以下、一実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態)
まず一実施の形態の半導体装置の半導体基板の主表面における各素子形成領域の配置について図1(A)、(B)を用いて説明する。
図1(A)、(B)を参照して、一実施の形態の半導体装置は、半導体チップCHPに含まれる半導体基板の主表面に、電源と、周辺回路と、トランジスタ領域と、Subcon領域とを有している。電源は半導体装置全体に電力を供給するためのものである。周辺回路はトランジスタ領域の周辺に形成される、当該半導体チップCHP内の回路と外部回路との電気的接続を担う回路である。
トランジスタ領域には高耐圧MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタと、CMOS(Complementary MOS)トランジスタとが形成されている。トランジスタ領域には1ビット単位の高耐圧MOSトランジスタとCMOSトランジスタとが複数配列されている。トランジスタ領域の1ビット中の高耐圧MOSトランジスタとしては、高耐圧素子を用いた出力ドライバ部として、たとえばローサイドドライバ、ハイサイドドライバ、レベルシフトが配列されている。またCMOSトランジスタは、低耐圧のロジック回路が集積された構成を有する。
Subcon領域は、半導体チップCHPの裏面の電位を表面側に取り出すためのコンタクト領域である。Subcon領域は半導体基板の主表面上の任意の位置に少なくとも1つ配置することができるが、半導体基板の主表面上のレイアウトをより簡素化する観点から、トランジスタ領域の外側、たとえば半導体基板の主表面の四隅の近傍に配置されることが好ましい。
Subcon領域には、サブコンタクトSBCと溝DTR1とを有している。サブコンタクトSBCは半導体基板の裏面側の電位を表面側に取り出すためのコンタクト領域である。サブコンタクトSBCはDTI構造をなす溝DTR1により平面的に取り囲まれている。
図2を参照して、トランジスタ領域(高耐圧MOSトランジスタの出力ドライバ部およびCMOSトランジスタの形成部)においては、高耐圧MOSトランジスタ、CMOSトランジスタなど素子の1つ1つの形成領域である素子形成領域DFRがDTI構造をなす溝DTR1(第2の溝)によって平面視において取り囲まれている。また複数の素子形成領域DFRが、平面視においてゲッタリングサイトGTによって取り囲まれている。
図3を参照して、たとえば図1のトランジスタ領域を構成する出力ドライバ部と呼ばれる領域では、1つ1つの高耐圧素子の素子形成領域DFRがDTI構造をなす溝DTR1により平面的に取り囲まれている。この溝DTR1は半導体基板SUBの主表面MSに形成されている。
図4を参照して、半導体チップCHPに含まれる半導体基板SUBは、支持基板SSと、埋め込み絶縁膜BXと、半導体層SLとがこの順で(図4の下側から上側へ)積層された構成を有するSOI(Silicon On Insulator)基板である。半導体基板SUBの主表面MSは半導体層SLの表面に対応する。支持基板SSはたとえばp型のシリコン基板よりなっており、埋め込み絶縁膜BXはたとえばシリコン酸化膜よりなっており、半導体層SLはたとえばn-シリコン層よりなっている。半導体層SLの表面(図4における上側の面)に、トランジスタ領域とSubcon領域とが形成されている。
トランジスタ領域の素子形成領域DFRには、CMOSトランジスタ、高耐圧MOSトランジスタなどの素子が形成されている。これらの素子は、半導体層SLの表面に形成されており、たとえばn+領域NR、p+領域PR、ゲート電極層GEなどの導電部分を有している。
CMOSトランジスタは、図4の左側のnMOSトランジスタと、右側のpMOSトランジスタとが組み合わせられた構成となっている。nMOSトランジスタはp型ウェル領域PWRと、ソース領域またはドレイン領域としてのn+領域NRと、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極層GEとを主に有している。pMOSトランジスタはn型ウェル領域NWRと、ソース領域またはドレイン領域としてのp+領域PRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを主に有している。
高耐圧MOSトランジスタは、中央部分に溝DTR1が存在することにより、溝DTR1の左側と右側との2つの素子に分かれて配置されている。言い換えれば、高耐圧MOSトランジスタが形成される素子形成領域DFRは、中央部分の溝DTR1により、左側の素子が形成される素子形成領域DFRと右側の素子が形成される素子形成領域DFRとの2つに分かれている。左側の高耐圧MOSトランジスタは、n型ウェル領域NWRと、n型領域NDRと、p型領域PBRと、ソース領域またはドレイン領域としてのn+領域NRと、p+コンタクト領域PRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを主に有している。右側の高耐圧MOSトランジスタは、p型オフセット領域PORと、n型ウェル領域NWRと、ソース領域またはドレイン領域としてのp+領域PRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを主に有している。
一実施の形態においては、n+領域NRやp+領域PRのそれぞれの表面上にシリサイド層SCが形成されていることが好ましいが、シリサイド層SCは省略されてもよい。
また右側の高耐圧MOSトランジスタのp型オフセット領域POR上にはマスク絶縁層MIが形成されている。また隣接する素子間の電気的な分離などのために半導体層SLの主表面には適宜、フィールド酸化膜FOがたとえば400nmの厚みで形成されている。
上記のCMOSトランジスタ、高耐圧MOSトランジスタ上を覆うように、下敷き酸化膜NSG、層間絶縁膜IIA(絶縁膜)が形成されている。下敷き酸化膜NSGは、半導体層SLの表面上(つまり半導体基板SUBの表面上)にたとえば300nmの厚みで形成されている。下敷き酸化膜NSGはたとえば不純物がドープされていないノンドープのシリコン酸化膜である。層間絶縁膜IIAは、CMOSトランジスタおよび高耐圧MOSトランジスタ上を覆うように形成されている。
CMOSトランジスタ、高耐圧MOSトランジスタなどのそれぞれの素子形成領域DFRを平面視において取り囲むように、半導体層SLの主表面から半導体層SLを貫通するように、DTI構造をなす溝DTR1が形成されている。つまり溝DTR1は、半導体層SLの上側の表面から埋め込み絶縁膜BXに達するように、図4の上下方向に延在している。溝DTR1は、それぞれの素子形成領域DFRを取り囲むことにより、それぞれの素子形成領域DFR間を電気的に分離している。また溝DTR1は、フィールド酸化膜FOをその左側と右側とに二分するように形成される。
層間絶縁膜IIAは、上記のCMOSトランジスタおよび高耐圧MOSトランジスタなどの素子、ならびに下敷き酸化膜NSGの上を覆うように、かつ溝DTR1の内部に中空AG1(第1の中空)を形成するように、下敷き酸化膜NSG上および溝DTR1の内部に形成されている。すなわち層間絶縁膜IIAは、溝DTR1の内部の壁面(溝DTR1の内部の側面および底面)に沿うように壁面を覆い、溝DTR1の内部の中央部に中空AG1を形成するように形成されている。中空AG1は閉塞された単一の空間領域であり、空気などの気体により形成されている。ただし中空AG1は閉塞されていなくてもよい。
なおここでは実際には層間絶縁膜IIA(絶縁膜)は半導体層SLの表面上の下敷き酸化膜NSG上を覆うように形成されているが、層間絶縁膜IIAは半導体層SLの表面上(を直接覆うよう)に、CMOSトランジスタおよび高耐圧MOSトランジスタの上を(直接)覆うように形成されてもよい。つまり溝DTR1内に形成される絶縁膜IIAは、高耐圧MOSトランジスタ上に形成される層間絶縁膜IIAである。また溝DTR1内は、絶縁膜IIAで完全に埋め込まれてはおらず、溝DTR1の内部には中空AG1が形成されている。
この中空AG1は溝DTR1の深さとほぼ同じ高さを有していてもよい。溝DTR1のアスペクト比(深さ/幅)は1以上であることが好ましい。また溝DTR1の幅は80Vのブレークダウン電圧を基準にして0.3μm以上であることが好ましい。
層間絶縁膜IIAは、たとえばBP−TEOS(Boro-Phospho-Tetra-Ethyl-Ortho-Silicate)と、その上にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成されたシリコン酸化膜との積層構造よりなっている。なお層間絶縁膜IIAに含まれるBP−TEOSは、P−TEOS(PSG:Phosphorus Silicon Glass)、B−TEOS(BSG:Boro Silicata Glass)のようなIII族元素およびV族元素の少なくともいずれかの(導電性の)不純物を含んだ絶縁膜であればよい。ただし層間絶縁膜IIAは、上記のように導電性の不純物を含んだ絶縁膜に限らず、たとえば導電性の不純物を含まない通常のシリコン酸化膜であってもよい。
下敷き酸化膜NSGおよび層間絶縁膜IIAにはコンタクトホールCH1が形成されており、コンタクトホールCH1内にはプラグ導電層PL1(第2の導電層)が形成されている。層間絶縁膜IIA上には配線層ICL1が形成されている。配線層ICL1はコンタクトホールCH1内のプラグ導電層PL1を介して素子の導電部分(たとえばソース領域、ドレイン領域としてのn+領域NR、p+領域PR、ゲート電極層GEなど)に電気的に接続されている。言い換えれば、コンタクトホールCH1は下敷き酸化膜NSGおよび層間絶縁膜IIに形成された孔であり、当該孔は素子の導電部分に達するように延在している。なお、n+領域NR、p+領域PR上にシリサイド層SCが形成されている場合には、コンタクトホールCH1はシリサイド層SCに達するように形成されている。またシリサイド層が形成されていない場合には、コンタクトホールCH1はn+領域NR、p+領域PRに達するように形成されている。
Subcon領域におけるサブコンタクトSBCは溝DTR2(第1の溝)により形成される。溝DTR2は、半導体層SLの表面から半導体層SLおよび埋め込み絶縁膜BXに達するように、図4の上下方向に延在している。また溝DTR2は、フィールド酸化膜FOをその左側と右側とに二分するように形成される。
溝DTR2の内部において半導体層SLの壁面に沿って、層間絶縁膜IIAが形成されている。溝DTR2の内部には支持基板SSと接するようにプラグ導電層PL2が形成されている。このプラグ導電層PL2は層間絶縁膜IIAから露出するように形成されている。具体的には、層間絶縁膜IIAに、溝DTR2の内部に延び、かつ支持基板SSに達するコンタクトホールCH2が形成されており、そのコンタクトホールCH2内を埋め込むようにプラグ導電層PL2が形成されている。このプラグ導電層PL2は溝DTR2(コンタクトホールCH2)内に中空AG2(第2の中空)を形成している。層間絶縁膜IIAから露出したプラグ導電層PL2の上面に接するように層間絶縁膜IIA上に配線層ICL1が形成されている。これにより、配線層ICL1はプラグ導電層PL2に電気的に接続されている。
ここでは、上記の埋め込み絶縁膜BXに達するように形成される溝DTR2と、支持基板SSに達するように形成されるコンタクトホールCH2とを併せて便宜上、支持基板SSに達するように形成される溝DTR2(第1の溝)と考えてもよいこととする。
この配線層ICL1はトランジスタ領域の配線層ICL1と同一の層として形成されており、配線層ICL1はコンタクトホールCH2内のプラグ導電層PL2を介して支持基板SSに電気的に接続されている。
中空AG2は閉塞された単一の空間領域であり、空気などの気体により形成されている。図4の中空AG2は半導体層SLを貫通する領域および埋め込み絶縁膜BXを貫通する領域の双方に形成されるが、たとえば半導体層SLを貫通する領域のみに形成されてもよい。
サブコンタクトSBCは、溝DTR2の内部にコンタクトホールCH2が形成されるため、溝DTR2の内部の壁面とコンタクトホールCH2とに挟まれた領域に層間絶縁膜IIAが形成されている。この層間絶縁膜IIAは、半導体層SL(下敷き酸化膜NSG)上を覆い、かつ溝DTR2(半導体層SL)の内部の壁面(側面)に沿うように図4の上下方向に延在するように形成される。層間絶縁膜IIAは、溝DTR2の内部の埋め込み絶縁膜BXと接する底面(コンタクトホールCH2により貫通される部分を除く)を覆うように形成される。
Subcon領域における溝DTR1は、図1に示すように、サブコンタクトSBCを平面的に取り囲むように形成されている。すなわちSubcon領域においては、平面視における溝DTR1の内部にサブコンタクトSBCが形成されている。Subcon領域においてサブコンタクトSBCを取り囲む溝DTR1の構成は、基本的にトランジスタ領域における溝DTR1と同様の構成を有する。すなわちサブコンタクトSBCを取り囲む溝DTR1は、半導体層SLの主表面から半導体層SLを貫通するように、DTI構造をなすように形成され、半導体層SLの上側の主表面から埋め込み絶縁膜BXに達するように、図4の上下方向に延在している。またその内部には層間絶縁膜IIAおよび中空AG1が形成される。
溝DTR1,DTR2には、その少なくとも一部、具体的にはたとえば埋め込み絶縁膜BXと溝DTR1,DTR2との界面近傍において、埋め込み絶縁膜BXと接するように、堆積部DPOが形成されている。堆積部DPOは溝DTR1,DTR2の内部に形成される層間絶縁膜IIAの一部が上記の領域に集中するように堆積したものである。このため、層間絶縁膜IIAと同様の材質すなわちたとえばBP−TEOSとシリコン酸化膜とにより形成されている。
溝DTR1,DTR2内の堆積部DPOにおいては、溝DTR1,DTR2内の堆積部DPO以外の領域に比べて、絶縁膜IIAが厚く形成されている。また堆積部DPOは、溝DTR1,DTR2の内部の壁面(側面)にバリアメタルが形成される場合に、溝と埋め込み絶縁膜BXとの界面近傍に形成されることが特に好ましく、溝DTR2において形成されることが特に好ましい。
一実施の形態においては、以上のように半導体層SLの表面から半導体層SLを貫通するように延在する2種類の溝DTR1,DTR2が形成されている。溝DTR1は半導体層SLの表面から埋め込み絶縁膜BXに達し、その内部には層間絶縁膜IIAと同一の層が充填されており、かつ中空AG1が形成されている。溝DTR2は半導体層SLの表面から支持基板SSに達し、その内部には層間絶縁膜IIAと同一の層と、プラグ導電層PL2と、中空AG2とが形成されている。ここで溝DTR1の、半導体層SLの表面に沿う方向(図4の左右方向)の幅w1は、溝DTR2の、半導体層SLの表面に沿う方向の幅w2以下であることが好ましい。
トランジスタ領域、Subcon領域ともに、層間絶縁膜IIBは、層間絶縁膜IIAおよび配線層ICL1の表面上を覆うように形成されている。層間絶縁膜IIBはたとえば通常のシリコン酸化膜からなることが好ましい。
層間絶縁膜IIBにはコンタクトホールCH3が形成されており、コンタクトホールCH3内にはプラグ導電層PL3が形成されている。層間絶縁膜IIB上には配線層ICL2が形成されている。配線層ICL2はコンタクトホールCH3内のプラグ導電層PL3を介して配線層ICL1に電気的に接続されている。さらにパッシベーション膜PVは、層間絶縁膜IIBおよび配線層ICL2の表面上を覆うように形成されている。パッシベーション膜PVは、層間絶縁膜IIBを覆うように形成されている。パッシベーション膜PVはたとえばプラズマCVD法により形成されたシリコン窒化膜により形成されている。
次に、一実施の形態の半導体装置として、図4に示すトランジスタ領域(CMOSトランジスタおよび高耐圧MOSトランジスタ)ならびにSubcon領域を有する半導体チップCHPの製造方法について図5〜図18を用いて説明する。
図5を参照して、まず支持基板SSと、埋め込み絶縁膜BXと、半導体層SLとがこの順に積層された構成を有するSOI基板として半導体基板SUBが準備される。半導体層SLには、n型領域NDR、フィールド酸化膜FOなどが形成される。このフィールド酸化膜FOは、半導体層SLの主表面上に酸化膜OXIと窒化膜NIとをこの順で積層し、窒化膜NIを選択的に除去した後に、その窒化膜NIから露出した部分を熱酸化することにより形成される。この後、窒化膜NIおよび酸化膜OXIが除去され、フィールド酸化膜FOが形成されていない半導体層SLの主表面が露出する。
図6を参照して、トランジスタ領域にn型ウェル領域NWR、p型ウェル領域PWR、n型領域NDR、p型オフセット領域POR、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極層GE、酸化絶縁膜OI、n+領域NR、p+領域PR、側壁絶縁膜SWなどが形成される。これにより、半導体層SLの表面に、各素子(高耐圧MOSトランジスタ、CMOSトランジスタなど)が完成する。
高耐圧MOSトランジスタとして図5中左側のトランジスタは、n型ウェル領域NWRと、n型領域NDRと、p型領域PBRと、ソースまたはドレインとしてのn+領域NRと、コンタクト領域としてのp+領域PRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを有するように形成される。
高耐圧MOSトランジスタとして図5中右側のトランジスタは、n型ウェル領域NWRと、p型オフセット領域PORと、ソースまたはドレインとしてのp+領域PRと、コンタクト領域としてのn+領域NRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを有するように形成される。
CMOSトランジスタは、pMOSトランジスタとnMOSトランジスタとが完成するように形成される。pMOSトランジスタは、n型ウェル領域NWRと、1対のソース/ドレイン領域としてのp+領域PRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを有するように形成される。nMOSトランジスタは、p型ウェル領域PWRと、1対のソース/ドレイン領域としてのn+領域NRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを有するように形成される。
図7を参照して、トランジスタ領域のn+領域NRおよびp+領域PRの各々の表面上にシリサイド層SCが形成される。シリサイド層SCは、半導体層SLの表面全面を覆うように高融点金属層を形成した後に熱処理を加えて高融点金属とシリコンとを反応させることにより形成される。この際、半導体層SLの主表面上にマスク絶縁層MIを形成しておくことにより、マスク絶縁層MIが形成された箇所においては、半導体層SLの主表面と高融点金属層とが接触することはないため、シリサイド層SCは形成されない。なお、シリサイド層SC形成後、未反応の高融点金属層は除去される。
図8を参照して、各素子上およびSubcon領域の半導体層SLの表面上を覆うように、下敷き酸化膜NSGが形成される。下敷き酸化膜NSGはたとえば600nmの厚みのノンドープのシリコン酸化膜からなる。
図9を参照して、下敷き酸化膜NSG上を覆うように、フォトレジストPHRが塗布される。
このフォトレジストPHRは通常の写真製版技術によりパターニングされる。このパターニングされたフォトレジストPHRをマスクとして、下敷き酸化膜NSGおよびフィールド酸化膜FOとが順に異方性エッチングされる。これにより下敷き酸化膜NSGとフィールド酸化膜FOとを貫通する溝DTRAが形成される。この後、フォトレジストPHRがアッシングなどによって除去される。
ここで、Subcon領域に形成される溝DTRAのうち、サブコンタクトSBC(溝DTR2)を形成するために形成される溝DTRAは、溝DTR1を形成するために形成される溝DTRAの、半導体層SLの主表面に沿う方向(図9の左右方向)の幅以下の幅を有することが好ましい。具体的には、図9中の幅w4は幅w3以下であることが好ましい。
図10を参照して、下敷き酸化膜NSGをマスクとして半導体層SLに異方性エッチングが施される。これにより、溝DTRAの直下の半導体基板SUB(半導体層SL)が選択的に除去される。これにより、半導体基板SUB(半導体層SL)の表面から埋め込み絶縁膜BXに達するように溝DTR1,DTR2が形成される。このエッチング時に下敷き酸化膜NSGも所定膜厚だけエッチング除去され、当初の厚み600nmのおよそ半分の厚み、たとえば300nmの厚みとなる。
このように、半導体層SLの表面から支持基板SSに達するサブコンタクトSBC(図4参照)の溝DTR2を形成する工程において、まず半導体層SLの表面から埋め込み絶縁膜BXに達する(たとえばトランジスタ領域の素子分離用の)溝DTR1と同様の溝が形成される。言い換えれば、最終的に埋め込み絶縁膜に達する溝DTR1と、Subcon領域において最終的に支持基板SSに達するように形成される溝DTR2とが同一の工程により同時に形成される。さらに言い換えれば最終的に溝DTR2になるSubcon領域の溝は、図10の工程の段階では最終的に溝DTR1になるトランジスタ領域などの溝DTR1と同時に、かつ同様の態様として形成される。
なお図9の工程において、幅w4(図9参照)を幅w3以下とすることにより、Subcon領域の溝DTR2の幅w2が溝DTR1の幅w1以下となるように形成されることが好ましい。
また、形成される素子の特性上、III族元素やV族元素などの不純物が半導体層SLの内部に固相拡散されることを防ぐことが好ましい場合には、固相拡散を抑制したい側壁上に保護用の絶縁膜(ライナー膜)を形成することが好ましい。ライナー膜はたとえば熱酸化法や窒化処理、プラズマCVD法を用いて形成される、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜であることが好ましい。
また図10の工程の段階においては、最終的に埋め込み絶縁膜BXに達する態様となる溝DTR1と、最終的に支持基板SSに達する態様となる溝DTR2とを併せて、第1の溝と定義してもよいこととする。
図11を参照して、各素子上およびSubcon領域の半導体層SLの表面上の下敷き酸化膜NSGを覆うように、かつ溝DTR1、DTR2内に、閉塞された中空AG1(中空)を形成するように各素子上および溝DTR1、DTR2内に絶縁膜IIA(絶縁膜)が形成される。この絶縁膜IIAは、たとえば1320nmの厚みのBP−TEOS、および通常のシリコン酸化膜により形成される。この絶縁膜IIAの上面がたとえば(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨除去される。ただし絶縁膜IIAは、上記のように導電性の不純物を含んだ絶縁膜(BP−TEOS)に限らず、たとえば導電性の不純物を含まない通常のシリコン酸化膜であってもよい。
この絶縁膜IIAは、特に埋め込み絶縁膜BXと溝DTR1,DTR2との界面近傍に堆積部DPOを形成することが好ましい。
なおここでは実際には層間絶縁膜IIA(絶縁膜)は半導体層SLの表面上の下敷き酸化膜NSG上を覆うように形成されているが、層間絶縁膜IIAは半導体層SLの表面上を(直接)覆うように、さらにCMOSトランジスタおよび高耐圧MOSトランジスタなどの素子上を(直接)覆うように形成されてもよい。また溝DTR1,DTR2内においては、特に溝DTR1,DTR2の内部の壁面(側面および底面)を覆うように、層間絶縁膜IIAが形成される。
図12を参照して、上記のCMP法により、絶縁膜IIAは上面を平坦化されて層間絶縁膜IIAとなる。CMP法を用いてたとえば640nm研削することにより、層間絶縁膜IIAの厚みは、たとえば680nmとされる。
図13を参照して、通常の写真製版技術およびエッチング技術により、層間絶縁膜IIAおよび下敷き酸化膜NSGを貫通して半導体基板SUBの表面(シリサイド層SCの表面、すなわち素子)に達するコンタクトホールCH1(孔)が形成される。このコンタクトホールCH1からは、たとえばソース領域やドレイン領域などの表面に形成されたシリサイド層SCの表面が露出する。
図14を参照して、層間絶縁膜IIA上を覆うように、フォトレジストPHRが塗布される。このフォトレジストPHRは通常の写真製版技術により、溝DTR2の真上とコンタクトホールCH1の真上において開口部を形成するようにパターニングされる。次にこのパターニングされたフォトレジストPHRをマスクとして、溝DTR2の内部を貫通してコンタクトホールCH2を形成するように、溝DTR2の上記開口部の真下の層間絶縁膜IIAがエッチング除去される。
このとき、溝DTR2の内部の層間絶縁膜IIAは、溝DTR2の底部に位置するものも含めて除去され、その後さらに溝DTR2の底部の下に位置する埋め込み絶縁膜BXが同時に除去される。このようにして、層間絶縁膜IIAの上側の表面から支持基板SSに達するコンタクトホールCH2が形成される。以上のように、溝DTR2の内部の層間絶縁膜IIAと同時に埋め込み絶縁膜BXがエッチング除去されることを可能にする観点から、層間絶縁膜IIAと埋め込み絶縁膜BXとは同一の材質からなることが好ましく、上記のように、層間絶縁膜IIAおよび埋め込み絶縁膜BXはいずれもシリコン酸化膜(導電性の不純物を有するシリコン酸化膜すなわちBP−TEOSでもよい)とされる。
上記のように、溝DTR2を形成するためになされた処理は、図13の工程以前においては溝DTR1を形成するためになされた処理とほぼ同じである。そして図14の工程において初めて、溝DTR1と同様に形成された溝を利用して、溝DTR2を形成するための追加の処理(コンタクトホールCH2の形成)を行なっている。
図15を参照して、フォトレジストPHRがアッシングなどにより除去された後、たとえば通常のスパッタリング法により、層間絶縁膜IIA上およびコンタクトホールCH1,CH2の内部の壁面を覆うように、チタン(Ti)および窒化チタン(TiN)の薄膜をバリアメタルとして形成した後、プラズマCVD法によりタングステン(W)の金属薄膜が形成される。次に層間絶縁膜IIA上の上記バリアメタルおよび金属薄膜がエッチバックにより除去される。
このようにして、コンタクトホールCH1の内部にはタングステンの金属薄膜からなるプラグ導電層PL1が形成されると同時に、コンタクトホールCH2の内部にはタングステンの金属薄膜からなるプラグ導電層PL2が形成される。
なおプラグ導電層PL2はその内部に中空AG2を形成するように形成されることが好ましい。
以上のようにプラグ導電層PL1,PL2はタングステンの金属薄膜からなるものであってもよいが、たとえばアルミニウムからなる金属薄膜であってもよい。
図16を参照して、プラグ導電層PL1,PL2の上面に接し、各素子の導電部分または支持基板SSと電気的に接続するように層間絶縁膜IIA上に配線層ICL1が形成される。この配線層ICL1は、たとえば通常のスパッタリング法により、窒化チタンと、銅とアルミニウムとの合金(AlCu)との積層構造として形成されることが好ましいが、上記のプラグ導電層PL1,PL2と同一の材質であってもよい。一例として、たとえば26.5nmの窒化チタンと450nmのAlCuとの積層構造が形成される。
このようにして、溝DTR2の内部および溝DTR2の直下の埋め込み絶縁膜BXを貫通して支持基板SSに達するように形成されたコンタクトホールCH2の内部にプラグ導電層PL2が形成されることにより、支持基板SSと溝DTR2とが、さらに支持基板SSと配線層ICL1とが、電気的に接続される。
図17を参照して、層間絶縁膜IIA、配線層ICL1上を覆うように、絶縁膜IIBが形成される。この絶縁膜IIBは、たとえば絶縁膜IIAと同様にBP−TEOSおよび通常のシリコン酸化膜により形成されるが、通常のシリコン酸化膜のみにより形成されてもよい。この絶縁膜IIBの上面がたとえばCMP法により平坦化されて層間絶縁膜IIBとなる。
この層間絶縁膜IIBは通常の写真製版技術およびエッチング技術により、層間絶縁膜IIBを貫通して配線層ICL1の表面に達するコンタクトホールCH3が形成される。
図18を参照して、図15の工程におけるプラグ導電層PL1,PL2と同様に、プラグ導電層PL3が形成される。次に、プラグ導電層PL3を介して下の各領域と電気的に接続するように層間絶縁膜IIB上に配線層ICL2が形成される。この配線層ICL2は、図16の工程における配線層ICL1と同様に形成される。
図4を参照して、層間絶縁膜IIBおよび配線層ICL2上を覆うように、たとえばプラズマCVD法により、シリコン窒化膜からなるパッシベーション膜PVが形成される。一例としてこのパッシベーション膜PVの厚みは2μmである。その後、所望の形状となるように、パッシベーション膜PVに対して通常の写真製版技術およびエッチング技術がなされる。
以上により、図3に示す一実施の形態の半導体装置が製造される。
次に、一実施の形態の作用効果について説明する。
図19を参照して、このグラフの横軸は、たとえば図1に示すような半導体チップCHPの裏面の電位(V)を示しており、縦軸は当該半導体チップCHPに形成された、高耐圧MOSトランジスタ(図4参照)などの素子のオフ耐圧(V)を示している。
図19より、正の裏面電位が大きくなると、当該素子のオフ耐圧が低下することが分かる。たとえば裏面電位が0Vのときにオフ耐圧が140Vである素子であっても、正の裏面電位が大きくなるにつれてオフ耐圧が低下し、裏面電位が120V以上になればオフ耐圧は約80Vにまで(裏面電位が0Vのときに比べて約60V)低下する。
このため、たとえば当該素子が定格100Vである場合においても、正の裏面電位が大きくなることによりいわゆる定格割れ不良を起こす可能性がある。このように裏面の電位を固定しないと、当該素子の特性が安定しない不具合を来たす可能性がある。すなわち裏面の電位を表面側から取り出すことは、当該素子の特性を安定させる上で重要である。
ところでSOI基板は、埋め込み絶縁膜BX(図4参照)を備えることにより、当該埋め込み絶縁膜BXにおいてリサーフ効果をもたらす。このためSOI基板に形成された素子は、埋め込み絶縁膜BXを有さない通常の半導体基板に形成された素子に比べて高耐圧特性が向上する。
ところがSOI基板は、埋め込み絶縁膜BXの存在により、その表面側から裏面の電位を取り出すことが困難であるため、SOI基板に形成された素子の駆動時に、SOI基板の裏面電位を制御することが困難となり、上記のオフ耐圧の低下、および素子の特性の低下を招く可能性がある。
そこで一実施の形態においては、埋め込み絶縁膜BXを貫通して支持基板SSに達することにより、SOI基板の表面と裏面とを導通するサブコンタクトSBC(図4参照)を形成することにより、裏面電位を表面側から取り出すことが可能となる。したがって当該SOI基板に形成された素子の制御時に裏面電位を制御することが容易となり、結果として当該素子のオフ耐圧の低下を抑制することができる。
また主にトランジスタ領域における素子分離に用いられる溝DTR1は、その内部に中空AG1が形成されている。これにより、DTI構造により分離された素子のリーク電流を抑制することができ、耐圧を高めることができる。
また溝DTR1内に積極的に中空AG1を形成することで、溝DTR1近傍における半導体層SLの応力を低減することができる。これは、溝DTR1内部のシリコン酸化膜と、シリコンとの熱膨張係数の差により発生する応力を、空隙である中空AG1が緩和することができるためである。溝DTR1近傍における半導体層SLの応力を低減することにより、半導体層SL内における結晶欠陥の発生を抑制することができる。
以上のように、一実施の形態においては、中空AG1を有する素子分離用の溝DTR1と、裏面電位を取り出すためのサブコンタクトSBCを形成する溝DTR2とを有するため、素子のオフ耐圧の低下をより確実に抑制することができる。
一実施の形態においては、素子上を覆う層間絶縁膜IIAと同一の層として絶縁膜IIAが溝DTR1,DTR2の内部に形成されるため、仮に層間絶縁膜IIAが不純物を含むBP−TEOSである場合に、溝DTR1,DTR2の内部にも容易に不純物を含むBP−TEOSが形成される。
BP−TEOSが溝DTR1の内部に形成されれば、溝DTR1,DTR2の壁面に沿って拡散領域を形成することで、溝DTR1,DTR2の側面に形成されるダメージ層を通るリーク電流を抑制することができる。このことについて以下に、図20を参照しながら説明する。
図20(A)を参照して、半導体基板SUBに溝DTR1(溝DTR2も同じ)を形成する際、溝DTR1の壁部にエッチングのダメージ(結晶欠陥)が生じる。このため、溝DTR1の壁部にn型半導体領域NSRとp型半導体領域PSRとのpn接合があると、上記エッチングダメージを介してそのpn接合部にリーク電流が発生する。
半導体基板SUBがSOI基板よりなる場合に、溝DTR1の壁部に接する部分にn型半導体領域NSRとp型半導体領域PSRとのpn接合部があると、溝DTR1の壁部のエッチングダメージを介して、そのpn接合部にリーク電流が生じる。しかし、図20(B)に示すように、溝DTR1の壁部に沿って拡散領域SDRを形成することによって、溝DTR1の壁部に接する部分にpn接合が位置することはなくなる。このため、そのpn接合部において上記エッチングダメージを介したリーク電流の発生を防止することができる。
また一実施の形態のように、溝DTR1の幅w1が溝DTR2の幅w2以下となるようにすれば、半導体チップCHPのサイズを小型化し、素子のスループットを向上させることができる。
また一実施の形態のように、溝DTR2の内部にはシリコン酸化膜の堆積部DPOを有している。この堆積部DPOにおいてはシリコン酸化膜が、溝DTR2の内部における堆積部DPO以外の領域よりも厚く形成されている。このため、たとえば図15の工程に示すコンタクトホールCH2へのバリアメタルの形成時に、溝DTR2を形成するための半導体層SLのエッチングの際に溝DTR2に形成された結晶欠陥に起因する不具合の発生を抑制することができる。
溝DTR2を形成するための半導体層SLのエッチングの際には、特に埋め込み絶縁膜BXの界面近傍において溝DTR1,DTR2には半導体層SLを構成するシリコンの結晶欠陥が多数発生する。この結晶欠陥が露出した状態でその上に図15の工程に示すバリアメタルが形成されれば、当該結晶欠陥に対してシリサイド異常が発生する可能性がある。しかし当該結晶欠陥がシリコン酸化膜からなる堆積部DPOに覆われた状態でバリアメタルが形成されることにより、上記シリサイド異常の発生を抑制することができる。
次に、図21〜図25に示す一実施の形態の参考例としての製造工程を説明する。
一実施の形態のSubcon領域と同様にサブコンタクトSBCとその周囲を取り囲む溝DTR1とにより形成される参考例のSubcon領域は、以下の手順により形成される。図21を参照して、一実施の形態と同様に支持基板SSと、埋め込み絶縁膜BXと、半導体層SLとがこの順で積層された構成を有するSOI基板(半導体基板SUB)が準備される。半導体層SLの上側の表面上には窒化膜NI2が形成され、これを用いてフィールド酸化膜FOが形成される。この窒化膜NI2は、図5の工程における窒化膜NIと同様の役割を有する。
フィールド酸化膜FOおよび窒化膜NI2上を覆うように、半導体層SLの上には窒化膜NI3および層間絶縁膜IICがこの順に形成される。窒化膜NI3は層間絶縁膜IICをCMP研磨する際のストッパとして形成される。層間絶縁膜IICは溝を形成する際のマスクとして形成され、たとえばBP−TEOSにより形成される。通常の写真製版技術により層間絶縁膜IICのパターンが形成され、この層間絶縁膜IICのパターンをマスクとして、図10の工程と同様に半導体層SLに異方性エッチングが施される。こうして埋め込み絶縁膜BXに達する溝DTR1,DTR2が形成される。
図22を参照して、溝DTR1,DTR2の内部の壁面にバリアメタルBRが形成された後、当該内部に1回目の層間絶縁膜IIAの形成がなされる。次に図示されないが、異方性の酸化膜エッチングにより、層間絶縁膜IICのパターンの開口部の幅が広げられる。そして溝DTR1,DTR2の内部に2回目の層間絶縁膜IIAが形成される。このように溝DTR1,DTR2の内部には2度、層間絶縁膜IIAが形成される。このため溝DTR1,DTR2の内部には中空AG1,AG2は形成されず、溝DTR1,DTR2の内部は層間絶縁膜IIAでほぼ完全に充填される。
ここで、窒化膜NI3をストッパとして層間絶縁膜IIC,IIAがCMP法により除去され、窒化膜NI3(層間絶縁膜IIA)の上側の表面が平坦化される。
図23を参照して、図14の工程と同様に、溝DTR2の内部には埋め込み絶縁膜BXを貫通して支持基板SSに達するコンタクトホールCH2が形成される。
図24を参照して、コンタクトホールCH2の内部が多結晶シリコンのプラグ導電層PL2により充填される。ここでも図22の工程と同様に、コンタクトホールCH2の内部をほぼ完全に充填するため、コンタクトホールCH2の内部への多結晶シリコンの形成は2度行われる。
図25を参照して、層間絶縁膜IIAに熱処理が施されて、焼き締めされた層間絶縁膜IIDとなる。以上により参考例としてのSubcon領域が形成される。
以上の図21〜図25の工程において一実施の形態と同一の符号で記した構成要素については一実施の形態における当該構成要素と同様である。
以上の参考例の製造工程においては、高アスペクト比の溝DTR1,DTR2が絶縁膜(シリコン酸化膜)によりほぼ完全に埋め込まれる必要がある。これは仮に溝DTR1,DTR2の内部が絶縁膜で埋め込まれた後に、たとえば素子を構成するゲート電極層GEなどのパターニングがなされる場合、ウェットエッチングを繰り返すことにより溝DTR1,DTR2の内部の絶縁膜に中空が存在すれば、これに起因する不具合が発生する可能性があるためである。
また上記の参考例の製造方法においては、窒化膜NI3をストッパとして層間絶縁膜IIC,IIA(シリコン酸化膜)がCMP法により除去される。このとき、窒化膜を研磨せず酸化膜のみを研磨するいわゆるセリアプロセスを行なう必要があるが、セリアプロセスは横展開が困難である。
ところが一実施の形態の製造方法においては、図5〜図10に示すように高耐圧MOSトランジスタなどの素子が完成した後にDTI構造の溝DTR1,DTR2が形成される。素子完成後の製造フローでは素子完成前の製造フローよりも溝DTR1,DTR2内を埋め込む絶縁膜表面がウエットエッチングにさらされる回数が少ない。このため、その溝DTR1,DTR2内に中空AG1,AG2が存在していても、その中空AG1,AG2が表面に露出することは抑制される。これにより、表面に露出した中空AG1,AG2内にレジストなどの異物が入り込むことがないため、製造途中でその中空AG1,AG2内の異物が噴出すことによるパターンの欠陥が生じることも防止できる。
溝DTR1,DTR2内に中空AG1,AG2が存在しても問題ないため、溝DTR1,DTR2の内部を完全に埋める必要はない。このため、上記比較例のように溝の内部に2度成膜する必要はなく、1回の成膜処理で十分となる。このため当該工程の処理時間を短縮し、工程のコストを削減することができる。
一実施の形態の製造方法においては、溝DTR2の内部の壁面を覆う層間絶縁膜IIAと埋め込み絶縁膜BXとの材質を同一に(たとえば双方ともシリコン酸化膜に)する。このため、溝DTR2の内部がいったん層間絶縁膜IIAで埋め込まれた後に、コンタクトホールCH2を形成する目的で層間絶縁膜IIAをエッチング除去する際に、同時にコンタクトホールCH2を埋め込み絶縁膜BXを貫通するように形成することができる。したがって層間絶縁膜IIAをエッチングする際のマスク(図14のフォトレジストPHRのパターン)を用いて埋め込み絶縁膜IIAを貫通することができるため、マスクの制作に要する費用を削減することができる。
たとえば溝DTR2の内部が絶縁膜IIAで埋まらないようにするためには、溝DTR2を覆うようにたとえばフォトレジストのパターンを形成する必要がある。すなわち当該パターン形成用のマスクが1枚追加で必要となる。しかし一実施の形態においては、溝DTR2を形成する際に、溝DTR1と同様の溝を利用して、溝DTR2を形成するために必要な追加の処理を行なっている。これは具体的には、たとえば図13の工程以前は溝DTR2を形成する箇所にも溝DTR1を形成する箇所と基本的に(溝の幅w1,w2が異なる場合があるが)同様の態様の溝が形成されるが、図14以降の工程において溝DTR2を形成しようとする箇所のみにコンタクトホールCH2を形成するなど追加の処理を施していることを意味する。
以上より、一実施の形態においては、たとえば溝DTR2を形成するために溝DTR1を形成する工程と全く別個の処理を独立して行なう場合に比べて、工程数を大幅に削減することができる。
また一実施の形態においては、溝DTR2を形成する領域の内部に層間絶縁膜IIAが形成されることにより、中空AG1が形成される(図11参照)。このため、後工程にてコンタクトホールCH2を形成するための層間絶縁膜IIAのエッチングがより容易になる。さらに溝DTR2の内部にプラグ導電層PL2により形成される中空AG2は、絶縁膜IIAと半導体層SLとの熱膨張係数の差により発生する応力を緩和することができる。
また一実施の形態においては、溝DTR1,DTR2内の絶縁膜IIAは、半導体層SLの表面上(素子の上)に形成される層間絶縁膜IIAと同一の層として同時に形成される(図11参照)。このため溝DTR1,DTR2内の絶縁膜IIAが半導体層SLの表面上(素子の上)の層間絶縁膜IIAと別の工程として形成される場合に比べて処理時間を短縮し、工程のコストを削減することができる。さらに半導体層SLの表面上(素子の上)に形成される層間絶縁膜IIAを除去する必要がないため、上記の参考例の製造工程において用いられる、横展開の困難なセリアプロセスを用いる必要がなくなる。
また一実施の形態においては、コンタクトホールCH1とコンタクトホールCH2との内部に同時にプラグ導電層PL1,PL2が形成される。このため両者が別の工程として形成される場合に比べて処理時間を短縮し、工程のコストを削減することができる。
最後に、図26〜図29を参照しながら、一実施の形態の要点について説明する。なお図26〜図29における各構成要素は、既述の同一の符号で記した構成要素と同様である。
図26を参照して、一実施の形態は、支持基板SSと、埋め込み絶縁膜BXと、半導体層SLとがこの順に積層された半導体基板SUBに形成された半導体装置について規定している。半導体基板SUBはトランジスタ領域とSubcon領域とを有している。トランジスタ領域には溝DTR1が、Subcon領域には溝DTR2が形成されている。溝DTR1はその内部に、半導体層SLの表面を覆う層間絶縁膜IIAと同一の層としての絶縁膜IIAと、絶縁膜IIAに形成された中空AG1とを有している。一方、溝DTR2はその内部に、層間絶縁膜IIA上の配線層ICL1と支持基板SSとを電気的に接続するプラグ導電層PL2が形成されている。
一実施の形態は、支持基板SSと、埋め込み絶縁膜BXと、半導体層SLとがこの順に積層された半導体基板SUBに形成された半導体装置の製造方法について規定している。図27を参照して、半導体層SLの上側の表面から埋め込み絶縁膜BXに達する溝DTR2が形成される。図28を参照して、次に溝DTR2の内部を充填し、かつ半導体層SLの上側の表面上を覆うように層間絶縁膜IIAが形成される。層間絶縁膜IIAは溝DTR2の内部において中空AG1を形成する。図29を参照して、次に層間絶縁膜IIAの上面がCMP研磨された後、溝DTR2の内部および埋め込み絶縁膜BXを貫通するようにコンタクトホールCH2が形成される。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。