JP5476203B2 - 高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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樹脂単体の熱伝導性が優れた熱硬化性樹脂としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のエポキシ樹脂、又は特許文献3に記載のビスマレイミド樹脂が報告されている。しかしながらこれらの樹脂は熱硬化性を示すため、射出成形などの成形方法を適用することはできないうえ、分子構造が複雑であり、製造が困難であるという欠点を有する。特許文献2に記載のエポキシ樹脂は合成が比較的簡便であるが、熱伝導率が不十分であった。
1)主鎖が主として下記一般式(1)で示される繰り返し単位からなり、主として鎖状の構造よりなる熱可塑性樹脂(A)および、結晶核剤(C)を含有する、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
−M−Sp− (1)
(式中、Mはメソゲン基、Spはスペーサーを示す。)
2)結晶核剤(C)がタルクである1)に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
3)前記一般式(1)が下記一般式(2)で示される単位である、1)または2)に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
−A1−x−A2−y−R−z− (2)
(式中、A1およびA2は、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、および脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。x、yおよびzは、各々独立して直接結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−O−、−S−、−CH2−CH2−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−および−N(O)=N−からなる群から選ばれる2価の置換基を示す。Rは主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の置換基を示す。)
4)−A1−x−A2−に相当する部分が下記一般式(3)で表されるメソゲン基であることを特徴とする、3)に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
6)熱可塑性樹脂のRの分子鎖の炭素数が偶数である3)〜5)いずれかに記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
7)熱可塑性樹脂のRが−(CH2)8−、−(CH2)10−、および−(CH2)12−から選ばれる少なくとも1種であり、数平均分子量が3000〜40000である3)〜6)いずれかに記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
8)熱可塑性樹脂の−y−R−z−が−O−CO−R−CO−O−である、3)〜7)いずれかに記載の熱可塑性樹脂を用いた、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
9)無機充填剤(B)を含有する1)〜8)いずれかに記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
10)無機充填剤(B)が、単体での熱伝導率が12W/m・K以上の無機化合物であることを特徴とする、9)に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
11)無機充填剤(B)が、電気絶縁性高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、9)または10)に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
12)無機充填剤(B)が、導電性の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、9)または10)に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
13)高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物の原料である熱可塑性樹脂(A)の、樹脂単体の熱伝導率が0.45W/(m・K)以上である、1)〜8)いずれかに記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
−M−Sp− (1)
(式中、Mはメソゲン基、Spはスペーサーを示す。)
本発明で言う熱可塑性とは、加熱により可塑化する性質のことである。
本発明の樹脂は対称性が極めて高く、剛直鎖が屈曲鎖で結合された構造のため、分子の配向性が高く、形成される高次構造が緻密となり、優れた熱伝導性を有する。
−A1−x−A2−
(A1およびA2は、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、および脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。xは結合子であり、直接結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−O−、−S−、−CH2−CH2−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−および−N(O)=N−からなる群から選ばれる2価の置換基を示す。)で表される基が挙げられる。ここでA1、A2は各々独立して、ベンゼン環を有する炭素数6〜12の炭化水素基、ナフタレン環を有する炭素数10〜20の炭化水素基、ビフェニル構造を有する炭素数12〜24の炭化水素基、ベンゼン環を3個以上有する炭素数12〜36の炭化水素基、縮合芳香族基を有する炭素数12〜36の炭化水素基、炭素数4〜36の脂環式複素環基から選択されるものであることが好ましい。
−y−R−z−
(yおよびzは、各々独立して直接結合、−CH2−、−C(CH3)2−、−O−、−S−、−CH2−CH2−、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−および−N(O)=N−からなる群から選ばれる2価の置換基を示す。Rは分岐を含んでもよい主鎖原子数2〜20の分岐を含んでもよい2価の置換基を示す。)で表される基が挙げられる。ここでRは、炭素原子数2〜20の鎖状飽和炭化水素基、1〜3個の環状構造を含む炭素原子数2〜20の飽和炭化水素基、1〜5個の不飽和基を有する炭素原子数2〜20の炭化水素基、1〜3個の芳香環を有する炭素原子数2〜20の炭化水素基、1〜5個の酸素原子を有する炭素原子数2〜20のポリエーテル基から選択されるものが好ましい。
結晶化度(%)= ラメラ晶の割合(Vol%)× 0.7
樹脂自体が高熱伝導性を有するためには、高熱伝導性熱可塑性樹脂の結晶化度が7%以上であることが好ましい。結晶化度は、14%以上であることがより好ましく、21%以上であることがさらに好ましく、28%以上であることが特に好ましい。
脂肪族ジアミンの具体例としては、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、および1,12−ドデカンジアミンなどが挙げられる。
結晶核剤(C)の平均粒子径は50μm以下である。50μmを越えるとその効果が小さくなる。ただし、ここでいう平均粒子径とは、球状または円盤状であれば直径を、立方体状であれば一辺の長さを、板状または短冊状であれば投影面積径を、針状または桂状であれば長径を、繊維状であれば繊維長を表すものである。結晶核剤(C)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.01〜400重量部であり、好ましくは0.02〜390重量部であり、より好ましくは0.03〜380重量部であり、
さらに好ましくは1〜370重量部であり、最も好ましくは3〜360重量部である。結晶核剤が0.01重量部未満であると100℃以下の金型温度にて成形した際の結晶化が不充分であり、また熱伝導率が低くなる場合があり、一方、400重量部を越えると、成形品の表面性や耐衝撃性が著しく低下する。
数平均分子量:本発明の熱可塑性樹脂をp−クロロフェノールとo−ジクロロベンゼンの1:2Vol比混合溶媒に0.25重量%濃度となるように溶解して試料を調製した。標準物質はポリスチレンとし、同様の試料溶液を調製した。高温GPC((株)Waters製;150−CV)にてINJECTOR COMP:80℃、COLUMN COMP:80℃、PUMP/SOLVENT COMP:60℃、Injection Volume:200μl、の条件で測定した。
4,4’−ジヒドロキシビフェニル、セバシン酸、無水酢酸をモル比でそれぞれ1:1.05:2.1の割合で密閉型反応器に仕込み、常圧下、窒素ガス雰囲気で150℃にて3hアセチル化反応を行い、1℃/minの昇温速度で280℃まで加熱し重縮合を行った。酢酸の留出量が理論酢酸生成量の90%に到達した時点で引き続きその温度を保ったまま、約20分かけて10torrに減圧し、高分子量まで溶融重合を行った。減圧開始から1時間後、不活性ガスで常圧に戻し、生成した樹脂を取り出した。樹脂単体の熱伝導率を測定するために、得られた樹脂を140℃で4時間乾燥後、東芝機械製75tmm射出成形機を用いて射出成形を実施した。成形条件は、シリンダー温度220℃、ノズル部温度220℃、金型温度120℃に設定した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
製造例1のセバシン酸をドデカン二酸、テトラデカンニ酸にそれぞれした以外はそれぞれ同様に重合し、樹脂を得た。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
製造例3の減圧開始からの重合時間をそれぞれ0時間、1.5時間、3時間、6時間にした以外は同様に重合し、数平均分子量の違う樹脂を合成した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
重合反応装置に4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチルと1,10−デカンジオールを1:1.05のモル比で仕込み、触媒としてTBT(テトラブチルチタネート)をポリエステルの構成単位1モルに対し5×10-4モル添加し、280℃の温度でエステル交換反応させてメタノールを留出させた後、10torrの減圧下、280℃で1.5時間重縮合反応を行った。そののち不活性ガスで常圧に戻し、生成した樹脂を取り出した。樹脂単体の熱伝導率を測定するために、得られた樹脂を140℃で4時間乾燥後、東芝機械製75tmm射出成形機を用いて射出成形を実施した。成形条件は、シリンダー温度220℃、ノズル部温度220℃、金型温度120℃に設定した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
製造例6の1,10−デカンジオールをトリエチレングリコールに変更した以外は同様に重合した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
4−アセトキシ安息香酸−4−アセトキシフェニル、ドデカン二酸をモル比でそれぞれ1:1.05の割合で密閉型反応器に仕込み、常圧下、窒素ガス雰囲気で1℃/minの昇温速度で280℃まで加熱し重縮合を行った。酢酸の留出量が理論酢酸生成量の90%に到達した時点で引き続きその温度を保ったまま、約20分かけて10torrに減圧し、高分子量まで溶融重合を行った。減圧開始から1.5時間後、不活性ガスで常圧に戻し、生成した樹脂を取り出した。樹脂単体の熱伝導率を測定するために、得られた樹脂を140℃で4時間乾燥後、東芝機械製75tmm射出成形機を用いて射出成形を実施した。成形条件は、シリンダー温度220℃、ノズル部温度220℃、金型温度120℃に設定した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
4,4’−ジアセトキシアゾキシベンゼン、ドデカン二酸をモル比でそれぞれ1:1.05の割合で密閉型反応器に仕込み、常圧下、窒素ガス雰囲気で1℃/minの昇温速度で280℃まで加熱し重縮合を行った。酢酸の留出量が理論酢酸生成量の90%に到達した時点で引き続きその温度を保ったまま、約20分かけて10torrに減圧し、高分子量まで溶融重合を行った。減圧開始から1.5時間後、不活性ガスで常圧に戻し、生成した樹脂を取り出した。樹脂単体の熱伝導率を測定するために、得られた樹脂を140℃で4時間乾燥後、東芝機械製75tmm射出成形機を用いて射出成形を実施した。成形条件は、シリンダー温度220℃、ノズル部温度220℃、金型温度120℃に設定した。樹脂単体の熱伝導率および分子構造を表1に、数平均分子量を表2に示す。
(B−1):窒化ホウ素粉末(モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社製PT110、単体での熱伝導率60W/m・K、体積平均粒子径45μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1014Ω・cm)
(B−2):天然鱗片状黒鉛粉末(中越黒鉛(株)製BF−250A、単体での熱伝導率1200W/m・K、体積平均粒子径250.0μm、導電性)
(C−1): タルク(日本タルク(株)製MSKY、平均粒子径25μm、)
製造例1〜11で合成した熱可塑性樹脂(A)、無機充填剤(B)および結晶核剤(C)を表2の組成で用意し、フェノール系安定剤であるAO−60((株)ADEKA製)を0.2重量部加え、ヘンシェルミキサーにて混合した後、日本製鋼所製45mm同方向噛み合い型二軸押出機TEX44のスクリュー根本付近に設けられたホッパーより投入した。設定温度は供給口近傍が200℃で、順次設定温度を上昇させ、押出機スクリュー先端部温度を220℃に設定した。ここで表2中の無機充填剤(B)量は、樹脂組成物全体積を100%としたときの、樹脂組成物全体積中での体積%を表わす。また表2中の結晶核剤(C)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対する重量部である。
熱可塑性樹脂(A)としてポリエチレンテレフタレート(PET)((株)ベルポリエステルプロダクツ製ベルペットEFG−70)(フェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃で測定したときの固有粘度(IV)が0.75 dl/g)を用い、無機充填剤(B)および結晶核剤(C)を表2の組成で用意し、フェノール系安定剤であるAO−60((株)ADEKA製)を0.2重量部加え、ヘンシェルミキサーにて混合した後、押出機スクリュー先端部温度、ダイス温度および成形時のシリンダー温度、ノズル部温度を280℃に設定した以外は、実施例1と同様に評価を行った。得られた成形品の熱伝導率を表2に示す。
Claims (11)
- 主鎖が主として下記一般式(1)
−M−Sp− (1)
(式中、Mはメソゲン基、Spはスペーサーを示す。)
で示される繰り返し単位からなり、主として鎖状の構造よりなる熱可塑性樹脂(A)および、結晶核剤(C)を含有する、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物であって、
前記一般式(1)が下記一般式(2)
−A 1 −x−A 2 −y−R−z− (2)
(式中、A 1 およびA 2 は、各々独立して芳香族基、縮合芳香族基、脂環基、および脂環式複素環基から選ばれる置換基を示す。x、yおよびzは、各々独立して直接結合、−CH 2 −、−C(CH 3 ) 2 −、−O−、−S−、−CH 2 −CH 2 −、−C=C−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−CO−NH−、−CH=N−、−CH=N−N=CH−、−N=N−および−N(O)=N−からなる群から選ばれる2価の置換基を示す。Rは炭素数が4〜18の直鎖の脂肪族炭化水素鎖を示す。)
で示される単位であり、
高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物の原料である熱可塑性樹脂(A)の、樹脂単体の熱伝導率が0.45W/(m・K)以上であることを特徴とする高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。 - 結晶核剤(C)がタルクである請求項1に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂のRの分子鎖の炭素数が偶数である請求項1〜3のいずれかに記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂のRが−(CH2)8−、−(CH2)10−、および−(CH2)12−から選ばれる少なくとも1種であり、数平均分子量が3000〜40000である請求項1〜4のいずれかに記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂の−y−R−z−が−O−CO−R−CO−O−である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂を用いた、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
- さらに、無機充填剤(B)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
- 無機充填剤(B)が、単体での熱伝導率が12W/m・K以上の無機化合物であることを特徴とする、請求項7に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
- 無機充填剤(B)が、電気絶縁性高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項7または8に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
- 無機充填剤(B)が、導電性の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項7または8に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂(A)の主鎖が、上記一般式(1)で示される繰り返し単位を、主鎖の全構成単位に対して50mol%以上含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
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