JP5923392B2 - 高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、熱伝導性に優れた放熱材料であって、射出成形可能な熱可塑性樹脂組成物に関する。
熱可塑性樹脂組成物をパソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装など種々の用途に使用する際、プラスチックは金属材料など無機物と比較して熱伝導性が低いため、発生する熱を逃がしづらいことが問題になることがある。このような課題を解決するため、高熱伝導性無機物を大量に熱可塑性樹脂中に配合することで、高熱伝導性樹脂組成物を得ようとする試みが広くなされている。そのためには、グラファイト、炭素繊維、アルミナ、窒化ホウ素等の高熱伝導性無機物を、通常は30Vol%以上、さらには50Vol%以上もの高含有量で樹脂中に配合する必要がある。しかしながら、無機物を大量に配合しても樹脂単体の熱伝導性が低いために、樹脂組成物の熱伝導率には限界があった。そこで樹脂単体の熱伝導性の向上が求められていた。
樹脂単体の熱伝導性が優れた熱可塑性樹脂としては、延伸、磁場配向など特殊な成形加工なしに、射出成形により成形された樹脂単体が高熱伝導性を有する熱可塑性樹脂についての研究報告はほとんどなく、数少ない例として特許文献1が挙げられる。特許文献1に記載されているように、本発明の発明者らは樹脂単体で高熱伝導性を示す熱可塑性樹脂を見出してきた。
特許文献1には、特許文献1に記載の熱可塑性樹脂に窒化ホウ素などの無機充填剤を配合した場合、汎用樹脂に配合した場合よりも優れた熱伝導性を得られることが示されているが、その熱伝導性は未だ十分とはいえず、さらに、高い熱伝導性のために成形時の金型内での冷却固化が速く、成形体表面に模様が浮かび上がるなどという外観上の問題があった。また、特許文献2、3には、窒化アルミニウムを種々の熱可塑性樹脂に配合した例が記載されているが、いずれも窒化アルミニウムを100〜150重量部配合しても熱伝導率は2W/(m・K)と非常に低い。
国際公開番号WO2010/050202号 国際公開番号WO07/066711号 特許第4419529号
本発明は、優れた熱伝導性を示し、かつ良好な成形体外観を備えた熱可塑性樹脂組成物を提供することが目的である。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、高熱伝導性を有する特定の分子構造の重縮合体に特定量の窒化アルミニウムを配合することによって、得られた樹脂組成物が非常に高い熱伝導率を示しながら、良好な成形体外観を備えることを見出し、本発明に至った。一般に、高い熱伝導性の樹脂組成物は冷却固化が速いために、成形体表面に模様が浮かび上がるなどという外観上の問題が起こる傾向にあり、窒化アルミニウムを用いて優れた熱伝導性と良好な成形体外観を両立できたことは思いがけない発見であった。即ち、本発明は、下記1)〜8)である。
1)
主鎖の構造が一般式(1)
Figure 0005923392
(式中、XはO、COの群から選ばれる2価の置換基を示す)
で表されるビフェニル基を有するユニット(A)25〜60モル%、
一般式(2)
−Y−R−Y− (2)
(式中、Rは主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の直鎖状置換基を示す。YはO、COの群から選ばれる2価の置換基を示す)
で表されるユニット(B)25〜60モル%、
一般式(3)
−Z1−M−Z2− (3)
(式中、Z1、Z2はO、NH、CO、S、NHCOの群から選ばれる2価の置換基を示す。Mは主鎖の折り畳み効果を有する非縮合芳香族基、縮合芳香族基、複素環基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。)
で表されるユニット(C)0〜25モル%(ただしユニット(A)、(B)、(C)の合計を100モル%とする)からなり、樹脂単体の熱伝導率が0.4W/(m・K)以上である熱可塑性樹脂(i)100重量部に対して、窒化アルミニウム(ii)を50〜250重量部を含有してなる、熱可塑性樹脂組成物。
2)
前記一般式(1)のXがO、一般式(2)のYがCOである1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
3)
前記熱可塑性樹脂(i)のRに相当する部分が直鎖の脂肪族炭化水素鎖である、1)または2)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
4)
前記熱可塑性樹脂(i)のRに相当する部分の主鎖原子数が偶数である、1)〜3)のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
5)
前記熱可塑性樹脂(i)のRが−(CH28−、−(CH210−、−(CH212−から選ばれる少なくとも1種である、1)〜4)のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
6)
前記熱可塑性樹脂(i)のMが以下に示す構造のうちいずれか1種である、1)〜5)のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
Figure 0005923392
7)
前記熱可塑性樹脂(i)の数平均分子量が3000〜40000である、1)〜6)のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
8)
1)〜7)のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する成形体。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた熱伝導性を示し、かつ良好な成形体外観を備える。
本発明における熱可塑性樹脂は、主鎖の構造が一般式(1)
Figure 0005923392
(式中、XはO、COの群から選ばれる2価の置換基を示す)
で表されるビフェニル基を有するユニット(A)25〜60モル%、
一般式(2)
−Y−R−Y− (2)
(式中、Rは主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の直鎖状置換基を示す。YはO、COの群から選ばれる2価の置換基を示す)
で表されるユニット(B)25〜60モル%、
一般式(3)
−Z1−M−Z2− (3)
(式中、Z1、Z2はO、NH、CO、S、NHCOの群から選ばれる2価の置換基を示す。Mは主鎖の折り畳み効果を有する非縮合芳香族基、縮合芳香族基、複素環基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。)
で表されるユニット(C)0〜25モル%(ただしユニット(A)、(B)、(C)の合計を100モル%とする)からなることを特徴とし、樹脂単体の熱伝導率が0.4W/(m・K)以上である。
本発明で言う熱可塑性とは、加熱により可塑化する性質のことであり、本発明の熱可塑性樹脂は、好ましくは、ユニット(A)が30〜55モル%であり、ユニット(B)が30〜55モル%であり、ユニット(C)が0〜20モル%である熱可塑性樹脂である。より好ましくは、ユニット(A)が30〜48%であり、ユニット(B)が45〜55モル%であり、ユニット(C)が0〜15モル%である熱可塑性樹脂である。ユニット(C)が26モル%以上であると熱伝導率が低下する場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂の熱伝導率は0.4W/(m・K)以上であり、好ましくは0.8W/(m・K)以上であり、さらに好ましくは1.0W/(m・K)以上である。熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、成形時に磁場、電圧印加、ラビング、延伸等の物理的処理を施さなければ、一般的には30W/(m・K)以下、さらには10W/(m・K)以下となる。
一般式(1)
Figure 0005923392
(式中、XはO、COの群から選ばれる2価の置換基を示す)
中のXとしては、熱伝導性の優れる樹脂が得られるという観点から、Oであることが好ましい。
一般式(2)
−Y−R−Y− (2)
(式中、Rは主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の直鎖状置換基を示す。YはO、COの群から選ばれる2価の置換基を示す)
中のYとしては、熱伝導性の優れる樹脂が得られるという観点から、COであることが好ましい。
一般式(2)中のRは、主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の直鎖状置換基を表し、分岐を含まない直鎖の脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。分岐を含む場合、結晶化度が低下し、熱伝導率が低下する場合がある。また、Rは飽和でも不飽和でもよいが、飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。不飽和結合を含む場合、十分な屈曲性が得られず、熱伝導率の低下を招く場合がある。Rは炭素数2〜20の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましく、炭素数4〜18の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることがより好ましく、特に炭素数8〜14の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。Rの主鎖原子数は偶数であることが好ましい。奇数の場合、結晶化度が低下し、熱伝導率が低下する場合がある。特に熱伝導性の優れる樹脂が得られるという観点から、Rは−(CH28−、−(CH210−、−(CH212−から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(3)
−Z1−M−Z2− (3)
(式中、Z1、Z2はO、NH、CO、S、NHCOの群から選ばれる2価の置換基を示す。Mは主鎖の折り畳み効果を有する非縮合芳香族基、縮合芳香族基、複素環基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。)
について、ここで言う主鎖の折り畳み効果とは、高分子主鎖を折り畳むように屈曲させる効果を意味し、主鎖をなす結合どうしの角度が150度以下、好ましくは120度以下、より好ましくは60度以下である。一般式(3)中のMの具体例としては、以下で表される基が挙げられる。
Figure 0005923392
熱伝導性の優れる樹脂が得られるという観点から、好ましい一般式(3)中のMの具体例としては、以下で表される基が挙げられる。
Figure 0005923392
さらに熱伝導性の優れる樹脂が得られるという観点から、以下で表される基であることがより好ましい。
Figure 0005923392
一般式(3)中のZ1、Z2はO、NH、CO、S、NHCOの群から選ばれる2価の置換基を表し、熱伝導性の優れる樹脂が得られるという観点から、Z1、Z2はO、NH、COのいずれかであることが好ましく、Z1、Z2共にOであることがより好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂はサーモトロピック液晶性を示し、液晶相転移温度と等方相転移温度を有する。本発明の熱可塑性樹脂を射出成形する際、樹脂を液晶相転移温度と等方相転移温度の間の温度に加熱して液晶状態で射出すると、高熱伝導性を発現する。ここで言う液晶相転移温度と等方相転移温度とは、示差走査熱量測定(DSC)において昇温過程で見られる2つのピークのうち、それぞれ低温側のものと高温側のものである。
本発明における熱可塑性樹脂の数平均分子量とはポリスチレンを標準とし、本発明における熱可塑性樹脂をp−クロロフェノールとトルエンの体積比3:8混合溶媒に0.25重量%濃度となるように溶解して調製した溶液を用いて、GPCにて80℃で測定した値である。本発明における熱可塑性樹脂の数平均分子量は好ましくは3000〜40000であり、より好ましくは5000〜30000であり、さらに好ましくは7000〜20000である。数平均分子量が3000未満または40000より大きい場合、同一の一次構造を有する樹脂であっても熱伝導率が0.4W/(m・K)未満になる場合がある。
本発明に関わる熱可塑性樹脂は、公知のいかなる方法で製造されても構わない。構造の制御が簡便であるという観点から、ビフェニル基の両末端に反応性官能基を有する化合物と、直鎖状置換基Rの両末端に反応性官能基を有する化合物と、主鎖の折り畳み効果を有する置換基Mに2つの反応性官能基を有する化合物とを反応させて製造する方法が好ましい。このような反応性官能基としては水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、チオール基、イソシアネート基など公知のものを使用でき、これらを反応させる条件も特に限定されない。
合成が簡便であるという観点から、ビフェニル基の両末端に反応性官能基を有する化合物と、直鎖状置換基Rの両末端に反応性官能基を有する化合物の組合せについては、ビフェニル基の両末端に水酸基を有する化合物と、直鎖状置換基Rの両末端にカルボキシル基を有する化合物、または、ビフェニル基の両末端にカルボキシル基またはエステル基を有する化合物と、直鎖状置換基Rの両末端に水酸基を有する化合物の組合せが好ましい。また、主鎖の折り畳み効果を有する置換基Mに2つの反応性官能基を有する化合物については、主鎖の折り畳み効果を有する置換基Mに水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基のいずれか少なくとも1種を有することが好ましい。
ビフェニル基の両末端に水酸基を有する化合物と、直鎖状置換基Rの両末端にカルボキシル基を有する化合物と、主鎖の折り畳み効果を有する置換基Mに水酸基を有する化合物からなる熱可塑性樹脂の製造方法の一例としては、化合物の水酸基を無水酢酸等の低級脂肪酸を用いてそれぞれ個別に、または一括して低級脂肪酸エステルとした後、別の反応槽または同一の反応槽で、直鎖状置換基Rの両末端にカルボキシル基を有する化合物と脱低級脂肪酸重縮合反応させる方法が挙げられる。重縮合反応は、実質的に溶媒の存在しない状態で、通常220〜330℃、好ましくは240〜310℃の温度で、窒素等の不活性ガスの存在下、常圧または減圧下に、0.5〜5時間行われる。反応温度が220℃より低いと反応の進行は遅く、330℃より高い場合は分解等の副反応が起こりやすい。減圧下で反応させる場合は段階的に減圧度を高くすることが好ましい。急激に高真空度まで減圧した場合、直鎖状置換基Rを有するモノマー、主鎖の折り畳み効果を有するモノマーが揮発し、望む組成、または分子量の樹脂が得られない場合がある。到達真空度は40Torr以下が好ましく、30Torr以下がより好ましく、20Torr以下がさらに好ましく、10Torr以下が特に好ましい。真空度が40Torrより高い場合、十分に脱酸が進まず、低分子量の樹脂が得られることがある。多段階の反応温度を採用してもかまわないし、場合により昇温中あるいは最高温度に達したらすぐに反応生成物を溶融状態で抜き出し、回収することもできる。得られた熱可塑性樹脂はそのままで使用してもよいし、未反応原料を除去する、または、物性を上げる意味から固相重合を行なうこともできる。固相重合を行なう場合には、得られた熱可塑性樹脂を3mm以下、好ましくは1mm以下の粒径の粒子に機械的に粉砕し、固相状態のまま100〜350℃で窒素等の不活性ガス雰囲気下、または減圧下に1〜30時間処理することが好ましい。ポリマー粒子の粒径が3mmより大きくなると、処理が十分でなく、物性上の問題を生じるため好ましくない。固相重合時の処理温度や昇温速度は、熱可塑性樹脂粒子どうしが融着を起こさないように選ぶことが好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂の製造に用いられる低級脂肪酸の酸無水物としては、炭素数2〜5個の低級脂肪酸の酸無水物、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロム酢酸、無水ジブロム酢酸、無水トリブロム酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸等が挙げられるが、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリクロル酢酸が特に好適に用いられる。低級脂肪酸の酸無水物の使用量は、用いるモノマーが有する水酸基とアミノ基の合計に対し1.01〜1.5倍当量、好ましくは1.02〜1.2倍当量である。1.01倍当量未満である場合、低級脂肪酸の酸無水物が揮発することによって、水酸基とアミノ基が低級脂肪酸の無水物と反応しきらないことがあり、低分子量の樹脂が得られることがある。その他、ビフェニル基の両末端にカルボキシル基またはエステル基を有する化合物と、置換基Rの両末端に水酸基を有する化合物と、主鎖の折り畳み効果を有する置換基Mにカルボキシル基またはエステル基を有する化合物からなる熱可塑性樹脂の製造方法については例えば、特開平2−258864号公報に記載のように4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチルと脂肪族ジオールを溶融重合する方法が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂の製造には触媒を使用してもよい。触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の有機化合物触媒を挙げることができる。
前記触媒の添加量としては、熱可塑性樹脂の総重量に対し、通常、0.1×10-2〜100×10-2重量%、好ましくは0.5×10-2〜50×10-2重量%、さらに好ましくは1×10-2〜10×10-2重量%用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂の末端構造は特に限定されないが、射出成形に適した樹脂が得られるという観点から、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アシル基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基、チオール基、イソシアネート基、アルキル基などによって末端が封止されていることが好ましい。末端にエポキシ基、マレイミド基などの反応性が高い官能基を有する場合、樹脂が熱硬化性となり、射出成形性が損なわれることがある。高い熱伝導性を示すという観点から、末端構造はカルボキシル基、またはアルキル基であることが特に好ましい。末端構造がカルボキシル基である場合、分子鎖の全末端に対するカルボキシル基の割合は60モル%以上であり、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上である。60モル%未満の場合は、無機充填剤を配合した際に、末端のカルボキシル基が60モル%以上の樹脂と比較して樹脂組成物の熱伝導率が低くなることがある。末端構造がアルキル基である場合、炭素数1〜20の1〜3級アルコール、または脂肪族モノカルボン酸で末端封止したものが好ましく、炭素数1〜20の脂肪族モノカルボン酸がより好ましく、炭素数10〜20の脂肪族モノカルボン酸がさらに好ましい。
本発明に用いられる窒化アルミニウム(ii)は、粉末であっても、粉末を酸化イットリウムなどの焼結助剤とともに高温焼結した焼結体であってもよい。また、本発明において用いられる窒化アルミニウム(ii)は、その製造方法を問わず、アルミニウム粉末と窒素ガスとの反応によって合成する直接窒化法で製造したものでも、アルミナ粉末と炭素粉末、窒素ガスによって合成する還元窒化法で製造したものでもよい。
本発明に用いられる窒化アルミニウム(ii)の粒子形状は、球状、破砕状、ウィスカー状、繊維状、テトラポット状など、特に規定しない。
本発明に用いられる窒化アルミニウム(ii)は、高い熱伝導性を有する樹脂組成物が得られるという観点から、その粒子径は大きいものほど好ましい。しかし、あまりに粒子径が大きすぎると、粒子表面の凹凸により、伝熱抵抗となる空気層が形成されやすくなる、成形加工の過程で押出混練機や射出成形機などの金属部を磨耗する、などの問題が起こりうるので、平均粒子径は1〜80μmであることが望ましく、1〜60μmであることがより好ましい。
本発明に用いられる窒化アルミニウム(ii)の含有量は、本発明の熱可塑性樹脂100重量部に対して、50〜250重量部であり、より好ましくは80〜200重量部である。50重量部未満の場合、十分な熱伝導性が得られにくく、250重量部より多い場合、樹脂組成物の流動性を低下させたり、成形加工の過程で押出混練機や射出成形機などの金属部を磨耗させたりする場合がある。
本発明における窒化アルミニウム(ii)は、樹脂との界面の接着性を高めたり、分散性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等従来公知のものを使用することができる。中でも、エポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。無機化合物の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。表面処理によって、窒化アルミニウム表面に薄い被膜が形成され、樹脂との界面の接着性が向上するとともに、耐水性を著しく向上することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率は、好ましくは0.4W/(m・K)以上であり、より好ましくは1.0W/(m・K)以上、さらに好ましくは5.0W/(m・K)以上、特に好ましくは10W/(m・K)以上である。この熱伝導率が0.4W/(m・K)未満であると、電子部品から発生する熱を効率的に外部に伝えることが困難である。熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には100W/(m・K)以下、さらには80W/(m・K)以下のものが用いられる。本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、優れた熱伝導性を有するため、上記の範囲の熱伝導率を有する高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を容易に得ることが可能となる。
本発明における樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でさらに無機充填剤を加えてもよい。無機充填剤としては、公知の充填剤を広く使用できる。無機充填剤単体での熱伝導率は好ましくは1W/(m・K)以上、より好ましくは10W/(m・K)以上、さらに好ましくは20W/(m・K)以上、特に好ましくは30W/(m・K)以上のものが用いられる。無機充填剤単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には3000W/(m・K)以下、さらには2500W/(m・K)以下のものが好ましく用いられる。
無機充填剤の使用量は、好ましくは熱可塑性樹脂と、無機充填剤と窒化アルミニウムの混合物の体積比で90:10〜30:70であり、より好ましくは80:20〜40:60であり、特に好ましくは70:30〜50:50である。熱可塑性樹脂と、無機充填剤と窒化アルミニウムの混合物の体積比が100:0〜90:10では満足な熱伝導率が得られないことがある。熱可塑性樹脂と、無機充填剤と窒化アルミニウムの混合物の体積比が30:70〜0:100では機械物性が低下することがある。本発明の熱可塑性樹脂が優れた熱伝導性を有するため、熱可塑性樹脂と、無機充填剤と窒化アルミニウムの混合物の体積比で90:10〜70:30と少量の場合でも、樹脂組成物は優れた熱伝導性を有し、さらに同時に無機充填剤の使用量が少量のために密度を下げることができる。熱伝導性に優れ、かつ密度が小さいことは電気・電子工業分野、自動車分野等さまざまな状況で放熱・伝熱用樹脂材料として用いる際に有利である。
樹脂組成物として特に電気絶縁性が要求されない用途に用いる場合には、無機充填剤としては金属系化合物や導電性炭素化合物等が好適に用いられる。これらの中でも、熱伝導性に優れることから、グラファイト、炭素繊維等の導電性炭素材料、各種金属を微粒子化した導電性金属粉、各種金属を繊維状に加工した導電性金属繊維、軟磁性フェライト等の各種フェライト類、酸化亜鉛等の金属酸化物、等の無機充填剤を好適に用いることができる。
樹脂組成物として電気絶縁性が要求される用途に用いる場合には、無機充填剤としては電気絶縁性を示す化合物が好適に用いられる。電気絶縁性とは具体的には、電気抵抗率1Ω・cm以上のものを示すこととするが、好ましくは10Ω・cm以上、より好ましくは105Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上、最も好ましくは1013Ω・cm以上のものを用いるのが好ましい。電気抵抗率の上限には特に制限は無いが、一般的には1018Ω・cm以下である。本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の電気絶縁性も上記範囲にあることが好ましい。
無機充填剤のうち、電気絶縁性を示す化合物としては具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ダイヤモンド等の絶縁性炭素材料、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が挙げられる。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。
無機充填剤の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体等種々の形状が挙げられる。またこれら無機充填剤は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地等には特に限定はなく、適宜選択することができる。これら無機充填剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種類以上を併用してもよい。
これら無機充填剤は、樹脂と無機化合物との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等従来公知のものを使用することができる。中でも、エポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。無機化合物の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、前記の窒化アルミニウム(ii)、および無機充填剤以外にも、その目的に応じて公知の充填剤を広く使用することができる。樹脂単体の熱伝導率が高いために、公知の充填剤の熱伝導率が10W/(m・K)未満と比較的低くても、樹脂組成物として高い熱伝導率を有する。無機充填剤以外の充填剤としては、例えばケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、石英粉末、結晶シリカ、カオリン、タルク、三酸化アンチモン、微粉末マイカ、二硫化モリブデン、ロックウール、セラミック繊維、アスベスト等の無機質繊維、及び、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスクロス、溶融シリカ等のガラス製充填剤が挙げられる。これら充填剤を用いることで、例えば熱伝導性、機械強度、または耐摩耗性など樹脂組成物を応用する上で好ましい特性を向上させることが可能となる。さらに必要に応じて紙、パルプ、木材、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ボロン繊維等の合成繊維、ポリオレフィン粉末等の樹脂粉末、等の有機充填剤を併用して配合することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果の発揮を失わない範囲で、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂等いかなる公知の樹脂も含有させて構わない。好ましい樹脂の具体例として、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ナイロン6、ナイロン6,6等が挙げられる。これら樹脂の使用量は、通常樹脂組成物に含まれる本発明の熱可塑性樹脂100重量部に対し、0〜10000重量部の範囲である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、前記樹脂や窒化アルミニウム、無機充填剤以外の添加剤として、さらに目的に応じて他のいかなる成分、例えば、補強剤、増粘剤、離型剤、カップリング剤、難燃剤、耐炎剤、顔料、着色剤、その他の助剤等を本発明の効果を失わない範囲で、添加することができる。これらの添加剤の使用量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、合計で0〜20重量部の範囲であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されるものではない。例えば、上述した成分や添加剤等を乾燥させた後、単軸、2軸等の押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。また、配合成分が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて溶融混練機に途中添加して製造することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。特に優れた成形加工性、高熱伝導性という優れた特性を併せ持つことから、放熱・伝熱用樹脂材料として非常に有用である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品等の射出成形品等に好適に使用することができる。特に多くの熱を発する家電製品やOA機器において、外装材料として好適に用いることができる。さらには発熱源を内部に有するがファン等による強制冷却が困難な電子機器において、内部で発生する熱を外部へ放熱するために、これらの機器の外装材として好適に用いられる。これらの中でも好ましい装置として、ノートパソコンなどの携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ等の小型あるいは携帯型電子機器類の筐体、ハウジング、外装材用樹脂として非常に有用である。また自動車や電車等におけるバッテリー周辺用樹脂、家電機器の携帯バッテリー用樹脂、ブレーカー等の配電部品用樹脂、モーター等の封止用材料としても非常に有用に用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来良く知られている樹脂および樹脂組成物に比べて、一層高熱伝導化することができ、また成形加工性が良好であるため、上記の用途における部品あるいは筐体用として有用な特性を有するものである。
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物について、製造例、実施例及び比較例を挙げさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、以下に挙げる各試薬は特記しない限り、和光純薬工業製の試薬を精製せずに用いた。
[評価方法]
数平均分子量:本発明に用いる熱可塑性樹脂をp−クロロフェノール(東京化成工業製)とトルエンの体積比3:8混合溶媒に0.25重量%濃度となるように溶解して試料を調製した。標準物質はポリスチレンとし、同様の試料溶液を調製した。高温GPC(Viscotek社製 350 HT−GPC System)にてカラム温度:80℃、流速1.00mL/minの条件で測定した。検出器としては、示差屈折計(RI)を使用した。
試験片成形:得られたペレット状の樹脂組成物を、熱風乾燥機を用いて120℃で4時間乾燥した後、射出成形機にて厚み1mm×25mmφの円板状サンプルの試験片を成形した。このとき、シリンダー温度は220〜240℃、金型温度120〜150℃に設定し、液晶状態で射出した。
熱伝導率:厚み1mm×25mmφの円板状サンプルにて、レーザーフラッシュ法熱伝導率測定装置(NETZSCH社製 LFA447)で、室温大気中におけるサンプルの厚み方向の熱伝導率を測定した。
成形体外観:得られた成形体表面における着色や模様などの外観不良を目視にて観察し、以下の基準で評価した。○:ごくわずかに着色や模様などが見られるものの実使用上問題ない範囲で、外観良好、△:一部着色や模様などの外観不良が見られる、×:着色や模様などがあり外観不良。
[製造例1]
還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ドデカン二酸、無水酢酸をモル比でそれぞれ1.0:1.1:2.1の割合で仕込み、酢酸ナトリウムを触媒とし、常圧、窒素雰囲気下で145℃にて反応させ均一な溶液を得た後、酢酸を留去しながら2℃/minで250℃まで昇温し、250℃で1時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約40分かけて10Torrまで減圧した後、減圧状態を維持した。減圧開始から3時間後、窒素ガスで常圧に戻し、生成したポリマーを取り出した。得られた樹脂の数平均分子量は9100、樹脂単体の熱伝導率は0.9W/(m・K)であった。得られた樹脂を(A−1)とする。
[製造例2]
還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、セバシン酸、カテコール、無水酢酸をモル比でそれぞれ0.9:1.1:0.1:2.1の割合で仕込み、酢酸ナトリウムを触媒とし、常圧、窒素雰囲気下で145℃にて反応させ均一な溶液を得た後、酢酸を留去しながら2℃/minで240℃まで昇温し、240℃で30分撹拌した。さらに1℃/minで260℃まで昇温し、260℃で1時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約40分かけて10Torrまで減圧した後、減圧状態を維持した。減圧開始から3時間後、窒素ガスで常圧に戻し、生成したポリマーを取り出した。得られた樹脂の数平均分子量は7700、樹脂単体の熱伝導率は0.9W/(m・K)であった。得られた樹脂を(A−2)とする。
[実施例1]
製造例1で得られた樹脂(A−1)を、熱風乾燥機を用いて120℃で4時間乾燥し、これと表面がシリカコートされた窒化アルミニウム粉末(東洋アルミ社製トーヤルナイトFLA、比重:3.3、単体での熱伝導率200W/(m・K)、平均粒子径12μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1014Ω・cm)の体積比率が70:30(重量比率で、100:116)となるように混合したものを準備した。これに、フェノール系安定剤(株式会社ADEKA製AO−60)およびリン系酸化防止剤(株式会社ADEKA製アデカスタブPEP−36)を樹脂100重量部に対してそれぞれ0.2重量部加えた。
この混合物を、株式会社テクノベル製15mm同方向回転完全噛合型二軸押出機KZW15−45MGを用いて、バレル温度を表1のように設定して溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。吐出量は20g/min、スクリュー回転数は100rpmに設定した。二軸押出機内における熱可塑性樹脂は、C1からC6へと順次流動し、ダイスヘッド部から吐出される。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形し、厚み方向の熱伝導率を測定した。熱伝導率は3.4W/(m・K)、成形体外観は○であった。
[実施例2]
樹脂と窒化アルミニウム粉末の体積比率が60:40(重量比率で、100:181)とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形し、厚み方向の熱伝導率を測定した。熱伝導率は6.1W/(m・K)、成形体外観は○であった。
[比較例1]
樹脂と窒化アルミニウム粉末の体積比率が90:10(重量比率で、100:30)とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形し、厚み方向の熱伝導率を測定した。熱伝導率は1.3W/(m・K)、成形体外観は○であった。熱伝導率は樹脂のそれに対してわずかしか向上せず、十分に高い熱伝導率は得られていない。
[比較例2]
窒化アルミニウム粉末に代えて、窒化ホウ素粉末(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製PT110、比重:2.3、単体での熱伝導率60W/(m・K)、平均粒子径45μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1014Ω・cm)を用い、樹脂と窒化ホウ素粉末の体積比率が60:40とした以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形し、厚み方向の熱伝導率を測定した。熱伝導率は3.3W/(m・K)、成形体外観は△であった。同じ体積比率の実施例2と比較して、熱伝導率が著しく低く、成形体にも外観不良が一部見られる。
[比較例3]
熱可塑性樹脂をナイロン6、窒化アルミニウム粉末をトクヤマ製Hグレード(平均粒子径1μm、表面無処理)とした以外は、実施例2と同様にして、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形し、厚み方向の熱伝導率を測定した。熱伝導率は2.2W/(m・K)、成形体外観は○であった。同じ体積比率の実施例2と比較して、熱伝導率が著しく低い。
[実施例3]
樹脂を(A−2)とし、その他にポリブチレンテレフタレート樹脂、窒化アルミニウム粉末(東洋アルミ社製トーヤルナイトFLA)、窒化ホウ素粉末、ガラス繊維(日本電気硝子株式会社製T187H/PL、単体での熱伝導率1.0W/(m・K)、繊維直径13μm、数平均繊維長3.0mm、電気絶縁性、体積固有抵抗1015Ω・cm)を用いて、これらの体積比率を45:5:15:20:15(樹脂(A−2)と窒化アルミニウム粉末の重量比率は100:91)として、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形し、厚み方向の熱伝導率を測定した。熱伝導率は2.7W/(m・K)、成形体外観は○であった。
[比較例4]
実施例2の、窒化アルミニウム粉末を窒化ホウ素粉末で置き換え、窒化ホウ素の体積比率を35とした以外は、実施例3と同様にして、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形し、厚み方向の熱伝導率を測定した。熱伝導率は2.1W/(m・K)、成形体外観は△であった。実施例3と比較して、熱伝導率は低く、成形体外観も悪い。
本実施例および比較例において、溶融混練の際に設定したバレル温度を表1に示す。
Figure 0005923392
本発明の熱可塑性樹脂組成物は優れた熱伝導性を示し、かつ良好な成形体外観を有する。このような熱可塑性樹脂組成物は電気・電子工業分野、自動車分野等さまざまな状況で放熱・伝熱用樹脂材料として用いることが可能で、工業的に有用である。

Claims (8)

  1. 主鎖の構造が一般式(1)
    Figure 0005923392
    (式中、XはO、COの群から選ばれる2価の置換基を示す)
    で表されるビフェニル基を有するユニット(A)25〜60モル%、
    一般式(2)
    −Y−R−Y− (2)
    (式中、Rは主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の直鎖状置換基を示す。YはO、COの群から選ばれる2価の置換基を示す)
    で表されるユニット(B)25〜60モル%、
    一般式(3)
    −Z1−M−Z2− (3)
    (式中、Z1、Z2はO、NH、CO、S、NHCOの群から選ばれる2価の置換基を示す。Mは主鎖の折り畳み効果を有する非縮合芳香族基、縮合芳香族基、複素環基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。)
    で表されるユニット(C)0〜25モル%(ただしユニット(A)、(B)、(C)の合計を100モル%とする)からなり、樹脂単体の熱伝導率が0.4W/(m・K)以上である熱可塑性樹脂(i)100重量部に対して、窒化アルミニウム(ii)を50〜250重量部を含有してなる、熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記一般式(1)のXがO、一般式(2)のYがCOである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記熱可塑性樹脂(i)のRに相当する部分が直鎖の脂肪族炭化水素鎖である、請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記熱可塑性樹脂(i)のRに相当する部分の主鎖原子数が偶数である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記熱可塑性樹脂(i)のRが−(CH28−、−(CH210−、−(CH212−から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記熱可塑性樹脂(i)のMが以下に示す構造のうちいずれか1種である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 0005923392
  7. 前記熱可塑性樹脂(i)の数平均分子量が3000〜40000である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する成形体。
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