JP6101501B2 - 高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物、及び高熱伝導性熱可塑性樹脂の製造方法 - Google Patents

高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物、及び高熱伝導性熱可塑性樹脂の製造方法 Download PDF

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本発明は、熱伝導性に優れた放熱材料であって、射出成形可能な熱可塑性樹脂組成物、及び当該熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂組成物をパソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装など種々の用途に使用する際、プラスチックは金属材料など無機物と比較して熱伝導性が低いため、発生する熱を逃がしづらいことが問題になることがある。このような課題を解決するため、高熱伝導性無機物を大量に熱可塑性樹脂中に配合することで、高熱伝導性樹脂組成物を得ようとする試みが広くなされている。高熱伝導性無機化合物としては、グラファイト、炭素繊維、アルミナ、窒化ホウ素等の高熱伝導性無機物を、通常は30体積%(以下「Vol%」と表記する。)以上、さらには50Vol%以上もの高含有量で樹脂中に配合する必要がある。
しかしながら、上記高熱伝導性無機物を大量に配合しても、樹脂単独の熱伝導性が低いために、樹脂組成物の熱伝導率には限界があった。そこで樹脂単独の熱伝導性の向上が求められている。
樹脂単独の熱伝導性が優れた熱可塑性樹脂については、延伸、磁場配向など特殊な成形加工なしに、射出成形により成形された樹脂単独が高熱伝導性を有する熱可塑性樹脂についての研究報告はほとんどなく、数少ない報告例として特許文献1が挙げられる。しかし、特許文献1に記載の熱可塑性樹脂は、射出成形によって成形することによって高い熱伝導性を示す成形体を得ることができるが、耐熱性が不十分であった。
また非特許文献1〜4には、液晶相を示すポリエステルイミドが記載されているが、非特許文献1〜4には、(i)ポリエステルイミドの熱伝導率、及び(ii)ポリエステルイミドに無機充填剤など他の配合物を配合し、樹脂組成物とすること、に関しては、一切記載されていない。
国際公開番号WO2010/050202号公報パンフレット(2010年5月6日国際公開)
Macromolecules,Vol.21,P551(1988) Polymer,Vol.28,P1772(1987) Mol. Cryst. Liq. Cryst. Inc. Nonlin. Opt.,Vol.157,P13(1988) Polymer,Vol.35,P5577(1994)
本発明は、熱伝導性に優れた熱可塑性樹脂組成物であって、高熱伝導性無機化合物を大量に配合せずとも熱可塑性樹脂組成物の高熱伝導性を維持し、かつ熱可塑性樹脂組成物が汎用射出成形用金型でも射出成形可能となるような熱可塑性樹脂組成物、及び当該熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂の製造方法を提供することが目的である。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の分子構造を有する熱可塑性樹脂が高熱伝導性を有し、さらに、無機充填剤を配合した熱可塑性樹脂組成物においても優れた熱伝導性を示すことを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記<1>〜<9>である。
<1>
主として主鎖の繰り返し単位の構造が、一般式(1)
Figure 0006101501
(式中、Arは芳香族トリカルボン酸の3個のカルボキシル基を除いた3価の芳香族残基、Spは主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の直鎖状置換基、Arは芳香族基、縮合芳香族基、複素環基、脂環基、及び脂環式複素環基からなる群から選ばれる置換基を示す)で表される熱可塑性樹脂と、
無機充填剤とを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
<2>
前記熱可塑性樹脂のSpに相当する部分が、直鎖の脂肪族炭化水素鎖または脂肪族エーテル鎖である、<1>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<3>
前記熱可塑性樹脂のSpに相当する部分の主鎖原子数が偶数である、<1>または<2>に記載の熱可塑性樹脂組成物。
<4>
前記熱可塑性樹脂の還元粘度が、0.15〜2.0(dL/g)である<1>〜<3>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<5>
前記無機充填剤の熱伝導率が、1W/(m・K)以上の無機化合物であることを特徴とする、<1>〜<4>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<6>
前記無機充填剤が、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンドからなる群より選ばれる1種以上の無機化合物であることを特徴とする、<1>〜<5>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<7>
前記無機充填剤が、グラファイト、導電性金属粉、軟磁性フェライト、炭素繊維、導電性金属繊維、及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる1種以上の無機化合物であることを特徴とする、<1>〜<5>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<8>
熱可塑性樹脂と無機充填剤との体積比が90:10〜30:70であることを特徴とする、<1>〜<6>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
<9>
<1>〜<8>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する成形体。
<10>
主として主鎖の繰り返し単位の構造が、一般式(1)
Figure 0006101501
(式中、Arは芳香族トリカルボン酸の3個のカルボキシル基を除いた3価の芳香族残基、Spは主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の直鎖状置換基、Arは芳香族基、縮合芳香族基、複素環基、脂環基、及び脂環式複素環基からなる群から選ばれる置換基を示す)で表される熱可塑性樹脂を製造する方法であって、
(i)一般式(2)で表される
Figure 0006101501
(式中、Arは芳香族トリカルボン酸の3個のカルボキシル基を除いた3価の芳香族残基を示す)三塩基酸無水物、
一般式(3):HN−Sp−NH (3)
で表されるジアミン、及び
一般式(4):HO−Ar−OH (4)
で表されるジオールを反応器に仕込み、一般式(2)で表される三塩基酸無水物と一般式(3)で表されるジアミンとの反応によりイミド基を生成するイミド化工程、
(ii)低級脂肪酸無水物を添加して一般式(4)で表されるジオールの水酸基をアシル化するアシル化工程、
(iii)低級脂肪酸を留去しながら高分子量化させる高分子量化工程を含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂の製造方法。
<11>
一般式(2)で表される三塩基酸無水物、一般式(3)で表されるジアミン、及び一般式(4)で表されるジオールを同時に反応器に仕込むことを特徴とする、<10>に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱伝導性に優れており、高熱伝導性無機化合物を大量に配合せずとも熱可塑性樹脂組成物の高熱伝導性を維持し、かつ当該熱可塑性樹脂組成物は汎用射出成形用金型でも射出成形可能である。
さらに本発明は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂を簡便に合成する製造方法をも提供する。
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。また、本明細書中に記載された公知文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において、範囲を示す「〜」は特記しない限り「以上、以下」を示す。例えば「A〜B」と表記すれば、「A以上B以下」を意味する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、以下に説明する熱可塑性樹脂及び無機充填剤を含有することを特徴としている。以下の説明において、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂及び無機充填材を、それぞれ「本発明の熱可塑性樹脂」及び「本発明の無機充填材」と記載する。
<1.本発明の熱可塑性樹脂>
ここで本明細書における「熱可塑性」とは、加熱により可塑化する性質のことを意味する。本発明は特に限定されるものではないが、例えば、加熱時に樹脂が軟化することによって、ある試料が熱可塑性であるか否かを判定することができる。
本発明の熱可塑性樹脂は、屈曲部と剛直部の繰り返し構造により、規則正しく分子が配向し、20〜60nm程度の周期的な高次構造を形成する性質を有している。そして、この規則正しい周期的な高次構造が熱を効率良く伝えるのに大きく寄与する。なお、この周期的な高次構造の有無及び高次構造の周期は、小角X線散乱測定によって確認することができる。
本発明の熱可塑性樹脂は、屈曲部と剛直部の繰り返し構造により、液晶相を形成する性質を有することがある。「液晶相」とは、分子の配向状態を保ったまま、液体のように流動する相状態を意味する。液晶相の温度で樹脂の成形を行った場合、熱伝導性に寄与する前記の周期的な高次構造を乱すことなく成形体を得ることができる。高い熱伝導性を有する成形体が得られるという観点から、本発明の熱可塑性樹脂は液晶相を形成することが好ましい。熱可塑性樹脂が液晶相を形成し得るかどうかは、示差走査熱量測定(DSC)及び偏光顕微鏡観察によって確認することができる。液晶の種類によってさまざまだが、本発明の熱可塑性樹脂に関して言えば、DSCで、結晶相から液晶相への転移、液晶相から等方相への転移に対応する2つの吸熱ピークが観測されることによって、当該熱可塑性樹脂が液晶相を形成していると判断することができる。また、一般には2枚のガラス板の間に樹脂を挟み、加熱して直交ニコル下で偏光顕微鏡観察を行い、溶融状態で液晶相に特徴的な光学組織が観察できることによって、当該熱可塑性樹脂が液晶相を形成していると判断することができる。
本発明の熱可塑性樹脂は、主として主鎖の繰り返し単位の構造が、一般式(1)
Figure 0006101501
(式中、Arは芳香族トリカルボン酸の3個のカルボキシル基を除いた三価の芳香族残基、Spは主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の直鎖状置換基、Arは芳香族基、縮合芳香族基、複素環基、脂環基、脂環式複素環基からなる群から選ばれる置換基を示す)で表される。
本明細書における「主として」とは、一般式(1)の繰り返し構造が分子鎖全体の50%以上であることを意味し、好ましくは70%以上であることを意味し、より好ましくは90%以上であることを意味し、さらに好ましくは95%以上であることを意味する。
前記熱可塑性樹脂のArに相当する部分は、芳香族トリカルボン酸の3個のカルボキシル基を除いた3価芳香環残基である。前記熱可塑性樹脂のArに相当する部分は、60%以上がトリメリット酸から3個のカルボキシル基を除いた3価ベンゼン環残基であり、残部は他の芳香族トリカルボン酸類に基づく3価の芳香族残基であることが好ましい。トリメリット酸から3個のカルボキシル基を除いた3価ベンゼン環残基の割合は、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは100%である。
前記熱可塑性樹脂のArに相当する部分の具体例としては、
Figure 0006101501
に表されるいずれかの3価の芳香族残基が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂のSpに相当する部分は、主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の直鎖状置換基であり、好ましくは、直鎖の脂肪族炭化水素鎖または脂肪族エーテル鎖であり、より好ましくは直鎖の脂肪族炭化水素鎖である。また本発明の熱可塑性樹脂のSpに相当する部分の直鎖状置換基は、飽和でも不飽和でもよいが、飽和であることが好ましい。不飽和結合を含む場合、十分な屈曲性が発現されず、熱伝導性を低下させる場合がある。
また本発明の熱可塑性樹脂のSpに相当する部分の直鎖状置換基の主鎖原子数は、2〜20であり、好ましくは4〜16であり、より好ましくは4〜12である。主鎖原子数が21以上である場合、結晶性が低下し、熱伝導率が低下する場合がある。また本発明の熱可塑性樹脂のSpに相当する部分の直鎖状置換基の主鎖原子数は、偶数であることが好ましい。奇数の場合、結晶性が低下し、熱伝導率が低下する場合がある。また本発明の熱可塑性樹脂のSpに相当する部分の直鎖状置換基は、分岐を含まないことが好ましい。分岐を含む場合、結晶性が低下し、熱伝導率を低下させる場合がある。
また本発明の熱可塑性樹脂のSpに相当する部分は、異なる2種以上の直鎖状置換基を繰り返し単位に含んでいてもよい。異なる2種以上の直鎖状置換基を含むことにより、液晶相転移温度と融点のバリエーションを増加させることができる。
また本発明の熱可塑性樹脂のArに相当する部分は芳香族基、縮合芳香族基、複素環基、脂環基、脂環式複素環基からなる群から選ばれる置換基を示す。Arに相当する部分の好ましい具体例としては、
Figure 0006101501
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、F、Cl、Br、I、CN、またはNOを示し、Xは−CH−、−C(CH−、−O−、−S−、−CH−CH−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−及びN(O)=N−からなる群より選ばれる2価の置換基を示す)
で表されるいずれかの基が挙げられ、より好ましくは、
Figure 0006101501
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、F、Cl、Br、I、CN、またはNOを示す。)
のいずれかであり、さらに好ましくは、
Figure 0006101501
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、F、Cl、Br、I、CN、またはNOを示す。)
のいずれかであり、特に好ましくは、
Figure 0006101501
のいずれかである。
本発明の熱可塑性樹脂のArに相当する部分は、異なる2種以上の置換基を繰り返し単位に含んでいてもよい。異なる2種以上の置換基を含むことにより、液晶相転移温度と融点のバリエーションを増加させることができる。
本発明の熱可塑性樹脂の分子量を表す指標となる還元粘度は、熱可塑性樹脂を0.5g/dLの濃度になるように、4−クロロフェノールとテトラクロロエタンの1:1(容積比)混合溶媒中に溶解させ、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で降下時間を測定したものである。還元粘度ηsp/cは、溶媒の降下時間をt、試料溶液の降下時間をt、試料濃度をcとしたとき、
Figure 0006101501
で表される。
本発明の熱可塑性樹脂の還元粘度は、0.15〜2.0(dL/g)であることが好ましい。上限を考慮すると、本発明の熱可塑性樹脂の還元粘度は、0.15〜1.7(dL/g)であることがより好ましく、0.15〜1.5(dL/g)であることがさらに好ましい。下限を考慮すると、本発明の熱可塑性樹脂の還元粘度は、0.20〜2.0(dL/g)であることがより好ましく、0.25〜2.0(dL/g)であることがさらに好ましい。さらに、上限及び下限を考慮すると、本発明の熱可塑性樹脂の還元粘度は、0.20〜1.7(dL/g)であることがより好ましく、0.25〜1.5(dL/g)であることがさらに好ましい。還元粘度が0.15(dL/g)未満の場合、強度が低下する場合があり、2.0(dL/g)より大きい場合、同一の一次構造を有する樹脂であっても熱伝導率が著しく低下する場合がある。
本発明の熱可塑性樹脂の末端構造は特に限定されないが、射出成形に適した樹脂が得られるという観点からは、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アシル基、アルコキシ基、アミド基などによって末端が封止されていることが好ましく、合成の簡便さという観点から、カルボキシル基、エステル基、アミド基によって封止されていることがより好ましい。末端にエポキシ基、マレイミド基などの反応性が高い官能基を有する場合は、樹脂が熱硬化性となり、射出成形性が損なわれることがある。
本発明において、分子鎖末端を封止するのに低分子化合物を使用してもよい。使用する低分子化合物は、分子量が400以下の芳香族、縮合芳香族、脂環、脂環式複素環、または鎖状構造から選ばれる少なくとも一種の構造を任意に含んでよい化合物をいう。分子量が401以上の場合、主鎖ポリマーへの末端封止反応が低下する場合がある。本発明の低分子化合物は、封止すべきポリマー末端の官能基であるヒドロキシ基、カルボキシル基及び/又はアミノ基と反応して該官能基を封止できる反応性基を少なくとも1種有する必要があり、その反応性基はアルデヒド、ヒドロキシ、カルボキシル、アミン、イミノ、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、アリル置換メチル、イソシアナート、アセトキシ等である。好ましくはヒドロキシ、カルボキシル、アミノ及びそれらのエステル及びグリシジル基である。以上の条件を満たせば分子鎖末端を封止するのに使用される低分子化合物に特に制限はないが、反応性及び封止末端の安定性などの点から好ましくは以下の式(A)〜(C)で示されるいずれかの化合物が例示される。
Figure 0006101501
(式中、Yはアルデヒド、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、イミノ、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、メチル、イソシアナート、アセトキシ、カルボキシアルキルエステル(アルキル炭素数1〜4)、カルボキシフェニルエステルより選ばれる官能基を示し、Zは炭素数1〜20のアルキル、−Cl、−Br、−OCH、−CN、−NO、−NH、ビニル、エチニル、アクリレート、フェニル、ベンジル、アルキルウレア、アルキルエステル、マレイミノより選ばれる置換基を示し、mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を示す。)
式(A)の好ましい例は、Zが炭素数1〜20の1〜3級アルコール及び、炭素数1〜20の脂肪族モノカルボン酸などである。
式(B)の好ましい例は、フェノール、p−プロピルフェノール、p−t−ブチルフェノール、クレゾール、キシレノール、p−マレイミノフェノール、クロロフェノール及びそれらのアセトキシ化した化合物、安息香酸、p−クロル安息香酸、p−メチル安息香酸及びそれらのメチルエステル、フェニルグリシジルエーテルなどである。
式(C)の好ましい例は、p−フェニルフェノール、p−アセトキシフェニルベンゼン、p−フェニル安息香酸、p−フェニル安息香酸メチルなどである。
本発明の熱可塑性樹脂は、その効果の発揮を失わない程度に他のモノマーを共重合してもよい。例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸またはカプロラクタム類、カプロラクトン類、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、脂環族ジカルボン酸、及び脂環族ジオール、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオール及び芳香族メルカプトフェノールが、上記モノマーとして挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−7−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸及びそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’’−ジカルボキシターフェニル、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、ビス(3−カルボキシフェニル)エーテル及びビス(3−カルボキシフェニル)エタン等、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ジオールの具体例としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェノールエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン及び2,2’−ジヒドロキシビナフチル等、及びこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルスルフィド及び2,2’−ジアミノビナフチル及びこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ジアミン及び芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノビフェノキシエタン、4,4’−ジアミノビフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル(オキシジアニリン)、4−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸及び7−アミノ−2−ナフトエ酸及びこれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、及び1,12−ドデカンジアミンなどが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジオール及び脂環族ジオールの具体例としては、ヘキサヒドロテレフタル酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス−1,4−シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコールなどの直鎖状または分鎖状脂肪族ジオールなど、ならびにそれらの反応性誘導体が挙げられる。
芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオール及び芳香族メルカプトフェノールの具体例としては、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプト−6−ナフトエ酸、2−メルカプト−7−ナフトエ酸、ベンゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフタレン−ジチオール、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、6−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレン、7−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレンなど、ならびにそれらの反応性誘導体が挙げられる。
末端構造の分析方法としては、例えば、NMR、IR、MALDI−TOFMS法などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂は、本発明の熱可塑性樹脂は、固相から液晶相に転移する点(T)と液晶相から等方相に転移する点(Ti)を持つ場合がある。半田付け時にも溶融せず使用できるという観点から、Tは250〜350℃であることが好ましく、260〜340℃であることがより好ましく、270〜330℃であることがさらに好ましい。融点が250℃未満である場合、耐熱性の点で電子部品用途には好ましくない。また、350℃以上である場合、成形時に著しく樹脂分解が起こる場合がある。このようなTの熱可塑性樹脂を使用であれば、汎用金型であっても射出成形が容易な熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂は、対称性が極めて高く、剛直部が屈曲部で結合された構造のため、本発明の熱可塑性樹脂は分子の配向性が高く、形成される高次構造が緻密となる。このため、本発明の熱可塑性樹脂は、優れた熱伝導性を有し、その熱伝導率は0.4W/(m・K)以上であることが好ましい。熱伝導率が0.4W/(m・K)以上であれば、熱可塑性樹脂に高熱伝導性無機化合物を配合して同じ熱伝導率の熱可塑性樹脂組成物を製造する際、高熱伝導性無機化合物の配合量をより低減させることができる。また、本発明の熱可塑性樹脂の熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上であることがさらに好ましい。一方、本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、射出成形可能な融点を有し、成形時に磁場、電圧印加、ラビング、延伸等の物理的処理を施さなければ、一般的には30W/(m・K)以下、さらには10W/(m・K)以下となる。
<2.本発明の熱可塑性樹脂の製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂は、
(i)一般式(2)で表される
Figure 0006101501
(式中、Arは芳香族トリカルボン酸の3個のカルボキシル基を除いた3価の芳香族残基を示す)三塩基酸無水物、
一般式(3):HN−Sp−NH (3)
で表されるジアミン、及び
一般式(4):HO−Ar−OH (4)
で表されるジオールを反応器に仕込み、一般式(2)で表される三塩基酸無水物と一般式(3)で表されるジアミンの反応によりイミド基を生成するイミド化工程、
(ii)低級脂肪酸無水物を添加して一般式(4)で表されるジオールの水酸基をアシル化するアシル化工程、
(iii)低級脂肪酸を留去しながら高分子量化させる高分子量化工程を含む製造方法によって製造されることが、合成の簡便さの観点から好ましく、一般式(2)で表される三塩基酸無水物、一般式(3)で表されるジアミン、及び一般式(4)で表されるジオールを同時に反応器に仕込んで製造されることがより好ましい。なお、上記の製造方法は、上記(i)〜(iii)の工程を少なくとも含む方法であればよいが、上記(i)〜(iii)の工程のみからなる製造方法であってもよい。
上記の製造方法では、一般式(2)で表される三塩基酸無水物、一般式(3)で表されるジアミン、及び一般式(4)で表されるジオールを同時に反応器に仕込み、窒素等の不活性ガス雰囲気下、実質的に溶媒の存在しない状態で180〜230℃に加熱することによって、一般式(2)で表される三塩基酸無水物と一般式(3)のジアミンとの縮合反応によりイミド基を生成する((i)イミド化工程)。その後、無水酢酸等の低級脂肪酸無水物を反応器に仕込み、加熱することによって、一般式(4)で表されるジオールのアシル化を行う((ii)アシル化工程)。さらにその後、徐々に温度を上げ、通常220〜340℃、好ましくは250〜330℃、より好ましくは270〜330℃の温度で、常圧または減圧下に、0.5〜5時間反応させる((iii)高分子量化工程)。上記高分子化工程の反応温度が220℃より低いと反応の進行は遅く、330℃より高い場合は分解等の副反応が起こりやすい。
上記高分子化工程を、減圧下で行う場合には、段階的に減圧度を高くすることが好ましい。急激に高真空度まで減圧した場合、モノマー成分が揮発し、望む組成、または分子量の樹脂が得られない場合がある。到達真空度は、40Torr以下が好ましく、30Torr以下がより好ましく、20Torr以下がさらに好ましく、10Torr以下が特に好ましい。真空度が40Torrより高い場合、十分に脱酸が進まず、低分子量の樹脂が得られることがある。
上記高分子化工程においては、多段階の反応温度を採用してもかまわないし、場合により昇温中あるいは最高温度に達したらすぐに反応生成物を溶融状態で抜き出し、回収することもできる。得られた熱可塑性樹脂はそのままでも使用してもよいし、未反応原料を除去する、または、物性を向上させるために固相重合を行なうこともできる。固相重合を行なう場合には、得られた熱可塑性樹脂を3mm以下、好ましくは1mm以下の粒径の粒子に機械的に粉砕し、固相状態のまま100〜350℃で窒素等の不活性ガス雰囲気下、または減圧下に1〜30時間処理することが好ましい。ポリマー粒子の粒径が3mmより大きくなると、処理が十分でなく、物性上の問題を生じるため好ましくない。固相重合時の処理温度や昇温速度は、熱可塑性樹脂粒子どうしが融着を起こさないように選ぶことが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂の製造方法において、イミド化工程とアシル化工程は別の反応器で行なっても構わない。
前記製造方法で本発明の熱可塑性樹脂を製造した場合、カルボキシル基、もしくはエステル基で末端封止された樹脂が得られるが、それ以外の末端構造を有する樹脂を得る場合、前記の末端を封止するための低分子化合物を反応開始時、もしくは反応の途中に添加してもよい。
なお、本発明の熱可塑性樹脂は、前記製造方法以外の公知のいかなる方法で製造されても構わない。構造の制御が簡便であるという観点から、一般式(6)
Figure 0006101501
で示される化合物と、
一般式(4)
HO−Ar−OH (4)
で表されるジオールとを、低級脂肪酸無水物を用いて反応させる製造方法で製造してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂の製造には、触媒を使用してもよい。触媒としては、従来からポリエステルの重合用触媒として公知のものを使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム等の金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の有機化合物触媒を挙げることができる。前記触媒の添加量としては、熱可塑性樹脂の総重量に対し、通常、0.1×10-2〜100×10-2重量%、好ましくは0.5×10-2〜50×10-2重量%、さらに好ましくは1×10-2〜10×10-2重量%が採用される。
本発明における熱可塑性樹脂の製造に用いられる低級脂肪酸無水物としては、炭素数2〜5個の低級脂肪酸の酸無水物、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水モノクロル酸酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロム酢酸、無水ジブロム酢酸、無水トリブロム酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸等が挙げられるが、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリクロル酢酸が特に好適に用いられる。アシル化工程に用いられる低級脂肪酸の酸無水物の使用量は、用いる一般式(3)で表されるジオールが有する水酸基の合計に対し、1.01〜1.50倍当量、好ましくは、1.02〜1.2倍当量である。
なお、本発明の熱可塑性樹脂の製造方法の後に、後述する無機充填材やその他公知の充填剤を熱可塑性樹脂に添加する工程を追加することによって、熱可塑性樹脂組成物の製造方法を構成することができる。よって、本発明は、このような熱可塑性樹脂組成物の製造方法を包含するといえる。
<3.本発明の熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂に無機充填剤を配合して熱可塑性樹脂組成物とすることで、熱伝導率を一層高くすることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率は、好ましくは0.4W/(m・K)以上であり、より好ましくは1.0W/(m・K)以上、さらに好ましくは5.0W/(m・K)以上、特に好ましくは10W/(m・K)以上である。この熱伝導率が0.4W/(m・K)未満であると、電子部品から発生する熱を効率的に外部に伝えることが困難である。本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には100W/(m・K)以下、さらには80W/(m・K)以下であることが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂は、優れた熱伝導性を有するため、上記の範囲の熱伝導率を有する高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を容易に得ることが可能となる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における無機充填剤の使用量は、好ましくは熱可塑性樹脂と無機充填剤の体積比で90:10〜30:70であり、より好ましくは80:20〜40:60であり、特に好ましくは70:30〜50:50である。熱可塑性樹脂と無機充填剤の体積比が100:0〜90:10では満足な熱伝導率が得られないことがある。また、熱可塑性樹脂と無機充填剤の体積比が30:70〜0:100では機械物性が低下することがある。本発明の熱可塑性樹脂組成物が優れた熱伝導性を有するため、無機充填剤の使用量が熱可塑性樹脂と無機充填剤の体積比で90:10〜70:30と少量の場合でも、熱可塑性樹脂組成物は優れた熱伝導性を有し、さらに同時に無機充填剤の使用量が少量のために密度を下げることができる。熱伝導性に優れ、かつ密度が小さいことは電気・電子工業分野、自動車分野等さまざまな状況で放熱・伝熱用樹脂材料として用いる際に有利である。
本発明の無機充填剤としては、公知の充填剤を広く使用できる。無機充填剤単独での熱伝導率は、好ましくは1W/(m・K)以上、さらに好ましくは10W/(m・K)以上、最も好ましくは20W/(m・K)以上、特に好ましくは30W/(m・K)以上のものが用いられる。無機充填剤単独での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には3000W/(m・K)以下、さらには2500W/(m・K)以下のものが好ましく用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、特に電気絶縁性が要求されない用途に用いる場合には、無機充填剤としては金属系化合物や導電性炭素化合物等が好ましく用いられる。これらの中でも、熱伝導性に優れることから、グラファイト、炭素繊維等の導電性炭素材料、各種金属を微粒子化した導電性金属粉、各種金属を繊維状に加工した導電性金属繊維、軟磁性フェライト等の各種フェライト類、酸化亜鉛等の金属酸化物、等の無機充填剤を好ましく用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、特に電気絶縁性が要求される用途に用いる場合には、無機充填剤としては電気絶縁性を示す化合物が好ましく用いられる。電気絶縁性とは具体的には、電気抵抗率1Ω・cm以上のものを示すこととする。ただし、好ましくは10Ω・cm以上、より好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上、最も好ましくは1013Ω・cm以上のものを用いるのが好ましい。電気抵抗率の上限には特に制限は無いが、一般的には1018Ω・cm以下である。本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の電気絶縁性も上記範囲にあることが好ましい。
本発明の無機充填剤のうち、電気絶縁性を示す化合物としては具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ダイヤモンド等の絶縁性炭素材料、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が挙げられる。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。
本発明の無機充填剤の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体等種々の形状が挙げられる。またこれら無機充填剤は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地等には特に限定はなく、適宜選択することができる。これら無機充填剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種類以上を併用してもよい。
これら無機充填剤は、樹脂と無機化合物との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等従来公知のものを使用することができる。中でも、エポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。無機化合物の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、前記の無機充填剤以外にも、その目的に応じて公知の充填剤を広く使用できる。樹脂単独の熱伝導率が高いために、公知の充填剤の熱伝導率が10W/(m・K)未満と比較的低くても、樹脂組成物として高い熱伝導率を有する。無機充填剤以外の充填剤としては、例えば、ケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、石英粉末、結晶シリカ、カオリン、タルク、三酸化アンチモン、微粉末マイカ、二硫化モリブデン、ロックウール、セラミック繊維、アスベスト等の無機質繊維、及び、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスクロス、溶融シリカ等ガラス製充填剤が挙げられる。これら充填剤を用いることで、例えば熱伝導性、機械強度、または耐摩耗性などの熱可塑性樹脂組成物を応用する上で好ましい特性を、向上させることが可能となる。さらに必要に応じて紙、パルプ、木料、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ボロン繊維等の合成繊維、ポリオレフィン粉末等の樹脂粉末等の有機充填剤を併用して配合することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果の発揮を失わない範囲で、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂等、いかなる公知の樹脂を含有させても構わない。好ましい樹脂の具体例として、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ナイロン6、ナイロン6,6等が挙げられる。これら樹脂の使用量は、本発明の樹脂組成物に含まれる本発明の熱可塑性樹脂100重量部に対し、0〜10000重量部の範囲である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記樹脂や充填剤以外の添加剤として、さらに目的に応じて他のいかなる成分、例えば、補強剤、増粘剤、離型剤、カップリング剤、難燃剤、耐炎剤、顔料、着色剤、その他の助剤等を本発明の効果を失わない範囲で、添加することができる。これらの添加剤の使用量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂100重量部に対し、合計で0〜20重量部の範囲であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に対する各種配合物の配合方法としては特に限定されるものではない。例えば、上述した成分や添加剤等を乾燥させた後、単軸、2軸等の押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。また、配合成分が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて溶融混練機に途中添加して製造することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特に優れた成形加工性、高熱伝導性という優れた特性を併せ持つことから、放熱・伝熱用樹脂材料として非常に有用である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品等の射出成形品等に好適に使用することができる。特に多くの熱を発する家電製品やOA機器において、外装材料として好適に用いることができる。さらには発熱源を内部に有するがファン等による強制冷却が困難な電子機器において、内部で発生する熱を外部へ放熱するために、これらの機器の外装材として好適に用いられる。これらの中でも好ましい装置として、ノートパソコンなどの携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、スマートフォン、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ等の小型あるいは携帯型電子機器類の筐体、ハウジング、外装材用樹脂として非常に有用である。また自動車や電車等におけるバッテリー周辺用樹脂、高耐熱性の要求されるパワー半導体周辺用樹脂、電子回路基板用樹脂、家電機器の携帯バッテリー用樹脂、ブレーカー等の配電部品用樹脂、モーター等の封止用材料としても非常に有用に用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来良く知られている樹脂に比べて、一層高熱伝導化することができ、また成形加工性が良好であるため、上記の用途における部品あるいは筐体用として有用な特性を有するものである。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、本発明の熱可塑性樹脂及び組成物について、実施例及び比較例を挙げさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、以下に挙げる各試薬は特記しない限り、和光純薬工業製の試薬を精製せずに用いた。
[試薬]
(1)無機充填剤
・酸化マグネシウム:宇部マテリアル株式会社製RF−50−SC、酸化マグネシウム単独での熱伝導率40W/m・K、体積平均粒子径50μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1014Ω・cm。
・窒化ホウ素(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製PT110、窒化ホウ素単独での熱伝導率60W/m・K、体積平均粒子径45μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1014Ω・cm)。
・ガラス繊維(日本電気硝子株式会社製T187H/PL、ガラス繊維単独での熱伝導率1.0W/(m・K)、繊維直径13μm、数平均繊維長3.0mm、電気絶縁性、体積固有抵抗1015Ω・cm)。
(2)添加剤
・リン系酸化防止剤:株式会社ADEKA製アデカスタブPEP−36。
・フェノール系安定剤:株式会社ADEKA製AO−60。
・臭素系難燃剤:アルベマール社製SAYTEX BT−93W。
・難燃助剤:日本精鉱株式会社製アンチモン酸ナトリウムSA−A。
[方法]
(1)還元粘度:本発明の熱可塑性樹脂を0.5g/dLの濃度になるように、4―クロロフェノール(東京化成工業)とテトラクロロエタンの1:1(容積比)混合溶媒中に溶解させ、ウベローデ型粘度計を用いて自動粘度測定装置(離合社:VMC―352)にて25℃で降下時間を測定した。還元粘度ηsp/cは、溶媒の降下時間をt、試料溶液の降下時間をt、試料濃度をcとしたとき、
Figure 0006101501
で表される。
(2)熱物性測定:示差走査熱量測定(DSC測定)にて、50℃から350℃の範囲で1度10℃/minで昇降温させ、2度目の10℃/minでの昇温時の吸熱ピークのピークトップから、固相から液晶相への転移点(T)を求めた。
(3)特記しない限り、成形体作製:幅10mm、長さ40mm、厚み1mmの板状成形体を射出成形によって作製した。射出流動方向は板の長さ方向とした。
(4)熱伝導率:特記しない限り、以下の方法で評価した。成形体表面にレーザー光吸収用スプレー(ファインケミカルジャパン(株)社製ブラックガードスプレーFC−153)を塗布し乾燥させた後、Xeフラッシュアナライザー(NETZSCH社製LFA447Nanoflash)にて面内で流動方向に垂直な方向(以下「TD方向」という。)の熱拡散率を測定した。成形体の密度を水中置換法にて、比熱をDSC法にて測定し、熱伝導率は下記式(6)にて計算した。
熱伝導率=熱拡散率×密度×比熱 ・・・(6)
[合成例1]
還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、無水トリメリット酸(2712g)、及び1,10−デカンジアミン(1219g)を仕込み、N,N−ジメチルホルムアミド(1.5L)を溶媒として、常圧、窒素雰囲気下で1時間還流した。引き続き、無水酢酸(1517g)を投入し、さらに1時間還流を行った。反応終了後、大量の氷水に向かって反応器内容物を払出した。析出した白色固体を濾過し、水とメタノールで洗ったのち、真空オーブンで120℃、減圧下で10時間乾燥して、白色固体のN,N−デカン−α,ω−ジイルビストリメリットイミド(一般式(5)のSpに相当する部分が(CH10)を得た。
[実施例1]
還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、N,N−デカン−α,ω−ジイルビストリメリットイミド(120g)、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル、無水酢酸、及び酢酸ナトリウムを、モル比で1:1:2.2:10−3の割合で仕込み、常圧、窒素雰囲気下で145℃にて40分反応させた後、酢酸を留去しながら3℃/minで310℃まで昇温した。引き続きその温度を保ったまま、10Torrの減圧条件下反応を行い、減圧開始から15分後、窒素ガスで常圧に戻し、生成した熱可塑性樹脂を取り出した。得られた樹脂の分子構造、還元粘度、液晶相転移温度(T)、樹脂単独の熱伝導率を表2に示す。
また、合成した熱可塑性樹脂、及び無機充填剤である酸化マグネシウムを、体積比で70:30になるように混合し、これにリン系酸化防止剤(株式会社ADEKA製アデカスタブPEP−36)を熱可塑性樹脂100重量部に対して0.2重量部加えた。この混合物を、株式会社テクノベル製15mm同方向回転完全噛合型二軸押出機KZW15−45MGを用いて、溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機を用いて成形し、熱伝導率を測定した。熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表1に示す。
[実施例2]
実施例1の、N,N−デカン−α,ω−ジイルビストリメリットイミドと4,4‘−ジヒドロキシビフェニルとのモル比を1:1.14にした以外は同様に重合し、アセトキシ基で末端封止された、分子量の異なる熱可塑性樹脂を合成した。
得られた熱可塑性樹脂を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂の分子構造、還元粘度、液晶相転移温度(T)、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表1に示す。
[実施例3]
実施例1の、N,N−デカン−α,ω−ジイルビストリメリットイミドと4,4‘−ジヒドロキシビフェニルとのモル比を1.09:1にした以外は同様に重合し、カルボン酸で末端封止された、分子量の異なる熱可塑性樹脂を合成した。得られた熱可塑性樹脂を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂の分子構造、還元粘度、液晶相転移温度(T)、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表1に示す。
[実施例4]
実施例1で得た熱可塑性樹脂を微粉砕し、密閉型反応器に仕込み、260℃、10Torrの条件で7時間固相重合を行った。得られた熱可塑性樹脂を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂の分子構造、還元粘度、液晶相転移温度(T)、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表1に示す。
[実施例5]
実施例2の、4,4‘−ジヒドロキシビフェニルをハイドロキノンとし、重合の最高温度を290℃とした以外は同様に重合し、分子構造の異なる熱可塑性樹脂を合成した。得られた熱可塑性樹脂を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂の分子構造、還元粘度、液晶相転移温度(T)、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表1に示す。
[実施例6]
ステアリン酸を末端封止剤とし、実施例5の仕込み原料を、N,N−デカン−α,ω−ジイルビストリメリットイミド、ハイドロキノン、ステアリン酸、無水酢酸、酢酸ナトリウムがモル比で1:1.14:0.28:2.7:10−3の割合とした以外は同様に重合し、ステアリン酸エステルで末端封止された熱可塑性樹脂を合成した。得られた熱可塑性樹脂を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂の分子構造、還元粘度、液晶相転移温度(T)、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表1に示す。
[実施例7]
実施例2の、4,4‘−ジヒドロキシビフェニルを2,6−ナフタレンジオールとし、重合の最高温度を290℃とした以外は同様に重合し、分子構造の異なる熱可塑性樹脂を合成した。得られた熱可塑性樹脂を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂の分子構造、還元粘度、液晶相転移温度(T)、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表1に示す。
[実施例8]
還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、無水トリメリット酸(836g)、1,10−デカンジアミン、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル、及び酢酸ナトリウムをモル比で2:1:1:10−3の割合で仕込み、常圧、窒素雰囲気下で230℃まで昇温し、10Torrの減圧条件下、10分間反応させて、生成した水を留去した。一旦冷却した後、無水酢酸(680g)を仕込み、145℃で40分反応させた後、酢酸を留去しながら3℃/minで310℃まで昇温した。引き続きその温度を保ったまま、10Torrの減圧条件下反応を行い、減圧開始から15分後、窒素ガスで常圧に戻し、生成した熱可塑性樹脂を取り出した。得られた熱可塑性樹脂を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂の分子構造、還元粘度、液晶相転移温度(T)、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表2に示す。
[実施例9]
実施例8の仕込み原料を、無水トリメリット酸、1,10−デカンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル、及び酢酸ナトリウムのモル比を2:0.9:0.1:1:10−3とした以外は同様に合成し、分子構造の異なる熱可塑性樹脂を得た。得られた熱可塑性樹脂を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂の分子構造、還元粘度、液晶相転移温度(T)、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表2に示す。
[実施例10]
実施例8の仕込み原料を、無水トリメリット酸、2,2‘−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(シグマアルドリッチ社製)、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル、及び酢酸ナトリウムをモル比で2:1:1:10−3の割合とした以外は同様に合成し、分子構造の異なる熱可塑性樹脂を得た。得られた熱可塑性樹脂を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂の分子構造、還元粘度、液晶相転移温度(T)、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表2に示す。
[実施例11]
実施例6で合成した熱可塑性樹脂、無機充填剤、各種添加剤を以下に示す体積比(熱可塑性樹脂 50、酸化マグネシウム 20、窒化ホウ素 25、ガラス繊維 5、臭素系難燃剤 4.5、難燃助剤 0.75)で混合し、これにリン系酸化防止剤を樹脂100重量部に対して0.2重量部加えた。この混合物を、株式会社テクノベル製15mm同方向回転完全噛合型二軸押出機KZW15−45MGを用いて、溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機を用いて厚み1mm×25mmφの円板状サンプルを成形し、熱伝導率を測定した。厚み方向の熱伝導率は3.3W/(m・K)、面内方向の熱伝導率は7.8W/(m・K)だった。
[比較例1]
市販のポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ノバデュラン5008L)を用いて、ポリブチレンテレフタレート樹脂、無機充填剤である酸化マグネシウムを体積比で70:30になるように混合し、これにフェノール系安定剤及びリン系酸化防止剤を樹脂100重量部に対して0.2重量部加えた。
この混合物を、株式会社テクノベル製15mm同方向回転完全噛合型二軸押出機KZW15−45MGを用いて、溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機を用いて成形し、熱伝導率を測定した。融点、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表2に示す。
[比較例2]
比較例1の、ポリブチレンテレフタレート樹脂をポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製FZ2100)とした以外は同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機を用いて成形し、熱伝導率を測定した。融点、熱可塑性樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表2に示す。
[比較例3]
比較例1の、ポリブチレンテレフタレート樹脂をナイロン9T樹脂(株式会社クラレ製ジェネスタN1000A)とした以外は同様に、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機を用いて成形し、熱伝導率を測定した。融点、樹脂単独の熱伝導率、熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率を表2に示す。
Figure 0006101501
Figure 0006101501
なお、表2のT[℃]における括弧内の数字は、融点を示している。
表1及び2から、いずれの実施例も液晶相を形成し、かつ比較例に示した市販の熱可塑性樹脂単独及び熱可塑性樹脂組成物に比べて熱伝導性が高いということがわかった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱伝導性に優れ、高熱伝導性無機化合物を大量に配合しなくても高熱伝導性を維持している。このために本発明の熱可塑性樹脂組成物は、汎用射出成形用金型にて射出成形可能となる。
このため、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電気・電子工業分野、自動車分野、等さまざまな状況で熱対策素材として用いることが可能であるため、工業的に有用である。

Claims (10)

  1. 主として主鎖の繰り返し単位の構造が、一般式(1)
    Figure 0006101501
    (式中、Arは芳香族トリカルボン酸の3個のカルボキシル基を除いた3価の芳香族残基、Spは主鎖原子数2〜20の2価の直鎖状置換基、Arは芳香族基、縮合芳香族基、複素環基、脂環基、及び脂環式複素環基からなる群から選ばれる置換基を示す)で表される熱可塑性樹脂と、
    無機充填剤とを含有し、
    前記無機充填剤の熱伝導率が、1W/(m・K)以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記熱可塑性樹脂のSpに相当する部分が直鎖の脂肪族炭化水素鎖または脂肪族エーテル鎖である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記熱可塑性樹脂のSpに相当する部分の主鎖原子数が偶数である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記熱可塑性樹脂の還元粘度が、0.15〜2.0(dL/g)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記無機充填剤が、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンドからなる群より選ばれる1種以上の無機化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 無機充填剤が、グラファイト、導電性金属粉、軟磁性フェライト、炭素繊維、導電性金属繊維、及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる1種以上の無機化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 熱可塑性樹脂と無機充填剤との体積比が90:10〜30:70であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する成形体。
  9. 主として主鎖の繰り返し単位の構造が、一般式(1)
    Figure 0006101501
    (式中、Arは芳香族トリカルボン酸の3個のカルボキシル基を除いた3価の芳香族残基、Spは主鎖原子数2〜20の2価の直鎖状置換基、Arは芳香族基、縮合芳香族基、複素環基、脂環基、及び脂環式複素環基からなる群から選ばれる置換基を示す)で表される熱可塑性樹脂を製造する方法であって、
    (i)一般式(2)で表される
    Figure 0006101501
    (式中、Arは芳香族トリカルボン酸の3個のカルボキシル基を除いた3価の芳香族残基を示す)三塩基酸無水物、
    一般式(3)
    N−Sp−NH (3)
    で表されるジアミン、及び
    一般式(4)
    HO−Ar−OH (4)
    で表されるジオールを反応器に仕込み、
    一般式(2)で表される三塩基酸無水物と一般式(3)で表されるジアミンとの反応によりイミド基を生成するイミド化工程、
    (ii)低級脂肪酸無水物を添加して一般式(4)で表されるジオールの水酸基をアシル化するアシル化工程、
    (iii)低級脂肪酸を留去しながら高分子量化させる高分子量化工程を含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂の製造方法。
  10. 一般式(2)で表される三塩基酸無水物、一般式(3)で表されるジアミン、及び一般式(4)で表されるジオールを同時に反応器に仕込むことを特徴とする、請求項9に記載の熱可塑性樹脂の製造方法。
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