JP6046484B2 - 熱伝導性熱可塑性樹脂成形体 - Google Patents

熱伝導性熱可塑性樹脂成形体 Download PDF

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本発明は、熱伝導性に優れる熱可塑性樹脂成形体に関する。
樹脂組成物をパソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、など種々の用途に使用する際、プラスチックは金属材料など無機物と比較して熱伝導性が低いため、発生する熱を逃がしづらいことが問題になることがある。このような課題を解決するため、熱伝導性充填剤を大量に熱可塑性樹脂中に配合することで、高熱伝導性樹脂組成物を得ようとする試みが広くなされている。熱伝導性充填剤としては、グラファイト、炭素繊維、アルミナ、窒化ホウ素、等の熱伝導性充填剤を、通常は30体積%以上、さらには50体積%以上もの高含有量で樹脂中に配合する必要がある。しかしながら、充填剤を大量に配合しても樹脂単体の熱伝導性が低いために、樹脂組成物の熱伝導率には限界があった。そこで樹脂単体の熱伝導性の向上が求められている。
熱可塑性樹脂については特許文献1に記載の、熱液晶ポリエステルを流動場、せん断場、磁場、及び電場から選ばれる少なくとも一種の外場によって配向させることで、熱液晶ポリエステルの配向方向に熱伝導性が高い樹脂成形体がある。該樹脂成形体について、所望の熱伝導率を得るには、磁場の場合、少なくとも3テスラ以上の磁束密度を必要とし、製造が困難である。
その他、延伸、磁場配向など特殊な成形加工なしに、樹脂単体が高熱伝導性を有する熱可塑性樹脂についての研究報告はほとんどなく、数少ない例として特許文献2に挙げられる本研究者らによって見出された熱可塑性樹脂がある。特許文献2に記載の熱可塑性樹脂は、樹脂中のラメラ晶の割合を高めることで高い熱伝導性を示すことが記載されているが、製造方法、成形方法等によって熱伝導率が変化するという課題があり、最適な高次構造とその制御方法については未解明であった。
また液晶ポリマーの一つである4,4‘−ビフェノールと脂肪族ジカルボン酸をモノマーとして重合される半芳香族の液晶ポリマーについて、これまで非特許文献1〜3を初め、多数研究がなされ、高結晶性のポリマーとして報告されているが非特許文献1〜3には熱伝導性について、および成形体とすること等については一切記載されていない。
特開2008−150525号公報 国際公開番号WO2010/050202号公報
Journal of Polymer Science Polymer Physics Edition, 21, 1119−1131(1983) Macromolecules, 16, 1271−1279(1983) Macromolecules, 17, 2288−2295(1984)
本発明は、熱伝導性に優れる熱可塑性樹脂成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定構造の熱可塑性樹脂を少なくとも含有する成形体について、厚み1mm未満に成形されると、成形体の厚み中心においてもより熱可塑性樹脂の分子鎖が厚み方向に配向できうるために、その熱伝導率は厚み1mm以上に成形された成形体の熱伝導率よりも高くなることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記1)〜9)である。
1)主として下記一般式(1)で示される単位の繰り返しからなる熱可塑性樹脂を少なくとも含有する成形体であって、体積の50%以上が厚み1.0mm未満であり、厚み1.0mm未満の部位において、広角X線散乱測定から求められる熱可塑性樹脂の分子鎖の厚み方向への配向度αが0.6以上1.0未満の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
−A−x−A−OCO(CHCOO− ...(1)
(式中、AおよびAは、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。xは、各々独立して直接結合、−O−、−S−、−CH−CH−、−C=C−、−C=C(Me)−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。mは2〜20の整数を示す。)
配向度α=(360°−ΣW)/360° ...(2)
(式中、Wは広角X線散乱測定における、分子鎖間の散乱ピークの方位角方向の0〜360°までの強度分布における半値幅を表す。)
2)前記熱可塑性樹脂の数平均分子量が3000〜40000であることを特徴とする1)に記載の熱可塑性樹脂成形体。
3)前記熱可塑性樹脂の−A−x−A−が下記一般式(3)であることを特徴とする、1)または2)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
(式中、Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、F、Cl、Br、I、CN、またはNO、yは2〜4の整数、nは0〜4の整数を示す。)
4)前記熱可塑性樹脂のmが4〜14の偶数から選ばれる少なくとも1種である1)〜3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
5)前記熱可塑性樹脂成形体が無機充填剤を含有することを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
6)前記無機充填剤が、グラファイト、導電性金属粉、軟磁性フェライト、炭素繊維、導電性金属繊維、酸化亜鉛およびカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種以上の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、5)に記載の熱可塑性樹脂成形体。
7)前記無機充填剤が、タルク、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンド、からなる群より選ばれる1種以上の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、5)に記載の熱可塑性樹脂成形体。
8)射出成形によって成形された1)〜7)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
9)前記射出成形時のシリンダーの温度がT以上T未満の温度であることを特徴とする8)に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
(式中、Tは熱可塑性樹脂の固相から液晶相への転移点、Tは液晶相から等方相への転移点を示す。)
本発明によれば、熱伝導性に優れた熱可塑性樹脂成形体を得ることができる。
実施例1で得られた板状成形体の広角X線散乱プロファイル 実施例4で得られた板状成形体の広角X線散乱プロファイル
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、主として下記一般式(1)で示される単位の繰り返しからなる熱可塑性樹脂を少なくとも含有する成形体であって、体積の50%以上が厚み1.0mm未満であり、厚み1.0mm未満の部位において、広角X線散乱測定から求められる熱可塑性樹脂の分子鎖の厚み方向への配向度αが0.6以上1.0未満の範囲であることを特徴とする。
−A−x−A−OCO(CHCOO− ...(1)
(式中、AおよびAは、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。xは、各々独立して直接結合、−O−、−S−、−CH−CH−、−C=C−、−C=C(Me)−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。mは2〜20の整数を示す。)
配向度α=(360°−ΣW)/360° ...(2)
(式中、Wは広角X線散乱測定における、分子鎖間の散乱ピークの方位角方向の0〜360°までの強度分布における半値幅を表す。)
ここで主としてとは、分子鎖の主鎖中に含まれる一般式(1)の量について、全構成単位に対して50mol%以上であり、好ましくは70mol%以上であり、より好ましくは90mol%以上であり、最も好ましくは実質的に100mol%であることをいう。50mol%未満の場合は、分子構造の乱れから高熱伝導性を示さない場合がある。このような熱可塑性樹脂の熱物性としては、昇温過程において、低温側からガラス転移点(以下T)、固相から液晶相への転移点Tおよび液晶相から等方相への転移点Tを示す。これらの相転移点は示差走査熱量測定(DSC測定)の昇温過程において吸熱ピークのピークトップとして確認できる。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、成形体の各部位が厚み1.0mm未満となるような形状の成形体とすることにより、流動場等によるせん断が成形体厚み中心部によく影響し、成形体全体で分子鎖の厚み方向への配向度を高くできるうえ、電子機器の薄肉軽量化にも貢献させることができる。流動場等によるせん断で分子鎖が厚み方向に配向する理由としては、本発明に関わる熱可塑性樹脂の分子鎖が折りたたんで形成するラメラ構造の配向に起因すると考えられる。ラメラ構造は薄く広い板状をしており、せん断によりラメラの板間が滑ることで、成形体の平面方向に配向する。分子鎖はラメラの板の厚み方向に配向しているために、ラメラ構造が成形体の平面方向に配向すると分子鎖は成形体の厚み方向に配向することになる。成形体の厚み1.0mm未満の箇所と厚み1.0mm以上の箇所の割合は、成形体の強度や意匠性などを考慮して適宜設定すれば良いが、好ましくは成形体の体積の55%以上、より好ましくは成形体の体積の60%以上、最も好ましくは成形体の体積の70%以上が厚み1.0mm未満となるように成形された成形体である。また好ましくは成形体の体積の50%以上が厚み0.9mm以下、より好ましくは0.8mm以下、さらに好ましくは0.7mm以下、最も好ましくは0.6mm以下である。一方で成形体の厚みが薄すぎると成形加工が困難となる場合や、成形体が衝撃に対して弱くなる場合がある。なお、成形体の厚みは全体が均一な厚みであっても良く、部分的に厚い部分と薄い部分を有していても良い。
分子鎖の厚み方向への配向度αは、樹脂成形体の広角X線散乱測定(透過)によって求められる値である。配向度αを求めるには、まず樹脂成形体をxyz空間に置いた際に、X線を成形体に対しx、y、zの3方向から成形体の厚み中央部に照射して透過させる。分子鎖が配向している場合には、少なくとも1方向から、普通は2方向からの測定結果で、2θ=20度付近において特定の方位角のみで散乱ピークが観測される。一方分子鎖が無配向状態の場合は方位角360度全体にわたりリングのように散乱ピークが観測される。この2θ=20度付近の位置に確認されるピークは、分子鎖間の距離を表す。この2θの値はポリマーの構造、樹脂組成物の配合の違いによって、15〜30度の範囲となる場合もある。この2θの値を固定して、さらに方位角方向に0度から360度までの強度を測定することにより、方位角方向の強度分布が得られる。特定の方位角のみで散乱ピークが観測される散乱プロファイルにおいて、この方位角方向の強度分布において、ピーク高さの半分の位置における幅(半値幅W)を求める。この半値幅Wを上記(2)式に代入することによって配向度αを算出する。(2)式のΣWとは、方位角方向の強度分布における複数のピークのそれぞれの半値幅Wの総和を意味する。本発明の熱可塑性樹脂成形体の厚み1.0mm未満の部位における、分子鎖の厚み方向への配向度αは0.6以上1.0未満の範囲であり、好ましくは0.65以上1.0未満であり、より好ましくは0.7以上1.0未満である。配向度αが0.6未満の場合は成形体の熱伝導率が低くなる。
本発明の数平均分子量とは、ポリスチレンを標準とし、p−クロロフェノールとトルエンの体積比3:8混合溶媒に0.25重量%濃度となるように溶解して調製した溶液を用いて高温GPC(Viscotek:350 HT−GPC System)にてカラム温度80℃、検出器を示差屈折計(RI)として測定した値である。
本発明に関わる熱可塑性樹脂の数平均分子量は3000〜40000であることが好ましく、上限を考慮すると3000〜30000であることがさらに好ましく、3000〜20000であることが特に好ましい。一方、下限を考慮すると、3000〜40000であることが好ましく、5000〜40000であることがさらに好ましく、7000〜40000であることが特に好ましい。さらに上限および下限を考慮すると、5000〜30000であることがさらに好ましく、7000〜20000であることが最も好ましい。数平均分子量が3000未満の場合は成形体としての機械強度が低くなる場合があり、40000より大きい場合は分子鎖の厚み方向への配向度が0.6未満になる場合がある。
一般式(1)に示す熱可塑性樹脂の構造は、同一分子中に棒状で剛直なメソゲン基と柔軟性基を持つことが特徴であり、ここでは−A−x−A−がメソゲン基に相当し、−(CH−が柔軟性基に相当する。
ここでA、Aは各々独立して、炭素数6〜12のベンゼン環を有する炭化水素基、炭素数10〜20のナフタレン環を有する炭化水素基、炭素数12〜24のビフェニル構造を有する炭化水素基、炭素数12〜36のベンゼン環を3個以上有する炭化水素基、炭素数12〜36の縮合芳香族基を有する炭化水素基、炭素数4〜36の脂環式複素環基から選択されるものであることが好ましい。
、Aの具体例としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、シクロヘキシル、ピリジル、ピリミジル、チオフェニレン等が挙げられる。また、これらは無置換であっても良く、脂肪族炭化水素基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基などの置換基を有する誘導体であっても良い。xは結合子であり、直接結合、−O−、−S−、−CH−CH−、−C=C−、−C=C(Me)−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。これらのうち、結合子に相当するxの主鎖の原子数が偶数であるものが好ましい。すなわち直接結合、−CH−CH−、−C=C−、−C=C(Me)−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基が好ましい。xの主鎖の原子数が奇数の場合、メソゲン基の分子幅の増加と、結合回転の自由度の増加による屈曲性のため、液晶相を示さない場合がある。
このような好ましいメソゲン基の具体例として、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、スチルベン、ジフェニルエーテル、1,2−ジフェニルエチレン、ジフェニルアセチレン、フェニルベンゾエート、フェニルベンズアミド、アゾベンゼン、2−ナフトエート、フェニル−2−ナフトエート、およびこれらの誘導体等から水素を2個除去した構造を持つ2価の基が挙げられるがこれらに限るものではない。
さらに液晶ポリマーのメソゲン基に相当する−A−x−A−が下記一般式(3)であることが好ましい。これらメソゲン基はその構造ゆえに剛直で配向性が高く、さらには入手または合成が容易である。
(式中、Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、F、Cl、Br、I、CN、またはNO、yは2〜4の整数、nは0〜4の整数を示す。)
一般式(1)のmはより高い熱伝導率を発現しやすいことから4〜14の偶数であることが好ましく、6〜12の偶数であることがより好ましく、中でも8、10、12のいずれかであることが好ましい。
本発明に関わる熱可塑性樹脂は、公知のいかなる方法で製造されても構わない。構造の制御が簡便であるという観点から、メソゲン基の両末端に水酸基を有する化合物と柔軟性基の両末端にカルボキシル基を有する化合物を反応させる製造方法が好ましい。
メソゲン基の両末端に水酸基を有する化合物と柔軟性基の両末端にカルボキシル基を有する化合物からなる熱可塑性樹脂の製造方法の一例としては、両末端に水酸基を有するメソゲン基を無水酢酸等の低級脂肪酸を用いてそれぞれ個別に、または一括して酢酸エステルとした後、別の反応槽または同一の反応槽で、柔軟性基の両末端にカルボキシル基を有する化合物と脱酢酸重縮合反応させる方法が挙げられる。重合反応は、実質的に溶媒の存在しない状態で、通常230〜350℃好ましくは250〜330℃の温度で、窒素等の不活性ガスの存在下、常圧または減圧下に、0.5〜5時間行われる。反応温度が230℃より低いと反応の進行は遅く、350℃より高い場合は分解等の副反応が起こりやすい。減圧下で反応させる場合は段階的に減圧度を高くすることが好ましい。急激に高真空度まで減圧した場合モノマーが揮発する場合がある。到達真空度は100トル以下が好ましく、50トル以下がより好ましく、10トル以下が特に好ましい。真空度が100トル以上の場合、重合反応に長時間を要する場合がある。多段階の反応温度を採用してもかまわないし、場合により昇温中あるいは最高温度に達したらすぐに反応生成物を溶融状態で抜き出し、回収することもできる。
重合工程にて用いられる低級脂肪酸の酸無水物としては,炭素数2〜5個の低級脂肪酸の酸無水物,たとえば無水酢酸,無水プロピオン酸、無水モノクロル酢酸,無水ジクロル酢酸,無水トリクロル酢酸,無水モノブロム酢酸,無水ジブロム酢酸,無水トリブロム酢酸,無水モノフルオロ酢酸,無水ジフルオロ酢酸,無水トリフルオロ酢酸,無水酪酸,無水イソ酪酸,無水吉草酸,無水ピバル酸等が挙げられるが,無水酢酸,無水プロピオン酸,無水トリクロル酢酸が特に好適に用いられる。低級脂肪酸の酸無水物の使用量は,用いるメソゲン基が有する水酸基の合計に対し1.01〜1.50倍当量,好ましくは1.02〜1.2倍当量である。
本発明における熱可塑性樹脂は、本発明の効果を失わない程度に他のモノマーを共重合して構わない。例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸またはカプロラクタム類、カプロラクトン類、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、脂環族ジカルボン酸、および脂環族ジオール、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールが挙げられる。本発明における他のモノマーの添加量は、通常50重量%未満であり、好ましくは30重量%未満であり、より好ましくは10重量%未満である。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、2―ヒドロキシ―7―ナフトエ酸、2―ヒドロキシ―3―ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、1,6―ナフタレンジカルボン酸、2,7―ナフタレンジカルボン酸、4,4’―ジカルボキシビフェニル、3,4’―ジカルボキシビフェニル、4,4’’―ジカルボキシターフェニル、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、ビス(3−カルボキシフェニル)エーテルおよびビス(3−カルボキシフェニル)エタン等、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ジオールの具体例としては、例えばハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェノールエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよび2,2’−ジヒドロキシビナフチル等、およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルスルフィドおよび2,2’−ジアミノビナフチルおよびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノビフェノキシエタン、4,4’−ジアミノビフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル(オキシジアニリン)、4−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸および7−アミノ−2−ナフトエ酸およびこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、および1,12−ドデカンジアミンなどが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジオールおよび脂環族ジオールの具体例としては、ヘキサヒドロテレフタル酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス−1,4−シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコールなどの直鎖状または分鎖状脂肪族ジオールなど、ならびにそれらの反応性誘導体が挙げられる。
芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールの具体例としては、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプト−6−ナフトエ酸、2−メルカプト−7−ナフトエ酸、ベンゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフタレン−ジチオール、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、6−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレン、7−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレンなど、ならびにそれらの反応性誘導体が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂成形体はその熱伝導性や機械物性等の各種物性を改善する目的で無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤の使用量は、好ましくは熱可塑性樹脂と無機充填剤の体積比で90:10〜30:70であり、より好ましくは80:20〜40:60であり、特に好ましくは70:30〜50:50である。熱可塑性樹脂と無機充填剤の体積比が100:0〜90:10では熱伝導率が満足に得られないことがある。熱可塑性樹脂と無機充填剤の体積比が30:70〜0:100では機械物性が低下することがある。本発明に関わる熱可塑性樹脂が優れた熱伝導性を有するため、無機充填剤の使用量が熱可塑性樹脂と無機充填剤の体積比で90:10〜70:30と少量の場合でも、樹脂成形体は優れた熱伝導性を有し、さらに同時に無機充填剤の使用量が少量だけに密度を下げることができる。熱伝導率に優れ、かつ密度が小さいことは電気・電子工業分野、自動車分野、等さまざまな状況で放熱・伝熱用樹脂材料として用いる際に有利である。
無機充填剤としては、公知の無機充填剤を広く使用できる。無機充填剤単体での熱伝導率は特に限定が無いが、好ましくは0.5W/m・K以上、より好ましくは1W/m・K以上のものである。得られる樹脂成形体が熱伝導性に優れるという観点からは、単体での熱伝導率が2W/m・K以上の熱伝導性充填剤であることが特に好ましい。
熱伝導性充填剤としては、公知の充填剤を広く使用できる。熱伝導性充填剤単体での熱伝導率は好ましくは2W/(m・K)以上、さらに好ましくは10W/(m・K)以上、最も好ましくは20W/(m・K)以上、特に好ましくは30W/(m・K)以上のものが用いられる。熱伝導性充填剤単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には3000W/(m・K)以下、さらには2500W/(m・K)以下、のものが好ましく用いられる。
成形体として特に電気絶縁性が要求されない用途に用いる場合には、高熱伝導性無機化合物としては金属系化合物または導電性炭素化合物等が好ましく用いられる。これらの中でも、熱伝導性に優れることから、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の導電性炭素材料、各種金属を微粒子化した導電性金属粉、各種金属を繊維状に加工した導電性金属繊維、各種フェライト類、酸化亜鉛、等の金属酸化物、を好ましく用いることができる。
高熱伝導性無機化合物のうち、電気絶縁性を示す化合物としては具体的には、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅、等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ダイヤモンド、等の絶縁性炭素材料、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、等の金属水酸化物、を例示することができる。
中でも電気絶縁性に優れることから、タルク、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等の金属窒化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、等の金属酸化物、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、等の金属水酸化物、ダイヤモンド、等の絶縁性炭素材料をより好ましく用いることができる。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。
無機充填剤の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体、等種々の形状を例示することができる。またこれら熱伝導性充填剤は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地等には特に限定はなく、適宜選択することができる。これら熱伝導性充填剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種以上を併用してもよい。
これら無機充填剤は、樹脂との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、等従来公知のものを使用することができる。中でもエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン、等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。無機充填剤の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
本発明の熱可塑性樹脂成形体には、前記の無機充填剤以外にも、その目的に応じて公知の充填剤を広く使用できる。他の充填剤としては、例えばケイソウ土粉;塩基性ケイ酸マグネシウム;焼成クレイ;微粉末シリカ;石英粉末;結晶シリカ;カオリン;タルク;三酸化アンチモン;微粉末マイカ;二硫化モリブデン;ロックウール;セラミック繊維;アスベストなどの無機質繊維;およびガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスクロス、溶融シリカ等ガラス製充填剤が挙げられる。これら充填剤を用いることで、例えば熱伝導性、機械強度、または耐摩耗性など樹脂組成物を応用する上で好ましい特性を向上させることが可能となる。さらに必要に応じて紙、パルプ、木料;ポリアミド繊維、アラミド繊維、ボロン繊維などの合成繊維;ポリオレフィン粉末等の樹脂粉末;などの有機充填剤を併用して配合することができる。
本発明の熱可塑性樹脂成形体には、本発明の効果の発揮を失わない範囲で、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂等いかなる公知の樹脂も含有させて構わない。好ましい樹脂の具体例として、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ナイロン6、ナイロン6,6等が挙げられる。これら樹脂の使用量は、通常熱可塑性樹脂成形体に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対し、0〜10000重量部の範囲であることが好ましく、1〜800重量部の範囲であることがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体には、上記樹脂や充填剤以外の添加剤として、さらに目的に応じて他のいかなる成分、例えば、補強剤、増粘剤、離型剤、カップリング剤、難燃剤、耐炎剤、顔料、着色剤、その他の助剤等を本発明の効果を失わない範囲で、添加することができる。これらの添加剤の使用量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、合計で0〜20重量部の範囲であることが好ましく、0.1〜15重量部の範囲であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂に対する配合物の配合方法としては特に限定されるものではない。例えば、上述した成分や添加剤等を乾燥させた後、単軸、2軸等の押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。また、配合成分が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて溶融混練機に途中添加して製造することもできる。
このような厚みを有する成形体は、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、など種々の樹脂成形法により成形することが可能である。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の製造方法としては、流動場、せん断場、磁場及び電場から選ばれる少なくとも一種の場により分子鎖を厚み方向に配向させる方法が挙げられる。これらの配向方法の中でも簡便であることから、流動場やせん断場による配向方法が好ましい。流動場やせん断場を利用するには、簡便な方法として射出成形方法が挙げられる。射出成形とは、射出成形機に金型を取り付け、成形機にて溶融可塑化された樹脂組成物を高速で金型内に注入し、樹脂組成物を冷却固化させて取り出す成形方法である。具体的には樹脂をT以上T未満の液晶状態に加熱し、金型に射出する。T未満の温度では成形できず、T以上の温度では樹脂は等方的に溶融するため分子鎖が厚み方向に配向しない場合がある。ここで、分子鎖を高配向させるためには、金型温度はT-100℃以上であることが好ましく、T-80℃以上であることがより好ましく、T-50℃以上であることがさらに好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料、等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。特に優れた成形加工性、高熱伝導性、という優れた特性を併せ持つことから、放熱・伝熱用樹脂材料として、非常に有用である。
本発明の熱可塑性樹脂成形体は、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品、等の射出成形品等に好適に使用することができる。特に多くの熱を発する家電製品やOA機器において、外装材料として好適に用いることができる。さらには発熱源を内部に有するがファン等による強制冷却が困難な電子機器において、内部で発生する熱を外部へ放熱するために、これらの機器の外装材として好適に用いられる。これらの中でも好ましい装置として、LED照明の放熱部材、ノートパソコンなどの携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ、等の小型あるいは携帯型電子機器類の筐体、ハウジング、外装材用樹脂として非常に有用である。また自動車や電車等におけるバッテリー周辺用樹脂、家電機器の携帯バッテリー用樹脂、ブレーカー等の配電部品用樹脂、モーター等の封止用材料、としても非常に有用に用いることができる。
次に、本発明の熱可塑性樹脂成形体について、実施例および比較例を挙げさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、以下にあげる各試薬は特に特記しない限り和光純薬工業(株)製の試薬を用いた。
[評価方法]
配向度α:広角X線散乱装置(リガク社製、広角X線散乱装置)から下記式(2)によって求めた。
配向度α=(360°−ΣW)/360° ...(2)
(式中、Wは広角X線散乱測定における、分子鎖間の散乱ピークの方位角方向の0〜360°までの強度分布における半値幅を表す。)
数平均分子量:サンプルをp−クロロフェノール(東京化成工業)とトルエンの体積比3:8混合溶媒に0.25重量%濃度となるように溶解して試料を調製した。標準物質はポリスチレンとし、同様の試料溶液を調製した。高温GPC(Viscotek社製、350 HT−GPC System)にてカラム温度:80℃、流速1.00mL/min、の条件で測定した。検出器としては、示差屈折計(RI)を使用した。
熱物性測定:示差走査熱量測定(DSC測定)にて、50℃から280℃の範囲で1度10℃/minで昇降温させ、2度目の10℃/minでの昇温時の吸熱ピークのピークトップから、ガラス転移点(T)、固相から液晶相への転移点(T)および液晶相から等方相への転移点(T)を求めた。
成形体作成:幅13mm、長さ65mm、厚み0.85mm/1mmと厚みを適宜変えた板状の成形体を射出成形によって作成した。射出流動方向は板の長さ方向とした。
熱伝導率:成形体表面にレーザー光吸収用スプレー(ファインケミカルジャパン(株)社製ブラックガードスプレーFC−153)を塗布し乾燥させた後、Xeフラッシュアナライザー(NETZSCH社製LFA447Nanoflash)にて成形体の厚み方向、射出流動方向(以下MD方向)、流動方向に垂直な方向(以下TD方向)の熱拡散率を測定した。成形体の密度を水中置換法にて、比熱をDSC法にて測定し、熱伝導率は下記式(4)にて計算した。
熱伝導率=熱拡散率×密度×比熱 ...(4)
[実施例1]
還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル(450g)、ドデカン二酸、無水酢酸をモル比でそれぞれ1:1.1:2.1の割合で仕込み、酢酸ナトリウムを触媒とし、常圧、窒素雰囲気下で145℃にて反応させ均一な溶液を得た後、酢酸を留去しながら2℃/minで260℃まで昇温し、260℃で1時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約40分かけて10Torrまで減圧した後、減圧状態を維持した。減圧開始から3時間後、窒素ガスで常圧に戻し、樹脂をステンレス板上に払い出した。分子構造を表1に示す。生成したポリマーの数平均分子量は9000であった。熱物性のTは200℃、Tは245℃であった。得られた熱可塑性樹脂を射出成形にて幅13mm、長さ65mm、厚み0.85mmの板状に成形した。射出成形時のシリンダー温度は熱可塑性樹脂が液晶相となる220℃、金型温度は150℃、射出速度は60mm/sに設定した。広角X線散乱プロファイルおよび、(厚み、TD)の散乱プロファイルにおける2θ=21°付近の方位角方向の強度分布を図1に、各種測定結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1の成形体の厚みを1mmにした以外は同様にして熱可塑性樹脂成形体を得て評価した。各種測定結果を表2に示す。
[比較例2]
実施例1の成形体をホットステージ上で270℃から10℃/minで室温まで冷却して成形する以外は同様にして熱可塑性樹脂成形体を得て評価した。各種測定結果を表2に示す。
[実施例2]
実施例1のドデカンニ酸をテトラデカンニ酸に変更した以外は同様にして、熱可塑性樹脂成形体を得た。分子構造を表1に示す。数平均分子量は10000であった。熱物性のTは190℃、Tは235℃であった。射出成形時のシリンダー温度は熱可塑性樹脂が液晶相となる210℃、金型温度は150℃、射出速度は60mm/sに設定した。成形体の各種測定結果を表2に示す。
[比較例3]
実施例2の成形体の厚みを1mmにした以外は同様にして熱可塑性樹脂成形体を得て評価した。各種測定結果を表2に示す。
[実施例3]
実施例1のドデカンニ酸をセバシン酸に変更した以外は同様にして、熱可塑性樹脂成形体を得た。分子構造を表1に示す。数平均分子量は9000であった。熱物性のTは210℃、Tは270℃であった。射出成形時のシリンダー温度は熱可塑性樹脂が液晶相となる230℃、金型温度は150℃、射出速度は60mm/sに設定した。成形体の各種測定結果を表2に示す。
[比較例4]
実施例3の成形体の厚みを1mmに変更した以外は同様にして熱可塑性樹脂成形体を得た。成形体の各種測定結果を表2に示す。
[実施例4]
実施例1で得られた熱可塑性樹脂、および無機充填剤として窒化ホウ素(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製、単体での熱伝導率270W/(m・K)、平均粒子径45μm)を70:30Vol%の比率で混合したものを準備した。これにフェノール系安定剤であるAO−60((株)ADEKA製)を液晶ポリマー100重量部に対して0.2重量部加え、220℃に制御された二軸押出機にて配合し、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を射出成形にて幅13mm、長さ65mm、厚み0.85mmの板状に成形した。射出成形時のシリンダー温度は液晶ポリマーが液晶相となる220℃、金型温度は150℃、射出速度は60mm/sに設定した。広角X線散乱プロファイルおよび、(厚み、TD)の散乱プロファイルにおける2θ=21°付近の方位角方向の強度分布を図2に、成形体の各種測定結果を表2に示す。
[比較例5]
実施例4の成形体の厚みを1mmに変更した以外は同様にして熱可塑性樹脂成形体を得た。成形体の各種測定結果を表2に示す。
以上より、本発明の厚み1mm未満の熱可塑性樹脂成形体は厚み1mm以上の成形体に比較して熱伝導性に優れることがわかる。このような成形体は電気・電子工業分野、自動車分野、等さまざまな状況で放熱・伝熱用樹脂材料として用いることが可能で、工業的に有用である。

Claims (9)

  1. 主として下記一般式(1)で示される単位の繰り返しからなる熱可塑性樹脂を少なくとも含有する成形体であって、体積の50%以上が厚み1.0mm未満であり、厚み1.0mm未満の部位において、広角X線散乱測定から求められる熱可塑性樹脂の分子鎖の厚み方向への配向度αが0.6以上1.0未満の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体。
    −A1−x−A2−OCO(CH2mCOO− ...(1)
    (式中、A1およびA2は、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。xは、各々独立して直接結合、−O−、−S−、−CH2−CH2−、−C=C−、−C=C(Me)−、−C≡C−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−または−N(O)=N−の群から選ばれる2価の置換基を示す。mは2〜20の整数を示す。)
    配向度α=(360°−ΣW)/360° ...(2)
    (式中、Wは広角X線散乱測定における、分子鎖間の散乱ピークの方位角方向の0〜360°までの強度分布における半値幅を表す。)
  2. 前記熱可塑性樹脂の数平均分子量が3000〜40000であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体。
  3. 前記熱可塑性樹脂の−A1−x−A2−が下記一般式(3)であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
    (式中、Rはそれぞれ独立して脂肪族炭化水素基、F、Cl、Br、I、CN、またはNO2、yは2〜4の整数、nは0〜4の整数を示す。)
  4. 前記熱可塑性樹脂のmが4〜14の偶数から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
  5. 前記熱可塑性樹脂成形体が無機充填剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体。
  6. 前記無機充填剤が、グラファイト、導電性金属粉、軟磁性フェライト、炭素繊維、導電性金属繊維、酸化亜鉛およびカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種以上の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項5に記載の熱可塑性樹脂成形体。
  7. 前記無機充填剤が、タルク、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンド、からなる群より選ばれる1種以上の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項5に記載の熱可塑性樹脂成形体。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂成形体を射出成形によって成形することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  9. 前記射出成形時のシリンダーの温度がTm以上Ti未満の温度であることを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
    (Tmは熱可塑性樹脂の固相から液晶相への転移点、Tiは液晶相から等方相への転移点を示す。)
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