JP2021141261A - 電子素子封止用フィルム、それを用いた電子部品、および電子部品の製造方法 - Google Patents

電子素子封止用フィルム、それを用いた電子部品、および電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】サブストレート基板が存在しないパッケージにおいても、高い剛性を有し、反りのない平坦なパッケージが得られ、成形性に優れる電子素子封止用フィルムを提供する。【解決手段】電子素子封止用フィルム10において、、第1の層1と、第1の層上に設けられた第2の層2の少なくとも2層を備える。電子素子封止用フィルムは、第1の層が、常温で液状のエポキシ樹脂と、常温で固形のエポキシ樹脂と、無機充填材と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含んでなる第1の熱硬化性樹脂組成物からなり、第2の層が、常温で液状のエポキシ樹脂と、常温で固形のエポキシ樹脂と、無機充填材と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含んでなる第2の熱硬化性樹脂組成物からなる。エポキシ樹脂は、、3官能以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であり結晶性エポキシ樹脂である。【選択図】図1

Description

本発明は、半導体等の電子素子の封止に用いられる電子素子封止用フィルム、それを用いた電子部品、およびその製造方法に関する。
半導体チップ等の電子素子を、エポキシ樹脂組成物を用いて封止して電子部品とすることが広く行われている。これら電子素子を封止する材料としては樹脂やセラミック等が使用されているが、なかでも、エポキシ樹脂に、フェノール樹脂や酸無水物を硬化剤として混合した熱硬化性樹脂組成物が、安価であるうえに、成型性、耐湿性などにも優れることから多用されている。
これら電子部品には、通常、成型性、耐熱性、寸法安定性などが要求されることから、エポキシ樹脂としてビフェニル型のエポキシ樹脂等の芳香族系のエポキシ樹脂が使用されている。例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂として、ビフェニル型エポキシ樹脂と、柔軟性骨格および極性骨格を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂とを所定の割合で用いた封止材が提案されている。
近年、電子部品の高機能化、小型化、薄型化に伴い、半導体チップのみならず、複数の電子素子を1つのパッケージ内に収めたマルチチップパッケージやシステムインパッケージなどの電子部品が開発されている。このようなパッケージは、通常、支持基板(サブストレート基板)上に電子素子を搭載し、電子素子を被覆するように封止材を設けて硬化させることにより作製されている。このような基板の片面のみに樹脂封止を行うような構造を有するパッケージでは、基板と封止材との熱収縮量の差異により、封止材を熱硬化させる際やリフロー処理時に反りが発生し易くなるという問題があった。このような問題を解決するために、例えば特許文献2では、エポキシ樹脂として、特定の化学構造を有するナフタレン型エポキシ樹脂とエポキシ当量が200以下のビフェニル型エポキシ樹脂とを含む封止材が提案されている。また、特許文献3には、エポキシ樹脂として、特定の化学構造を有するナフタレン型エポキシ樹脂を使用することで、高寸法精度、低反り、低熱膨張、高耐熱のパッケージが実現できるとされている。
特開2011−148959号公報 特開2009−235164号公報 特開2010−59261号公報
ところで、上記したパッケージの中でも、半導体チップ等の電子素子を、電子素子の回路面が封止材の片面に平坦になるように封止材に埋め込み、封止した面をベースとして回路形成を行うパッケージ工法(Molding First FO−WLP)が注目されている。このようなパッケージ工法の電子部品は、従来のパッケージ工法と異なり、電子素子を支持する基板(サブストレート基板)が存在しないため、高機能化、軽薄化が可能となるが、封止材自体に高い剛性が求められることから、従来のエポキシ樹脂封止材では不十分とされる場合があった。
また、上記したようなMolding First FO−WLPでは、サブストレート基板が存在しないため、封止材の硬化収縮や封止材と埋め込まれた電子素子との熱膨張率の差異によるパッケージの反りを低減するため、封止材の硬化性樹脂に対して無機充填材の含有量を増加する検討が行われていた。
しかしながら、封止材に無機充填材を多量に配合すると封止材の粘度が増加し、電子素子を埋め込む際に、封止材の流動によって配置した電子素子の位置にズレが生じることや、電子部品を隙間なく埋め込むことができないといった問題が生じる。特に、生産性の向上や高機能化のため、広い面積での成型や複雑に電子素子を封止する際、上記の問題がより顕著化することが考えられる。
また、従来の封止材では、液状の封止材が流動するための流路を確保する必要があり、電子部品をより薄膜化することや、近接して電子素子を配置することが困難になると考えられる。
そこで、本発明の目的は、Molding First FO−WLP等のようなサブストレート基板が存在しないパッケージ工法においても、反りのない平坦なパッケージが得られ、広い面積での成型や複雑な電子素子の配置でも成型性に優れる電子素子封止用フィルムを提供することである。また、本発明の別の目的は、上記電子素子封止用フィルムを用いた電子部品およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、封止材をフィルム化することで広い面積でも封止材が過剰に流動することなく電子素子を埋め込むことができ、さらに、フィルム化した封止材が多層構造を有し、反り抑制を考慮した層(第1の層)、および電子素子の埋め込み易さ(成型性)を考慮した層(第2の層)の2層を備えるフィルム状の封止材とすることにより、反りのない平坦なパッケージが得られ、且つ成型性にも優れることがわかった。そして、更なる検討の結果、第1の層に含まれるエポキシ樹脂として、3官能以上のエポキシ基を有した常温で固形のエポキシ樹脂を使用し、第2の層に含まれるエポキシ樹脂として、結晶性を有する常温で固形のエポキシ樹脂を使用することにより、上記課題を解決できるとの知見を得た。本発明は係る知見によるものである。
即ち、本発明による電子素子封止用フィルムは、第1の層と、前記第1の層上に設けられた第2の層との少なくとも2層を備えた電子素子封止用フィルムであって、
前記第1の層が、常温で液状のエポキシ樹脂(A1)と、3官能以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)と、無機充填材(C1)と、エポキシ樹脂硬化剤(D1)と、を含んでなる第1の熱硬化性樹脂組成物からなり、
前記第2の層が、常温で液状のエポキシ樹脂(A2)と、結晶性エポキシ樹脂(B2)と、無機充填材(C2)と、エポキシ樹脂硬化剤(D2)と、を含んでなる第2の熱硬化性樹脂組成物かなることを特徴とするものである。
本発明の実施態様においては、前記結晶性エポキシ樹脂(B2)が、ビフェニル骨格またはナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
本発明の実施態様においては、前記常温で液状のエポキシ樹脂(A1)が、前記第1の熱硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分(A1およびB1)とエポキシ樹脂硬化剤(D1)の総量に対して15〜40質量%含まれることが好ましい。
本発明の実施態様においては、前記無機充填材(C1)が、前記第1の熱硬化性樹脂組成物全体(成分A1と成分B1と成分C1と成分D1との合計)に対して80質量%以上含まれることが好ましい。
本発明の実施態様においては、前記常温で液状のエポキシ樹脂(A2)が、前記第1の熱硬化性樹脂組成物中の前記常温で液状のエポキシ樹脂(A1)の含有率よりも2〜30質量%多く含まれることが好ましい。
本発明の実施態様においては、前記無機充填材(C2)が、前記第2の熱硬化性樹脂組成物全体(成分A2と成分B2と成分C2と成分D2との合計)に対して80質量%以上含まれることが好ましい。
本発明の実施態様においては、前記第2の層の、前記第1の層が設けられた面とは反対側の面に、支持フィルムを備えていてもよい。
また、本発明の別の実施態様による電子部品の製造方法は、上記した電子素子封止用フィルムを用いた電子部品の製造方法であって、
支持基板上に電子素子封止層を形成する工程、
前記電子素子を、前記電子素子と前記電子素子封止層の第2の層とが対向するように載置して、前記第2の層中に前記電子素子を埋め込む工程、
前記電子素子封止層を加熱硬化させて前記電子素子を封止する工程、および
前記支持基板を電子素子封止用フィルムから剥離する工程、
を含むことを特徴とするものである。
また、本発明の別の実施態様による電子部品の製造方法は、
常温で液状のエポキシ樹脂(A1)と、3官能以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)と、無機充填材(C1)と、エポキシ樹脂硬化剤(D1)と、を含んでなる第1の熱硬化性樹脂組成物からなる第1の層のフィルムを準備する工程、
常温で液状のエポキシ樹脂(A2)と、結晶性エポキシ樹脂(B2)と、無機充填材(C2)と、エポキシ樹脂硬化剤(D2)と、を含んでなる第2の熱硬化性樹脂組成物からなる第2の層のフィルムを準備する工程、
支持基板上に、前記第1の層および前記第2の層をその順で積層して、電子素子封止層を形成する工程、
前記電子素子を、前記電子素子と前記電子素子封止層の第2の層とが対向するように載置して、前記第2の層中に前記電子素子を埋め込む工程、
前記電子素子封止層を加熱硬化させて前記電子素子を封止する工程、および
前記支持基板を電子素子封止用フィルムから剥離する工程、
を含むことを特徴とするものである。
本発明の実施態様においては、上記方法は、さらに、前記電子素子が埋め込まれた前記第2の層の表面に、絶縁層および導体層を形成する工程を含んでいてもよい。
また、本発明の別の実施態様によるフィルムは、上記した電子部品の製造方法において第1の層として使用されるフィルムであって、
常温で液状のエポキシ樹脂(A1)と、3官能以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)と、無機充填材(C1)と、エポキシ樹脂硬化剤(D1)と、を含んでなる第1の熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするものである。
また、本発明の別の実施態様によるフィルムは、上記した電子部品の製造方法において第2の層として使用されるフィルムであって、
常温で液状のエポキシ樹脂(A2)と、結晶性エポキシ樹脂(B2)と、無機充填材(C2)と、エポキシ樹脂硬化剤(D2)と、を含んでなる第2の熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするものである。
本発明によれば、上記の電子素子封止用フィルムを用いて電子素子を封止した電子物品も提供される。
本発明においては、電子素子封止用フィルムを、反り抑制を考慮した第1の層と、電子素子の埋め込み易さ(成型性)を考慮した第2の層とを少なくとも備える多層構造としたことにより、Molding First FO−WLP等のようなサブストレート基板が存在しないパッケージにおいても、反りのない平坦なパッケージが得られ、且つ広い面積や複雑な電子素子の配置であっても成型性にも優れる電子素子封止用フィルムを実現することができる。また、本発明によれば、第1の層を備えることにより高い剛性を有し、第2の層を備えることによりハンドリング性にも優れる電子素子封止用フィルムを実現することができる。
本発明による電子素子封止用フィルムの一実施形態を示した断面模式図。 本発明による電子素子封止用フィルムの他の実施形態を示した断面模式図。 本発明による電子素子封止用フィルムの他の実施形態を示した断面模式図。 電子素子封止層の形成方法を説明するための工程概略図。 電子素子封止層の形成方法を説明するための工程概略図。 電子素子の載置および埋込方法を説明するための工程概略図。 本発明による電子部品の製造方法の他の実施形態の概略を示した模式図。 本発明による電子部品の製造方法の他の実施形態の概略を示した模式図。
[電子素子封止用フィルム]
本発明による電子素子封止用フィルムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明による電子素子封止用フィルムの一実施形態を示した断面模式図であり、図2および3は、電子素子封止用フィルムの他の実施形態を示した断面模式図である。本発明による電子素子封止用フィルム10は、図1に示すように、第1の層1と、第1の層1上に設けられた第2の層2の少なくとも2層を備え、多層構造を有している。電子素子封止用フィルム10は、第1の層1と第2の層2とを必須として含めばよく、図2に示すように第1の層1または第2の層2が設けられた面に支持フィルム3を備えていてもよい。また、電子素子封止用フィルムの他の実施形態として、図3に示すように、第2の層2、第1の層1、および第2の層2を順に備えた3層構造の多層構造を有していてもよい。
上記した第1の層は、後記するような第1の熱硬化性樹脂組成物からなるものであり、第2の層は、後記するような第2の熱硬化性樹脂組成物からなるものである。下記に詳細に説明するように、本発明においては、電子素子封止用フィルムの第2の層に半導体チップ等の電子素子を埋め込み、封止フィルムを熱硬化させることにより、電子素子を封止したパッケージとすることができる。先ず、第1および第2の層を構成する各熱硬化性樹脂組成物について説明する。
<第1の熱硬化性樹脂組成物>
電子素子封止用フィルムの第1の層を構成する第1の熱硬化性樹脂組成物は、常温で液状のエポキシ樹脂(A1)と、3官能以上のエポキシ基を有する常温で固形のエポキシ樹脂(B1)と、無機充填材(C1)と、エポキシ樹脂硬化剤(D1)と、を含む。本明細書において、「常温」とは、電子素子封止用フィルムを裁断、設置する作業環境の温度を意味し、具体的には、10〜40℃の範囲を示すものとする。なお、10〜40℃の範囲において、エポキシ樹脂が液状と固形状の両方の状態で存在する場合は、液状と判断するものとする。
第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれる常温で液状のエポキシ樹脂(A1)は、硬化性成分として機能するものであり、1分子内にエポキシ基を2個以上有する常温で液状のエポキシ樹脂であれば、特に制限なく使用することができる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
常温で液状のエポキシ樹脂(A1)は、第1の熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分全体(即ち、A1成分とB1成分とD1成分との合計)に対して、15〜40質量%含まれることが好ましく、より好ましくは20〜35質量%である。液状のエポキシ樹脂(A1)の含有率は、電子素子封止用フィルムを裁断や設置する際のハンドリングに影響する。液状のエポキシ樹脂(A1)の含有率を15%以上とすることで、柔軟性に優れ、裁断時の粉落ちによる汚染や持ち運ぶ際に割れるなどの問題を抑制できる。また、液状のエポキシ樹脂(A1)の含有率を40%以下とすることで、電子素子封止用フィルムの粘性の増大を抑え、表面への異物の付着、封止加工時のボイド残存、支持フィルムの剥離不良などの問題を抑制できる。
第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれる3官能以上のエポキシ基を有する常温で固形のエポキシ樹脂(B1)は、1分子にエポキシ基を3つ以上有する常温で固形のエポキシ樹脂を用いる。このような3官能以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いることにより、第2の熱硬化性樹脂組成物よりも低熱量で熱硬化反応し、第2の熱硬化性樹脂組成物の熱硬化反応における収縮や分子運動による膨張を抑止することができる。また、第1の熱硬化性樹脂組成物の熱硬化物のガラス転移温度が高くなるため、熱硬化後の冷却に伴う収縮も抑制することができる。更には、固形のエポキシ樹脂を含むため第1の層の流動性は小さく(溶融粘度が大きく)、電子素子を第2の層に埋設する際に第1の層が変形せずに封止後のフィルム面を平坦に維持することができる。その結果、封止フィルムを構成する第1の層が、熱硬化後の封止物(パッケージ)の剛性や寸法安定性を向上させることができるものと考えられる。また、封止材の変形を抑制するためには、低熱量で、分子運動を抑えながら硬化反応を進めることが望ましいと考えられる。1分子中のエポキシ基の官能基数は多いほど反応が速やかに進行する点で好ましいと言える。
3官能以上のエポキシ基を有する常温で固形のエポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の他、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能型フェノールエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンやトリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルフェニルエーテル型エポキシ樹脂、トリグリシジルアミノフェノールのようなグリシジルアミン型かつグリシジルフェニルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。さらにはこれらのエポキシ樹脂を変性したエポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂をブロム化したブロム化エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定はされない。また、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的には、三菱化学株式会社製のjER152(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学株式会社製jER154(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、jER157S65(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂)、jER157S70(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂)、jER1032S50(3官能フェノール型エポキシ樹脂)、jER1032H60(3官能フェノール型エポキシ樹脂)、jER1031S(4官能フェノール型エポキシ樹脂)、DIC株式会社製EXA4700(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社製NC−7000、NC−7300L(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬株式会社EPPN−502H(トリスフェノールエポキシ樹脂)等のフェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、DIC株式会社製エピクロンHP−7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製NC−3000H(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、DIC株式会社製エピクロンN660、エピクロンN690、日本化薬株式会社製EOCN−104S等のノボラック型エポキシ樹脂、日産化学工業株式会社製TEPIC等のトリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、日本化薬株式会社製NC−3000L(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製のEPPN−501H(トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂)、等が挙げられる。
3官能以上のエポキシ基を有する常温で固形のエポキシ樹脂(B1)は、第1の熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分全体(即ち、A1成分とB1成分とD1成分との合計)に対して、45〜70質量%含まれることが好ましく、より好ましくは50〜65質量%である。
第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれる無機充填材(C1)は封止材の硬化後の寸法精度等の信頼性を向上させる機能を有する。無機充填材としては、従来公知のものを制限なく使用することができ、例えばシリカ、アルミナ、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。また、上記した樹脂成分と無機充填材の親和性を上げるため、第1の熱硬化性樹脂組成物には、無機物と反応する官能基および有機官能基と反応する官能基を有するカップリング剤成分が含まれていてもよい。また、カップリング剤成分が含まれることにより、電子素子封止用フィルムとしてのハンドリング向上し、樹脂と無機充填材の界面におけるクラック発生が改善される。このようなカップリング剤としては、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。これらのうちでも、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤に含有される有機基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、ポリスルフィド基、イソシアネート基などが挙げられる。シランカップリング剤として市販されているものを使用することができ、例えば、KA−1003、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−6123、KBE−585、KBM−703、KBM−802、KBM−803、KBE−846、KBE−9007(いずれも商品名;信越シリコーン社製)などを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
無機充填材の形状は、真球状に近いほど上記したエポキシ樹脂等への充填性が向上するため、表面処理やシランカップリング剤等の添加剤を使用することなく、樹脂組成物中有の無機充填材(C1)の含有量を増やすことができる。本発明においては、上記したように、第2の層が電子素子の埋め込みを担う層として機能するため、第1の硬化性樹脂組成物の粘度上昇等をあまり考慮することなく、無機充填材を配合することができる。好ましい無機充填材(C1)の配合量は、第1の熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分全体(即ち、A1成分とB1成分とC1成分とD1成分との合計)に対して80質量%以上であり、より好ましくは85〜95質量%である。
無機充填材としては、平均粒子径が、好ましくは0.01〜15μm、より好ましくは0.02〜12μm、特に好ましくは0.03〜10μmのものを使用することが好ましい。なお、本明細書中、平均粒子径は、電子顕微鏡で無作為に選んだ無機充填材20個の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径とする。
第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂硬化剤(D1)は、上記したエポキシ樹脂(A1およびA2)と反応する官能基を有するものである。このような硬化剤成分としては、フェノール樹脂、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂等が挙げられ、これらのうち1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、クレゾール/ナフトール樹脂、ポリビニルフェノール類、フェノール/ナフトール樹脂、α−ナフトール骨格含有フェノール樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂等の従来公知のものを、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリカルボン酸およびその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物およびその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物等の他、カルボン酸末端イミド樹脂等のカルボン酸末端を有する樹脂が挙げられる。
シアネートエステル樹脂は、一分子中に2個以上のシアネートエステル基(−OCN)を有する化合物である。シアネートエステル樹脂は、従来公知のものをいずれも使用することができる。シアネートエステル樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、アルキルフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂が挙げられる。また、一部がトリアジン化したプレポリマーであってもよい。
活性エステル樹脂は、一分子中に2個以上の活性エステル基を有する樹脂である。活性エステル樹脂は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。
硬化剤(D1)として、上記した以外にも脂環式オレフィン重合体を用いることができる。好適に使用できる脂環式オレフィン重合体としては、(1)カルボキシル基およびカルボン酸無水物基(以下、「カルボキシル基等」と称する)のいずれか少なくとも1種を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体と共に重合したもの、(2)カルボキシル基等を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体と共に重合して得られる(共)重合体の芳香環部分を水素化したもの、(3)カルボキシル基等を有しない脂環式オレフィンと、カルボキシル基等を有する単量体とを共重合したもの、(4)カルボキシル基等を有しない芳香族オレフィンと、カルボキシル基等を有する単量体とを共重合して得られる共重合体の芳香環部分を水素化したもの、(5)カルボキシル基等を有しない脂環式オレフィン重合体にカルボキシル基等を有する化合物を変性反応により導入したもの、または(6)前記(1)〜(5)のようにして得られるカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン重合体のカルボン酸エステル基を、例えば加水分解等によりカルボキシル基に変換したもの等が挙げられる。
上記した硬化剤のなかでも、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂、脂環式オレフィン重合体が好ましく、フェノール樹脂がより好ましい。
硬化剤(D1)は、上記したエポキシ基等の官能基(硬化反応可能な官能基)と、当該官能基と反応し得る硬化剤成分の官能基との割合(硬化剤成分の官能基の数/硬化性成分の官能基の数:当量比)が0.2〜5となるような割合で含まれることが好ましい。当量比を上記の範囲とすることにより、より一層、剛性や寸法精度に優れた封止フィルムを得ることができる。
第1の熱硬化性樹脂組成物には、上記した成分以外の成分が含まれていてもよく、例えば、硬化促進剤(E1)が含まれていてもよい。硬化促進剤成分はエポキシ樹脂の硬化反応を促進させるものであり、硬化促進剤(E1)が含まれることにより、低熱量でエポキシ樹脂の硬化反応が速やかに進行するため、封止材の変形を抑制することができる。
硬化促進剤(E1)としては、イミダゾールおよびその誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩およびエポキシアダクトのいずれか少なくとも1種;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート等の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物、金属触媒等の従来公知の硬化促進剤が挙げられ、これら1種を単独または2種以上混合して用いることができる。
硬化促進剤(E1)は必須ではないが、特に硬化反応を促進したい場合には、上記した硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部の範囲で用いることができる。硬化促進剤成分として金属触媒を使用する場合、その含有量は、硬化性成分100質量部に対して金属換算で10〜550ppmが好ましく、25〜200ppmが好ましい。
また、任意成分として、着色剤やフィルム性付与ポリマー成分などが含まれていてもよい。着色剤としては、有機または無機の顔料および染料を1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中でも電磁波や赤外線遮蔽性の点から黒色顔料が好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、ペリレンブラック、酸化鉄、アニリンブラック、活性炭等が用いられるが、これらに限定されることはない。半導体装置等の誤作動防止の観点からはカーボンブラックが特に好ましい。また、カーボンブラックに代えて、赤、青、緑、黄色などの顔料を混合し、黒色またはそれに近い黒色系の色とすることもできる。
また、本発明においては、本発明の効果を犠牲にしない範囲で、フィルム形成性を付与するためにフィルム性付与ポリマーが第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれていてもよい。例えば、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂や、エピクロルヒドリンと各種2官能フェノール化合物の重合物であるフェノキシ樹脂またはその骨格に存在するヒドロキシエーテル部の水酸基を各種酸無水物や酸クロリドを使用してエステル化したフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ブロック共重合体等が挙げられる。これらのポリマーは1種を単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。フィルム(ないしシート)形状を維持できるためには、これらポリマーの重量平均分子量(Mw)は、通常2×10以上であり、2×10〜3×10であることが好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により、下記測定装置、測定条件にて測定できる。
測定装置:Waters製「Waters 2695」
検出器:Waters製「Waters2414」、RI(示差屈折率計)
カラム:Waters製「HSPgel Column,HR MB−L,3μm,6mm×150mm」×2+Waters製「HSPgel Column,HR1,3μm,6mm×150mm」×2
測定条件:
カラム温度:40℃
RI検出器設定温度:35℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/分
サンプル量:10μl
サンプル濃度:0.7wt%
ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化することで得られる。上記アルデヒドとしては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等が挙げられる。
フェノキシ樹脂の具体例としては東都化成株式会社製FX280、FX293、三菱化学株式会社製YX8100、YL6954、YL6974等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、積水化学工業株式会社製エスレックKSシリーズ、ポリアミド樹脂としては日立化成株式会社製KS5000シリーズ、日本化薬株式会社製BPシリーズ等が挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂としては日立化成株式会社製KS9000シリーズ等が挙げられる。
熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は、フルオレン骨格を有する場合、高いガラス転移点を有し耐熱性に優れるため、半固形または固形エポキシ樹脂による低い熱膨張率を維持すると共にそのガラス転移点を維持し、得られる硬化皮膜は低い熱膨張率と高いガラス転移点をバランス良く併せ有するものとなる。
フィルム性付与ポリマー成分は、上記した成分を構成するモノマーがブロック共重合したものであってもよい。ブロック共重合体とは、性質の異なる二種類以上のポリマーが、共有結合で繋がり長い連鎖になった分子構造の共重合体のことである。ブロック共重合体としてはA−B−A型またはA−B−A’型ブロック共重合体が好ましい。A−B−A型およびA−B−A’型ブロック共重合体のうち、中央のBがソフトブロックでありガラス転移温度(Tg)が低く、その両外側AまたはA’がハードブロックでありガラス転移温度(Tg)が中央のBブロックよりも高いポリマー単位により構成されているものが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量測定(DSC)により測定される。AとA’は相互に異なるポリマー単位でも同一のポリマー単位でも良い。
また、A−B−A型およびA−B−A’型ブロック共重合体のうち、AまたはA’が、Tgが50℃以上のポリマー単位からなり、Bのガラス転移温度(Tg)が、AまたはA’のTg以下であるポリマー単位からなるブロック共重合体がさらに好ましい。また、A−B−A型およびA−B−A’型ブロック共重合体のうち、AまたはA’が、後記する硬化性成分との相溶性が高いものが好ましく、Bが硬化性成分との相溶性が低いものが好ましい。このように、両端のブロックがマトリックス(硬化性成分)に相溶であり、中央のブロックがマトリックス(硬化性成分)に不相溶であるブロック共重合体とすることで、マトリックス中において特異的な構造を示しやすくなると考えられる。
上記した種々のポリマーのなかでも、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、フルオレン骨格を有する熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ブロック共重合体が好ましい。
さらに、フィルム性付与ポリマーとして、上記したエポキシ樹脂と反応し得るフィルム性付与ポリマー成分が含まれていてもよい。このような反応性フィルム性付与ポリマーとしては、カルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂を用いると好ましい。特に、カルボキシル基含有樹脂を用いると、フィルム形成性を付与しつつ、封止材に保護膜としての機能を付与できる。
カルボキシル基含有樹脂としては、以下の(1)〜(7)の樹脂を好適に使用することができる。
(1)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基を含有する、ジアルコール化合物、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(2)ジイソシアネートと、カルボキシル基含有ジアルコール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂、
(3)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂、
(4)2官能エポキシ樹脂または2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、
(5)エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂を開環させ、生成した水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
(6)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物、すなわちポリフェノール化合物を、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドと反応させて得られるポリアルコール樹脂等の反応生成物に、多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、および
(7)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物、すなわちポリフェノール化合物を、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドと反応させて得られるポリアルコール樹脂等の反応生成物に、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に、更に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、
等の樹脂を好適に使用することができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を意味する。
反応性フィルム性付与ポリマーの重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的には2×10〜1.5×10の範囲であることが好ましく、より好ましくは3×10〜1×10の範囲であるが、これら範囲に限定されるものではない。
第1の熱硬化性樹脂組成物に配合するフィルム性付与ポリマー成分の割合は、特に限定されるものではなく、第1の熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して10〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。
第1の熱硬化性樹脂組成物には、上記した成分以外に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。各種添加剤としては、レベリング剤、可塑剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤、連鎖移動剤、剥離剤などが挙げられる。
<第2の熱可塑性樹脂組成物>
次に、本発明による電子素子封止用フィルムの第2の層を構成する第2の熱硬化性樹脂組成物について説明する。第2の熱硬化性樹脂組成物は、常温で液状のエポキシ樹脂(A2)と、常温で固形のエポキシ樹脂(B2)と、無機充填材(C2)と、エポキシ樹脂硬化剤(D2)とを含む。
常温で液状のエポキシ樹脂(A2)としては、上記した第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれる常温で液状のエポキシ樹脂(A1)と同じものを使用できる。そのため、具体的な説明は省略する。
第2の熱硬化性樹脂組成物は、常温で液状のエポキシ樹脂(A2)を、第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれる常温で液状のエポキシ樹脂(A1)の含有量よりも2〜30質量%多く含むことが好ましく、より具体的には、第2の熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分全体(即ち、A2成分とB2成分とD2成分との合計)に対して、17〜60質量%含まれることが好ましく、より好ましくは22〜50質量%である。第2の熱硬化性樹脂組成物の液状のエポキシ樹脂(A2)は第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれる液状のエポキシ樹脂(A1)と同様に電子素子封止用フィルムを裁断や設置する際のハンドリングに影響する。また、第2の熱硬化性樹脂組成物からなる第2の層には電子素子が埋め込まれることから、第1の熱硬化性樹脂組成物よりも高い樹脂流動性を与えるため、2〜30質量%多く含まれることが好ましい。
本発明において、第2の熱硬化性樹脂組成物に含まれる結晶性エポキシ樹脂(B2)とは、結晶性の高いエポキシ樹脂を意味し、融点以下の温度では、高分子鎖が規則正しく配列し、固形樹脂でありながらも、溶融時には液状樹脂並みの低粘度となる熱硬化性のエポキシ樹脂をいう。ところで、第2の層には、上記したように半導体チップ等の電子素子を埋め込む役割を担うため、電子素子の埋め込み易さ(成型性)と硬化収縮等の変形とを考慮する必要があると考えられる。結晶性エポキシ樹脂は、固形であっても、特定の温度、特定の圧力下において、液状樹脂並みの低粘度となる特徴を有しているため、常温では電子素子封止用フィルムの粘性の増大を抑え、表面への異物の付着、封止加工時のボイド残存、支持フィルムの剥離不良などの問題を抑制でき、電子素子を第2の層に埋め込む際には流動性が増し、封止加工性が良好となる。また、結晶性エポキシ樹脂は溶融するまで熱硬化反応が抑制されることから、第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれる常温で固形のエポキシ樹脂(B1)に比べて熱硬化性が低く、第1の層よりも第2の層の熱硬化を遅くすることができものと推察される。
常温で固形の結晶性エポキシ樹脂としては、ビフェニル構造、スルフィド構造、フェニレン構造、ナフタレン構造、ビスフェノール構造、スチルベン構造、アントラセン構造等を有する結晶性エポキシ樹脂を用いることができる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、三菱化学株式会社製jER YX4000(ビフェニル骨格を有する結晶性エポキシ樹脂)、jER YX4000H((ビフェニル骨格を有する結晶性エポキシ樹脂)、jER YL6121H(ビフェニル骨格を有する結晶性エポキシ樹脂)、jER YL6640(ビフェニル骨格を有する結晶性エポキシ樹脂)、jER YL6677(ビフェニル骨格を有する結晶性エポキシ樹脂)、東都化成株式会社製エポトート YSLV−120TE(ジフェニルスルフィド骨格を有するエポキシ樹脂)、東都化成株式会社製エポトート YDC−1312(フェニレン骨格を有するエポキシ樹脂)、DIC株式会社製EPICLON HP−4032(ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂)、EPICLON HP−4032D(ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂)、EPICLON HP−4700(ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂)、東都化成株式会社製エポトート YSLV−90C(トリグリシジルイソシアヌレート)、日産化成工業株式会社製TEPIC−S(トリグリシジルイソシアヌレート)、日本化薬株式会社製NC−3000L(ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、NC−7300L(ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、封止加工性および反り抑制の観点から、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、およびナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を好適に使用することができる。
常温で固形の結晶性エポキシ樹脂(B2)は、第2の熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分全体(即ち、A2成分とB2成分とD2成分との合計)に対して、30〜70質量%含まれることが好ましく、より好ましくは40〜65質量%である。
第2の熱硬化性樹脂組成物に含まれる無機充填材(C2)、およびエポキシ樹脂硬化剤(D2)としては、上記した第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれる無機充填材(C1)、およびエポキシ樹脂硬化剤(D1)と同様のものを使用できる。そのため、具体的な説明は省略する。
第2の熱硬化性樹脂組成物は、上記した成分以外の任意成分が含まれていてもよく、第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれていてもよい任意の成分を同様に含有させてもよい。特に、第2の層では、電子素子を埋め込む役割を担うことから、電子素子との密着性が向上するような任意の成分を第2の熱硬化性樹脂組成物に配合してもよい。例えば、上記したフィルム性付与ポリマーとして、説明した熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は水酸基を有するため、半導体チップに対して良好な密着性を示すことから、第2の熱硬化性樹脂組成物に配合する好ましい成分と言える。しかし、その一方で、分子量が大きい成分は組成物の流動性が低下し、電子素子の埋め込みを阻害する可能性もあるため、その含有率は、第2の熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分全体(即ち、A2成分とB2成分とD2成分との合計)に対して10質量%以下であることが適当である。
また、半導体チップ等の電子素子に対する接着性、密着性を向上させるため、第2の熱硬化性樹脂組成物には、無機物と反応する官能基および有機官能基と反応する官能基を有するカップリング剤成分が含まれていてもよい。また、カップリング剤成分が含まれることにより、半導体用封止材を硬化して得られる保護膜の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上させることができる。このようなカップリング剤としては、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。これらのうちでも、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、第1の熱硬化性樹脂組成物において任意成分として含有させてもよいシランカップリング剤と同様のものを使用できるため、その説明は省略する。
[電子素子封止用フィルムの製造方法]
本発明による電子素子封止用フィルムは、先ず上記した第1の層を形成した後に、第1の層の表面に第2の層を形成してもよいし、第2の層を形成した後に、第2の層の表面に第1の層を形成してもよいし、あるいは、第1の層と第2の層とを別個に形成し、両者を貼り合わせて電子素子封止用フィルムを作製してもよい。
第1の層は、上記各成分を適当な割合で混合して第1の熱硬化性樹脂組成物を調製し、得られた第1の熱硬化性樹脂組成物を支持フィルム上に塗布して製膜することにより形成できる。第1の熱硬化性樹脂組成物は、加熱により低粘度化させて支持フィルム上に塗布するか、あるいは予め溶媒で希釈して支持フィルムに塗布した後、加熱により溶媒を除去することで形成してしてもよい。溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ヘプタンなどが挙げられる。
また、製膜方法としては、従来公知の方法を適用することができ、平板プレス法、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーターなどの公知の手段を採用できる。塗布した後、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して、第1の層を形成する。乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等を用いて行うことができる。
本発明による電子素子封止用フィルムを熱硬化させて封止物(即ち、電子部品パッケージ)を製造した際の剛性と平坦性を担う役割を有する第1の層は、厚みが10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30〜150μmであり、特に好ましくは、50〜100μmである。第1の層の厚みは、第1の熱硬化性樹脂組成物の塗工量を調整することにより適宜決定することができる。
支持フィルムとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、さらには離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などが挙げられる。なお、支持フィルムの表面には、マッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。また、支持フィルムが金属箔である場合は、支持フィルムを剥離せず、エッチングやめっきにより回路を形成することや電子部品の放熱層とすることができる。さらに、金属箔により形成した回路に新たに電子素子を設置することで、多層のパッケージ構造とすることができる。
次いで、上記各成分を適当な配合割合で混合して第2の熱硬化性樹脂組成物を調製し、得られた第2の熱硬化性樹脂組成物を、第1の層の表面に塗布して製膜することにより形成できる。製膜は、上記と同様の方法を採用することができる。また、上記したように、第2の層を形成した後に、第2の層の表面に第1の層を形成する場合は、支持フィルム上に第2の熱硬化性樹脂組成物を塗布して製膜して第2の層を形成し、次いで、第1の熱硬化性樹脂組成物を第2の層の表面に塗布して製膜することにより形成できる。また、第1の層と第2の層とを別個に形成し、両者を貼り合わせて電子素子封止第1の層と第2の層とを貼り合わせて電子素子封止用フィルムとする場合には、第2の熱硬化性樹脂組成物と第1の熱硬化性樹脂組成物層を個別に支持フィルム上に塗布して製膜して形成すればよい。
第2の層の厚みは、封止する電子素子の厚みよりも厚くする必要がある。電子素子としては、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)、SiGe等の半導体チップの他、コンデンサや抵抗器チップ等の電子素子などが挙げられる。例えば、Molding First FO−WLPに使用される半導体チップの厚みは、概ね50〜350μm程度であることから、第2の層の厚みは100〜400μmとすることが好ましい。
上記した支持フィルム3は、第1の層および第2の層を形成した後に剥離してもよいが、図2に示したように支持フィルム3としてそのまま使用することでハンドリングを向上することができる。また、第1の層および第2の層の支持フィルム3のない面に保護材(図示せず)を貼り合せてもよく、電子部品の製造工程における打痕や異物の付着といった不具合を抑制することができる。保護材は上記した支持フィルムと同様の材料を用いることができ、ロールラミネータ等で貼り合せる。
[電子素子封止用フィルムを用いた電子部品の製造方法]
本発明による電子素子封止用フィルムを用いた電子部品の製造方法について、電子素子封止層の形成方法、電子素子の載置および埋込方法の順に分けて説明する。図4および図5については電子素子封止層の形成方法の工程を、図6については電子素子の載置および埋込方法の工程を説明する概略図である。
<電子素子封止層の形成方法>
先ず、支持基板30の表面に、粘着剥離層40を形成する(図4a)。ここで、支持基板30は例えば厚み1〜5mmのアルミ板、ステンレス板、ガラス板等であり、特に低熱膨張性に優れる材質であることが好ましく、粘着剥離層40は、剥離性を有する粘着材料であり、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂等や、加熱や感光により剥離可能となる材料を、支持基板30上に塗布またはラミネートして形成することができる。このような加熱や感光により剥離可能となる材料としては市販のものを使用してもよく、例えば、加熱により剥離可能となるシート材料であるリバアルファ(日東電工株式会社製)、や感光により剥離可能となるセルファー(積水化学工業株式会社製)を挙げることができる。
次に、図1または2に示したような電子素子封止用フィルム10を、第1の層1が粘着剥離層40に対向するように、ロールラミネータ、真空ラミネータ等で粘着剥離層40上にラミネートし、電子素子封止層4を形成する(図4b)。なお、電子素子封止用フィルム10が支持フィルムを有する場合は、電子素子封止層4を形成した後に剥離してもよい(図4c)。ここでのラミネート温度は20〜130℃であることが好ましい。
なお、上記した実施形態においては、図1または図2に示したような第1の層1と第2の層2とが積層された電子素子封止用フィルム10を粘着剥離層40上に貼り合わせて、電子素子封止層を一括形成する方法であるが、図5に示すように、先ず、支持フィルム3’上に第1の層1を形成した積層フィルム(図5a)、および、支持フィルム3’’上に第2の層2を形成した積層フィルム(図5b)を準備しておき、粘着剥離層40上に積層フィルムの第1の層1をラミネートし、その後に支持フィルム3’を剥離し(図5c)、続いて第1の層1上に、第2の層2が対向するように積層フィルムをラミネートし、その後に支持フィルム3’’を剥離して(図5d)、電子素子封止層4を形成してもよい。このように第1の層1と第2の層2を順に積層する場合には、第1の層1を形成した後に130℃以下、30分以内の加熱処理を行ってもよい。このような加熱処理を行うことで、第1の層1の溶融粘度が増加し、後述する第2の層2に半導体チップを埋め込む際に、第1の層1が流動せず加工後に平坦性が向上する。
<電子素子の載置および埋込方法>
上記のように形成した電子素子封止層(図4b)の支持フィルム3を剥離し、第2の剥離層を露出させる(図5においては、(d)の状態)。次いで、所定の大きさにダイシングした半導体チップ20を、半導体チップ20の回路形成されていない面が第2の層2に対向するように載置する(図6a)。
続いて、電子素子封止層4に半導体チップ20を載置した状態で加熱加圧成型し、第2の層2の中に半導体チップを埋め込む(図6b)。加熱加圧成型は、真空ラミネータ、真空プレス等の公知の方法を用いることができる。加熱加圧成型時の温度は60〜130℃、圧力は20kg/cm以下、成型時間は180秒以内であることが好ましい。続いて、電子素子封止層を熱硬化させて封止する。熱硬化は100〜200℃で30〜180分間程度行う。
なお、半導体チップ20を第2の層2上に載置する際には、半導体チップ20が所定の位置に固定できるよう、第2の層2が軟化する50℃以上で載置するか、ダイボンディングペーストまたはフィルムを用いる方法がある。また、上述した加熱により剥離可能となるシート材料や微粘着シート材料(例えばPW/TRMシリーズ(日東電工株式会社製)の粘着面に半導体チップの回路形成面を対向するように載置し、半導体チップの回路形成していない面と電子素子封止層4の第2の層2が対向するように設置して加熱加圧成する方法もある。
その後、加熱硬化した電子素子封止層4が常温となるまで冷却し、半導体チップ20の載置および埋込時に剥離可能となるシート材料や微粘着シート材料を用いた場合は、該シート材を剥離することで、第2の層2の中に半導体チップが埋設され、半導体チップ20の回路形成面が露出した構造の擬似ウエハ5が得られる。
次いで、半導体チップ20の回路形成面が露出している第2の層2の表面に、絶縁層50および導体層60を形成する(図6d)。絶縁層50および導体層60は従来公知の方法により形成することができる。例えば、半導体チップ20の回路形成面が露出している第2の層2の表面にスピンコート法等を用いて再配線用の絶縁樹脂を塗布した後にプリベークを行い、再配線用の絶縁層50を形成する。次に、半導体チップ20の接続パッドを開口させるために、フォトリソグラフィー法等を用いて、絶縁層50にパターンを形成して加熱処理(キュア)を行う。再配線用の絶縁層50を形成する材料としては、特に限定されないが、耐熱性及び信頼性の観点から、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサイド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などが用いられる。続いて、絶縁層50の全面に給電層(図示せず)をスパッタ等の方法で形成し、次いで、給電層の上にレジスト層(図示せず)を形成し、所定のパターンに露光、現像した後、電解銅メッキにてビアおよび導体層60(再配線回路)を形成する。導電層60を形成した後、レジスト層(図示せず)を剥離し、給電層(図示せず)をエッチングする。
導電層60上に設けたランド(図示せず)にフラックスを塗布し、半田ボールを搭載したのち加熱溶融することにより、半田ボール(図示せず)をランドに取り付ける。また、導電層60および半田ボール(図示せず)の一部を覆うようにソルダーレジスト層(図示せず)を形成してもよい。その後、所望により、得られた半導体パッケージをダイシング等により個片化し、支持基板30から剥離することで、Molding First FO−WLP等のようなサブストレート基板が存在しない半導体パッケージを得ることができる。
本発明による電子部品の製造方法の別の実施形態においては、図7に示すように、表面に粘着剥離層40が形成された支持基板30上に半導体チップ20を載置し(図7(a))、図1または図2に示したような電子素子封止用フィルム10の第2の層2が、半導体チップ20の回路形成面側と対向するように貼り合わせた後(図7(b))、支持フィルム3を剥離してもよい。なお、支持フィルム3が金属箔である場合は金属箔を剥離せずに残しておき、上記した回路形成や放熱層に用いてもよい(図示せず)。
例えば、支持フィルムとして金属箔3aを用いて回路形成をする場合には、図4(c)において説明したような支持フィルムの剥離は行わずに、個片化を行う前に、図8(a)に示すように支持基板30を剥離し、金属箔3aをエッチングして回路3bを形成してもよい(図8(b))。この場合、更に、第1の層と第2の層とを貫通する孔を形成し、孔の内壁表面に導体を形成することにより、回路3bと導体層60とを繋ぐ導体部(図示せず)を設けてもよい(図8(c))。
本発明の電子素子封止用フィルムは、電子素子を封止した面をベースとして回路形成を行なうパッケージを製造する用途に好適に用いられるが、それ以外の用途において用いてもよい。
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
<第1の層の形成>
下記表1中に示した配合に従い、各成分を配合し、ロールミルにて混練した後、メチルエチルケトンを適量加えて粘度が約20Psになるようにして、第1の熱硬化性樹脂組成物を調製した。次いで、得られた各組成物を、剥離処理したPETフィルム(東洋紡株式会社製 TN200、厚み38μm)の剥離処理面にバーコーターを用いて約150μmの膜厚となるように塗布した。続いて、塗布膜を、熱風循環式乾燥炉を用いて100℃で15分間加熱乾燥を行い、その後冷却することにより1−I〜1−Vの5種類の第1の層(フィルム)を作製した。1−I〜1−Vのそれぞれの第1の層の厚みをマイクロメーターにより測定したところ、いずれも約95〜105μmであった。
Figure 2021141261
なお、表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
828:三菱化学株式会社製 2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂、828(常温液体、エポキシ当量190.0g/eq)
NC−3000L:日本化薬株式会社製 ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂、NC−3000−L(3官能以上、軟化点60℃、エポキシ当量270.0g/eq)
NC−7300L:日本化薬株式会社製 ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、NC−7300−L(3官能以上、軟化点63℃、エポキシ当量215.0g/eq)
EPPN−501H:日本化薬株式会社製 トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、EPPN−501H(3官能以上、軟化点55℃、エポキシ当量165.0g/eq)
157S70:DIC株式会社製 ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(3官能以上、軟化点70℃、エポキシ当量210.0g/eq)
1001:三菱化学株式会社製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂、1001(2官能、軟化点65℃、エポキシ当量475.0g/eq)
球状シリカ:アドマテックス株式会社製 球状シリカ(平均粒子径10μm)
HF−1:昭和化成株式会社製 ノボラック型フェノール HF−1(水酸基当量105.0g/eq)
1B2PZ:四国化成株式会社製1B2PZ 1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール
<第2の層の形成>
下記表2中に示した配合に従い、各成分を配合し、ロールミルにて混練した後、メチルエチルケトンを適量加えて粘度が約20Psになるようにして、第2の熱硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表2中の各成分の詳細は上記したとおりである。次いで、得られた各組成物を、上記で得られた1−I〜1−Vのそれぞれの第1の層の表面にバーコーターを用いて約200μmの膜厚となるように塗布した。続いて、塗布膜を、熱風循環式乾燥炉を用いて100℃で15分間加熱乾燥を行い、次いで剥離処理したPETフィルム(東洋紡株式会社製 TN200、厚み38μm)の剥離処理面を第2の層の表面に70℃でロールラミネートした。その後冷却することにより、1−I〜1−Vのそれぞれの第1の層に、2−I〜2−Vのそれぞれの第2の層が積層された25種類の電子素子封止用フィルムを作製した。第1の層と第2の層とが積層した厚みをそれぞれの電子素子封止用フィルムで測定したところ、いずれも約240〜260μmであった。
Figure 2021141261
<反り評価>
アルミ基板(厚み1mm、縦300mm×横300mm)上にリバアルファNo.3195V(日東電工株式会社製)をロールラミネータで23℃にてラミネートした。次いで、上記した電子素子封止用フィルムの第1の層に接するPETフィルムを剥離し、前記リバアルファNo.3195Vをラミネートしたアルミ基板のリバアルファと電子素子封止用フィルムの第1の層が対向するようにロールラミネータで23℃にてラミネートした。続いて、第2の層に接するPETフィルムを剥離し、厚み150μmのシリコンダミーチップを載置し、ニッコー・マテリアルズ製2ステージラミネーター(CVP−300)を用いて、シリコンゴムによる真空ラミネートゾーンは温度120℃、圧力11kg/cm、加圧時間25秒で、SUS板による平坦化ゾーンは温度120℃、圧力6kg/cm、加圧時間90秒にて加熱加圧成型を行った。次いで、熱風循環式乾燥炉により120℃で30分間の処理を行った後、昇温し、150℃で30分間の熱硬化処理を行った。その後、170℃のホットプレートを用いてアルミ基板側を加熱してリバアルファから硬化物を剥離し、評価用の封止物(実施例1〜8、比較例1〜17)を得た。
また、剥離処理したPETフィルム(東洋紡株式会社製 TN200、厚み38μm)の剥離処理面に、表2の2−Iの組成を有する第2の熱硬化性樹脂組成物をバーコーターを用いて約230μmの膜厚となるように塗布した。続いて、塗布膜を、熱風循環式乾燥炉を用いて100℃で15分間加熱乾燥を行い、その後冷却することにより2−Iからなる第2の層(フィルム)を作製した。2−Iからなる第2の層の厚みをマイクロメーターにより測定したところ、約152μmであった。
次いで、上記1−IVからなる第1の層(フィルム)を上記したリバアルファNo.3195Vをラミネートしたアルミ基板のリバアルファ上にロールラミネータで23℃にてラミネートし、120℃で10分の加熱処理を行った。続いて、1−IVの第1の層上のPETフィルムを剥離し、1−IVの第1の層上に上記した2−Iからなる第2の層(フィルム)をニッコー・マテリアルズ製2ステージラミネーター(CVP−300)を用いて、シリコンゴムによる真空ラミネートゾーンが温度90℃、圧力11kg/cm、加圧時間25秒にてラミネートした。その後、2−Iの第2の層上のPETフィルムを剥離し、厚み150μmのシリコンダミーチップを載置し、上記と同様の条件にて加熱加圧成型、熱硬化処理、リバアルファから硬化物を剥離し、評価用の封止物(実施例9)を得た。
上記のようにして得られた封止物を平坦な場所に置き、反り高さ(反った封止物の端部から平坦面までの距離)をスケールで測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:反り高さが1mm未満
○:反り高さが1mm以上、2mm未満
×:反り高さが2mm以上
評価結果は、下記の表3に示す通りであった。
<充填性(成型性)評価>
また、得られた封止物を目視にて観察し、第2の層へのダミーチップの埋まり具合を確認し、下記の基準により充填性の評価を行った。
◎:ダミーチップがボイドや空隙が無く、第2の層に平坦に埋め込まれている
○:ダミーチップがボイドや空隙が無く、第2の層に埋め込まれているが、第2の層の表面に僅かな凹凸が存在する
×:ダミーチップの埋め込み状態にボイドや空隙があり、第2の層に平坦に埋め込まれていない
評価結果は、下記の表3に示す通りであった。
Figure 2021141261
表3の評価結果からも明らかな通り、エポキシ樹脂として常温で固体の3官能以上のエポキシ樹脂を含む第1の層(1−I〜1−IV)と、エポキシ樹脂として常温で固体の結晶性エポキシ樹脂を含む第2の層(2−Iおよび2―II)とを組み合わせた積層封止フィルムを用いた場合のみ、ダミーチップの埋め込み性がよく成型性に優れるとともに、サブストレート基板が存在しない封止物であっても、反りが抑制され且つ平坦な封止物が得られることがわかる。

Claims (7)

  1. 第1の層と、前記第1の層上に設けられた第2の層の少なくとも2層を備えた電子素子封止用フィルムであって、
    前記第1の層が、常温で液状のエポキシ樹脂(A1)と、3官能以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)と、無機充填材(C1)と、エポキシ樹脂硬化剤(D1)と、を含んでなる第1の熱硬化性樹脂組成物からなり、
    前記第2の層が、常温で液状のエポキシ樹脂(A2)と、結晶性エポキシ樹脂(B2)と、無機充填材(C2)と、エポキシ樹脂硬化剤(D2)と、を含んでなる第2の熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする電子素子封止用フィルム。
  2. 請求項1に記載の電子素子封止用フィルムを用いた電子部品の製造方法であって、
    支持基板上に電子素子封止層を形成する工程、
    前記電子素子を、前記電子素子と前記電子素子封止層の第2の層とが対向するように載置して、前記第2の層中に前記電子素子を埋め込む工程、
    前記電子素子封止層を加熱硬化させて前記電子素子を封止する工程、および
    前記支持基板を電子素子封止用フィルムから剥離する工程、
    を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
  3. 常温で液状のエポキシ樹脂(A1)と、3官能以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)と、無機充填材(C1)と、エポキシ樹脂硬化剤(D1)と、を含んでなる第1の熱硬化性樹脂組成物からなる第1の層のフィルムを準備する工程、
    常温で液状のエポキシ樹脂(A2)と、結晶性エポキシ樹脂(B2)と、無機充填材(C2)と、エポキシ樹脂硬化剤(D2)と、を含んでなる第2の熱硬化性樹脂組成物からなる第2の層のフィルムを準備する工程、
    支持基板上に、前記第1の層および前記第2の層をその順で積層して、電子素子封止層を形成する工程、
    前記電子素子を、前記電子素子と前記電子素子封止層の第2の層とが対向するように載置して、前記第2の層中に前記電子素子を埋め込む工程、
    前記電子素子封止層を加熱硬化させて前記電子素子を封止する工程、および
    前記支持基板を電子素子封止用フィルムから剥離する工程、
    を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
  4. さらに、前記電子素子が埋め込まれた前記第2の層の表面に、絶縁層および導体層を形成する工程を含む請求項2または3に記載の製造方法。
  5. 請求項2または3に記載の電子部品の製造方法において第1の層として使用されるフィルムであって、
    常温で液状のエポキシ樹脂(A1)と、3官能以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)と、無機充填材(C1)と、エポキシ樹脂硬化剤(D1)と、を含んでなる第1の熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするフィルム。
  6. 請求項2または3に記載の電子部品の製造方法において第2の層として使用されるフィルムであって、
    常温で液状のエポキシ樹脂(A2)と、結晶性エポキシ樹脂(B2)と、無機充填材(C2)と、エポキシ樹脂硬化剤(D2)と、を含んでなる第2の熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするフィルム。
  7. 請求項1および請求項5または6のいずれか一項に記載の電子素子封止用フィルムを用いて電子素子を封止した電子部品。
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