙げられるが、シリコン半導体が一般的である。
本発明において使用できる酸化剤としては、上記したような半導体を酸化させ得る酸化剤であれば特に制限されるものではなく、有機系の酸化剤および無機系の酸化剤のいずれであってもよいが、後記する半導体用封止材を構成する他の成分との相溶性の観点からは有機系の酸化剤を好ましく使用することができる。
有機系の酸化剤としては、有機酸化剤または有機過酸化物を好適に使用することができる。有機酸化剤としては、ヒドロペルオキシド類、キノン類、ピリジン類、有機ニトロ化合物等が挙げられる。また、有機過酸化物としては、m−クロロ過安息香酸、過安息香酸、過酢酸、過ギ酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ジエチル、過酸化ジアセチル等が挙げられる。
ヒドロペルオキシド類としては、t−ブチルハイドロオキサイド、クメンハイドロオキサイドビス(トリメチルシリル)ペルオキサイド、エチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
キノン類としては、p−クロラニル(テトラクロロ−p−ベンゾキノン)、o−クロラニル、テトラブロモ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、クロロベンゾキノン、ジクロロベンゾキノン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、置換アントラキノン、2,3,5,6−テトラクロロ−p−ベンゾキノン等が挙げられる。
ピリジン類としては、ピリジンオキシド、ピリジンN−オキサイド、ジメチルアミノピリジンオキシド、2,2,6,6,−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシド、トリメチルアミンN−オキサイド等が挙げられる。
有機ニトロ化合物としてはメタニトロベンゼンスルホン酸塩、パラニトロ安息香酸塩、ニトロガニジン、芳香族ニトロスルフホネート等が挙げられる。
また、市販されている過酸化物を使用してもよく、例えば日本油脂株式会社のパーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22の商品名で市販されているパーオキシケタール類、パーブチルH、パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタHの商品名で市販されているハイドロパーオキサイド類、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルDの商品名で市販されているジアルキルパーオキサイド類、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40、ナイパーBMT−Mの商品名で市販されているジアシルパーオキサイド類、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBPの商品名で市販されているパーオキシジカーボネート類、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ25O、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ、その他ペロマーAC、BTTB−25の商品名で市販されているパーオキシエステル類を使用することができる。
上記した酸化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
また、本発明においては、上記した酸化剤の中でも、半導体チップの表面に酸化物層を形成させる半導体との反応性(酸化性)と半導体用封止材としての安定性の両立の観点からは、有機過酸化物やキノン類が好ましく用いられる。
半導体用封止材他の成分と混合される無機系酸化剤としては、酸化銀、酸化銅、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化マンガン、酸化鉛、酸化レニウム、酸化テルルが挙げられる。これらの中で酸化マンガン、酸化鉛が酸化剤としての反応性と封止材材料としての安定性のバランスから好ましい。
酸化剤の含有量は、酸化剤以外の成分の固形分換算での合計質量を100質量部としたときに、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜8質量部の範囲であることがより好ましく、0.1〜5質量部の範囲であることが特に好ましい。酸化剤の含有量を上記範囲とすることにより、半導体用封止材を酸化分解させることなく、半導体チップ側面の隙間形成を抑制することができる。
上記したように、酸化剤の種類によっては、半導体用封止材を構成する樹脂成分が酸化されてしまう場合がある。そのため、本発明においては、半導体用封止材に酸化防止剤が含有さえていてもよい。酸化防止剤としては、ラジカル連鎖防止剤として機能するフェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤、過酸化物分解剤として機能するリン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、金属不活性化剤として機能するヒドラジン系酸化防止剤、アミド系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でも、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤を好適に使用することができる。また、市販の酸化防止剤を使用してもよく、例えば、アデカスタブ AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−50F、AO−60、AO−60G、AO−80、AO−330、アデカスタブ PEP−36/36A、HP−10、2112、2112RG、PEP−8、PEP−8W、1178、1500、C、135A、3010、TPPADEKAスタブ AO−412S、AO−503等が挙げられる。
本発明による半導体封止材に酸化防止剤が含まれる場合、その含有量は、酸化剤の官能基のモル数を100%としたときに、酸化防止剤の官能基のモル数が5〜99%の範囲であることが好ましく、8〜90%の範囲であることがより好ましく、10〜80%の範囲であることが特に好ましい。酸化防止剤の含有量を上記の範囲とすることにより、酸化剤の半導体との反応性(酸化性)を維持しながら、酸化剤の反応性を調整して樹脂成分の酸化分解を抑制することができる。
本発明による半導体用封止材には、後記するような硬化性成分、硬化剤成分、硬化促進剤成分、無機フィラー等が含まれていてもよい。以下、半導体用封止材を構成する酸化剤および酸化防止剤以外の成分について説明する。
<硬化性成分>
半導体用封止材の硬化性成分としては特に制限なく従来公知の樹脂を用いることができるが、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂には反応前の形状から固形、半固形、液状のエポキシ樹脂がある。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
固形エポキシ樹脂としては、DIC社製HP−4700(ナフタレン型エポキシ樹脂)、DIC社製EXA4700(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、日本化薬社製NC−7000(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬社製EPPN−502H(トリスフェノールエポキシ樹脂)等のフェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);DIC社製エピクロンHP−7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬社製NC−3000H(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬社製NC−3000L等のビフェニル/フェノールノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製エピクロンN660、エピクロンN690、日本化薬社製EOCN−104S等のノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製YX−4000等のビフェニル型エポキシ樹脂;新日鉄住金化学社製TX0712等のリン含有エポキシ樹脂;日産化学工業社製TEPIC等のトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
半固形エポキシ樹脂としては、DIC社製エピクロン860、エピクロン900−IM、エピクロンEXA―4816、エピクロンEXA−4822、東都化成社製エポトートYD−134、三菱化学社製jER834、jER872、住友化学工業社製ELA−134等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;DIC社製エピクロンHP−4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC社製エピクロンN−740等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
半固形エポキシ樹脂としては、DIC社製エピクロン860、エピクロン900−IM、エピクロンEXA―4816、エピクロンEXA−4822、東都化成社製エポトートYD−134、三菱化学社製jER834、jER872、住友化学工業社製ELA−134等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;DIC社製エピクロンHP−4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC社製エピクロンN−740等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記した硬化性成分は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化性成分の配合量は、半導体用封止材を構成する全固形分100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましい。また、液状エポキシ樹脂の配合量は、硬化性成分全体に対して、0〜45質量部であることが好ましく、0〜30質量部であることがより好ましく、0〜5質量部であることが特に好ましい。液状エポキシ樹脂の配合量が0〜45質量部の範囲であると、硬化物のガラス転移温度(Tg)が高くなり、クラック耐性が良くなる場合がある。
<硬化剤成分>
本発明による半導体用封止材を構成する成分として、硬化剤成分が含まれていてもよい。硬化剤成分は、上記した硬化性成分と反応する官能基を有するものである。このような硬化剤成分としては、フェノール樹脂、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂等が挙げられ、フェノール樹脂が好ましい。これらのうち1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類、フェノール/ナフトール樹脂、α−ナフトール骨格含有フェノール樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂等の従来公知のものを、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリカルボン酸およびその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物およびその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物等の他、カルボン酸末端イミド樹脂等のカルボン酸末端を有する樹脂が挙げられる。
シアネートエステル樹脂は、一分子中に2個以上のシアネートエステル基(−OCN)を有する化合物である。シアネートエステル樹脂は、従来公知のものをいずれも使用することができる。シアネートエステル樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、アルキルフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂が挙げられる。また、一部がトリアジン化したプレポリマーであってもよい。
活性エステル樹脂は、一分子中に2個以上の活性エステル基を有する樹脂である。活性エステル樹脂は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
硬化剤成分として、上記した以外にも脂環式オレフィン重合体を用いることができる。好適に使用できる脂環式オレフィン重合体としては、(1)カルボキシル基およびカルボン酸無水物基(以下、「カルボキシル基等」と称する)のいずれか少なくとも1種を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体と共に重合したもの、(2)カルボキシル基等を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体と共に重合して得られる(共)重合体の芳香環部分を水素化したもの、(3)カルボキシル基等を有しない脂環式オレフィンと、カルボキシル基等を有する単量体とを共重合したもの、(4)カルボキシル基等を有しない芳香族オレフィンと、カルボキシル基等を有する単量体とを共重合して得られる共重合体の芳香環部分を水素化したもの、(5)カルボキシル基等を有しない脂環式オレフィン重合体にカルボキシル基等を有する化合物を変性反応により導入したもの、または(6)前記(1)〜(5)のようにして得られるカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン重合体のカルボン酸エステル基を、例えば加水分解等によりカルボキシル基に変換したもの等が挙げられる。
上記した硬化剤成分のなかでも、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、脂環式オレフィン重合体が好ましい。特に、極性が高く、比誘電率を抑制しやすいことより、フェノール樹脂を用いることがより好ましい。
硬化剤成分は、硬化性成分のエポキシ基等の官能基(硬化反応可能な官能基)と、当該官能基と反応し得る硬化剤成分の官能基との割合(硬化剤成分の官能基の数/硬化性成分の官能基の数:当量比)が0.2〜5となるような割合で含まれることが好ましい。当量比を上記の範囲とすることにより、より一層、保護特性に優れた半導体用封止材を得ることができる。
<硬化促進剤成分>
本発明による半導体用封止材を構成する成分として、硬化促進剤成分が含まれていてもよい。硬化促進剤成分は硬化性成分の硬化反応を促進させるものであり、封止材の半導体ウエハへの密着性および耐熱性をより一層向上させることができる。硬化促進剤成分としては、イミダゾールおよびその誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩およびエポキシアダクトのいずれか少なくとも1種;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート等の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物、金属触媒等の従来公知の硬化促進剤が挙げられ、これら1種を単独または2種以上混合して用いることができる。
硬化促進剤成分は必須ではないが、特に硬化反応を促進したい場合には、上記した硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部の範囲で用いることができる。硬化促進剤成分として金属触媒を使用する場合、その含有量は、硬化性成分100質量部に対して金属換算で10〜550ppmが好ましく、25〜200ppmが好ましい。
<無機フィラー成分>
本発明による半導体用封止材には、無機フィラー成分が含まれていてもよい。無機フィラー成分が含有されることにより半導体用封止材の信頼性が向上する。また、半導体用封止材の裏面等にレーザーマーキングを施すことにより、レーザー光により削り取られた部分に無機フィラー成分が露出して、反射光が拡散するために白色に近い色を呈する。これにより、半導体用封止材が後述する着色剤成分を含有する場合、レーザーマーキング部分と他の部分とでコントラスト差が得られ、マーキング(印字)が明瞭になるという効果がある。
無機フィラー成分としては、従来公知のものを制限なく使用することができ、例えばシリカ、アルミナ、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、フィルムの中の比誘電率を制御するためにシリカ、アルミナ、酸化チタンが好ましい。
無機フィラー成分は、平均粒子径は、好ましくは0.01〜15μm、より好ましくは0.02〜12μm、特に好ましくは0.03〜10μmのものを使用することが好ましい。なお、本明細書中、平均粒子径は、電子顕微鏡で無作為に選んだ無機フィラー(C)20個の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径とする。
無機フィラー成分の含有量は、半導体用封止材を構成する全固形成分100質量部に対して、好ましくは10〜2000質量部、より好ましくは30〜1800質量部、特に好ましくは60〜1500質量部である。
<着色剤成分>
本発明による半導体用封止材には、着色剤成分が含まれていてもよい。着色剤成分が含まれることにより、保護膜を備えた半導体チップを機器に組み込んだ際に、周囲の装置から発生する赤外線等による半導体装置の誤作動を防止することができる。また、レーザーマーキング等の手段により保護膜に刻印を行った場合に、文字、記号等のマークが認識しやすくなる。すなわち、保護膜が形成された半導体チップでは、保護膜の表面に品番等が通常レーザーマーキング法(レーザー光により保護膜表面を削り取り印字を行う方法)により印字されるが、保護膜が着色剤を含有することで、保護膜のレーザー光により削り取られた部分とそうでない部分のコントラスト差が充分に得られ、視認性が向上する。
着色剤成分として、有機または無機の顔料および染料を1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中でも電磁波や赤外線遮蔽性の点から黒色顔料が好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、ペリレンブラック、酸化鉄、アニリンブラック、活性炭等が用いられるが、これらに限定されることはない。半導体装置の誤作動防止の観点からはカーボンブラックが特に好ましい。また、カーボンブラックに代えて、赤、青、緑、黄色などの顔料を混合し、黒色またはそれに近い黒色系の色とすることもできる。
着色剤成分は、半導体用封止材を構成する全固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜35質量部、さらに好ましくは0.5〜25質量部、特に好ましくは1〜15質量部の割合で含有される。
<カップリング剤成分>
半導体用封止材の被着体(半導体ウエハ)に対する接着性、密着性および保護膜の凝集性のいずれか少なくとも1方を向上させるため、無機物と反応する官能基および有機官能基と反応する官能基を有するカップリング剤成分が含まれていてもよい。また、カップリング剤成分が含まれることにより、半導体用封止材を硬化して得られる保護膜の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上させることができる。このようなカップリング剤としては、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。これらのうちでも、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤に含有される有機基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、ポリスルフィド基、イソシアネート基などが挙げられる。シランカップリング剤として市販されているものを使用することができ、例えば、KA−1003、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−6123、KBE−585、KBM−703、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007(いずれも商品名;信越シリコーン社製)などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
<フィルム性付与ポリマー成分>
本発明による半導体用封止材は、液状、顆粒状、シート状などの形態をとることが可能である。この中でシート状の半導体用封止材とする場合、フィルム形成性を付与するポリマー成分(フィルム性付与ポリマー)を添加してもよい。本明細書において、フィルム性付与ポリマー成分は、後記する反応性のフィルム付与性ポリマー成分と区別するため、反応性官能基を有していないポリマー成分を意味するものとする。このようなフィルム性付与ポリマー成分としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂や、エピクロルヒドリンと各種2官能フェノール化合物の縮合物であるフェノキシ樹脂またはその骨格に存在するヒドロキシエーテル部の水酸基を各種酸無水物や酸クロリドを使用してエステル化したフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ブロック共重合体等が挙げられる。これらのポリマーは1種を単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。フィルム(ないしシート)形状を維持できるためには、これらポリマーの重量平均分子量(Mw)は、通常2×10以上であり、2×10〜3×10であることが好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により、下記測定装置、測定条件にて測定できる。
測定装置:Waters製「Waters 2695」
検出器:Waters製「Waters2414」、RI(示差屈折率計)
カラム:Waters製「HSPgel Column,HR MB−L,3μm,6mm×150mm」×2+Waters製「HSPgel Column,HR1,3μm,6mm×150mm」×2
測定条件:
カラム温度:40℃
RI検出器設定温度:35℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/分
サンプル量:10μl
サンプル濃度:0.7wt%
ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化することで得られる。上記アルデヒドとしては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等が挙げられる。
フェノキシ樹脂の具体例としては東都化成社製FX280、FX293、三菱化学社製YX8100、YL6954、YL6974等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、積水化学工業社製エスレックKSシリーズ、ポリアミド樹脂としては日立化成社製KS5000シリーズ、日本化薬社製BPシリーズ、
ポリアミドイミド樹脂としては日立化成社製KS9000シリーズ等が挙げられる。
熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、フルオレン骨格を有する場合、高いガラス転移点を有し耐熱性に優れるため、半固形または固形エポキシ樹脂による低い熱膨張率を維持すると共にそのガラス転移点を維持し、得られる硬化皮膜は低い熱膨張率と高いガラス転移点をバランス良く併せ有するものとなる。また、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は水酸基を有するため、半導体ウエハに対して良好な密着性を示す。
フィルム性付与ポリマー成分は、上記した成分を構成するモノマーがブロック共重合したものであってもよい。ブロック共重合体とは、性質の異なる二種類以上のポリマーが、共有結合で繋がり長い連鎖になった分子構造の共重合体のことである。ブロック共重合体としてはA−B−A型またはA−B−A’型ブロック共重合体が好ましい。A−B−A型およびA−B−A’型ブロック共重合体のうち、中央のBがソフトブロックでありガラス転移温度(Tg)が低く、その両外側AまたはA’がハードブロックでありガラス転移温度(Tg)が中央のBブロックよりも高いポリマー単位により構成されているものが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量測定(DSC)により測定される。AとA’は相互に異なるポリマー単位でも同一のポリマー単位でも良い。
また、A−B−A型およびA−B−A’型ブロック共重合体のうち、AまたはA’が、Tgが50℃以上のポリマー単位からなり、Bのガラス転移温度(Tg)が、AまたはA’のTg以下であるポリマー単位からなるブロック共重合体がさらに好ましい。また、A−B−A型およびA−B−A’型ブロック共重合体のうち、AまたはA’が、後記する硬化性成分との相溶性が高いものが好ましく、Bが硬化性成分との相溶性が低いものが好ましい。このように、両端のブロックがマトリックス(硬化性成分)に相溶であり、中央のブロックがマトリックス(硬化性成分)に不相溶であるブロック共重合体とすることで、マトリックス中において特異的な構造を示しやすくなると考えられる。
上記した種々のポリマーのなかでも、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、フルオレン骨格を有する熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ブロック共重合体が好ましい。
半導体用封止材を構成する全成分占めるフィルム性付与ポリマー成分の割合は、特に限定されるものではなく、全成分の合計を100質量部としたときに10〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは15〜45質量部である。
<反応性フィルム性付与ポリマー成分>
半導体用封止材を構成する成分として、後記する硬化性成分と反応し得るフィルム性付与ポリマー成分が含まれていてもよい。このような反応性フィルム性付与ポリマーとしては、カルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂を用いると好ましい。特に、カルボキシル基含有樹脂を用いると、硬化性成分としてエポキシ樹脂が含まれる場合にエポキシ樹脂と反応し易く、フィルム形成性を付与しつつ半導体保護膜としての特性が向上するため好ましい。
カルボキシル基含有樹脂としては、以下の(1)〜(7)の樹脂を好適に使用することができる。
(1)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基を含有する、ジアルコール化合物、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(2)ジイソシアネートと、カルボキシル基含有ジアルコール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(3)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂、
(4)2官能エポキシ樹脂または2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、
(5)エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂を開環させ、生成した水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(6)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物、すなわちポリフェノール化合物を、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドと反応させて得られるポリアルコール樹脂等の反応生成物に、多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、および
(7)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物、すなわちポリフェノール化合物を、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドと反応させて得られるポリアルコール樹脂等の反応生成物に、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に、更に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
等の樹脂を好適に使用することができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を意味する。
上記した樹脂のなかで、上記(1)、(2)、(6)および(7)は塩素を含有していないことから、非感光性カルボキシル基含有樹脂として使用することができる。これらの中でも(6)および(7)の樹脂が全ての特性におけるバランスがよいことから好ましい。
反応性フィルム性付与ポリマーの重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的には2×10〜1.5×10の範囲であることが好ましく、より好ましくは3×10〜1×10の範囲であるが、これら範囲に限定されるものではない。
半導体用封止材を構成する全成分占める反応性フィルム性付与ポリマー成分の割合は、特に限定されるものではなく、例えば上記したフィルム性付与ポリマー100質量部のうち20〜60質量部を反応性フィルム性付与ポリマーに置き換えることが好ましい。
<その他の成分>
本発明による半導体用封止材には、上記した成分以外に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。各種添加剤としては、レベリング剤、可塑剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤、連鎖移動剤、剥離剤などが挙げられる。
半導体用封止材をフィルム形状とした際の厚さは封止する半導体チップや電子部品の厚みより厚ければ特に限定されないが、好ましくは3〜800μm、より好ましくは5〜700μm、特に好ましくは7〜600μmである。
本発明による半導体用封止材は単層構造であってもよく、また多層構造であってもよい。
本発明による半導体用封止材は、可視光線、赤外線および紫外線のいずれか少なくとも1種の透過性を示す尺度である、波長300〜1200nmにおける最大透過率は20%以下であることが好ましく、0〜15%であることがより好ましく、0%を超え10%以下であることがさらに好ましく、0.001〜8%であることが特に好ましい。波長300〜1200nmにおける半導体用封止材の最大透過率を上記範囲とすることで、可視光波長領域および赤外波長領域のいずれか少なくとも1種の透過性の低下が生じ、半導体装置の赤外線起因の誤作動の防止や、印字の視認性向上といった効果が得られる。波長300〜1200nmにおける半導体用封止材の最大透過率は、上記した着色剤成分の種類および含有量により調整できる。なお、本明細書において、半導体用封止材の最大透過率は、UV−visスペクトル検査装置((株)島津製作所製)を用いて、硬化後の半導体用封止材(厚み25μm)の300〜1200nmでの全光線透過率を測定し、透過率の最も高い値(最大透過率)をいうものとする。
本発明による半導体用封止材の形態は、液状、顆粒、タブレット状、シート状いずれでもよいが、容易に取扱いできることからシート状の形状を有していることが好ましい。
<半導体用封止材の製造方法>
本発明による半導体用封止材は、上記各成分を割合で混合して得られる組成物(保護膜形成用組成物)を用いて得られる。保護膜形成用組成物は予め溶媒で希釈しておいてもよく、また混合時に溶媒に加えてもよい。また、保護膜形成用組成物の使用時に、溶媒で希釈してもよい。溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ヘプタンなどが挙げられる。この方法で液状品の半導体用封止材を得ることができる。
上記のようにして調製された半導体用封止材組成物を支持体上に塗布して製膜することによりシート状の半導体用封止材とすることができる。製膜方法としては、従来公知の方法を適用することができ、平板プレス法、ロールナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーターなどの公知の手段により保護膜形成用組成物を支持体上に塗工し、乾燥することにより半導体用封止材を得ることができる。また、保護膜形成用組成物の塗工量を調整することにより、上記したような厚みの半導体用封止材を得ることができる。
支持体としては、セパレート紙、セパレートフィルム、セパ紙、剥離フィルム、剥離紙等の従来公知のものを好適に使用できる。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等のポリオレフィンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムからなる離型紙用基材の片面または両面に離型層を形成したものを用いてもよい。離型層としては、離型性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
本発明の半導体用封止材は、プリント配線基板の封止材、太陽電池材料の封止材、電線・ケーブルの封止材基板と半導体チップとの接着剤にも用いることができる。特に、本発明の半導体用封止材は、半導体チップと、前記半導体チップの回路形成面が表面に露出するように半導体チップを埋設する半導体用封止材と、前記半導体チップの回路形成面側に設けられた再配線層と、を備え、前記再配線層が、半導体チップ領域以外の半導体用封止材領域にも設けられているファンアウト型のウェハレベルパッケージに好適に使用できる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのないかぎり、「部」とは質量部を意味するものとする。
<反応性フィルム付与ポリマー1の合成>
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ビスフェノールA-ホルムアルデヒド型フェノール樹脂(明和化成(株)製、商品名「BPA−D」、OH当量:120)120.0g、水酸化カリウム1.20gおよびトルエン120.0gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125〜132℃、0〜4.8kg/cm2で16時間反応させた。
その後、反応溶液を室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるビスフェノールA-ホルムアルデヒド型フェノール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。
反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として12.6g留出した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95〜101℃で6時間反応させ、固形物の酸価88mgKOH/g、不揮発分71%のカルボキシル基含有樹脂を得た。これを樹脂溶液Aとする。樹脂溶液Aに含まれる反応性フィルム性付与ポリマー(カルボキシル基含有樹脂)成分の重量平均分子量は約4×10であった。
なお、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により、下記測定装置、測定条件にて測定した。
測定装置:Waters製「Waters 2695」
検出器:Waters製「Waters2414」、RI(示差屈折率計)
カラム:Waters製「HSPgel Column,HR MB−L,3μm,6mm×150mm」×2+Waters製「HSPgel Column,HR 1,3μm,6mm×150mm」×2
測定条件:
カラム温度:40℃
RI検出器設定温度:35℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/分
サンプル量:10μl
サンプル濃度:0.7wt%
<半導体用封止材1の作製>
以下の成分を、メチルエチルケトンに、溶解・分散させて、固形分質量濃度20%の封止材用組成溶液1を調製した。
・アントラキノン 2部
・フェノキシ樹脂(東都化成社製FX293) 50部
・樹脂溶液A 70.4部
・ナフタレン型エポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000) 30部
・ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製 YX−4000) 10部
・フェノール樹脂(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニ−製 DEN−431) 10部
・カーボンブラック(三菱化学社製、カーボンMA−100) 10部
・球状シリカ(アドマテックス社製 アドマファインSO−E2) 200部
・水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製ハイジライト42M) 150部
・シランカップリング剤(信越化学社製 KBM−403) 2部
・2−フェニルイミダゾール(四国化成工業(株)製 2PZ) 2部
封止材用組成溶液1を表面に剥離処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)に塗布し、100℃で10分乾燥させて厚み50μmの半導体用封止材1を作製した。このフィルムを6枚積層して厚み300μmの半導体用封止材1を作製した。
<半導体用封止材2の作製>
以下の成分を配合し、ロール混練機で70℃4分間、続いて120℃6分間加熱し、合計10分間、減圧(0.01kg/cm)しながら溶融混練し、混練物2を作製した。
・アントラキノン 2部
・ナフタレン型エポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000) 30部
・ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製 YX−4000) 10部
・フェノール樹脂(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニ−製 DEN−431) 10部
・カーボンブラック(カーボンMA−100) 10部
・球状シリカ(アドマテックス社製 アドマファインSO−E2) 500部
・シランカップリング剤(信越化学社製 KBM−403) 2部
・2−フェニルイミダゾール(四国化成工業(株)製 2PZ) 2部
得られた混練物2を2枚の50umのカバーフィルム(帝人ピューレックスフィルム)に挟むように配置し、平板プレス法により混練物をシート状に形成し、厚さ300umのシート状の半導体用封止材2を得た。
<半導体用封止材3の作製>
以下の成分を配合し、ロール混練機で70℃4分間、続いて120℃6分間加熱し、合計10分間、減圧(0.01kg/cm)しながら溶融混練し、混練物3を作製した。
・二酸化マンガン 5部
・エポキシ樹脂(商品名エピコート1001;JER社製) 30部
・フェノール樹脂(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニ−製 DEN−431) 10部
・C.I.Pigment Blue 15:3 0.8部
・C.I.Pigment Yellow 147 0.55部
・Paliogen Red K3580 1.5部
・球状シリカ(アドマテックス社製 アドマファインSO−E2) 400部
・シランカップリング剤(信越化学社製 KBM−403) 2部
・2−フェニルイミダゾール(四国化成工業(株)製 2PZ) 2部
得られた混練物3を2枚の50umのPETフィルム(帝人ピューレックスフィルム)に挟むように配置し、平板プレス法により混練物をシート状に形成し、厚さ300umのシート状の半導体用封止材3を得た。
<半導体用封止材4の作製>
以下の成分を配合し、ロール混練機で70℃4分間、続いて120℃6分間加熱し、合計10分間、減圧(0.01kg/cm)しながら溶融混練し、混練物4を作製した。
・過酸化ベンゾイル 3部
・ナフタレン型エポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000) 30部
・ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製 YX−4000) 10部
・フェノール樹脂(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニ−製 DEN−431) 10部
・カーボンブラック(三菱化学社製、カーボンMA−100) 10部
・球状シリカ(アドマテックス社製 アドマファインSO−E2) 600部
・酸化チタン(石原産業(株)製 CR−90) 15部
・シランカップリング剤(信越化学社製 KBM−403) 2部
・2−フェニルイミダゾール(四国化成工業(株)製 2PZ) 2部
得られた混練物4を2枚の50umのカバーフィルム(帝人ピューレックスフィルム)に挟むように配置し、平板プレス法により混練物をシート状に形成し、厚さ300umのシート状の半導体用封止材4を得た。
<半導体用封止材5の作製>
以下の成分を配合し、ロール混練機で70℃4分間、続いて120℃6分間加熱し、合計10分間、減圧(0.01kg/cm)しながら溶融混練し、混練物5を作製した。
・アントラキノン(分子量208) 3部
・酸化防止剤(アデカスタブ AO−60) 1部
・ナフタレン型エポキシ樹脂(日本化薬社製NC−7000) 30部
・ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製 YX−4000) 10部
・フェノール樹脂(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニ−製 DEN−431) 10部
・カーボンブラック(三菱化学社製、カーボンMA−100) 10部
・球状シリカ(アドマテックス社製 アドマファインSO−E2) 500部
・シランカップリング剤(信越化学社製 KBM−403) 2部
・2−フェニルイミダゾール(四国化成工業(株)製 2PZ) 2部
なお、半導体用封止材5において、酸化防止剤の官能基のモル数は、酸化剤であるアントラキノンの官能基のモル数を100%とすると、約12%となる。
得られた混練物5を2枚の50umのカバーフィルム(帝人ピューレックスフィルム)に挟むように配置し、平板プレス法により混練物をシート状に形成し、厚さ300umのシート状の半導体用封止材5を得た。
<半導体用封止材6の作製>
アントラキノンを用いなかったこと以外は半導体用封止材1と同様に操作して、厚み300μmの半導体用封止材6を作製した。
<半導体用封止材7の作製>
アントラキノンを用いなかったこと以外は半導体用封止材2と同様に操作して、厚み300μmの半導体用封止材7を作製した。
<半導体用封止材8の作製>
二酸化マンガンを用いなかったこと以外は半導体用封止材3と同様に操作して、厚み300μmの半導体用封止材8を作製した。
<半導体用封止材9の作製>
過酸化ベンゾイルを用いなかったこと以外は半導体用封止材4と同様に操作して、厚み300μmの半導体用封止材9を作製した。
<半導体用封止材10の作製>
アントラキノンとアデカスタブ AO−60を用いなかったこと以外は半導体用封止材5と同様に操作して、厚み300μmの半導体用封止材10を作製した。
<半導体ウエハの準備>
半導体ウエハとして、キャノシス株式会社製の片面に100nmのSiO膜が形成された、4inch 厚み200umに研磨されたP型シリコンウエハを準備した。
<半導体パッケージの作製>
上記した半導体ウエハをダイシング装置を用いてダイシングを行い、10mm×10mm角の半導体チップを得た。SUS製平面基板上に仮固定フィルムを配置し、上記の半導体チップをSiO面が仮固定フィルムと接触するようにさらに配置した。この上に20mm×20mm角シート状の半導体用封止材を中心位置がおよそ一致するように積層し、加熱式プレス圧着機を用いて150℃で1時間圧縮成形させた。得られた積層体から仮固定フィルムをはがして半導体パッケージを得た。
<評価>
25℃のTMAH2.38%水溶液(商品名AD−10、多摩化学工業株式会社製)を準備し、ここに作製した半導体パッケージを半導体チップのSiO面が上になるように浸漬し、5分間処理した。その後半導体パッケージを取り出し、純水で2回リンスした。その後エアブローで水分を飛ばし、100℃に設定したホットプレートに5分間のせて回収した。得られた処理後の半導体パッケージは半導体チップ側から半導体チップと封止材の境界部分を光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察し、隙間が発生せず密着しているものを〇、隙間が観察されるものを×と判定した。評価結果は下記の表1に示される通りであった。
Figure 0005978380
表1に示された評価結果からも明らかなように、酸化剤を含む半導体用封止材を用いた実施例1〜5は、アルカリ処理しても半導体チップと封止材の境界が密着しており良好であった。一方、酸化剤を含まない半導体封止材を用いた比較例1〜5では、アルカリ処理により半導体チップと封止材の境界に隙間が発生していた。推測ではあるが、実施例1〜5の半導体ウエハでは、半導体用封止材に含まれる酸化剤により、半導体チップであるSiの表面が酸化されてSiOからなる薄膜が形成され、その結果、アルカリ処理による半導体チップの側面のエッチングが抑制されたものと考えられる。

Claims (3)

  1. ファンアウト型のウェハレベルパッケージに用いられる半導体用封止材であって、半導体を酸化させ得る酸化剤を含んでなる半導体用封止材。
  2. 硬化性成分、硬化剤成分、硬化促進剤成分、および無機フィラーを含んでなる、請求項1に記載の半導体用封止材。
  3. シート状の形状を有する、請求項1または2に記載の半導体用封止材。
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