JP5946688B2 - 後硬化テープ及び接合部材の接合方法 - Google Patents
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エポキシ−アクリル系樹脂組成物は、例えば、主成分として、エポキシ化合物、硬化剤、活性エネルギー線照射により重合することのできるアクリレート化合物及び光重合開始剤を含有する組成物であり、基材上に塗工された後、活性エネルギー線照射により、粘着性を有するフィルムに成形される。エポキシ−アクリル系樹脂組成物からなるフィルム状接着剤は、粘着性を有するフィルムに、エポキシ化合物又は硬化剤等の硬化性成分が取り込まれた構造をしており、その粘着性を利用して接合部材表面に仮止めした後、加熱によって硬化性成分を硬化させることにより、強固な接着力を発揮することができる。
しかしながら、特許文献1に記載のフィルム状接着剤は150℃のオーブンに30分間放置することで加熱硬化しており、硬化に長時間を要することから生産性の観点からは未だ不充分である。また、フィルム状接着剤には、例えば、建築物、車両等の外装部品を接合する場合には、屋外で使用されるため耐水接着力も要求されるが、特許文献1に記載のような従来のフィルム状接着剤では、未だ充分な耐水接着力を有しているとはいえない。
以下に本発明を詳述する。
(メタ)アクリル系ポリマーが、SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーに由来する疎水性の高い成分を配合することにより、耐水接着力が向上する。一方、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマーに由来する親水性の高い成分を含有することにより、乾燥状態における接着力(以下、これを単に「接着力」又は「常態接着力」ともいう。)が発揮される。更に、上記(メタ)アクリル系ポリマーの親水性と疎水性とのバランスをとることにより、上記エポキシ樹脂とアミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の分散性が向上し、その結果として、より低温かつ短時間での硬化性が発揮されるものと考えられる。
なお、本明細書中、粘着性を有し、かつ、エポキシ樹脂等の硬化性成分が取り込まれた構造を有する粘着剤層等が、その粘着性を利用して接合部材へ貼り合わせられた後、加熱によって硬化性成分が硬化して強固な接着力を発現することを「後硬化」という。
なお、本明細書においてSP値とは、Fedorsの式δ2=ΣE/ΣV(δはSP値、Eは蒸発エネルギー、Vはモル体積を意味する。)により算出される計算値を意味する。なお、SP値の単位は(cal/cm3)0.5である。Fedorsの方法については、日本接着協会誌、1986年22巻566ページに記載されている。
上記共重合させる方法は特に限定されず、例えば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等が挙げられる。
上記共重合させる方法における重合反応は特に限定されず、例えば、フリーラジカル重合反応、リビングラジカル重合反応、リビングアニオン重合反応等が挙げられる。上記重合反応は、例えば、熱、紫外線、電子線等のエネルギーを与えることにより開始させることができる。また、上記重合反応においては、重合させる際に反応開始剤を用いてもよい。
上記エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールF型、ビスフェノールA型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、シクロヘキセンオキシド型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、接着強度、耐久性、耐衝撃性、耐熱性等の性能とコストとのバランスに優れることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
上記粘着剤層が上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤の代わりにイミダゾール系化合物を含有する場合、イミダゾール系化合物は触媒的に働くため、後硬化テープの硬化物に窒素原子は取り込まれないと思われる。これに対し、上記粘着剤層が上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤を含有することで、本発明の後硬化テープの硬化物には窒素原子が取り込まれると思われる。このため、窒素原子と被着体との間の強固な相互作用により、水分子の存在によっても上記粘着剤層の硬化物と被着体とが強固に接合されたままであると思われる。
上記フィラーは特に限定されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリスチレン等の有機物、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等の無機物等が挙げられる。
このようなフィラーを含有することにより、得られる後硬化テープの接合部に応力が加わった場合に、フィラーの周りにボイドが発生して応力を分散吸収し、接合界面への応力集中を低減させて、硬化物の接着力及び耐水接着力を向上させることができる。上記フィラーの平均粒子径が5μm未満であると、後硬化テープの硬化物の接着力又は耐水接着力を向上させる効果が得られないことがある。上記フィラーの平均粒子径の上限は特に限定されないが、上記粘着剤層の厚みより平均粒子径が大きい場合には上記フィラーが上記粘着剤層から露出して密着性が低下することから、上記粘着剤層の厚みより小さいことが好ましい。
特に、得られる後硬化テープを貼り合わせる接合部材がポリオレフィンからなる場合には、硬化物の接着力及び耐水接着力を高められることから、上記粘着剤層がロジン系樹脂又は石油系樹脂を含有することが好ましい。
上記シランカップリング剤を含有することにより、得られる後硬化テープの硬化物の界面接着力を向上させることができる。
本発明の後硬化テープが基材を有するサポートテープである場合、該基材は特に限定されず従来公知の基材を用いることができるが、高周波誘導加熱により発熱する発熱シート(以下、単に「発熱シート」ともいう。)であることが好ましい。上記基材として発熱シートを用いることにより、本発明の後硬化テープは、高周波誘導加熱装置によって容易に誘導加熱されることにより、比較的低温、かつ、短時間で硬化して、優れた接着力及び耐水接着力を発現することができる。
なお、本明細書中、誘導加熱とは、磁界によって発生する渦電流に基づく加熱をいう。更に、本明細書中、「高周波誘導加熱により発熱する」とは、コイルに高周波数の交流を流すことにより交流磁界を発生させ、交流磁界中に置いた導電性物質中を通る磁束線により導電性物質中に渦電流を発生させて、発生した渦電流に基づくジュール熱により、導電性物質が発熱することをいう。
上記導電性を有する金属シートは特に限定されず、例えば、アルミ、鉄、ステンレス鋼、銅、真鍮等からなるシート等が挙げられる。なかでも、比較的柔軟で取り扱いやすく、高価でないことから、アルミからなるシートが好ましい。
上記プライマー処理に用いられるプライマーは特に限定されず、例えば、ポリメントNK−350、ポリメントNK−380(いずれも日本触媒社製)等が挙げられる。
また、本発明の後硬化テープを製造する方法として、例えば、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー、上記エポキシ樹脂、上記アミン系エポキシ熱潜在性硬化剤、及び、必要に応じて光ラジカル重合開始剤等の他の成分を、溶剤を用いることなく混合した後、シート状にキャストし、紫外線を照射することにより上記モノマーを重合させて、上記基材に積層する方法も挙げられる。この方法によれば、溶剤を用いる必要がないため乾燥等の加熱を伴う工程において硬化反応が進行してしまう可能性が低く、また、厚膜の後硬化テープを製造することができる。
本発明の後硬化テープを硬化させる方法は特に限定されないが、高周波誘導加熱が好ましい。高周波誘導加熱によれば、本発明の後硬化テープをより低温かつ短時間で硬化させることができ、生産性が向上する。
従って、本発明の後硬化テープを用いて接合部材を接合する場合には、本発明の後硬化テープと接合部材とを貼り合わせて集成体を得た後、高周波誘導加熱装置を用いて高周波印加することにより、得られた集成体を加熱する方法が好ましい。
なお、高周波誘導加熱装置としては、例えば、EASY WELDER SEW−2110(SMART CORPORATION社製)、MU−1700(SKメディカル電子社製)等が用いられる。
表1〜6の配合に従って、光重合により(メタ)アクリル系ポリマーとなるモノマー、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製「jER828」)、エポキシ熱潜在性硬化剤、光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製「イルガキュア651」)、及び、その他の配合成分を均一に混合して塗液を得た。得られた塗液に窒素を吹き込んで酸素を追い出した後、厚さ38μmのシリコン離型処理PETフィルム2枚を用いて、各々の離型処理面が塗液に接し、かつ、塗液の厚みが0.2mmとなるように2枚のシリコン離型処理PETフィルムの間に塗液を挟み、主波長365nmの蛍光ランプで2mWの紫外線を5分間照射してモノマーを重合し、厚さ0.25mmの粘着剤テープを得た。
参考例1〜25、実施例26〜38、比較例1〜15で得られた試験片について、下記のように評価した。結果を表1〜6に示した。
得られた試験片を23℃で20分間養生した後、引張り試験機を用いて、23℃及びクロスヘッドスピード50mm/分の条件で、せん断引っ張り試験を行った。最大破壊強度をせん断接着力として評価した。
MU−1700(SKメディカル電子社製)を用いて高周波印加することにより、試験片を加熱して粘着剤層を硬化させた。硬化に際しては、アルミ板に熱電対を貼り付け、温度を測定しながらフィードバック制御を行い、所定の温度になるように制御した。加熱温度と加熱時間とを表1〜6に示した。なお、参考例13、14、比較例11、12、14、15では、誘導加熱の代わりに、オーブン中にて表2、6に示した温度及び時間で加熱した。
得られた試験片を、更に、23℃にて3日養生してから、上記(1)と同様にしてせん断接着力を評価した。
上記(2)と同様にして試験片を加熱して粘着剤層を硬化させ、90℃の水中に2日間浸漬した後、上記(2)と同様にしてせん断接着力を評価した。
表7の配合に従って、光重合により(メタ)アクリル系ポリマーとなるモノマー、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学社製「jER828」)、エポキシ熱潜在性硬化剤、光ラジカル重合開始剤(チバガイギー社製「イルガキュア651」)、及び、その他の配合成分を均一に混合して塗液を得た。得られた塗液に窒素を吹き込んで酸素を追い出した後、厚さ38μmのシリコン離型処理PETフィルム2枚を用意して、各々の離型処理面が塗液に接し、かつ、塗液の厚みが0.2mmとなるように2枚のシリコン離型処理PETフィルムの間に塗液を挟み、主波長365nmの蛍光ランプで2mWの紫外線を5分間照射してモノマーを重合し、厚さ0.2mmの粘着剤テープを得た。
参考例39〜43で得られた試験片について、下記のように評価した。結果を表7に示した。
得られた試験片を23℃で20分間養生した後、引張り試験機を用いて、23℃及びクロスヘッドスピード50mm/分の条件で、せん断引っ張り試験を行った。最大破壊強度をせん断接着力として評価した。
EASY WELDER SEW−2110(SMART CORPORATIO社製)を用いて高周波印加することにより、試験片を加熱して粘着剤層を硬化させた。硬化に際しては、後硬化テープとガラス板の間に熱伝対を挟み、加熱温度を測定しながら行った。また、EASY WELDER SEW−2110の高周波印加スイッチをON−OFFすることで、所定の温度になるように制御した。高周波加熱温度及び高周波印加時間(累計時間)を表7に示した。
得られた試験片を、更に、23℃にて3日養生してから、上記(1)と同様にしてせん断接着力を評価した。
上記(2)と同様にして試験片を加熱して粘着剤層を硬化させ、90℃の水中に2日間浸漬した後、上記(2)と同様にしてせん断接着力を評価した。
Claims (4)
- (メタ)アクリル系ポリマーとエポキシ樹脂とアミン系エポキシ熱潜在性硬化剤とを含有する粘着剤層を有する後硬化テープであって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーと、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマーとを共重合してなる共重合体からなり、
前記(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマーは、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド又はアクリルアミドである
ことを特徴とする後硬化テープ。 - 前記共重合体における、SP値が9.4以下の(メタ)アクリル系モノマーに由来する成分の構成比が65〜95重量%であり、かつ、該(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なSP値が9.5以上のビニル系モノマーに由来する成分の構成比が5〜35重量%であることを特徴とする請求項1記載の後硬化テープ。
- 更に、基材を有し、前記基材は、高周波誘導加熱により発熱する発熱シートであることを特徴とする請求項1又は2記載の後硬化テープ。
- 請求項1、2又は3記載の後硬化テープを用いた接合部材の接合方法であって、
前記後硬化テープと前記接合部材とを貼り合わせて集成体を得る工程と、
高周波誘導加熱装置を用いて高周波印加することにより、前記集成体を加熱する工程とを有する
ことを特徴とする接合部材の接合方法。
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