JP5895834B2 - 微細セルロース繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、微細セルロース繊維の製造方法に関する。
近年、石油資源の代替および環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10〜50μmのセルロース繊維、とりわけ木材由来のセルロース繊維(パルプ)は主に紙製品としてこれまでにも幅広く使用されてきた。
また、セルロース繊維としては、繊維径が1000nm以下の微細セルロース繊維も知られている。微細セルロース繊維の用途については様々なものが検討されている。例えば、微細セルロース繊維を補強剤として樹脂やゴムに配合すると、機械的物性の向上効果が大きくなると言われている。
微細セルロース繊維の製造方法としては、セルロース繊維を溶媒に分散させた分散液を、破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーに、30〜200MPaの圧力で圧送してホモジナイズ処理し、それを5〜100回繰り返す方法が知られている(特許文献1)。
また、リグニン含有量が0〜5質量の繊維集合体を、超音波照射しながら、攪拌速度1000〜50000rpmで攪拌してセルロースナノファイバーを製造する方法が知られている(特許文献2)。
また、セルロースを含む繊維原料をN−オキシルおよび次亜塩素酸ナトリウム等の共酸化剤で処理した後、高速回転によるホモミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超音波分散処理、レファイナー処理の少なくとも一つの処理を行って微細化する方法が知られている(特許文献3)。
また、セルロースを含む繊維原料をオゾンで処理した後、石臼粉砕処理、高圧ホモジナイザー処理、ボールミル処理から選択される少なくとも一つの処理を行って微細化する方法が知られている(特許文献4)。
特開2011−26760号公報 特開2010−216021号公報 特許第4503674号公報 特開2010−254726号公報
しかし、ホモジナイズ処理を繰り返す特許文献1に記載の微細セルロース繊維の製造方法では、微細化に要するエネルギー消費量が多いにもかかわらず、微細セルロース繊維の収率は高くならなかった。特許文献2〜4に記載の微細セルロース繊維の製造方法では、微細セルロース繊維の収率が高くなるものの、微細化に要するエネルギー消費量が多かった。
本発明は、微細化に要するエネルギー消費量を抑えつつ、微細セルロース繊維を高収率で製造できる微細セルロース繊維の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]セルロース繊維にアニオン基又はカチオン基を導入する化学処理を施して、アニオン基又はカチオン基を導入したセルロース繊維を含むセルロース繊維原料分散液を得る化学処理工程と、前記セルロース繊維原料分散液を、セルロース繊維の数平均繊維径が2〜1000nmになるように微細化処理する微細化工程を有し、前記微細化工程では、セルロース繊維原料分散液に、圧力式分散機を用いて微細化する第1の微細化処理を施した後に、攪拌翼を備えたローターと前記攪拌翼より外側に配置されたスクリーンとを備えた高速回転式分散機を用い、ローターの回転周速20〜40m/秒で微細化する第2の微細化処理を施す、微細セルロース繊維の製造方法。
[2]前記第1の微細化処理では、セルロース繊維原料分散液を、50〜250MPa(ゲージ圧)の圧力で圧力式分散機に供給して微細化する、[1]に記載の微細セルロース繊維の製造方法。
本発明の微細セルロース繊維の製造方法によれば、微細化に要するエネルギー消費量を抑えつつ、微細セルロース繊維を高収率で製造できる。
「微細セルロース繊維」
微細セルロース繊維は、通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに細く且つ短いI型結晶構造のセルロース繊維あるいは棒状粒子である。
微細セルロース繊維がI型結晶構造を有していることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の2箇所の位置に典型的なピークを有することで同定することができる。
微細セルロース繊維の、X線回折法によって求められる結晶化度は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上である。結晶化度が前記下限値以上であれば、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求めることができる(Segalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
<繊維幅>
微細セルロース繊維は、電子顕微鏡で観察して求めた平均繊維幅が2〜1000nmのセルロースである。微細セルロース繊維の平均繊維幅は2〜100nmが好ましく、2〜50nmがより好ましく、2〜30nmがさらに好ましく、2〜15nmが特に好ましい。微細セルロース繊維の平均繊維幅が前記上限値を超えると、微細セルロース繊維としての特性(高強度や高剛性、高寸法安定性、樹脂と複合化した際の高分散性、透明性)を得ることが困難になる。微細セルロース繊維の平均繊維幅が前記下限値未満であると、セルロース分子として分散媒に溶解してしまうため、微細セルロース繊維としての特性(高強度や高剛性、高寸法安定性)を得ることが困難になる。
微細セルロース繊維の電子顕微鏡観察による平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。微細セルロース繊維含有スラリーを調製し、該スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面の操作型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍、50000倍あるいは100000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の幅(繊維の短径)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維幅を読み取る。このように読み取った繊維幅を平均して平均繊維幅を求める。この平均繊維幅は数平均繊維径と等しい。
微細セルロース繊維の最大繊維幅は50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。微細セルロース繊維の最大繊維幅が前記上限値以下であれば、樹脂と混ぜ合わせて得た複合材料の強度が高く、また、複合材料の透明性を確保しやすいため、透明用途に好適である。
<繊維長>
微細セルロース繊維の平均繊維長は、0.1〜5μmが好ましい。平均繊維長が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維を樹脂に配合した際の強度向上効果が充分に得られる。平均繊維長が前記上限値以下であれば、微細セルロース繊維を樹脂に配合した際の混合性がより良好となる。繊維長は、前記平均繊維幅を測定する際に使用した電子顕微鏡観察画像を解析することにより求めることができる。すなわち、上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の繊維長を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維長を読み取る。このように読み取った繊維長を平均して平均繊維長を求める。
微細セルロース繊維を、透明基板等の強度が求められる用途に適用する場合には、繊維長は長め(具体的には500nm〜4μm)であることが好ましく、樹脂に配合する場合には、繊維長は短め(具体的には200nm〜2μm)であることが好ましい。
<アニオン基、カチオン基>
微細セルロース繊維は、アニオン基を有して表面電荷が負となっていてもよいし、カチオン基を有して表面電荷が正となっていてもよい。
微細セルロース繊維がアニオン基またはカチオン基を有する場合、その含有量は、0.1〜2.0mmol/gであることが好ましく、0.1〜1.5mmol/gであることがより好ましく、0.2〜1.2mmol/gであることがさらに好ましい。カチオン基またはアニオン基の含有量が前記範囲であれば、微細セルロース繊維の水和性が高くなり過ぎず、スラリー化した際の粘度が低くなる。アニオン基またはカチオン基の含有量が前記上限値を超えると、水和性が高くなりすぎて微細セルロース繊維が溶解するおそれがある。
なお、セルロースは、カルボキシ基を導入する処理を施さなくても、少量(具体的には0.1mmol/g未満)のカルボキシ基を有している。
前記アニオン基としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
アニオン基の含有量は、米国TAPPIの「Test Method T237 cm−08(2008):Carboxyl Content of pulp」の方法を用いて求める。アニオン基の含有量をより広範囲まで測定可能にするために、前記試験方法に用いる試験液のうち、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)/塩化ナトリウム(NaCl)=0.84g/5.85gを蒸留水で1000mlに溶解希釈した試験液について、前記試験液の濃度が実質的に4倍となるように、水酸化ナトリウム1.60gに変更した以外は、TAPPI T237 cm−08(2008)に準じる。また、アニオン基を導入した場合には、アニオン基導入前後のセルロース繊維における測定値の差を実質的なアニオン基含有量とする。なお、測定試料とする絶乾セルロース繊維は、加熱乾燥の際の加熱によって起こる可能性があるセルロースの変質を避けるため、凍結乾燥により得たものを使用する。
当該アニオン基含有量測定方法は、1価のアニオン基(カルボキシ基)についての測定方法であることから、定量対象のアニオン基が多価の場合には、前記1価のアニオン基含有量として得られた値を、酸価数で除した数値をアニオン基含有量とする。
前記カチオン基とは、その基内にアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムなどのオニウムを有する基であって、通常は、分子量が1000以下の基である。具体的には一級アンモニウム、二級アンモニウム、三級アンモニウム、四級アンモニウムなどのアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、これらアンモニウム、ホスホニウムまたはスルホニウムを有する基が挙げられる。
カチオン基の含有量は、下記の方法により測定する。
カチオン化剤処理を施したパルプスラリーを絶乾質量換算で0.5g取り、イオン交換水で1質量%濃度(有姿50g)に希釈する。これに30質量%水酸化ナトリウム溶液0.67gを少量ずつ、充分に撹拌しながら加え2時間静置する。パルプを濾過し、濾紙上のパルプをイオン交換水で洗浄する。濾液のpHが8.5以下になることをもって洗浄の終点とする。
100mlスクリュー瓶に濾紙上のパルプを全量移し、サンプル中の水分量を測定するために、このときのパルプの質量を精秤し、記録する。精秤したパルプに0.05N塩酸溶液100gを加え、スクリュー瓶に蓋をして、激しく振り混ぜた後、1時間静置する。
充分に乾燥したグラスフィルターを用いて、スクリュー瓶中のスラリーを濾過し、濾液を受器に受ける。得られた濾液3gを100mlビーカーに移し、メチルレッド指示薬2、3滴を加え、0.01N水酸化ナトリウム溶液で滴定を行う。水酸化ナトリウム溶液を滴下していき、溶液の色が当初のピンク色からオレンジ色、黄色へと変化したところを滴定の終点とする。
カチオン基の導入量は、数1に示す計算式に従って算出する。なお、滴定のブランク値は、0.05N塩酸溶液3gを滴定して求める。
Figure 0005895834
:ブランク滴定量
NaOH:水酸化ナトリウム溶液濃度
HCl:サンプルに加えた塩酸量
:ブランク塩酸取り量
V:サンプル滴定量
sample:サンプル濾液取り量
water:サンプル中の水分量
BD−pulp:サンプルの絶乾質量
N:置換基の価数
「微細セルロース繊維の製造方法」
上記の微細セルロース繊維を製造する本発明の微細セルロース繊維の製造方法は、セルロース繊維原料分散液を微細化処理する微細化工程を有する。
また、本発明の微細セルロース繊維の製造方法は、微細化工程の前に、化学処理工程、洗浄工程、異物除去工程を有してもよく、微細化工程の後に、精製工程、濃縮工程、再分散工程を有してもよい。
<セルロース繊維原料>
本発明において、微細セルロース繊維の原料となる、セルロースを含む繊維原料としては、製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ、麻、麦わら、バガスなどの非木材系パルプ、ホヤや海草などから単離されるセルロースなどが挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさという点で、製紙用パルプが好ましい。製紙用パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)など)、針葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)など)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。これらの中でも、より入手しやすいことから、クラフトパルプ、脱墨パルプ、サルファイトパルプが好ましい。
セルロース繊維原料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
<化学処理工程>
上記のセルロースを含む繊維原料は、そのままで微細セルロース繊維の原料として用いてもよい。しかし、微細化工程で微細化が促進されることから、本発明の製造方法は、極性基及び嵩高基の少なくとも一方からなる置換基を0.1〜2.0mmol/g含有させる化学処理を施す化学処理工程を有することが好ましい。
極性基としては、アニオン基(具体的には、カルボキシ基、リン酸基、硫酸エステル基、スルホン酸基、フェノール基、硝酸エステル基)、カチオン基が挙げられ、カルボキシ基、リン酸基、カチオン基が好ましい。
嵩高基としては、アルキル基、ベンジル基(ベンゼン環)及びベンゼン誘導体含有基、アシル基、シリル基、トリチル基、トシル基等が挙げられる。
(カルボキシ基の導入)
カルボキシ基をセルロース繊維原料に導入する方法としては、酸化剤を使用して、セルロースの水酸基の一部をカルボキシ基に酸化する方法が挙げられる。
酸化剤としては、オゾン、二酸化塩素、過酸化水素、過酢酸、過硫酸、過マンガン酸、塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸またはこれらの塩等の水溶液、六価クロム酸硫酸混液、ジョーンズ試薬(無水クロム酸の硫酸酸性溶液)、クロロクロム酸ピリジリニウム(PCC試薬)などのクロム酸酸化試薬、Swern酸化などに使われる活性化ジメチルスルホキシド試薬、また触媒的な酸化が生じるテトラプロピルアンモニウムテルルテナート(TPAP)や、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)などのN−オキシル化合物等が挙げられる。これらのうち、セルロース繊維にカルボキシ基を導入する効率が高いため、オゾン、TEMPO、過酸化水素、二酸化塩素が好ましく、オゾン、TEMPOがより好ましい。
[オゾンによる処理]
オゾンによる処理では、セルロースの一部の水酸基がカルボニル基やカルボキシ基に換わる。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。
オゾンは、空気、酸素ガス、酸素添加空気等の酸素含有気体を、公知のオゾン発生装置に供給することにより発生させることができる。
オゾンによる処理は、オゾンが存在する閉じた空間または雰囲気中にセルロース繊維原料を曝すことで行われる。オゾンが含まれる気体中のオゾン濃度は、250g/m以上であると、爆発するおそれがあるため、250g/m未満である必要がある。しかし、濃度が低いと、オゾン使用量が増えるため、オゾン濃度は50〜215g/mであることが好ましい。オゾン濃度が前記下限値以上であれば、オゾンの取り扱いが容易であり、しかも微細化工程での微細セルロース繊維の収率の向上効果がより高くなる。
セルロース繊維原料に対するオゾン添加量は特に制約されるものではないが、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対して5〜30質量部であることが好ましい。オゾン添加量が前記下限値以上であれば、微細化工程での微細セルロース繊維の収率向上効果がより高くなる。しかし、前記上限値を超えると、オゾン処理前後の歩留まりの低下、脱水性の悪化を引き起こす。また、微細化工程では微細セルロース繊維の収率向上効果が頭打ちとなる。
オゾン処理温度としては特に制約されるものではなく、0〜50℃の範囲で適宜調整される。また、オゾン処理時間についても特に制約されるものではなく、1〜360分間の範囲で適宜調整される。
なお、セルロース繊維原料にオゾン処理を施した後、追酸化処理を施してもよい。追酸化処理に用いる酸化剤としては、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物の他、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。
また、オゾン処理の後には、処理されたセルロース繊維原料に対して、アルカリ溶液で処理するアルカリ処理を施すことが好ましい。アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液中に、オゾン処理したセルロース繊維原料を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。
無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩またはアルカリ土類金属のリン酸塩が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウムが挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属のリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウムなどが挙げられる。
有機アルカリ化合物としては、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物およびその水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等が挙げられる。例えば、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等が挙げられる。
上記アルカリ化合物は1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
アルカリ溶液における溶媒としては水または有機溶媒のいずれであってもよいが、極性溶媒(水、アルコール等の極性有機溶媒)が好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒がより好ましい。また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液が特に好ましい。
オゾン処理したセルロース繊維原料を浸漬させたアルカリ溶液の25℃におけるpHは9以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、11〜14であることがさらに好ましい。アルカリ溶液のpHが前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維の収率がより高くなる。しかし、pHが14を超えると、アルカリ溶液の取り扱い性が低下するだけでなく、微細セルロース繊維の溶解が起こる。
[TEMPOによる処理]
TEMPOによる処理では、セルロース繊維原料に対し、TEMPOおよびハロゲン化アルカリの存在下で酸化剤を反応させて、セルロースの水酸基の一部をカルボキシ基に換える。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。
TEMPOとともに酸化触媒として使用するハロゲン化アルカリは特に制約されるものではなく、ヨウ化アルカリ、臭化アルカリ、塩化アルカリ、フッ化アルカリ等を適宜選択して使用することができる。
酸化剤についても特に制約されるものではなく、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、亜臭素酸ナトリウム等を適宜選択して使用することができる。
TEMPOおよびハロゲン化アルカリの使用量は特に制約されるものではないが、各々、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましい。TEMPOおよびハロゲン化アルカリの添加量が各々前記下限値以上であれば、微細化工程での微細セルロース繊維の収率向上効果がより高くなる。しかし、前記上限値を超えると、微細化工程での微細セルロース繊維の収率向上効果が頭打ちとなるおそれがある。
酸化剤の使用量についても特に制約されるものではないが、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対して、1〜80質量部が好ましい。
セルロース繊維原料を含む分散液をTEMPOにより処理する際の分散液のpHは、使用する酸化剤の種類に応じて適宜調整する。セルロース繊維原料分散液のpH調整は、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性物質、あるいは酢酸、シュウ酸等の酸性物質を適宜添加することで行う。
セルロース繊維原料をTEMPOにより処理する際の処理温度は、20〜100℃の範囲であることが好ましく、また処理時間は、0.5〜4時間であることが好ましい。
[カルボン酸系化合物による処理]
また、カルボキシ基をセルロース繊維原料に導入する方法としては、分子内に2以上のカルボキシ基を有するカルボン酸系化合物を用いる方法も好ましい。
カルボン酸系化合物による処理では、セルロース分子が有するヒドロキシ基と、カルボン酸系化合物とが脱水反応して、極性基(−COO)を形成する。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。
セルロース繊維原料をカルボン酸系化合物により処理する具体的方法としては、セルロース繊維原料にガス化したカルボン酸系化合物を混合する方法、セルロース繊維原料の分散液にカルボン酸系化合物を添加する方法等が挙げられる。これらのうち、工程が簡便で且つカルボキシ基導入の効率が高くなることから、セルロース繊維原料にガス化したカルボン酸系化合物を混合する方法が好ましい。カルボン酸系化合物をガス化する方法としては、カルボン酸系化合物を加熱する方法が挙げられる。
本処理において使用するカルボン酸系化合物は、2つのカルボキシ基を有する化合物、2つのカルボキシ基を有する化合物の酸無水物、およびそれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。2つのカルボキシ基を有する化合物の中では、2つのカルボキシ基を有する化合物(ジカルボン酸化合物)が好ましい。
2つのカルボキシ基を有する化合物としては、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2−メチルプロパン二酸、2−メチルブタン二酸、2−メチルペンタン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2−ブテン二酸(マレイン酸、フマル酸)、2−ペンテン二酸、2,4−ヘキサジエン二酸、2−メチル−2−ブテン二酸、2−メチル−2ペンテン二酸、2−メチリデンブタン二酸(イタコン酸)、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(フタル酸)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(イソフタル酸)、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸(テレフタル酸)、エタン二酸(シュウ酸)等のジカルボン酸化合物が挙げられる。
2つのカルボキシ基を有する化合物の酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸化合物や複数のカルボキシ基を含む化合物の酸無水物が挙げられる。
2つのカルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
これらのうち、工業的に適用しやすく、また、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましい。
セルロース繊維原料に対するカルボン酸系化合物の質量割合は、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対して、カルボン酸系化合物が0.1〜500質量部であることが好ましく、10〜200質量部であることがより好ましい。カルボン酸系化合物の割合が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維の収率をより向上させることができる。しかし、前記上限値を超えても、収率向上の効果は頭打ちとなり、無駄にカルボン酸系化合物を使用するだけである。
処理温度は、セルロースの熱分解温度の点から、250℃以下であることが好ましい。さらに、処理の際に水が含まれている場合には、80〜200℃にすることが好ましく、100〜170℃にすることがより好ましい。
本処理においては、必要に応じて触媒を用いることもできる。触媒としてはピリジンやトリエチルアミン、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性触媒や、酢酸、硫酸、過塩素酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。
カルボン酸系化合物による処理の後には、オゾンによる処理と同様に、処理したセルロース繊維原料に、アルカリ溶液で処理するアルカリ処理を施すことが好ましい。
(リン酸基の導入)
リン酸基をセルロースに導入する方法としては、乾燥した、あるいは湿潤状態のセルロース繊維原料にリン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法、セルロース繊維原料の分散液にリン酸またはリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。これら方法においては、通常、リン酸またはリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理、加熱処理等を行う。
ここで用いられるリン酸またはリン酸誘導体としては、リン原子を含有するオキソ酸、ポリオキソ酸或いはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
具体的には、リン酸;リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどのリン酸のナトリウム塩;ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのポリリン酸のナトリウム塩;リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウムなどのリン酸のカリウム塩;ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウムなどのポリリン酸のカリウム塩;リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウムなどのリン酸のアンモニウム塩;ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウムなどのポリリン酸のアンモニウム塩が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記のうちでも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。
セルロース繊維原料に対するリン酸またはリン酸誘導体の質量割合は、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対してリン酸またはリン酸誘導体が、リン元素量として0.2〜500質量部であることが好ましく、1〜400質量部であることがより好ましく、2〜200質量部であることがさらに好ましい。リン酸またはリン酸誘導体の割合が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維の収率をより向上させることができる。しかし、前記上限値を超えても、収率向上の効果は頭打ちとなり、無駄にリン酸またはリン酸誘導体を使用するだけである。
加熱処理温度は、セルロースの熱分解温度の点から、250℃以下であることが好ましい。また、セルロースの加水分解を抑える観点から、加熱処理温度は100〜170℃であることが好ましい。さらに、加熱処理の際にリン酸またはリン酸誘導体を添加した系に水が含まれている間の加熱については、好ましくは130℃以下、より好ましくは110℃以下で加熱して充分に水分を除去乾燥するとよい。その後は、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。また、水分を除く際には減圧乾燥機を用いてもよい。
リン酸またはリン酸誘導体による処理の後には、オゾンによる処理と同様に、処理したセルロース繊維原料に、アルカリ処理を施してもよい。
上記の処理によって、セルロースはリン酸由来の基(−PO 2−、−PO)を有するようになる。セルロースは2種以上のリン酸由来の基を有してもよい。例えば、セルロースが、水素イオンの数が異なる2種のリン酸由来を有してもよい。
(カチオン基の導入)
カチオン基をセルロース繊維原料に導入する方法としては、四級アンモニウム基及びセルロースの水酸基と反応する基を有するカチオン化剤を用いる方法が適用される。
カチオン化剤を、触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)の存在下で反応させることで、セルロースはカチオン化し、カチオン同士の電気的な反発が強まる。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。
カチオン化剤の具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどのグリシジルトリアルキルアンモニウムハライド或いはそのハロヒドリン型の化合物が挙げられる。
カチオン化剤の使用量は特に制限されないが、セルロース繊維原料の固形分100質量部に対して10〜1000質量部であることが好ましい。カチオン化剤の使用量が前記下限値以上であれば、微細化工程での微細セルロース繊維の収率向上効果がより高くなる。しかし、前記上限値を超えると、微細化工程での微細セルロース繊維の収率向上効果が頭打ちとなることがある。
カチオン化剤処理における処理温度は、30〜90℃の範囲であることが好ましく、また処理時間は、1〜3時間であることが好ましい。
(酵素処理)
本発明で用いるセルロース繊維原料は、必ずしも上記の極性基または嵩高基を有する必要はないが、上記の極性基または嵩高基を有さない場合には、所謂セルラーゼと総称される酵素によってセルロース繊維原料を処理することが好ましい。セルラーゼは、セロビオヒドロラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、ベータグルコシダーゼ活性を有する酵素である。
酵素処理で使用する酵素は、上記の活性を有する酵素を適宜の量で混合して使用してもよいし、市販のセルラーゼ製剤を用いてもよい。
市販のセルラーゼ製剤としては、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム属(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ファネロケエテ(Phanerochaete)属、トラメテス属(Trametes)、フーミコラ(Humicola)属、バチルス(Bacillus)属などに由来するセルラーゼ製剤が挙げられる。
このようなセルラーゼ製剤の市販品としては、全て商品名で、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、マルティフェクトCX10L(ジェネンコア社製)等が挙げられる。
なお、市販されているセルラーゼ製剤には、上記した各種のセルラーゼ活性を有すると同時に、ヘミセルラーゼ活性も有しているものが多い。
酵素処理では、酵素として、セルラーゼ以外に、ヘミセルラーゼ系酵素を単独に使用してもよいし、セルラーゼとヘミセルラーゼ系酵素とを混合使用してもよい。ヘミセルラーゼ系酵素の中でも、キシランを分解する酵素であるキシラナーゼ(xylanase)、マンナンを分解する酵素であるマンナーゼ(mannase)、アラバンを分解する酵素であるアラバナーゼ(arabanase)を使用することが好ましい。また、ペクチンを分解する酵素であるペクチナーゼもヘミセルラーゼ系酵素として使用することができる。
酵素処理の際の分散液のpHは、使用する酵素の活性が高くなる範囲に保つことが好ましい。例えば、トリコデルマ起源の市販の酵素の場合、pHは4〜8の間が好ましい。
また、酵素処理の際の分散液の温度は、使用する酵素の活性が高くなる範囲に保つことが好ましい。例えば、トリコデルマ起源の市販の酵素の場合、温度は40℃〜60℃が好ましい。温度が前記下限値未満では酵素活性が低下して処理時間が長くなり、前記上限値を超えると酵素が失活するおそれがある。酵素処理の処理時間は10分〜24時間の範囲が好ましい。酵素処理の処理時間が10分未満では酵素処理の効果が発現しにくい。24時間を超えると酵素によりセルロース繊維の分解が進みすぎて、得られる微細セルロース繊維の平均繊維長が短くなりすぎるおそれがある。
なお、所定時間以上に酵素が活性なままで残留していると前記のようにセルロースの分解が進み過ぎるため、所定の酵素処理が終了した際には、酵素反応の停止処理を施すことが好ましい。酵素反応の停止処理としては、酵素処理を施した分散液を水洗し、酵素を除去する方法、酵素処理を施した分散液に水酸化ナトリウムをpHが12程度になるように添加して酵素を失活させる方法、酵素処理を施した分散液の温度を温度90℃まで上昇させて酵素を失活させる方法が挙げられる。
<洗浄工程>
洗浄工程は、化学処理工程の際に使用した薬品やセルロース繊維原料の分解物を除去する工程である。具体的に、洗浄工程では、パルプを洗浄するために通常使用される各種洗浄機、例えば、フィルター洗浄機、ドラム洗浄機、ベルト洗浄機、ディフューザー洗浄機、フィルタープレス、スクリュープレスなどを用いることができる。ただし、本発明で用いるセルロース繊維原料が、極性基及び嵩高基の少なくとも一方を0.1〜2.0mmol/g含有している場合、水切れが悪く洗浄や脱水が難しい。そのため、上記洗浄機の中でも、フィルタープレス、スクリュープレスなどのプレス洗浄機が好ましい。
プレス洗浄機を用いる洗浄工程では、洗浄除去したい薬品やセルロース繊維原料の分解物を含むセルロース繊維原料の分散液をプレス洗浄機で脱水した後、洗浄水にてセルロース繊維原料を希釈し、再度プレス洗浄機で脱水するという操作を繰り返して、洗浄する。
<異物除去工程>
異物除去工程では、セルロース繊維原料分散液に異物除去処理を施す工程である。
通常、セルロース繊維原料には様々な種類の異物が含まれている。例えば、木材由来の原料を用いた場合には、本来はパルプ化前に剥皮されて除去されているはずの樹皮が異物として含まれていることがある。セルロース繊維原料が製紙用化学パルプである場合には、蒸解が不充分で元の木材原料の形状を保ったままの未蒸解片が異物として含まれていることがある。セルロース繊維原料が機械パルプである場合には、機械的パルプ化工程にて充分にパルプ化されずに残った未解繊繊維が異物として含まれていることがある。セルロース繊維原料が脱墨パルプである場合には、原料の古紙等に含まれている粘着物やビニール、ポリヒモ、ホットメルト等が異物として含まれていることがある。また、すべての原料に共通して含まれる異物として、石片や砂、サビ、金属片などが挙げられる。通常、セルロース繊維原料を製造する工程には異物を除去する工程が含まれるが、それでも異物を完全に除去することは実質的に不可能であるため、多かれ少なかれ何らかの異物が残存している。
これらの異物が微細化工程に持ち込まれてしまうと、微細化処理装置の摩耗や損傷を招き、装置の寿命が短くなる傾向にあり、メンテナンスの頻度を多くしなければならない。また、異物が含まれていると、得られるセルロース繊維中に異物が残留し、外観の悪化や各種物性の低下を引き起こす。特に、異物が破壊核となってしまうため、強度のばらつきや低下を招きやすく、強度が重視されるような用途にセルロース繊維を使用する場合には、異物の残留は望ましくない。
しかし、本発明では、異物除去工程を有することで微細化処理装置の摩耗や損傷を防止できるだけでなく、得られるセルロース繊維の外観や物性などの品質を高く保つことができる。
異物除去工程における異物除去処理は、セルロース繊維原料から異物を分離し、除去する処理であればよい。異物除去処理に用いる異物除去装置としては、異物除去性が高いことから、セルロース繊維との形状・大きさの違いによって異物を分離するスクリーン、セルロース繊維との比重の違いによって異物を分離するクリーナーが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、種類の異なる複数を組み合わせてもよい。また、同一の装置を複数台組み合わせてもよい。
異物除去装置を2台組み合わせる場合には、例えば、1台目の装置から排出されるリジェクトを2台目の装置に供給し、2台目のリジェクトを系外に排出し、1台目のアクセプトと2台目のアクセプトとを回収する多段方式を適用することができる。また、1台目のリジェクトを系外に排出し、アクセプトを2台目に供給し、2台目のリジェクトも系外に排出して、2台目のアクセプトを回収する多重方式を適用することもできる。また、1台目のアクセプトを回収し、1台目のリジェクトを2台目に供給し、2台目のアクセプトを1台目に戻し、2台目のリジェクトを系外に排出するカスケード方式を適用することもできる。なお、上記「アクセプト」は異物除去装置から回収分として排出されるものであり、「リジェクト」は異物除去装置から異物含有分として排出されるものである。
上記の多段方式、多重方式、カスケード方式はいずれも、異物除去装置を3台以上にすることも可能である。
スクリーンとしては、開放型振動スクリーンと加圧密閉型スクリーンの2つのタイプが挙げられ、本発明ではどちらを用いてもよい。
また、スクリーンは目孔の形状で分類され、具体的には、丸孔スクリーン、スリットスクリーンが挙げられる。
本発明では、丸孔スクリーン、スリットスクリーンの一方のみを用いてもよく、例えば、セルロース繊維原料中に大型の異物が少ない場合には、スリットスクリーンのみを用いてもよい。
また、本発明では、丸孔スクリーン、スリットスクリーンの両方を用いてもよい。丸孔スクリーンとスリットスクリーンの両方を用いる場合には、丸孔スクリーンで大型の異物を除去した後、スリットスクリーンで小型の異物を除去することが好ましい。
丸孔スクリーンの孔のサイズは、孔径0.1〜10mmが好ましく、1〜5mmがより好ましい。スリットスクリーンのスリットのサイズは、短手方向の開口幅0.05〜2.0mmが好ましく、0.1〜0.5mmがより好ましい。これらのスクリーンの孔のサイズは、異物の除去率に大きく影響する。小さな異物まで除去するためには孔のサイズを小さくすることが好ましいが、孔のサイズを前記の範囲よりもさらに小さくすると、セルロース繊維原料も通過しにくくなり、孔を閉塞させてスクリーンの運転が困難になるおそれがある。一方、孔のサイズを前記の範囲よりも大きくすると、セルロース繊維原料は通過しやすくなるため、スクリーンの運転が困難になることは避けられるが、異物まで通過しやすくなるため、異物の除去率が低下する。
クリーナーとしては、フォワード型とリバース型の2つのタイプが挙げられ、本発明ではどちらを使用することもできる。通常、クリーナーは円錐形状の容器を備え、その円錐形状の容器の底面に被処理物(本発明では、セルロース繊維原料分散液)を圧送し、被処理物を容器内で内面に沿って回転させ、その際に生じる遠心力を利用して、セルロース繊維と比重が異なる異物を除去するようになっている。
フォワード型のクリーナーは、容器の先端部及び内壁に集まる重い異物を分離して除去するものであり、リバース型のクリーナーは容器の底部及び中心部に集まる軽い異物を除去するものである。これらは、セルロース繊維原料に含まれる異物の種類に応じて一方のみを使用してもよいし、両方を併用してもよい。
フォワード型、リバース型のいずれのクリーナーにおいても、入口圧力と出口圧力との差圧の設定が重要である。すなわち、クリーナーは、セルロース繊維原料と比重の異なる異物に強制的に遠心力を付与することによって異物を除去するため、入口圧力を高くして差圧を大きくする程、遠心力が強くなって異物を分離しやすくなる。しかし、差圧を大きくすると、被処理物を供給する圧送ポンプの消費動力が大きくなるため、エネルギーコストの増加を招く。それらのことから、差圧の設定値としては、0.5〜10kg/cmが好ましく、1〜5kg/cmがより好ましい。
<微細化工程>
微細化工程は、異物除去工程の後に、セルロース繊維原料分散液を、平均繊維幅が2〜1000nmの微細セルロース繊維が得られるように微細化処理して、微細セルロース繊維を含有する微細セルロース繊維分散液を得る工程である。
本発明における微細化処理では、セルロース繊維原料分散液に、圧力式分散機を用いて微細化する第1の微細化処理を施した後に、高速回転式分散機を用いて微細化する第2の微細化処理を施す。
第1の微細化処理で使用する圧力式分散機は、ホモバルブとホモバルブシートとを備えるホモジナイザーである。ホモジナイザーを用いた微細化では、ホモバルブとホモバルブシートとを、それらの間に狭小な隙間が形成されるように配置し、その隙間にセルロース繊維原料分散液を高圧で供給した後、隙間から吐出させて圧力を大気圧近くまで開放する。これにより、セルロース繊維原料分散液に強い剪断力を付与して、セルロース繊維原料を微細化する。
ホモジナイザーの具体例としては、高圧ホモジナイザー、中圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
圧力式分散機へのセルロース繊維原料分散液の供給圧力(ゲージ圧)は、50〜250MPaであることが好ましく、60〜180MPaであることがより好ましく、70〜150 MPaであることがさらに好ましい。圧力式分散機へのセルロース繊維原料分散液の供給圧力が前記下限値以上であれば、セルロース繊維原料を充分に微細化でき、前記上限値以下であれば、エネルギー消費量をより抑えることができる。
第2の微細化処理で使用する高速回転式分散機は、攪拌翼を備えたローターと、前記攪拌翼よりも外側に配置されたスクリーンとを備えたものである。この高速回転式分散機では、ローターを回転させて、セルロース繊維原料分散液を攪拌翼によって高速攪拌し、セルロース繊維原料分散液の吐出流を形成させ、その吐出流をスクリーンに通すことによって、セルロース繊維原料に強い剪断力を付与する。これにより、セルロース繊維原料を微細化する。
攪拌翼の形式としては、パドル翼、タービン翼、プロペラ翼等を用いることができる。
スクリーンの目孔の形状は円形状でもよいし、スリット状でもよい。スクリーンの目孔の形状が円形状である場合、その孔径は0.05〜5mmであることが好ましく、スクリーンの目孔の形状がスリット状である場合、その短手方向の開口幅は0.05〜5mmであることが好ましい。孔径または短手方向の開口幅が前記範囲であれば、充分に微細化できる。
スクリーンの形状としては特に制限はなく、例えば、攪拌翼を収容可能な円錐状としてもよいし、攪拌翼を挿入可能な円筒状でもよい。
ローターの回転周速は、20〜60m/秒とすることが好ましく、25〜50m/秒とすることがより好ましく、30〜40m/秒とすることがさらに好ましい。ここで、ローターの回転周速は、攪拌翼の最も外側の部分の周速である。ローターの回転周速が前記下限値以上であれば、充分に微細化でき、前記上限値以下であれば、過度のエネルギー消費をより防止できる。
攪拌翼の最も外側の部分とスクリーンとの隙間は0.05〜1mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがより好ましい。攪拌翼の最も外側の部分とスクリーンとの隙間が前記下限値以上であれば、攪拌翼とスクリーンとを容易に配置でき、前記上限値以下であれば、充分に微細化できる。
微細化処理に供給するセルロース繊維原料分散液の固形分濃度は0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。セルロース繊維原料分散液の固形分濃度が前記下限値以上であれば、微細化処理の効率が向上し、前記上限値以下であれば、微細化処理装置内での閉塞を防止できる。
希釈するための分散媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合物が挙げられる。
微細化工程においては、セルロース繊維原料分散液を、第1の微細化処理前に、リファイナー、ビーター、PFIミル等の、回転刃と該回転刃よりも外側に配置された固定刃もしくは回転刃を備えた叩解機によって微細化処理してもよい。
また、微細化工程においては、圧力式分散機、高速回転式分散機、叩解機以外の他の分散機によって微細化処理を施しても構わない。他の分散機としては、グラインダー、衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、超音波分散機、二軸押出機等が挙げられる。他の分散機による微細化は、微細化工程のどの時点でも構わない。
<精製工程>
精製工程は、微細化工程後に、微細セルロース繊維分散液を精製する工程である。具体的に、精製工程では、微細化されずに残留した粗大繊維及び充分に微細化されなかった繊維を取り除いて、微細セルロース繊維の平均繊維幅が、好ましくは、2〜100nmに、より好ましくは2〜50nmに、さらに好ましくは2〜20nmになるように精製する。
精製工程によって微細セルロース繊維分散液を精製すれば、微細セルロース繊維の外観をより良好できると共に物性をより向上させることができる。強度が重視されるような用途に微細セルロース繊維を使用する場合には、精製工程によって粗大繊維からなる破壊核が少なくなるため、強度のばらつきや低下を防ぐことができる。
精製工程では、精製に要するエネルギー消費を抑えつつ微細セルロース繊維の平均繊維幅を小さくできることから、微細セルロース繊維分散液に、第1の精製処理を施した後に第2の精製処理を施すことが好ましい。
第1の精製処理は、微細セルロース繊維分散液を、スクリーンでろ過する処理、及び、遠心分離する処理の少なくとも一方である。
第1の精製処理において遠心分離を適用する場合の遠心力は、1000〜5000Gであり、2000〜4000Gであることが好ましい。第1の精製処理における遠心力が前記下限値未満であると、精製が困難になり、前記上限値を超えると、精製に要するエネルギー消費量が過度に多くなる。
第1の精製処理における遠心分離においては、遠心力を容易に上記範囲にできる点で、デカンタが好適に使用される。また、遠心分離機を使用することもできる。
遠心分離後には、上澄み液を回収して、第2の精製処理に供する。
第1の精製処理においてスクリーンによるろ過を適用する場合、スクリーンとしては、目開き20μm以下、好ましくは15μm以下のものを用いる。スクリーンの目開きが前記上限値を超えると、平均繊維幅が小さい微細セルロース繊維が得られにくくなる。
一方、スクリーンの目開きは、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。スクリーンの目開きが前記下限値未満であると、目詰まりしてろ過が困難になるおそれがある。
上記目開き以外は、スクリーンとして、異物除去工程で用いるスクリーンと同様のものを用いることができるが、上記目開きに容易にできる点では、ワイヤーメッシュ、糸を緻密に密集させたろ材等が好ましい。
第2の精製処理は、第1の精製処理を施した微細セルロース繊維分散液を、さらに遠心分離する処理である。遠心分離後には、上澄み液を回収する。
第2の精製処理における遠心力は、10000〜20000Gであり、10000〜15000Gであることが好ましい。第2の精製処理における遠心力が前記下限値未満であると、平均繊維幅が小さい微細セルロース繊維が得られにくくなり、前記上限値を超えると、精製に要するエネルギー消費量が過度に多くなる。
第2の精製処理における遠心分離機においては、遠心力を容易に上記範囲にできる点で、遠心分離機が好適に使用される。
また、精製工程では、上記の第1の精製処理及び第2の精製処理以外の他の精製処理を任意の時点で施しても構わない。
他の精製処理としては、第1の精製処理及び第2の精製処理以外の遠心条件の遠心分離処理、目開きが20μmを超え100μm未満のスクリーンを用いたろ過処理、クリーナーを用いた精製処理、フローテーターや加圧浮上装置を用い、比重の違いを利用して浮選分離する処理等が挙げられる。
他の精製処理における遠心分離においては、遠心分離機を使用することができる。遠心力が低い場合(1000G未満)には、デカンタを使用することも可能である。
スクリーンとしては、目開き以外は、第1の精製処理で用いるスクリーンと同様のものを用いることができる。他の精製処理で使用するスクリーンの目開きが20μm以下であると、第1の精製処理と重複し、100μm以上であると、目的とする精製が困難になることがある。
クリーナーとしては、異物除去工程で使用するクリーナーと同様のものを使用できるが、フォワード型クリーナーが好ましい。フォワード型クリーナーは、比重の大きなものを分離除去するのに用いられ、大きなセルロース繊維を分離除去するのに適している。
精製処理する微細セルロース繊維分散液は、微細セルロース繊維の固形分濃度が0.01〜10質量%になるようにあらかじめ濃度調整することが好ましく、0.1〜5質量%になるように濃度調整することがより好ましい。微細セルロース繊維分散液の固形分濃度が前記下限値以上であれば、精製処理しやすくなり、前記上限値以下であれば、精製処理する装置内での閉塞を防止できる。
<濃縮工程>
微細化工程または精製工程によって得られた微細セルロース繊維分散液を直ちに使用せずに輸送または保管する場合には、輸送コストや保管コストを削減するために、微細セルロース繊維の分散液を濃縮する濃縮工程を有して微細セルロース繊維含有物を得ることが好ましい。後述するように、微細セルロース繊維含有物は、輸送または保管終了後に、分散媒に再分散される。
濃縮工程における濃縮方法としては、凝集工程と濾過工程を有する方法(以下、「第1の濃縮法」という。)、加熱工程を有する方法(以下、「第2の濃縮法」という。)が挙げられる。再分散性が高い微細セルロース繊維含有物が容易に得られる点では、第1の濃縮法が好ましい。
濃縮工程に供される微細セルロース繊維分散液は、分散安定性の点から、微細セルロース繊維含有量が6質量%未満であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。濃縮工程に供される微細セルロース繊維分散液の微細セルロース繊維含有量は、微細セルロース繊維含有物の生産性の点から、0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
また、濃縮工程では、得られる微細セルロース繊維含有物における微細セルロース繊維の含有量を6〜80質量%にすることが好ましく、10〜50質量%にすることがより好ましく、12〜30質量%にすることがさらに好ましい。濃縮後の微細セルロース繊維の含有量を前記下限値以上にすれば、輸送コスト及び保管コストをより削減でき、前記上限値以下であれば、微細セルロース繊維含有物を容易に且つ短時間に製造できる。
(第1の濃縮法)
第1の濃縮法における凝集工程は、上記微細セルロース繊維分散液に含まれる微細セルロース繊維を凝集させる工程である。
微細セルロース繊維を凝集させる方法としては、微細セルロース繊維の表面電荷が負の場合には、微細セルロース繊維分散液に、多価金属の塩を含む凝集剤及び酸の少なくとも一方を添加する方法が挙げられる。微細セルロース繊維の表面電荷が正の場合には、微細セルロース繊維分散液に、多価金属の塩を含む凝集剤及びアルカリの少なくとも一方を添加する方法が挙げられる。
凝集剤を添加する場合、その添加量は、微細セルロース繊維の固形分100質量部に対して0.5〜300質量部であることが好ましく、1.0〜50質量部であることがより好ましく、2〜30質量部であることがさらに好ましい。凝集剤添加量が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維を容易に凝集させることができる。しかし、前記上限値を超えて添加しても凝集性はほとんど向上しないので、無益である。
酸を添加する場合、得られる微細セルロース繊維含有物のpHを4.0以下にすることが好ましく、3.0以下にすることがより好ましい。pHが前記上限値以下になるように酸を添加すると、負電荷の微細セルロース繊維を容易に凝集させることができ、濾過時間を短縮でき、短時間に微細セルロース繊維含有物を得ることができる。しかし、酸の添加量が少なく、pHが前記上限値を超える場合には、負電荷の微細セルロース繊維の凝集は弱く、次工程で濾過する際の分散媒除去が困難になる。
アルカリを添加する場合、微細セルロース繊維含有物のpHを10.0以上にすることが好ましく、12.0以上にすることがより好ましい。pHが前記下限値以上になるようにアルカリを添加すると、正電荷の微細セルロース繊維を容易に凝集させることができ、濾過時間を短縮でき、短時間に微細セルロース繊維含有物を得ることができる。しかし、アルカリの添加量が少なく、pHが前記下限値未満の場合には、正電荷の微細セルロース繊維の凝集は弱く、次工程で濾過する際の分散媒除去が困難になる。
第1の濃縮法における濾過工程は、凝集工程後の微細セルロース繊維分散液を濾過して分散媒を除去する工程である。
濾過工程における濾過方法としては、濾紙、濾布、樹脂製フィルター等の濾材を用いた公知の濾過方法を適用することができる。
濾材の開口径は、分散媒の分離性と濾過時間の点から、100〜3000nmであることが好ましく、200〜1000nmであることがより好ましい。
(第2の濃縮法)
第2の濃縮法における加熱工程は、微細セルロース繊維分散液を加熱し、分散媒を揮発させて除去する工程である。
加熱方法としては、上部が開放された容器に微細セルロース繊維分散液を充填し、その容器を加熱する方法、上部が開放された樋を加熱し、その樋に微細セルロース繊維分散液を流す方法、微細セルロース繊維分散液を直接加熱する方法等が挙げられる。
加熱温度は40〜120℃とすることが好ましく、60〜105℃とすることがより好ましい。加熱温度を前記下限値以上とすれば、分散媒を速やかに揮発させることができ、前記上限値以下であれば、加熱に要するコストの抑制及びセルロースの熱による分解を抑制できる。
<再分散工程>
濃縮工程によって得た微細セルロース繊維含有物は、再分散工程によって微細セルロース繊維分散液に戻される。具体的には、再分散工程では、微細セルロース繊維含有物に分散媒を添加して微細セルロース繊維含有液を調製し、該微細セルロース繊維含有液に分散処理を施して、微細セルロース繊維分散液を再製造する。
再分散工程では、微細セルロース繊維分散液の微細セルロース繊維含有量を0.1〜10質量%にすることが好ましく、0.2〜3質量%にすることがより好ましい。微細セルロース繊維分散液の微細セルロース繊維含有量が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維の分散安定性が高くなり、前記上限値以下であれば、微細セルロース繊維の粘性が高くなりすぎず、ハンドリングが比較的容易になる。
微細セルロース繊維分散液の微細セルロース繊維含有量は、分散媒の添加量によって調整でき、分散媒の添加量を多くする程、微細セルロース繊維含有量が低くなる。
また、再分散工程においては、再分散性がより高くなることから、微細セルロース繊維の表面電荷が負の場合には、微細セルロース繊維含有液にアルカリを添加することが好ましい。微細セルロース繊維の表面電荷が正の場合には、酸を添加することが好ましい。再分散工程において添加するアルカリは、上記濃縮工程でのアルカリ処理で使用されるアルカリと同様のものである。また、酸についても上記濃縮工程で使用される酸と同様のものである。
微細セルロース繊維の表面電荷が負の場合には、アルカリの添加によって、微細セルロース繊維含有液のpH(23℃)を7以上にすることが好ましく、9以上にすることがより好ましく、11以上にすることがさらに好ましい。微細セルロース繊維含有液のpHを前記下限値以上にすれば、微細セルロース繊維の再分散性がより高くなる。微細セルロース繊維の表面電荷が正の場合には、酸の添加によって、微細セルロース繊維含有液のpH(23℃)を4〜7の範囲内にすることが好ましい。上記範囲内であれば微細セルロース繊維の再分散性がより高くなる。
分散処理に用いる分散装置としては、例えば、上記微細化工程で用いた微細化処理装置と同様のものを使用することができる。微細化処理装置は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記分散装置を2種以上併用する場合には、1つずつを順に使用してもよいし、同時に使用してもよい。
微細セルロース繊維の含有量が高い微細セルロース繊維含有液でも微細セルロース繊維を容易に再分散できる点では、分散装置として超音波分散機を用いることが好ましい。
再分散工程では、再製造した微細セルロース繊維分散液に含まれる微細セルロース繊維の平均繊維幅Bと、上記濃縮工程に供した微細セルロース繊維分散液に含まれる微細セルロース繊維の平均繊維幅Aとの比(B/A)が好ましくは0.5〜2.0、より好ましくは0.5〜1.0になるように、分散処理条件、アルカリもしくは酸添加条件を選択する。B/Aが前記範囲内にあれば、再製造した微細セルロース繊維分散液に含まれる微細セルロース繊維の平均繊維幅が、濃縮工程に供した微細セルロース繊維分散液に含まれる微細セルロース繊維の繊維幅とほぼ同等もしくは細くなる。そのため、再製造した微細セルロース繊維分散液に含まれる微細セルロース繊維は、本来の微細セルロース繊維としての特性(高強度や高剛性、高寸法安定性、樹脂と複合化した際の高分散性、透明性)を得やすい。
<作用効果>
本発明者らが調べたところ、圧力式分散機を用いた微細化は、エネルギー消費量が低い範囲では充分に小さい繊維幅にはなりにくいが、粗大繊維を破砕する力は大きい。一方、高速回転式分散機を用いた微細化は、エネルギー消費量が低い範囲でも細かく微細化できるが、粗大繊維が残りやすい。
本発明では、エネルギー消費量を抑えつつ、微細セルロース繊維を高収率で製造するために、圧力式分散機を用いて粗く微細化して、一旦、やや細めの繊維にしてから、高速回転式分散機を用いて細かく微細化しているため、セルロース繊維原料を円滑に微細化して微細セルロース繊維にすることができる。
なお、第1の微細化処理と第2の微細化処理の順序を入れ替えて、高速回転式分散機を用いて微細化した後に、圧力式分散機を用いて微細化する方法では、セルロース繊維原料を円滑に微細化することができず、微細セルロース繊維の収率が高くなりにくい。これは、高速回転式分散機は、繊維表面から微細繊維を削ぎ落として微細化を進めるため、太めの繊維を微細化するのに適していないためと思われる。
高速回転式分散機を用いて微細化した後に、圧力式分散機を用いて微細化する方法において、微細セルロース繊維の収率を高くするためには、ローターの回転周速を早めたり、微細化処理時間を延ばしたりする必要があり、エネルギー消費量が多くなる。
また、高速回転式分散機において、エネルギー消費を抑えるために、ローターの回転数を遅めにしたり、微細化処理時間を短めにしたりすると、微細セルロース繊維の収率が高くなりにくい。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の例においては、セルロース繊維原料に化学処理が施されて、セルロース繊維原料がアニオン基を有する場合、アニオン基含有量を上記段落0013に記載の方法で測定し、カチオン基を有する場合、カチオン基含有量を上記段落0015に記載の方法で測定した。また、微細セルロース繊維の平均繊維幅を上記段落0009に記載の方法で測定した。それら測定結果を表1に示す。
<実施例1>
(化学処理工程)
セルロース繊維原料として、カルボキシ基含有量0.06mmol/g、固形分濃度30質量%(水分70質量%)、絶乾質量換算で20gの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)を用意した。上記LBKPを容器内に収容し、その容器にオゾン濃度200g/mのオゾン・酸素混合気体を30L導入し、25℃で2分間振とうした。このときのオゾン添加率はパルプ乾燥質量に対して30質量%であった。6時間静置した後、容器内のオゾンおよび空気を除去してオゾン酸化処理を終了した。処理終了後、イオン交換水で懸濁させ、加圧ろ過装置を用いて圧力0.5kg/cmにて脱水し、再度イオン交換水にて懸濁させて脱水するという操作を洗浄水のpHが6以上になるまで繰り返し、固形分濃度20質量%のオゾン酸化パルプを得た。この操作を10回繰り返し、それらを混合して絶乾質量換算で200gのオゾン酸化パルプを得た。
次いで、オゾン酸化パルプ1000g(絶乾質量換算で200g)に対し、塩酸によりpHを4〜5に調整した0.3質量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液を2000g(セルロース繊維の絶乾質量に対して、亜塩素酸ナトリウムとして3質量%相当)添加し、70℃で3時間反応させて追酸化処理を施した。追酸化処理終了後、イオン交換水で懸濁させ、加圧ろ過装置で脱水し、再度イオン交換水にて懸濁させて脱水するという操作を洗浄水のpHが6以上になるまで繰り返して酸化処理パルプを得た。
上記酸化処理パルプ(絶乾質量換算で200g)にイオン交換水を添加して、固形分濃度2質量%の分散液を調製した。この分散液に水酸化ナトリウムを、水酸化ナトリウム濃度が0.3質量%になるよう添加し、5分間攪拌した後、室温で30分静置した。処理終了後、イオン交換水で懸濁させ、加圧ろ過装置で脱水し、再度イオン交換水にて懸濁させて脱水するという操作を洗浄水のpHが6以上になるまで繰り返してアルカリ処理パルプを含む分散液を得た。
(異物除去工程)
次いで、前記アルカリ処理パルプを含む分散液を、開放振動型スクリーンである熊谷理機工業製の試験用フラットスクリーンに投入した。スクリーンとしては、スリット幅が0.25mmのスリット型目孔のものを用いた。
次いで、スクリーンを通過した分散液を回収し、加圧ろ過装置で脱水して、異物除去処理を施した分散液を得た。
(微細化工程)
次いで、異物除去処理を施したアルカリ処理パルプを含む分散液にイオン交換水を加えて、セルロース繊維濃度1.0質量%のセルロース繊維原料分散液を調製した。このセルロース繊維原料分散液から、500g(絶乾質量換算で5g)を取り出し、高圧ホモジナイザー(NiroSoavi社「Panda Plus 2000」)で、120MPa×1パス処理を行った。この操作を20回繰り返し、それらを混合することで、120MPa×1パス処理を行った分散液10000g(絶乾質量換算で100g)を得た。次いで、該分散液を、高速回転式分散機(エム・テクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、ローター回転数21500回転/分、ローター回転周速34m/秒の条件で1分間微細化処理して、微細セルロース繊維分散液を得た。
(精製工程)
得られた微細セルロース繊維分散液を12,000G×10分間遠心分離(遠心分離機:コクサン社製「H−2000B」)し、上澄みを回収し、その上澄みにイオン交換水を添加して、セルロース含有量が0.2質量%の上澄み液を得た。
<実施例2>
(化学処理工程)
リン酸二水素ナトリウム二水和物1.69g、リン酸水素二ナトリウム1.21gを3.39gの水に溶解させ、リン酸系化合物の水溶液(以下、「リン酸化試薬」という。)を得た。このリン酸化試薬のpHは25℃で6.0であった。
実施例1で用いたものと同様のLBKPを含水率80質量%になるようイオン交換水で希釈し、セルロース繊維原料分散液を得た。このセルロース繊維原料分散液200gに前記リン酸化試薬83.9g(乾燥パルプ100質量部に対してリン元素量として20質量部)を加え、105℃の送風乾燥機(ヤマト科学株式会社 DKM400)で15分に一度混練しながら質量が恒量となるまで乾燥させた。次いで、150℃の送風乾燥機で1時間加熱処理して、セルロースにリン酸基を導入した。
次いで、リン酸基を導入したセルロースに4000mlのイオン交換水を加えて攪拌し、加圧ろ過装置を用いて脱水した。この操作を3回繰り返した。脱水後のパルプを4000mlのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液70mlを少しずつ添加し、pHが12〜13のアルカリ処理パルプ分散液を得た。その後、このアルカリ処理パルプ分散液を加圧ろ過装置で脱水し、再度イオン交換水を加えて加圧ろ過装置で脱水するという操作を、洗浄液のpHが7以下になるまで繰り返して、セルロース繊維原料分散液を得た。
(異物除去工程、微細化工程、精製工程)
異物除去工程、微細化工程、精製工程を実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液の上澄み液を得た。
<実施例3>
(化学処理工程)
実施例1で用いたものと同様のLBKPを105℃で3時間乾燥させて水分3質量%以下の乾燥パルプを得た。次いで、その乾燥パルプ200gと無水マレイン酸200g(乾燥パルプ100質量部に対して100質量部)とをオートクレーブに充填し、150℃で2時間処理した。次いで、無水マレイン酸で処理されたパルプにイオン交換水4000gを添加し、加圧ろ過装置を用いて脱水した。この操作を3回繰り返した。脱水後のパルプを4000mlのイオン交換水に分散させて、無水マレイン酸処理パルプ分散液を得た。
次いで、無水マレイン酸処理パルプ分散液を攪拌しながら、4Nの水酸化ナトリウム水溶液500mLを少しずつ添加してpHを12〜13に調整して、パルプをアルカリ処理した。その後、pHが8以下になるまで、アルカリ処理後のパルプを、加圧ろ過装置を用いて洗浄して、セルロース繊維原料分散液を得た。
(異物除去工程、微細化工程、精製工程)
異物除去工程、微細化工程、精製工程を実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液の上澄み液を得た。
<実施例4>
(化学処理工程)
実施例1で用いたものと同様のLBKPを絶乾質量換算で200g用意した。これを、20gの臭化ナトリウム、3.2gのTEMPO触媒(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル)を溶解させたイオン交換水17000mlに分散させた。64.5g/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液580mlを、0.1M塩酸にてpH10に調整し、これを、TEMPO触媒を含むイオン交換水に分散させたLBKPに添加して反応を開始させた。反応は室温で行った。反応中、pHが低下していったが、随時20g/L水酸化ナトリウム水溶液を添加しながらpHを10に保持した。反応を開始して4時間経過すると、pHが低下しなくなったため、この時点で反応終了とした。反応終了後、イオン交換水で懸濁させ、加圧ろ過装置で脱水し、再度イオン交換水を加えて加圧ろ過装置で脱水するという操作を、洗浄液のpHが7以下になるまで繰り返した。これにより、TEMPO酸化パルプを得た。
上記TEMPO酸化パルプに、亜塩素酸ナトリウム180g、酢酸600g、イオン交換水7000mlを添加し、20g/L水酸化ナトリウム水溶液にてpHを4.5に調整した。室温にて48時間保持して反応させた。反応終了後、イオン交換水で懸濁させ、加圧ろ過装置で脱水し、再度イオン交換水を加えて加圧ろ過装置で脱水するという操作を、洗浄液のpHが6以上になるまで繰り返して、セルロース繊維原料分散液を得た。
(異物除去工程、微細化工程、精製工程)
異物除去工程、微細化工程、精製工程を実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液の上澄み液を得た。
参考例5>
(化学処理工程)
実施例1で用いたものと同様のLBKPを絶乾質量換算で200g用意した。そのLBKPをイオン交換水で希釈して濃度3質量%にし、0.1質量%硫酸でpH6に調整し、50℃になるまで水浴で温めた。次いで、温めたLBKPを含む液に、酵素optimaseCX7L(Genencor社製)をパルプ(固形分換算)に対して3質量%添加し、50℃、1時間撹拌しながら反応させて、酵素処理を施した。その後、95℃以上、20分間加熱して、酵素を失活させて、酵素処理分散液を得た。その酵素処理分散液を、セルロース含有量が1質量%における電導度が10μS/cm以下になるまで、イオン交換水での懸濁と加圧ろ過装置での脱水を繰り返して、セルロース繊維原料分散液を得た。
(異物除去工程、微細化工程、精製工程)
異物除去工程、微細化工程、精製工程を実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液の上澄み液を得た。
<実施例6>
(化学処理工程)
実施例1で用いたものと同様のLBKPを、ナイアガラビーター(容量23リットル、東西精器社製)で200分間叩解し、パルプ分散液(パルプ濃度2質量%)を得た。得られたパルプ分散液を遠心脱水機(株式会社コクサン製)により、12000rpm、15分の条件で脱液して、パルプ濃度を25質量%にまで濃縮した。次に、回転数を800rpmに調節した攪拌装置(IKA社製)に、その濃縮した分散液を乾燥質量で60質量部、水酸化ナトリウムを7質量部、イソプロピルアルコール(IPA)を2352質量部、水を588質量部仕込んだ。次いで、30℃で30分混合攪拌した後に、80℃まで昇温し、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを有効分換算で120質量部添加した。そして、1時間反応させた後に、反応物を取り出して中和、洗浄、濃縮して、25質量%濃度のカチオン化パルプを含むセルロース繊維原料分散液を得た。
(異物除去工程、微細化工程、精製工程)
異物除去工程、微細化工程、精製工程を実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液の上澄み液を得た。
<比較例1>
微細化工程において、高速回転式分散機による処理を省略した以外は実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液の上澄み液を得た。
<比較例2>
微細化工程において、高速回転式分散機による処理を省略し、高圧ホモジナイザーでの処理を120MPa×2パスにした以外は実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液の上澄み液を得た。
<比較例3>
微細化工程において、高圧ホモジナイザーによる処理を省略した以外は実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液の上澄み液を得た。
<比較例4>
微細化工程において、高圧ホモジナイザーによる処理を省略し、高速回転式分散機の処理を5分間とした以外は実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液の上澄み液を得た。
<比較例5>
微細化工程において、高圧ホモジナイザーによる処理と高速回転式分散機による処理の順序を入れ替えて、高速回転式分散機による処理の後に高圧ホモジナイザーによる処理を行った以外は実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液の上澄み液を得た。
(評価)
上澄み液の固形分質量から微細セルロース繊維の収率を求めた。具体的には、(上澄み液の固形分質量/遠心分離前の全セルロース繊維の質量)×100の式より、微細セルロース繊維の収率を求めた。結果を表1に示す。
また、微細化工程において1gの微細セルロース繊維を製造するのに要する電力原単位を、微細セルロース繊維量と微細化工程における分散機の消費電力量より求めた。その結果を表1に示す。
Figure 0005895834
圧力式分散機を用いて微細化した後に高速回転式分散機を用いて微細化した実施例1〜4,及び参考例5では、微細セルロース繊維の収率が高かった。また、実施例1〜4,及び参考例5では、電力原単位が小さく、微細セルロース繊維を製造するのに要するエネルギー消費量が少なかった。
高速回転式分散機を用いた微細化を省略した比較例1,2、圧力式分散機を用いた微細化を省略した比較例3,4は、微細セルロース繊維の収率が、微細化工程以外は同様の実施例1よりも低かった。
高速回転式分散機を用いた微細化を、圧力式分散機を用いた微細化よりも前におこなった比較例5は、微細セルロース繊維の収率が、微細化工程以外は同様の実施例1よりも低かった。
また、比較例1〜5では、電力原単位が大きく、微細セルロース繊維を製造するのに要するエネルギー消費量が多かった。

Claims (2)

  1. セルロース繊維にアニオン基又はカチオン基を導入する化学処理を施して、アニオン基又はカチオン基を導入したセルロース繊維を含むセルロース繊維原料分散液を得る化学処理工程と、
    前記セルロース繊維原料分散液を、セルロース繊維の数平均繊維径が2〜1000nmになるように微細化処理する微細化工程を有し、
    前記微細化工程では、セルロース繊維原料分散液に、圧力式分散機を用いて微細化する第1の微細化処理を施した後に、攪拌翼を備えたローターと前記攪拌翼より外側に配置されたスクリーンとを備えた高速回転式分散機を用い、ローターの回転周速20〜40m/秒で微細化する第2の微細化処理を施す、微細セルロース繊維の製造方法。
  2. 前記第1の微細化処理では、セルロース繊維原料分散液を、50〜250MPa(ゲージ圧)の圧力で圧力式分散機に供給して微細化する、請求項1に記載の微細セルロース繊維の製造方法。
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